説明

車両用ドアロック装置

【課題】ひも状部材の連結作業を効率的に行うことが可能で、かつひも状部材のオープンレバーからの脱落を防止する。
【解決手段】オープンレバー21は、アクチュエータベース部材18に枢支されると共に、リリース方向と反対方向が開口する開口211aを通してひも状部材13を掛け可能な切欠き孔211を有する。アクチュエータベース部材18は、オープンレバー21の切欠き孔211における開口211a側の反対側に対向する位置にあって、切欠き孔211に掛けられたひも状部材13をオープンレバー21がリリース方向へ作動する際の切欠き孔211の移動方向とほぼ平行な方向へ移動可能に支える支持部183を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両生産工程を効率的に行い得るようにした車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バックドアを閉鎖状態に拘束するためのドアロック装置において、バックドアを閉鎖状態に拘束するラッチ機構を電動アクチュエータの駆動をもって解除可能にしたものが提案されている。このようなドアロック装置においては、車両生産工程において電動アクチュエータに未だ電源供給のための配線が施されていない状態でバックドアが閉じられると、後工程の作業でバックドアを開ける必要性が生じた場合に、バックドアを開けることができない。これは、車両生産工程の作業効率向上を図る上で大きな課題である。この課題を解消するものとして、車両生産工程において、ラッチ機構の係合状態を解除可能にするオープンレバーにひも状部材を引っ掛けて引くことによって、ラッチ機構の係合状態を解除してバックドアを開けることができるようにしたものである(例えば特許文献1、2及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4552403号公報
【特許文献2】特開2009−202823公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】発明協会公開技法 公技番号 2003−504704(発行日 2003年8月12日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された発明においては、ひも状部材はオープンレバーに設けた孔部を通過させることでオープンレバーに引っ掛けられるため、ひも状部材の引っ掛け作業が面倒で作業効率が悪い。また、上記特許文献2に記載された発明及び上記非特許文献1(図1、2、4及び図5)に記載された技術においては、ひも状部材をオープンレバーの孔部に通過させる作業に加えて、ひも状部材に結び目を作らなければならないため、より作業性が悪い。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、ひも状部材の連結作業を効率的に行うことが可能で、かつひも状部材のオープンレバーからの脱落を防止した車両用ドアロック装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1の発明は、車体またはドアのいずれか一方に取り付けられ、他方のストライカに係脱可能なラッチ機構と、前記ドアの開操作により駆動する電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの駆動により前記ラッチ機構を前記ストライカと係合した係合状態を解除する離脱状態へ作動させるリリース方向へ作動可能なオープンレバーと、前記オープンレバーに掛けられ両端を同方向へ引いた場合に前記オープンレバーをリリース方向へ作動させることが可能なひも状部材とを備え、前記オープンレバーは、アクチュエータベース部材に枢支されると共に、前記リリース方向と反対方向が開口し当該開口を通して前記ひも状部材を掛け可能な切欠き孔を有し、前記アクチュエータベース部材は、前記オープンレバーの前記切欠き孔における開口側の反対側に対向する位置にあって、前記切欠き孔に掛けられた前記ひも状部材を前記オープンレバーがリリース方向へ作動する際の前記切欠き孔の移動方向とほぼ平行な方向へ移動可能に支える支持部を有することを特徴としている。
【0008】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記切欠き孔は、前記オープンレバーの作動により左右方向へ移動する部分に設けられ、前記支持部は、前記切欠き孔に掛けられた前記ひも状部材が前記切欠き孔から垂れ下がらないようにすることを特徴としている。
【0009】
第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記ラッチ機構は、前記車体または前記ドアのいずれか一方に固定されると共に前記アクチュエータベース部材が連結固定されるラッチベース部材と、当該ラッチベース部材に枢支され前記ストライカに係脱可能なラッチと、前記オープンレバーのリリース方向への作動に基づいて、前記係合状態を解除して前記離脱状態とする方向へ作動可能なラチェットとを有し、前記ラッチベース部材は、前記切欠き孔に掛けられると共に前記支持部に支えられた前記ひも状部材の両端を前記ラッチベース部材の外側へ引き出し可能とする貫通孔を有することを特徴としている。
【0010】
第4の発明は、前記第3の発明において、前記アクチュエータベース部材は、前記貫通孔から引き出された前記ひも状部材の両端を引掛可能な引掛部を有することを特徴としている。
【0011】
第5の発明は、前記第3または第4の発明において、前記切欠き孔は、前記オープンレバーがリリース方向へ作動した際、前記ラチェットに当接して前記ラッチ機構を解除状態へ作動させる当接部と前記オープンレバーの回転中心との間に設けたことを特徴としている。
【0012】
第6の発明は、前記第3〜第5の発明のいずれかにおいて、前記アクチュエータベース部材を前記ラッチベース部材に連結固定しない状態において、前記オープンレバーの前記切欠き孔は、前記アクチュエータベース部材から露出する部分に設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ひも状部材が掛けられる切欠き孔をオープンレバーのリリース方向と反対方向の側が開口した形状としたことによって、ひも状部材の両端の中間をオープンレバーに簡単に掛けることができる。さらには、オープンレバーが枢支されるアクチュエータベース部材にオープンレバーのリリース方向に対向する側にあって、ひも状部材を切欠き孔の移動方向とほぼ平行な方向へ移動可能に支持する支持部を設けたことによって、ひも状部材が切欠き孔から脱落することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両後部の模式的な側面図である。
【図2】本発明に係わるドアロック装置の斜視図である。
【図3】同じくドアロック装置のラッチ機構及び電動アクチュエータの斜視図である。
【図4】同じくドアロック装置の分解斜視図である。
【図5】同じくドアロック装置の正面図である。
【図6】図5における矢印VI方向から見たドアロック装置の側面図である。
【図7】ラッチ機構及び電動アクチュエータの内部構造を示す係合状態にあるドアロック装置の正面図である。
【図8】ラッチ機構及び電動アクチュエータの内部構造を示す離脱状態にあるドアロック装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図1における左方及び図5、7,8における図面手前を「前方」とし、図1における右方及び図5、7、8における図面奥側を「後方」とする。
【0016】
図1に示すように、バックドア1は、車体2後部の開口を開閉し得るように、車体2の上部に設けられる左右方向を向くドアヒンジ3により上下方向へ開閉可能に枢着される。バックドア1のほぼ水平方向の下部パネル1Aには、車体2側に固着されるストライカ4に係脱可能なラッチ機構6と、バックドア1の開操作により駆動する電動アクチュエータ7とを備えるドアロック装置5が取り付けられる。
【0017】
図5、6に示すように、ドアロック装置5は、ラッチ機構6がバックドア1の下部パネル1Aに設けた取付開口1Bを通って下部パネル1Aの下方へ突出すると共に、電動アクチュエータ7がバックドア1内に配置されるように、バックドア1の内側から取り付けられる。なお、図5は、要部を明示するために一部を切り欠いて示している。
【0018】
図4に示すように、ラッチ機構6は、バックドア1の下部パネル1Aに固定される金属製のラッチベース部材8と、ラッチベース部材8に枢着され、ストライカ4と係脱可能なラッチ9と、ラッチベース部材8に枢着され、ラッチ9に係脱可能なラチェット10を有する。なお、ラッチベース部材8は、さらにラッチ9及びラチェット10の上面を覆うようにラッチベース部材8上に固定される合成樹脂製のカバー部材11と、カバー部材11上に固定される金属製のブラケット12とを含む。
【0019】
主に図7、8に示すように、ラッチベース部材8は、バックドア1の下部パネル1Aの取付開口1Bから下方へ突出するベース部81と、ベース部81の左右上部に折曲形成されバックドア1の下部パネル1Aにボルト(図示略)により固定される左右1対のフランジ部82、82とを有する。ラッチベース部材8及びカバー部材11の中央には、バックドア1が閉じられたとき、ストライカ4が進入可能なストライカ進入溝83及び111が設けられる。ラッチベース部材8における左側のフランジ部82とベース部81との境界部分(折曲部分)には、後述のひも状部材13が通過可能な貫通孔84が設けられる。なお、図7、8においては、ラッチ機構6及び電動アクチュエータ7の内部構造を明示するため、カバー部材11、ブラケット12及び後述のベース部181を省略している。
【0020】
図7、8に示すように、ラッチ9は、ほぼ上下方向を向くラッチ軸14によりベース部81におけるストライカ進入溝83の右側に枢着されると共に、ストライカ4が係合可能な係合溝91を有し、バックドア1の閉動作に伴ってストライカ4が係合溝91に係合することにより、ラッチ軸14に巻装されたバネ15の付勢力に抗して離脱位置(図7、8に示す係合位置から反時計方向へ所定角度回動した位置)から図7、8に示す係合位置に回動する。
【0021】
ラチェット10は、上下方向を向くラチェット軸16によりベース部81におけるストライカ進入溝83の左側に枢着されると共に、後方へ延出する被当接部101を有し、ラッチ9が離脱位置から係合位置に回動すると、ラチェット軸16に巻装されたバネ17の付勢力によりラッチ9に係合してラッチ9の係合位置から離脱位置への回動を阻止することでバックドア1を閉鎖位置に拘束する。さらに、ラチェット10は、後述のオープンレバー21のリリース方向への回動に基づいて、ラッチ機構6を係合状態(ラッチ9がストライカ4に係合し、かつラチェット10がラッチ9に係合した状態)とする係合位置(図7に示す位置)から係合状態を解除してラッチ機構6を離脱状態(ラッチ9がストライカ4から離脱し、かつラチェット10がラッチ9から離脱する状態)とするリリース方向(図7において反時計方向)へ作動することにより、バックドア1の開きを可能にする。
【0022】
電動アクチュエータ7は、ラッチ機構6のブラケット12を介してラッチベース部材8に固定されるアクチュエータベース部材18と、アクチュエータベース部材18内の上部に配置される電動モータ19と、アクチュエータベース部材18内に枢着されると共に、電動モータ19の回転軸に止着されたウォーム191に噛合し電動モータ19の駆動により回動するウォームホイール20と、電動モータ19の駆動によるウォームホイール20の回動により作動するオープンレバー21とを有し、バックドア1に設けられた操作ハンドルまたは操作スイッチ(共に図示略)が操作されると、電動モータ19が駆動することで、オープンレバー21を作動させて、ラッチ機構6を係合状態から離脱状態へ作動させる。
【0023】
オープンレバー21には、ひも状部材13の両端131、131の中間が掛けられる。車両生産工程において、電動モータ19に電源を供給するための電気的な配線が施されていない状況で、バックドア1の下部パネル1Aから引き出されたひも状部材13の両端131、131を同方向へ引っ張ることによって、ラッチ機構6を係合状態から離脱状態に作動させることができる。
【0024】
アクチュエータベース部材18は、ブラケット12に固定される前側のベース部181(図2、3)と、ベース部181の後側を閉鎖するカバー部182とを含む。
【0025】
カバー部182の左下端部には、オープンレバー21に設けられる後述の切欠き孔211の開口する側の反対側に対向する位置にあって、ほぼ水平方向に延出する支持部183が設けられる。支持部183は、オープンレバー21の切欠き孔211に掛けられるひも状部材13が垂れ下がらないようにすると共に左右方向(切欠き孔211の移動方向とほぼ平行な方向)へ移動可能に支える。
【0026】
図2、3に示すように、ベース部181の左側部には、電動アクチュエータ7をラッチ機構6に組み付けるまでの期間、オープンレバー21に掛けられたひも状部材13の両端131、131と支持部183に支えられた部分との間の部分を掛けるための下方が開口する中間引掛部184が設けられ、またベース部181の右側部には、電動アクチュエータ7をラッチ機構6に組み付けた後、オープンレバー21に掛けられたひも状部材13の両端131、131付近が掛けられる下方が開口する両端引掛部185が設けられる。
【0027】
さらに、ベース部181の前面には、ドライバ等の工具を差込可能な上下方向の長孔186が設けられる。またベース部181の左下端部には、カバー部182の支持部183の前側に若干の隙間をもって対向するように下方へ突出する突出壁部187が設けられる。突出壁部187は、支持部183上に支えられたひも状部材13が支持部183からズレ落ちないように、ひも状部材13の前方移動を阻止するものである。
【0028】
ウォームホイール20は、ベース部181とカバー部182間に前後方向を向く軸23により枢着されると共に、軸23周りに設けられるバネ24の付勢力により通常はニュートラル位置(図7、8に示す位置)に保持され、電動モータ19が駆動してウォーム191に噛合することにより、バネ24の付勢力に抗してニュートラル位置から反時計方向へ回動し、電動モータ19の駆動が停止すると、バネ24の付勢力によりニュートラル位置に戻って停止する。
【0029】
オープンレバー21は、アクチュエータベース部材18内に前後方向の軸22により枢着されると共に、ウォームホイール20の回転面に設けられた突部201が回動方向から当接可能な当接部212と、下方へ延出するリリースアーム部213と、右方へ延出するエマ−ジェンシーアーム部216とを有する。
【0030】
電動モータ19の駆動によりウォームホイール20が反時計方向へ回転すると、ウォームホイール20の突部201がオープンレバー21の被当接部212に当接することにより、オープンレバー21は、図7に示す初期位置から時計方向(以下、リリース方向と記す)へ所定角度回動し図8に示す位置に回動する。オープンレバー21がリリース方向へ回動すると、オープンレバー21のリリースアーム部213の左下端の当接部214がラチェット10の被当接部101に右方から当接することによって、ラッチ9に係合したラチェット10はラッチ9から離脱するリリース方向へ回動する。
【0031】
オープンレバー21のリリースアーム部213における軸22(オープンレバー21の回動中心)と当接部214との間にあって、かつオープンレバー21の回動に伴って左右方向へ移動する部分には、リリース方向と反対側(右側)が開口211aし、ひも状部材13の両端131、131の中間が掛けられる切欠き孔211が設けられる。切欠き孔211の開口211aの下部には、ひも状部材13が切欠き孔211から脱落し難いように、開口211aの上下方向の開口幅を狭めるように斜め上方へ突出する突出部215が設けられる。なお、ラッチ機構6と電動アクチュエータ7とを互いに組み付ける以前の状態においては、オープンレバー21の切欠き孔211は、アクチュエータベース部材18の下端から下方へ突出している。
【0032】
図5に示すように、オープンレバー21のエマージェンシーアーム部216の一部は、アクチュエータベース部材18の長孔186に対して交差するように長孔186から露出する。これにより、例えば、ドアロック装置5をバックドア1に取り付けた後、電気的故障等により電動モータ19の駆動が不能になった場合には、ドライバ等の工具を長孔186内に差し込んで、エマージェンシーアーム部216を押し下げることによって、オープンレバー21をリリース方向へ回動させてバックドア1を開けることができる。
【0033】
ひも状部材13は、両端131、131の中間がオープンレバー21における切欠き孔211の開口211aを通して切欠き孔211に掛けた状態で、切欠き孔211から左方向へ延在させてアクチュエータベース部材18の支持部183上に載せ、さらに両端131、131はラッチベース部材8の貫通孔84に通過してラッチベース部材8の外側に引き出される。
【0034】
次に、電動アクチュエータ7とラッチ機構6との互いの組付要領及びドアロック装置5のバックドア1に対する取付要領について説明する。
電動アクチュエータ7をラッチ機構6に組み付ける以前の状態においては、図3に示すように、ひも状部材13の両端131、131の中間を、アクチュエータベース部材18の下端から突出したオープンレバー21の切欠き孔211に開口211aを通して掛ける。そして、ひも状部材13の中間の左近傍を支持部183と突出壁部187間の隙間を通して支持部183上に載せると共に、ひも状部材13の両端131、131寄り側を中間引掛部184に掛けた状態にする。
【0035】
電動アクチュエータ7をラッチ機構6に組み付けるには、先ずアクチュエータベース部材18の中間引掛部184に掛けられたひも状部材13の両端131、131をラッチベース部材8の貫通孔84に通す。そして、この状態で、ラッチ機構6のブラケット12の上方へ延出する取付片121をアクチュエータベース部材18のベース部181の前面にボルト25により固定する。次に、ひも状部材13を中間引掛部184から外して、図2に示すように、貫通孔84から引き出されたひも状部材13の両端131、131付近をラッチ機構6のストライカ進入溝83、111を経由してアクチュエータベース部材18の両端引掛部185に掛ける。これにより、オープンレバー21に掛けられたひも状部材13が、ドアロック装置5から垂れ下がることがないので、ドアロック装置5の搬送を容易に行うことができると共に、ドアロック装置5をバックドア1に固定する作業を容易に行うことができる。
【0036】
次に、バックドア1に設けられる作業孔(図示略)を利用して、ドアロック装置5をバックドア1内に挿入し、ラッチ機構6を下部パネル1Aの取付開口1Bから下方へ突出させた状態で、ラッチベース部材8のフランジ部82、82をボルト(図示略)により下部パネル1Aの内面に固定する。これにより、ひも状部材13は、ラッチベース部材8の貫通孔84及びバックドア1の下部パネル1Aの取付開口1Bを通ってバックドア1の外に引き出される。そして、ひも状部材13の両端131、131は、バックドア1内においてアクチュエータベース部材18の両端引掛部185に保持される。この場合、ひも状部材13の両端131、131がアクチュエータベース部材18の両端引掛部185に掛けられて、ドアロック装置5から垂れ下がることがないので、ひも状部材13をラッチ機構6と共に、バックドア1の取付開口1Bに容易に通すことができる。
【0037】
ドアロック装置5がバックドア1に取り付けられた状態で、かつ電動アクチュエータ7が電源に電気的に接続されていない状態の車両生産工程において、バックドア1を開ける必要が生じた場合には、バックドア1の下部パネル1Aの取付開口1Bから引き出されたひも状部材13を同一方向へ引っ張って両端131、131を両端引掛部185から外した後、ひも状部材13の両端131、131を同一方向へ引っ張ることによって、オープンレバー21をリリース方向へ回動させる。これにより、オープンレバー21の当接部214がラチェット10の被当接部101に当接して、ラチェット10がラッチ9から離脱する方向へ回動することにより、バックドア1を開けることができる。そして、電動モータ19が電源に電気的に接続された後は、ひも状部材13の両端131、131のいずれか一方の端131を引っ張ることによって、ひも状部材13がオープンレバー21の切欠き孔211から抜けてドアロック装置5から外れる。
【0038】
以上により、本実施形態においては、バックドア1に取り付けられ、車体2のストライカ4に係脱可能なラッチ機構6と、バックドア1に設けられた操作ハンドルまたは操作スイッチの開操作により駆動する電動モータ19を有する電動アクチュエータ7と、電動アクチュエータ7の駆動によりラッチ機構6をストライカ4と係合した係合状態を解除する離脱状態へ作動させるリリース方向へ回動可能なオープンレバー21と、オープンレバー21に掛けられ両端131、131を同方向へ引いた場合にオープンレバー21をリリース方向へ回動させることが可能なひも状部材13とを備える。オープンレバー21は、アクチュエータベース部材18に枢支されると共に、リリース方向と反対方向が開口する開口211aを通してひも状部材13を掛けられる切欠き孔211を有する。これにより、ひも状部材13の両端131、131の中間を開口211aを通して切欠き孔211に簡単に掛けることができる。
【0039】
さらに、切欠き孔211は、オープンレバー21の回動により左右方向へ移動する部分に設けられ、アクチュエータベース部材18は、オープンレバー21における切欠き孔211の開口211aする側の反対側に対向する位置にあって、切欠き孔211に掛けられたひも状部材13をオープンレバー21のリリース方向へ回動する際の切欠き孔211の移動方向とほぼ平行な方向へ移動可能に支える支持部183を有する。これにより、切欠き孔211に掛けられたひも状部材13の両端131、131を同方向へ引っ張ることによって、ひも状部材13の中間は、支持部183によりオープンレバー21の切欠き孔211の移動方向と同一方向へ案内され、オープンレバー21を円滑かつ確実にリリース方向へ回動させることができる。また、ひも状部材13は切欠き孔211から直接垂れ下がることがないため、組み付け作業中に、ひも状部材13が切欠き孔211から簡単に抜け落ちることはない。
【0040】
さらに、ラッチベース部材8は、切欠き孔211に掛けられると支持部183に支えられたひも状部材13の両端131、131をラッチベース部材8の外側へ引き出し可能とする貫通孔84を有する。これにより、オープンレバー21に掛けられたひも状部材13の両端131、131をバックドア1の外側に簡単に引き出すことができる。
【0041】
さらに、アクチュエータベース部材18は、貫通孔84から引き出されたひも状部材13の両端131、131を引掛可能な両端引掛部185を有する。これにより、ドアロック装置5をバックドア1の下部パネル1Aに取り付ける際、ひも状部材13がドアロック装置5から垂れ下がることがないので、ひも状部材13がドアロック装置5のバックドア1への取付作業を邪魔することがなく、ドアロック装置5をバックドア1に容易に取り付けることができる。
【0042】
さらに、オープンレバー21の切欠き孔211は、オープンレバー21がリリース方向へ回動した際、ラチェット10に当接してラッチ機構6を離脱状態へ作動させるオープンレバー21の当接部214とオープンレバー21の回転中心との間に設けられる。これにより、オープンレバー21に掛けられたひも状部材13の両端131、131を引っ張ることによって、ラチェット10をリリース方向へ円滑に回動させることができる。
【0043】
さらに、アクチュエータベース部材18をラッチベース部材8に連結固定しない状態において、オープンレバー21の切欠き孔211は、アクチュエータベース部材18から露出する部分に設けられる。これにより、ひも状部材13の両端131、131の中間をオープンレバー21の切欠き孔211に簡単に掛けることができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(i)ドアロック装置5が取り付けられるドアを、バックドア1に代えて、トランクリッド、サイドドアまたはスライドドアとする。
(ii)ドアロック装置5を車体2側に設け、ストライカ4をドア側に設ける。
【符号の説明】
【0045】
1 バックドア
1A 下部パネル
1B 取付開口
2 車体
3 ドアヒンジ
4 ストライカ
5 ドアロック装置
6 ラッチ機構
7 電動アクチュエータ
8 ラッチベース部材
9 ラッチ
10 ラチェット
11 カバー部材
12 ブラケット
13 ひも状部材
14 ラッチ軸
15 バネ
16 ラチェット軸
17 バネ
18 アクチュエータベース部材
19 電動モータ
20 ウォームホイール
21 オープンレバー
22 軸
23 軸
24 バネ
25 ボルト
81 ベース部
82 フランジ部
83 ストライカ進入溝
84 貫通孔
91 係合溝
101 被当接部
111 ストライカ進入溝
121 取付片
131 端
181 ベース部
182 カバー部
183 支持部
184 中間引掛部
185 両端引掛部
186 長孔
187 突出壁部
191 ウォーム
201 突部
211 切欠き孔
211a 開口
212 当接部
213 リリースアーム部
214 当接部
215 突出部
216 エマージェンシーアーム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体またはドアのいずれか一方に取り付けられ、他方のストライカに係脱可能なラッチ機構と、
前記ドアの開操作により駆動する電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータの駆動により前記ラッチ機構を前記ストライカと係合した係合状態を解除する離脱状態へ作動させるリリース方向へ作動可能なオープンレバーと、
前記オープンレバーに掛けられ両端を同方向へ引いた場合に前記オープンレバーをリリース方向へ作動させることが可能なひも状部材とを備え、
前記オープンレバーは、アクチュエータベース部材に枢支されると共に、前記リリース方向と反対方向が開口し当該開口を通して前記ひも状部材を掛け可能な切欠き孔を有し、
前記アクチュエータベース部材は、前記オープンレバーの前記切欠き孔における開口側の反対側に対向する位置にあって、前記切欠き孔に掛けられた前記ひも状部材を前記オープンレバーがリリース方向へ作動する際の前記切欠き孔の移動方向とほぼ平行な方向へ移動可能に支える支持部を有することを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記切欠き孔は、前記オープンレバーの作動により左右方向へ移動する部分に設けられ、
前記支持部は、前記切欠き孔に掛けられた前記ひも状部材が前記切欠き孔から垂れ下がらないように前記ひも状部材を支えることを特徴とする請求項1記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記ラッチ機構は、前記車体または前記ドアのいずれか一方に固定されると共に前記アクチュエータベース部材が連結固定されるラッチベース部材と、当該ラッチベース部材に枢支され前記ストライカに係脱可能なラッチと、前記オープンレバーのリリース方向への作動に基づいて、前記係合状態を解除して前記離脱状態とする方向へ作動可能なラチェットとを有し、
前記ラッチベース部材は、前記切欠き孔に掛けられると共に前記支持部に支えられた前記ひも状部材の両端を前記ラッチベース部材の外側へ引き出し可能とする貫通孔を有することを特徴とする請求項1または2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記アクチュエータベース部材は、前記貫通孔から引き出された前記ひも状部材の両端を引掛可能な引掛部を有することを特徴とする請求項3記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記切欠き孔は、前記オープンレバーがリリース方向へ作動した際、前記ラチェットに当接して前記ラッチ機構を離脱状態へ作動させる当接部と前記オープンレバーの回転中心との間に設けたことを特徴とする請求項3または4記載の車両用ドアロック装置。
【請求項6】
前記アクチュエータベース部材を前記ラッチベース部材に連結固定しない状態において、前記オープンレバーの前記切欠き孔は、前記アクチュエータベース部材から露出する部分に設けられることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の車両用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−92516(P2012−92516A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238847(P2010−238847)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】