説明

車両用シート

【課題】ネットシートのように支持面を形作る部材に通風路を貫通形成することができないシートであっても、支持面の広範囲から風を吹出し可能とする。
【解決手段】着座者を支持する支持面12aから風が吹出す車両用シート10であって、支持面形成部材20と、支持面形成部材20との間に風が流通することのできる空間部30を形成して支持面形成部材20から離間して配置するボード部材42とを備え、支持面形成部材20は支持面12aを貫通する方向に通気可能な通気構造を有する。空間部30内にボード部材42の面形状に沿った流れの風Aを送り込む送風装置50が設けられており、空間部30に送り込まれた風Aがボード部材42の内面44に設けられた風向変更突起32,33,34により向きを変えられて該向きの変えられた風Bが支持面形成部材20の通気構造を介して支持面12aから吹出す構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者を支持する支持面から風が吹出す車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
着座者を支持する支持面から風が吹出す車両用シートは、例えば、下記特許文献1に開示されている。下記特許文献1に記載の車両用シートは、着座者を支持する支持面がクッションパッドで形成されている。そして、クッションパッドの裏面側から送り込まれた空気がクッションパッドの内部に設けられた通風路に案内されて支持面に沿って広範囲に配風され、支持面に形成された複数の開口から吹出す構成となっている。かかる車両用シートでは、一つの送風装置から送風された空気を支持面の広範囲から吹出すため着座者の快適性を向上させることができる。
【0003】
ところで、車両用シートの一形態として、着座者を支持する支持面がネットで構成された所謂ネットシートが知られている。ネットシートは、例えば、下記特許文献2に開示されている。 ネットシートにおいて支持面を構成するネットは、通気性を有するため、仮に裏面側から送風した場合には、その風を支持面から吹出すことはできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−95342号公報
【特許文献2】特開2007−89868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ネットにおいては一つの送風装置から送風された空気を支持面の広範囲に配風する通風路を形成することが困難である。そのため、ネットの裏面側から送風したとしても空気が支持面の局部から吹出すこととなり、着座者が快適さを感じにくいことが懸念される。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ネットシートのように支持面を形作る部材に通風路を貫通形成することができないシートであっても、支持面の広範囲から風を吹出し可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る車両用シートは次の手段を採用する。
本発明は、着座者を支持する支持面から風が吹出す車両用シートであって、前記支持面を形作る支持面形成部材と、該支持面形成部材との間に風が流通することのできる空間部を形成して前記支持面形成部材から離間して配置する面形状のボード部材とを備えており、前記支持面形成部材は前記支持面を貫通する方向に通気可能な通気構造を有し、前記空間部内に前記ボード部材の面形状に沿った流れの風を送り込む送風装置が該空間部の風の流れを生じさせる基端部に設けられており、前記面形状のボード部材の前記支持面形成部材と対向する内面には、前記送風装置により前記空間部に送り込まれ該空間部内を流れる風の向きを前記支持面形成部材を貫通する方向へ変更することのできる風向変更突起が前記空間部内に張り出して設けられており、前記送風装置により前記空間部の基端部から該空間部に送り込まれた風が前記風向変更突起により向きを変えられて前記支持面形成部材の通気構造を介して前記支持面から吹出す構成であることを特徴とする車両用シートである。
【0008】
本発明の車両用シートによれば、送風装置によってボード部材の面形状に沿った流れとして空間部に送り込まれた風がボード部材に設けられた風向変更突起によって向きを変えられて支持面から吹出す。そのため、支持面を形作る支持面形成部材に通風路を貫通形成することができないシートであっても、支持面の広範囲から風を吹出し可能とすることができる。
【0009】
本発明の車両用シートは、前記支持面形成部材はシートフレームに張設されたネット材であり、該ネット材の網目構造により前記通気構造が構成されている車両用シートに好ましく適用することができる。
【0010】
前記風向変更突起は、前記送風装置により前記空間部の基端部から該空間部に送り込まれた風の流れに対する角度を調整可能に設けられているのが好ましい。風向変更突起の角度を調整することによって送風装置により空間部の基端部から空間部に送り込まれた風の向きの変更方向を調整し、支持面における風の吹出し位置を調節することが可能となる。
【0011】
また、前記風向変更突起は、前記送風装置により前記空間部の基端部から該空間部に送り込まれる風の流れる方向に間隔を置いて複数並んで設けられており、風上側に位置する風向変更突起には風の一部が通過するのを許容し、該風の一部を風下側に位置する風向変更突起へ案内する隙間が形成されているのも好ましい。かかる車両用シートでは、空間部に送り込まれた風に対して複数の風向変更突起の夫々をより確実に作用させることができる。そのため、より確実に支持面の広範囲から風を吹出させることが可能である。
【0012】
また、本発明の車両用シートは、前記風向変更突起が、前記支持面形成部材の方から荷重が加わると弾性的に変形可能な構成であると一層好ましい。かかる車両用シートによれば、着座者の荷重により支持面形成部材が撓んで風向変更突起に接することがあったとしても着座者が異物感を感じにくい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ネットシートのように、支持面を形作る支持面形成部材に通風路を貫通形成することができないシートであっても、支持面の広範囲から風を吹出し可能とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用シートの前方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る車両用シートの後方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るバックボードの斜視図である。
【図4】図1に示される車両用シートのIV−IV線断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係るバックボードの斜視図である。
【図6】本発明の実施形態3に係るバックボードの斜視図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る車両用シート断面を図4に対応して示す図である。
【図8】図7に示される風向変更突起を拡大して示す図である。
【図9】本発明の実施形態4に係るバックボードの斜視図である。
【図10】図9に示されるバックボードのX−X線断面を拡大して示す断面図であり、レバーを最も上まで上げた状態を示す図である。
【図11】図9に示されるバックボードのX−X線断面を拡大して示す断面図であり、レバーを最も下まで下げた状態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態5に係るバックボードの斜視図である。
【図13】図12に示されるバックボードのXIII−XIII線断面図であり、風向変更突起を拡大して示す断面図である。
【図14】本発明の実施形態6に係る風向変更突起の断面を図13に対応して示す図である。
【図15】本発明の実施形態6の変更例に係る風向変更突起の断面を図14に対応して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
図1〜図4を参照しながら、本発明の実施形態1について説明する。本実施形態にかかるシート10は自動車等の車両に設置されるものであって、図1に示されるように、背凭れとなるシートバック12、座面となるシートクッション14及びヘッドレスト16を備えている。各図において矢印で示すF,Uはシート10の前方,上方を示している。本発明の「支持面」とは着座者を支持する面のことであり、シートバック12では背凭れ面である前面12a、シートクッション14では座面である上面14a、ヘッドレスト16では頭を凭せ掛ける前面16aがこれに相当する。本実施形態のシート10は、支持面から風が吹出す特徴的な構成をシートバック12に備える。その他の部分については特に変更を要しないので詳細な説明は省略する。
【0016】
図1に示されるように、シート10は、シートバック12において着座者の背中が当たる支持面12aの略全体がネット20で構成された、所謂ネットシートである。ネット20は、門形に形成されたシートフレーム22の前側に張設されており、着座者の荷重を弾性的に支持することができる。このネット20が本発明の支持面形成部材に相当する。ネット20は、通気性を有する織物や編み物等であり、その網目構造により該ネット20の貫通方向に通気可能となっている。
【0017】
図2に示されるように、シートバック12の支持面12aとは反対側の裏面12bは、ポリピロピレン等の樹脂で形成されたバックボード40で構成されている。バックボード40は、その外面がシートバック12の裏面12bを構成する略平板状の裏面構成部42を備え、該裏面構成部42の両側端部及び上下端部が前方へ屈曲形成されており、シートフレーム22の後ろ側に取り付けられている。バックボード40の裏面構成部42が本発明のボード部材に相当する。なお、本明細書においては、シートバック12を構成する各部材において、シートバック12の外側に露出している面を「外面」、この「外面」とは反対側のシートバック12の内側に向く面を「内面」と称する。図4に示されるように、バックボード40は、裏面構成部42の内面44がネット20とは離間して配置されており、ネット20との間に風が流通することのできる空間部30を形成している。バックボード40の下部には、左右方向の略中央に空間部30内に風Aを導入するための開口部46が形成されている。
【0018】
このシート10には、バックボード40の下部に設けられた開口部46から空間部30に風Aを送り込むことのできる送風装置50が設けられている。この送風装置50によって、裏面構成部42の内面44の面形状に沿って下方から上方へ向かって流れる風Aが空間部30に送り込まれる。空間部30の下部が本発明の流れを生じさせる基端部に相当する。送風装置50は、図中では極めて模式的に描かれているが、バックボード40の開口部46から直接的に風を送り込むことの可能なシロッコファン等の公知の送風機をシートバック12の下部に設けて送風装置50を構成してもよいし、シート10あるいは該シート10が装備された車両の任意の位置に設けられた送風機と該送風機により発生した風を開口部46に案内するダクトとで送風装置50を構成してもよい。
【0019】
図3,4に示されるように、バックボード40の裏面構成部42の内面44には、左右方向の略中央に送風装置50により空間部30に送り込まれた風Aの流れる上下方向に間隔を置いて3つの風向変更突起32,33,34が設けられている。風向変更突起32,33,34は板状であり、その面形状が送風装置50から送り込まれた風Aの流路に交差するように空間部30に張り出して設けられている。風向変更突起32,33,34は、空間部30に張り出した先端部32a,33a,34aが送風装置50から送り込まれた風Aの風下側、すなわち上側に傾斜して設けられており、その面形状は送風装置50から送り込まれた風Aの風上側、すなわち下側の面が凹んだ湾曲形状となっている。図4に示されるように、風向変更突起32,33,34の空間部30への張り出し長さは風Aの風下側ほど大きくなっている。送風装置50から空間部30に送り込まれて下から上へ流れる風Aは、図3,4に矢印Bで示されるように、その流路に張り出した各風向変更突起32,33,34より前方へと向きが変えられる。そして、その方向が変えられた風Bがネット20の網目構造を通過して支持面12aから吹出す。
【0020】
以上の構成のシート10によれば、以下の作用効果を奏する。
バックボード40の裏面構成部42の内面44において、該裏面構成部42の内面44に沿って流れる風Aの流れる方向に間隔を置いて複数の風向変更突起32,33,34を形成されていることにより、風Aが複数箇所で向きを変えられる。そのため、一つの送風装置50により空間部30に送り込まれた風Aを支持面12aの広範囲から風を吹出させることができる。しかも、バックボード40に風向変更突起32,33,34を追加形成する容易な構成により、部品点数を増やすことも支持面形成部材を構成するネット20に変更を加えることもなく支持面12aの広範囲から風を吹出し可能とすることができる。
【0021】
[実施形態2]
図5を参照しながら、本発明の実施形態2について説明する。本実施形態では、上記実施形態1とはバックボード40に形成された風向変更突起のみが異なっている。本実施形態の説明においては、上記実施形態1から変更を要しない部分については図中に同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0022】
本実施形態では、バックボード40の裏面構成部42の内面44において、開口部46から送り込まれた風Aの流れる上下方向に間隔を置いた2箇所に風向変更突起62,63が設けられている。各風向変更突起62,63の外形形状は上記実施形態1の風向変更突起32,33,34と略同様であるが、送風装置50から送り込まれた風Aの風上側、すなわち下側の風向変更突起62が左右に分割形成されている点では異なっている。分割形成された風向変更突起62a,62bの間には送風装置50により送り込まれた風Aの一部Aaを通過させて風下側、すなわち上側の風向変更突起63に案内することが可能な程度の大きさの間隙62cが設けられている。送風装置50から送り込まれた風Aの一部は下側の風向変更突起62により前方、つまりネット20を貫通する方向へ流れる風Baへと向きが変えられる。そして送風装置50から送り込まれた風Aの他の一部Aaは間隙62cを通過して上方へ流れ、上側の風向変更突起63によりネット20を貫通する方向へ流れる風Bbへと向きが変えられる。
【0023】
このような構成によれば、送風装置50から送り込まれた風Aの風上側の風向変更突起62(62a,62b)は、風Aの一部の向きを変更させるが、他の一部Aaを間隙62cから風下側に逃がす。そのため、空間部30に送り込まれた風Aの流れる上下方向に間隔を置いて設けられた風向変更突起62,63の夫々を風A(Aa)に対してより確実に作用させることが可能である。それにより、支持面12aに対してネット20を貫通する方向へ流れる風Ba,Bbを広範囲で生じさせることができ、支持面12aからより均一に風Ba,Bbを吹出させることが可能である。
【0024】
[実施形態3]
図6〜図8を参照しながら、本発明の実施形態3について説明する。本実施形態では、上記実施形態1とはバックボード40に形成された風向変更突起のみが異なっている。本実施形態の説明においては、上記実施形態1から変更を要しない部分については図中に同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0025】
本実施形態では、バックボード40の裏面構成部42の内面44において、開口部46から送り込まれた風Aの流れる上下方向に間隔を置いて3つの風向変更突起65,66,67が略一直線に並んで設けられている。3つの風向変更突起65,66,67のうち、空間部30に送り込まれた風Aの流れで見て、最も風下側に位置する風向変更突起67は、上記実施形態1の風向変更突起34と同様の外形形状である。図7に示されるように、最も風上側に位置する風向変更突起65と中間の風向変更突起66は、空間部30への張り出し長さは最も風下側に位置する風向変更突起67と略同程度であり、根元に隙間65a,66aが形成された門形である。隙間65a,66aは送風装置50により送り込まれた風Aの流れる方向に貫通形成されている。隙間65a,66aは風Aの一部が通過するのを許容可能な大きさに形成されており、隙間65a,66aは風Aの流れで見て風上側ほど大きく形成されている。つまり、風上側の隙間65aの方が中間の隙間66aよりも大きい。そして、図7,8に示されるように、送風装置50により空間部30に送り込まれた風Aは、一部が風向変更突起65により前方、つまりネット20を貫通する方向へ流れる風Baへと向きが変えられるが、他の一部Aaは風向変更突起65の隙間65aを通過し風下側の風向変更突起66に案内される。風向変更突起66に案内された風Aaの一部は、風向変更突起66によりネット20を貫通する方向へ流れる風Bbへと向きが変えられ、他の一部Abは風向変更突起66の隙間66aを通過して更に風下側の風向変更突起67に案内される。風向変更突起67に案内された風Abは風向変更突起67によりネット20を貫通する方向へ流れる風Bcへと向きが変えられる。
【0026】
このように、本実施形態では、上下方向に間隔を置いて略一直線に設けられた3つの風向変更突起65,66,67のうち風上側の2つの風向変更突起65,66に隙間65a,66aを設けることにより、空間部30に送り込まれた風A(Aa,Ab)に対して風向変更突起65,66,67の夫々をより確実に作用させることができる。そのため、支持面12aの広範囲においてネット20を貫通する方向へ流れる風Ba,Bb,Bcを生じさせ、支持面12aからより均一に風Ba,Bb,Bcを吹出させることが可能である。
【0027】
[実施形態4]
図9〜図11を参照しながら、本発明の実施形態4ついて説明する。本実施形態は、上記実施形態2においてバックボード40に形成された風向変更突起の構成を一部変更した実施形態である。本実施形態の説明においては、上記実施形態2から変更を要しない部分については図中に同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0028】
本実施形態の風向変更突起72,73は、送風装置50により空間部30に送り込まれた風Aの流れに対する角度を変更可能に設けられている。その角度変更機構は上下に間隔を置いて設けられた風向変更突起72,73において同様であるから、ここでは上側の風向変更突起73を取り上げて説明する。
図10に示されるように、風向変更突起73は、平板状の風向変更板74を備えている。該風向変更板74は、基端部74aがヒンジ75を介してバックボード40の裏面構成部42の内面44に対して回動可能に取り付けられるとともに、先端部74bを前方へ回動させる付勢を付与する薄板ばね76を介してバックボード40の裏面構成部42の内面44に取り付けられている。また、風向変更突起73は、薄板ばね76の付勢力に抗して風向変更板74の回動を妨げることで風向変更板74の角度を保持するフック77も備えている。風向変更板74は、空間部30に先端部74bが斜め上方に張り出した状態でフック77に支持されている。フック77は、L字形に屈曲形成された棒状部材であり、L字の一辺77aが風向変更板74の下面に沿って配設されており、風向変更板74の回動を妨げている。フック77のL字の他辺77bは、バックボード40の裏面構成部42に貫通形成された上下方向に長い長孔48に挿通されており、その先端はシートバック12の裏面12bへ突出している。フック77のシートバック12の裏面12bに突出した他辺77bの先端にはシートバック12の外側から操作することのできるノブ78が設けられている。該ノブ78の根元には、長孔48を通過できない程度に軸方向外方へ張り出して形成された一対のフランジ部78fが設けられており、該一対のフランジ部78fはバックボード40の裏面構成部42を挟み込んだ状態で配設されている。この一対のフランジ部78fとバックボード40の裏面構成部42との間に生じる摩擦力によって、フック77の長孔48の長手方向(上下方向)に対する位置決めが行われている。また、この一対のフランジ部78fによって、フック77の長孔48に対する挿通方向の位置決めも行われている。
【0029】
図11に示されるように、フランジ部78fとバックボード40の裏面構成部42との間に生じる摩擦力に抗してノブ78を下方へ移動させると、風向変更板74の回動を妨げているフック77の一辺77aも下方へ移動する。それに伴い、風向変更板74は薄板ばね76の付勢力により先端部74bが前方へ回動する。それにより送風装置50により空間部30に送り込まれた風Aの流れに対する風向変更突起73の角度が変更され、該風向変更突起73により変更される風Bの流れの方向が調節される。
【0030】
なお、本実施形態では、風向変更突起72,73の角度変更をそれぞれ独立して行うことができるように構成されているが、各風向変更突起72,73に設けられたフック77を連結し、各風向変更突起72,73の角度調整を連動して行うことができるように構成してもよい。
また、図10及び図11に二点鎖線で示されるように、一対のフランジ部78fのうち外面12bに側に配置されたフランジ部78gが長孔48を覆うことが可能な程度に上下方向に長く形成されていれば、長孔48が露出しないため見栄えがよく好ましい。
また、風向変更突起72,73の角度変更はモータ駆動で行ってもよい。例えば、モータ駆動を制御し、一定周期で風向変更突起72,73の角度を変更させることにより、支持面12aにおける風Bの吹出し位置を一定周期で上下に変化させ、着座者の快適さを一層向上させることも可能である。また、支持面12a付近の温度や湿度をセンサで検知し、その検知結果に基づいてモータ駆動を制御して風向変更突起72,73の角度を変更してもよい。例えば、温度の高いところにおいて風Bを吹出すようにすれば、着座者の快適さを一層向上させることが可能である。
【0031】
[実施形態5]
図12,図13を参照しながら、本発明の実施形態5について説明する。本実施形態は、上記実施形態2において風向変更突起の構成を一部変更した実施形態である。本実施形態の説明においては、上記実施形態2から変更を要しない部分については図中に同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0032】
本実施形態の風向変更突起82,83は、支持面形成部材の方から加わる荷重、つまりシートバック12においては前方から加わる荷重により弾性的に変形可能な構成となっている。その変形機構は各風向変更突起82,83において同様であるから、ここでは図13を参照しながら上側の風向変更突起83を取り上げて説明する。
【0033】
風向変更突起83は、ポリプロピレン等で形成された平板状の剛体からなる風向変更板84と薄板ばね76とを備えている。風向変更板84は、その基端部84aがバックボード40の裏面構成部42の内面44に対してヒンジ75を介して回動可能に取り付けられるとともに、V字形に形成された薄板ばね76を介してバックボード40の裏面構成部42の内面44に取り付けられている。通常、風向変更板84は自重により薄板ばね76をわずかに拡開させた状態で該薄板ばね76により斜め上方へ傾いた状態で保持され、先端部84bが空間部30に張り出しており、送風装置50により空間部30に送り込まれて下から上へ流れる風Aの方向を変化させてネット20を貫通する前方へ流れる風Bに変化させることができる。かかる構成の風向変更突起83によれば、着座者の荷重によりネット20が撓んで後方に変位して該風向変更突起83に接した場合には、図13に二点鎖線で示されるように、薄板ばね76が弾性的に押し縮められることにより風向変更板84が基端部84aを中心に回動して先端部84bが上方へ変位する。そのため、着座者が風向変更突起83により異物感を感じにくい。
【0034】
[実施形態6]
図14を参照しながら、本発明の実施形態6ついて説明する。本実施形態は、上記実施形態5において風向変更突起の構成を一部変更した実施形態である。本実施形態の説明においては、上記実施形態5から変更を要しない部分については図中に同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0035】
本実施形態の風向変更突起86は、平板状であり、ゴム等の弾性体で形成されている。風向変更突起86は、基端部86aが裏面構成部42の内面44に接合されて斜め上方に傾いた状態で配設されている。この風向変更突起86は、通常時は先端部86bが空間部30に張り出しており、送風装置50により空間部30に送り込まれて下から上へ流れる風Aの方向を変化させてネット20を貫通する前方へ流れる風Bに変化させることができる。しかし、着座者の荷重によりネット20が撓んで後方に変位して該風向変更突起83に接した場合には、図14に二点鎖線で示されるように、風向変更突起83が弾性変形するため、着座者に異物感を感じさせにくい。
【0036】
なお、風向変更突起86のバックボード40に対する固定方法は特に限定されず、例えば、図15に示されるように、風向変更突起86の基端部86aに形成されたT字状の嵌合部89をバックボード40の内面44に形成されたレール部49に嵌合させることによって該風向変更突起86をバックボード40に固定してもよい。
【0037】
なお、本発明は、要旨を逸脱しない範囲内でその他種々の実施形態が考えられるものである。
上記実施形態では、支持面形成部材がネット20である例を示したが、支持面形勢部材は、その貫通方向に通気可能な通気構造を有するものであれば、ネットに限定されず、パッドで形成することもできる。例えば、発泡ウレタン等のパッドに該パッドの厚さ方向に貫通する通気孔を形成して通気構造を設け、通気可能な織物、編み物、或いは穿孔を有する皮革等の表皮で被覆することによっても支持面構成部材を形成することができる。
また、シートバック12とヘッドレスト16とを連続的に形成し、シートバック12の下部から空間部30に送り込まれた風Aの向きを変えてヘッドレスト16の支持面からも吹出す構成としてもよい。
また、空間部30の風の流れを生じさせる基端部は、空間部30の下部に限らず、側部、或いは上部に設定することも可能である。
また、本発明は、シートバックに限らず、シートクッションに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 シート
12 シートバック
12a 支持面
20 ネット(支持面形成部材)
22 シートフレーム
30 空間部
32,33,34 風向変更突起
40 バックボード
42 裏面構成部(ボード部材)
44 内面
46 開口部
50 送風装置
62,63 風向変更突起
62c 間隙
65,66,67 風向変更突起
65a,66a 隙間
72,73 風向変更突起
74 風向変更板
82,83 風向変更突起
84 風向変更板
86 風向変更突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者を支持する支持面から風が吹出す車両用シートであって、
前記支持面を形作る支持面形成部材と、該支持面形成部材との間に風が流通することのできる空間部を形成して前記支持面形成部材から離間して配置する面形状のボード部材とを備えており、前記支持面形成部材は前記支持面を貫通する方向に通気可能な通気構造を有し、前記空間部内に前記ボード部材の面形状に沿った流れの風を送り込む送風装置が該空間部の風の流れを生じさせる基端部に設けられており、前記面形状のボード部材の前記支持面形成部材と対向する内面には、前記送風装置により前記空間部に送り込まれ該空間部内を流れる風の向きを前記支持面形成部材を貫通する方向へ変更することのできる風向変更突起が前記空間部内に張り出して設けられており、前記送風装置により前記空間部の基端部から該空間部に送り込まれた風が前記風向変更突起により向きを変えられて前記支持面形成部材の通気構造を介して前記支持面から吹出す構成であることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記支持面形成部材はシートフレームに張設されたネット材であり、該ネット材の網目構造により前記通気構造が構成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記風向変更突起は、前記送風装置により前記空間部の基端部から該空間部に送り込まれた風の流れに対する角度を調整可能に設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の車両用シートであって、
前記風向変更突起は、前記送風装置により前記空間部の基端部から該空間部に送り込まれる風の流れる方向に間隔を置いて複数並んで設けられており、風上側に位置する風向変更突起には風の一部が通過するのを許容し、該風の一部を風下側に位置する風向変更突起へ案内する隙間が形成されているのを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の車両用シートであって、
前記風向変更突起は、前記支持面形成部材の方から荷重が加わると弾性的に変形可能な構成であることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−162935(P2010−162935A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4600(P2009−4600)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】