説明

車両用シート

【課題】極めて簡単な構造によって、後席への昇降スペースを広げることができる車両用シートを提供する。
【解決手段】シートクッション1の後部に配設されるシートバック10がバックフレーム11とシートバック本体30とを備える。バックフレーム11は、シートバック10の幅方向中央部に位置して上下方向へ延びる縦軸13、23を有する。シートバック本体30は、シートバック10の幅方向中央部で分割された車内側及び車外側の両分割バック31、41を有する。車内側及び車外側の両分割バック31、41のうち、少なくとも車外側分割バック41が縦軸23を中心として前後方向へ回動可能に装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいては、例えば、特許文献1に開示されているように、車両のドア開口部から後席へ昇降する際、シートバックを前倒れすると共に、前方へ移動することによって昇降スペースを広げ、昇降をしやすくするように構成したものが知られている。
特許文献1に開示された車両用シートにおいては、シートバックの車幅方向外側側壁の上部に車体前後方向へ回転可能に配設されたリクライニングハンドルと、シートの左右に取付けられたリクライニング装置を連結し同期に作動させるコネクティングロッドとを連結する連結手段と、を有している。また、連結手段は、リクライニングハンドルの回転軸に固定されたリンクと、一端がリンクに連結され、他端がコネクティングロッドに連結さたワイヤとを備えて構成されている。
そして、車両のドア開口部から後席に昇降の際には、リクライニングハンドルを車体前方側へ回転することで連結手段のリンク及びワイヤを介してコネクティングロッドを作動させる。これによって、リクライニング装置のロックを解除し、シートバックを前倒れすると共に、シート全体を車体前方へ移動することで、昇降スペースを広げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−284482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された車両用シートにおいては、シートバックの前倒れ機構、シートのスライド機構、リクライニングハンドル、リンク及びワイヤを備えた連結手段等が必要となり構造が複雑化する。
また、昇降スペースを広げるために、先ず、リクライニングハンドルを操作し、シートバックを前倒れすると共に、シート全体を車体前方へ移動しなければならず、厄介であった。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、極めて簡単な構造によって、後席への昇降スペースを広げることができる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係る車両用シートは、シートクッションの後部に配設されるシートバックがバックフレームとシートバック本体とを備えた車両用シートであって、
前記バックフレームは、前記シートバックの幅方向中央部に位置して上下方向へ延びる縦軸を有する一方、
前記シートバック本体は、前記シートバックの幅方向中央部で分割された車内側及び車外側の両分割バックを有し、
前記車内側及び車外側の両分割バックのうち、少なくとも車外側分割バックが前記縦軸を中心として前後方向へ回動可能に装着されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、シートバックの幅方向中央部で分割された車内側及び車外側の両分割バックのうち、車外側分割バックがバックフレームの縦軸を中心として前方向へ回動されることで、後席への昇降スペースを広げることができる。
すなわち、シートバック本体を車内側及び車外側の両分割バックによって構成し、車外側分割バックをバックフレームの縦軸を中心として前後方向へ回動可能に装着する、という極めて簡単な構造によって、後席への昇降スペースを広げることができる。
【0008】
請求項2に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートであって、
車内側及び車外側の両分割バックは、それぞれ縦軸を中心として前後方向へ回動可能に装着されると共に、シートバックの幅方向へ展開される使用位置と、前側へ回動される折畳位置とに配置切換可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、車内側及び車外側の両分割バックがシートバックの幅方向へ展開される使用位置に配置された状態において、車内側及び車外側の両分割バックがそれぞれ縦軸を中心として前後方向へ角度調整可能に構成することができる。
この場合には、着座者の体格に応じて車内側及び車外側の両分割バックを角度調整することで、座り心地の向上を図ることが可能となる。
また、車内側及び車外側の両分割バックを前方へ角度調整することで、後席の着座者の着座スペースを広げることが可能となる。
また、後席から前側(又は前側から後席)へ移動(ウオークスルー)する際には、車内側分割バックがバックフレームの縦軸を中心として前方向へ回動されることで、移動スペースを広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施例1に係る車両用シートを示す斜視図である。
【図2】同じく車内側及び車外側の両分割バックを示す平断面図である。
【図3】同じく車内側及び車外側の両分割バックとバックフレームの縦軸との組み付け状態を示す説明図である。
【図4】同じく車外側分割バックとバックフレームの縦軸との組み付け状態を一部破断して示す説明図である。
【図5】同じく車内側及び車外側の両分割バックが広く角度調整された状態を示す説明図である。
【図6】同じく車内側及び車外側の両分割バックが狭く角度調整された状態を示す説明図である。
【図7】この発明の実施例2に係る車両用シートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0012】
この発明の実施例1を図1〜図6にしたがって説明する。
図に示すように、車両用シートは、シートクッション1と、シートクッション1の後部に配設されるシートバック10とを備え、シートバック10は、バックフレーム11とシートバック本体30とを備える。
【0013】
バックフレーム11は、シートバック10の幅方向中央部に位置して上下方向へ延びる左右の両縦フレーム部12、22を主体として構成されている。そして、両縦フレーム部12、22の下端部は、シートクッション1のクッションフレームにリクライニング機構(図示しない)を介して傾き調整可能に装着される。
また、両縦フレーム部12、22の上端に跨って、逆U字状をなす上部フレーム部27が設けられ、この上部フレーム部27にはヘッドレスト28が装着されている。
また、この実施例1において、左右の両縦フレーム部12、22は、それぞれ金属パイプ材によって形成され、これら両縦フレーム部12、22が車内側及び車外側の両縦軸13、23をそれぞれ兼務している。
そして、車内側及び車外側の両縦軸13、23の下部外周面には、次に述べる車内側及び車外側の両分割バック31、41の下動を阻止する留め輪14、24が固定されている(図3参照)。
【0014】
シートバック本体30は、シートバック10の幅方向中央部で左右に分割された車内側分割バック31と車外側分割バック41とを有している。
車内側及び車外側の両分割バック31、41は、それぞれ車内側及び車外側の縦軸13、23を中心として前後方向へ回動可能に装着されている。
そして、車内側及び車外側の両分割バック31、41は、シートバック10の幅方向へ展開される使用位置(図1の実線参照)と、前側へ回動される折畳位置(図1の二点鎖線参照)とに配置切換可能に構成されている。
【0015】
この実施例1において、図2と図3に示すように、車内側分割バック31は、車内側縦軸13に回動可能に嵌挿され、かつ留め輪14によって受け止められる縦筒33、この縦筒33に一端が固定されて幅方向へ延出されたバックボード34と、このバックボード34及び縦筒33の全体を覆うクッション性を有するパッド35と、このパッド35を被覆する表皮36とを備えて構成されている。
また、車外側分割バック41は、車内側分割バック31と同様にして車外側縦軸23に回動可能に嵌挿され、かつ留め輪24によって受け止められる縦筒43、この縦筒43に一端が固定されて幅方向へ延出されたバックボード44と、このバックボード44及び縦筒43の全体を覆うクッション性を有するパッド45と、このパッド45を被覆する表皮46とを備えて構成されている。
【0016】
また、この実施例1において、図3と図4に示すように、車内側及び車外側の両縦軸13、23と、車内側及び車外側の両分割バック31、41の縦筒33、43との間には、車内側及び車外側の両縦軸13、23に対し、車内側及び車外側の両分割バック31、41を所望とする回動角度位置に係脱可能に保持するための角度調整機構50が配設されている。
この実施例1において、角度調整機構50は、次に述べるようにして構成される。
すなわち、車内側及び車外側の両縦軸13、23の上部には、車内側及び車外側の両分割バック31、41の各縦筒33、43の上方に位置し、かつ長孔52と回り止めピン53との係合作用によって軸方向へは移動可能に軸回り方向へは回り止めされた状態で円筒状の可動調整体51がそれぞれ組み付けられている。
また、可動調整体51の下端面と縦筒33、43の上端面には、係脱可能に噛み合う各複数の係合歯56、57が周方向にそれぞれ形成されている。
さらに、可動調整体51は、常には、付勢手段としての圧縮コイルスプリングよりなるばね55によって下向きに付勢され、これによって、可動調整体51の係合歯56と、縦筒33、43の係合歯57とが所望とする噛合力で噛み合った状態に保持される。
なお、ばね55は、その下端が可動調整体51の下面に圧接され、上端が車内側及び車外側の両縦軸13、23の上部に固定されたばね受けリング58に圧接されている。
【0017】
この実施例1に係る車両用シートは上述したように構成される。
したがって、通常時には、車内側及び車外側の両分割バック31、41がシートバック10の幅方向へ展開される使用位置に配置された状態に保持される。
この状態において、着座者の体格に応じて車内側及び車外側の両分割バック31、41を前後方向へ角度調整することで、座り心地の向上を図ることが可能となる。
例えば、図5に示すように、着座者の体格が大きい場合には、車内側及び車外側の両分割バック31、41を後方向へ角度調整して広げることで、体格が大きい着座者の背部を良好にサポートすることができる。
また、図6に示すように、着座者の体格が小さい場合には、車内側及び車外側の両分割バック31、41を前方向へ角度調整して狭めることで、体格が小さい着座者の背部を良好にサポートすることができる。
また、車内側及び車外側の両分割バック31、41を前方へ角度調整することで、後席の着座者の着座スペース(足回りスペース)を広げることが可能となる。
【0018】
また、車両のドア開口部から後席へ昇降する際、図1の二点鎖線に示すように、車外側分割バック41が車外側縦軸23を中心として前方向へ回動されることで、後席への昇降スペースを広げることができる。
また、後席から前側(又は前側から後席)へ移動(ウオークスルー)する際には、車内側分割バック31が車内側縦軸13を中心として前方向(又は後方)へ回動されることで、移動スペースを広げることができる。
【実施例2】
【0019】
次に、この発明の実施例2を図7にしたがって説明する。
この実施例2においては、シートバック110のバックフレーム111が、シートバック110の幅方向中央部に位置して上下方向へ延びる一本の縦フレーム部112を主体として構成されている。そして、縦フレーム部112の下端部は、シートクッション101のクッションフレームにリクライニング機構(図示しない)を介して傾き調整可能に装着される。
また、縦フレーム部112の上端にはヘッドレスト128が装着されている。
また、この実施例2において、縦フレーム部112は、金属パイプ材によって形成され、縦フレーム部112が縦軸113を兼務している。
【0020】
シートバック本体130を構成する車内側分割バック131と車外側分割バック141は、共通の縦軸113を中心として前後方向へ回動可能に装着されている。
そして、車内側及び車外側の両分割バック131、141は、シートバック110の幅方向へ展開される使用位置と、前側へ回動される折畳位置とに配置切換可能に構成されている。
すなわち、この実施例2において、車内側及び車外側の両分割バック131、141に内設された縦フレーム(図示しない)からヒンジアーム160、170が一体状に延出されており、これら両ヒンジアーム160、170の先端部161、171が蝶番状をなして共通の縦軸113を中心として前後方向へ回動可能に装着されている。
【0021】
また、縦軸113と両ヒンジアーム160、170の先端部161、171との間の上下部には、縦軸113に対し、車内側及び車外側の両分割バック31、41を所望とする回動角度位置に係脱可能に保持するための角度調整機構(図示しない)が配設されている。この角度調整機構は、実施例1で述べた角度調整機構50を用いることが可能である。
この実施例2に係る車両シートのその他の構成は、実施例1と同様に構成される。
したがって、この実施例2においても、実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0022】
なお、この発明は前記実施例1及び2に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、角度調整機構50においては、車内側及び車外側の縦軸13、23(又は共通の縦軸113)に対し車内側及び車外側の両分割バック31、41(又は車内側及び車外側の両分割バック131、141)を所望とする回動角度位置に係脱可能に保持できる構造であれば、どのように構成してもよい。
また、前記実施例1及び2においては、車内側及び車外側の両分割バック31、41(又は車内側及び車外側の両分割バック131、141)が、車内側及び車外側の縦軸13、23(又は共通の縦軸113)を中心として前後方向へ回動可能に装着される場合を例示したが、車内側分割バック31(又は車内側分割バック131)は回動不能とし、車外側分割バック41(又は車外側分割バック141)のみを、車外側縦軸23(又は縦軸113)を中心として前後方向へ回動可能に装着されてもこの発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 シートバック
11 バックフレーム
13 車内側縦軸
23 車外側縦軸
30 シートバック本体
31 車内側分割バック
41 車外側分割バック
50 角度調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの後部に配設されるシートバックがバックフレームとシートバック本体とを備えた車両用シートであって、
前記バックフレームは、前記シートバックの幅方向中央部に位置して上下方向へ延びる縦軸を有する一方、
前記シートバック本体は、前記シートバックの幅方向中央部で分割された車内側及び車外側の両分割バックを有し、
前記車内側及び車外側の両分割バックのうち、少なくとも車外側分割バックが前記縦軸を中心として前後方向へ回動可能に装着されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
車内側及び車外側の両分割バックは、それぞれ縦軸を中心として前後方向へ回動可能に装着されると共に、シートバックの幅方向へ展開される使用位置と、前側へ回動される折畳位置とに配置切換可能に構成されていることを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−52767(P2013−52767A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192555(P2011−192555)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】