車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディ
【課題】左側取付用と右側取付用のキャリパボディを鋳造する際に、シリンダ孔の下孔を形成する中子を兼用することのできる車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディを提供する。
【解決手段】複数のシリンダ孔5,6と開口部3dとを、下孔形成部21と開口部形成部22とを備えた1つの中子20を備えた鋳造型にて形成する。下孔形成部21は、ピストン摺動部下孔形成部21aと、大径下孔形成部21bとを連続して備え、ピストン摺動部下孔形成部21aの外径が、小径シリンダ孔7のピストン摺動部7aよりも小径に、大径下孔形成部21bの外径が、大径シリンダ孔5のピストン摺動部7aよりも大径に形成される。大径下孔形成部21bとピストン摺動部下孔形成部21aとの間に形成される段部を、ピストン摺動部下孔形成部21aの軸線に直交する平面状に形成する。
【解決手段】複数のシリンダ孔5,6と開口部3dとを、下孔形成部21と開口部形成部22とを備えた1つの中子20を備えた鋳造型にて形成する。下孔形成部21は、ピストン摺動部下孔形成部21aと、大径下孔形成部21bとを連続して備え、ピストン摺動部下孔形成部21aの外径が、小径シリンダ孔7のピストン摺動部7aよりも小径に、大径下孔形成部21bの外径が、大径シリンダ孔5のピストン摺動部7aよりも大径に形成される。大径下孔形成部21bとピストン摺動部下孔形成部21aとの間に形成される段部を、ピストン摺動部下孔形成部21aの軸線に直交する平面状に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディに係り、詳しくは、ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを一体に形成したモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成したキャリパボディでは、シリンダ孔と、作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成している。キャリパボディは、鋳造型内に前記中子を配置し、鋳造型と中子との間に画成されるキャビティに、例えば、アルミニウム合金等の溶湯が注入されて鋳造される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−163810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、通常、車両の左右各車輪にそれぞれ取り付けられるディスクブレーキは、同一構造のディスクブレーキであっても、ディスク周方向に内径の異なる複数のシリンダ孔を並設したものでは、車体取付部に対してシリンダ孔の配置が左側取付用と右側取付用とで異なることから、左側取付用の中子と右側取付用の中子とが必要となり、コストが嵩んでいた。
【0005】
そこで本発明は、左側取付用と右側取付用のキャリパボディを鋳造する際に、シリンダ孔の下孔を形成する中子を兼用することのできる車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法は、ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成するとともに、前記作用部のディスク周方向に並設される内径の異なる複数のシリンダ孔と、前記作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成し、前記複数のシリンダ孔に外径の異なるピストンをそれぞれ収容するモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法において、前記複数のシリンダ孔と前記開口部とを、複数のシリンダ孔の下孔形成部と開口部形成部とを備え、前記下孔形成部が、前記ピストンが摺動するピストン摺動部の下孔を形成するピストン摺動部下孔形成部と、シリンダ孔底部側の前記ピストン摺動部よりも大径に形成される大径孔部の下孔を形成する大径下孔形成部とを連続して備え、前記ピストン摺動部下孔形成部の外径が、最も小径のシリンダ孔のピストン摺動部よりも小径に、前記大径下孔形成部の外径が、最も大径のシリンダ孔のピストン摺動部よりも大径に形成されると共に、前記大径下孔形成部と前記ピストン摺動部下孔形成部との間に形成される段部が、前記ピストン摺動部下孔形成部の軸線に直交する平面状に形成された1つの中子を備えた鋳造型にて形成し、鋳造後の前記下孔形成部を加工して、あらかじめ設定された小径のシリンダ孔及び大径のシリンダ孔をそれぞれ形成することを特徴としている。
【0007】
本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディは、ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成するとともに、前記作用部のディスク周方向に並設される複数のシリンダ孔の下穴と、前記作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成し、鋳造後に前記下穴を加工して内径の異なる複数のシリンダ孔をそれぞれ形成し、該複数のシリンダ孔に外径の異なるピストンをそれぞれ収容するモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記各シリンダ孔は、前記ピストンが摺動するピストン摺動部と、該ピストン摺動部より大径のシリンダ孔底部側の大径孔部とを連続して備え、ディスク周方向に並設されるピストン摺動部は、小径シリンダ孔の内径より小径に形成した前記下穴を加工することによって小径シリンダ孔及び大径シリンダ孔がそれぞれ形成され、前記各大径孔部は、鋳造時に前記大径シリンダ孔のピストン摺動部の内径より大径にそれぞれ形成されると共に、前記ピストン摺動部と大径孔部との間に形成される段部は、前記シリンダ孔の軸線に直交する平面状に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディによれば、内径の異なる複数のシリンダ孔を備えた左側取付用と右側取付用のキャリパボディをそれぞれ鋳造する際に、同一の1つの中子を用いてシリンダ孔の下孔を形成することができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0009】
また、シリンダ孔のピストン摺動部とシリンダ孔底部側の大径孔部との間に形成される段部を、シリンダ孔の軸線に直交する平面状に形成することにより、シリンダ孔の内径が異なっていてもピストンのベアリングエリア長(シリンダ孔の有効長)を同一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図4のI-I断面図である。
【図2】図5のII-II断面図である。
【図3】図4のIII-III断面図である。
【図4】本発明の一形態例を示すディスクブレーキの正面図である。
【図5】同じくディスクブレーキの平面図である。
【図6】同じく中子の正面図である。
【図7】同じく中子の平面図である。
【図8】図6のVIII-VIII断面図である。
【図9】図6のIX-IX断面図である。
【図10】同じくキャリパボディの平面図である。
【図11】図10のXI-XI断面図である。
【図12】同じくキャリパボディの要部拡大断面図である。
【図13】図12のXIII-XIII断面図である。
【図14】同じくディスクブレーキの要部拡大断面図である。
【図15】リテーナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本形態例に示すディスクブレーキ1は、車両左側に搭載される4ポットピストン対向型のディスクブレーキ1であって、車両前進時に車輪と共に矢印A方向に回転するディスクロータ2を挟んで両側に対向配置される一対の作用部3a,3bを、該一対の作用部3a,3bのディスク周方向両側部分を連結する一対のブリッジ部3c,3cと共に鋳造によって一体成形したモノコック構造のキャリパボディ3を有しており、キャリパボディ3のディスク外周側には、作用部3a,3b及びブリッジ部3c,3cに囲まれた開口部3dが設けられている。
【0012】
各作用部3a,3bにおけるディスク回出側には大径ピストン4を収容する大径シリンダ孔5が、ディスク回入側には小径ピストン6を収容する小径シリンダ孔7が、ディスクロータ2側を開口させて2個ずつ対向するようにディスク周方向にそれぞれ並設されている。各シリンダ孔5,7は、開口側に各ピストン4,6が摺動する大径、小径の各ピストン摺動部5a,7aが、底部側に大径ピストン摺動部5aよりも大径で各内径が同一の大径孔部5b,7bが連続して形成され、各ピストン摺動部5a,7aと大径孔部5b,7bとの間に形成される段部5c,7cは、シリンダ孔5,7の軸線に直交する平面状に形成されている。ピストン摺動部5a,7aには、各ピストン4,6が、それぞれの径に対応したピストンシール8とダストブーツ9とを介してそれぞれ摺動可能に収容され、各シリンダ孔5,7の大径孔部5b,7bを含む底部と各ピストン4,6の底面との間には、作動液が供給される液圧室10,11がそれぞれ画成されている。また、隣接する大径孔部5b,7b間には、液圧室10,11同士を連通する液通孔12,12が設けられている。
【0013】
さらに、ディスク回出側に対向する2つの液圧室10,10には、作用部3a,3aのディスク回出側面からポート3e,3eが穿設され、両ポート3e,3eは、ディスクロータ2の外側を跨いで作用部3a,3aのディスク回出側面に沿って配設される液通管13によって連結されている。また、ディスク回入側に対向する2つの液圧室11,11には、作用部3a,3aのディスク回入側からブリューダ孔3f,3fが穿設され、各ブリューダ孔3fにはブリューダスクリュ14がそれぞれ螺着されている。さらに、一方の作用部3aの反ディスクロータ側面中央部には、ユニオンボス部3gが突設され、該ユニオンボス部3gには、昇圧した作動液を液通孔12を介して前記液圧室10,11に導入するためのユニオン孔3hが穿設されている。
【0014】
一方の作用部3aのディスク半径方向内周側には、車体取付ブラケット3iが形成され、該車体取付ブラケット3iのディスク周方向両側部に取付ボルト挿通孔3j,3jが設けられ、この取付ボルト挿通孔3j,3jに挿通した取付ボルトを車体側に螺着することにより、キャリパボディ3が車体に取り付けられる。
【0015】
ブリッジ部3c,3cの中央には、矩形の天井開口部3kが摩擦パッド15,15をディスクロータ2の両側部に差し込み可能な大きさで形成され、シリンダ孔5,7の前面両側部には、パッド装着凹部3m,3mが天井開口部3kのディスク回入側面3nとディスク回出側面3oとに連続してそれぞれ設けられている。パッド装着凹部3m,3mのディスク回入側面及びディスク回出側面は、制動時に摩擦パッド15,15からのトルクを受けるトルク受け面3p,3pとなり、これらトルク受け面3p,3pのディスク半径方向中間部には、断面V字状のリテーナ取付凹部3qがそれぞれ形成されている。また、各リテーナ取付凹部3qのディスク半径方向内側面3rには、ディスク回入側に配置されるリテーナ16及びディスク回出側に配置されるリテーナ16を取り付けるための雌ねじ孔3sがそれぞれ形成される。さらに、パッド装着凹部3m,3mのディスク半径方向内側の両側部には、摩擦パッド15,15のディスク半径方向内側面15aをそれぞれ支承するパッド受け面3t,3tが設けられる。また、天井開口部3kには、ブリッジ部3c,3cの剛性力を高めるための剛性メンバー17が取付ボルト17a,17aによって取り付けられている。
【0016】
このような構成を有するキャリパボディ3における寸法精度を要求される部分、例えば、ピストンシール8を嵌着するピストンシール溝5d,7dやダストブーツ9を嵌着するダストブーツ溝5e,7eを含むシリンダ孔5,7、トルク受け面3p,3p、リテーナ取付凹部3q、パッド受け面3t、前記開口部3dのシリンダ孔開口側壁面3uは、それぞれ仕上げ加工が施された加工面となっており、各加工面は、加工方向や形状等に応じた加工刃が選択使用される。
【0017】
仕上げ加工される部分において、トルク受け面3pと、該トルク受け面3pに直交する前記開口部のシリンダ孔開口側壁面3uとが交差する角部C1には、トルク受け面3p及びパッド受け面3tを切削加工する加工刃の逃げ凹部3vが設けられている。同様に、トルク受け面3pと、該トルク受け面3pに直交するパッド受け面3tとが交差する角部C2にも、トルク受け面3p及びパッド受け面3tを切削加工する加工刃の逃げ凹部3wが設けられている。これらの逃げ凹部3v,3wにおける各面に対する開口幅は、各面を仕上げ加工する加工刃の半径以上で、各面の機能、例えばトルク受け面3pにおけるトルク受けとしての機能を損なわない寸法に設定されている。また、トルク受け面3pとシリンダ孔開口側壁面3uとの角部に設けられる逃げ凹部3vは、前記角部C1のディスク半径方向外端より内側部分からディスク半径方向内端までの間に設けられており、角部C1のディスク半径方向外端部分には逃げ凹部3vが存在しない部分A1を設けている。
【0018】
前記摩擦パッド15は、ライニング15bと金属製の裏板15cとから構成され、それぞれのライニング15bをディスクロータ2側に向けた状態で、天井開口部3kからディスクロータ2の側面と、両トルク受け面3p,3pと、シリンダ孔開口側壁面3uとの間に挿入され、シリンダ孔5,7の前面に配設される。
【0019】
前記リテーナ16は、制動時の摩擦パッド15をディスク軸方向へ案内するもので、ディスク回入側とディスク回出側とにそれぞれ配置されている。各リテーナ16は、ディスクロータ2を挟んで隣接するトルク受け面3p,3pにそれぞれ敷設される一対のトルク受け片16a,16aと、該トルク受け片16a,16aのディスク外周側を連結し、前記天井開口部3kのディスク回出側面3n又はディスク回入側面3oに沿ってディスクロータ2を跨いで配置される連結部16bとをそれぞれ備えている。また、各トルク受け片16aのディスク半径方向中間部には、前記リテーナ取付凹部3qのV字形状に対応して屈曲形成された取付部16cが形成され、該取付部16cのディスク半径方向内側面16dには、リテーナ16をキャリパボディ3に取り付けるためのリテーナ取付ボルト18を挿通するボルト孔16eが形成されている。さらに、トルク受け片16aのディスク半径方向内端部は、前記パッド受け面3t,3tに沿って折り曲げられ、摩擦パッド15の裏板15cを支持するパッド受け片16f,16fがそれそれ形成されている。また、ディスク回入側のリテーナ16は、トルク受け片16aのディスク半径方向外側中央部にディスク回出側に突出した湾曲部16gが設けられ、該湾曲部16gによって摩擦パッド15,15をディスク回出側に押し付けるようにしている。
【0020】
リテーナ16の取付部16cが挿入される前記リテーナ取付凹部3qは、取付部16cの突出形状より僅かに大きな凹部形状を有しており、ボルト孔16eを形成した取付部16cのディスク半径方向内側面16dが当接するリテーナ取付凹部3qのディスク半径方向内側面3rには前述の仕上げ加工が施されている。また、リテーナ取付凹部3qのディスク半径方向内側面3rと、ディスク半径方向内側のトルク受け面3pとが交差する角部、及び、ディスク半径方向外側面3lと、ディスク半径方向外側のトルク受け面3pとが交差する角部には面取部3x,3xがそれぞれ設けられ、前記取付部16cのディスク半径方向内側面16dとディスク半径方向内側のトルク受け片16aとが交差する角部の内面と、前記面取部3xの外面との間、さらに、取付部16cのディスク半径方向外側面16hとディスク半径方向外側のトルク受け片16aとが交差する角部の内面と、前記面取部3xの外面との間に隙間E1をそれぞれ設けるようにしている。
【0021】
このようなキャリパボディ3を鋳造によって製造する際には、キャリパボディ3の外部を形成する複数の外型と、内部を形成する中子とを組み合わせた鋳造型が使用される。中子20は、4つのシリンダ孔5,7の下孔をそれぞれ形成する4つの下孔形成部21と、前記開口部3dを形成する開口部形成部22と、隣り合う下孔形成部21の底部側を繋ぐ液通孔形成部23と、車体取付ブラケット側突出部24とを備えている。各下孔形成部21は、前記ピストン4,6が摺動するピストン摺動部5a,7aの下孔を形成するピストン摺動部下孔形成部21aと、シリンダ孔底部側の大径孔部5b,7bを形成する大径下孔形成部21bとを連続して備えており、ピストン摺動部下孔形成部21aの外径は、小径のシリンダ孔7のピストン摺動部7aの内径よりも小径に、大径下孔形成部21bの外径は、大径のシリンダ孔5のピストン摺動部5aの内径よりも大径にそれぞれ形成されると共に、大径下孔形成部21bのキャリパボディ中心側面21cは、ピストン摺動部下孔形成部21aの軸線に直交する平面状に形成されている。また、開口部形成部22には、シリンダ孔開口側壁面形成部22aや、パッド装着凹部形成部22b、トルク受け面形成部22c、リテーナ取付凹部形成部22dを備え、トルク受け面形成部22cとシリンダ孔開口側壁面形成部22aとが交差する角部と、トルク受け面形成部22cとシリンダ孔開口側壁面形成部22aとが交差する角部とには、前記逃げ凹部3v,3wを形成するための凸部22e,22fがそれぞれ設けられている。また、前記リテーナ取付凹部3qの面取部3x,3xを形成する部分には、面取形成部22g,22gが設けられている。
【0022】
このような中子20を用いて鋳造されたキャリパボディの原型は、小径のシリンダ孔7のピストン摺動部7aの内径(D1)よりも小径(D2)の4つの同径のピストン摺動部下孔と、大径のシリンダ孔5のピストン摺動部5aの内径(D3)よりも大径(D4)の大径下孔と、開口部3dの大きさより僅かに小さな開口部形成部とが形成されている。このキャリパボディの原型は、熱処理炉にて所定の熱処理が施された後、ピストン摺動部下孔がそれぞれのシリンダ孔5,7のピストン摺動部5a,7aの径に応じて所定の加工刃等によってそれぞれ仕上げ加工されると共に、ピストンシール8を嵌着するピストンシール溝5d,7d、ダストブーツ9を嵌着するダストブーツ溝5e,7eが所定の加工刃等によってそれぞれ仕上げ加工され、同様に、開口部形成部には、ロータ溝3y,トルク受け面3p,リテーナ取付凹部3qのディスク半径方向内側面3r等に所定の仕上げ加工が施される。さらに、前記ポート3e,3eや、ブリューダ孔3f,3f、ユニオン孔3hが穿設加工される。この仕上げ加工の際に、大径下孔形成部21b及び液通孔形成部23により形成された部分は、鋳肌のまま前記大径孔部5b,7b及び液通孔12となり、これらの部分の仕上げ加工を行う必要が無く、加工作業の簡略化が図れる。
【0023】
また、リテーナ取付凹部3qは、リテーナ取付ボルト18によってリテーナ16を取り付けるディスク半径方向内側面3rのみが仕上げ加工される。このように、リテーナ取付凹部3qにおいて、天井開口部3k側を向いたディスク半径方向内側面3rを仕上げ加工してリテーナ16を取り付ける面とすることにより、モノコック構造のキャリパボディ3であっても、リテーナ16の所定位置への配置及びリテーナ取付ボルト18の螺着を天井開口部3kから行えるので、リテーナ16の取り付けを容易かつ確実に行うことができる。しかも、リテーナ16は、一対のトルク受け片16a,16aと連結部16bとで形成されるので、金属薄板を打ち抜いて取付部16cやパッド受け片16f等を折り曲げ加工するだけで製作することができ、従来のリテーナに比べて形状が簡素であり、生産性の向上や生産コストの低減を図れる。また、ディスク回入側のリテーナ16に、ディスク回出側に突出させた湾曲部16gを設けて摩擦パッド15をディスク回出側に押し付けるようにしているので、摩擦パッド15のガタ付きを抑えることができる。さらに、リテーナ16を取り付けたときに、取付部16のディスク半径方向内側面16dと、ディスク半径方向内側のトルク受け片16aとの折曲部が位置する部分を前記面取部3xによって面取りした形状としているので、リテーナ取付凹部3qやリテーナ16に製作誤差があっても、両者の角部が干渉することを回避することができ、リテーナ16のトルク受片16aの座りを良くし、トルク受け片16aのディスク半径方向内側部分をトルク受け面3pに確実に配設することができ、摩擦パッド15を良好に案内することができる。加えて、鋳造時に中子20によって面取部3xを形成することにより、面取部3xを容易に形成することができる。
【0024】
また、中子20のトルク受け面形成部22cの角部に設けた凸部22e,22fによってキャリパボディの原型のトルク受け面3pと該トルク受け面3pに直交する開口部のシリンダ孔開口側壁面3uとの角部となる部分及びトルク受け面3pとこれに直交するパッド受け面3tとの角部となる部分に逃げ凹部3v,3wがそれぞれ形成されることから、トルク受け面3pやシリンダ孔開口側壁面3u、パッド装着凹部3mを仕上げ加工する加工刃30を、仕上げ面の両端に隣接する面に接触させない状態で加工することができるので、加工刃30を良好な状態で使用することができ、これらの各面、特に精度が要求されるトルク受け面3pを確実かつ良好に仕上げ加工することができる。
【0025】
すなわち、図13に示されるように、従来は、各面を、例えば加工刃30で仕上げ加工した後、加工刃30よりも小径の加工刃31を用いて角部C1(C2)を仕上げ加工していたのに対し、逃げ凹部3v(3w)を設けることにより、各面を仕上げ加工する加工刃30のみで角部C1(C2)を良好に仕上げ加工することができ、仕上げ加工に要する手間や時間、加工刃の種類等を削減することができる。逃げ凹部3v,3wの開口幅は、直交する面を加工する加工刃の半径と同等乃至僅かに大きくすればよい。
【0026】
さらに、前記角部C1のディスク半径方向外端部分における逃げ凹部3vが存在しない部分A1の寸法は、リテーナ16や摩擦パッド15の装着及び動作に影響しない範囲に設定することにより、仕上げ加工が不十分でも問題はなく、このような半径の大きな円弧を有する肉厚部を設けることにより、トルク受け面3pとシリンダ孔開口側壁面3uとが交差する部分の強度を向上させてキャリパボディ3の剛性を保持することができる。また、これらの逃げ凹部3v,3wを鋳造時に中子20で形成することにより、逃げ凹部3v,3wを容易に形成することができる。
【0027】
また、ディスク周方向に内径が異なる複数のシリンダ孔を並設したキャリパボディの場合、車両右側に搭載されるディスクブレーキのキャリパボディと、上記形態例に示す車両左側のキャリパボディとでは、車体への取り付け方向が鏡面対称の関係となり、大径の大径シリンダ孔用下孔形成部と小径の小径シリンダ孔用下孔形成部とを、シリンダ孔の径に応じてそれぞれ設けた中子を用いた場合には、車体取付ブラケットと大径、小径の各シリンダ孔との関係から、右側用、左側用の2種類の中子を用意する必要があるが、本形態例に示すように、シリンダ孔5,7におけるピストン摺動部5a,7aを形成する部分のピストン摺動部下孔形成部21aを小径シリンダ孔7のピストン摺動部7aより小径に形成し、シリンダ孔底部に位置する大径下孔形成部21bを大径シリンダ孔5のピストン摺動部5aより大径に形成すると共に、大径下孔形成部21bのキャリパボディ中心側面21cとなる大径下孔形成部21bとピストン摺動部下孔形成部21aとの間に形成される段部をピストン摺動部下孔形成部21aの軸線に直交する平面状に形成し、鋳造後に、右側用と左側用とに対応させて大径、小径の各シリンダ孔5,7を加工するようにしたことにより、鋳造時の中子20の向きを車体取付ブラケット側突出部24の方向に応じて変えることで右側用、左側用を兼用することが可能となる。したがって、中子を1種類とすることができ、中子を製造するための型を1種類にすることができるだけでなく、キャリパボディを鋳造する際に中子を取り違えるおそれもなくなるので、キャリパボディを製造する際の作業性の向上や製造コストの削減が図れる。
【0028】
また、大径下孔形成部21bのキャリパボディ中心側面21cを平面状とすることにより、ピストン摺動部下孔形成部21aで形成した下孔を小径シリンダ孔7のピストン摺動部7aに対応した小径に加工する場合と、大径シリンダ孔5のピストン摺動部5aに対応した大径に加工する場合とで、ピストンのベアリングエリア長(シリンダ孔の有効長)を同一にすることができるので、両シリンダ孔におけるピストンストロークを同一にでき、ピストンを良好に作動させることができる。
【0029】
なお、本発明は、上述の形態例に限定されるものではなく、例えば、4ポット対向型のキャリパボディに限らず、6ポット以上の対向型のキャリパボディにも適用することができ、シリンダ孔の径も任意である。
【符号の説明】
【0030】
1…ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパボディ、3a,3b…作用部、3c…ブリッジ部、3d…開口部、3e…ポート、3f…ブリューダ孔、3g…ユニオンボス部、3h…ユニオン孔、3i…車体取付ブラケット、3j…取付ボルト挿通孔、3k…天井開口部、3m…パッド装着凹部、3n…ディスク回出側面、3o…ディスク回入側面、3p…トルク受け面、3q…リテーナ取付凹部、3r…ディスク半径方向内側面、3s…雌ねじ孔、3t…パッド受け面、3u…シリンダ孔開口側壁面、3v,3w…逃げ凹部、3x…面取部、3y…ロータ溝、4…大径ピストン、5…大径シリンダ孔、5a…ピストン摺動部、5b…大径孔部、5c…段部、5d…ピストンシール溝、5e…ダストブーツ溝、6…小径ピストン、7…小径シリンダ孔、7a…ピストン摺動部、7b…大径孔部、7c…段部、7d…ピストンシール溝、7e…ダストブーツ溝、8…ピストンシール、9…ダストブーツ、10,11…液圧室、12…液通孔、13…液通管、14…ブリューダスクリュ、15…摩擦パッド、15a…ディスク半径方向内側面、15b…ライニング、15c…裏板、16…リテーナ、16a…トルク受け片、16b…連結部、16c…取付部、16d…ディスク半径方向内側面、16e…ボルト孔、16f…パッド受け片、16g…湾曲部、17…剛性メンバー、17a…取付ボルト、18…リテーナ取付ボルト、20…中子、21…下孔形成部、21a…ピストン摺動部下孔形成部、21b…大径下孔形成部、21c…キャリパボディ中心側面、22…開口部形成部、22a…シリンダ孔開口側壁面形成部、22b…パッド装着凹部形成部、22c…トルク受け面形成部、22d…リテーナ取付凹部形成部、22e,22f…凸部、22g…面取形成部、23…液通孔形成部、24…車体取付ブラケット側突出部、30,31…加工刃、C1,C2…角部、E1…隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディに係り、詳しくは、ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを一体に形成したモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成したキャリパボディでは、シリンダ孔と、作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成している。キャリパボディは、鋳造型内に前記中子を配置し、鋳造型と中子との間に画成されるキャビティに、例えば、アルミニウム合金等の溶湯が注入されて鋳造される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−163810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、通常、車両の左右各車輪にそれぞれ取り付けられるディスクブレーキは、同一構造のディスクブレーキであっても、ディスク周方向に内径の異なる複数のシリンダ孔を並設したものでは、車体取付部に対してシリンダ孔の配置が左側取付用と右側取付用とで異なることから、左側取付用の中子と右側取付用の中子とが必要となり、コストが嵩んでいた。
【0005】
そこで本発明は、左側取付用と右側取付用のキャリパボディを鋳造する際に、シリンダ孔の下孔を形成する中子を兼用することのできる車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法は、ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成するとともに、前記作用部のディスク周方向に並設される内径の異なる複数のシリンダ孔と、前記作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成し、前記複数のシリンダ孔に外径の異なるピストンをそれぞれ収容するモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法において、前記複数のシリンダ孔と前記開口部とを、複数のシリンダ孔の下孔形成部と開口部形成部とを備え、前記下孔形成部が、前記ピストンが摺動するピストン摺動部の下孔を形成するピストン摺動部下孔形成部と、シリンダ孔底部側の前記ピストン摺動部よりも大径に形成される大径孔部の下孔を形成する大径下孔形成部とを連続して備え、前記ピストン摺動部下孔形成部の外径が、最も小径のシリンダ孔のピストン摺動部よりも小径に、前記大径下孔形成部の外径が、最も大径のシリンダ孔のピストン摺動部よりも大径に形成されると共に、前記大径下孔形成部と前記ピストン摺動部下孔形成部との間に形成される段部が、前記ピストン摺動部下孔形成部の軸線に直交する平面状に形成された1つの中子を備えた鋳造型にて形成し、鋳造後の前記下孔形成部を加工して、あらかじめ設定された小径のシリンダ孔及び大径のシリンダ孔をそれぞれ形成することを特徴としている。
【0007】
本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディは、ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成するとともに、前記作用部のディスク周方向に並設される複数のシリンダ孔の下穴と、前記作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成し、鋳造後に前記下穴を加工して内径の異なる複数のシリンダ孔をそれぞれ形成し、該複数のシリンダ孔に外径の異なるピストンをそれぞれ収容するモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記各シリンダ孔は、前記ピストンが摺動するピストン摺動部と、該ピストン摺動部より大径のシリンダ孔底部側の大径孔部とを連続して備え、ディスク周方向に並設されるピストン摺動部は、小径シリンダ孔の内径より小径に形成した前記下穴を加工することによって小径シリンダ孔及び大径シリンダ孔がそれぞれ形成され、前記各大径孔部は、鋳造時に前記大径シリンダ孔のピストン摺動部の内径より大径にそれぞれ形成されると共に、前記ピストン摺動部と大径孔部との間に形成される段部は、前記シリンダ孔の軸線に直交する平面状に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディによれば、内径の異なる複数のシリンダ孔を備えた左側取付用と右側取付用のキャリパボディをそれぞれ鋳造する際に、同一の1つの中子を用いてシリンダ孔の下孔を形成することができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0009】
また、シリンダ孔のピストン摺動部とシリンダ孔底部側の大径孔部との間に形成される段部を、シリンダ孔の軸線に直交する平面状に形成することにより、シリンダ孔の内径が異なっていてもピストンのベアリングエリア長(シリンダ孔の有効長)を同一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図4のI-I断面図である。
【図2】図5のII-II断面図である。
【図3】図4のIII-III断面図である。
【図4】本発明の一形態例を示すディスクブレーキの正面図である。
【図5】同じくディスクブレーキの平面図である。
【図6】同じく中子の正面図である。
【図7】同じく中子の平面図である。
【図8】図6のVIII-VIII断面図である。
【図9】図6のIX-IX断面図である。
【図10】同じくキャリパボディの平面図である。
【図11】図10のXI-XI断面図である。
【図12】同じくキャリパボディの要部拡大断面図である。
【図13】図12のXIII-XIII断面図である。
【図14】同じくディスクブレーキの要部拡大断面図である。
【図15】リテーナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本形態例に示すディスクブレーキ1は、車両左側に搭載される4ポットピストン対向型のディスクブレーキ1であって、車両前進時に車輪と共に矢印A方向に回転するディスクロータ2を挟んで両側に対向配置される一対の作用部3a,3bを、該一対の作用部3a,3bのディスク周方向両側部分を連結する一対のブリッジ部3c,3cと共に鋳造によって一体成形したモノコック構造のキャリパボディ3を有しており、キャリパボディ3のディスク外周側には、作用部3a,3b及びブリッジ部3c,3cに囲まれた開口部3dが設けられている。
【0012】
各作用部3a,3bにおけるディスク回出側には大径ピストン4を収容する大径シリンダ孔5が、ディスク回入側には小径ピストン6を収容する小径シリンダ孔7が、ディスクロータ2側を開口させて2個ずつ対向するようにディスク周方向にそれぞれ並設されている。各シリンダ孔5,7は、開口側に各ピストン4,6が摺動する大径、小径の各ピストン摺動部5a,7aが、底部側に大径ピストン摺動部5aよりも大径で各内径が同一の大径孔部5b,7bが連続して形成され、各ピストン摺動部5a,7aと大径孔部5b,7bとの間に形成される段部5c,7cは、シリンダ孔5,7の軸線に直交する平面状に形成されている。ピストン摺動部5a,7aには、各ピストン4,6が、それぞれの径に対応したピストンシール8とダストブーツ9とを介してそれぞれ摺動可能に収容され、各シリンダ孔5,7の大径孔部5b,7bを含む底部と各ピストン4,6の底面との間には、作動液が供給される液圧室10,11がそれぞれ画成されている。また、隣接する大径孔部5b,7b間には、液圧室10,11同士を連通する液通孔12,12が設けられている。
【0013】
さらに、ディスク回出側に対向する2つの液圧室10,10には、作用部3a,3aのディスク回出側面からポート3e,3eが穿設され、両ポート3e,3eは、ディスクロータ2の外側を跨いで作用部3a,3aのディスク回出側面に沿って配設される液通管13によって連結されている。また、ディスク回入側に対向する2つの液圧室11,11には、作用部3a,3aのディスク回入側からブリューダ孔3f,3fが穿設され、各ブリューダ孔3fにはブリューダスクリュ14がそれぞれ螺着されている。さらに、一方の作用部3aの反ディスクロータ側面中央部には、ユニオンボス部3gが突設され、該ユニオンボス部3gには、昇圧した作動液を液通孔12を介して前記液圧室10,11に導入するためのユニオン孔3hが穿設されている。
【0014】
一方の作用部3aのディスク半径方向内周側には、車体取付ブラケット3iが形成され、該車体取付ブラケット3iのディスク周方向両側部に取付ボルト挿通孔3j,3jが設けられ、この取付ボルト挿通孔3j,3jに挿通した取付ボルトを車体側に螺着することにより、キャリパボディ3が車体に取り付けられる。
【0015】
ブリッジ部3c,3cの中央には、矩形の天井開口部3kが摩擦パッド15,15をディスクロータ2の両側部に差し込み可能な大きさで形成され、シリンダ孔5,7の前面両側部には、パッド装着凹部3m,3mが天井開口部3kのディスク回入側面3nとディスク回出側面3oとに連続してそれぞれ設けられている。パッド装着凹部3m,3mのディスク回入側面及びディスク回出側面は、制動時に摩擦パッド15,15からのトルクを受けるトルク受け面3p,3pとなり、これらトルク受け面3p,3pのディスク半径方向中間部には、断面V字状のリテーナ取付凹部3qがそれぞれ形成されている。また、各リテーナ取付凹部3qのディスク半径方向内側面3rには、ディスク回入側に配置されるリテーナ16及びディスク回出側に配置されるリテーナ16を取り付けるための雌ねじ孔3sがそれぞれ形成される。さらに、パッド装着凹部3m,3mのディスク半径方向内側の両側部には、摩擦パッド15,15のディスク半径方向内側面15aをそれぞれ支承するパッド受け面3t,3tが設けられる。また、天井開口部3kには、ブリッジ部3c,3cの剛性力を高めるための剛性メンバー17が取付ボルト17a,17aによって取り付けられている。
【0016】
このような構成を有するキャリパボディ3における寸法精度を要求される部分、例えば、ピストンシール8を嵌着するピストンシール溝5d,7dやダストブーツ9を嵌着するダストブーツ溝5e,7eを含むシリンダ孔5,7、トルク受け面3p,3p、リテーナ取付凹部3q、パッド受け面3t、前記開口部3dのシリンダ孔開口側壁面3uは、それぞれ仕上げ加工が施された加工面となっており、各加工面は、加工方向や形状等に応じた加工刃が選択使用される。
【0017】
仕上げ加工される部分において、トルク受け面3pと、該トルク受け面3pに直交する前記開口部のシリンダ孔開口側壁面3uとが交差する角部C1には、トルク受け面3p及びパッド受け面3tを切削加工する加工刃の逃げ凹部3vが設けられている。同様に、トルク受け面3pと、該トルク受け面3pに直交するパッド受け面3tとが交差する角部C2にも、トルク受け面3p及びパッド受け面3tを切削加工する加工刃の逃げ凹部3wが設けられている。これらの逃げ凹部3v,3wにおける各面に対する開口幅は、各面を仕上げ加工する加工刃の半径以上で、各面の機能、例えばトルク受け面3pにおけるトルク受けとしての機能を損なわない寸法に設定されている。また、トルク受け面3pとシリンダ孔開口側壁面3uとの角部に設けられる逃げ凹部3vは、前記角部C1のディスク半径方向外端より内側部分からディスク半径方向内端までの間に設けられており、角部C1のディスク半径方向外端部分には逃げ凹部3vが存在しない部分A1を設けている。
【0018】
前記摩擦パッド15は、ライニング15bと金属製の裏板15cとから構成され、それぞれのライニング15bをディスクロータ2側に向けた状態で、天井開口部3kからディスクロータ2の側面と、両トルク受け面3p,3pと、シリンダ孔開口側壁面3uとの間に挿入され、シリンダ孔5,7の前面に配設される。
【0019】
前記リテーナ16は、制動時の摩擦パッド15をディスク軸方向へ案内するもので、ディスク回入側とディスク回出側とにそれぞれ配置されている。各リテーナ16は、ディスクロータ2を挟んで隣接するトルク受け面3p,3pにそれぞれ敷設される一対のトルク受け片16a,16aと、該トルク受け片16a,16aのディスク外周側を連結し、前記天井開口部3kのディスク回出側面3n又はディスク回入側面3oに沿ってディスクロータ2を跨いで配置される連結部16bとをそれぞれ備えている。また、各トルク受け片16aのディスク半径方向中間部には、前記リテーナ取付凹部3qのV字形状に対応して屈曲形成された取付部16cが形成され、該取付部16cのディスク半径方向内側面16dには、リテーナ16をキャリパボディ3に取り付けるためのリテーナ取付ボルト18を挿通するボルト孔16eが形成されている。さらに、トルク受け片16aのディスク半径方向内端部は、前記パッド受け面3t,3tに沿って折り曲げられ、摩擦パッド15の裏板15cを支持するパッド受け片16f,16fがそれそれ形成されている。また、ディスク回入側のリテーナ16は、トルク受け片16aのディスク半径方向外側中央部にディスク回出側に突出した湾曲部16gが設けられ、該湾曲部16gによって摩擦パッド15,15をディスク回出側に押し付けるようにしている。
【0020】
リテーナ16の取付部16cが挿入される前記リテーナ取付凹部3qは、取付部16cの突出形状より僅かに大きな凹部形状を有しており、ボルト孔16eを形成した取付部16cのディスク半径方向内側面16dが当接するリテーナ取付凹部3qのディスク半径方向内側面3rには前述の仕上げ加工が施されている。また、リテーナ取付凹部3qのディスク半径方向内側面3rと、ディスク半径方向内側のトルク受け面3pとが交差する角部、及び、ディスク半径方向外側面3lと、ディスク半径方向外側のトルク受け面3pとが交差する角部には面取部3x,3xがそれぞれ設けられ、前記取付部16cのディスク半径方向内側面16dとディスク半径方向内側のトルク受け片16aとが交差する角部の内面と、前記面取部3xの外面との間、さらに、取付部16cのディスク半径方向外側面16hとディスク半径方向外側のトルク受け片16aとが交差する角部の内面と、前記面取部3xの外面との間に隙間E1をそれぞれ設けるようにしている。
【0021】
このようなキャリパボディ3を鋳造によって製造する際には、キャリパボディ3の外部を形成する複数の外型と、内部を形成する中子とを組み合わせた鋳造型が使用される。中子20は、4つのシリンダ孔5,7の下孔をそれぞれ形成する4つの下孔形成部21と、前記開口部3dを形成する開口部形成部22と、隣り合う下孔形成部21の底部側を繋ぐ液通孔形成部23と、車体取付ブラケット側突出部24とを備えている。各下孔形成部21は、前記ピストン4,6が摺動するピストン摺動部5a,7aの下孔を形成するピストン摺動部下孔形成部21aと、シリンダ孔底部側の大径孔部5b,7bを形成する大径下孔形成部21bとを連続して備えており、ピストン摺動部下孔形成部21aの外径は、小径のシリンダ孔7のピストン摺動部7aの内径よりも小径に、大径下孔形成部21bの外径は、大径のシリンダ孔5のピストン摺動部5aの内径よりも大径にそれぞれ形成されると共に、大径下孔形成部21bのキャリパボディ中心側面21cは、ピストン摺動部下孔形成部21aの軸線に直交する平面状に形成されている。また、開口部形成部22には、シリンダ孔開口側壁面形成部22aや、パッド装着凹部形成部22b、トルク受け面形成部22c、リテーナ取付凹部形成部22dを備え、トルク受け面形成部22cとシリンダ孔開口側壁面形成部22aとが交差する角部と、トルク受け面形成部22cとシリンダ孔開口側壁面形成部22aとが交差する角部とには、前記逃げ凹部3v,3wを形成するための凸部22e,22fがそれぞれ設けられている。また、前記リテーナ取付凹部3qの面取部3x,3xを形成する部分には、面取形成部22g,22gが設けられている。
【0022】
このような中子20を用いて鋳造されたキャリパボディの原型は、小径のシリンダ孔7のピストン摺動部7aの内径(D1)よりも小径(D2)の4つの同径のピストン摺動部下孔と、大径のシリンダ孔5のピストン摺動部5aの内径(D3)よりも大径(D4)の大径下孔と、開口部3dの大きさより僅かに小さな開口部形成部とが形成されている。このキャリパボディの原型は、熱処理炉にて所定の熱処理が施された後、ピストン摺動部下孔がそれぞれのシリンダ孔5,7のピストン摺動部5a,7aの径に応じて所定の加工刃等によってそれぞれ仕上げ加工されると共に、ピストンシール8を嵌着するピストンシール溝5d,7d、ダストブーツ9を嵌着するダストブーツ溝5e,7eが所定の加工刃等によってそれぞれ仕上げ加工され、同様に、開口部形成部には、ロータ溝3y,トルク受け面3p,リテーナ取付凹部3qのディスク半径方向内側面3r等に所定の仕上げ加工が施される。さらに、前記ポート3e,3eや、ブリューダ孔3f,3f、ユニオン孔3hが穿設加工される。この仕上げ加工の際に、大径下孔形成部21b及び液通孔形成部23により形成された部分は、鋳肌のまま前記大径孔部5b,7b及び液通孔12となり、これらの部分の仕上げ加工を行う必要が無く、加工作業の簡略化が図れる。
【0023】
また、リテーナ取付凹部3qは、リテーナ取付ボルト18によってリテーナ16を取り付けるディスク半径方向内側面3rのみが仕上げ加工される。このように、リテーナ取付凹部3qにおいて、天井開口部3k側を向いたディスク半径方向内側面3rを仕上げ加工してリテーナ16を取り付ける面とすることにより、モノコック構造のキャリパボディ3であっても、リテーナ16の所定位置への配置及びリテーナ取付ボルト18の螺着を天井開口部3kから行えるので、リテーナ16の取り付けを容易かつ確実に行うことができる。しかも、リテーナ16は、一対のトルク受け片16a,16aと連結部16bとで形成されるので、金属薄板を打ち抜いて取付部16cやパッド受け片16f等を折り曲げ加工するだけで製作することができ、従来のリテーナに比べて形状が簡素であり、生産性の向上や生産コストの低減を図れる。また、ディスク回入側のリテーナ16に、ディスク回出側に突出させた湾曲部16gを設けて摩擦パッド15をディスク回出側に押し付けるようにしているので、摩擦パッド15のガタ付きを抑えることができる。さらに、リテーナ16を取り付けたときに、取付部16のディスク半径方向内側面16dと、ディスク半径方向内側のトルク受け片16aとの折曲部が位置する部分を前記面取部3xによって面取りした形状としているので、リテーナ取付凹部3qやリテーナ16に製作誤差があっても、両者の角部が干渉することを回避することができ、リテーナ16のトルク受片16aの座りを良くし、トルク受け片16aのディスク半径方向内側部分をトルク受け面3pに確実に配設することができ、摩擦パッド15を良好に案内することができる。加えて、鋳造時に中子20によって面取部3xを形成することにより、面取部3xを容易に形成することができる。
【0024】
また、中子20のトルク受け面形成部22cの角部に設けた凸部22e,22fによってキャリパボディの原型のトルク受け面3pと該トルク受け面3pに直交する開口部のシリンダ孔開口側壁面3uとの角部となる部分及びトルク受け面3pとこれに直交するパッド受け面3tとの角部となる部分に逃げ凹部3v,3wがそれぞれ形成されることから、トルク受け面3pやシリンダ孔開口側壁面3u、パッド装着凹部3mを仕上げ加工する加工刃30を、仕上げ面の両端に隣接する面に接触させない状態で加工することができるので、加工刃30を良好な状態で使用することができ、これらの各面、特に精度が要求されるトルク受け面3pを確実かつ良好に仕上げ加工することができる。
【0025】
すなわち、図13に示されるように、従来は、各面を、例えば加工刃30で仕上げ加工した後、加工刃30よりも小径の加工刃31を用いて角部C1(C2)を仕上げ加工していたのに対し、逃げ凹部3v(3w)を設けることにより、各面を仕上げ加工する加工刃30のみで角部C1(C2)を良好に仕上げ加工することができ、仕上げ加工に要する手間や時間、加工刃の種類等を削減することができる。逃げ凹部3v,3wの開口幅は、直交する面を加工する加工刃の半径と同等乃至僅かに大きくすればよい。
【0026】
さらに、前記角部C1のディスク半径方向外端部分における逃げ凹部3vが存在しない部分A1の寸法は、リテーナ16や摩擦パッド15の装着及び動作に影響しない範囲に設定することにより、仕上げ加工が不十分でも問題はなく、このような半径の大きな円弧を有する肉厚部を設けることにより、トルク受け面3pとシリンダ孔開口側壁面3uとが交差する部分の強度を向上させてキャリパボディ3の剛性を保持することができる。また、これらの逃げ凹部3v,3wを鋳造時に中子20で形成することにより、逃げ凹部3v,3wを容易に形成することができる。
【0027】
また、ディスク周方向に内径が異なる複数のシリンダ孔を並設したキャリパボディの場合、車両右側に搭載されるディスクブレーキのキャリパボディと、上記形態例に示す車両左側のキャリパボディとでは、車体への取り付け方向が鏡面対称の関係となり、大径の大径シリンダ孔用下孔形成部と小径の小径シリンダ孔用下孔形成部とを、シリンダ孔の径に応じてそれぞれ設けた中子を用いた場合には、車体取付ブラケットと大径、小径の各シリンダ孔との関係から、右側用、左側用の2種類の中子を用意する必要があるが、本形態例に示すように、シリンダ孔5,7におけるピストン摺動部5a,7aを形成する部分のピストン摺動部下孔形成部21aを小径シリンダ孔7のピストン摺動部7aより小径に形成し、シリンダ孔底部に位置する大径下孔形成部21bを大径シリンダ孔5のピストン摺動部5aより大径に形成すると共に、大径下孔形成部21bのキャリパボディ中心側面21cとなる大径下孔形成部21bとピストン摺動部下孔形成部21aとの間に形成される段部をピストン摺動部下孔形成部21aの軸線に直交する平面状に形成し、鋳造後に、右側用と左側用とに対応させて大径、小径の各シリンダ孔5,7を加工するようにしたことにより、鋳造時の中子20の向きを車体取付ブラケット側突出部24の方向に応じて変えることで右側用、左側用を兼用することが可能となる。したがって、中子を1種類とすることができ、中子を製造するための型を1種類にすることができるだけでなく、キャリパボディを鋳造する際に中子を取り違えるおそれもなくなるので、キャリパボディを製造する際の作業性の向上や製造コストの削減が図れる。
【0028】
また、大径下孔形成部21bのキャリパボディ中心側面21cを平面状とすることにより、ピストン摺動部下孔形成部21aで形成した下孔を小径シリンダ孔7のピストン摺動部7aに対応した小径に加工する場合と、大径シリンダ孔5のピストン摺動部5aに対応した大径に加工する場合とで、ピストンのベアリングエリア長(シリンダ孔の有効長)を同一にすることができるので、両シリンダ孔におけるピストンストロークを同一にでき、ピストンを良好に作動させることができる。
【0029】
なお、本発明は、上述の形態例に限定されるものではなく、例えば、4ポット対向型のキャリパボディに限らず、6ポット以上の対向型のキャリパボディにも適用することができ、シリンダ孔の径も任意である。
【符号の説明】
【0030】
1…ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパボディ、3a,3b…作用部、3c…ブリッジ部、3d…開口部、3e…ポート、3f…ブリューダ孔、3g…ユニオンボス部、3h…ユニオン孔、3i…車体取付ブラケット、3j…取付ボルト挿通孔、3k…天井開口部、3m…パッド装着凹部、3n…ディスク回出側面、3o…ディスク回入側面、3p…トルク受け面、3q…リテーナ取付凹部、3r…ディスク半径方向内側面、3s…雌ねじ孔、3t…パッド受け面、3u…シリンダ孔開口側壁面、3v,3w…逃げ凹部、3x…面取部、3y…ロータ溝、4…大径ピストン、5…大径シリンダ孔、5a…ピストン摺動部、5b…大径孔部、5c…段部、5d…ピストンシール溝、5e…ダストブーツ溝、6…小径ピストン、7…小径シリンダ孔、7a…ピストン摺動部、7b…大径孔部、7c…段部、7d…ピストンシール溝、7e…ダストブーツ溝、8…ピストンシール、9…ダストブーツ、10,11…液圧室、12…液通孔、13…液通管、14…ブリューダスクリュ、15…摩擦パッド、15a…ディスク半径方向内側面、15b…ライニング、15c…裏板、16…リテーナ、16a…トルク受け片、16b…連結部、16c…取付部、16d…ディスク半径方向内側面、16e…ボルト孔、16f…パッド受け片、16g…湾曲部、17…剛性メンバー、17a…取付ボルト、18…リテーナ取付ボルト、20…中子、21…下孔形成部、21a…ピストン摺動部下孔形成部、21b…大径下孔形成部、21c…キャリパボディ中心側面、22…開口部形成部、22a…シリンダ孔開口側壁面形成部、22b…パッド装着凹部形成部、22c…トルク受け面形成部、22d…リテーナ取付凹部形成部、22e,22f…凸部、22g…面取形成部、23…液通孔形成部、24…車体取付ブラケット側突出部、30,31…加工刃、C1,C2…角部、E1…隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成するとともに、前記作用部のディスク周方向に並設される内径の異なる複数のシリンダ孔と、前記作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成し、前記複数のシリンダ孔に外径の異なるピストンをそれぞれ収容するモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法において、前記複数のシリンダ孔と前記開口部とを、複数のシリンダ孔の下孔形成部と開口部形成部とを備え、前記下孔形成部が、前記ピストンが摺動するピストン摺動部の下孔を形成するピストン摺動部下孔形成部と、シリンダ孔底部側の前記ピストン摺動部よりも大径に形成される大径孔部の下孔を形成する大径下孔形成部とを連続して備え、前記ピストン摺動部下孔形成部の外径が、最も小径のシリンダ孔のピストン摺動部よりも小径に、前記大径下孔形成部の外径が、最も大径のシリンダ孔のピストン摺動部よりも大径に形成されると共に、前記大径下孔形成部と前記ピストン摺動部下孔形成部との間に形成される段部が、前記ピストン摺動部下孔形成部の軸線に直交する平面状に形成された1つの中子を備えた鋳造型にて形成し、鋳造後の前記下孔形成部を加工して、あらかじめ設定された小径のシリンダ孔及び大径のシリンダ孔をそれぞれ形成することを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法。
【請求項2】
ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成するとともに、前記作用部のディスク周方向に並設される複数のシリンダ孔の下穴と、前記作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成し、鋳造後に前記下穴を加工して内径の異なる複数のシリンダ孔をそれぞれ形成し、該複数のシリンダ孔に外径の異なるピストンをそれぞれ収容するモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記各シリンダ孔は、前記ピストンが摺動するピストン摺動部と、該ピストン摺動部より大径のシリンダ孔底部側の大径孔部とを連続して備え、ディスク周方向に並設されるピストン摺動部は、小径シリンダ孔の内径より小径に形成した前記下穴を加工することによって小径シリンダ孔及び大径シリンダ孔がそれぞれ形成され、前記各大径孔部は、鋳造時に前記大径シリンダ孔のピストン摺動部の内径より大径にそれぞれ形成されると共に、前記ピストン摺動部と大径孔部との間に形成される段部は、前記シリンダ孔の軸線に直交する平面状に形成されていることを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
【請求項1】
ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成するとともに、前記作用部のディスク周方向に並設される内径の異なる複数のシリンダ孔と、前記作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成し、前記複数のシリンダ孔に外径の異なるピストンをそれぞれ収容するモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法において、前記複数のシリンダ孔と前記開口部とを、複数のシリンダ孔の下孔形成部と開口部形成部とを備え、前記下孔形成部が、前記ピストンが摺動するピストン摺動部の下孔を形成するピストン摺動部下孔形成部と、シリンダ孔底部側の前記ピストン摺動部よりも大径に形成される大径孔部の下孔を形成する大径下孔形成部とを連続して備え、前記ピストン摺動部下孔形成部の外径が、最も小径のシリンダ孔のピストン摺動部よりも小径に、前記大径下孔形成部の外径が、最も大径のシリンダ孔のピストン摺動部よりも大径に形成されると共に、前記大径下孔形成部と前記ピストン摺動部下孔形成部との間に形成される段部が、前記ピストン摺動部下孔形成部の軸線に直交する平面状に形成された1つの中子を備えた鋳造型にて形成し、鋳造後の前記下孔形成部を加工して、あらかじめ設定された小径のシリンダ孔及び大径のシリンダ孔をそれぞれ形成することを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法。
【請求項2】
ディスクロータを挟んで対向配置される一対の作用部とディスクロータの外側を跨ぐブリッジ部とを鋳造型にて一体形成するとともに、前記作用部のディスク周方向に並設される複数のシリンダ孔の下穴と、前記作用部及びブリッジ部に囲まれた開口部とを鋳造時に中子にて形成し、鋳造後に前記下穴を加工して内径の異なる複数のシリンダ孔をそれぞれ形成し、該複数のシリンダ孔に外径の異なるピストンをそれぞれ収容するモノコック構造ピストン対向型の車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記各シリンダ孔は、前記ピストンが摺動するピストン摺動部と、該ピストン摺動部より大径のシリンダ孔底部側の大径孔部とを連続して備え、ディスク周方向に並設されるピストン摺動部は、小径シリンダ孔の内径より小径に形成した前記下穴を加工することによって小径シリンダ孔及び大径シリンダ孔がそれぞれ形成され、前記各大径孔部は、鋳造時に前記大径シリンダ孔のピストン摺動部の内径より大径にそれぞれ形成されると共に、前記ピストン摺動部と大径孔部との間に形成される段部は、前記シリンダ孔の軸線に直交する平面状に形成されていることを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−159820(P2010−159820A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2514(P2009−2514)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
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