説明

車両用ドアロック装置

【課題】衝撃等時における意に反するドアの開放を確実に防止できるとともに、耐久性の低下を抑制できる車両用ドアロック装置を提供する。
【解決手段】ポール12は、ハウジング80に揺動可能に設けられ、フォーク11の揺動を固定又は開放可能とされている。切替レバー20は、ハウジング80に設けられ、外側ドアハンドル8又は内側ドアハンドル7に連結され、外側ドアハンドル8等の開操作によって変位してポール12に作用し、フォーク11をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。ポール12には、枢軸X1周りに揺動可能とされて、設定値を超える慣性力F1が作用することにより第1位置から第2位置まで揺動する慣性レバー30と、慣性レバー30を第1位置に付勢する付勢部材41とが設けられている。慣性レバー30は、第1位置で切替レバー13と当接し、第2位置で切替レバー13との当接を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車両用ドアロック装置が開示されている。この車両用ドアロック装置は、車体の開口を開閉するドアに設けられ、車体に固定されたストライカが進入する進入口をもつハウジングと、ハウジングに揺動可能に設けられ、進入口内においてストライカを係止するラッチ状態、又は進入口内においてストライカの係止を解除するアンラッチ状態に切り替わるフォークとを備える。また、この車両用ドアロック装置は、ハウジングにポール軸心周りに揺動可能に設けられ、フォークの揺動を固定又は開放可能なポールと、ハウジングに設けられ、外側ドアハンドルに連結された切替レバーとを備える。切替レバーは、外側ドアハンドルの開操作によって変位してポールに作用し、フォークをラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えるようになっている。
【0003】
ポールには、慣性レバーが設けられている。慣性レバーは、球面軸受により揺動可能に支持されている。慣性レバーの上端部は、ハウジングに設けられた挿通孔と対向している。通常時、慣性レバーに慣性力が作用しないので、慣性レバーは揺動しない。この場合において、外側ドアハンドルの開操作によって切替レバーが変位してポールに作用し、ポールがポール軸心周りに揺動しようとすると、慣性レバーの上端部が挿通孔に挿通して、ポールの揺動を拘束しない。その結果、ポールはフォークの揺動を開放し、フォークはアンラッチ状態に切り替わる。その一方、車両に対して衝撃等が作用した場合、慣性レバーが慣性力により揺動する。この場合において、衝撃等により外側ドアハンドルや切替レバーが変位してポールに作用し、ポールがポール軸心周りに揺動しようとすると、慣性レバーの上端部が挿通孔を囲む周縁部に当て止まって、ポールの揺動を拘束する。その結果、ポールはフォークの揺動を開放できなくなり、フォークはアンラッチ状態に切り替わらない。こうして、従来の車両用ドアロック装置は、衝撃等時における意に反するドアの開放の防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭55−27948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の車両用ドアロック装置において、慣性レバーは、球面軸受によりポールに揺動可能に支持されているだけであることから、衝撃等時に慣性レバーがポールの揺動を拘束する動作にばらつきが生じ易く、その結果として、意に反するドアの開放を確実に防止することが難しい。また、衝撃等時に、慣性レバーの上端部が挿通孔を囲む周縁部に当て止まることにより、ハウジング、切替レバー又は慣性レバー等に変形や破損等の不具合が生じるおそれがあり、その結果として、耐久性が低下し易い。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、衝撃等時における意に反するドアの開放を確実に防止できるとともに、耐久性の低下を抑制できる車両用ドアロック装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用ドアロック装置は、車体の開口を開閉するドアに設けられ、前記車体に固定されたストライカが進入する進入口をもつハウジングと、
前記ハウジングに揺動可能に設けられ、前記進入口内において前記ストライカを係止するラッチ状態、又は前記進入口内において前記ストライカの係止を解除するアンラッチ状態に切り替わるフォークと、
前記ハウジングにポール軸心周りに揺動可能に設けられ、前記フォークの揺動を固定又は開放可能なポールと、
前記ハウジングに設けられ、外側ドアハンドル又は内側ドアハンドルに連結され、前記外側ドアハンドル又は前記内側ドアハンドルの開操作によって変位して前記ポールに作用し、前記フォークを前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切り替える切替レバーとを備える車両用ドアロック装置であって、
前記ポール又は前記ポールと同期揺動する揺動体には、前記開口に進退する方向に直交する方向に延びる枢軸周りに揺動可能とされて、設定値を超える慣性力が作用することにより第1位置から第2位置まで揺動する慣性レバーと、前記慣性レバーを前記第1位置に保持する付勢力を有する付勢部材とが設けられ、
前記慣性レバーは、前記第1位置で前記切替レバーと当接し、前記第2位置で前記切替レバーとの当接を回避するように構成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
本発明の車両用ドアロック装置では、ポール又はポールと同期揺動する揺動体に、慣性レバーと付勢部材とが設けられている。通常状態では、慣性レバーは第1位置にある。このため、通常状態において、外側ドアハンドル又は内側ドアハンドルの開操作により、切替レバーが変位すると、第1位置にある慣性レバーが切替レバーと当接して、切替レバーの変位がポールに伝達される。そうすると、ポールがフォークの揺動を開放するので、フォークがラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。
【0009】
また、この車両用ドアロック装置において、慣性レバーは、設定値を超える慣性力が作用することにより、枢軸周りに第1位置から第2位置まで揺動する。つまり、車両に対する衝突等により、車両の開口に進退する方向の衝撃をドアや車体が受けると、慣性レバーには、衝撃方向とは反対方向に慣性力が作用する。そして、その慣性力が設定値を超える場合、慣性レバーは、開口に進退する方向に直交する方向に延びる枢軸周りに、第1位置から衝撃方向とは反対方向である第2位置まで揺動する。このため、切替レバーが意に反して変位しても、第2位置にある慣性レバーが切替レバーとの当接を回避する「空振り状態」となる。こうして、衝撃等時、切替レバーの変位がポールに伝達されないので、ポールがフォークの揺動を固定したままとなり、フォークがラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わらない。
【0010】
ここで、この車両用ドアロック装置では、上記従来技術とは異なり、慣性レバーを第1位置に保持する付勢部材がポール又はポールと同期揺動する揺動体に設けられている。そして、慣性レバーに設定値を超える慣性力が作用すれば、慣性レバーは付勢部材の付勢力に抗しつつ第1位置から第2位置まで揺動する。その一方、慣性レバーに作用する慣性力が設定値以下であれば、慣性レバーは付勢部材の付勢力に負けて第2位置まで揺動できない。このため、この車両用ドアロック装置は、上記従来技術と比較して、衝撃等時に慣性レバーが切替レバーとの当接を回避する動作にばらつきが生じ難く、その結果として、意に反するドアの開放を確実に防止することができるので、乗員の安全を確保できる。
【0011】
また、この車両用ドアロック装置は、上記従来技術と比較して、衝撃等時に、慣性レバーがハウジングや切替レバー等に当て止まらないので、ハウジング、切替レバー又は慣性レバー等に変形や破損等の不具合が生じ難く、その結果として、耐久性の低下を抑制できる。
【0012】
したがって、本発明の車両用ドアロック装置は、衝撃等時における意に反するドアの開放を確実に防止できるとともに、耐久性の低下を抑制できる。また、一般的な車両用ドアロック装置では、切替レバーと、ポール又はポールと同期揺動する揺動体との間に隙間が確保されるので、仮に切替レバーに慣性レバーを設けた場合、慣性レバーの作動範囲がその隙間の分だけ大きくなってしまう。この点、本発明の車両用ドアロック装置は、ポール又はポールと同期揺動する揺動体に慣性レバーが設けられた構成により、切替レバーと、ポール又はポールと同期揺動する揺動体との間の隙間に関係なく、慣性レバーの作動範囲を小さくでき、ひいては、装置全体の大型化を抑制できる。
【0013】
本発明の車両用ドアロック装置において、枢軸はポール軸心から離れていることが好ましい(請求項2)。この場合、この車両用ドアロック装置は、枢軸がポール軸心と同軸である場合と比較して、慣性レバーのレイアウトに関して、設計自由度が向上する。
【0014】
本発明の車両用ドアロック装置において、枢軸はポール軸心と同軸であることが好ましい(請求項3)。この場合、この車両用ドアロック装置は、ポールと慣性レバーとを1本の揺動軸で支持するので、部品点数を削減でき、ひいては、製造コストの高騰を抑制できる。
【0015】
本発明の車両用ドアロック装置において、付勢部材は、枢軸と同軸に設けられた捩じりコイルバネであることが好ましい(請求項4)。この場合、この車両用ドアロック装置は、付勢部材の占有スペースを小さくでき、ひいては、装置全体の大型化を確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用ドアロック装置は、衝撃等時における意に反するドアの開放を確実に防止できるとともに、耐久性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の車両用ドアロック装置が適用される車両用ドアの概略斜視図である。
【図2】実施例1の車両用ドアロック装置の斜視図である。
【図3】実施例1の車両用ドアロック装置に係り、ハウジング、フォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す分解斜視図である。
【図4】実施例1の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図5】実施例1の車両用ドアロック装置に係り、図4の矢視B方向から見たポール、切替レバー及び慣性レバー等を抜き出して示す模式図である。
【図6】実施例1の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図7】実施例1の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図8】実施例2の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図9】実施例2の車両用ドアロック装置に係り、図8の矢視C方向から見たポール、切替レバー及び慣性レバー等を抜き出して示す模式図である。
【図10】実施例2の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図11】実施例2の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図12】実施例3の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図13】実施例3の車両用ドアロック装置に係り、図12の矢視D方向から見たポール、切替レバー及び慣性レバー等を抜き出して示す模式図である。
【図14】実施例3の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図15】実施例4の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図16】実施例4の車両用ドアロック装置に係り、図15の矢視E方向から見たポール、切替レバー及び慣性レバー等を抜き出して示す模式図である。
【図17】実施例4の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図18】実施例5の車両用ドアロック装置に係り、図3の矢視A方向から見たフォーク、ポール、切替レバー及び慣性レバー等を示す模式図である。
【図19】実施例5の車両用ドアロック装置に係り、図18の矢視F方向から見たポール、切替レバー及び慣性レバー等を抜き出して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施例1〜5を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の車両用ドアロック装置1(以下、単に「ドアロック装置1」と呼ぶ。)は、自動車、バス、産業車両等の車両に適用されるものである。ドアロック装置1は、車体の左側面に設けられた開口9を開閉するドア2の後端側に配設されている。
【0020】
より詳しくは、ドア2の後部外面には外部ドアハンドル8が配設され、ドア2の内面には内側ドアハンドル7が配設されている。ドアロック装置1は、ドア2の内部において外部ドアハンドル8の下方に配設されている。ドア2の後端面には、ドアロック装置1の進入口91が露出している。進入口91には、ドア2の開閉に伴ってドアロック装置1が移動する際、略「U」字形状のストライカ99が相対的に進入するようになっている。ドアロック装置1は、ロッド71を介して外部ドアハンドル8と連結され、ケーブル72を介して内側ドアハンドル7と接続されている。
【0021】
なお、図2以降に示す前後方向、上下方向及び内外方向は、すべて図1に対応させて表示している。また、本実施例では、左側ドアに設けられるドアロック装置1を例示するが、右側ドアの場合は勝手違いになるだけである。さらに、ドアロック装置1は、スライド式に開閉する車両用ドアやテールゲート等にも設けられ得る。
【0022】
以下、ドアロック装置1の構成について詳述する。図2〜図5に示すように、ドアロック装置1は、ドア2の後端側内部に配設されるハウジング80と、ハウジング80内に設けられたフォーク11、ポール12及び切替レバー13とを備える。
【0023】
ハウジング80は、樹脂製のメインハウジング81及び金属鋼板製のベースプレート82等が組み合わされてなる。図3に示すように、メインハウジング81は、車両内側及び後ろ側に開口する内部空間81Aを有する。内部空間81Aは、その車両内側が図示しないカバー部材により塞がれ、その後ろ側がベースプレート82により塞がれている。
【0024】
ベースプレート82には、車両内側から外側に向けて深く溝状に切り欠かれた進入口91が形成されている。図5に示すように、内部空間81A内には、ベースプレート82と対向する金属鋼板製のバックプレート83が固定されている。
【0025】
図3に示すように、内部空間81A内には、前後方向に延在するフォーク揺動軸11S及びポール揺動軸12Sが設けられている。図4に示すように、フォーク揺動軸11Sは、進入口91に対して上方に位置し、ポール揺動軸12Sは、進入口91に対して下方に位置する。図5に示すように、ポール揺動軸12Sは、その後端がベースプレート82に固定され、その前端がバックプレート83に固定されている。図示は省略するが、フォーク揺動軸11Sも、その後端がベースプレート82に固定され、その前端がバックプレート83に固定されている。
【0026】
図3に示すように、フォーク11は、内部空間81A内において、フォーク揺動軸11Sに揺動可能に支持されている。そして、図4に示すように、フォーク11は、捻りコイルバネ11T(図3に示す。)により、フォーク揺動軸11S周りにD1方向に揺動するように付勢されている。
【0027】
フォーク11の進入口91側に位置する部位は、内側凸部11Aと外側凸部11Bとに分岐している。そして、内側凸部11Aと外側凸部11Bとの間に形成された凹部11Cには、進入口91内に進入したストライカ99が収まるようになっている。図4に示す状態では、フォーク11が進入口91の底部でストライカ99を保持している。内側凸部11Aのポール12に対面する先端側には、後述するストッパ面12Aと当接可能なラッチ面11Dが形成されている。
【0028】
図3に示すように、ポール12は、内部空間81A内において、ポール揺動軸12Sに支持されて、ポール軸心X12周りに揺動可能とされている。そして、図4に示すように、ポール12は、捻りコイルバネ12T(図3に示す。)により、ポール軸心X12周りにD2方向に揺動するように付勢されており、通常は、図4に示す姿勢を保持している。
【0029】
ポール12における進入口91の底部側に位置する部位には、ストッパ面12Aが形成されている。ストッパ面12Aは、ポール軸心X12を中心として円弧状にカーブする曲面であり、上述のラッチ面11Dに対面するように形成されている。ストッパ面12Aを構成する円弧は、フォーク11側で途切れており、そこからポール揺動軸12S側に延びる摺動面12Cが形成されている。
【0030】
図3に示すように、ポール12は、ポール揺動軸12S側から車両内側に向けて延びる慣性レバー支持部12Pを有する。図3〜図5に示すように、慣性レバー支持部12Pには、慣性レバー揺動軸30Sが嵌入されている。慣性レバー揺動軸30Sは、前後方向(開口9に進退する方向に直交する方向)に延びる枢軸X1を軸心として、慣性レバー支持部12Pから前方に向けて突出している。慣性レバー支持部12Pの端部には、細板状をなして前方に向けて突出するストッパ部12Qが形成されている。ストッパ部12Qは、慣性レバー揺動軸30Sよりもポール揺動軸12Sから離れている。
【0031】
ポール12には、慣性レバー30と、付勢部材としての捩じりコイルバネ41(図3及び図5に示す。)とが設けられている。慣性レバー30は、慣性レバー揺動軸30Sに挿通されて、枢軸X1周りに揺動可能とされている。慣性レバー30は、本実施例では、亜鉛ダイキャスト製とされている。捩じりコイルバネ41は、慣性レバー30より前方に位置するように、慣性レバー揺動軸30Sに挿通されて、枢軸X1と同軸に配設されている。
【0032】
図3に示すように、慣性レバー30は、枢軸X1の径外方向に延び、さらに前方に屈曲して柱状に突出しており、その柱状部分が当接部30Aとされている。図示は省略するが、捩じりコイルバネ41の一端は慣性レバー30に係止され、捩じりコイルバネ41の他端はポール12に係止されている。これにより、図4に示すように、慣性レバー30は、枢軸X1周りにD3方向に揺動するように付勢されており、通常状態(図1に示す衝撃F0が作用しない状態)では、ストッパ部12Qに当て止まっている。図4に示す慣性レバー30の位置は、本発明の第1位置である。この状態では、図6に示すように、ポール12と、第1位置にある慣性レバー30とがポール軸心X12周りに一体的に揺動する。
【0033】
ここで、捩じりコイルバネ41の付勢力と、慣性レバー30の重量(特に、当接部30Aの重量)とは、図7に示すように、設定値を超える慣性力F1が慣性レバー30に作用することにより、慣性レバー30が捩じりコイルバネ41の付勢力に抗しつつ、ポール12に対して枢軸X1周りで第1位置から図7に示す位置まで揺動するように設定されている。図7に示す慣性レバー30の位置は、本発明の第2位置である。設定値は、例えば、車両の側面衝突等の際の実測データ等に基づいて適宜設定される。
【0034】
図3及び図4に示すように、内部空間81A内において、ポール12の下方には、切替レバー13と、オープンレバー88、89とが設けられている。切替レバー13は、樹脂製であり、上下方向に細長く延在している。オープンレバー88、89は、金属鋼板製であり、図4に示すオープンレバー揺動軸88S周りに揺動可能に支持されている。図4及び図5に示すように、切替レバー13の下端部には、オープンレバー89の先端部89Aが係合している。
【0035】
図4に示すように、オープンレバー89は、捻りコイルバネ88T(図3に示す。)により、オープンレバー揺動軸88S周りにD4方向に揺動するように付勢されて、図示しないストッパに当て止まっている。これにより、オープンレバー89及び切替レバー13は、通常は、図4に示す姿勢を保持している。この状態では、切替レバー13の上端は、慣性レバー30の当接部30Aの真下に位置している。切替レバー13の上端と当接部30Aとの間には、充分な隙間が確保されている。
【0036】
図4に示すように、ロッド71の下端部は、オープンレバー88に連結されている。外側ドアハンドル8が開操作されてロッド71が下降すると、図6に示すように、オープンレバー88がオープンレバー89の係合部89Bに係合するので、オープンレバー88、89がD4方向とは逆方向に一体的に揺動する。そうすると、オープンレバー89の先端部89Aが上昇して、切替レバー13を押し上げる。
【0037】
また、図示は省略するが、ケーブル72は、図4及び図5に示す可動部材87に連結されている。そして、内側ドアハンドル7が開操作されてケーブル72が作動すると、可動部材87が上昇して、切替レバー13の下端に当接し、切替レバー13を押し上げる。この際、オープンレバー89は、オープンレバー88とは独立してD4方向とは逆方向に揺動するので、可動部材87及び切替レバー13の変位を妨げない。
【0038】
こうして、切替レバー13は、外側ドアハンドル8又は内側ドアハンドル7の開操作によって上方に変位するようになっている。
【0039】
図4に示すように、フォーク11が進入口91の底部でストライカ99を保持した状態では、内側凸部11Aのラッチ面11Dにストッパ面12Aが当接することにより、フォーク11をD1方向に揺動させないように固定する。これにより、フォーク11は、進入口91内においてストライカ99を係止するラッチ状態となる。その結果、ドアロック装置1は、ドア2を閉じた状態で保持する。
【0040】
そして、搭乗者が外側ドアハンドル8又は内側ドアハンドル7を操作して、ロッド71又はケーブル72が動作すると、オープンレバー88、89を介して切替レバー13が上方に変位する。そして、図6に示すように、切替レバー13の上端が第1位置にある慣性レバー30に当接して押し上げるので、その変位が慣性レバー揺動軸30Sを介してポール12に伝達される。そうすると、ポール12は、捻りコイルバネ12Tの付勢力に抗しつつ、ポール軸心X12周りにD2方向とは逆方向に揺動する。この際、ストッパ面12Aがラッチ面11Dから離反するので、ポール12がフォーク11の揺動を開放する。そして、フォーク11が捻りコイルバネ11Tの付勢力によりフォーク揺動軸11S周りにD1方向に揺動して、ストライカ99を進入口91から離脱する方向に変位させる。その結果、フォーク11が進入口91内においてストライカ99の係止を解除するアンラッチ状態に切り替わる。その結果、ドアロック装置1は、ドア2を保持しなくなり、搭乗者がドア2を開くことができる。
【0041】
逆に、搭乗者がドア2を閉めようとすることにより、ストライカ99が進入口91内に進入する場合、ストライカ99が外側凸部11Bを押すので、フォーク11も追従してD1方向とは逆方向に揺動し、図6に示す状態から図4に示す状態に復帰する。この際、外側凸部11B及び内側凸部11Aの先端が順次、摺動面12Cに摺接する。そして、内側凸部11Aが摺動面12Cから離反すると、ポール12は、D2方向に揺動して、図4に示す元の状態に復帰するので、ストッパ面12Aがラッチ面11Dと対面して、フォーク11の揺動を固定する。その結果、ドアロック装置1は、ドア2を閉じた状態で保持する。
【0042】
また、車両に対する衝突等により、図1に示すようにドア2や車両が車外から衝撃F0を受けると、図7に示すように、慣性レバー30に対して、衝撃方向とは反対方向に慣性力が作用する。そして、その慣性力が設定値を超える慣性力F1である場合、慣性レバー30は、捩じりコイルバネ41の付勢力に抗しつつ、枢軸X1周りで、第1位置から衝撃方向とは反対方向である第2位置まで揺動する。ここで、ロッド71は剛直な棒体であり、ドア2の外面に露出する外側ドアハンドル8と連結されている。このため、衝撃F0に伴ってドア2が変形し、外側ドアハンドル8とハウジング80との相対位置関係が短縮された場合、ロッド71がハウジング80に対して相対的に下方に変位してしまう。また、外側ドアハンドル8も質量体であることから、車両が衝撃F0を受けると、外側ドアハンドル8にも衝撃方向とは反対方向に慣性力(図示しない)が作用する。そうすると、搭乗者がドア2の開操作を行う場合と同様に外側ドアハンドル8が変位し、外側ドアハンドル8と連結されたロッド71が下方に変位してしまう。そして、衝撃F0によりロッド71が下方に変位すれば、切替レバー13が意に反して変位するという不具合が生じることとなる。しかしながら、このような場合であっても、上述したように、慣性レバー30は第2位置まで揺動して、当接部30Aが切替レバー13の上端の真上に存在しなくなる。このため、切替レバー13が意に反して変位しても、第2位置にある慣性レバー30の当接部30Aが切替レバー13との当接を回避する「空振り状態」となる。
【0043】
こうして、衝撃等時、切替レバー13の変位がポール12に伝達されないので、ポール12がフォーク11の揺動を固定したままとなり、フォーク11がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わらない。説明は省略するが、ケーブル72及び可動部材87が衝突等時のドア2の変形等により意に反して変位する場合も同様である。
【0044】
ここで、このドアロック装置1では、上記従来技術とは異なり、慣性レバー30を第1位置に保持する捩じりコイルバネ41がポール12に設けられている。そして、慣性レバー30に設定値を超える慣性力F1が作用すれば、慣性レバー30は捩じりコイルバネ41の付勢力に抗しつつ図4に示す第1位置から図7に示す第2位置まで揺動する。その一方、慣性レバー30に作用する慣性力が設定値以下であれば、慣性レバー30は捩じりコイルバネ41の付勢力に負けて第2位置まで揺動できない。このため、このドアロック装置1は、上記従来技術と比較して、衝撃等時に慣性レバー30が切替レバー12との当接を回避する動作にばらつきが生じ難く、その結果として、意に反するドア2の開放を確実に防止することができるので、乗員の安全を確保できる。
【0045】
また、このドアロック装置1は、上記従来技術と比較して、衝撃等時に、慣性レバー30がハウジング80や切替レバー13等に当て止まらないので、ハウジング80、切替レバー13又は慣性レバー30等に変形や破損等の不具合が生じ難く、その結果として、耐久性の低下を抑制できる。
【0046】
したがって、実施例1のドアロック装置1は、衝撃等時における意に反するドア2の開放を確実に防止できるとともに、耐久性の低下を抑制できる。また、仮にポール12の代わりに切替レバー13に、慣性レバー30と同様の慣性レバーを設けることを考えると、切替レバー13とポール12との間に通常確保される隙間の分だけ、慣性レバーの作動範囲が大きくなってしまう。この点、このドアロック装置1は、ポール12に慣性レバー30が設けられた構成により、切替レバー13とポール12との間に通常確保される隙間に関係なく、慣性レバー30の作動範囲を小さくでき、ひいては、装置全体の大型化を抑制できる。
【0047】
また、このドアロック装置1は、枢軸X1がポール軸心X12から離れている構成を採用しているので、枢軸X1がポール軸心X12と同軸である場合と比較して、慣性レバー30のレイアウトに関して、設計自由度が向上する。
【0048】
さらに、このドアロック装置1は、捩じりコイルバネ41が枢軸X1と同軸に設けられた構成を採用しているので、捩じりコイルバネ41の占有スペースを小さくでき、ひいては、装置全体の大型化を確実に抑制できる。
【0049】
なお、実施例1では図示及び説明を省略したが、ドアロック装置1は、内部空間81A内に図示しないロック・アンロック機構を備え得る。このロック・アンロック機構は、ドア2に設けられる図示しないキーシリンダを搭乗者が施錠操作することにより、図5に二点鎖線で示すように、切替レバー13を先端部89A周りに揺動させて、切替レバー13の上端を車両前側に変位させる。こうすることにより、切替レバー13が上昇しても、切替レバー13の上端が慣性レバー30の当接部30Aに当接できなくなる。すなわち、外側ドアハンドル8又は内側ドアハンドル7を操作してもドア2が開かない施錠状態となる。
【0050】
このようなロック・アンロック機構をドアロック装置1が備える場合において、仮にポール12の代わりに切替レバー13に、慣性レバー30と同様の慣性レバーを設けることを考えると、ロック・アンロック機構により切替レバー13が揺動する分だけ、慣性レバーの作動範囲が大きくなってしまう。この点、このドアロック装置1は、ポール12に慣性レバー30が設けられた構成により、ロック・アンロック機構に関係なく、慣性レバー30の作動範囲を小さくでき、ひいては、装置全体の大型化を抑制できる。
【0051】
(実施例2)
図8〜図11に示すように、実施例2のドアロック装置は、実施例1のポール12、慣性レバー30及び捻りコイルバネ41の代わりに、ポール212、慣性レバー230及び捻りコイルバネ241を採用している。実施例2のドアロック装置のその他の構成は、実施例1のドアロック装置1と同様である。このため、実施例1のドアロック装置1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0052】
実施例2のドアロック装置において、ポール212は、ポール揺動軸12Sに支持されて、ポール軸心X12周りに揺動可能とされている。そして、図8に示すように、ポール212は、捻りコイルバネ12T(図9に示す。)により、ポール軸心X12周りにD2方向に揺動するように付勢されており、通常は、図8に示す姿勢を保持している。ポール212には、実施例1のポール12と同様のストッパ面12A及び摺動面12Cが形成されている。
【0053】
図8及び図9に示すように、ポール212には、ストッパ部212Qが形成されている。ストッパ部212Qは、ポール揺動軸12Sに対して車両方向内側に離れた箇所から細板状をなして前方に向けて突出している。
【0054】
ポール212には、慣性レバー230と、付勢部材としての捩じりコイルバネ241(図9に示す。)とが設けられている。慣性レバー230は、ポール揺動軸12Sに挿通されて、ポール軸心X12周りに揺動可能とされている。すなわち、慣性レバー230が揺動する軸心である枢軸X21は、ポール軸心X12と同軸とされている。図9に示すように、捩じりコイルバネ241は、慣性レバー230より前方に位置するように、ポール揺動軸12Sに挿通されて、ポール軸心X12と同軸に配設されている。
【0055】
図8に示すように、慣性レバー230は、ポール軸心X12(枢軸X21)の径外方向に二股に延び、さらにその二股の各先端がブロック状に膨らんでいる。ポール揺動軸12Sの真下に位置するブロック状部分は質量部230Bとされている。また、ポール揺動軸12S及び質量部230Bに対して車両内側に位置するブロック状部分は当接部230Aとされている。切替レバー13の上端は、慣性レバー230の当接部230Aの真下に位置している。切替レバー13の上端と当接部230Aとの間には、充分な隙間が確保されている。
【0056】
図示は省略するが、捩じりコイルバネ241の一端は慣性レバー230に係止され、捩じりコイルバネ241の他端はポール212に係止されている。これにより、慣性レバー230は、ポール軸心X12(枢軸X21)周りにD2方向とは逆方向に揺動するように付勢されており、通常状態(図1に示す衝撃F0が作用しない状態)では、ストッパ部212Qに当て止まっている。図8に示す慣性レバー230の位置は、本発明の第1位置である。この状態では、図10に示すように、ポール212と、第1位置にある慣性レバー230とがポール軸心X12(枢軸X21)周りに一体的に揺動する。
【0057】
ここで、捩じりコイルバネ241の付勢力と、慣性レバー230の重量(特に、当接部230A及び質量部230Bの重量)とは、図11に示すように、設定値を超える慣性力F1が慣性レバー230に作用することにより、慣性レバー230が捩じりコイルバネ241の付勢力に抗しつつ、ポール212に対してポール軸心X12(枢軸X21)周りで第1位置から図11に示す位置まで揺動するように設定されている。図11に示す慣性レバー230の位置は、本発明の第2位置である。
【0058】
このような構成である実施例2のドアロック装置では、搭乗者が外側ドアハンドル8又は内側ドアハンドル7を操作すると、図10に示すように、切替レバー13の上端が第1位置にある慣性レバー230の当接部230Aに当接して押し上げるので、その変位がストッパ部212Qを介してポール212に伝達され、ポール212がポール軸心X12周りにD2方向とは逆方向に揺動する。その結果、ポール212がフォーク11の揺動を開放し、フォーク11がアンラッチ状態に切り替わる。
【0059】
また、車両に対する衝突等により、図11に示すようにドア2や車両が車外から衝撃F0を受けることにより、慣性レバー230に対して設定値を超える慣性力F1が作用する場合、慣性レバー230は、捩じりコイルバネ241の付勢力に抗しつつ、ポール軸心X12(枢軸X21)周りで、第1位置から衝撃方向とは反対方向である第2位置まで揺動して、当接部230Aが切替レバー13の上端の真上に存在しなくなる。このため、切替レバー13が意に反して変位しても、第2位置にある慣性レバー230の当接部230Aが切替レバー13との当接を回避する「空振り状態」となる。
【0060】
こうして、実施例2のドアロック装置も、実施例1のドアロック装置1と同様の作用効果を奏することができる。
【0061】
また、このドアロック装置では、枢軸X21がポール軸心X12と同軸とされて、ポール212と慣性レバー230とを1本のポール揺動軸12Sで支持するので、部品点数を削減でき、ひいては、製造コストの高騰を抑制できる。
【0062】
(実施例3)
図12〜図14に示すように、実施例3のドアロック装置は、実施例1のポール12、慣性レバー30及び捻りコイルバネ41の代わりに、ポール312、揺動体322、慣性レバー330及び捻りコイルバネ341を採用している。実施例3のドアロック装置のその他の構成は、実施例1のドアロック装置1と同様である。このため、実施例1のドアロック装置1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0063】
実施例3のドアロック装置において、ポール312は、ポール揺動軸12Sに支持されて、ポール軸心X12周りに揺動可能とされている。そして、図12に示すように、ポール312は、捻りコイルバネ12T(図13に示す。)により、ポール軸心X12周りにD2方向に揺動するように付勢されており、通常は、図12に示す姿勢を保持している。ポール312には、実施例1のポール12と同様のストッパ面12A及び摺動面12Cが形成されている。
【0064】
図12及び図13に示すように、ポール312には、ポール揺動軸12Sの下方から下向きに突出するように連結部312Rが形成されている。ポール揺動軸12Sには、捻りコイルバネ12Tにより前方に離れて位置するように、揺動体322が挿通されている。揺動体322は板状体であり、その下部が後方に屈曲して連結部312Rに連結されている。これにより、揺動体322は、ポール軸心X12周りにポール312と同期揺動する。
【0065】
図12及び図13に示すように、揺動体322は、ポール揺動軸12S側から車両内側に向けて延びる慣性レバー支持部322Pを有する。慣性レバー支持部322Pには、慣性レバー揺動軸330Sが嵌入されている。慣性レバー揺動軸330Sは、前後方向(開口9に進退する方向に直交する方向)に延びる枢軸X31を軸心として、慣性レバー支持部322Pから後方に向けて突出している。慣性レバー支持部322Pの端部には、細板状をなして後方に向けて突出するストッパ部322Qが形成されている。ストッパ部322Qは、慣性レバー揺動軸330Sよりもポール揺動軸12Sから離れている。
【0066】
揺動体322には、慣性レバー330と、付勢部材としての捩じりコイルバネ341(図13に示す。)とが設けられている。図13に示すように、慣性レバー330は、慣性レバー揺動軸330Sに挿通されて、枢軸X31周りに揺動可能とされている。捩じりコイルバネ341は、慣性レバー330より後方に位置するように、慣性レバー揺動軸330Sに挿通されて、枢軸X31と同軸に配設されている。
【0067】
図12及び図13に示すように、慣性レバー330は、枢軸X31の径外方向に延びてブロック状に膨らんでおり、そのブロック状部分が当接部330Aとされている。切替レバー13の上端は、慣性レバー330の当接部330Aの真下に位置している。切替レバー13の上端と当接部330Aとの間には、充分な隙間が確保されている。
【0068】
図示は省略するが、捩じりコイルバネ341の一端は慣性レバー330に係止され、捩じりコイルバネ341の他端は揺動体322に係止されている。これにより、慣性レバー330は、枢軸X31周りにD3方向に揺動するように付勢されており、通常状態(図1に示す衝撃F0が作用しない状態)では、ストッパ部322Qに当て止まっている。図12に示す慣性レバー330の位置は、本発明の第1位置である。
【0069】
ここで、捩じりコイルバネ341の付勢力と、慣性レバー330の重量(特に、当接部330Aの重量)とは、図14に示すように、設定値を超える慣性力F1が慣性レバー330に作用することにより、慣性レバー330が捩じりコイルバネ341の付勢力に抗しつつ、揺動体322に対して枢軸X31周りで第1位置から図14に示す位置まで揺動するように設定されている。図14に示す慣性レバー330の位置は、本発明の第2位置である。
【0070】
このような構成である実施例3のドアロック装置では、搭乗者が外側ドアハンドル8又は内側ドアハンドル7を操作すると、切替レバー13の上端が第1位置にある慣性レバー330の当接部330Aに当接して押し上げるので、その変位が慣性レバー揺動軸330S及び揺動体322を介してポール312に伝達され、ポール312がポール軸心X12周りにD2方向とは逆方向に揺動する。その結果、ポール312がフォーク11の揺動を開放し、フォーク11がアンラッチ状態に切り替わる。
【0071】
また、車両に対する衝突等により、図14に示すようにドア2や車両が車外から衝撃F0を受けることにより、慣性レバー330に対して設定値を超える慣性力F1が作用する場合、慣性レバー330は、捩じりコイルバネ341の付勢力に抗しつつ、枢軸X31周りで、第1位置から衝撃方向とは反対方向である第2位置まで揺動して、当接部330Aが切替レバー13の上端の真上に存在しなくなる。このため、切替レバー13が意に反して変位しても、第2位置にある慣性レバー330の当接部330Aが切替レバー13との当接を回避する「空振り状態」となる。
【0072】
こうして、実施例3のドアロック装置も、実施例1、2のドアロック装置1と同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
(実施例4)
図15〜図17に示すように、実施例4のドアロック装置は、実施例1のポール12、慣性レバー30及び捻りコイルバネ41の代わりに、ポール412、揺動体422、慣性レバー430及び捻りコイルバネ441を採用している。実施例4のドアロック装置のその他の構成は、実施例1のドアロック装置1と同様である。このため、実施例1のドアロック装置1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0074】
実施例4のドアロック装置において、ポール412は、ポール揺動軸12Sに支持されて、ポール軸心X12周りに揺動可能とされている。そして、図15に示すように、ポール412は、捻りコイルバネ12T(図16に示す。)により、ポール軸心X12周りにD2方向に揺動するように付勢されており、通常は、図15に示す姿勢を保持している。ポール412には、実施例1のポール12と同様のストッパ面12A及び摺動面12Cが形成されている。
【0075】
図15及び図16に示すように、ポール412には、ポール揺動軸12Sの下方から下向きに突出するように連結部412Rが形成されている。ポール揺動軸12Sには、捻りコイルバネ12Tにより前方に位置するように、揺動体422が挿通されている。揺動体422は板状体であり、その下部が後方に屈曲して連結部412Rに連結されている。これにより、揺動体422は、ポール軸心X12周りにポール412と同期揺動する。
【0076】
揺動体422には、ストッパ部422Qが形成されている。ストッパ部422Qは、ポール揺動軸12Sに対して車両方向内側に離れた箇所から細板状をなして前方に向けて突出している。
【0077】
揺動体422には、慣性レバー430と、付勢部材としての捩じりコイルバネ441(図16に示す。)とが設けられている。慣性レバー430は、揺動体422の前方に位置するようにポール揺動軸12Sに挿通されて、ポール軸心X12周りに揺動可能とされている。すなわち、慣性レバー430が揺動する軸心である枢軸X41は、ポール軸心X12と同軸とされている。図16に示すように、捩じりコイルバネ441は、揺動体422と慣性レバー430との間に位置するように、ポール揺動軸12Sに挿通されて、ポール軸心X12と同軸に配設されている。
【0078】
図15に示すように、慣性レバー430は、ポール軸心X12(枢軸X41)の径外方向に二股に延び、さらにその二股の各先端がブロック状に膨らんでいる。ポール揺動軸12Sの真下に位置するブロック状部分は質量部430Bとされている。また、ポール揺動軸12S及び質量部430Bに対して車両内側に位置するブロック状部分は当接部430Aとされている。切替レバー13の上端は、慣性レバー430の当接部430Aの真下に位置している。切替レバー13の上端と当接部430Aとの間には、充分な隙間が確保されている。
【0079】
図示は省略するが、捩じりコイルバネ441の一端は慣性レバー430に係止され、捩じりコイルバネ441の他端は揺動体422に係止されている。これにより、慣性レバー430は、ポール軸心X12(枢軸X41)周りにD2方向とは逆方向に揺動するように付勢されており、通常状態(図1に示す衝撃F0が作用しない状態)では、ストッパ部422Qに当て止まっている。図15に示す慣性レバー430の位置は、本発明の第1位置である。
【0080】
ここで、捩じりコイルバネ441の付勢力と、慣性レバー430の重量(特に、当接部430A及び質量部430Bの重量)とは、図17に示すように、設定値を超える慣性力F1が慣性レバー430に作用することにより、慣性レバー430が捩じりコイルバネ441の付勢力に抗しつつ、揺動体422に対してポール軸心X12(枢軸X41)周りで第1位置から図17に示す位置まで揺動するように設定されている。図17に示す慣性レバー430の位置は、本発明の第2位置である。
【0081】
このような構成である実施例4のドアロック装置では、搭乗者が外側ドアハンドル8又は内側ドアハンドル7を操作すると、切替レバー13の上端が第1位置にある慣性レバー430の当接部430Aに当接して押し上げるので、その変位がストッパ部422Q及び揺動体422を介してポール412に伝達され、ポール412がポール軸心X12周りにD2方向とは逆方向に揺動する。その結果、ポール412がフォーク11の揺動を開放し、フォーク11がアンラッチ状態に切り替わる。
【0082】
また、車両に対する衝突等により、図17に示すようにドア2や車両が車外から衝撃F0を受けることにより、慣性レバー430に対して設定値を超える慣性力F1が作用する場合、慣性レバー430は、捩じりコイルバネ441の付勢力に抗しつつ、ポール軸心X12(枢軸X41)周りで、第1位置から衝撃方向とは反対方向である第2位置まで揺動して、当接部430Aが切替レバー13の上端の真上に存在しなくなる。このため、切替レバー13が意に反して変位しても、第2位置にある慣性レバー430の当接部430Aが切替レバー13との当接を回避する「空振り状態」となる。
【0083】
こうして、実施例4のドアロック装置も、実施例1〜3のドアロック装置1と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
(実施例5)
図18及び図19に示すように、実施例5のドアロック装置は、実施例1のポール揺動軸12S、ポール12、慣性レバー30及び捻りコイルバネ41の代わりに、ポール揺動軸512S、ポール512、揺動体522、慣性レバー530及び捻りコイルバネ541を採用している。実施例5のドアロック装置のその他の構成は、実施例1のドアロック装置1と同様である。このため、実施例1のドアロック装置1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0085】
実施例5のドアロック装置において、ポール揺動軸512Sは、ベースプレート82及びバックプレート83により、ポール軸心X12周りに揺動可能に支持されている。ポール512は、ポール揺動軸512Sに固定されている。そして、図18に示すように、ポール512は、捻りコイルバネ12T(図19に示す。)により、ポール軸心X12周りにD2方向に揺動するように付勢されており、通常は、図18に示す姿勢を保持している。ポール512には、実施例1のポール12と同様のストッパ面12A及び摺動面12Cが形成されている。
【0086】
図19に示すように、ポール揺動軸512Sは、バックプレート83よりも前方に突出しており、その前端に揺動体522が固定されている。ポール揺動軸512S、ポール512及び揺動体522は、ポール軸心X12周りに同期揺動する。
【0087】
図18に示すように、揺動体522は、ポール揺動軸512S側から車両内側に向けて延びる慣性レバー支持部522Pを有する。慣性レバー支持部522Pには、慣性レバー揺動軸530Sが嵌入されている。慣性レバー揺動軸530Sは、前後方向(開口9に進退する方向に直交する方向)に延びる枢軸X51を軸心として、慣性レバー支持部522Pから前方に向けて突出している。慣性レバー支持部522Pの端部には、細板状をなして前方に向けて突出するストッパ部522Qが形成されている。ストッパ部522Qは、慣性レバー揺動軸530Sよりもポール揺動軸512Sから離れている。
【0088】
揺動体522には、慣性レバー530と、付勢部材としての捩じりコイルバネ541(図19に示す。)とが設けられている。図19に示すように、慣性レバー530は、慣性レバー揺動軸530Sに挿通されて、枢軸X51周りに揺動可能とされている。捩じりコイルバネ541は、慣性レバー530より前方に位置するように、慣性レバー揺動軸530Sに挿通されて、枢軸X51と同軸に配設されている。
【0089】
慣性レバー530は、枢軸X51の径外方向に延びてブロック状に膨らんでおり、そのブロック状部分が当接部530Aとされている。切替レバー13の上端は、慣性レバー530の当接部530Aの真下に位置している。切替レバー13の上端と当接部530Aとの間には、充分な隙間が確保されている。
【0090】
図示は省略するが、捩じりコイルバネ541の一端は慣性レバー530に係止され、捩じりコイルバネ541の他端は揺動体522に係止されている。これにより、慣性レバー530は、枢軸X51周りにD3方向に揺動するように付勢されており、通常状態(図1に示す衝撃F0が作用しない状態)では、ストッパ部522Qに当て止まっている。図18に示す慣性レバー530の位置は、本発明の第1位置である。
【0091】
ここで、捩じりコイルバネ541の付勢力と、慣性レバー530の重量(特に、当接部530Aの重量)とは、設定値を超える慣性力F1が慣性レバー530に作用することにより、慣性レバー530が捩じりコイルバネ541の付勢力に抗しつつ、揺動体522に対して枢軸X51周りで第1位置から図示しない第2位置まで揺動するように設定されている。図示は省略するいが、慣性レバー530は、第2位置では、切替レバー13との当接を回避する。
【0092】
このような構成である実施例5のドアロック装置も、実施例1〜4のドアロック装置1と同様の作用効果を奏することができる。
【0093】
以上において、本発明を実施例1〜5に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜5に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は車両のドアに利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
9…開口
2…ドア
99…ストライカ
91…進入口
80…ハウジング
11…フォーク
X12…ポール軸心
12、212、312、412、512…ポール
8…外側ドアハンドル
7…内側ドアハンドル
13…切替レバー
1…車両用ドアロック装置
322、422、522…ポールと同期揺動する揺動体
X1、X21、X31、X41、X51…枢軸
F1…設定値を超える慣性力
30、230、330、430、530…慣性レバー
41、241、341、441、541…付勢部材(捩じりコイルバネ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口を開閉するドアに設けられ、前記車体に固定されたストライカが進入する進入口をもつハウジングと、
前記ハウジングに揺動可能に設けられ、前記進入口内において前記ストライカを係止するラッチ状態、又は前記進入口内において前記ストライカの係止を解除するアンラッチ状態に切り替わるフォークと、
前記ハウジングにポール軸心周りに揺動可能に設けられ、前記フォークの揺動を固定又は開放可能なポールと、
前記ハウジングに設けられ、外側ドアハンドル又は内側ドアハンドルに連結され、前記外側ドアハンドル又は前記内側ドアハンドルの開操作によって変位して前記ポールに作用し、前記フォークを前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切り替える切替レバーとを備える車両用ドアロック装置であって、
前記ポール又は前記ポールと同期揺動する揺動体には、前記開口に進退する方向に直交する方向に延びる枢軸周りに揺動可能とされて、設定値を超える慣性力が作用することにより第1位置から第2位置まで揺動する慣性レバーと、前記慣性レバーを前記第1位置に保持する付勢力を有する付勢部材とが設けられ、
前記慣性レバーは、前記第1位置で前記切替レバーと当接し、前記第2位置で前記切替レバーとの当接を回避するように構成されていることを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記枢軸は前記ポール軸心から離れている請求項1記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記枢軸は前記ポール軸心と同軸である請求項1記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記枢軸と同軸に設けられた捩じりコイルバネである請求項2又は3記載の車両用ドアロック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2013−19229(P2013−19229A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155297(P2011−155297)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(591038587)株式会社アンセイ (48)
【Fターム(参考)】