説明

車両用バックドアの開扉スイッチ装置

【課題】 美観を損なわず、操作部の防水性及び操作性に優れた車両用バックドアの開扉スイッチ装置を提供する。
【解決手段】 ドア開扉機構によって開扉される車両用バックドアの一部に検知電極が装着され、検知電極への人体の一部の接近による前記検知電極と接地との間の容量変化を検出してドア開閉機構を作動させる車両用バックドアの開扉スイッチ装置である。この装置は、表面に金属層12が形成されて自動車用バックドアのガーニッシュを構成するプラスチックプレート5と、このプラスチックプレート5の裏面側に装着されたFPC15とを備え、プラスチッププレート5の金属層12を検知電極として接続部20を介してFPC15と接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両用バックドアに装備される開扉スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の車両用バックドアの開扉スイッチ装置として、自動車に応用したものが特許文献1に開示されている。ここに開示された装置は、自動車のバックドアの開閉制御装置であり、バックドアを自動開閉する機構を構成する電動機及びソレノイド弁を、手動又は遠隔操作でオン、オフ制御することにより、バックドアを自動又は手動で開閉できるようにし、これにより車椅子や松葉杖を使用している等の筋力の弱い操作者であっても、バックドアの開閉を容易にしようとするものである。
【特許文献1】特開2000−158947号公報、段落0008、0009、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の自動車のバックドアの開閉制御装置では、自動開閉機構をオン、オフするためのスイッチについての詳細が示されていないが、一般的には、電気的接点を備えたスイッチが使用される。このようなスイッチは、自動車の外観に表れると美観を損ね、また、防水性も必要であることから、ドアのノブの内側等に埋め込まれることになる。しかし、そのような位置にスイッチがあると、両手が荷物でふさがっている場合や身体不自由者にとって操作がし難いという欠点がある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、美観を損なわず、操作部の防水性及び操作性に優れた車両用バックドアの開扉スイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両用バックドアの開扉スイッチ装置は、ドア開扉機構によって開扉される車両用バックドアの一部に検知電極が装着され、前記検知電極への人体の一部の接近による前記検知電極と接地との間の容量変化を検出して前記ドア開閉機構を作動させる車両用バックドアの開扉スイッチ装置であって、表面に金属層が形成されて車両用バックドアのガーニッシュを構成するプラスチックプレートと、このプラスチックプレートの裏面側に装着されたフレキシブルプリント基板とを備え、前記プラスチッププレートの金属層を前記検知電極として前記フレキシブルプリント基板と接続したことを特徴とする。
【0006】
本発明の一実施形態においては、前記フレキシブルプリント基板には、前記検知電極の位置を表示するための光源が実装され、前記プラスチックプレートの少なくとも一部に前記光源からの光を透過させる窓が形成されている。
【0007】
この場合、前記光源は、ライセンスプレートを照明するためのラインセンスランプを併用するものであっても良い。
【0008】
また、他の実施形態においては、前記検知電極に人体の一部が接近したときに前記光源の点灯状態を変化させ、前記検知電極に人体が接触したときに前記ドア開扉機構を作動させる制御回路を更に備える。
【0009】
この場合、所定の送信機から送信された無線信号を受信する受信手段を備え、この受信手段で受信された無線信号からオーナー認識のための所定の情報信号が検出された場合にのみ制御回路が作動するようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両用バックドアのガーニッシュを構成するプラスチックプレートの表面に形成された金属層を検知電極としてフレキシブルプリント基板と接続したので、全体の美観を損なわずに広い検知面積でスイッチを形成することができ、操作部の防水性及び操作性に優れた車両用バックドアの開扉スイッチ装置を提供することができる。
【0011】
検知電極の位置を表示するための光源を実装するようにすれば、暗い場所でもスイッチの位置が容易に分かり、操作性が更に向上する。光源をラインセンスランプを併用するものとすれば、部品点数の増加も無い。
【0012】
検知電極に人体の一部が接近したときに光源の点灯状態を変化させ、検知電極に人体が接触したときにドア開扉機構を作動させるようにすると、スイッチの位置の確認を比較的広い範囲で行うことができるので、更に操作性が向上する。
【0013】
また、この操作を、無線信号に含まれるオーナー認識のための所定の情報信号が検出された場合にのみ許可することにより、セキュリティー上の問題もクリアできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自動車用バックドアの開扉スイッチ装置を説明するための図である。
【0016】
自動車1のバックドア2の後端部の中央には、ライセンスプレート3が取り付けられるライセンスプレート取付部4が設けられている。このライセンスプレート取付部4には、上部に庇状に張り出した横長に延びる外装部品としてのガーニッシュを構成するプラスチックプレート5が配置されている。このプラスチックプレート5は、後述する開扉スイッチ装置6を構成している。
【0017】
図2は開扉スイッチ装置6の拡大正面図、図3は、図2におけるA−A′断面を示している。
【0018】
プラスチックプレート5は、断面がL字状のプラスチックベース材11と、その表面に、メッキ、蒸着等により形成された、装飾と検知電極とを兼ねる金属層12と、プラスチックベース材11の中央正面に嵌め込まれた透明樹脂からなる検知電極の位置を表示するための位置表示窓13と、プラスチックベース材11の下面左右に嵌め込まれた透明樹脂からなるライセンスプレート照明用のライセンス照明窓14とを有する。プラスチックプレート5の裏面側には、プラスチックプレート5に沿ってフレキシブルプリント基板(以下、「FPC」と呼ぶ。)15が配置されている。FPC15には、位置表示窓13から正面に向かって光を照射する位置に検知電極の位置表示用の光源となるLED16が実装され、ライセンス照明窓14から下方に向かって光を照射する位置にライセンスランプとなるLED17が実装され、その他の位置には開扉スイッチ装置の種々の機能を実現するための電子部品18が実装されている。FPC15の一つの端部は、外部回路との接続のためのコネクタ19と接続され、FPC15の他の端部は、接続部20を介して金属層12と接続されている。FPC15及びこれに実装された電子部品は、全体が防水ケース21によって覆われている。
【0019】
接続部20は、例えば図4に示すように構成されている。すなわち、プラスチックベース材11には、ナット22が、その一方の端面をプラスチックベース材11の一方の面に臨むようにインサート成形され、プラスチックベース材11のナット22が臨む側の面に金属メッキ等で金属層12を形成することにより金属層12とナット22との導通を図る。そして、FPC15の図示しない導電パターンと接するように、ボルト23をナット22に締結し、金属層12とFPC15との導通を図ると共に、FPC15の端部とプラスチックプレート5とを固定する。
【0020】
この開扉スイッチ装置6は、コネクタ19が設けられた防水ケース21の基端側から自動車のボディの取付孔に挿入され、シール部材を介して自動車のボディに液密に取り付けられる。
【0021】
図5は、本実施形態のバックドアの自動開扉装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0022】
静電容量検知回路31は、金属層12からなる検知電極30と接地との間の静電容量Cxに応じた検知電圧を出力する。この検知回路31は、例えば発振回路を内蔵し、検知電極30によって生成される静電容量Cxに応じて発振周波数又はデューティー比が変化する信号を生成するものである。この検知回路31から出力される検知電圧は、コンパレータ32の一方の入力端に入力されている。コンパレータ32の他方の入力端には、判定電圧生成回路33で生成された判定電圧が与えられている。コンパレータ32は、検知電圧が所定の第1及び第2の判定電圧を超えたときに第1及び第2の検知信号をそれぞれ出力する。この第1及び第2の検知信号は、人体の接近、人体の接触といった段階的に出力される検知信号であり、スイッチ制御回路34に入力されている。
【0023】
一方、この実施形態では、携帯型の送信機を内蔵したスマートキー35からの電波を併用してバックドア2の開扉制御を行う。スマートキー35は、識別番号(ID)情報を含む無線信号を所定の時間間隔で送出する。一方、車体側に設けられたスマートキー受信回路36は、上述したID情報を含む無線信号を受信して、内部に記憶されたID情報との照合をし、運転者の個体認証を行う。認証完了の場合には、認証完了信号がスイッチ制御回路34に与えられる他、図示しないロック機構を解除する。また、認証完了信号は、光源駆動回路38にも供給され、光駆動回路38は、認証完了を条件として、検知電極30への人体の接近、人体の接触等を異なる照明パターンで表示するようにLED16を点灯制御する。
【0024】
スイッチ制御回路34は、認証完了信号が入力された状態でコンパレータ32からの第1の検知信号が入力されると、光源駆動回路38を介してLED16を点灯させる。これにより、位置表示窓13を介して検知電極30の位置が表示される。また、スイッチ制御回路34は、認証完了信号が入力された状態でコンパレータ32からの第2の検知信号が入力されると、ドアオープン信号をオン状態としてモータ駆動回路37に出力する。モータ駆動回路37は、ドアオープン信号がオン状態となったらバックドア2の開閉駆動用のモータ38の駆動を開始する。これにより、バックドア2が開扉動作に入る。バックドア2が完全開扉状態となったら、モータ駆動回路37がこれを検出し、モータ駆動信号を立ち下げる。これにより、スイッチ制御回路34と光源駆動回路38はオフ状態となる。
【0025】
図6は、本実施形態によるバックドア2の開扉例を示す図である。
【0026】
まず図6(a)に示すように、ポケットにスマートキー35を収容した運転者41が自動車1に近づくと、スマート受信回路36がこれを検出し、認証完了信号を出力する。この状態で人体がプラスチックプレート5に近づけば、コンパレータ32から第1の検知信号が出力されるので、光源駆動回路38は、LED16を点灯させる。このときの点灯パターンを点滅パターンとしたり、発光色を目立つ色とすれば、スイッチ位置はより明確になる。これにより、運転者41は、バックドアオープン用のスイッチ(検知電極30)がどの辺にあるのかを視認することができる。
【0027】
次に、図6(b)に示すように、運転者41がLED15aで照らされた位置を人体の一部(例えば手の甲等)でタッチすると、光源駆動回路38は、LED16を例えばそれまでより高輝度又はそれまでとは異なる発光色にて点灯させる。これにより、運転者41は、スイッチがオンになったことを視認することができる。これと同時に、スイッチ制御回路34は、モータ駆動回路37をオン状態にする。これにより、バックドア2が自動開扉され、図6(c)に示すように、完全開扉状態とすることができる。
【0028】
本実施形態の自動開扉装置によれば、図6に示すように、運転者41が荷物42を抱えているときでも、おおよその位置に体の一部、例えば手の甲等を軽く押しつけるだけで、バックドア2を開扉させることができる。そして、プラスチックプレート5の金属層12が検知電極30を兼用しているので、全体の美観を損なわずに、広い検知面積でスイッチを形成することができる。また、開扉スイッチ装置6は、防水ケース21によってモジュール化されているので、操作部の防水性を向上させることができる。また、スイッチの位置をLED16の点灯によって表示することにより、どの辺を接触すれば良いかが直ちに分かり、操作性の向上を図ることができる。
【0029】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る自動車バックドアの開扉スイッチ装置7の正面図である。
【0030】
先の実施形態では、位置表示用の光源を独立して設けたが、この実施形態では、位置表示用の光源を、ライセンスランプ用のLED17と共用している。
【0031】
この実施形態では、人体がプラスチックプレート8に近接すると、ライセンスランプ用のLED17が点灯する。また、例えば、夜間、既にLED17が点灯しているような状況では、LED17を点滅させるか、高輝度状態にするか、発光色を変える等により、スイッチ位置を表示する。人体の一部がライセンスランプ近傍のプラスチックプレート8に接触すると、上述と同様の開扉動作が開始される。
【0032】
この実施形態によれば、位置表示用窓13及びLED16が不要であるため、コスト低減を図ることができると共に、自動車の外観を全く損ねることがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る開扉スイッチ装置を装着した自動車の背面図である。
【図2】同開扉スイッチ装置の正面図である。
【図3】図2におけるA−A′断面図である。
【図4】図3の接続部を拡大して示す拡大断面図である。
【図5】同開扉スイッチ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】同開扉スイッチ装置を利用した開扉操作を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る開扉スイッチ装置の正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…自動車、2…バックドア、3…ライセンスプレート、4…ライセンスプレート取付部、5,8…プラスチックプレート、6,7…開扉スイッチ装置、12…金属層、13…位置表示用窓,14…ライセンス照明窓、15…FPC、16,17…LED、19…コネクタ、20…接続部、21…防水ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開扉機構によって開扉される車両用バックドアの一部に検知電極が装着され、前記検知電極への人体の一部の接近による前記検知電極と接地との間の容量変化を検出して前記ドア開閉機構を作動させる車両用バックドアの開扉スイッチ装置であって、
表面に金属層が形成されて車両用バックドアのガーニッシュを構成するプラスチックプレートと、
このプラスチックプレートの裏面側に装着されたフレキシブルプリント基板とを備え、
前記プラスチッププレートの金属層を前記検知電極として前記フレキシブルプリント基板と接続した
ことを特徴とする車両用バックドアの開扉スイッチ装置。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント基板には、前記検知電極の位置を表示するための光源が実装され、
前記プラスチックプレートの少なくとも一部に前記光源からの光を透過させる窓が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両用バックドアの開扉スイッチ装置。
【請求項3】
前記光源は、ライセンスプレートを照明するためのラインセンスランプを併用するものであることを特徴とする請求項2記載の車両用バックドアの開扉スイッチ装置。
【請求項4】
前記検知電極に人体の一部が接近したときに前記光源の点灯状態を変化させ、前記検知電極に人体が接触したときに前記ドア開扉機構を作動させる制御回路を更に備えたことを特徴とする請求項2又は3記載の車両用バックドアの開扉スイッチ装置。
【請求項5】
所定の送信機から送信された無線信号を受信する受信手段を備え、
前記受信手段で受信された無線信号からオーナー認識のための所定の情報信号が検出された場合にのみ前記制御回路が作動する
ことを特徴とする請求項4記載の車両用バックドアの開扉スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−182284(P2006−182284A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380404(P2004−380404)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】