説明

車両用バックドアモジュールの取付方法および取付構造

【課題】自動車のバックドアに取り付けるバックドアモジュールを作業員が上向きに持ち上げる作業をなくし、作業員への肉体的な負担を軽減して作業効率を向上させる。
【解決手段】車両のバックドア5に配索されるバックドアワイヤハーネスW/Hと、該バックドアワイヤハーネスW/Hに接続されると共にバックドア5に取り付けられる電気部品と、該電気部品のうち一部の電気部品がボルト締め固定される金属製ブラケット20、21とが予め組みつけられた車両用バックドアモジュール10を、閉鎖したバックドア5の窓枠部70で囲まれた開口71を通して室外側から室内へ搬入し、バックドア5の室内側のインナーパネル60に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バックドアモジュールの取付方法および取付構造に関し、詳しくは、車両のバックドアに配索されるバックドアワイヤハーネスと、バックドアに取り付けられる電気部品とが予め組み付けられたバックドアモジュールを車両の組立ラインにおいてバックドアに一括で容易に取り付けられる方法および構造である。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のバックドアには、バックドアワイヤハーネスを配索すると共に、複数の電気部品を取り付けており、これら電気部品にバックドアワイヤハーネスをコネクタ接続している。これらバックドアワイヤハーネスと電気部品を車両の組立ラインにおいてそれぞれ個別に取り付けると、車両の組立ラインでの工数が非常に多くなる。この車両の組立ラインでのバックドアへの組付作業はバックドアを上方へ開き、作業員が上方を向いた状態で行わなければならず、作業が行いにくいため、車両の組立ラインでの工数が多くなると作業効率が非常に悪くなる問題がある。
【0003】
そこで、車両の組立ラインにおいて、ワイヤハーネスと電気部品をそれぞれ個別にバックドアに取り付けるのではなく、予めワイヤハーネスと所要の電気部品を組み付けてバックドアモジュールを作製し、車両の組立ラインでこのバックドアモジュールをバックドアに組み付けて、車両の組立ラインにおける工数を低減する提案がなされている。
【0004】
例えば、特開2002−225565号公報(特許文献1)では、図10に示すように、樹脂製のパネル1にワイパーモータ2等の電気部品及び電線もしくは銅箔からなる配線部材3を取り付けてバックドアモジュール4としてモジュール化し、該バックドアモジュール4をバックドア5に取り付けている。
このように、パネル1に電気部品と配線部材を予め組み付けてモジュール化することにより、車両の組立ラインでは、バックドア5にバックドアモジュール4を取り付けるだけであるため、車両の組立ラインでの組付工数を低減している。
【0005】
しかしながら、前記バックドアモジュール4を車両の組立ラインにおいてバックドアに取り付ける際には、図11に示すように、バックドア5を上方へと開放した状態で、作業員が重量化したバックドアモジュール4を上向きに持ち上げてバックドア5に取り付けなければならない。よって、バックドアモジュール4の取付作業は肉体的な負担が大きいため、長時間継続して作業を行うことができず作業効率があまり向上しない問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−225565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、自動車のバックドアに取り付けるバックドアモジュールを作業員が上向きに持ち上げる作業をなくすことにより、作業員への肉体的な負担を軽減して作業効率を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、車両のバックドアに配索されるバックドアワイヤハーネスと、該バックドアワイヤハーネスに接続されると共にバックドアに取り付けられる電気部品とが予め組みつけられたバックドアモジュールを設け、
前記バックドアモジュールを、車体に対して閉位置としたバックドアの窓枠部で囲まれた開口を通して室外側から室内に搬入し、バックドアの室内側のフレームに取り付けることを特徴とする車両用バックドアモジュールの取付方法を提供している。
【0009】
前記方法によれば、車両用バックドアモジュールを閉鎖したバックドアの窓枠部で囲まれた開口を通して室外側から室内へ搬入してバックドアに取り付けているため、作業員はバックドアモジュールを上向きに持ち上げる必要がなく、窓枠部を設けている腰辺りまで持ち上げるだけでよく肉体的な負担を軽減することができる。これにより、バックドアモジュールの取付作業を長時間継続して行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0010】
車両の室内に入れたバックドアモジュールはバックドアの室内面側に一旦仮固定した後、前記バックドアを上方へと開き作動して、上方位置のバックドアの下面側となる室内面側にバックドアモジュールをボルト締め固定していることが好ましい。
バックドアモジュールの仮固定方法としては、例えば、下記の態様がある。
(1)車両の室内に搬入したバックドアモジュールの一部にバックドアの室内側に設けた仮固定用のフック部に引っ掛けて仮固定する。
(2)バックドアモジュールに設けた仮固定用のクランプをバックドアのフレームに設けた貫通孔に挿入して仮固定する。
(3)バックドアモジュールに設けた仮固定用の磁石をバックドアの金属製のフレームに磁着して仮固定する。
【0011】
即ち、バックドアモジュールの取付作業の全工程をバックドアを閉じた状態で行うのではなく、バックドアモジュールをバックドアの室内面側に配置して仮固定する簡単な作業はバックドアを閉じた状態で行い、仮固定した後に、バックドアを上方へと開き作動して、バックドアモジュールをバックドアにボルト締めで本固定している。
このように、バックドアモジュールをバックドアに本固定するボルト締め作業はバックドアを閉じた状態で室外側から行うと、ボルト締め位置を目視しづらく作業が行い難いが、バックドアを上方へと開けて状態とすると、作業員はバックドアの下面側となる室内面側に立ってボルト締め位置を目視しながらボルト締め作業を容易にすることができる。このボルト締め作業は上を向きながらの作業となるが、バックドアモジュールはバックドアに仮固定されているため、バックドアモジュールを作業員が保持して支える必要がなく、肉体的な負担もないので長時間作業を継続することができる。
【0012】
バックドアモジュールがバックドアに仮固定した状態でバックドアを開けるため、バックドアが開いてもバックドアモジュールが落下しないようにしておく必要がある。よって、前記(1)のように、バックドアモジュールをバックドアに設けたフック部に引っ掛けて仮固定する場合には、バックドアモジュールをフック部によって弾性的に挟持していることが好ましい。
また、前記(2)のように、クランプ止めによってバックドアモジュールをバックドアに仮固定する場合には、バックドアワイヤハーネスを外装するプロテクタに一体的にクランプを設けたり、バックドアワイヤハーネスにバンドクランプを取り付けて設けていることが好ましい。
さらに、前記仮固定と併用して、バックドアのフレームに段差部を設け、該段差部にバックドアモジュールを載置する構成とすれば、より安定した状態でバックドアモジュールをバックドアに仮固定しておくことができる。
【0013】
前記バックドアモジュールは、ワイパーモータ、バックドアロックアッシーを前記電気部品として含み、前記ワイパーモータおよびバックドアロックアッシーは金属製のブラケットにボルトで締結されており、
前記バックドアモジュールのブラケットを前記バックドアのフレームに、前記ボルトを用いて締結していることが好ましい。
【0014】
前記構成によれば、電気部品をブラケットに締結しているボルトを該ブラケットをバックドアのフレームに締結するボルトとして兼用すると、電気部品はバックドアモジュール作製の際に予めブラケットにボルト締めにより締結されているため、バックドアモジュールをバックドアに組み付ける際には、該ボルトをフレームに穿設されたボルト孔に通してボルト締めするだけで、バックドアモジュールをバックドアに容易に組み付けることができる。
また、電気部品をブラケットに締結しているボルトを、該ブラケットをバックドアの金属フレームに締結するボルトとして共用することにより、使用するボルトの個数を低減することができる。
【0015】
前記ブラケットを金属製とすれば、ワイパーモータ及びバックドアロックアッシーはバックドアに取り付ける電気部品の中でも重量が大きいが、これら重量の大きい電気部品を金属製ブラケットにボルト締め固定することにより、重量の大きな電気部品も安定した状態で取り付けてモジュール化することができる。
【0016】
また、本発明は、前記方法によって前記バックドアに前記バックドアモジュールを取り付けた構造を提供している。
具体的には、バックドアモジュールの電気部品にボルト固定したブラケットをバックドアのフレームにボルト締め固定し、バックドアワイヤハーネスをバックドアモジュールに設けたプロテクタで外装している共に車体側のワイヤハーネスとコネクタ接続されている。
【0017】
バックドアモジュールの前記電気部品は、ノイズフィルタ、パワーバックドアブザー、バックドア室内ランプを含み、これらの電気部品はバックドアガラスを取り付ける窓枠の下方に配索する前記バックドアワイヤハーネス収容用のプロテクタの外面にテープ巻き固定し、該プロテクタから引き出されるバックドアワイヤハーネスの支線に接続することが好ましい。
【0018】
前記構成によれば、バックドアに取り付ける電気部品の中でも比較的軽量なノイズフィルタ、パワーバックドアブザー、バックドア室内ランプをプロテクタの外面にテープ巻きにより簡単に固定してモジュール化することができる。なお、これらノイズフィルタ、パワーバックドアブザー、バックドア室内ランプは後述する連結用金属バーに取り付けてもよい。
また、これら電気部品に接続するバックドアワイヤハーネスの支線を通しているプロテクタに電気部品を固定しているため、電気部品の配置箇所の近傍から接続する支線を引き出して電気部品に支線を接続することができる。
なお、前記電気部品のプロテクタへの固定はテープ巻きに限らず、バンドを巻き付けて固定してもよい。
【0019】
前記プロテクタは横長な筒形状で、軸線方向に開閉用スリットが設けられていると共に、該スリットとの対向位置にヒンジ部を備えた形状に成形された樹脂からなり、前記スリットを押し開いてバックドアワイヤハーネスを挿通させていることが好ましい。
詳細には、プロテクタは、ヒンジ部は軟質樹脂で成形すると共に他の部分は硬質樹脂で成形して2色成形とし、ヒンジ部に対向するスリットを押し開くことにより、プロテクタ内にバックドア・ワイヤハーネスを容易に挿通させることができる構成としている。
あるいは、プロテクタ全体を硬質樹脂により成形し、ヒンジ部を薄肉ヒンジとしてもよい。
前記構成によれば、バックドアワイヤハーネスを挿通させるプロテクタを硬質樹脂により成形しているため、該プロテクタにバックドアワイヤハーネスを挿通させることにより、バックドアワイヤハーネスを所要形状で保持することができる。
また、前記のようにバックドアワイヤハーネスが所要形状で保持されているため、バックドアワイヤハーネスをブラケットもしくは後述する連結用金属バーへの固定が容易となり、バックドアワイヤハーネスをプロテクタに挿通させない場合と比較して、固定に必要なクランプの個数を低減することができる。
【0020】
前記プロテクタが前記ワイパーモータ固定用ブラケットとドアロックアッシー固定用ブラケットとを連結する連結用金属バーに固定されていることが好ましい。
また、連結用金属バーの所要箇所に係止孔を設け、該係止孔に前記プロテクタに取り付けたクランプを挿入係止して、プロテクタを連結用金属バーに固定していることが好ましい。
バックドアワイヤハーネスを挿通すると共に電気部品をテープ巻き固定したプロテクタも重量が大きくなるが、前記構成によれば、プロテクタを連結用金属バーに安定した状態で取り付けてバックドアモジュールを作製することができる。
また、前記ワイパーモータ固定用ブラケットとドアロックアッシー固定用ブラケットとを別体の連結用金属バーで連結する構成としておくと、ワイパーモータとドアロックアッシーの配置変更が生じたときに、連結用金属バーのみを変更すればよく、ワイパーモータ固定用ブラケットとドアロックアッシー固定用ブラケットの汎用性を高めることができる。
【0021】
前記連結用金属バーは帯板状とし、バックドアモジュールをバックドアへ組み付ける作業員が1本の連結用金属バーを片手で保持できるよう、連結用金属バーの幅を10〜50mmとしていることが好ましい。
なお、前記ワイパーモータ固定用ブラケットと、ドアロックアッシー固定用ブラケットと、連結用金属バーとを一体的に設け、1枚の金属板から形成してもよい。
【発明の効果】
【0022】
前述したように、本発明によれば、車両用バックドアモジュールを、バックドアを閉じ位置とした状態で、その窓枠部で囲まれた開口を通して室外側から室内へ入れてバックドアに取り付けているため、作業員はバックドアモジュールを上向きに持ち上げる必要がなく、窓枠部を設けている腰辺りまで持ち上げるだけでよく肉体的な負担を軽減することができる。これにより、バックドアモジュールの取付作業を長時間継続して行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図6は、本発明の第1実施形態を示し、自動車のバックドア5の室内面側からバックドア5に組み付けられるバックドアワイヤハーネスW/H(以下、ワイヤハーネスW/Hと称す)と電気部品とをバックドアモジュール10としてモジュール化し、該バックドアモジュール10を図1に示すように、閉鎖状態のバックドア5の窓枠部70で囲まれた開口71を通して室内へ搬入している。なお、バックドアモジュール10を自動車の室内に搬入する際には、窓枠部70にバックドアガラスを取り付けておらず、バックドアモジュール10を室内に搬入してインナーパネル60にボルト締め固定した後に、窓枠部70にバックドアガラスを取り付けている。
【0024】
前記バックドアモジュール10は、部分的にプロテクタ30が外装されたワイヤハーネスW/Hと、該ワイヤハーネスW/Hに接続される電気部品と、所要の電気部品が固定される金属製ブラケット20、21と、該金属製ブラケット20と21を連結する連結用金属バー22、23と、該連結用金属バー22と23に架け渡して取り付けた仮固定用のポール24を組みつけた構成としている。
【0025】
ワイヤハーネスW/Hは、バックドアモジュール10をバックドア5に取り付けた状態で、バックドア5の窓枠部70の周縁に沿って、窓枠部70の下方から上方へと配索し、自動車のルーフ(図示せず)側へと配索され、車体側のワイヤハーネス(図示せず)とコネクタ接続される。
また、ワイヤハーネスW/Hに接続され、バックドアモジュール10としてモジュール化する電気部品は、ワイパーモータ11、バックドアロックアッシー12、ノイズフィルタ13、パワーバックドアブザー14、バックドア室内ランプ15からなる。
【0026】
前記電気部品のうち、比較的重量の大きなワイパーモータ11とバックドアロックアッシー12は、図3に示すように、ワイパーモータ固定用金属製ブラケット20とドアロックアッシー固定用金属製ブラケット21(以下、共に「金属製ブラケット」と称す)にそれぞれボルト40とナットにより締結固定している。
ワイパーモータ11を締結した金属製ブラケット20とバックドアロックアッシー12を締結した金属製ブラケット21は横長の金属板からなり、上下に対向配置している。これら金属製ブラケット20、21の一端20a、21a(図3中、左側)に、連結用金属バー22の上端22aと下端22bをボルト41とナットによりそれぞれ締結すると共に、他端20b、21b(図3中、右側)に、連結用金属バー23の上端23aと下端23bをボルト41とナットによりそれぞれ締結して、金属製ブラケット20と21を連結用金属バー22、23により連結している。即ち、金属製ブラケット20、21と連結用金属バスバー22、23とで四角枠を形成している。
【0027】
金属製ブラケット20に締結したワイパーモータ11のアース回路に接続されたアース電線50の端末にはアース端子51を圧着しており、該アース端子51にはボルト孔51aを穿設している。一方、金属製ブラケット20には、アース端子51をボルト締めするためのフランジ部20cが下端縁の中央から下方に向けて突出しており、該フランジ部20cにもボルト孔20dを穿設している。図6(A)に示すように、アース端子51のボルト孔51aと金属製ブラケット20のボルト孔20dとを連通させて、これらボルト孔51aと20dにボルト42の軸部42aを通して、ボルト42とナット43によりアース端子51を金属製ブラケット20に締結している。
また、アース端子51には、ノイズフィルタ13のアース回路に接続されたアース電線52とワイヤハーネスW/Hのアース電線53も圧着されている。このように、本実施形態では1つのアース端子51に3本のアース電線50、52、53を接続しているが、各アース電線の端末にそれぞれアース端子を接続し、これら複数のアース端子を重ねた状態で金属製ブラケット20にボルト締めしてもよい。
【0028】
ワイヤハーネスW/Hの所要部分に外装するプロテクタ30は横長な円筒形状で、軸線方向に開閉用スリット31を設けていると共に、該スリット31との対向位置にヒンジ部(図示せず)を設けている。該ヒンジ部はスリット31を押し開けるよう屈曲しやすい軟質樹脂で成形する一方、プロテクタ30のヒンジ部以外の部分は挿通させるワイヤハーネスW/Hの形状を保持できるようポリプロピレンからなる硬質樹脂により成形しており、プロテクタ30は二色成形により一体成形している。
【0029】
前記プロテクタ30には、スリット31を押し開いてワイヤハーネスW/Hの所要部分を挿通させている。
また、前記電気部品のうち、比較的軽量なノイズフィルタ13、パワーバックドアブザー14、バックドア室内ランプ15は、ワイヤハーネスW/Hの支線wと接続すると共に、図2に示すように、前記プロテクタ30の軸線方向に所要の間隔をあけて、プロテクタ30の外周面にテープ巻き固定している。
【0030】
ノイズフィルタ13、パワーバックドアブザー14、バックドア室内ランプ15の支線wとの接続方法及びプロテクタ30の外周面への固定方法は同様であるため、パワーバックドアブザー14について代表して説明する。
ワイヤハーネスW/Hを挿通させたプロテクタ30のスリット31を通してパワーバックドアブザー14と接続する支線wを引き出しており、該支線wをパワーバックドアブザー14に設けた圧接端子(図示せず)に圧接している。このように支線wと接続したパワーバックドアブザー14をプロテクタ30の外周面に沿わせてテープT巻き固定している。
【0031】
前記のようにワイヤハーネスW/Hを挿通させると共に外周面に所要の電気部品をテープ巻き固定したプロテクタ30の所要箇所にクランプ(図示せず)を取り付けており、該クランプを連結用金属バー22、23の長さ方向の略中央に穿設した係止孔(図示せず)に挿入係止して、プロテクタ30を連結用金属バー22、23に固定している。プロテクタ30は横長の金属製ブラケット20、21と略平行に取り付けられ、バックドアモジュール10をバックドア5に取り付けた状態で、プロテクタ30が窓枠部70の下辺に沿って横方向に配置される。
【0032】
また、連結用金属バー22と23に架け渡すように仮固定用のポール24をボルト45により締結固定している。該ポール24は長さ方向に直交する断面を円形としており、ワイヤハーネスW/Hに外装したプロテクタ30と平行で、かつ、プロテクタ30の下方位置に配置している。
さらに、金属製ブラケット20の上端縁と両端縁、金属製ブラケット21の下端縁と両端縁、および、プロテクタ30の両端縁には弾性材からなるカバー25を取り付け、バックドアモジュール10を窓枠部70で囲まれた開口を通して室内に搬入する際に、バックドアモジュール10と窓枠部70が干渉しても互いに損傷しないようにしている。なお、窓枠部70に一時的に弾性材からなるカバーを取り付け、バックドアモジュール10の搬入後にカバーを取り外すようにしてもよい。
【0033】
前記バックドアモジュール10を取り付けるバックドア5の金属製のインナーパネル(フレーム)60には、図5に示すように、バックドアモジュール10を仮固定するためのフック部61と、該フック部61の周囲にボルト孔60aを設けている。
フック部61は、インナーパネル60から突出するL字状の軸部61aと、該軸部61aの先端に設けた傾倒C字状でバネ性を有する挟持片61bとからなる。該挟持片61bで室内に搬入されたバックドアモジュール10のポール24を挟持してバックドアモジュール10を仮固定する構成としている。なお、フック部61は、別部材をインナーパネル60に取り付けて設けてもよいし、インナーパネル60を切り起こして設けてもよい。
また、インナーパネル60のバックドアモジュール取付面と反対面、即ち、室外側の面には、前記ボルト孔60aに対応する位置にナット44を溶接により取り付けている。
【0034】
次に、前記バックドアモジュール10のバックドア5への取付方法について説明する。
まず、車両の組立ラインにおいて、バックドア5を閉じた状態とし、このバックドア5の窓枠部70で囲まれた開口71を通してバックドアモジュール10を車両の室内に搬入する。搬入したバックドアモジュール10のポール24をインナーパネル60に設けたフック部61の挟持片61aで挟持して、バックドアモジュール10をインナーパネル60に仮固定する。
なお、バックドアモジュール10を搬入する際にはプロテクタ30から引き出したワイヤハーネスW/Hをテープ巻きによりまとめており、搬入後にテープを切断してワイヤハーネスW/Hを配索している。
【0035】
次いで、バックドア5を開け、室内側からバックドアモジュール10をインナーパネル60にボルト締め固定する。
詳細には、ワイパーモータ11、バックドアロックアッシー12と金属製ブラケット20、21とを締結しているボルト40、連結用金属バー22、23と金属製ブラケット20、21とを締結しているボルト41、アース端子51と金属製ブラケット20とを締結しているボルト42がそれぞれ金属製ブラケット20、21とインナーパネル60との締結にも用いられる。
【0036】
金属製ブラケット20とインナーパネル60との締結については、アース端子51と金属製ブラケット20とを締結したボルト42による締結について詳細に説明し、他のボルトによる締結は略同様であるため説明を省略する。
【0037】
前記のように、アース端子51と金属製ブラケット20とを締結したボルト42の軸部42aを、図6(B)に示すように、インナーパネル60のボルト孔60aに挿入してボルト締めすると、図6(C)に示すように、ボルト42がインナーパネル60に取り付けたナット44に螺合され、金属製ブラケット20がインナーパネル60に締結固定される。このとき、アース端子51もインナーパネル60に締結固定され、アース回路がインナーパネル60に接地される。
他のボルト40、41も同様にしてインナーパネル60にボルト締めされ、金属製ブラケット20、21が複数の所要箇所でインナーパネル60に締結固定されて、バックドアモジュール10がバックドア5に取り付けられる。インナーパネル60の室内側にはトリム(図示せず)を取り付けて、該トリムによりバックドアモジュール10を覆っている。
【0038】
前記方法によれば、車両用バックドアモジュール10を閉鎖したバックドア5の窓枠部70で囲まれた開口71を通して室外側から室内へ搬入してバックドア5に取り付けているため、作業員はバックドアモジュール10を上向きに持ち上げる必要がなく、窓枠部70を設けている腰辺りまで持ち上げるだけでよく肉体的な負担を軽減することができる。これにより、バックドアモジュール10の取付作業を長時間継続して行うことができ、作業効率を向上させることができる。
また、バックドアモジュール10のバックドア5への仮固定は、バックドアモジュール10のポール24をフック部61の上向きに開口した挟持片61bに挿入して挟持させるだけであるため、作業員は室外側からバックドアモジュール10を搬入後、バックドア5を閉じたままでバックドアモジュール10を容易に仮固定することができる。
なお、本実施形態では、金属製ブラケットと連結用金属バーとを別体としてボルト締めにより締結しているが、1枚の金属板から一体的に形成してもよい。
【0039】
図7及び図8は、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、バックドアモジュール10のバックドアへの仮固定方法を第1実施形態と相違させ、バックドアモジュール10をバックドアにクランプ止めにより仮固定している。
【0040】
本実施形態のバックドアモジュール10のプロテクタ30には、図7に示すように、インナーパネル60側に突出するクランプ32をプロテクタ30の軸線方向に間隔をあけて複数設けている。また、本実施形態のバックドアモジュール10には、仮固定用のポール24を設けていない点とプロテクタ30を連結用金属バー22、23のインナーパネル60側に取り付けている点で第1実施形態のバックドアモジュールと相違するが他の構成は同様としているため同一の符号を付して説明を省略する。
なお、クランプ32はプロテクタ30に一体的に設けてもよいし、別体のクランプをテープ巻き、バンド巻きにより取り付けてもよい。
【0041】
また、インナーパネル60には、前記クランプ32を挿入係止するための貫通孔62を設け、該貫通孔62の下部には水平方向に延在する段差部63を設けている。
【0042】
次に、バックドアモジュール10のバックドアへの取付方法について説明する。
まず、前記バックドアモジュール10を閉鎖状態のバックドアの窓枠部で囲まれた開口を通して車両の室内に搬入し、図7に示すように、プロテクタ30のクランプ32をインナーパネル60の貫通孔62に挿入係止すると共に、インナーパネル60の段差部63にプロテクタ30を載置して仮固定する。
その後、第1実施形態と同様、バックドアを開けてバックドアモジュール10をバックドアのインナーパネル60にボルト締め固定する。
【0043】
前記方法によっても、バックドアモジュール10を閉鎖したバックドアの窓枠部で囲まれた開口を通して室外側から室内へ搬入して、バックドアモジュール10をバックドアに容易に仮固定しておくことができる。
なお、本実施形態では、バックドアモジュールのクランプ止めと段差部への載置を併用しているが、クランプ止めのみで十分にバックドアモジュールを保持できる場合には、インナーパネルに段差部を設けなくてもよい。
【0044】
図9は、本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態では、バックドアモジュール10をバックドアのインナーパネル60に磁石を介して仮固定している。具体的には、第1実施形態と同様のバックドアモジュール10の金属ブラケット20、21のインナーパネルへの取付面側に磁石26を取り付けており、該磁石26を介してバックドアモジュール10を金属製のインナーパネル60に仮固定している。
なお、バックドアモジュール10の車両への搬入方法及びボルト締め固定の方法は第1実施形態と同様のため説明を省略する。
また、本実施形態では、磁石を仮固定の手段として用いているが、磁石のみでバックドアモジュールをバックドアに固定してボルト締め固定を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のバックドアモジュールの車両への搬入方法を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態のバックドアモジュールをバックドアに取り付けた状態を示す図面である。
【図3】バックドアモジュールの要部拡大図である。
【図4】バックドアモジュールを車両のバックドアに仮固定した状態を示す概略図である。
【図5】バックドアモジュールをバックドアに仮固定した状態を示す要部拡大図である。
【図6】バックドアモジュールをバックドアにボルト締め固定する工程を示し、(A)はアース端子と金属製ブラケットを締結した状態を示す断面図、(B)(C)は金属製ブラケットをインナーパネルに締結する工程を示す断面図である。
【図7】第2実施形態のバックドアモジュールをバックドアに仮固定した状態を示す要部拡大図である。
【図8】第2実施形態のバックドアモジュールの要部拡大図である。
【図9】第3実施形態のバックドアモジュールをバックドアに仮固定した状態を示す要部拡大図である。
【図10】従来例を示す図面である。
【図11】従来のバックドアモジュールの取付方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0046】
5 バックドア
10 バックドアモジュール
11 ワイパーモータ
12 バックドアロックアッシー
13 ノイズフィルタ
14 パワーバックドアブザー
15 バックドア室内ランプ
20 ワイパーモータ固定用金属製ブラケット
21 ドアロックアッシー固定用金属製ブラケット
22、23 連結用金属バー
24 ポール
26 磁石
30 プロテクタ
32 クランプ
60 インナーパネル(フレーム)
61 フック部
63 段差部
70 窓枠部
71 開口
W/H バックドアワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバックドアに配索されるバックドアワイヤハーネスと、該バックドアワイヤハーネスに接続されると共にバックドアに取り付けられる電気部品とが予め組みつけられたバックドアモジュールを設け、
前記バックドアモジュールを、車体に対して閉位置としたバックドアの窓枠部で囲まれた開口を通して室外側から室内に搬入し、バックドアの室内側のフレームに取り付けることを特徴とする車両用バックドアモジュールの取付方法。
【請求項2】
車両の室内に搬入した前記バックドアモジュールの一部に前記バックドアの室内側に設けたフック部に引っ掛けて仮固定し、
または、前記バックドアモジュールに設けたクランプを前記バックドアのフレームに設けた貫通孔に挿入して仮固定し、
または、前記バックドアモジュールに設けた磁石を前記バックドアの金属製のフレームに磁着して仮固定し、
その後、前記バックドアを上端ヒンジを支点として上方へと開き作動し、該上方に位置するバックドアの下面となる室内面側の前記フレームに対して、前記バックドアモジュールをボルト締め固定している請求項1に記載の車両用バックドアモジュールの取付方法。
【請求項3】
前記バックドアモジュールは、ワイパーモータ、バックドアロックアッシーを前記電気部品として含み、前記ワイパーモータおよびバックドアロックアッシーは金属製のブラケットにボルトで締結されており、
前記バックドアモジュールのブラケットを前記バックドアのフレームに、前記ボルトを用いて締結している請求項1または請求項2に記載の車両用バックドアモジュールの取付方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法によって、前記バックドアモジュールをバックドアに取り付けている車両用バックドアモジュールの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−196970(P2007−196970A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21082(P2006−21082)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】