説明

車両用シート

【課題】シートバックの前倒し時に、シートバックの傾倒速度が速くなってしまうことを防止できる車両用シートを得る。
【解決手段】リヤシート10では、図1に示されるように、シートバック14が使用位置に配置され且つ復帰機構58のセクタギヤ60が待機位置に配置された状態で、リクライニング機構のロック解除レバー40が乗員によって操作されると、ロック機構によるシートバック14のロックが解除される。これにより、シートバック14が渦巻きばねの付勢力によって前倒れ位置へ向けて傾倒し始めるが、このとき、復帰機構58の制御回路は、シートバック14の凸部54をセクタギヤ60の当接部84に当接させつつセクタギヤ60を復帰準備位置へと回転させる。これにより、シートバック14は、セクタギヤ60の回転速度に応じた速度でゆっくりと傾倒する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに係り、特にシートバックを前倒れ位置から使用位置へと復帰させる復帰機構を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されたシート装置では、リクライニング装置に設けられたロック機構のロックが解除されることにより、シートバックが渦巻きばねの付勢力によって使用位置(起立位置)から前倒れ位置へと傾倒される。一方、シートバックが前倒れ位置から使用位置へと引き起こされる際には、回動装置(復帰機構)によってシートバックが駆動される。この回動装置は、モータによってセクタギヤを回転させると共に、当該セクタギヤに設けられた切欠部をシートバック側に設けられた凸部に当接させてシートバックを使用位置へと復帰させる。そして、シートバックが使用位置においてロック機構によりロックされると、セクタギヤが元の位置へと回転され、セクタギヤの切欠部がシートバックの凸部から離間する。これにより、再びロック機構のロックが解除された際には、使用位置から前倒れ位置へのシートバックの傾倒が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−7386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如きシート装置では、シートバックが前倒しされる際には、渦巻きばねの付勢力に加えて、自重によりシートバックが加速する。これにより、シートバックの前倒れ時の傾倒速度が速くなってしまう。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートバックの前倒し時に、シートバックの傾倒速度が速くなってしまうことを防止できる車両用シートを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、車体側に取り付けられるシートクッションと、前記シートクッションに対して使用位置と前倒れ位置との間で傾倒可能に連結されると共に、前記前倒れ位置へ向けて付勢されたシートバックと、前記シートバックを前記使用位置にて傾倒不能にロックすると共に、当該ロックを解除可能とされたロック機構と、モータ及び前記モータによって復帰準備位置と復帰完了位置との間で回転される回転部材を有し、前記シートバックが前記前倒れ位置に配置され且つ前記回転部材が前記復帰準備位置に配置された状態で前記回転部材を前記復帰完了位置へと回転させることにより前記回転部材に設けられた当接部を前記シートバックに設けられた被当接部に当接させて前記シートバックを前記使用位置へと復帰させると共に、前記ロックが解除された際には前記シートバックの前記被当接部を前記当接部に当接させつつ前記回転部材を前記復帰準備位置へと回転させる復帰機構と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の車両用シートでは、シートバックが前倒れ位置に配置され且つ復帰機構の回転部材が復帰準備位置に配置された状態で、復帰機構がモータによって回転部材を復帰完了位置へと回転させると、回転部材に設けられた当接部がシートバックに設けられた被当接部に当接して、シートバックが使用位置へと復帰される。シートバックが使用位置に到達すると、ロック機構によってシートバックが傾倒不能にロックされる。これにより、シートバックを前倒れ位置から使用位置へと自動的に復帰させることができる。
【0008】
一方、ロック機構のロックが解除されると、前倒れ位置へ向けて付勢されたシートバックが前倒れ位置へ向けて傾倒し始めるが、このとき、復帰機構は、シートバックの被当接部を回転部材の当接部に当接させつつ回転部材を前記復帰準備位置へと回転させる。これにより、シートバックは、回転部材の回転速度に応じた速度で傾倒するので、シートバックの傾倒速度が速くなってしまうことを防止できる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記復帰機構は、前記回転部材を前記復帰完了位置へ回転させた後で、前記回転部材を前記復帰準備位置と前記復帰完了位置との間の待機位置へと回転させて前記当接部を前記被当接部から離間させると共に、その後に前記ロックが解除されて前記シートバックが前記前倒れ位置側へ傾倒することにより前記被当接部が前記当接部に当接することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートでは、復帰機構は、回転部材を復帰完了位置へ回転させた後、つまり、シートバックを前倒れ位置から使用位置へと復帰させてロック機構によりロックした後で、回転部材を復帰準備位置と復帰完了位置との間の待機位置へと回転させる。これにより、回転部材の当接部がシートバックの被当接部から離間する。そして、その後にロック機構のロックが解除されて、シートバックが付勢力により前倒れ位置側へ傾倒すると、シートバックの被当接部が回転部材の当接部に当接する。この当接状態で、復帰機構が回転部材を復帰準備位置へと回転させることにより、当該回転部材の回転速度に応じた速度でシートバックが傾倒する。
【0011】
ここで、本発明では、上述の如くシートバックが使用位置にてロックされた後で、回転部材が復帰準備位置と復帰完了位置との間の待機位置へと回転されることにより、回転部材の当接部がシートバックの被当接部から離間する(シートバックと回転部材との係合が解除される)。これにより、シートバックが使用位置においてロックされる際のロック位置のばらつきにより、一度ロックを解除した後でも確実に再度ロックさせることができるのでロック機構の信頼性が損なわれることがない。また復帰機構に負荷が掛かることを防止できるので、復帰機構の耐久性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記回転部材の前記待機位置は、前記シートバックが前記使用位置と前記前倒れ位置との間において前記シートクッションに対して直立する位置よりも前記前倒れ位置側へ傾倒することにより、前記被当接部が前記当接部と当接する位置とされていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の車両用シートでは、前倒れ位置へ向けて付勢されたシートバックが、使用位置と前倒れ位置との間においてシートクッションに対して直立する位置よりも前倒れ位置側へ傾倒すると、自重によってシートバックが加速し始めるが、これと略同時に待機位置から復帰準備位置へ向けて回転し始める回転部材の当接部と、シートバックの被当接部とが当接することにより、上述の加速が阻止される。このように、シートバックの加速を阻止すべき範囲である直立位置よりも前倒れ位置側に回転部材の待機位置が設定されているので、シートバックの傾倒初期の速度が回転部材によって不必要に制限されることがなく好適である。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記復帰機構は、前記回転部材を前記復帰準備位置へと回転させる際には、前記シートバックが前記前倒れ位置に到達する前に、前記モータへの給電を制御して前記回転部材の回転速度を低下させることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の車両用シートでは、復帰機構は、回転部材を復帰準備位置へと回転させる際、つまり、シートバックを前倒れ位置へと傾倒させる際には、シートバックが前倒れ位置に到達する前に、モータへの給電を制御して回転部材の回転速度を低下させる。これにより、シートバックが前倒れ位置に到達する際のシートバックの傾倒速度を効果的に低下させることができる。換言すれば、シートバックが前倒れ位置に到達する際のシートバックの傾倒速度を低下させつつ、シートバックが前倒れ位置に到達する直前までのシートバックの傾倒速度(すなわち回転部材の回転速度)を高く設定することができる。したがって、シートバックの前倒しを迅速に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、シートバックの前倒し時に、シートバックの傾倒速度が速くなってしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るリヤシートの主要部の構成を示し、シートバックが使用位置に配置されると共に、セクタギヤが待機位置に配置された状態の側面図である。
【図2】図1に示されるリヤシートにおいて、シートバックが前倒れ位置へ向けて傾倒すると共に、セクタギヤが復帰準備位置へ向けて回転している状態を示す側面図である。
【図3】図1に示されるリヤシートにおいて、シートバックが前倒れ位置に配置されると共に、セクタギヤが復帰準備位置に配置された状態を示す側面図である。
【図4】図1に示されるリヤシートにおいて、シートバックが使用位置に配置されると共に、セクタギヤが復帰完了位置に配置された状態を示す側面図である。
【図5】図1に示されるリヤシートにおけるシートバックフレームを含む周辺部材の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図5を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シートとしてのリヤシート10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印Wは、それぞれリヤシート10の前方向、上方向、幅方向を示している。
【0019】
図1〜図4に示されるように、本実施形態に係るリヤシート10は、シートクッション12とシートバック14とを有している。シートバック14は、シートクッション12の後端側で車体に連結されている。
【0020】
図5に示されるように、シートバック14の骨格を構成するシートバックフレーム16は、正面視で略矩形の枠状に形成されたフレーム本体22と、フレーム本体22における下端側の両側部に固定された左右一対のサイド部18、20とを有している。サイド部18、20は、板金材料によって形成されており、フレーム本体22は、パイプ材によって形成されている。
【0021】
サイド部20の下端側におけるシート幅方向外側面には、シートバックフレーム16の一部を構成するシートバック側ブラケット52が固定されている。このシートバック側ブラケット52は、車体の床部に締結固定されたベースプレート62の上端部に、支持軸80を介して回転可能に連結されている。これにより、シートバックフレーム16のシート左方側が支持軸80及びベースプレート62を介して車体床部に回転可能に連結されている。
【0022】
サイド部18の下端部は、リクライニング機構24を介してシート右方側のシートクッション側ブラケット26に連結されている。このシートクッション側ブラケット26は、シート左方側のシートクッション側ブラケット28と対をなしており、これらのシートクッション側ブラケット26、28の後端部(上端部)は、連結部材29によってシート幅方向に連結されている。これらのシートクッション側ブラケット26、28は、車体の床部に締結固定されており、これらのシートクッション側ブラケット26、28の上側には、シートクッション12(図5では図示省略)が取り付けられている。
【0023】
上述のリクライニング機構24は、従来より使用されている一般的なものであり、サイド部18の下端部とシートクッション側ブラケット26との間に配置されたリクライナ32を備えている。
【0024】
このリクライナ32(リクライニング機構24)は、図示しないシートクッション12に対するシートバック14の傾斜角度の調節及び傾倒(回動)を可能とするものであり、シートバック14は、シートクッション12に対して図1及び図4に示される使用位置と図2に示される前倒れ位置との間、及び前記使用位置と当該使用位置よりも後方に設定された後倒れ位置(図示せず)との間で傾倒可能とされている。上記使用位置においては、シートバック14がシートクッション12に対して略起立した状態になる。また、上記前倒れ位置においては、シートバック14がシートクッション12の上側に略平行に重なり合う。これにより、シートバック14の背面をテーブルとして使用したり、荷室の一部として使用することができる。また、上記後倒れ位置においては、シートバック14がシートクッション12に対して後方側にリクライニングする。これにより、乗員は安楽姿勢をとることができる。
【0025】
リクライナ32には、周知のロック機構38が設けられており、シートバック14が使用位置に配置された状態では、前記ロック機構38によってシートバック14が傾倒不能にロック(拘束)される。このロック機構38には、シャフト36及び前記支持軸80の軸心部を貫通した連結軸37を介してロック解除レバー40が連結されている。このロック解除レバー40は、前述したベースプレート62に対してシート幅方向外側に配置されており、当該ロック解除レバー40が操作されることにより、ロック機構38によるシートバック14のロックが解除される。これにより、使用位置から前倒れ位置へのシートバック14の傾倒が可能になると共に、使用位置と後倒れ位置との間においてシートバック14の傾斜角度を多段階に調節することが可能になる。なお、図1〜図4では説明の都合上、ロック解除レバー40の一部のみが図示されている。
【0026】
上述のロック解除レバー40は、ベースプレート62との間に掛け渡された付勢スプリング41によって常にロック機構38をロックする方向に付勢されており、乗員がロック解除レバー40を解放すると、ロック機構38がロック状態となり、シートバック14が使用位置と後倒れ位置との間の任意の位置(角度)で拘束される。但し、シートバック14が使用位置よりも前倒れ位置側へ傾倒した状態では、ロック機構38によるロックが解除された状態が維持されるようになっている。
【0027】
また、上述のシートバック14は、シートバックフレーム16のサイド部18とシートクッション側ブラケット26との間に配置された左右一対の渦巻きばね42の付勢力によって前倒れ位置へ向けて付勢されている。このため、シートバック14が使用位置又は当該使用位置よりも後倒れ位置側に配置(拘束)された状態でロック解除レバー40が操作されると、シートバック14が渦巻きばね42の付勢力によって前倒れ位置側へ傾倒するようになっている。
【0028】
さらに、ロック解除レバー40の後端側には、アーム部46が形成されている。このアーム部46は、当該アーム部46よりもシート後方側に配置された第1リミットスイッチ48に対応している。この第1リミットスイッチ48は、ベースプレート62に固定された取付ブラケット50に取り付けられており、ロック機構38がロックした状態では、アーム部46と係合する。これにより、第1リミットスイッチ48がON状態となる。
【0029】
またさらに、前述したシートバック側ブラケット52には、シート幅方向外側へ向けて突出した凸部54(被当接部)が設けられている。この凸部54は、復帰機構58に設けられたセクタギヤ60に対応している。
【0030】
復帰機構58は、シートバック14を前倒れ位置から使用位置へと自動的に復帰させるための装置であり、前述したベースプレート62に取り付けられた保持ブラケット64(図5参照。図1〜図4では図示省略)を備えている。保持ブラケット64は、ベースプレート62に対してシート幅方向内外側に配置されており、この保持ブラケット64の上端部には、第2リミットスイッチ56が取り付けられている。この第2リミットスイッチ56は、セクタギヤ60に対応している。また、当該保持ブラケット64よりもシート幅方向内側には、モータユニット66が配置されている。このモータユニット66は、モータ68とギヤボックス70とを備えており、ギヤボックス70がボルトによって保持ブラケット64に固定されている。
【0031】
モータユニット66の出力軸72は、ギヤボックス70からシート幅方向外側へ延びており、保持ブラケット64を貫通している。この出力軸72の先端側には、保持ブラケット64とベースプレート62との間に配置されたモータギヤ74が固定されている。このモータギヤ74は、伝達ギヤ76と噛み合っており、この伝達ギヤ76は、減速ギヤ78と噛み合っている。これらの伝達ギヤ76及び減速ギヤ78は、保持ブラケット64及びベースプレート62によって回転自在に支持されている。
【0032】
さらに、減速ギヤ78のシート幅方向内側には、図示しない小径ギヤが同軸的かつ一体的に設けられており、この小径ギヤは、回転部材としてのセクタギヤ60と噛み合っている。このセクタギヤ60は、前述した支持軸80によって回転自在に支持されている。この支持軸80は、リクライナ32と同軸上に配置されており、セクタギヤ60は、シートクッション12に対するシートバック14の傾倒中心(回動中心)と同軸的に配置されている。なお、セクタギヤ60、モータギヤ74、伝達ギヤ76、減速ギヤ78に対するシートバック側ブラケット52及びベースプレート62のシート幅方向の配置は図5に示される通りであるが、図1〜図4では説明の都合上、シートバック側ブラケット52及びベースプレート62の手前側に、セクタギヤ60、モータギヤ74、伝達ギヤ76、減速ギヤ78が図示されている。
【0033】
上述のセクタギヤ60は、モータユニット66の回転力がモータギヤ74、伝達ギヤ76、減速ギヤ78及び図示しない小径ギヤを介して伝達されることにより、図3に示される復帰準備位置と図4に示される復帰完了位置との間で回転される。なお、前記復帰準備位置は、シートバック14の前倒れ位置に対応しており、前記復帰完了位置は、シートバック14の使用位置に対応している。この復帰準備位置と復帰完了位置は、セクタギヤ60の回転方向において、所定回転ストローク離れた位置とされている。
【0034】
このセクタギヤ60には、切欠部82が設けられており、この切欠部82が前述したシートバック側ブラケット52の凸部54と係合する構成になっている。つまり、シートバック側ブラケット52の凸部54は、セクタギヤ60の切欠部82の内側に配置されており、当該切欠部82の一端である当接部84の回転軌跡内に位置している。
【0035】
さらに、セクタギヤ60には、係合突起86が設けられている。この係合突起86は、シートバック14が前倒れ位置に配置され且つセクタギヤ60が復帰準備位置に配置された状態(図3図示状態)において、第2リミットスイッチ56と係合する。これにより、第2リミットスイッチ56がON状態となる。このように係合突起86が第2リミットスイッチ56と係合した状態では、セクタギヤ60の当接部84が、シートバック側ブラケット52の凸部54から所定距離だけ離間して配置されるようになっている。
【0036】
尚、セクタギヤ60における上述の待機位置(図1に示される位置)は、復帰完了位置の付近に設定されている。詳細には、シートバック14が使用位置と前倒れ位置との間においてシートクッション12に対して直立する位置(以下、直立位置という)よりも前倒れ位置側へ僅かに傾倒することにより、凸部54が当接部84と当接する位置とされており、復帰準備位置と復帰完了位置との間の中間位置よりも復帰完了位置側に設定されている。
【0037】
ここで、上記第2リミットスイッチ56及び前述した第1リミットスイッチ48は、復帰機構58を構成する図示しない制御回路に電気的に接続されている。この制御回路には、モータユニット66のモータ68が電気的に接続されると共に、図示しない操作スイッチが電気的に接続されている。この操作スイッチは、例えば車両の運転席の近傍に配設されており、上記制御回路は、上記操作スイッチ、第1リミットスイッチ48、第2リミットスイッチ56のON・OFF状態に基づいて、モータ68の作動を制御する構成になっている。
【0038】
具体的には、図1に示されるように、シートバック14が使用位置に配置され且つセクタギヤ60が待機位置に配置された状態で、リクライニング機構24のロック解除レバー40が操作されると、シートバック14が渦巻きばね42の付勢力により前倒れ位置へ向けて傾倒し始める(図2の矢印A参照)。またこのとき、図2に示されるように、ロック解除レバー40のアーム部46が第1リミットスイッチ48から離間し、第1リミットスイッチ48がOFFになる。これにより、制御回路は、モータ68を正方向に回転させることにより、セクタギヤ60を復帰準備位置へと回転させる(図2の矢印B参照)。この場合、セクタギヤ60の回転速度は、一定とされており、渦巻きばね42の付勢力によるシートバック14の傾倒速度よりも十分に遅く設定されている。このため、セクタギヤ60が復帰準備位置へ向けて回転している途中において、シートバック側ブラケット52の凸部54がセクタギヤ60の当接部84と当接する(図2参照)。このように凸部54が当接部84と当接した後は、シートバック14がセクタギヤ60と共にゆっくりと回転(傾倒)する。
【0039】
そして、シートバック14が図3に示される前倒れ位置に到達すると、シートクッション12側に設けられた図示しないストッパがシートバック14に当接し、当該ストッパによってシートバック14が前倒れ位置に保持される。一方、セクタギヤ60は、その後も更に復帰準備位置へ向けて回転する。これにより、セクタギヤ60の当接部84がシートバック側ブラケット52の凸部54から離間する。そして、セクタギヤ60が図3に示される復帰準備位置に到達すると、セクタギヤ60の係合突起86が第2リミットスイッチ56と係合する。これにより、第2リミットスイッチ56がON状態になると、制御回路は、モータ68への給電を遮断してモータ68すなわちセクタギヤ60を停止させる。これにより、シートバック14の前倒しが完了する。
【0040】
一方、図3に示される状態で、制御回路に接続された操作スイッチが乗員によって操作されると、制御回路は、モータ68を逆方向に回転させることによりセクタギヤ60を復帰完了位置へと回転させる(図4の矢印C参照)。これにより、セクタギヤ60の当接部84がシートバック側ブラケット52の凸部54に当接すると、シートバック14がセクタギヤ60と共に使用位置へ向けて回動(復帰)する(図4の矢印D参照)。そして、図4に示されるように、セクタギヤ60が復帰完了位置に到達すると共にシートバック14が使用位置に到達すると、リクライニング機構24のロック機構38がシートバック14を傾倒不能にロックする。
【0041】
またこのとき、ロック解除レバー40のアーム部46が第1リミットスイッチ48と係合し、第1リミットスイッチ48がONになる。第1リミットスイッチ48がONになると、制御回路は、モータ68の回転方向を逆方向から正方向に反転させることにより、セクタギヤ60を待機位置へと回転させる。そして、一定の角度だけ反転すると、制御回路は、モータ68への給電を遮断してモータ68すなわちセクタギヤ60を停止させるようになっている。なお、制御回路は、例えばモータ68の回転方向を反転させてからの経過時間をタイマで検知し、当該経過時間が予め設定された時間になるとモータ68への給電を遮断する。或いは、制御回路は、センサによってセクタギヤ60の角度を検知することにより、モータ68への給電を遮断するタイミングを判断する。
【0042】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0043】
上記構成のリヤシート10では、図1に示されるように、シートバック14が使用位置に配置され且つ復帰機構58のセクタギヤ60が待機位置に配置された状態で、リクライニング機構24のロック解除レバー40が乗員によって操作されると、ロック機構38によるシートバック14のロックが解除される。これにより、シートバック14が渦巻きばね42の付勢力によって前倒れ位置へ向けて傾倒し始めるが、シートバック14の凸部54がセクタギヤ60の当接部84と当接することにより、シートバック14の傾倒速度が低下する。
【0044】
またこのとき、復帰機構58の制御回路は、シートバック14の凸部54をセクタギヤ60の当接部84に当接させつつセクタギヤ60を復帰準備位置へと回転させる。これにより、シートバック14は、セクタギヤ60の回転速度に応じた一定の速度でゆっくりと前倒れ位置へ向けて傾倒するので、シートバック14の傾倒速度が速くなりすぎることを防止できる。したがって、乗員に危害感を与えることを低減又は防止できる。また、シートバック14が前倒れ位置において図示しないストッパに当たった際の当接音(衝撃音)を小さくすることができるので、高級感が損なわれることを低減又は防止できる。
【0045】
しかも、セクタギヤ60と共に前倒れ位置へ向けて傾倒するシートバック14は、渦巻きばね42の付勢力及び自重によって凸部54をセクタギヤ60の当接部84に当接させているだけであり、セクタギヤ60に対する使用位置側への相対的な傾倒を許容されている。したがって、仮にシートバック14とシートクッション12との間に物等が挟まれた場合でも当該物等がモータ68の駆動力によって潰されることを防止することができる。つまり、シートバック14の前倒れ時の傾倒速度を一定にする方策としては、シートバック14をギヤ等を介してモータにより直接駆動する構成(所謂パワーシート構造)を採用することが考えられるが、この場合、シートバック14とシートクッション12との間に挟まれた物等がモータの駆動力によって潰されてしまう。この点、本リヤシート10では、物等がシートバック14とシートクッション12との間に挟まれる力は、渦巻きばね42の付勢力及びシートバック14の自重のみであるため、物等が潰されることを回避でき、安全である。
【0046】
また、このリヤシート10では、セクタギヤ60が待機位置に配置された状態(図1図示状態)では、セクタギヤ60の当接部84がシートバック14の凸部54から離間して配置される(シートバック14とセクタギヤ60との係合が解除される)。これにより、シートバック14が使用位置においてロック機構38によりロックされる際のロック位置のばらつきにより、一度ロックを解除した後でも確実に再度ロックさせることができるのでロック機構の信頼性が損なわれることがない。また、シートバック14の使用時における乗員からの荷重等が、セクタギヤ60を介して復帰機構58に負荷されることを防止できるので、復帰機構58の耐久性を向上させることができる。
【0047】
さらに、このリヤシート10では、セクタギヤ60の待機位置は、シートバック14が渦巻きばね42の付勢力によって直立位置よりも前倒れ位置側へ僅かに傾倒することにより、シートバック14の凸部54がセクタギヤ60の当接部84と当接する位置とされている。つまり、シートバック14が直立位置よりも前倒れ位置側へ傾倒すると、自重によってシートバック14が加速し始めるが、これと略同時にシートバック14の凸部54がセクタギヤ60の当接部84と当接することにより、シートバック14の加速が阻止される。このように、シートバック14の加速を阻止すべき範囲である直立位置よりも前倒れ位置側にセクタギヤ60の待機位置が設定されているので、シートバック14の傾倒初期の速度がセクタギヤ60によって不必要に制限されることがなく好適である。
【0048】
なお、上記実施形態においては、セクタギヤ60の待機位置が、復帰完了位置付近に設定された構成にしたが、請求項1及び請求項2に係る発明はこれに限らず、セクタギヤ60の待機位置は、シートバック14の前倒れ時に、凸部54がセクタギヤ60の当接部84と当接する位置であれば、復帰完了位置と復帰準備位置との間において適宜設定変更することができる。
【0049】
また、上記実施形態においては、復帰機構58の制御回路は、セクタギヤ60を復帰完了位置へと回転させた後で、セクタギヤ60を待機位置へと回転させて当接部84を凸部54から離間させる構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、待機位置へのセクタギヤ60の回転が省略された構成、つまり、セクタギヤ60が復帰完了位置において当接部84を凸部54に当接させたまま待機する構成にしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、ロック解除レバー40のアーム部46が第1リミットスイッチ48から離間して第1リミットスイッチ48がOFFになると、復帰機構58の制御回路がモータ68を正方向に回転させてセクタギヤ60を待機位置から復帰準備位置へと回転させる構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、復帰装置58の制御回路がモータ68を正方向に回転させるタイミングは、適宜設定変更することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、ロック解除レバー40を乗員が直接操作することによりロック機構38のロックが解除される構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、シートバック14の上部に操作部材を設けると共に、当該操作部材とロック解除レバー40をワイヤ等により連結し、当該操作部材の操作によってロック解除レバー40を操作できるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、リクライニング機構24のロック解除レバー40を乗員が手動で操作する構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、ロック解除レバー40を駆動するアクチュエータを設けると共に、当該アクチュエータを作動させるスイッチを運転席の近傍などに設定し、当該スイッチの操作によりロック機構38のロックが自動(電動)で解除される構成にしてもよい。この場合、例えば、復帰機構58の制御回路が、上記電動解除の信号等の入力を受けて、セクタギヤ60を待機位置から復帰準備位置へと回転させる構成になる。
【0053】
さらに、上記実施形態では、モータ68の回転速度が一定に設定された構成にしたが、請求項4に係る発明においては、復帰機構58の制御回路がモータ68の回転速度を変更する構成にしてもよい。具体的には、復帰機構58の制御回路がセクタギヤ60を復帰準備位置へと回転させる際、つまり、シートバック14を前倒れ位置へと傾倒させる際に、シートバック14が前倒れ位置に到達する直前で、モータ68の回転速度(すなわちセクタギヤ60の回転速度)を低下させるようにしてもよい。この場合、モータ68の回転速度を低下させるタイミングは、モータ68への給電開始からの時間をタイマ回路により検出したり、シートバック14が前倒れ位置に接近したことをセンサなどにより検出することで設定することができる。このような構成にすることで、シートバック14が前倒れ位置に到達する際のシートバック14の傾倒速度を効果的に低下させることができる。換言すれば、シートバック14が前倒れ位置に到達する際のシートバック14の傾倒速度を低下させつつ、シートバック14が前倒れ位置に到達する直前までのシートバック14の傾倒速度(すなわちセクタギヤ60の回転速度)を高く設定することができる。これにより、シートバック14の前倒しを迅速に行うことが可能になる。
【0054】
また、上記実施形態では、本発明が車両のリヤシート10に対して適用された場合について説明したが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、車両のフロントシートに対しても適用することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、シートバック14のロック機構38がリクライニング機構24に設けられた構成としたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、リクライニング機構とは別体の単純なシートバックのロック機構を採用してもよい。
【0056】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0057】
10 リヤシート(車両用シート)
12 シートクッション
14 シートバック
38 ロック機構
54 凸部(被当接部)
58 復帰機構
60 セクタギヤ(回転部材)
68 モータ
84 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に取り付けられるシートクッションと、
前記シートクッションに対して使用位置と前倒れ位置との間で傾倒可能に連結されると共に、前記前倒れ位置へ向けて付勢されたシートバックと、
前記シートバックを前記使用位置にて傾倒不能にロックすると共に、当該ロックを解除可能とされたロック機構と、
モータ及び前記モータによって復帰準備位置と復帰完了位置との間で回転される回転部材を有し、前記シートバックが前記前倒れ位置に配置され且つ前記回転部材が前記復帰準備位置に配置された状態で前記回転部材を前記復帰完了位置へと回転させることにより前記回転部材に設けられた当接部を前記シートバックに設けられた被当接部に当接させて前記シートバックを前記使用位置へと復帰させると共に、前記ロックが解除された際には前記シートバックの前記被当接部を前記当接部に当接させつつ前記回転部材を前記復帰準備位置へと回転させる復帰機構と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記復帰機構は、前記回転部材を前記復帰完了位置へ回転させた後で、前記回転部材を前記復帰準備位置と前記復帰完了位置との間の待機位置へと回転させて前記当接部を前記被当接部から離間させると共に、その後に前記ロックが解除されて前記シートバックが前記前倒れ位置側へ傾倒することにより前記被当接部が前記当接部に当接することを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記回転部材の前記待機位置は、前記シートバックが前記使用位置と前記前倒れ位置との間において前記シートクッションに対して直立する位置よりも前記前倒れ位置側へ傾倒することにより、前記被当接部が前記当接部と当接する位置とされていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記復帰機構は、前記回転部材を前記復帰準備位置へと回転させる際には、前記シートバックが前記前倒れ位置に到達する前に、前記モータへの給電を制御して前記回転部材の回転速度を低下させることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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