説明

車両用シート

【課題】 小物入れのポケットがシートバック側面に突出する。
【解決手段】 サイドエアバッグ用としてシートバック14のアウタ側側面14Oに対応してシートパッドの側面に設けられた第1凹所16−1と同一対称形状の第2凹所16−2を、当該シートパッドの第1凹所との左右対称位置に形成し、シートバックのインナ側側面14Iに位置するこのシートパッドの第2凹所16−2を、車両用シートの小物入れスペースとして規定している。たとえば、右のシート10Rでは、シートバックのアウタ側側面の第1凹所16−1にサイドエアバッグ15が収納され、シートバックのインナ側側面の第2凹所16−2が小物入れスペースとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックの側面に小物入れのポケットを設けた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックの側面に小物入れのポケットを設けて、ガム、サングラス、ペン、ティッシュなどの小物を収納可能とした車両用シートが知られている。
従来においては、樹脂ケースをシートバック側面に取り付けて、または、布地をシートバックの側面でトリムカバーに縫合して、シートバックの側面に小物入れのポケットが形成されている。
【0003】
たとえば、実開平06−053303号公報には、合成樹脂からなる略半円形横断面の樹脂ケースから一対の対向する係止片を側方に延ばし、シートバック側面に設けた孔の背後のフレームに係止片先端の係止爪を係止させて、シートバックの側面に小物入れのポケットを取り付ける構成が記載されている。
また、実開平06−065099号公報には、トリムカバーと同じ布地から略矩形のポケット用の布地を成形し、上端の開口を除いて布地の周縁をトリムカバーに縫合して小物入れのポケットをシートパッド側面に形成する構成が記載されている。
【0004】
さらに、シートバックの側面でなく背面に小物入れのポケットを設けた構成も知られており、たとえば、特開2005−168788号公報には、シートバックの背面に空間を設けて小物入れのポケットとした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06−053303号公報
【特許文献2】実開平06−065099号公報
【特許文献3】特開2005−168788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂ケースをシートバック側面に取り付けて小物入れのポケットとした特許文献1の構成では、ポケット(樹脂ケース)自体がシートバックの側面から常に突出した状態となり、また、略矩形のポケット用の布地をトリムカバーに縫合して小物入れのポケットとした特許文献2の構成では、ポケット(布地)は、小物を入れる前においては突出していないとはいえ、小物を入れるとシートバックの側面から突出した状態となる。このようなシートバックの側面からのポケットの突出は、外観品質の低下を伴うばかりでなく、アームレスト付きのシートにおいてはアームレストの跳ね上げを、また格納シートにおいては格納スペースへのシートの格納を、それぞれ妨げるおそれがある。そのため、このようなシートバック側面に突出するタイプのポケットは、車両用シート、特に自動車用シートへの適応性、汎用性に劣るといわざるを得ない。
【0007】
これに対し、特許文献3の構成では、シートバックの背面に空間を設けてポケットとしているため、シートバック側面へのポケットの突出はなく、外観品質の向上に加えた汎用性、適応性の向上も確実にはかられる。
しかしながら、シートバックの背面にポケット用の空間を設ける構成であると、シートバック内に空間を設ける分、シートバック着座面のシートパッドの厚みを抑えなければならないため、乗り心地の低下を伴うおそれがある。
【0008】
本発明は、外方、特にシートバックの側面に突出しない小物入れを、乗り心地に影響を与えることなく形成可能とした車両用シートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで、サイドエアバッグを有する従来のシートバックにおいては、車両のドア側(アウタ側)にサイドエアバッグが配置されているが、この場合、シートパッド側面に相当範囲の凹所を設けても、それが乗り心地に悪影響をさほど与えていない点に、本発明では着目している。
そこで、請求項1に係る本発明によれば、サイドエアバッグ用としてシートバックのアウタ側側面に対応してシートパッドの側面に設けられた第1凹所と同一対称形状の第2凹所を、当該シートパッドの第1凹所との左右対称位置に形成し、シートバックのインナ側側面に位置するこのシートパッドの第2凹所を、車両用シートの小物入れスペースとして規定している。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明では、シートパッド側面の左右対称位置に設けたうちの、サイドエアバッグの配置されないシートバックのインナ側側面の第2凹所を小物入れスペースとして規定しているため、この第2凹所に小物入れのポケットを配置することで、小物入れ自体が突出しないことは勿論、小物を小物入れに突出することなく収納でき、突出のない側面収納が可能となるばかりでなく、乗り心地にも悪影響を与えることのない車両用シートが提供できる。
また、シートパッド側面の左右対称位置に同一対称形状の第1凹所、第2凹所を形成することにより、シートパッドが左右対称形状に成形できる。つまり、シートバックのシートパッドが左右のシート間で共用化できるため、左右のシート間での部品の共用化により、コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用シートの概略斜視図を示す。
【図2】本発明の車両用シートにおけるシートパッドの概略斜視図を示す。
【図3】枠体の斜視図、図3(A)の線B−Bに沿った断面図をそれぞれ示す。
【図4】変形例に係る枠体をシートパッド側面の凹所に嵌合した右のシートの概略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
サイドエアバッグ用としてシートバックのアウタ側側面に対応してシートパッドの側面に設けられた第1凹所と同一対称形状の第2凹所を、当該シートパッドの第1凹所との左右対称位置に形成し、シートバックのインナ側側面に位置するこのシートパッドの第2凹所を、車両用シートの小物入れスペースとして規定している。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る車両用シートの概略斜視図、図2は本発明の車両用シートにおけるシートパッドの概略斜視図をそれぞれ示す。
図1に示すように、車両用シート10は、シートクッション12と、シートクッションの後端に設けられたシートバック14とを有してなり、自動車室内においては、たとえば左右に分離して一列に2つ配置されている。シートクッション12、シートバック14の基本的な構造は周知であり、骨格となるシートフレームに発泡成形材からなるシートパッドを載せ、通気性のあるトリムカバーでシートパッドを覆ってシートクッション、シートバックが形成される。なお、左右のシートをL、R(10L、10R)で示す。
【0014】
図1に示すように、このシート10(10L、10R)は、車両のドア側に位置するシートバックのアウタ側側面14Oにエアバッグ15を有した、いわゆるサイドエアバッグ付きシートとしてなり、このエアバッグ(サイドエアバッグ)は、シートパッド11の対応側面に形成された第1凹所16−1に収納される(図2参照)。
シートパッドの第1凹所16−1に収納されたエアバッグ15は、シートパッド11と共にトリムカバーによって被覆される。なお、トリムカバーによって被覆されたエアバッグ15は、膨張によるトリムカバーの特定箇所の破断を伴ってシートバック前方に突出されるが、この種のサイドエアバッグの基本構造は公知であり、その基本構造自体はこの発明の趣旨でないため、このエアバッグに対する詳細な説明はここでは省略する。
【0015】
ここで、図2に示すように、この発明においては、サイドエアバッグ用としてのシートパッドの第1凹所16−1と同一対称形状の第2凹所16−2を、当該シートパッドの第1凹所との左右対称位置に形成し、図1に示すように、シートバックのインナ側側面14Iに位置するこのシートパッドの第2凹所16−2を、車両用シート10の小物入れスペースとして規定している。
すなわち、右のシート10Rにおいては、車両のドア側に位置するシートバックのアウタ側側面14Oにサイドエアバッグが配置され、車両のセンタ側に位置するシートバックのインナ側側面14Iに、小物入れ用の開口が形成される。
【0016】
小物入れスペースとなる第2凹所16−2は、図1の右のシート10Rのシートバック左側面に示すように、トリムカバーで覆われることなく開口され、たとえば、ポケットとなる枠体18がシートパッドの第2凹所16−2に嵌合される。
【0017】
図3(A)は枠体の斜視図、図3(B)は図3(A)の線B−Bに沿った断面図を示す。図3(A)(B)に示すように、たとえば、枠体18は成形品とされ、第2凹所16−2の形状に対応した略矩形形状に軟質素材から折り返し片18b付きのフランジを周縁に有して成形され、成形品(枠体)を第2凹所に嵌合し、フランジの折り返し片をトリムカバーの開口周縁に縫合してシートバック側面に小物入れ用のポケットが形成される。成形品(枠体)18の素材となる軟質素材としてはエラストマー、軟質樹脂、成形不織布などの成形可能かつ縫合可能な素材が例示できる。
通常、フランジの折り返し片18bはトリムカバーに対して縫合により連結されるが、縫合に限定されず、熱圧着、接着剤などでフランジをトリムカバーに連結してもよい。また、シートバックフレームへのねじ止め等によって、枠体18を固定する構成としてもよい。
【0018】
たとえば、図1に示すように、小物投入用の開口18aを正面上部(前面上部)に有した略矩形形状に成形品(枠体)18を成形してシートパッドの第2凹所16−2に配置すれば、上部の開口から投入された小物は閉空間の正面下部に収納され、凹所(ポケット)16−2から突出することなく収納される。また、閉空間を規定する正面下部の壁面で凹所(ポケット)内の小物が隠され、隠した状態で小物が収納される。
上部の開口18aを除いて成形品18の正面をトリムカバーで覆って、ポケットの存在を目立たなくした構成としてもよい。
【0019】
上記のように、本発明によれば、シートバックのインナ側側面14Iに凹所としてなる小物入れスペースを設けているため、小物入れがシートバックの側面外方に突出しないことは勿論、小物をポケットから突出することなく収納でき、突出のない側面収納が可能となる。また、シートバック側面に突起がないため、すっきりした外観意匠が得られるばかりでなく、アームレストの跳ね上げやシートの格納に悪影響を与えない小物入れが容易に確保できる。
【0020】
そして、小物のためのポケットがシートバックの側面から突出せず、また、エアバッグの収納スペースとの左右対称位置となるシートバックのインナ側側面に小物入れスペースとなる第2凹部16−2が設けられているにすぎないため、シートバック着座面の弾性を低下させたり、着座者に違和感を与えたりすることなく、小物入れが形成できる。
【0021】
また、この発明においては、サイドエアバッグ用としてのシートパッドの第1凹所16−1と同一対称形状の第2凹所16−2を、当該シートパッドの第1凹所との左右対称位置に形成し、シートバックのインナ側側面に位置するこのシートパッドの第2凹所を、車両用シートの小物入れスペースとして規定している。つまり、シートパッド11は左右対称形状であり、小物入れスペースとしての第2凹所16−2をサイドエアバッグ用の凹所として、また、サイドエアバッグ用としてのシートパッドの第1凹所16−1を小物入れスペースとして、それぞれ相互に利用することができるため、左右のシート10L、10Rのシートバックのシートパッド11として、単一(同一)のものが使用できる。従って、左右のシート10L、10R間でのシートバックのシートパッド11の共用化が可能となり、これによりコストが低減される。
【0022】
この実施例においては、枠体18を軟質樹脂製として具体化しているが、これに限定されず、たとえば、硬質樹脂から枠体を成形してもよい。また、開口18aを正面上部に有する形態に限定されず、たとえば、開閉可能な硬質樹脂製のふたを硬質樹脂からなる枠体18の開口面に設ける構成としてもよい。しかしながら、枠体18を軟質樹脂から成形すれば、シートバック14への取り付けがトリムカバーとの縫合のもとで容易に行えるばかりでなく、シートバックのクッション性への悪影響もより一層排除できる。
【0023】
図4は変形例に係る枠体をシートパッド側面の凹所に嵌合した右のシートの概略斜視図を示し、図4に示すように、シートパッドの第2凹所16−2に嵌合した枠体118の開口面を、ひも118cの掛け渡しにより部分的に閉鎖する構成としてもよい。
すなわち、正面を全面的に解放した成形品118においても、成形品を第2凹所16−2に嵌合し、第2凹所の周縁でトリムカバーにフランジの折り返し片が縫合される。それから、鋲状の係止ピン118bをトリムカバーの上から第2凹所16−2の左右の周縁に所定間隔離反して設けることにより、ひも118cが係止ピン間に張り巡らされる。
【0024】
この構成では、解放された正面に張り巡らしたひも118cの隙間から、ポケット(成形品)118に小物が入れられ、ポケットに収納した小物の脱落が張り巡らしたひもによって防止される。ひも118cをゴムひものような伸縮素材とすれば、ひもの隙間よりも大きな小物をポケットに収納できる。
【0025】
また、シートバックのセンタ側でシートパッドをトリムカバーで覆い、シートパッドの第2凹所16−2を覆った位置で線ファスナー(ジッパー、チャックともいう)を凹所の長手方向(上下方向)に沿ってトリムカバーに縫合して、通常は凹所をトリムカバーで覆い、線ファスナーを開閉して凹所への小物の出し入れを可能としてもよい。
この場合においても、通常、全面開放した軟質素材からなるフランジ付の成形品118がシートパッドの第2凹所16−2に嵌合されてポケットの枠体とされる。
この構成では、突出のない側面収納が得られとともに、ポケット(成形品)がトリムカバーで隠されるため、ポケットの存在自体が目立たず、すっきりした側面収納となる。
【0026】
上記のように、本発明によれば、突出のない側面収納が可能となるばかりでなく、シートパッドが左右のシート間で共用化できる。
【0027】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0028】
たとえば、実施例では、シートバックのシートパッド側面の第1凹所16−1、第2凹所16−2を上下方向で縦長の矩形形状としたが、この形状に限定されず、サイドエアバッグが収納可能で、ポケットして利用可能な形状であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、左右に分離して一列に2つのシートが配置されるフロントシートに適するとはいえ、フロントシートと同様に左右に分離して一列に2つのシートが配置されたセカンドシート、サードシートは勿論、左右だけでなくセンタにもシートを配置した一列3シートの自動車用シートにも応用できる。
さらに、通常、自動車のシートに応用されるが、自動車以外の車両用シート、たとえば、電車、飛行機等のシートにも本発明を応用できる。
【符号の説明】
【0030】
10(10L、10R) 車両用シート
11 シートパッド
12 シートクッション
14 シートバック
16−1、16−2 シートパッド側面の第1凹所、第2凹所
18、118 ポケットの枠体(成形品)
18a 正面上部の開口
118b 鋲状の係止ピン
118c ひも

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドエアバッグ用としてシートバックのアウタ側側面に対応してシートパッドの側面に設けられた第1凹所と同一対称形状の第2凹所を、当該シートパッドの第1凹所との左右対称位置に形成し、シートバックのインナ側側面に位置するこのシートパッドの第2凹所を、車両用シートの小物入れスペースとして規定した車両用シート。
【請求項2】
第2凹所の形状に対応した軟質素材からなる折り返し片付きフランジを有する成形品をインナ側の第2凹所に嵌合し、フランジの折り返し片をシートバックの第2凹所の周縁でトリムカバーに縫合した請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
成形品は小物投入用の開口を正面上部に有し、正面下部に小物を収納する請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
成形品は正面が全面的に解放され、ひもを開放正面に張り巡らして小物の脱落を防止した請求項2記載の車両用シート。
【請求項5】
シートパッドの第2凹所を覆う位置でシートバックのトリムカバーにファスナーを縫合した請求項1記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−6460(P2012−6460A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143355(P2010−143355)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】