説明

車両用ピラー構造

【課題】軽量化を図りつつ所要の曲げ強度を確保することができる車両用ピラー構造を得る。
【解決手段】車両用ピラー構造10は、全体として車幅方向内向きに開口された開断面構造のセンタピラー12と、センタピラー12の開断面内に設けられセンタピラー12におけるドアヒンジの固定部分を補強するためのヒンジリインフォースメント28と、シートベルトスライダ32を車両上下方向に移動可能に支持するシートベルトスライダリインフォースメント30とを備える。シートベルトスライダリインフォースメント30は、車両下端部がセンタピラー12の開断面内でヒンジリインフォースメント28の車両上端に結合されると共に、車両上端部がルーフサイドレール16によって固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ピラーアウタとピラーインナとで形成された閉断面内にリインフォースメントを配設したピラー構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、アジャスタブルアンカを車両上下方向にスライド可能に支持するガイドレールをピラーインナにおける車室側に固定した構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、共に車幅方向内側を向くピラーアウタとピラーインナとを嵌合させて全体として開断面構造を成すセンタピラー構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−199361号公報
【特許文献2】特開2001−328507号公報
【特許文献3】特開2007−331571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如き従来の技術は、ピラーの曲げ強度の確保と軽量化とを両立するとの観点からは効率的ではなく、何れも改善の余地がある。
【0005】
本発明は、軽量化を図りつつ所要の曲げ強度を確保することができる車両用ピラー構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る車両用ピラー構造は、全体として車幅方向内向きに開口された開断面構造のピラー本体と、前記ピラー本体の開断面内に設けられ、該ピラー本体におけるドアヒンジの固定部分を補強するためのヒンジリインフォースメントと、前記ピラー本体の開断面内で車両上下方向の下端部が前記ヒンジリインフォースメントの車両上下方向の上端部に結合されると共に、車両上下方向の上端部が前記ピラー本体の上端部又はルーフの車幅方向外端で車両前後方向に延在するルーフ骨格部材によって車幅方向に支持され、シートベルトスライダを車両上下方向に移動可能に支持するベルトアンカ支持部材と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車両用ピラー構造では、ベルトアンカ支持部材は、上端部においてピラー本体の上端部又はルーフ骨格部材によって車幅方向に支持されると共に、下端部がピラー本体の開断面内でヒンジリインフォースメントの車両上端に結合されている。このため、ベルトアンカ支持部材は、例えば閉断面構造のピラーにおける車幅方向内側面(閉断面の外)に固定される構成と比較して、車幅方向外側に配置されることとなる。すなわち、ピラー本体における側面衝突による曲げに伴い圧縮を受ける側にベルトアンカ支持部材が配置される。これにより、ベルトアンカ支持部材を利用してピラー本体が曲げに対し効率的に補強され、ピラー構造全体としての軽量化に寄与する。
【0008】
このように、請求項1記載の車両用ピラー構造では、軽量化を図りつつ所要の曲げ強度を確保することができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る車両用ピラー構造は、請求項1記載の車両用ピラー構造において、前記ベルトアンカ支持部材は、全長に亘って前記ピラー本体の開断面内に位置している。
【0010】
請求項2記載の車両用ピラー構造では、ベルトアンカ支持部材が全長に亘ってピラー本体の開断面内に位置するので、換言すれば、ベルトアンカ支持部材は全体としてピラー本体の車幅方向内向きの開口端に対し車幅方向の外側に位置している。このため、ベルトアンカ支持部材は、ピラー本体におけるより圧縮側に配置され、このベルトアンカ支持部材によってピラー本体は曲げに対し効率的に補強される。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車両用ピラー構造は、請求項1又は請求項2記載の車両用ピラー構造において、前記ベルトアンカ支持部材の上端部は、ルーフの車幅方向外端で車両前後方向に延在するルーフ骨格部材の車幅方向の外側に当接した状態で該ルーフ骨格部材に結合されている。
【0012】
請求項3記載の車両用ピラー構造では、ベルトアンカ支持部材の車両上端部がルーフ骨格部材の車幅方向外側に当接、結合されている。これにより、ベルトアンカ支持部材は、その上端部においては、シールベルトアンカを介してシートベルトから入力される荷重をルーフ骨格部材への当接面全体で受けることができる。このため、ベルトアンカ支持部材は、適切な板厚でシートベルトからの荷重を支持することができ、ピラー構造全体としての軽量化に寄与する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係る車両用ピラー構造は、軽量化を図りつつ所要の曲げ強度を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ピラー構造を示す、図4の1−1線に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用ピラー構造を示す図4の2−2線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用ピラー構造の主要部材を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用ピラー構造が適用された自動車の概略構造を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例に係る車両用ピラー構造を示す図1に対応する断面図である。
【図6】本発明の実施形態との比較例に係る車両用ピラー構造を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態との比較例に係る車両用ピラー構造の主要部材を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る車両用ピラー構造10について、図1〜図4に基づいて説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印INは車幅方向内側を、矢印OUTは車幅方向外側をそれぞれ示す。先ず、車両用ピラー構造10が適用された自動車11の概略構成を説明し、次いで車両用ピラー構造10の要部を説明することとする。
【0016】
図4には、車両用ピラー構造10が適用された自動車11の一部が模式的な側面図にて示されている。また、図1には、図4の1−1線に沿った断面図にて示されており、図2には、図4の2−2線に沿った断面図にて示されている。これらの図に示される如く、自動車11は、センタピラー12を備えている。センタピラー12は、車両前後方向に長手とされた車幅方向外端の骨格部材であるロッカ14における車両前後方向の略中間部から車両上下方向に沿って立ち上げられた骨格部材とされている。
【0017】
センタピラー12の車両上下方向の上端部は、ルーフ骨格部材としてのルーフサイドレール16の車両前後方向中間部に連結されている。このセンタピラー12に対する車両前後方向の前側には、該センタピラー12、ロッカ14、ルーフサイドレール16、及びフロントピラー18にて囲まれた乗員乗降用のドア開口部20が形成されている。一方、センタピラー12に対する車両前後方向の後側には、該センタピラー12、ロッカ14、ルーフサイドレール16、及びリヤピラー22等にて囲まれたドア開口部24が形成されている。
【0018】
また、センタピラー12における車両上下方向の中間部より下方における上下の2箇所には、図4に想像線にて示される如く、ドア開口部24を開閉するための図示しないリヤサイドドアのドアヒンジ26が取り付けられている。センタピラー12におけるドアヒンジ26の取付部を含む下部は、ヒンジリインフォースメント28にて補強されている。センタピラー12、ヒンジリインフォースメント28の具体的な構造は後述する。
【0019】
一方、図1にも示される如く、センタピラー12の車両上下方向の中間部よりも上側における車室内側には、ベルトアンカ支持部材としてのシートベルトスライダリインフォースメント30が設けられている。シートベルトスライダリインフォースメント30は、センタピラー12に沿って車両上下方向に長手とされており、シートベルトスライダ(シートベルトアジャスタレール)32を車両上下方向の位置をスライドにより調整可能に支持している。
【0020】
シートベルトスライダ32は、センタピラー12を車室内側から覆う内装部材(意匠部材)としてのピラーガーニッシュ33に対する車室内側から操作可能に車室内に突出されている。このシートベルトスライダ32には、シートベルトウエビングの中間部が巻き掛けられた図示しないショルダアンカが取り付けられるようになっている。
【0021】
以上説明したセンタピラー12の車両上下方向の上端部は、ルーフサイドレール16における車両前後方向の中間部に連結されている。ルーフサイドレール16は、その主要骨格部を成すルーフサイド骨格部材34がルーフサイドアウタパネル36にて車両外方から覆われて構成されており、自動車11のルーフを構成するルーフパネル38の車幅方向外端部に接合されている。また、ルーフパネル38における車両前後方向の中間部の下面には、車幅方向に延在してルーフパネル38を補強するルーフリインフォースメント40が接合されている。さらに、ルーフリインフォースメント40とルーフサイド骨格部材34とは、センタピラーガセット42にて連結されている。この実施形態におけるセンタピラーガセット42は、車幅方向内端がボルト52A及びナット52Bより成る締結手段52にて締結されており、車幅方向外端がスポット溶接にてルーフサイド骨格部材34(後述する外側凸部34Aと内側凸部34Bとの共通の立壁部)に接合されている。
【0022】
この実施形態では、ルーフサイド骨格部材34は、単一部材から成る開断面構造とされている。具体的には、ルーフサイド骨格部材34は、車両内方に開口すると共に車両外方に突出する外側凸部34Aと、該外側凸部34Aの車両下方側で車両外方に開口すると共に車両内方に突出する内側凸部34Bとが連設されて略波型を成す。また。ルーフサイド骨格部材34は、高張力鋼板にて構成されている。この実施形態における高張力鋼板とは、例えば引張強さが350MPa以上の自動車用鋼板をいい、引張強さが590MPa以上のものを超高張力鋼板という場合もある。これらにより、この実施形態におけるルーフサイド骨格部材34は、上記の通り開断面構造でありながら、側突やロールオーバによる曲げに対し十分な強度を得ることができる。以上説明したルーフサイド骨格部材34を本発明におけるルーフ骨格部材として捉えても良い。
【0023】
また、自動車11では、ルーフパネル38、ルーフリインフォースメント40が天井材としてのルーフヘッドライニング44にて車両下方(車室内側)から覆われている。さらに、ルーフサイドレール16とピラーアウタリインフォースメント44の車幅方向端部との間には、カーテンエアバッグ装置46が配設されている。
【0024】
そして、以上説明した自動車11に適用された車両用ピラー構造10では、図2に示される如く、センタピラー12は、全体として車幅方向内向きに開口する開断面構造を成している。具体的には、センタピラー12は、車幅方向内向きに開口する断面ハット形状のピラーアウタパネル48と、車幅方向内向きに開口する断面ハット形状のピラーアウタリインフォースメント50とが、互いのフランジ48A、50Aにおいて接合されることで、上記の如き開断面構造を成している。
【0025】
この実施形態では、ピラーアウタリインフォースメント50が、高張力鋼板にて構成されることで、センタピラー12の主要な骨格部を成している。図1に示される如く、ピラーアウタリインフォースメント50における車両上下方向の上端部50Bは、ルーフサイド骨格部材34における外側凸部34Aの外面にスポット溶接等にて接合されている。一方、ピラーアウタパネル48は、ルーフサイドアウタパネル36と共に、自動車11の外板部を成す大型のプレス部品であるサイメンアウタ(サイドアウタパネル)の一部として形成されている。この実施形態では、ピラーアウタリインフォースメント50単体、又はピラーアウタリインフォースメント50とピラーアウタパネル48とが接合されたものが本発明におけるピラー本体に相当する。
【0026】
ヒンジリインフォースメント28は、車幅方向内向きに開口する断面「コ」字状を成しており、ピラーアウタリインフォースメント50の下部内面にスポット溶接等にて接合されることで、センタピラー12におけるドアヒンジ26の取付部分(図4参照)を補強している。また、この実施形態では、ヒンジリインフォースメント28は、センタピラー12を曲げに対しても補強する構成とされている。
【0027】
シートベルトスライダリインフォースメント30は、図2及び図3に示される如く、車幅方向外向きに開口する断面ハット形状とされ、図1及び図3に示される如く、車両上下方向の下端部に形成された下フランジ30A及び車両上下方向の上端部に形成された上フランジ30Bを有する。シートベルトスライダリインフォースメント30は、下フランジ30Aにおいてヒンジリインフォースメント28における車両上下方向の上端部28Aに結合されている。この実施形態では、シートベルトスライダリインフォースメント30の下フランジ30Aは、ボルト52A及びナット52Bより成る締結手段52にてヒンジリインフォースメント28の上端部28A、ピラーアウタリインフォースメント50の車両上下方向の略中間部に締結固定されている。
【0028】
一方、シートベルトスライダリインフォースメント30の上フランジ30Bは、ルーフサイド骨格部材34に接合されている。この実施形態では、シートベルトスライダリインフォースメント30の上フランジ30Bは、ルーフサイド骨格部材34における内側凸部34Bの車幅方向外向き開口縁から車両上下方向の下向きに延設された下フランジ34C、車幅方向外側から当接した状態で締結手段52にて締結固定されている。
【0029】
そして、車両用ピラー構造10では、シートベルトスライダリインフォースメント30は、開断面を成すセンタピラー12の底側すなわち車幅方向外側に寄せて配置されている。具体的には、シートベルトスライダリインフォースメント30は、少なくとも下フランジ30A及び上フランジ30Bが、ピラーアウタリインフォースメント50の車幅方向内向きの開口面50Cに対し車幅方向外側に配置されている。この実施形態では、シートベルトスライダリインフォースメント30は、車両上下方向の各位置において、開口面50Cに対する車幅方向外側に配置されている。換言すれば、シートベルトスライダリインフォースメント30は、センタピラー12の開断面内(の空間)に配置されているものと捉えることができる。
【0030】
次に、本形態の作用を説明する。
【0031】
上記構成の車両用ピラー構造10では、例えば自動車11に対する側面衝突によってセンタピラー12に車幅方向内向きの衝突荷重が入力されると、該センタピラー12には車両上下方向中央部が両端に対し車幅方向内側に変位する如き曲げが生じる。この曲げに伴ってセンタピラー12における車幅方向外側部分には圧縮荷重が作用する。
【0032】
ここで、車両用ピラー構造10では、センタピラー12(主にピラーアウタリインフォースメント50)における車幅方向外側部分が、該センタピラー12の車両上下方向中間部で連結されたヒンジリインフォースメント28とシートベルトスライダリインフォースメント30とによって補強されている。このため、車両用ピラー構造10では、自動車11への側面衝突による曲げに伴う圧縮(以下、単に「圧縮」という場合がある)に対し必要な強度が確保される。すなわち、車両用ピラー構造10では、他の機能を兼ねる補強部材を利用してセンタピラー12が圧縮に対し効率的に補強されており、軽量化に寄与する。
【0033】
この点を図6及び図7に示す比較例に係る車両用ピラー構造100と比較しつつ補足する。比較例に係る車両用ピラー構造100では、センタピラー102は、ピラーアウタリインフォースメント50と似た形状を成すピラーアウタリインフォースメント104と、該ピラーアウタリインフォースメント104の開口端を閉止するピラーインナパネル106とで構成された閉断面構造の主骨格部を有し、該主骨格部がピラーアウタパネル48(図7では図示省略)にて覆われて構成されている。また、車両用ピラー構造100では、シートベルトスライダリインフォースメント108が上下端共にピラーインナパネル106に固定されている。さらに、車両用ピラー構造100では、ヒンジリインフォースメント110がセンタピラー102の車両上部(シートベルトスライダリインフォースメント108の設置範囲)にまで延設されている。
【0034】
この比較例に係る車両用ピラー構造100では、センタピラー102は、圧縮荷重に対しピラーアウタリインフォースメント104及びヒンジリインフォースメント110によって必要な強度を確保する。すなわち、ピラーインナパネル106を有する閉断面構造のセンタピラー102では、シートベルトスライダリインフォースメント108をセンタピラー102の圧縮側に配置して側突に対する補強部材として利用することができず、ヒンジリインフォースメント110を車両上方まで延設して曲げに対する強度を確保することとなる。
【0035】
これに対して本実施形態に係る車両用ピラー構造10では、開断面構造のセンタピラー12に対しシートベルトスライダリインフォースメント30を車幅方向外側すなわち圧縮側に配置することができる。これにより、シートベルトスライダリインフォースメント30の下フランジ30Aとヒンジリインフォースメント28の上端部28Aとを結合して、上記の通り圧縮に対する補強部材として利用することで、効率的な補強が実現される。特に、車両用ピラー構造10では、シートベルトスライダリインフォースメント30が略全長に亘ってピラーアウタリインフォースメント50の内部(空間)に配置されているので、換言すれば、ピラーアウタリインフォースメント50に沿って補強部材が配置されるので、シートベルトスライダリインフォースメント30とヒンジリインフォースメント28とによる一層効率的な補強が実現される。
【0036】
このように、車両用ピラー構造10では、上記の通りシートベルトスライダリインフォースメント30を圧縮に対する補強部材として用いてセンタピラー12の効率的な補強を実現しているため、上記比較例と比較してヒンジリインフォースメント28を小型化(短縮)することができる。これにより、車両用ピラー構造10では、比較例に係る車両用ピラー構造100に対し、少なくともシートベルトスライダリインフォースメント108の上部、及びピラーインナパネル106の分だけ軽量化を図ることができる。
【0037】
またここで、車両用ピラー構造10では、例えば自動車11の前面衝突に伴いシートベルトウエビングにて乗員が拘束された場合やシートベルトアンカレッジの試験等の場合には、シートベルトスライダ32を介してシートベルトスライダリインフォースメント30に荷重が伝達される。この際、車両用ピラー構造10では、シートベルトスライダリインフォースメント30は、上フランジ30Bがルーフサイド骨格部材34の下フランジ34Cに車幅方向外側から当接した状態で接合されているため、該当接部分の全面でシートベルトスライダ32からの荷重を受けることができる。
【0038】
上記した比較例に係る車両用ピラー構造100では、シートベルトスライダリインフォースメント108は、ピラーインナパネル106の車幅方向内側の面に締結手段52にて締結されているので、ナット52B(ボルト52A)の鍔径(ボルト軸から張り出した部分)による面積だけでシートベルトスライダ32の荷重を受けることとなる。このため、車両用ピラー構造100では、シートベルト装置からの要求強度を確保するために、ナット52B(ボルト52A)の径を大きくするか、又はシートベルトスライダリインフォースメント108の板厚を増す必要があり、質量が増すこととなる。
【0039】
これに対して車両用ピラー構造10では、上記の通り上フランジ30Bにおける下フランジ34Cとの当接部分全体でシートベルトスライダ32(シートベルト装置)からの荷重を受けるため、ボルト52Aの径やシートベルトスライダリインフォースメント30の厚みに頼ることなくシートベルト装置からの要求強度を確保することができる。したがって、車両用ピラー構造10では、シートベルトスライダリインフォースメント30を適切な板厚としつつシートベルト装置からの要求強度を確保することができ、この点においても軽量化に寄与する。
【0040】
なお、上記した実施形態では、シートベルトスライダリインフォースメント30の上フランジ30Bが単独でルーフサイド骨格部材34の下フランジ34Cに接合された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図5に示される如く、上フランジ30Bがセンタピラーガセット42に形成された下フランジ42Aと共に下フランジ34Cに締結(共締め)される構成としても良い。この構成では、車体の組み立て工数の低減に寄与する。
【0041】
また、上記した実施形態では、ルーフサイドレール16が単一のルーフサイド骨格部材34を主要骨格部とする例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ルーフサイドインナとルーフサイドアウタとの接合により成る閉断面構造体を主要骨格としてルーフサイドレール16が構成された自動車11に車両用ピラー構造10を適用しても良い。
【0042】
さらに、上記した実施形態では、シートベルトスライダリインフォースメント30が上フランジ30Bにおいてルーフサイド骨格部材34の下フランジ34Cに固定された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、上フランジ30Bがピラーアウタリインフォースメント50の上端近傍に接合される構成としても良い。
【符号の説明】
【0043】
10 車両用ピラー構造
12 センタピラー(ピラー本体)
16 ルーフサイドレール(ルーフ骨格部材)
26 ドアヒンジ
28 ヒンジリインフォースメント
30 シートベルトスライダリインフォースメント(ベルトアンカ支持部材)
32 シートベルトスライダ
34 ルーフサイド骨格部材(ルーフ骨格部材)
50 ピラーアウタリインフォースメント(ピラー本体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として車幅方向内向きに開口された開断面構造のピラー本体と、
前記ピラー本体の開断面内に設けられ、該ピラー本体におけるドアヒンジの固定部分を補強するためのヒンジリインフォースメントと、
前記ピラー本体の開断面内で車両上下方向の下端部が前記ヒンジリインフォースメントの車両上下方向の上端部に結合されると共に、車両上下方向の上端部が前記ピラー本体の上端部又はルーフの車幅方向外端で車両前後方向に延在するルーフ骨格部材によって車幅方向に支持され、シートベルトスライダを車両上下方向に移動可能に支持するベルトアンカ支持部材と、
を備えた車両用ピラー構造。
【請求項2】
前記ベルトアンカ支持部材は、全長に亘って前記ピラー本体の開断面内に位置している請求項1記載の車両用ピラー構造。
【請求項3】
前記ベルトアンカ支持部材の上端部は、ルーフの車幅方向外端で車両前後方向に延在するルーフ骨格部材の車幅方向の外側に当接した状態で該ルーフ骨格部材に結合されている請求項1又は請求項2記載の車両用ピラー構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate