説明

車両用ドアラッチの操作装置

【課題】1個のモータをもって、クローズ動作及びリリース動作の両仕様を同時に満足させる。
【解決手段】検出手段14がラッチ部のハーフラッチ状態を検出したことを契機にモータ7を一方向(クローズ方向)へ低速回転させ、また、開操作検出スイッチ23が開操作を検出したことを契機にモータ7を他方向(リリース方向)へ高速回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に開閉自在に支持されたドアを半ドア位置から全閉位置へ自動的に移動させ、また、開操作に基いてドアを開扉可能にする車両用ドアラッチの操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアラッチの操作装置において、ストライカと係合することによりドアを半ドア位置に保持するハーフラッチ状態及び全閉位置に保持するフルラッチ状態に変位可能なラッチ部と、正逆回転可能な1個のモータと、モータの回転により中立位置から正逆回転可能な回動部材とを備え、回動部材が中立位置から一方向へ回動することにより、ラッチ部とストライカとの係合を解除し、また、同じく他方向へ回動することにより、ラッチ部をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移動させて、ドアを半ドア位置から全閉位置に移動させるようにしたものは公知である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−339623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のような車両用ドアラッチの操作装置においては、1個のモータをもって、クローズ動作(ラッチ部をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に変位させる動作)とリリース動作(ラッチ部とストライカとの係合を解除させる動作)とを可能にしている。これにより、構成部品を削減して、コストの低減を図ることができる反面、クローズ動作とリリース動作の仕様が互いに異なるため、両動作を同時に満足させることは困難である。すなわち、クローズ動作は、安全性を考慮して、低速な動きを要望されるのに対し、リリース動作は、機敏にドアを開けることができるように、高速な動きが要望される。
【0004】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、1個のモータをもって、クローズ動作及びリリース動作の両仕様を同時に満足させることができるようにした車両用ドアラッチの操作装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)車体に開閉自在に支持されたドアを半ドア位置から全閉位置へ自動的に移動させ、また、開操作に基いて前記ドアを開扉可能にする車両用ドアラッチの操作装置において、ストライカと係合することにより、前記ドアを半ドア位置に保持するハーフラッチ状態及び全閉位置に保持するフルラッチ状態に変位可能で、かつリリース作動することにより、前記ストライカから離脱して前記ドアを開扉可能にするオープン状態に変位可能なラッチ部と、低速回転と高速回転に切換可能なモータと、該モータの一方向の回転により待機位置からクローズ方向へ移動して、前記ラッチ部をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ変位させるクローザ手段と、前記モータの他方向の回転により待機位置からリリース方向へ移動して、前記ラッチ部をリリース作動させるリリース手段と、前記ドアの開操作を検出可能な開操作検出スイッチと、前記ラッチ部がハーフラッチ状態に変位したことを検出可能な検出手段と、該検出手段が前記ラッチ部のハーフラッチ状態を検出したことを契機に前記モータを一方向へ低速回転させ、また、前記開操作検出スイッチが開操作を検出したことを契機に前記モータを他方向へ高速回転させる制御を行う制御部とを備える。
【0006】
(2)上記(1)項において、検出手段は、さらにリリース手段が待機位置に移動したこと及びリリース方向へ所定量移動したリリース位置に移動したこと、並びにラッチ部がオープン状態に変位したことを検出可能であり、制御部は、前記検出手段が前記リリース手段のリリース位置を検出したことを契機にモータを一旦停止させ、その時点から予め定めた所定時間内に前記検出手段が前記ラッチ部のオープン状態を検出したことを契機に前記モータを一方向へ低速回転させ、前記検出手段が前記リリース手段の待機位置を検出したことを契機に前記モータを停止させる制御を行う。
【0007】
(3)上記(1)項において、検出手段は、さらにリリース手段が待機位置に移動したこと及びリリース方向へ所定量移動したリリース位置に移動したこと、並びにラッチ部がオープン状態に変位したことを検出可能であり、制御部は、前記検出手段が前記リリース手段のリリース位置を検出したことを契機にモータを一旦停止させ、その時点から予め定めた所定時間内に前記検出手段が前記ラッチ部のオープン状態を検出しないとき、前記所定時間が経過した時点で前記モータを一方向へ低速回転させ、前記検出手段が前記リリース手段の待機位置を検出したことを契機に前記モータを停止させる制御を行う。
【0008】
(4)上記(1)項において、検出手段は、さらにリリース手段が待機位置に移動したこと及びリリース方向へ所定量移動したリリース位置に移動したこと、並びにラッチ部がオープン状態に変位したことを検出可能であり、制御部は、前記検出手段が前記リリース手段のリリース位置を検出する前に前記ラッチ部のオープン状態を検出したことを契機に、モータを一旦停止させたあと一方向へ低速回転させ、前記検出手段が前記リリース手段の待機位置を検出したことを契機に前記モータを停止させる制御を行う。
【0009】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、検出手段は、さらにクローザ手段が待機位置に移動したこと及びクローズ方向へ所定量移動したクローズ位置に移動したことを検出可能であり、制御部は、前記検出手段が前記クローザ手段のクローズ位置を検出したことを契機にモータを停止させたあと他方向へ高速回転させ、前記検出手段が前記クローズ手段の待機位置を検出したことを契機に前記モータを停止させる制御を行う。
【0010】
(6)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、検出手段は、さらにクローザ手段が待機位置に移動したこと及びクローズ方向へ所定量移動したクローズ位置に移動したことを検出可能であり、制御部は、前記検出手段が前記クローザ手段のクローズ位置を検出する前に開操作検出スイッチが開操作を検出したことを契機に、モータを一旦停止させ、続いて前記クローザ手段を待機位置に戻して、リリース手段をリリース方向へ移動させるように、前記モータを他方向へ高速回転させる制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果が奏せられる。
請求項1記載の発明によると、モータの一方向の回転により、ラッチ部をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に緩やかに作動させ、また、同じく他方向の回転により、ラッチ部を速やかにリリース動作させることができる。よって、1個のモータをもって、クローズ動作及びリリース動作の両仕様を同時に満足させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によると、ラッチ部をリリース動作させた後、リリース手段を待機位置に緩やかに戻して停止させることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によると、ドア開操作に基いてドアが開かないときがあっても、所定時間が経過した時点でリリース手段を待機位置に確実に戻すことができる。
【0014】
請求項4記載の発明によると、リリース手段がリリース位置に達する前にラッチ部がオープン状態になった場合、リリース手段を無駄に動かすことなく待機位置に確実に戻すことができる。
【0015】
請求項5記載の発明によると、ラッチ部をクローズ動作させた後、クローザ手段を待機位置に速やかに戻して停止させることができる。
【0016】
請求項6記載の発明によると、クローズ動作中、ドア開操作することによって、クローズ動作をキャンセルして、ドアを開けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係わる一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明を適用したドアラッチクローザ装置の正面図、図2は、図1におけるII−II線に沿う横断面図である。
【0018】
(1)は、車体後部に上下方向へ開閉可能に支持されたバックドア(図示略)に装着されるドアラッチクローザ装置で、車体側に固着されるストライカ(2)と係合することによりバックドアを半ドア位置または全閉位置に保持可能なラッチ部(3)と、諸条件に基いてラッチ部(3)を動作させる駆動部(4)とを備える。
【0019】
なお、本実施形態においては、ドアラッチクローザ装置(1)をバックドアに装着したものとして説明するが、本発明は、これに特定されるものでなく、ドアラッチクローザ装置(1)を車体側面に開閉可能に支持されるスゥイング式のサイドドア、スライド式のスライドドア等に装着しても良い。
【0020】
図2に示すように、ラッチ部(3)は、枢軸(51)により枢支され、ストライカ(2)と係脱可能なラッチ(5)と、枢軸(61)により枢支され、ラッチ(5)の外縁に設けられたフルラッチ爪部(5a)及びハーフラッチ爪部(5b)に係脱可能なロッキングプレート(6)とを有している。
【0021】
ラッチ(5)は、バックドアが開放状態にあるとき、ストライカ(2)から離脱した2点鎖線で示すオープン位置(5A)にあり、バックドアが閉じられてストライカ(2)と係合することにより、2点鎖線で示すハーフラッチ位置(5B)を経由して実線で示すフルラッチ位置(5C)に回動する。
【0022】
ロッキングプレート(6)は、ラッチ(5)がハーフラッチ位置(5B)にあるときハーフラッチ爪部(5b)に係合して、ラッチ(5)をハーフラッチ位置(5B)に保持し、また、同じくフルラッチ位置(5C)にあるとき、フルラッチ爪部(5a)に係合して、ラッチ(5)をフルラッチ位置(5C)に保持する。
【0023】
なお、以下の説明においては、ラッチ部(3)のハーフラッチ状態は、ラッチ(5)がハーフラッチ位置(5B)に保持されている状態とし、また、ラッチ部(3)のフルラッチ状態は、ラッチ(5)がフルラッチ位置(5C)に保持されている状態とする。
【0024】
図1に示すように、駆動部(4)は、高速回転と低速回転に切換可能な正逆転可能なモータ(7)と、枢軸(8)により枢支されたクローザ手段をなすセクタギヤ(9)と、枢軸(10)により枢支されたリリース手段をなすリリースレバー(11)とを有している。
【0025】
セクタギヤ(9)は、その外周縁に設けられた歯部(9a)が、モータ(7)の回転を減速する減速機構の出力ギヤ(12)に噛合し、モータ(7)の一方向の低速回転に基いて、図1に示す待機(中立)位置からクローズ方向(矢印(A)方向)へ所定量回動したクローズ位置、及びモータ(7)の他方向の高速回転に基いて、待機位置からリリース方向(矢印(B)方向)へ所定量回動したリリース位置に回動するようになっている。
【0026】
セクタギヤ(9)が待機位置からクローズ方向へ回動した場合には、セクタギヤ(9)の下部に設けられた押部(9b)がラッチ(5)と一体的に回動するカムレバー(13)を押動して回動させる。これにより、ラッチ(5)は、カムレバー(13)を介して、モータ(7)の低速回転により、ハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動して、バックドアを半ドア位置から全閉位置に緩やかに移動させるクローズ動作が行われる。
【0027】
セクタギヤ(9)が待機位置からリリース方向へ回動した場合には、セクタギヤ(9)の左部に設けたアーム部(9c)がリリースレバー(11)に当接して、リリースレバー(11)をリリース方向(図1において時計方向)へ回動させる。これにより、リリースレバー(11)の下部が、ロッキングプレート(6)の折曲部(62)に当接し、ロッキングプレート(6)をフルラッチ爪部(5a)またはハーフラッチ爪部(5b)から離脱するリリース方向(図2において反時計方向)へ回動させて、ラッチ(5)とストライカ(2)との係合を解除してバックドアを開けることができるリリース動作が行われる。
【0028】
なお、本実施形態においては、セクタギヤ(9)をクローザ手段とし、リリースレバー(11)をリリース手段とするが、これに代えて、リリースレバー(11)を省略して、セクタギヤ(9)がクローザ手段とリリース手段とを兼ね備えるようにしても良い。また、セクタギヤ(9)と別体のクローズレバーを設け、セクタギヤ(9)が待機位置からクローズ方向へ回動した場合、クローズレバーを介して、ラッチ部(3)をクローズ動作させ、また、セクタギヤ(9)が待機位置からリリース方向へ回動した場合、リリースレバー(11)を介して、ラッチ部(3)をリリース動作させるようにしても良い。要するに、1個のモータ(7)の一方向の回転によって、ラッチ部(3)をクローズ動作させ、また、他方向の回転によって、ラッチ部(3)をリリース動作させることができる構成であれば構成は特定されない。
【0029】
図1において、(14)は、カムレバー(13)を介して、ラッチ(5)の各位置を検出可能なラッチ検出スイッチ、(15)は、セクタギヤ(9)がリリース位置に移動したことを検出するリリース検出スイッチ、(16)は、セクタギヤ(9)がクローズ位置に移動したことを検出するクローズ検出スイッチである。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係わる制御及び各動作を図3〜8に基いて説明する。
図3は、制御回路の一例を示す。2点鎖線で示す制御基板(17)には、モータ(7)を制御する制御部(18)、共通リレー(19)、低速回転用リレー(20)、高速回転用リレー(21)等が設けられる。(22)は、モータ(7)や制御部(18)等に電源を供給する直流電源である。(23)は、バックドアのハンドル部等に設けられ、バックドアの開操作を検出する開操作検出スイッチである。
【0031】
モータ(7)は、高速回転と低速回転に切換可能な直流ブラシ付きモータで、共通ブラシ(7a)、高速用ブラシ(7b)及び低速用ブラシ(7c)を有し、共通ブラシ(7a)と高速用ブラシ(7b)との間に電流を流すと高速回転し、共通ブラシ(7a)と低速用ブラシ(7c)との間に電流を流すと低速回転する。
【0032】
制御部(18)の入力ポートには、検出手段をなすラッチ検出スイッチ(14)、リリース検出スイッチ(15)、クローズ検出スイッチ(16)、及び開操作検出スイッチ(23)が接続され、同じく出力ポートには、共通リレー(19)、低速回転用リレー(20)及び高速回転用リレー(21)が接続される。
【0033】
なお、本発明における検出手段は、リミットスイッチ等で形成されるラッチ検出スイッチ(14)、リリース検出スイッチ(15)及びクローズ検出スイッチ(16)を含んで構成されるが、これに特定されるものでない。例えば、セクタギヤ(9)の待機位置を検出する専用のスイッチを別途設けても良い。また、光センサ等の無接点式のスイッチとしても良い。要するに、セクタギヤ(9)の待機位置、リリース位置及びクローズ位置、並びにラッチ部(3)の各状態を検出できる構成であれば、その構成は特定されない。
【0034】
ラッチ検出スイッチ(14)は、ラッチ(5)がオープン位置(5A)からハーフラッチ位置(5B)に移動した時点で、オンからオフに切り替わることにより、ラッチ部(3)のハーフラッチ状態を検出し、また、ラッチ(5)がフルラッチ位置(5C)またはハーフラッチ位置(5B)からオープン位置(5A)寄り側に移動した時点で、オフからオンに切り替わってラッチ部(3)のオープン状態を検出する。
【0035】
リリース検出スイッチ(15)は、セクタギヤ(9)が待機位置にあるとき、オフ状態にあり、セクタギヤ(9)がリリース位置に移動すると、オン状態に切り替わってセクタギヤ(9)のリリース位置を検出する。
【0036】
クローズ検出スイッチ(16)は、セクタギヤ(9)が待機位置にあるとき、オフ状態にあり、セクタギヤ(9)がクローズ位置に移動すると、オン状態に切り替わってセクタギヤ(9)のクローズ位置を検出する。
【0037】
なお、セクタギヤ(9)の待機位置は、リリース検出スイッチ(15)とクローズ検出スイッチ(16)とが共にオフすることによって検出されるようになっている。
【0038】
モータ(7)を一方向へ低速回転させる場合には、共通リレー(19)を通電してオン状態(図3に2点鎖線で示す状態)にする。また、モータ(7)を他方向へ高速回転させる場合には、低速回転用リレー(20)を通電してオフ状態(図3に2点鎖線で示す状態)にし、高速回転用リレー(21)を通電してオン状態(図3に2点鎖線で示す状態)にする。
【0039】
制御部(18)は、ラッチ検出スイッチ(14)がラッチ部(3)のハーフラッチ状態、オープン状態を検出したとき、及びリリース検出スイッチ(15)がセクタギヤ(9)のリリース位置を検出したとき、共通リレー(19)をオン状態にして、モータ(7)を一方向へ低速回転させ、また、開操作検出スイッチ(23)がドア開操作を検出したとき、及びクローズ検出スイッチ(16)がセクタギヤ(9)のクローズ位置を検出したとき、低速回転用リレー(20)を通電してオフ状態にし、高速回転用リレー(21)をオン状態にして、モータ(7)を他方向へ高速回転させ、さらには、リリース検出スイッチ(15)及びクローズ検出スイッチ(16)の両方がオフ状態になったときには、セクタギヤ(9)が待機位置に復帰したものと認識して、モータ(7)の回転を停止させるように制御を行う。
【0040】
上述により、モータ(7)の一方向の回転により、ラッチ部(3)をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に緩やかに作動させ、また、同じく他方向の回転により、ラッチ部(3)を速やかにリリース動作させることができる。よって、1個のモータ(7)をもって、クローズ動作及びリリース動作の両仕様を同時に満足させることができる。
【0041】
図4〜8は、各動作を示すタイムチャート図である。図4は、正常な場合のリリース動作を示す。バックドアが全閉位置にある場合、ハンドル部のドア開操作に基いて開操作検出スイッチ(23)がオンに切り替わると、これと同時に、モータ(7)が他方向へ高速回転する。これにより、セクタギヤ(9)が待機位置からリリース方向へ回動して、ラッチ部(3)をリリース動作させて、バックドアを開くことができる。
【0042】
セクタギヤ(9)がリリース位置に移動してリリース検出スイッチ(15)がオフからオンに切り替わると、モータ(7)は一旦停止する。
【0043】
そして、リリース検出スイッチ(15)が、セクタギヤ(9)のリリース位置を検出した時点から予め定めた所定時間(t1)内(未満)に、ラッチ検出スイッチ(14)がラッチ部(3)のオープン状態を検出すると、モータ(7)を一方向へ低速回転させて、セクタギヤ(9)を待機位置に復帰させる。クローズ検出スイッチ(16)がセクタギヤ(9)の待機位置を検出してオンからオフに切り替わると、その時点で、モータ(7)は停止する。
【0044】
図4に示す制御においては、開操作検出スイッチ(23)がドア開操作を検出した場合、ラッチ部(3)を速やかにリリース動作させた後、リリースレバー(11)を待機位置に緩やかに戻して停止させることができ、ドアを開くときの操作性を向上させることができる。
【0045】
図5は、ハンドル部を開操作したにも係わらず、バックドアが開かない場合の異常な場合の動作を示す。バックドアが全閉位置にある場合、ハンドル部のドア開操作に基いて開操作検出スイッチ(23)がオンに切り替わると、これと同時に、モータ(7)が他方向へ高速回転する。これにより、セクタギヤ(9)が待機位置からリリース方向へ回動する。
【0046】
セクタギヤ(9)がリリース位置に移動してリリース検出スイッチ(15)がオフからオンに切り替わると、モータ(7)は一旦停止する。
【0047】
そして、リリース検出スイッチ(15)が、セクタギヤ(9)のリリース位置を検出した時点から予め定めた所定時間(t1)内に、ラッチ検出スイッチ(14)がラッチ部(3)のオープン状態を検出しなければ、バックドアの開き動作に異常が発生したものとして、モータ(7)を一方向へ低速回転させて、セクタギヤ(9)を待機位置に復帰させる。クローズ検出スイッチ(16)がオンからオフに切り替わると、その時点で、モータ(7)は停止する。
【0048】
図5に示す制御においては、ドア開操作をしたにも係わらずバックドアが開かない異常状態が発生しても、所定時間経過した時点でリリースレバー(11)を待機位置に確実に戻すことができる。
【0049】
図6は、ハンドル部の開操作に基いて、ラッチ部(3)がオープン状態に急激に変位した場合のリリース動作を示す。バックドアが全閉位置にある場合、ハンドル部のドア開操作に基いて開操作検出スイッチ(23)がオンに切り替わると、これと同時に、モータ(7)が他方向へ高速回転する。これにより、セクタギヤ(9)が待機位置からリリース方向へ回動して、ラッチ部(3)をリリース動作させる。
【0050】
このとき、セクタギヤ(9)がリリース位置に達する前、すなわち、リリース検出スイッチ(15)がオフからオンに切り替わる前に、ラッチ検出スイッチ(14)がラッチ部(3)のオープン状態を検出すると、その時点で、モータ(7)を一旦停止させたあと一方向へ低速回転させる。そして、セクタギヤ(9)を待機位置に復帰して、クローズ検出スイッチ(16)がセクタギヤ(9)の待機位置を検出すると、その時点で、モータ(7)は停止する。
【0051】
図6に示す制御においては、リリースレバー(11)がリリース位置に達する前にラッチ部(3)がオープン状態になっても、リリースレバー(11)を無駄に動かすことなく待機位置に確実に戻すことができる。
【0052】
図7は、正常な場合のクローズ動作を示す。バックドアの閉じ動作によりラッチ部(3)がハーフラッチ状態になると、ラッチ検出スイッチ(14)がオンからオフに切り替わりハーフラッチ状態を検出し、これを契機に、モータ(7)が一方向へ低速回転する。これにより、セクタギヤ(9)が待機位置からクローズ方向へ回動して、ラッチ部(3)をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に緩やかに変位させる。
【0053】
セクタギヤ(9)がクローズ位置に移動して、クローズ検出スイッチ(16)がオフからオンに切り替わってセクタギヤ(9)のクローズ位置を検出すると、これを契機に、モータ(7)を一旦停止させ、他方向へ高速回転させて、セクタギヤ(9)を速やかに待機位置に復帰させる。
【0054】
そして、リリース検出スイッチ(15)がオンからオフに切り替わってセクタギヤ(9)の待機位置を検出すると、これを契機にモータ(7)は停止する。
【0055】
図7に示す制御においては、バックドアを緩やかな安全な速度で半ドア位置から全閉位置に移動させることができるとともに、クローズ動作終了後、速やかにセクタギヤ(9)を待機位置に戻して停止させることができる。
【0056】
図8は、クローズ動作を途中でキャンセルさせる場合の動作を示す。バックドアの閉じ動作によりラッチ部(3)がハーフラッチ状態になると、ラッチ検出スイッチ(14)がオンからオフに切り替わりラッチ部(3)のハーフラッチ状態を検出し、これを契機に、モータ(7)が一方向へ低速回転する。これにより、セクタギヤ(9)が待機位置からクローズ方向へ回動して、ラッチ部(3)がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に向けて変位する。
【0057】
このとき、ラッチ部(3)がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に向けて変位している最中、バックドアと車体との間に異物が挟まる等して、バックドアの緊急な開きを要する場合には、バックドアのハンドル部を開操作する。これにより、開操作検出スイッチ(23)がオフからオンに切り替わり、これを契機に、モータ(7)を即座に停止させたあと他方向へ高速回転させ、セクタギヤ(9)を待機位置を通り越してリリース位置まで一気に回動させる。これにより、リリースレバー(11)を介して、ラッチ部(3)を速やかにリリース動作させて、バックドアを即座に開くことができる。
【0058】
ラッチ検出スイッチ(14)がラッチ部(3)のオープン状態を検出すると、これを契機に、モータ(7)を一旦停止させ、一方向へ低速回転させて、セクタギヤ(9)を待機位置に復帰させ、クローズ検出スイッチ(16)がセクタギヤ(9)の待機位置を検出すると、モータ(7)は停止する。
【0059】
図8に示す制御においては、ラッチ部(3)のクローズ動作中、ドア開操作することによって、クローザ動作をキャンセルして、ドアを即座に開けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明を適用したドアラッチクローザ装置の正面図である。
【図2】図1におけるIIーII線に沿う横断面図である。
【図3】制御回路図である。
【図4】正常時のリリース動作のタイムチャート図である。
【図5】異常時のリリース動作のタイムチャート図である。
【図6】他の状態のリリース動作のタイムチャート図である。
【図7】正常時のクローズ動作のタイムチャート図である。
【図8】クローズ動作をキャンセルしたときのタイムチャート図である。
【符号の説明】
【0061】
(1)ドアラッチクローザ装置
(2)ストライカ
(3)ラッチ部
(4)駆動部
(5)ラッチ
(5a)フルラッチ爪部
(5b)ハーフラッチ爪部
(6)ロッキングプレート
(7)モータ
(7a)共通ブラシ
(7b)高速用ブラシ
(7c)低速用ブラシ
(8)枢軸
(9)セクタギヤ(クローザ手段)
(9a)歯部
(9b)押部
(9c)アーム部
(10)枢軸
(11)リリースレバー(リリース手段)
(12)出力ギヤ
(13)カムレバー
(14)ラッチ検出スイッチ(検出手段)
(15)リリース検出スイッチ(検出手段)
(16)クローズ検出スイッチ(検出手段)
(17)制御基板
(18)制御部
(19)共通リレー
(20)低速回転用リレー
(21)高速回転用リレー
(22)直流電源
(23)開操作検出スイッチ
(51)枢軸
(61)枢軸
(62)折曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に開閉自在に支持されたドアを半ドア位置から全閉位置へ自動的に移動させ、また、開操作に基いて前記ドアを開扉可能にする車両用ドアラッチの操作装置において、
ストライカと係合することにより、前記ドアを半ドア位置に保持するハーフラッチ状態及び全閉位置に保持するフルラッチ状態に変位可能で、かつリリース作動することにより、前記ストライカから離脱して前記ドアを開扉可能にするオープン状態に変位可能なラッチ部と、
低速回転と高速回転に切換可能なモータと、
該モータの一方向の回転により待機位置からクローズ方向へ移動して、前記ラッチ部をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ変位させるクローザ手段と、
前記モータの他方向の回転により待機位置からリリース方向へ移動して、前記ラッチ部をリリース作動させるリリース手段と、
前記ドアの開操作を検出可能な開操作検出スイッチと、
前記ラッチ部がハーフラッチ状態に変位したことを検出可能な検出手段と、
該検出手段が前記ラッチ部のハーフラッチ状態を検出したことを契機に前記モータを一方向へ低速回転させ、また、前記開操作検出スイッチが開操作を検出したことを契機に前記モータを他方向へ高速回転させる制御を行う制御部とを備えたことを特徴とする車両用ドアラッチの操作装置。
【請求項2】
検出手段は、さらにリリース手段が待機位置に移動したこと及びリリース方向へ所定量移動したリリース位置に移動したこと、並びにラッチ部がオープン状態に変位したことを検出可能であり、
制御部は、前記検出手段が前記リリース手段のリリース位置を検出したことを契機にモータを一旦停止させ、その時点から予め定めた所定時間内に前記検出手段が前記ラッチ部のオープン状態を検出したことを契機に前記モータを一方向へ低速回転させ、前記検出手段が前記リリース手段の待機位置を検出したことを契機に前記モータを停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアラッチの操作装置。
【請求項3】
検出手段は、さらにリリース手段が待機位置に移動したこと及びリリース方向へ所定量移動したリリース位置に移動したこと、並びにラッチ部がオープン状態に変位したことを検出可能であり、
制御部は、前記検出手段が前記リリース手段のリリース位置を検出したことを契機にモータを一旦停止させ、その時点から予め定めた所定時間内に前記検出手段が前記ラッチ部のオープン状態を検出しないとき、前記所定時間経過した時点で前記モータを一方向へ低速回転させ、前記検出手段が前記リリース手段の待機位置を検出したことを契機に前記モータを停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアラッチの操作装置。
【請求項4】
検出手段は、さらにリリース手段が待機位置に移動したこと及びリリース方向へ所定量移動したリリース位置に移動したこと、並びにラッチ部がオープン状態に変位したことを検出可能であり、
制御部は、前記検出手段が前記リリース手段のリリース位置を検出する前に前記ラッチ部のオープン状態を検出したことを契機に、モータを一旦停止させたあと一方向へ低速回転させ、前記検出手段が前記リリース手段の待機位置を検出したことを契機に前記モータを停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアラッチの操作装置。
【請求項5】
検出手段は、さらにクローザ手段が待機位置に移動したこと及びクローズ方向へ所定量移動したクローズ位置に移動したことを検出可能であり、
制御部は、前記検出手段が前記クローザ手段のクローズ位置を検出したことを契機にモータを停止させたあと他方向へ高速回転させ、前記検出手段が前記クローズ手段の待機位置を検出したことを契機に前記モータを停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用ドアラッチの操作装置。
【請求項6】
検出手段は、さらにクローザ手段が待機位置に移動したこと及びクローズ方向へ所定量移動したクローズ位置に移動したことを検出可能であり、
制御部は、前記検出手段が前記クローザ手段のクローズ位置を検出する前に開操作検出スイッチが開操作を検出したことを契機に、モータを一旦停止させ、続いて前記クローザ手段を待機位置に戻して、リリース手段をリリース方向へ移動させるように、前記モータを他方向へ高速回転させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用ドアラッチの操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−291790(P2007−291790A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122951(P2006−122951)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】