説明

車両用ドアハンドル装置

【課題】操作性に優れるとともに組付性の良好な車両用ドアハンドル装置を提供すること。
【解決手段】当該車両用ドアハンドル装置では、フレーム111をスライドドアにおけるアウタパネルに組付けた後に、同フレーム111に対してリンクベース123、連結リンク122、ハンドグリップ121を組付け、次いで、ハンドグリップ121とフレーム111に対してレバー132とキャップ131を組付けることにより、各構成部材のアウタパネルへの組付が行われている。当該装置では、ハンドグリップ121がスライドドアの開扉方向(車両後方)と同方向に開扉操作されると、スライドドアを全閉状態に保持する全閉ラッチ機構を解除するための操作力が発生する。また、ハンドグリップ121がスライドドアの閉扉方向(車両前方)と同方向に閉扉操作されると、スライドドアを全開状態に保持する全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスライドドアに装備されて同スライドドアの開閉操作(開扉操作と閉扉操作)をスライドドアの外側から行うための車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ドアハンドル装置は、例えば、下記特許文献1に示されていて、スライドドアにおけるアウタパネルに固定され、車両の前後方向に沿って配置されるフレームと、このフレームに組付けられていて、前記アウタパネルの車両外側に配置されて車両の前後方向に沿って延びる把持部を有するハンドグリップを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−85032号公報
【0004】
上記した特許文献1に記載されている車両用ドアハンドル装置においては、フレームとハンドグリップがリンク機構を介して連係する構成が採用されていて、ハンドグリップを一方向に操作(開扉操作)することにより、全閉状態にあるスライドドアを開くことが可能であり、また、ハンドグリップを他方向に操作(閉扉操作)することにより、全開状態にあるスライドドアを閉じることが可能である。このため、この車両用ドアハンドル装置は、操作性に優れている。
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、特許文献1に記載されている車両用ドアハンドル装置では、スライドドアのアウタパネルを挟んでその車両内側と車両外側にそれぞれ配置されるフレームとハンドグリップをリンク機構を介して連係する際の組付方法について何ら言及されていない。現実的には、特許文献1に記載されている車両用ドアハンドル装置では、フレームとハンドグリップをリンク機構を介して連係する際の組付に苦慮するものと予測される。
【0006】
(課題を解決するための手段と作用効果)
本発明は、操作性に優れるとともに組付性の良好な車両用ドアハンドル装置を提供すべくなされたものであり、
車両のスライドドアに装備されて同スライドドアの開閉操作を前記スライドドアの外側から行うための車両用ドアハンドル装置であり、
前記スライドドアにおけるアウタパネルにドア内側から固定され、車両の前後方向に沿って配置されるフレームと、
前記アウタパネルを通して前記フレームの一端部に対して装着可能なリンクベースに、基端部にて回転可能に組付けられていて、車両前後方向にて揺動可能な連結リンクと、
この連結リンクの先端部に回転可能に連結されていて前記アウタパネルを通して前記フレームの一端部に対して前記リンクベース及び前記連結リンクと共に挿通される脚部を一端部に有するとともに、前記アウタパネルを通して前記フレームの他端部に対して挿通されるアーム部を他端部に有していて、前記脚部と前記アーム部間に形成されている把持部が前記アウタパネルの車両外側にて車両の前後方向に沿って延びるハンドグリップと、
このハンドグリップの他端部側にて前記アウタパネルを挟んで前記フレームに車両外側から組付けられるキャップに、車両内外方向にて傾動可能に組付けられていて、前記アウタパネルを通して前記アーム部に設けた挿通孔に挿通されるレバーと、
前記ハンドグリップを前記フレームに対して初期位置に向けて付勢する第1付勢部材と、
前記連結リンクを前記フレームに対して初期位置に向けて付勢する第2付勢部材とを備えていて、
前記ハンドグリップが全閉状態にある前記スライドドアを開側に移動させる開扉方向と同方向に開扉操作されることで、前記ハンドグリップが初期位置から前記第1付勢部材の付勢力に抗して開扉方向に移動して、前記レバーが車両外方に向けて傾動し、前記スライドドアを全閉状態に保持する全閉ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定され、
前記ハンドグリップが全開状態にある前記スライドドアを閉側に移動させる閉扉方向と同方向に閉扉操作されることで、前記ハンドグリップと前記連結リンクが初期位置から前記第2付勢部材の付勢力に抗して閉扉方向に移動して、前記連結リンクが前記スライドドアの閉扉方向に向けて揺動し、前記スライドドアを全開状態に保持する全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定されている車両用ドアハンドル装置に特徴がある。
【0007】
上述した各操作力は、ハンドグリップが開扉操作または閉扉操作されて動くことにより得られる機械的な操作力(ハンドグリップと全閉ラッチ機構または全開ラッチ機構が機械的に連結されている場合におけるハンドグリップの操作力)であってもよく、ハンドグリップが開扉操作または閉扉操作されて動くことにより得られる電気的な操作力(ハンドグリップと全閉ラッチ機構または全開ラッチ機構が電気的に連係している場合において、ハンドグリップの操作力をトリガーとして得られる電気的な解除力)であってもよい。
【0008】
上記した本発明の車両用ドアハンドル装置においては、ハンドグリップが全閉状態にあるスライドドアを開側に移動させる開扉方向と同方向に開扉操作されることで、スライドドアを全閉状態に保持する全閉ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定されている。また、ハンドグリップが全開状態にあるスライドドアを閉側に移動させる閉扉方向と同方向に閉扉操作されることで、スライドドアを全開状態に保持する全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定されている。このため、スライドドアの開閉方向に対して違和感の無い方向(同方向)へのハンドグリップの操作によって、各ラッチ機構(全閉状態にあるスライドドアでは全閉ラッチ機構であり、全開状態にあるスライドドアでは全開ラッチ機構である)を解除することができて、スライドドアを開閉することが可能である。したがって、当該車両用ドアハンドル装置は操作性に優れている。
【0009】
また、上記した本発明の車両用ドアハンドル装置においては、予め、ハンドグリップの脚部に連結リンクがリンクベースと共に組付けられているとともに、キャップにレバーが組付けられていて、以下の組付手順にて、各構成部材(フレーム、リンクベース、連結リンク、ハンドグリップ、レバー、キャップ等)がスライドドアに組付けられている。始めに、フレームがスライドドアにおけるアウタパネルにドア内側から固定されている。次いで、ハンドグリップの脚部にリンクベースと共に組付けられている連結リンクが、アウタパネルを通してフレームの一端部に対してリンクベースを介して組付けられるとともに、ハンドグリップのアーム部が、アウタパネルを通してフレームの他端部に対して挿通される。次いで、キャップに組付けられているレバーが、アウタパネルを通してハンドグリップのアーム部に設けた挿通孔に挿通され、その後にキャップがフレームに組付けられる。
【0010】
ところで、上記した組付手順は、本発明が対象とする車両用ドアハンドル装置において、従来、一般的に行われている組付手順と似た組付手順であり、フレームをスライドドアにおけるアウタパネルに組付けた後に、同フレームに対してリンクベース、連結リンク、ハンドグリップを組付け、次いで、ハンドグリップとフレームに対してレバーとキャップを組付けることにより、各構成部材のアウタパネルへの組付が行われている。このため、当該車両用ドアハンドル装置は組付性に優れている。
【0011】
上記した本発明の実施に際して、
前記ハンドグリップが全閉状態にある前記スライドドアを開側に移動させる開扉方向と同方向に開扉操作されることで、前記ハンドグリップが初期位置から前記第1付勢部材の付勢力に抗して開扉方向に移動して、前記レバーが車両外方に向けて傾動するとともに、前記アーム部に設けた被ガイド部が前記フレームに設けた第1ガイド部に沿って前記スライドドアの開扉方向に向けて移動し、前記スライドドアを全閉状態に保持する全閉ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定され、
前記ハンドグリップが全開状態にある前記スライドドアを閉側に移動させる閉扉方向と同方向に閉扉操作されることで、前記ハンドグリップと前記連結リンクが初期位置から前記第2付勢部材の付勢力に抗して閉扉方向に移動して、前記連結リンクが前記スライドドアの閉扉方向に向けて揺動するとともに、前記アーム部に設けた被ガイド部が前記フレームに設けた第2ガイド部に沿って前記スライドドアの閉扉方向に向けて移動し、前記スライドドアを全開状態に保持する全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定されていることも可能である。
【0012】
この場合には、上記した本発明の車両用ドアハンドル装置において、全閉状態にあるスライドドアを開側に移動させる開扉方向と同方向に操作されるハンドグリップの動きは、ハンドグリップが初期位置から第1付勢部材の付勢力に抗して開扉方向に移動して、レバーが車両外方に向けて傾動するとともに、アーム部に設けた被ガイド部がフレームに設けた第1ガイド部に沿ってスライドドアの開扉方向に向けて移動する動きであって、ハンドグリップの脚部と連結リンクとの連結中心を中心として、ハンドグリップが車両外方で開扉側に傾動する動きである。
【0013】
また、全開状態にあるスライドドアを閉側に移動させる閉扉方向と同方向に操作されるハンドグリップの動きは、ハンドグリップと連結リンクが初期位置から第2付勢部材の付勢力に抗して閉扉方向に移動して、連結リンクがスライドドアの閉扉方向に向けて揺動するとともに、アーム部に設けた被ガイド部が前記フレームに設けた第2ガイド部に沿ってスライドドアの閉扉方向に向けて移動する動きであって、ハンドグリップの脚部と連結リンクとの連結部が閉扉方向に向けて移動する動きであり、このハンドグリップの動きに伴って、連結リンクがリンクベースとの連結中心を中心としてスライドドアの閉扉方向に向けて揺動する。
【0014】
このため、スライドドアを開側に移動させる際のハンドグリップの移動量(すなわち、ハンドグリップの脚部と連結リンクとの連結中心を中心としたハンドグリップの車両外方で開扉側への傾動量)を必要十分に確保することが可能であるとともに、スライドドアを閉側に移動させる際のハンドグリップの移動量(すなわち、連結リンクとリンクベースとの連結中心を中心とした連結リンクの閉扉方向への揺動量)を必要十分に確保することが可能であって、ハンドグリップの各操作を的確に行うことが可能である。
【0015】
また、上記した本発明の実施に際して、前記スライドドアの閉扉方向に所定の慣性が作用したとき、第3付勢部材の付勢力に抗して前記レバーから離間し所定量傾動可能な慣性ストッパが前記レバーに設けられていて、この慣性ストッパが前記レバーから離間して所定量傾動することにより、前記ハンドグリップの前記アーム部が前記慣性ストッパに係合して、前記ハンドグリップの閉扉方向への移動が規制されるように設定されていることも可能である。
【0016】
この場合には、車両衝突等により所定の慣性がスライドドアの閉扉方向に作用したとき、慣性ストッパがレバーから離間して所定量傾動する作動が得られて、ハンドグリップのアーム部が慣性ストッパに係合し、ハンドグリップの閉扉方向への移動が規制される。このため、上述した慣性が当該装置に作用しても、同慣性によってハンドグリップが閉扉方向に移動されることはなく、例えば、スライドドアが全開状態にある車両において、スライドドアを全開状態に保持する全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生することはない。したがって、上述した車両衝突等による慣性対策(全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生しないようにする安全性の向上)をシンプルな構成(レバーに慣性ストッパと第3付勢部材を設ける構成)にて達成することが可能である。
【0017】
また、上記した本発明の実施に際して、前記フレームは、前記ハンドグリップの前記アーム部に設けた前記挿通孔に前記レバーが挿入される際に、前記ハンドグリップが前記フレームから抜けることを防止する抜け止め突起を有することも可能である。この場合には、フレームの抜け止め突起により、ハンドグリップがフレームから抜けることを防止できるため、レバーおよびキャップのハンドグリップおよびフレームに対する組付性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による車両用ドアハンドル装置を備えた車両用スライドドアの一実施形態を概略的に示した側面図である。
【図2】図1に示した車両用ドアハンドル装置の主要構成を示した側面図(車両外方からみた図)である。
【図3】図2に示した車両用ドアハンドル装置の底面図である。
【図4】図2に示した車両用ドアハンドル装置の正面図(車両前方からみた図)である。
【図5】図2に示した車両用ドアハンドル装置の背面図(車両内方からみた図)である。
【図6】図5に示した車両用ドアハンドル装置のハンドル中央横断平面図である。
【図7】図6の左方部分(車両後方部分)の拡大図である。
【図8】図2に示した車両用ドアハンドル装置におけるベースアセンブリの側面図である。
【図9】図8に示したベースアセンブリの底面図である。
【図10】図8に示したベースアセンブリの正面図である。
【図11】図8に示したベースアセンブリの背面図である。
【図12】図2に示した車両用ドアハンドル装置におけるハンドルアセンブリの側面図である。
【図13】図12に示したハンドルアセンブリの底面図である。
【図14】図12に示したハンドルアセンブリの正面図である。
【図15】図12に示したハンドルアセンブリの背面図である。
【図16】図2に示した車両用ドアハンドル装置におけるキャップアセンブリの側面図である。
【図17】図16に示したキャップアセンブリの底面図である。
【図18】図16に示したキャップアセンブリの正面図である。
【図19】図16に示したキャップアセンブリの背面図である。
【図20】図8〜図11に示したベースアセンブリに図12〜図15に示したハンドルアセンブリを組付ける状態を示した斜視図である。
【図21】図8〜図11に示したベースアセンブリに図12〜図15に示したハンドルアセンブリを組付けた状態を示した斜視図である。
【図22】ベースアセンブリにハンドルアセンブリを組付けた状態におけるフレームとハンドグリップの関係を示した断面図である。
【図23】図22の部分拡大図である。
【図24】図2〜図7に示した車両用ドアハンドル装置のオープン操作を破線にて示しクローズ操作を二点鎖線にて示した側面図である。
【図25】図24に示した車両用ドアハンドル装置の底面図である。
【図26】図24に示した車両用ドアハンドル装置の正面図である。
【図27】図24に示した車両用ドアハンドル装置におけるフレームのガイドとハンドグリップの突起の関係を概略的に示したハンドル中央横断平面図である。
【図28】フレームの車両後方部分に組付けられるクローズスイッチ(一実施形態)とハンドグリップの関係を示した図6相当のハンドル中央横断平面図である。
【図29】図28の左方部分(車両後方部分)の拡大図である。
【図30】フレームの車両前方部分に組付けられるクローズスイッチ(他の実施形態)とハンドグリップの関係を示した図6相当のハンドル中央横断平面図である。
【図31】図30の右方部分(車両前方部分)の拡大図である。
【図32】図16〜図19に示したキャップアセンブリのレバーとハンドグリップの関係(レバーとハンドグリップが共に初期位置にあるときの関係)を示した斜視図である。
【図33】図32からハンドグリップを取り除いた状態の斜視図である。
【図34】図32に示したハンドグリップがクローズ操作された状態の斜視図である。
【図35】図34からハンドグリップを取り除いた状態の斜視図である。
【図36】図32に示したハンドグリップがキャップアセンブリの慣性ストッパによってクローズ動作を阻止された状態の斜視図である。
【図37】図36からハンドグリップを取り除いた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明による車両用ドアハンドル装置100の一実施形態を示していて、この実施形態の車両用ドアハンドル装置100では、当該装置100がスライドドア200に装着したフロントロック201及びリアロック202と機械的に連係するとともにスライドドア200に装着した全開ロック203と電気的に連係するように構成されている。
【0020】
スライドドア200は、車両の側部にて車両前後方向に移動可能であり、車両ボディ(図示省略)に形成された乗降用の開口部を開閉可能に(具体的には、スライドドア200を車両後方に移動させることにより乗降用の開口部を開き、スライドドア200を車両前方に移動させることにより乗降用の開口部を閉じるように)構成されている。フロントロック201及びリアロック202は、スライドドア200を全閉状態(乗降用の開口部を閉じている状態)で保持するためのもの(すなわち、全閉ラッチ機構)であり、スライドドア200の車両前側及び車両後側にそれぞれ配設されている。全開ロック203は、スライドドア200を全開状態(乗降用の開口部を開いている状態)で保持するためのもの(すなわち、全開ラッチ機構)であり、スライドドア200の車両前側下部に配設されている。なお、リアロック202のみでスライドドア200を全閉状態で保持することができれば、フロントロック201を設けなくても実施することが可能である。
【0021】
車両用ドアハンドル装置100は、図2〜図7に示したように、スライドドア200のアウタパネル200a(図1参照)に組付けられるベースアセンブリ110(図8〜図11参照)を備えるとともに、ベースアセンブリ110のフレーム111に組付けられるハンドルアセンブリ120(図12〜図15参照)、キャップアセンブリ130(図16〜図19参照)、及び、クローズスイッチS1(図28、図29参照)を備えている。
【0022】
ベースアセンブリ110は、図2〜図7及び図8〜図11に示したように、フレーム111とベルクランク112とスプリング113とナット114等を備えている。フレーム111は、スライドドア200におけるアウタパネル200aにドア内側から固定されるように構成されていて、車両後方部位(図8の右方部位)に開口111aを有するとともに、車両前方部位(図8の左方部位)に開口111bを有している。なお、フレーム111のアウタパネル200aへの組付は、ドア外側からスライドドア200のアウタパネル200aを通してフレーム111の段付取付孔111cに組付けられてフランジ部114aがアウタパネル200aを介してフレーム111に係合するナット114と、このナット114にドア内側から螺着されるネジ115(図5、図6参照)を用いて行われるように構成されている。
【0023】
ベルクランク112は、その軸部112aにてフレーム111の取付孔111dに回転可能に組付けられていて、フレーム111に対して軸部112aの軸方向に所定量移動可能とされている。また、ベルクランク112は、キャップアセンブリ130のレバー132を介してハンドグリップ121のアーム部121cと連係する入力部112bを有するとともに、フロントロック201及びリアロック202に連結機構(図示省略)を介して機械的に連結されている出力部112cを有している。なお、ベルクランク112には、ハンドルアセンブリ120とキャップアセンブリ130がフレーム111に組付けられるまでの間に、ベルクランク112を仮保持位置(ハンドルアセンブリ120とキャップアセンブリ130をフレーム111に組付ける際に、ベルクランク112の入力部112bが邪魔とならない位置)に一時的に保持させるための係止爪112d(フレーム111の係合保持部111eに対して係合離脱可能である)が設けられている。かかる構成は、特開2003−41811号公報にて開示されている技術である。
【0024】
スプリング113は、ベルクランク112をフレーム111に対して初期位置に向けて付勢する第1付勢部材であり、ベルクランク112の軸部112a外周にコイル部にて組付けられていて、一端にてフレーム111に弾性的に係合し他端にてベルクランク112に弾性的に係合している。これにより、スプリング113は、ベルクランク112における入力部112bの先端112b1(図6参照)がレバー132の先端部132aを介してハンドグリップ121のアーム部121cに弾性的に係合する方向(図4の反時計回転方向)に所定の付勢力にて回転付勢している。このため、ベルクランク112における入力部112bの先端112b1は、レバー132を介してハンドグリップ121のアーム部121cに弾性的に係合している。
【0025】
ハンドルアセンブリ120は、図2〜図7及び図12〜図15に示したように、ハンドグリップ121と連結リンク122とリンクベース123とスプリング124等を備えている。ハンドグリップ121は、車両の前後方向に沿って延びる把持部121aと、この把持部121aの一端部(車両後方側端部)に設けられた脚部121bと、把持部121aの他端部(車両前方側端部)に設けられたアーム部121cを有している。把持部121aは、脚部121bとアーム部121c間に形成されていて、スライドドア200におけるアウタパネル200aの車両外側に配置される部位であり、スライドドア200の開閉操作時(開扉操作時と閉扉操作時)に手で操作可能である。脚部121bは、連結リンク122を介してリンクベース123に連結されている。アーム部121cは、キャップアセンブリ130のレバー132を介して上述したベルクランク112に連結されている。
【0026】
このアーム部121cには、レバー132の先端部132aを挿通可能な矩形の挿通孔121c1が形成されているとともに、フレーム111に設けた一対のガイド111fに係合する一対の突起(被ガイド部)121c2が形成されている。各突起121c2は、図13に示したように、車両外側の端面(図13の上側の端面)が車両前方に向けて車両外方に傾斜した形状で全体が略台形に形成されていて、ハンドグリップ121が図24〜図27に破線で示したようにオープン操作(開扉操作)されるときには、各ガイド111fの第1ガイド溝111f1に沿って移動し、ハンドグリップ121が図24〜図27に二点鎖線で示したようにクローズ操作(閉扉操作)されるときには、各ガイド111fの第2ガイド溝111f2に沿って移動するように構成されている。
【0027】
各ガイド111fの第1ガイド溝111f1は、車両の内外方向に延びている。この第1ガイド溝111f1は、ハンドグリップ121がオープン操作されるとき、ハンドグリップ121の突起121c2が車両の外方と後方に移動するようにガイドする。一方、各ガイド111fの第2ガイド溝111f2は、第1ガイド溝111f1の一端部(車両内方端部)に後端にて接続されていて、車両の前後方向に延びている。この第2ガイド溝111f2は、車両の前後方向にて傾斜していて、前端が後端に比して車両外方に位置しており、ハンドグリップ121がクローズ操作されるとき、ハンドグリップ121の突起121c2が車両の外方と前方に移動するようにガイドする。(図27参照)
【0028】
上記したオープン操作は、全閉状態にあるスライドドア200を開くための操作であって、このときには、スライドドア200を開側に移動させる開扉方向(車両後方)と同方向にハンドグリップ121が操作される。このため、図24〜図26に破線で示したハンドグリップ121は、初期位置にあるハンドグリップ121に対して車両外方で車両後方に移動している。一方、上記したクローズ操作は、全開状態にあるスライドドア200を閉じるための操作であって、このときには、スライドドア200を閉側に移動させる閉扉方向(車両前方)と同方向にハンドグリップ121が操作される。このため、図24〜図26に二点鎖線で示したハンドグリップ121は、初期位置にあるハンドグリップ121に対して車両外方で車両前方に移動している。
【0029】
連結リンク122は、図7にて詳細に示したように、ハンドグリップ121とリンクベース123を連結するためのものであり、基端部122aにてリンクベース123に連結ピン125を介して回転可能に組付けられていて、車両前後方向(図6、図7の左右方向)にて揺動可能である。また、連結リンク122は、先端部122bにてハンドグリップ121の脚部121bに連結ピン126を介して回転可能に組付けられている。なお、連結リンク122の先端部122bには、連結リンク122に対するハンドグリップ121の最大回転量を規定するストッパ122b1が設けられていて、このストッパ122b1は、ハンドグリップ121の脚部121bに設けた係合部121b1と係合可能である。
【0030】
リンクベース123は、連結リンク122の基端部122aをフレーム111の一端部(車両後方端部)に装着(固定)するためのものであり、連結リンク122と共にハンドグリップ121の脚部121bに組付けられていて、一対の舌片部123aにてフレーム111の一端部に形成した一対の矩形取付孔111gに弾性的に組付けられている。なお、リンクベース123のフレーム111への装着は、図20に示したように、フレーム111に設けた車両後方部位の開口111aを通してハンドルアセンブリ120のリンクベース123をフレーム111に組付けることにより行われている。
【0031】
スプリング124は、連結リンク122をリンクベース123に対して初期位置(図6、図7に示した位置)に向けて付勢する第2付勢部材であり、初期位置では、連結リンク122がリンクベース123のストッパ部123bに当接している。また、スプリング124は、コイル部124aにて連結リンク122の基端部122aに形成した円筒部122a1上に回転自在に組付けられていて、一端部124bにて連結リンク122に弾性的に係合し、他端部124cにてリンクベース123に弾性的に係合していて、連結リンク122を図6、図7の反時計回転方向に回転付勢している。
【0032】
キャップアセンブリ130は、図2〜図6及び図16〜図19に示したように、キャップ131とレバー132と慣性ストッパ133とスプリング134等を備えている。キャップ131は、スライドドア200のアウタパネル200aを挟んだ状態でフレーム111の前端部111hにネジ135を用いて車両外側から組付けられるように構成されている。また、キャップ131は、レバー132と慣性ストッパ133を支持する支持部131aを有している。なお、ネジ135は、キャップ131に一体的に設けたナット136(図6の仮想線参照)に螺着されるようになっている。
【0033】
レバー132は、ハンドグリップ121の開扉動作を先端部132aにてベルクランク112の入力部112bに伝達するものであり、基端部132bにてピン137を介してキャップ131の支持部131aに回転可能に組付けられている。また、レバー132は、中間部132cにてハンドグリップ121のアーム部121cと摺動可能に係合している。なお、レバー132の基端部132bには突起132b1が形成されていて、この突起132b1がキャップ131の支持部131aに形成したストッパ部131a1と図6に示した初期位置にて当接するように構成されている。
【0034】
慣性ストッパ133は、例えば、車両の衝突等によって、スライドドア200の閉扉方向に所定の慣性が作用したとき、ハンドグリップ121の閉扉方向への移動を規制するものであり、レバー132と共に基端部133aにてピン137を介してキャップ131の支持部131aに回転可能に組付けられている。また、慣性ストッパ133は、図16〜図19と図32〜図35に示したようにレバー132に対して接合可能であるとともに、図36、図37に示したようにレバー132に対して離間可能である。このため、慣性ストッパ133は、上述したようにスライドドア200の閉扉方向に所定の慣性が作用したとき、図36、図37に示したように、レバー132から離間して所定量傾動可能であり、このときには、基端部133aに形成した突起133a1がキャップ131の支持部131aに形成したストッパ部131a1と当接する。
【0035】
スプリング134は、慣性ストッパ133をレバー132に対して初期位置(図16〜図19と図32〜図35に示した位置)に向けて付勢する第3付勢部材であり、初期位置では、慣性ストッパ133がレバー132に対して一体的に接合していて、ハンドグリップ121のアーム部121cがレバー132と慣性ストッパ133に対して車両の前後方向に摺動可能に係合している(図32、図34参照)。また、スプリング134は、両端部134a、134bにてキャップ131の支持部131aに組付けられ、中間部134cにて慣性ストッパ133の中間部133bに弾性的に係合していて、慣性ストッパ133を図17の反時計回転方向に回転付勢している。
【0036】
クローズスイッチS1は、図28、図29に示したように、ハンドグリップ121のクローズ操作(ハンドグリップ121が実線にて示した初期位置から二点鎖線にて示した位置に移動する操作)に伴って作動するものであり、フレーム111に組付けられていて、連結リンク122の実線で示した初期位置から二点鎖線で示した閉作動位置への動きを電気的に検出可能である。このクローズスイッチS1の電気的な検出信号は、図1に示した電気制御装置ECUに入力されるように構成されていて、この検出信号に基づいて全開ロック203に付設したアクチュエータActが作動して全開ロック203が解除動作するように構成されている。なお、全開ロック203が解除動作すると、全開ロック203によるスライドドア200の全開状態での保持が解除されて、全開状態のスライドドア200を閉扉作動させることが可能である。
【0037】
上記のように構成した車両用ドアハンドル装置100では、ベースアセンブリ110、ハンドルアセンブリ120、キャップアセンブリ130等がそれぞれ予め組み立てられていて、以下の組付手順にて、ベースアセンブリ110、ハンドルアセンブリ120、キャップアセンブリ130等がスライドドア200に組付けられている。始めに、ベースアセンブリ110のフレーム111がスライドドア200のアウタパネル200aにドア内側から組付けられ、次いで、図20〜図24に示したように、ベースアセンブリ110のフレーム111にハンドルアセンブリ120が組付けられている。
【0038】
次いで、ハンドルアセンブリ120のハンドグリップ121とベースアセンブリ110のフレーム111に対してキャップアセンブリ130が組付けられている。最後に、ベースアセンブリ110におけるベルクランク112の出力部112cがスライドドア200に装着したフロントロック201及びリアロック202と連結機構(図示省略)を介して機械的に連結されるとともに、ベースアセンブリ110のフレーム111に組付けたクローズスイッチS1と全開ロック203に付設したアクチュエータActが電気的に接続されている。
【0039】
ところで、上記したようにベースアセンブリ110のフレーム111にハンドルアセンブリ120が組付けられる際には、ハンドグリップ121の脚部121bが連結リンク122及びリンクベース123等と共に、スライドドア200のアウタパネル200aに設けた開口(図示省略)とフレーム111の後方開口111aを通してフレーム111の車両後方端部(一端部)に組付けられるとともに、ハンドグリップ121のアーム部121cがスライドドア200のアウタパネル200aに設けた開口(図示省略)とフレーム111の前方開口111bを通してフレーム111の車両前方端部(他端部)に挿通されている。
【0040】
なお、この状態(ベースアセンブリ110のフレーム111にハンドルアセンブリ120が組付けられた状態)では、リンクベース123に設けた一対の舌片部123aがフレーム111に形成した一対の矩形取付孔111gに弾性的に組付けられることにより、ハンドグリップ121の脚部121bがフレーム111から抜け止めされる。また、この状態では、ハンドグリップ121のアーム部121cがフレーム111に設けた抜け止め突起111iを押し拡げながら図22及び図23に示したようにフレーム111に組付けられることにより、ハンドグリップ121のアーム部121cがフレーム111から抜け止め(仮止め)される。
【0041】
また、上記したようにハンドルアセンブリ120のハンドグリップ121とベースアセンブリ110のフレーム111に対してキャップアセンブリ130が組付けられる際には、ベースアセンブリ110にて、ベルクランク112がフレーム111に対して仮保持位置に保持されている。このため、キャップアセンブリ130が組付けられる際には、始めに、フレーム111に組付けられたハンドルアセンブリ120のハンドグリップ121が車外方向に所定量回動される。この状態にて、ハンドグリップ121のアーム部121cに設けた挿通孔121c1にキャップアセンブリ130のレバー132の先端部132aが挿入される。次いで、キャップアセンブリ130のキャップ131がフレーム111に固定される。その後、ハンドグリップ121が車外方向にフルストロークで回動されて、仮保持位置にあるベルクランク112の保持固定がレバー132を介して解除されて、フレーム111に組付けられているスプリング113が所期の機能を発揮するようになる。この解除作動は、特開2003−41811号公報に記載されているものと実質的に同じである。
【0042】
また、ベルクランク112の出力部112cがフロントロック201及びリアロック202と機械的に連結されるとともに、フレーム111に組付けたクローズスイッチS1が全開ロック203に付設したアクチュエータActと電気的に接続された状態では、ハンドグリップ121の開扉操作によりフロントロック201とリアロック202を解除するための操作力(ハンドグリップ121の操作力に相当する力)が発生して、スライドドア200を開扉可能とすることが可能であるとともに、ハンドグリップ121の閉扉操作により全開ロック203を解除するための操作力(ハンドグリップ121の操作力をトリガーとして得られる電気的な解除力)が発生して、スライドドア200を閉扉可能とすることが可能である。なお、スライドドア200を開扉または閉扉する際の駆動力は、手動操作力であっても、電動駆動力であってもよい。
【0043】
上記のように構成したこの実施形態においては、ハンドグリップ121が全閉状態にあるスライドドア200を開側に移動させる開扉方向と同方向に開扉操作されることで、スライドドア200を全閉状態に保持するフロントロック201とリアロック202(全閉ラッチ機構)を解除するための操作力が発生するように設定されている。また、ハンドグリップ121が全開状態にあるスライドドア200を閉側に移動させる閉扉方向と同方向に閉扉操作されることで、スライドドア200を全開状態に保持する全開ロック203(全開ラッチ機構)を解除するための操作力が発生するように設定されている。このため、スライドドア200の開閉方向に対して違和感の無い方向(同方向)へのハンドグリップ121の操作によって、フロントロック201とリアロック202または全開ロック203を解除することができて、スライドドア200を開閉することが可能である。したがって、当該車両用ドアハンドル装置100は操作性に優れている。
【0044】
また、この実施形態においては、ベースアセンブリ110、ハンドルアセンブリ120、キャップアセンブリ130等がそれぞれ予め組み立てられていて、上記した組付手順にて、ベースアセンブリ110、ハンドルアセンブリ120、キャップアセンブリ130等がスライドドア200に組付けられている。ところで、上記した組付手順は、本発明が対象とする車両用ドアハンドル装置において、従来、一般的に行われている組付手順と似た組付手順であり、フレーム111をスライドドア200におけるアウタパネル200aに組付けた後に、同フレーム111に対してリンクベース123、連結リンク122、ハンドグリップ121を組付け、次いで、ハンドグリップ121とフレーム111に対してレバー132とキャップ131を組付けることにより、各構成部材(フレーム111、リンクベース123、連結リンク122、ハンドグリップ121、レバー132、各スプリング113、124等)のアウタパネル200aへの組付が行われている。このため、当該車両用ドアハンドル装置100は組付性に優れている。
【0045】
また、この実施形態において、全閉状態にあるスライドドア200を開側に移動させる開扉方向と同方向に操作されるハンドグリップ121の動きは、ハンドグリップ121が初期位置からスプリング113の付勢力に抗して開扉方向に移動して、レバー132が車両外方に向けて傾動するとともに、アーム部121cに設けた突起121c2がフレーム111に設けた第1ガイド溝111f1に沿ってスライドドア200の開扉方向に向けて移動する動きであって、ハンドグリップ121の脚部121bと連結リンク122との連結中心(連結ピン126)を中心として、ハンドグリップ121が車両外方で開扉側に傾動する動きである。ここで、ハンドグリップ121が全閉状態にあるスライドドア200を開側に移動させる開扉方向と同方向に操作されると、連結ピン126は車両後方かつ車両内方に移動しようとするが、連結リンク122aがストッパ123bにて規制される。そのため、ハンドグリップ121の傾動の中心は連結ピン126となる。なお、この際のハンドグリップ121の動きは、ハンドグリップ121の係合部121b1が連結リンク122のストッパ122b1に当接することにより規制される。
【0046】
また、全開状態にあるスライドドア200を閉側に移動させる閉扉方向と同方向に操作されるハンドグリップ121の動きは、ハンドグリップ121と連結リンク122が初期位置からスプリング124の付勢力に抗して閉扉方向に移動して、連結リンク122がスライドドア200の閉扉方向に向けて揺動するとともに、アーム部121cに設けた突起121c2がフレーム111に設けた第2ガイド溝111f2に沿ってスライドドア200の閉扉方向に向けて移動する動きであって、ハンドグリップ121の脚部121bと連結リンク122との連結部が閉扉方向に向けて移動する動きであり、このハンドグリップ121の動きに伴って、連結リンク122がリンクベース123との連結中心を中心としてスライドドア200の閉扉方向に向けて揺動する。なお、この際のハンドグリップ121の動きは、ハンドグリップ121の突起121c2がフレーム111に設けた第2ガイド溝111f2の前端壁に当接することにより規制される。また、この際のハンドグリップ121の動きは、係合部121b1がストッパ122b1に当接することで規制されてもよく、また、ハンドグリップ121の突起121c2がフレーム111に設けた第2ガイド溝111f2の前端壁に当接すること且つ係合部121b1がストッパ122b1に当接することで規制されてもよい。
【0047】
このため、スライドドア200を開側に移動させる際のハンドグリップ121の移動量(すなわち、ハンドグリップ121の脚部121bと連結リンク122との連結中心を中心としたハンドグリップ121の車両外方で開扉側への傾動量)を必要十分に確保することが可能である(このためには、ハンドグリップ121の係合部121b1が連結リンク122のストッパ122b1に当接するタイミングを変更する必要がある)とともに、スライドドア200を閉側に移動させる際のハンドグリップ121の移動量(すなわち、連結リンク122とリンクベース123との連結中心を中心とした連結リンク122の閉扉方向への揺動量)を必要十分に確保することが可能であって(このためには、ハンドグリップ121の突起121c2がフレーム111に設けた第2ガイド溝111f2の前端壁に当接するタイミングを変更する必要がある)、ハンドグリップ121の各操作を的確に行うことが可能である。
【0048】
また、この実施形態においては、スライドドア200の閉扉方向に所定の慣性が作用したとき、スプリング134の付勢力に抗してレバー132から離間し所定量傾動可能な慣性ストッパ133がレバー132に設けられていて、この慣性ストッパ133がレバー132から離間して所定量傾動することにより、ハンドグリップ121のアーム部121cが慣性ストッパ133に係合して、ハンドグリップ121の閉扉方向への移動が規制されるように設定されている。
【0049】
これにより、スライドドア200が全開状態にある車両において、車両衝突等により所定の慣性がスライドドア200の閉扉方向に作用したとき、慣性ストッパ133がレバー132から離間して所定量傾動する作動が得られて、ハンドグリップ121のアーム部121cが慣性ストッパ133に係合し、ハンドグリップ121の閉扉方向への移動が規制される。このため、上述した慣性が当該装置に作用しても、同慣性によってハンドグリップ121が閉扉方向に移動されることはなく、スライドドア200を全開状態に保持する全開ロック203を解除するための操作力が発生することはない。したがって、上述した車両衝突等による慣性対策(全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生しないようにする安全性の向上)をシンプルな構成(レバー132に慣性ストッパ133とスプリング134を設ける構成)にて達成することが可能である。
【0050】
上記した実施形態においては、ハンドグリップ121のクローズ操作に伴って作動するクローズスイッチS1が、図28、図29に示したように、連結リンク122の動きに伴って作動するように構成して実施したが、ハンドグリップ121のクローズ操作に伴って作動するクローズスイッチS2が、図30、図31に示したように、ハンドグリップ121のアーム部121cの動きに伴って作動するように構成して実施することも可能である。
【0051】
また、上記した実施形態においては、フレーム111にガイド111f(第1ガイド溝111f1と第2ガイド溝111f2を有する)を設けるとともに、このガイド111fに係合してガイドされる突起(被ガイド部)121c2をハンドグリップ121のアーム部121cに設けて実施した。しかし、本発明の実施に際しては、例えば、フレームに設けられるガイド部を突起とし、ハンドグリップのアーム部に設けられる被ガイド部をガイド溝(ガイド部としての突起と係合するもの)として実施することも可能であり、種々な変更が可能である。
【0052】
また、上記した実施形態においては、フロントロック201とリアロック202(全閉ラッチ機構)がハンドグリップ121の開扉操作に基づいて機械的に作動するように構成するとともに、全開ロック203(全開ラッチ機構)がハンドグリップ121の閉扉操作に基づいて電気的に作動するように構成して実施した。しかし、本発明の実施に際しては、フロントロック201とリアロック202(全閉ラッチ機構)がハンドグリップ121の開扉操作に基づいて機械的かつ電気的に作動するように構成するとともに、全開ロック203(全開ラッチ機構)がハンドグリップ121の閉扉操作に基づいて電気的に作動するように構成して実施することも可能である。
【0053】
また、本発明の実施に際しては、フロントロック201とリアロック202(全閉ラッチ機構)がハンドグリップ121の開扉操作に基づいて機械的に作動するように構成するとともに、全開ロック203(全開ラッチ機構)がハンドグリップ121の閉扉操作に基づいて機械的に作動するように構成して実施することも可能である。また、本発明の実施に際しては、フロントロック201とリアロック202(全閉ラッチ機構)がハンドグリップ121の開扉操作に基づいて電気的に作動するように構成するとともに、全開ロック203(全開ラッチ機構)がハンドグリップ121の閉扉操作に基づいて電気的に作動するように構成して実施することも可能である。
【0054】
なお、フロントロック201とリアロック202(全閉ラッチ機構)がハンドグリップ121の開扉操作に基づいて電気的に作動するように構成する場合には、例えば、ハンドグリップ121のオープン操作に伴って作動するオープンスイッチを設けるとともに、このオープンスイッチの作動に伴ってフロントロック(201)とリアロック(202)を解除動作させるアクチュエータをフロントロック(201)とリアロック(202)に付設する必要がある。また、全開ロック203(全開ラッチ機構)がハンドグリップ121の閉扉操作に基づいて機械的に作動するように構成する場合には、ハンドグリップ121と全開ロック(203)を連結機構を介して機械的に連結する必要がある。
【0055】
なお、本発明の実施に際しては、フロントロック(201)とリアロック(202)に各アクチュエータを付設せずに、例えば、特開2011−132771号公報に記載されているように、リモートコントローラを介してフロントロック(201)とリアロック(202)を解除するための一つのアクチュエータ(クローズアクチュエータ)を設けて実施することも可能である。また、本発明の実施に際しては、全開ロック(203)にアクチュエータを付設せずに、例えば、特開2011−132771号公報に記載されているように、リモートコントローラを介して全開ロック(203)を解除するためのアクチュエータ(リリースアクチュエータ)を設けて実施することも可能である。また、本発明の実施に際して、上記したクローズアクチュエータとリリースアクチュエータとを採用する代わりに、これらと同等の機能・作動を有する一つのアクチュエータを採用して実施することも可能である。
【0056】
また、上記した実施形態においては、ハンドグリップ121が全開状態にあるスライドドア200を閉側に移動させる閉扉方向と同方向に閉扉操作されることで、スライドドア200を全開状態に保持する全開ロック203(全開ラッチ機構)を解除するための操作力が発生するように設定されているシステムにおいて、車両衝突等による慣性対策(全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生しないようにする安全性の向上)のための構成(レバー132に慣性ストッパ133とスプリング134を設ける構成)が採用されている。しかし、本発明の実施に際しては、スライドドアが全閉状態にあるときに、ハンドグリップが閉扉方向と同方向に操作されることでも、全閉ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定されているシステムにおいて、車両衝突等による慣性対策のための構成(上記実施形態のレバー132に慣性ストッパ133とスプリング134を設ける構成)を採用して実施することが可能である。この場合には、上記した慣性によってハンドグリップが閉扉方向に移動されることはなく、スライドドアが全閉状態にある車両において、スライドドアを全閉状態に保持する全閉ラッチ機構を解除するための操作力が発生することはない。
【符号の説明】
【0057】
100…車両用ドアハンドル装置、110…ベースアセンブリ、111…フレーム、111f1…第1ガイド溝(第1ガイド部)、111f2…第2ガイド溝(第2ガイド部)、111a…後方開口、111b…前方開口、113…スプリング(第1付勢部材)、120…ハンドルアセンブリ、121…ハンドグリップ、121a…把持部、121b…脚部、121c…アーム部、121c1…挿通孔、121c2…突起(被ガイド部)、122…連結リンク、123…リンクベース、124…スプリング(第2付勢部材)、130…キャップアセンブリ、131…キャップ、132…レバー、133…慣性ストッパ、134…スプリング(第3付勢部材)、200…スライドドア、200a…アウタパネル、201,202…フロントロック、リアロック(全閉ラッチ機構)、203…全開ロック(全開ラッチ機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスライドドアに装備されて同スライドドアの開閉操作を前記スライドドアの外側から行うための車両用ドアハンドル装置であり、
前記スライドドアにおけるアウタパネルにドア内側から固定され、車両の前後方向に沿って配置されるフレームと、
前記アウタパネルを通して前記フレームの一端部に対して装着可能なリンクベースに、基端部にて回転可能に組付けられていて、車両前後方向にて揺動可能な連結リンクと、
この連結リンクの先端部に回転可能に連結されていて前記アウタパネルを通して前記フレームの一端部に対して前記リンクベース及び前記連結リンクと共に挿通される脚部を一端部に有するとともに、前記アウタパネルを通して前記フレームの他端部に対して挿通されるアーム部を他端部に有していて、前記脚部と前記アーム部間に形成されている把持部が前記アウタパネルの車両外側にて車両の前後方向に沿って延びるハンドグリップと、
このハンドグリップの他端部側にて前記アウタパネルを挟んで前記フレームに車両外側から組付けられるキャップに、車両内外方向にて傾動可能に組付けられていて、前記アウタパネルを通して前記アーム部に設けた挿通孔に挿通されるレバーと、
前記ハンドグリップを前記フレームに対して初期位置に向けて付勢する第1付勢部材と、
前記連結リンクを前記フレームに対して初期位置に向けて付勢する第2付勢部材とを備えていて、
前記ハンドグリップが全閉状態にある前記スライドドアを開側に移動させる開扉方向と同方向に開扉操作されることで、前記ハンドグリップが初期位置から前記第1付勢部材の付勢力に抗して開扉方向に移動して、前記レバーが車両外方に向けて傾動し、前記スライドドアを全閉状態に保持する全閉ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定され、
前記ハンドグリップが全開状態にある前記スライドドアを閉側に移動させる閉扉方向と同方向に閉扉操作されることで、前記ハンドグリップと前記連結リンクが初期位置から前記第2付勢部材の付勢力に抗して閉扉方向に移動して、前記連結リンクが前記スライドドアの閉扉方向に向けて揺動し、前記スライドドアを全開状態に保持する全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定されている車両用ドアハンドル装置。

【請求項2】
車両のスライドドアに装備されて同スライドドアの開閉操作を前記スライドドアの外側から行うための車両用ドアハンドル装置であり、
前記スライドドアにおけるアウタパネルにドア内側から固定され、車両の前後方向に沿って配置されるフレームと、
前記アウタパネルを通して前記フレームの一端部に対して装着可能なリンクベースに、基端部にて回転可能に組付けられていて、車両前後方向にて揺動可能な連結リンクと、
この連結リンクの先端部に回転可能に連結されていて前記アウタパネルを通して前記フレームの一端部に対して前記リンクベース及び前記連結リンクと共に挿通される脚部を一端部に有するとともに、前記アウタパネルを通して前記フレームの他端部に対して挿通されるアーム部を他端部に有していて、前記脚部と前記アーム部間に形成されている把持部が前記アウタパネルの車両外側にて車両の前後方向に沿って延びるハンドグリップと、
このハンドグリップの他端部側にて前記アウタパネルを挟んで前記フレームに車両外側から組付けられるキャップに、車両内外方向にて傾動可能に組付けられていて、前記アウタパネルを通して前記アーム部に設けた挿通孔に挿通されるレバーと、
前記ハンドグリップを前記フレームに対して初期位置に向けて付勢する第1付勢部材と、
前記連結リンクを前記フレームに対して初期位置に向けて付勢する第2付勢部材とを備えていて、
前記ハンドグリップが全閉状態にある前記スライドドアを開側に移動させる開扉方向と同方向に開扉操作されることで、前記ハンドグリップが初期位置から前記第1付勢部材の付勢力に抗して開扉方向に移動して、前記レバーが車両外方に向けて傾動するとともに、前記アーム部に設けた被ガイド部が前記フレームに設けた第1ガイド部に沿って前記スライドドアの開扉方向に向けて移動し、前記スライドドアを全閉状態に保持する全閉ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定され、
前記ハンドグリップが全開状態にある前記スライドドアを閉側に移動させる閉扉方向と同方向に閉扉操作されることで、前記ハンドグリップと前記連結リンクが初期位置から前記第2付勢部材の付勢力に抗して閉扉方向に移動して、前記連結リンクが前記スライドドアの閉扉方向に向けて揺動するとともに、前記アーム部に設けた被ガイド部が前記フレームに設けた第2ガイド部に沿って前記スライドドアの閉扉方向に向けて移動し、前記スライドドアを全開状態に保持する全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生するように設定されている車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記スライドドアの閉扉方向に所定の慣性が作用したとき、第3付勢部材の付勢力に抗して前記レバーから離間し所定量傾動可能な慣性ストッパが前記レバーに設けられていて、この慣性ストッパが前記レバーから離間して所定量傾動することにより、前記ハンドグリップの前記アーム部が前記慣性ストッパに係合して、前記ハンドグリップの閉扉方向への移動が規制されるように設定されている車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記フレームは、前記ハンドグリップの前記アーム部に設けた前記挿通孔に前記レバーが挿入される際に、前記ハンドグリップが前記フレームから抜けることを防止する抜け止め突起を有する車両用ドアハンドル装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記全閉ラッチ機構が前記ハンドグリップの開扉操作に基づいて機械的に作動する全閉ラッチ機構であり、前記全開ラッチ機構が前記ハンドグリップの閉扉操作に基づいて電気的に作動する全開ラッチ機構である車両用ドアハンドル装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記全閉ラッチ機構が前記ハンドグリップの開扉操作に基づいて機械的かつ電気的に作動する全閉ラッチ機構であり、前記全開ラッチ機構が前記ハンドグリップの閉扉操作に基づいて電気的に作動する全開ラッチ機構である車両用ドアハンドル装置。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記全閉ラッチ機構が前記ハンドグリップの開扉操作に基づいて機械的に作動する全閉ラッチ機構であり、前記全開ラッチ機構が前記ハンドグリップの閉扉操作に基づいて機械的に作動する全開ラッチ機構である車両用ドアハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2013−76217(P2013−76217A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215215(P2011−215215)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】