説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】 本発明は、車両走行の安全性を考慮した案内経路を生成する車両用ナビゲーション装置の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、経路案内機能を有する車両用ナビゲーション装置10において、車両内の電子装置が発生する故障情報に基づいて、該故障情報に応じた適切な案内経路を探索する故障時経路生成機能42を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路案内機能を有する車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ナビゲーション装置において、通行したくない回避地をユーザが入力し、当該回避地を迂回するような案内経路を生成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、同様のナビゲーション装置において、回避地に対して回避度合い(ユーザが回避したいと思う度合い)をユーザの指示に従って設定し、ユーザの意図を反映した案内経路を生成する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、回避道路をユーザによる簡単な操作によって指定できるようにする技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−196473号公報
【特許文献2】特開2002−156238号公報
【特許文献3】特開2003−35548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術は、ユーザの意図や好みを案内経路に反映させることで、ナビゲーション装置の経路案内機能の利便性を高めるものである。しかしながら、上述の従来技術は、車両走行の安全性を考慮して案内経路の生成する機能を有しない点で、車両に搭載されるナビゲーション装置の経路案内機能として不十分な側面があった。
【0004】
そこで、本発明は、車両走行の安全性を考慮した案内経路を生成する車両用ナビゲーション装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、経路案内機能を有する車両用ナビゲーション装置において、
車両内の電子装置が発生する故障情報に基づいて、該故障情報に応じた適切な案内経路を探索する故障時経路生成機能を有することを特徴とする、車両用ナビゲーション装置が提供される。
【0006】
本局面において、前記故障時経路生成機能は、ランプ類の故障を表わす故障情報の場合には、トンネルを回避した案内経路を探索してよい。また、前記故障時経路生成機能は、ブレーキ系の故障を表わす故障情報の場合には、低μと予想される道路を回避した案内経路を探索してよい。また、前記故障時経路生成機能は、前記故障情報に基づいて、該故障に対する措置を行う施設を経由する案内経路若しくは該施設を目的地とする案内経路を探索してよい。また、前記故障時経路生成機能は、所定の故障情報の場合には、緊急停止位置を探索してよい。
【0007】
また、上述の本局面による車両用ナビゲーション装置は、利便性の観点から追加的に、特定の領域を回避した案内経路を探索する回避経路生成機能を有してよく、該回避経路生成機能は、風向き情報を考慮して、生成した案内経路を補正する機能を有してよい。また、同様に、車両用ナビゲーション装置は、特定の施設を回避した案内経路を探索する回避経路生成機能を有してよく、該回避経路生成機能は、該施設とその周辺の建物との関係及び/又は該施設と道路との高低差関係を考慮して、該施設が走行中に見えないような案内経路を探索するものであってよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両走行の安全性を考慮した経路案内を生成する車両用ナビゲーション装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0010】
図1は、本発明の一実施例による車両用ナビゲーション装置10の構成図である。車両用ナビゲーション装置10は、電子制御ユニット20(以下、「ナビゲーションECU20」と称する)を中心に構成されている。ナビゲーションECU20は、マイクロコンピューターで構成され、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えている。
【0011】
ナビゲーションECU20には、DVD、CD−ROM等の記録媒体上に地図データを保有する地図データベース22や、地図表示や経路案内表示を映像により出力する液晶ディスプレイ等の表示装置24、ユーザインターフェースとなるタッチパネル等の操作入力部26等が接続されている。地図データベース22には、所与の地図データが格納されている。地図データには、交差点・高速道路の合流点/分岐点に各々対応する各ノードの座標情報、隣接するノードを接続するリンク情報、各リンクに対応する道路の幅員情報、各リンクに対応する国道・県道・高速道路等の道路種別、各リンクの通行規制情報及び各リンク間の通行規制情報等が含まれている。
【0012】
ナビゲーションECU20には、自車位置検出手段28を備えている。自車位置検出手段28は、GPS(Global Positioning System)受信機、ビーコン受信機及びFM多重受信機や、車速センサやジャイロセンサ等の各種センサを含む。自車位置検出手段28は、GPS受信機によりGPSアンテナを介してGPS衛星が出力するGPS信号を受信する。自車位置検出手段28は、GPS信号を所定形式の信号に変換してナビゲーションECU20に供給する。ナビゲーションECU20は、GPS信号や各種センサから供給された信号に基づいて、現在の車両位置及び車両方位を演算する。この際、ナビゲーションECU20は、周知のマップマッチング技術を用いて、演算した現在の車両位置に対応する表示装置24上の地図表示の道路位置に、現在位置マークを重畳表示させ、また、現在の車両位置の変化に応じて現在位置マークの位置を更新させていく。
【0013】
ナビゲーションECU20には、また、ハードディスクのような書き込み可能な記録媒体30が接続される。記録媒体30には、地図データベース22内に存在しない有用な補助情報(例えば、道路の舗装状態や路面μに関する情報)が随時格納されていく。
【0014】
ナビゲーションECU20には、バスを介して車両内の複数の電子部品70が接続される。電子部品70は、車両に搭載される通常的な電子部品の他、メーターECU72のような各種の電子制御装置(ECU)及びセンサを含む。ナビゲーションECU20には、電子部品70の各種ECUからダイアグコードや、メーターECU72から警告発生状態を表わすウォーニング信号(以下、ダイアグコード及びウォーニング信号を総称して「故障情報」という)が供給される。尚、メーターECU72は、各電子部品70(典型的には、ECU)から送られてくる警告点灯/点滅要求信号に応答して、警告ランプ(典型的には、インパネ部のインジケータランプ)を点灯/点滅させる。本実施例では、便宜上、ナビゲーションECU20は、各種ECUからのダイアグコードや、メーターECU72からのウォーニング信号を介して警告発生状態を検知するが、各電子部品70からの信号に基づいてダイレクトに個々の電子部品70の故障を検知する構成であってもよい。
【0015】
図2は、ナビゲーションECU20の機能ブロック図である。ナビゲーションECU20は、現在の車両位置からユーザが設定する目的地までの案内経路を生成する通常時経路生成部40と、車両内の電子部品70が発生する故障情報に基づいて、該故障情報に応じた適切な案内経路を探索する故障時経路生成部42とを有する。
【0016】
故障時経路生成部42は、電子部品70から故障情報が供給されると、故障情報に表わす故障の特性を判断し、適切な案内経路を探索する。この探索の結果、適切な案内経路が探索・生成されると、当該案内経路が表示装置24上に表示される。この際、既に通常時経路生成部40により生成された案内経路が表示されているときは、故障時経路生成部42により生成される案内経路が割り込み表示(重畳表示)されてよく、若しくは、通常時経路生成部40による案内経路に代えて表示されてよい。何れの場合においても、故障時経路生成部42による案内経路は、好ましくは、故障事象に対応して生成された案内経路であることをユーザが分かるような態様(例えば、注記や色等による強調)で表示される。
【0017】
例えば、故障時経路生成部42は、ランプ類の故障を表わす故障情報を受けた場合、トンネルを回避した案内経路を探索・生成する。これにより、ランプが点灯しない状態でトンネルを走行することが防止され、安全性の高い経路案内機能を実現できる。尚、本例において、トンネルの有無は、地図データベース22内の地図データ及び/又は記録媒体30内の補助情報に基づいて判断されてよい。記録媒体30内の補助情報(この場合、トンネルの有無に関する情報)は、走行時に撮像される周辺風景(CCDカメラにより撮像)の画像処理結果に基づいて導出されたものであってよく、若しくは、所定の情報提供施設から取得されたものであってよい。
【0018】
その他の例として、故障時経路生成部42は、ブレーキ系の故障を表わす故障情報の場合には、低μと予想される道路を回避した案内経路を探索・生成してよい。例えば、ABSの異常を表わす故障情報の場合、雪道を走行しないように標高の高い地域を回避した案内経路を生成し、若しくは、雨天の走行時には高速道路を回避した案内経路を生成してよい。これにより、ブレーキ能力が低下した状態で低μ路を走行することが防止され、安全性の高い経路案内機能を実現できる。尚、ここでいうブレーキ系の故障とは、車両の走行に支障のない軽度のレベルの故障をいう。車両の走行に支障のあるレベルの故障の場合には、速やかに車両を停止させる指示が運転者に出される。
【0019】
尚、路面の摩擦係数を推定する手法は、如何なる適切な方法であってよく、例えば特開2001−133390号に開示される技術を利用するものであってよい。或いは、摩擦係数は、特開平11−78843号公報に記載されているように、車輪速センサの出力信号に基づいて得られる車輪速度の所定の振動成分に基づいて推定されてよい。また、摩擦係数は、特開平11−91539号公報に記載されているように、制動力がステップ的に変化したときの車輪速度の応答成分の減衰特性に基づいて求めてもよく、超音波又はミリ波等を路面前方に照射しその後方散乱波に基づいて推定してもよい。このようにして得られる推定結果は、記録媒体30内に補助情報として記憶され、上述のような低μ路を回避する案内経路の探索・生成に利用される。
【0020】
尚、本例において、故障時経路生成部42は、路面の摩擦係数を推定する際、天気・気象(例えば降雨量)に関する情報を考慮してもよい。これらの情報は、所定の情報提供施設から取得されたものであってよい。
【0021】
また、本例において、故障時経路生成部42は、ブレーキ系の故障を表わす故障情報の場合に、下り坂の少ない案内経路を探索・生成してよい。尚、道路勾配に関する情報は、所定の情報提供施設から取得された情報に基づくものであってよく、若しくは、地図データベース22内の地図データ及び/又は記録媒体30内の補助情報に基づいて判断されてよい。また、故障時経路生成部42は、ユーザのブレーキ利用頻度と道路リンクとの関係を学習しておき、該学習結果に基づいてブレーキ利用頻度の高い道路を回避するような案内経路を探索・生成してもよい。
【0022】
また、その他の例として、故障時経路生成部42は、故障情報に基づいて、該故障に対する措置を行う施設を経由する案内経路若しくは該施設を目的地とする案内経路を探索してよい。例えば、ブレーキ系の故障を表わす故障情報の場合には、故障時経路生成部42は、最寄りの修理工場やカーディーラを経由する案内経路若しくは該施設を目的地とする案内経路を探索してよい。また、燃料の不足を表わす故障(警告)情報やタイヤの空気圧の低下を表わす故障(警告)情報の場合には、故障時経路生成部42は、最寄りのガススタンドを経由する案内経路若しくは該施設を目的地とする案内経路を探索してよい。また、ウォッシャー液の不足を表わす故障(警告)情報の場合、故障時経路生成部42は、最寄りのガススタンドを経由する案内経路若しくは該施設を目的地とする案内経路を探索してよく、若しくは、雨天の走行時や雨上がり後の走行時には未塗装道路を回避した案内経路を探索してよい。
【0023】
また、その他の例として、故障時経路生成部42は、所定の故障情報の場合には、緊急停止位置を探索してよい。例えば、車両の走行を直ちに止めるべき重度の故障情報の場合には、故障時経路生成部42は、例えば安全な路側帯や緊急避難エリアのような退避場所を探索し、当該退避場所をユーザに指示・通知してよい。
【0024】
次に、本実施例のナビゲーションECU20が利便性向上の観点から追加的に有してよい回避経路生成部44と経路補正部46(図2参照)について説明する。回避経路生成部44は、例えば操作入力部26からのユーザの入力や通常的な走行時の学習結果に基づいて、ユーザの運転技量、傾向や好みを反映した案内経路を生成する。例えば、回避経路生成部44は、ユーザの運転技量に合わせて、幅が狭い道路、電柱が出ている道路、歩行者の多い道路を回避した案内経路を探索・生成し、若しくは、交通量が多く流れの速い交差点での右折を回避した案内経路を探索・生成してよい。また、回避経路生成部44は、若葉マーク、紅葉マークの付いた車両や教習所の車両、大型トラック等の交通の多い道路を回避した案内経路を探索・生成してよい。
【0025】
経路補正部46は、回避経路生成部44により生成された案内経路を、種々のファクターに基づいて補正する。例えば、回避経路生成部44が、ユーザの意思や好みに応じて工場周辺領域を回避した案内経路を探索・生成した場合、経路補正部46は、風向きを考慮して工場の風下側の道路を避ける補正を行ってよい(即ち、工場から出る匂いが届かないような案内経路を探索・生成してよい)。尚、風向き等の気象情報は、例えば気象情報センターのような所定の情報提供施設から取得されてよい。
【0026】
また、回避経路生成部44が、例えば子供の教育を重視するユーザの意思や好みに応じて娯楽施設等を回避した案内経路を探索・生成した場合、経路補正部46は、周辺建物の状況や道路と施設の高低差に基づいて、当該施設が走行時に見えてしまう道路を避ける補正を行ってよい。この場合、回避施設とその周辺の建物との関係及び/又は回避施設と道路との高低差関係が考慮されるので、例えば回避施設が道路よりも高い高度にある場合、回避施設が走行中に視界に入ってしまうとして当該道路を回避した案内経路が探索・生成される。また、例えば高低差が無くても回避施設の道路側を覆うように他の建物が林立している場合、回避施設が走行中に視界に入る可能性が低いとして当該道路の回避を行わない案内経路が探索・生成される。
【0027】
同様に、経路補正部46は、コンバーチブル車両においてオープンカードライブモードが設定されている若しくは屋根が空いている状態に基づいて、トンネルや工場付近、信号、トラックの多い場所を避ける補正を行ってよい。
【0028】
また、経路補正部46は、時間帯や天気、気温等に応じて、回避経路生成部44により生成された案内経路を補正してよい。これは、時間帯によっては交通量が少なく走行しやすくなる道路や、通学中の歩行者がいなくなる道路等があり、また、天気によっては道路の凍結等が生じて、ユーザの好み等の対応したりしなかったりする場合があるからである。
【0029】
尚、本実施例において、上述の経路補正部46の機能は回避経路生成部44と同時に実現されてよい。即ち、回避経路生成部44は、上述した補正の元になるファクターを初めから考慮して適切な案内経路を決定してもよい。但し、例えば風向きのように事後的に変化するファクターがある場合には上述の経路補正部46の機能が必要とされる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0031】
例えば、上述の実施例では、故障時経路生成部42は、メーターECU72に供給されるウォーニング信号や各種ECUから直接的に供給されるダイアグコードに応答して、故障情報に応じた適切な案内経路を探索・生成するものであるが、メーターECU72に供給されない種のウォーニング信号やフェイル信号等に応答して、同様の処理を実行するものであってよい。また、故障時経路生成部42は、故障情報と経路探索方法(例えば、回避道路)との対応関係を定義したマップを用いて、故障情報に応じた適切な案内経路を導出するものであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例による車両用ナビゲーション装置10の構成図である。
【図2】ナビゲーションECU20の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
10 車両用ナビゲーション装置
20 ナビゲーションECU
22 地図データベース
24 表示装置
26 操作入力部
28 自車位置検出手段
30 書き込み可能な記録媒体
40 通常時経路生成部
42 故障時経路生成部
44 回避経路生成部
46 経路補正部
70 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路案内機能を有する車両用ナビゲーション装置において、
車両内の電子装置が発生する故障情報に基づいて、該故障情報に応じた適切な案内経路を探索する故障時経路生成機能を有することを特徴とする、車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記故障時経路生成機能は、ランプ類の故障を表わす故障情報の場合には、トンネルを回避した案内経路を探索する、請求項1記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記故障時経路生成機能は、ブレーキ系の故障を表わす故障情報の場合には、低μと予想される道路を回避した案内経路を探索する、請求項1記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記故障時経路生成機能は、前記故障情報に基づいて、該故障に対する措置を行う施設を経由する案内経路若しくは該施設を目的地とする案内経路を探索する、請求項1記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記故障時経路生成機能は、所定の故障情報の場合には、緊急停止位置を探索する、請求項1記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項6】
特定の領域を回避した案内経路を探索する回避経路生成機能を有し、該回避経路生成機能は、風向き情報を考慮して、生成した案内経路を補正する機能を有する、請求項1記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項7】
特定の施設を回避した案内経路を探索する回避経路生成機能を有し、該回避経路生成機能は、該施設とその周辺の建物との関係及び/又は該施設と道路との高低差関係を考慮して、該施設が走行中に見えないような案内経路を探索する、請求項1記載の車両用ナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−29911(P2006−29911A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207293(P2004−207293)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】