説明

車両用シート

【課題】シェルの破損を防止することができる三層構造の車両用シートを提供する。
【解決手段】背もたれ部分を構成するシートバック1bを備え、このシートバック1bが、クッション材30と、このクッション材30を支持するシェル20と、このシェル20を支持するシートフレーム10と、を有する車両用シートであって、前記シートフレーム10と前記シェル20は所定位置で接続されるとともに、前記シートフレーム10にはブラケット40が固定され、このブラケット40は、前記シートフレーム10と前記シェル20の接続部分のうちの最上に位置する部分21より上側で前記シェル20に接続されている車両用シート1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポート性能を高めるためのシェルを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、いわゆる三層構造の車両用シートが記載されている。かかる車両用シートは、一般的な車両用シートが備えるシートフレーム(シートの骨格)およびクッション材(パッド)に加え、乗員に対するサポート性能を高めることなどを目的として用いられるシェルを備える。このシェルは、シートフレームに取り付けられるとともに、表面がクッション材によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−540224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される車両用シートは、シートのシートバック(背もたれ部)の構成に次のような問題がある。シートバック部分を構成するシェルは、同じくシートバック部分を構成するシートフレームに取り付けられているが、高さ方向における中央部分より上方には、シェルとシートフレームの接続部分が存在しない。つまり、シェルの上部は、シートフレームに支持された状態ではないから、シェルの上部にかかる荷重によってシェルが大きく撓んで破損するおそれがある。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、シェルの破損を防止することができるいわゆる三層構造の車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、背もたれ部分を構成するシートバックを備え、このシートバックが、クッション材と、このクッション材を支持するシェルと、このシェルを支持するシートフレームと、を有する車両用シートにおいて、前記シートフレームと前記シェルは所定位置で接続されるとともに、前記シートフレームにはブラケットが固定され、このブラケットは、前記シートフレームと前記シェルの接続部分のうちの最上に位置する部分より上側で前記シェルに接続されていることを要旨とする。
【0007】
本発明にかかる車両用シートは、シートフレームとシェルとの接続部分の最上に位置する部分より上側で、シートフレームに固定されたブラケットがシェルを支持する。つまり、シェルの上方寄りの部位がブラケットに支持された構成となるため、シェルの上部が大きく撓んでシェルが破損してしまうことを防止することができる。
【0008】
この場合、前記シートフレームに固定されたブラケットは、シートフレームに固定されたヘッドレストステーにも固定されていればよい。
【0009】
かかる構成とすれば、ブラケットはシートフレームとヘッドレストステーの両方に支持された状態となる。つまり、既存の部品であるヘッドレストステーを利用して、ブラケットがより安定した状態(荷重などによって移動したり、変形したりしにくい状態)で取り付けられた構成である。このようにブラケットが安定した状態で取り付けられていれば、シェルが大きく撓んで破損してしまうことを防止する効果がさらに高まる。
【0010】
また、前記ヘッドレストステーは、前記シートフレームに固定された幅方向に所定の間隔を隔てて上下方向に延びる二本の軸状部と、これら二本の軸状部を繋ぐ連結部と、を有し、前記ブラケットは、一方の前記軸状部および前記シートフレームに固定された第一のブラケットと、他方の前記軸状部および前記シートフレームに固定された第二のブラケットと、を有していればよい。
【0011】
このように、連結部で連結された二本の軸状部を有するヘッドレストステーが用いられる場合、その二本の軸状部のそれぞれを利用して、一方のヘッドレストステーとシートフレームを繋ぐように第一のブラケットを設け、他方のヘッドレストステーとシートフレームを繋ぐように第二のブラケットを設ければよい。このようにすれば、シートフレームとヘッドレストステーの両方に固定された二つのブラケットによってシェルが支持された状態となるから、シェルが大きく撓んで破損してしまうことを防止する効果がさらに高まる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シェルの上方寄りの部位がブラケットに支持された構成となるため、シェルの上部が大きく撓んでシェルが破損してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両用シートの分解斜視図である。
【図2】図1に示した車両用シートが備えるシートフレーム(支持部)、ブラケット、およびヘッドレストステーを拡大して示した図である。
【図3】シェルに対するシートフレーム(支持部)、ブラケット、およびヘッドレストステーの位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態にかかる車両用シート1について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、単に上下方向とは車両用シート1の上下方向(図1において示したZ方向)をいい、単に前後方向とは車両用シート1の前後方向(図1において示したY方向)をいい、単に幅方向とは車両用シート1の幅方向(図1において示したX方向)をいう。
【0015】
本発明の実施形態にかかる車両用シート1について説明する。図1から図3に示すように、車両用シート1は、シートフレーム10と、このシートフレーム10に取り付けられたシェル20と、このシェル20の表面を覆うように取り付けられたクッション材30と、を備える。すなわち、大きく分けてこれら三つの部材で構成されたいわゆる三層構造のシートである。また、本実施形態にかかる車両用シート1は、シートフレーム10に固定されたブラケット40と、図示されないヘッドレストを支持するヘッドレストステー50と、をさらに備える。これらの部材(ヘッドレストステー50の一部を除く)は、図示されない表皮(シートカバー)で覆われている。
【0016】
シートフレーム10は、車両用シート1の骨格を構成する金属製の部材である。シートフレーム10の形状などは特に限定されない。シートフレーム10におけるシートクッション(着座部)を構成する部分は、車両のフロア面に設けられたスライドレールにスライド自在に取り付けられている。これにより、車両用シート1全体が車両のフロア面に対してスライド自在に取り付けられた状態となる。
【0017】
シートフレーム10におけるシートバック(背もたれ部)を構成する部分は、シートバックの幅方向両側に沿って上下方向に延びる軸状の部分(以下骨格部11と称する)が、シートバックの中央やや上方寄り位置で幅方向に延びる部分(以下支持部12と称する)で繋げられた形状を有する。すなわち、当該部分を大まかに見れば略「U」字状である。このシートフレーム10におけるシートバックを構成する部分の高さは、詳細を後述するシェル20の高さよりも低く、シェル20の上部(上端から一定の範囲を占める部分)はシートフレーム10と前後方向において重ならない。また、シートフレーム10におけるシートバックを構成する部分は、シェル20と複数箇所で接続されている。このシートフレーム10とシェル20との接続部分のうちの最上に位置する部分を、以下最上接続部分21と称する。本実施形態では、接続部材13を介して、上下方向に延びる骨格部11とシェル20が接続されている。この最上接続部分21は、シェル20の上下方向における中央付近、かつ、幅方向両側付近に位置する。
【0018】
シェル20は、硬質材料からなる板状の部材である。シェル20の表面は、車両用シート1に着座する者を支持するように中央部分が窪んだ形状となっている。具体的には、車両用シート1のシートクッションを構成する部分のシェル20は、その後方寄りの中央部分が、人間の臀部に合わせた形状に窪み、幅方向外側の部分が上方に迫り出している(いわゆるサイドサポート部が形成されている)。また、シートバック(背もたれ部分)を構成する部分のシェル20は、中央部分が人間の背中に合わせた形状に窪み、幅方向外側の部分が前方に迫り出している(いわゆるサイドサポート部が形成されている)。
【0019】
クッション材30は、例えば発泡体からなる弾性変形可能な柔らかい部材であり、上記シェル20の表面を覆うように取り付けられている。なお、この取付方法は特に限定されない。クッション材30は、車両用シート1の最も表面側(シートクッションであれば上側、シートバックであれば前側)に位置する。
【0020】
ブラケット40は、シートフレーム10の上部に固定された金属製の部材である。このブラケット40は、最上接続部分21よりも上側でシェル20と接続されている。つまり、シートフレーム10と前後方向において重ならないシェル20の上部は、シートフレーム10に固定されたブラケット40によって支持されている。
【0021】
ブラケット40の詳細は次の通りである。本実施形態におけるブラケット40は、第一のブラケット41と第二のブラケット42とを有する。第一のブラケット41と第二のブラケット42は、正面視略「V」字状に屈曲した形状を有し、シートを幅方向に二分する中央線に関し左右対称である。また、第一のブラケット41と第二のブラケット42は、一端がシートフレーム10の支持部12に固定されており、他端が詳細を後述するヘッドレストステー50に固定されている。つまり、シートフレーム10とヘッドレストステー50という二つの部材に支持されている。そして、略「V」字状の屈曲部分が、シェル20の上部に接続されている。つまり、ブラケット40とシェル20の接続部分は、シートフレーム10とシェル20の最上接続部分21より上側に位置する。正面から見て、第一のブラケット41は、シェル20の上部左側を支持し(左上接続部分22)、第二のブラケット42は、シェル20の上部右側(右上接続部分23)を支持している。
【0022】
ヘッドレストステー50は、図示されないヘッドレスト(公知のものが適用できるため説明は省略する)を支持する金属製の部材である。ヘッドレストステー50は、二本の軸状部51,52と、これら二本の軸状部51,52を繋ぐ連結部52と、を有する。軸状部51,52は、その下端がシートフレーム10の支持部12に固定されており、互いに幅方向に所定の間隔を隔てて上下方向に延びる部分である。連結部52は、軸状部51,52の上端同士を繋ぐ。つまり、両軸状部51,52は、一端がシートフレーム10に固定され、他端が連結部52に固定された状態(すなわち、一方の軸状部51が他方の軸状部52に固定され、互いに支え合っている状態)にある。このように、軸状部51,52は、その両端が支持された状態であるため、荷重によって大きく変形することはない。このような構成を有するヘッドレストステー50は、二本の軸状部51,52と連結部52を併せた全体でみれば、正面視略「U」字状である。
【0023】
ヘッドレストステー50の一方の軸状部51には、第一のブラケット41の他端が固定されている。また、ヘッドレストステー50の他方の軸状部52には、第二のブラケット42の他端が固定されている。上述したように、第一のブラケット41および第二のブラケット42の一端は、シートフレーム10の支持部12に固定されており、ヘッドレストステー50の軸状部51,52の下端もシートフレーム10の支持部12に固定されている。つまり、本実施形態では、「シートフレーム10」「ブラケット40」「ヘッドレストステー50」の三部材によってお互いを支え合う構造が構築されている。
【0024】
以上の構成を備える本実施形態にかかる車両用シート1によれば、次のような作用効果が奏される。
【0025】
本実施形態にかかる車両用シート1は、シートフレーム10とシェル20の最上接続部分21より上側で、シートフレーム10に固定されたブラケット40がシェル20を支持する。つまり、シェル20の上部(上端から一定の範囲を占める部分)がブラケット40に支持された構成となるため、シェル20の上部が大きく撓んでシェル20が破損してしまうことを防止することができる。
【0026】
また、シェル20の上部を支持するブラケット40は、シートフレーム10とヘッドレストステー50の両方に支持されている。つまり、既存の部品であるヘッドレストステー50を巧く利用して、ブラケット40をより安定した状態で固定したものである。これにより、ブラケット40が自身にかかる荷重によって移動したり変形したりすることが抑制されるから、そのブラケット40によって支持されるシェル20もより安定した状態となる。つまり、上述したシェル20が大きく撓んで破損してしまうことを防止する効果がさらに高まる。
【0027】
また、本実施形態では、「シートフレーム10」「ブラケット40」「ヘッドレストステー50」の三部材によってお互いを支え合う構造が構築されている。そして、ヘッドレストステー50が二本の軸状部51,52を有することを利用し、シェル20の上部を支持するブラケット40として、一方の軸状部51とシートフレーム10を繋ぐ第一のブラケット41、他方の軸状部52とシートフレーム10を繋ぐ第二のブラケット42、の二つのブラケットを設けている。つまり、シートフレーム10とヘッドレストステー50の両方に固定された二つのブラケット41,42によってシェル20が支持された構成であるから、シェル20が大きく撓んで破損してしまうことを防止する効果がさらに高まる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用シート
1b シートバック
10 シートフレーム
20 シェル
30 クッション材
40 ブラケット
41 第一のブラケット
42 第二のブラケット
50 ヘッドレストステー
51,52 軸状部(一方)
53 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部分を構成するシートバックを備え、このシートバックが、クッション材と、このクッション材を支持するシェルと、このシェルを支持するシートフレームと、を有する車両用シートにおいて、
前記シートフレームと前記シェルは所定位置で接続されるとともに、前記シートフレームにはブラケットが固定され、
このブラケットは、前記シートフレームと前記シェルの接続部分のうちの最上に位置する部分より上側で前記シェルに接続されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記シートフレームに固定されたブラケットは、シートフレームに固定されたヘッドレストステーにも固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ヘッドレストステーは、
前記シートフレームに固定された幅方向に所定の間隔を隔てて上下方向に延びる二本の軸状部と、これら二本の軸状部を繋ぐ連結部と、を有し、
前記ブラケットは、
一方の前記軸状部および前記シートフレームに固定された第一のブラケットと、他方の前記軸状部および前記シートフレームに固定された第二のブラケットと、を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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