説明

車両用センタピラーガーニッシュ構造

【課題】ピラーガーニッシュ本体と衝撃吸収部材との間にスライドプレートを挟合して仮組付けした状態から本組付け作業を行う場合、スライドプレートが位置ずれすることによって凹部からはみ出さないようにした。
【解決手段】衝撃吸収部材2の中央部に、その長手方向に沿って延在する開口部2bを設け、開口部2bの互いに対向する両長手方向裏面側部に開口部2bに沿って複数個の縦リブ4を互いに離間するように立設し、縦リブ4の先端部を切欠くことによってガイド面4aを形成し、且つ、開口部2bの互いに対向する両長手方向開口壁2cに開口部2bの中央側に延在する係合突起5を形成し、係合突起5と縦リブ4の先端部に形成したガイド面4aとの間にスライドプレート3をスライド可能に挟合配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収体を備え、例えば自動車のセンタピラーの車室側を覆う車両用センタピラーガーニッシュ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種の車両用センタピラーガーニッシュ構造は、例えば、図6及び図7に示すものが知られている(特許文献1乃至4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−53075号公報
【特許文献2】特開2001−63484号公報
【特許文献3】特開2001−158314号公報
【特許文献4】特開2003−312380号公報
【0004】
図7及び図8によれば、センタピラーガーニッシュ構造は、センタピラー(不図示)の車室内側を覆うように配置するピラーガーニッシュ本体aと、ピラーガーニッシュ本体a及びセンタピラーの間に配置され、ピラーガーニッシュ本体aに装着される衝撃吸収部材bと、衝撃吸収部材b及びピラーガーニッシュ本体aとの間においてスライド可能に配設されてシートベルトアンカー(図示せず)の上下位置をスライド調整するスライドプレートcとを有して構成している。
【0005】
そして、衝撃吸収部材bは、略中央部に長手方向に延在する凹部dが形成されていて、凹部dにおける互いに対向する両長手方向壁部e間にスライドプレートcを嵌合して、両長手方向壁部eをスライドレールとしてスライドプレートcをスライド可能に装着している。
【0006】
又、衝撃吸収部材bの裏面側における凹部dの長手方向両側部には、図示しないが、長手方向に沿って、複数の縦リブが互いに離間した状態で形成され、乗員が車室内から衝接することによって生じた衝撃を吸収するように構成している。
【0007】
このように構成する従来のセンタピラーガーニッシュ構造によれば、図7に示すように、先ず、衝撃吸収部材bの凹部d内に、スライドプレートcを嵌合配置した後、衝撃吸収部材b上にピラーガーニッシュ本体aを被せるように載置し、このままの状態を保持したまま、裏返して、例えば衝撃吸収部材bの上下端部に形成した取付け突起fに設けられた取付け孔gにピラーガーニッシュ本体aの裏面側に形成した不図示の取付けボス部を挿入し、捩子等により、ピラーガーニッシュ本体aに衝撃吸収部材bをスライドプレートcと共に組付けるようにしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の技術においては、ピラーガーニッシュ本体aにスライドプレートcと共に衝撃吸収部材bを組付けるに際して、衝撃吸収部材bを表側(車室側)に向けた状態で、凹部d内にスライドプレートcを嵌合載置し、衝撃吸収部材bの上にピラーガーニッシュ本体aを被せて、ピラーガーニッシュ本体aと衝撃吸収部材bとでスライドプレートcを挟合することによって仮組付けし、その後、ピラーガーニッシュ本体aを衝撃吸収部材b及びスライドプレートcと共に裏返して位置を定めながら、取付け孔gに取付け突起fを嵌合することによって装着するようになっているため、スライドプレートcを一旦凹部d内にしっくりと配設したとしても、例えばピラーガーニッシュ本体aが組付け作業中に周りに置いてある物に当接した場合や仮組付けされたサブアッシー体を本組付けするために裏返すような場合に、スライドプレートcは、ピラーガーニッシュ本体aと衝撃吸収部材bとの間に挿入されているだけで固定されていないことから、図7の二点鎖線視するように、凹部dからはみ出してしまう場合があり、このような事態が生じないようにするためには、装着作業を慎重に行う必要があり、作業者に面倒な作業を強いることになってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、ピラーガーニッシュ本体と衝撃吸収部材との間にスライドプレートを挟合して仮組付けした状態から本組付け作業を行う場合、スライドプレートが位置ずれすることによって凹部からはみ出さないようにした車両用ピラーガーニッシュ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るピラーガーニッシュ構造は、車両のセンタピラーを車室内側から覆うセンタピラーガーニッシュ構造であって、前記センタピラーの車室内側を覆うように配置されたピラーガーニッシュ本体と、該ピラーガーニッシュ本体及び前記センタピラーの間に配置され、前記ピラーガーニッシュ本体に装着される衝撃吸収部材と、該衝撃吸収部材及び前記ピラーガーニッシュ本体との間においてスライド可能に配設されてシートベルトアンカーの上下位置をスライド調整するスライドプレートとを有して構成し、前記衝撃吸収部材に、その長手方向に沿って延在する開口部を設けると共に、該開口部の互いに対向する両長手方向裏面側部に前記開口部に沿って複数個の縦リブを互いに離間するように立設し、且つ、前記開口部の互いに対向する両長手方向開口壁に前記開口部の内方側に延在する係合突起を形成し、該係合突起と前記縦リブの先端部との間に前記スライドプレートをスライド可能に挟合配置したことを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、係合突起と縦リブの先端部との間にスライドプレートをスライド可能に挟合配設したことにより、スライドプレートが係合突起と縦リブとの間に位置決めされ仮組付けされることになり、この状態から本組付け作業を行う場合に、仮組付け姿態の状態で全体を反転させたとしても、ピラーガーニッシュ本体及び衝撃吸収部材の重合状態を保持さえしていれば、スライドプレートの仮組付け位置がずれることを防止することができる。
【0012】
また、本発明は、前記係合突起を互いに隣接する前記縦リブの間に位置するように配置するようにしても良い。
【0013】
かかる構成により、たとえ係合突起を設けたとしても、係合突起が互いに隣接する縦リブの間に位置するように配置されていることから、係合突起が縦リブに対してアンダーカット形状とならないことになって、衝撃吸収部材の成形に当って特別なスライド型等を用いる必要がなく、成形コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成する本発明によれば、係合突起と縦リブの先端部との間にスライドプレートをスライド可能に挟合配設したことにより、スライドプレートが係合突起と縦リブとの間に位置決めされ仮組付けされることになり、この状態から本組付け作業を行う場合に、仮組付け姿態の状態で全体を反転させたとしても、ピラーガーニッシュ本体及び衝撃吸収部材の重合状態を保持さえしていれば、スライドプレートの仮組付け位置がずれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用センタピラーガーニッシュ構造を車室側から描画した斜視図である。
【図2】図1の車両用センタピラーガーニッシュ構造を構成する衝撃吸収部材とスライドプレートとを分解して描画した斜視図である。
【図3】図2のA一点鎖線円内を拡大して描画した斜視図である。
【図4】同じく、互いに仮組付けされた状態の衝撃吸収部材及びスライドプレートに対して、ピラーガーニッシュ本体を分解して描画した斜視図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】従来における車両用センタピラーガーニッシュ構造を構成する衝撃吸収部材とスライドプレートとを分解して描画した斜視図である。
【図7】同じく、互いに仮組付けされた状態の衝撃吸収部材及びスライド部材に対して、ピラーガーニッシュ本体を分解して描画した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る実施の形態について、図1乃至図5を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態に係る車両用センタピラーガーニッシュ構造を車室側から描画した斜視図、図2は図1の車両用センタピラーガーニッシュ構造を構成する衝撃吸収部材とスライドプレートとを分解して描画した斜視図、図3は図2のA一点鎖線円内を拡大して描画した斜視図、図4は、同じく、互いに仮組付けされた状態の衝撃吸収部材及びスライドプレートに対して、ピラーガーニッシュ本体を分解して描画した斜視図、図5は図4のB−B断面図である。
【0018】
図示するセンタピラーガーニッシュ構造は、不図示の自動車のセンタピラーの車室側の内、上部側を覆う例を描画しており、センタピラーの車室内側を覆うように配置されたピラーガーニッシュ本体1と、ピラーガーニッシュ本体1及び前記センタピラーの間に配置され、ピラーガーニッシュ本体1に装着される衝撃吸収部材2と、衝撃吸収部材2およびピラーガーニッシュ本体1との間においてスライド可能に配設されて不図示のシートベルトアンカーの上下位置をスライド調整するスライドプレート3とで構成している。
【0019】
スライドプレート3は、略直方体平板状を主体形状とし、両長手方向辺端部(車両前後方向辺端部)がセンタピラー側(車両外側)に折曲されて、スライド片部3a、3aを構成しており、さらに、略中央部分には、シートベルトアンカー側の把手部(不図示)を挿通するための挿通孔3b及び不図示のシートベルトを挿入するための挿入孔3cが形成されている。
【0020】
衝撃吸収部材2は、車両の上下方向に長手形状を呈すると共に、短手方向両端部には弯曲部2a、2aが形成さている。
【0021】
さらに、衝撃吸収部材2の略中央部には、長手方向に沿って延在する開口部2bが設けられていると共に、弯曲部2a、2aにおける長手方向裏面側部には、開口部2bに沿うと共に開口部2bの内方側に突出するように、複数個の縦リブ4が互いに離間した状態で立設されている。
【0022】
縦リブ4は、自動車の側突時等において車室側から乗員が衝接した場合に、折曲することによって当該乗員の衝接によって生じた衝撃を吸収することになる。
【0023】
また、特に図3に明確に示すように、開口部2bの互いに対向する両長手方向開口壁2cには、開口部2bの内方側に延在するように複数の係合突起5が形成されている。
【0024】
本実施の形態における係合突起5は、互いに隣接する縦リブ4の間に位置するように配置されており、それぞれ3個ずつ形成されている。
【0025】
図5に示すように、縦リブ4の先端部には、切欠きを形成することによって、スライドプレート3のスライド片部3a、3aをスライドさせるガイド面4aが形成されている。
【0026】
ガイド面4aと係合突起5との間は、隙間Sが形成され、隙間S内においてスライドプレート3のスライド片部3a、3aを挿入することによって、スライドプレート3は、ピラーガーニッシュ本体1の長手方向に沿ってスライド可能に配置されており、結果的に、スライドプレート3は、スライド片部3a、3aにおいて、縦リブ4のガイド面4aと係合突起5との間に挟合配設されていることになる。
【0027】
さらに、衝撃吸収部材2の短手側端部には、端部立壁2dが形成され、端部立壁2dの略中央部には、切欠き凹部2e、2eが形成され、切欠き凹部2e、2eには、衝撃吸収部材2の長手方向外側に延在突出するように、取付け片2f、2fが形成され、取付け片2f、2fには、それぞれ車室側に突出するように、嵌合突起2g、2gが形成されている。
【0028】
ピラーガーニッシュ本体1は、衝撃吸収部材2と共に、センタピラーの車室側を覆うことができるように、車両の上下方向に長手となっていると共に、短手方向両端部が弯曲側板部1a、1aとなっており、かつ、上端部が短手方向外方に広がっていると共に、下端部に段部1bが形成されて、不図示の下部側のピラーガーニッシュ本体との連結部を構成している。
【0029】
また、ピラーガーニッシュ本体1の略中央部には、開口部1cが形成されていて、挿通孔3bから突出した把手部や挿入孔3cから挿通したシートベルトを車室側に突出するようになっている。この結果、把手部を用いて、スライドプレート3を縦リブ4のガイド面4a上をスライドさせることによって、シートベルトアンカーを乗員の好みの上下位置に調整できるように構成している。
【0030】
さらに、衝撃吸収部材2のピラーガーニッシュ本体1の長手方後端部側には、衝撃吸収部材2の嵌合突起2g、2gが嵌合する筒状ボス部1d、1dがそれぞれ形成されている。
【0031】
以上のように構成する場合、図1に示すように、ピラーガーニッシュ本体1にスライドプレート3が介在した状態で衝撃吸収部材2を組み付けるには、まず、図5に示すように、衝撃吸収部材2における縦リブ4に形成したガイド面4a上にスライドプレート3のスライド片部3aを載置し、この状態を保持したまま、衝撃吸収部材2上にピラーガーニッシュ本体1を重ね合わせると共に、衝撃吸収部材2側の嵌合突起2g、2gをそれぞれピラーガーニッシュ本体1側の筒状ボス部1d内に嵌合し、不図示の捩子による螺着等により、ピラーガーニッシュ本体1に衝撃吸収部材2を装着することになる。
【0032】
従って、ピラーガーニッシュ本体1にスライドプレート3が介在した状態で衝撃吸収部材2を組み付ける前段として、先ず、衝撃吸収部材2における縦リブ4に形成したガイド面4a上にスライドプレート3のスライド片部3aを載置して、衝撃吸収部材2とスライドプレート3とを仮組付けした状態において、係合突起5と縦リブ4の先端部に形成したガイド面4aとの間に、スライドプレート3のスライド片部3aが、スライド可能に配設されることになり、スライドプレート3は係合突起5とガイド面との間に挟合配設されることになる。
【0033】
この結果、スライドプレート3が係合突起5と縦リブ4との間に位置決めされ仮組付けされることになり、この状態から本組付け作業を行うために、仮組付け姿態の状態で全体をたとえ反転させたとしても、ピラーガーニッシュ本体1及び衝撃吸収部材2の重合状態を保持さえしておけば、スライドプレート3の仮組付け位置がずれることがなくなる。
【0034】
さらに、かかる構成において係合突起5は、互いに隣接する縦リブ4の間に位置するように配置されていることから、縦リブ4に対してアンダーカット形状とならないことになって、衝撃吸収部材2の成形に当って特別なスライド型等を用いる必要がなく、成形コストを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明は、係合突起と縦リブの先端部との間にスライドプレートをスライド可能に挟合配設したことにより、スライドプレートが係合突起と縦リブとの間に位置決めされ仮組付けされることになり、この状態から本組付け作業を行う場合に、仮組付け姿態の状態で全体を反転させたとしても、ピラーガーニッシュ本体及び衝撃吸収部材の重合状態を保持さえしていれば、スライドプレートの仮組付け位置がずれるのを防止することができるために、衝撃吸収体を備え、例えば自動車のセンタピラーの車室側を覆う車両用センタピラーガーニッシュ構造等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0036】
1 ピラーガーニッシュ本体
2 衝撃吸収部材
2b 開口部
3 スライドプレート
3a スライド片部
4 縦リブ
4a ガイド面
5 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のセンタピラーを車室内側から覆うセンタピラーガーニッシュ構造であって、前記センタピラーの車室内側を覆うように配置されたピラーガーニッシュ本体と、該ピラーガーニッシュ本体及び前記センタピラーの間に配置され、前記ピラーガーニッシュ本体に装着される衝撃吸収部材と、該衝撃吸収部材及び前記ピラーガーニッシュ本体との間においてスライド可能に配設されてシートベルトアンカーの上下位置をスライド調整するスライドプレートとを有して構成し、
前記衝撃吸収部材に、その長手方向に沿って延在する開口部を設けると共に、該開口部の互いに対向する両長手方向裏面側部に前記開口部に沿って複数個の縦リブを互いに離間するように立設し、且つ、前記開口部の互いに対向する両長手方向開口壁に前記開口部の内方側に延在する係合突起を形成し、該係合突起と前記縦リブの先端部との間に前記スライドプレートをスライド可能に挟合配置したことを特徴とする車両用センタピラーガーニッシュ構造。
【請求項2】
前記係合突起を、互いに隣接する前記縦リブの間に位置するように配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用センタピラーガーニッシュ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−42318(P2011−42318A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193249(P2009−193249)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】