説明

車両用フロアスペーサ

【課題】所要の圧縮強度と軽量化を満足しながら、さらに吸音性と室内静音性を同時に満足できるようにした発泡樹脂成形体からなる車両用フロアスペーサを得る。
【解決手段】車両用フロアスペーサCは、室内側となる平板部12a,12bと、フロアフレーム側である該平板部12a,12bの裏面から立設した複数本の突条13a,13bとを有する発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体10と、前記突条13a,13bの間に形成される空間14a,14bを埋めるようにして形成される吸音材20からなる層とで構成される。平板部12a,12bには多数の有底孔15を形成し、また、少なくとも突条13a,13bの底面を覆うようにして低摩擦材料であるクラフトテープ17を貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の床面の平坦性を確保する等の目的で用いられる車両用フロアスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の床面の平坦性を確保するため、吸音性能を向上させるため、車内外で発生する衝撃に対して乗員を保護するため、あるいは、軽量化するため等の目的で、車両のフロアフレームに存在する凹溝内に、発泡樹脂成形体からなる車両用フロアスペーサを収容配置することは知られている。ポリスチレン系樹脂発泡体のような発泡樹脂成形体は、一般に吸音特性に乏しく、それ自体では殆ど吸音性能を有しない。そのために、車内の居住性向上の観点から高い吸音性能が求められる場合には、発泡樹脂成形体に吸音材として機能するフェルト等を後加工で貼り付けたものを、車両用フロアスペーサとして用いることが行われる。
【0003】
一般に、中実の発泡樹脂成形体は軽量で高い圧縮強度を持つため、40mm〜150mm程度の厚さの車両用フロアスペーサとして有効である。また、特許文献1には、図13に示すように、自動車の乗員座席の足元を形成する床面に対応する水平部2aと足元前方に敷設される傾斜部2bとを有する硬質発泡プラスチック製のフロアスペーサ1であって、水平部2aおよび傾斜部2bの室内側は共に平板部2とされ、床面側はハニカム構造、スリット構造又は突起構造のような突条構造3としたものが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−127796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13に示す形態のフロアスペーサのように、室内側は平板部であり、フロアフレーム側は平板部の裏面から複数本の突条が立設している構造の車両用フロアスペーサであっても、吸音性向上のためには吸音材としてフェルト等を貼り付けることが必要となる。高い吸音性能が求められる場合には、従来、20mm〜60mm程度の厚みのフェルトが必要とされるが、このような厚みのフェルトを貼り付けると、フェルトに起因する圧縮強度の低下が無視できなくなり、大きな沈み込みにより居住性の劣化を招く恐れがある。また、突条の底面が車両のフレームに接して摺動するときに、室内までとどく軋み音や摩擦音などの音鳴りが発生する恐れもある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、車両用フロアスペーサにおいて、所要の圧縮強度と軽量化を満足しながら、さらに吸音性と室内の静音性も同時に満足できるようにした発泡樹脂成形体からなる車両用フロアスペーサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車両用フロアスペーサの第1形態は、車両のフロアフレームに設置される車両用フロアスペーサであって、室内側となる平板部とフロアフレーム側である前記平板部の裏面から立設した複数本の突条とを有する発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体と、前記突条の間に形成される空間を埋めるようにして配置される吸音材からなる層とを少なくとも備え、かつ前記フロアスペーサ本体における前記平板部には複数の有底孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記第1形態の車両用フロアスペーサにおいて、発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体の室内側は平板部であり、車両の床面の平坦性を確保するという目的は達成できる。また、フロアスペーサ本体のフロアフレーム側は平板部の裏面から複数本の突条を立設した構成であり、突条全体のフロアフレームに対する接地面積を、当該車両用フロアスペーサに求められる圧縮強度を考慮して適宜設定することにより、軽量化を満足しながら、圧縮強度を満足する車両用フロアスペーサとすることができる。
【0009】
さらに、上記第1形態の車両用フロアスペーサでは、フロアスペーサ本体の前記突条間に形成される空間に、該空間を埋めるようにして吸音材からなる層が形成されている。吸音材からなる層は室外で発生する音が室内に入り込むのを防ぐ吸音壁として機能するので、車両室内に対して高い吸音性能も確保できる。従来の車両用フロアスペーサのように裏面にフェルトのような吸音材を貼り付けるものは、吸音材を介してフロアフレームに接することとなるが、本発明による車両用フロアスペーサは、フロアスペーサ本体の突条がフロアフレームに直接に接しているので、圧縮されやすい材料である吸音材からなる層が存在していても、当該車両用フロアスペーサに対して予め設定された圧縮強度が変化(低下)することはない。そのために、圧縮強度を満足しながら、同時に高い吸音性能を備えることができる。
【0010】
さらに、上記第1形態の車両用フロアスペーサでは、フロアスペーサ本体における前記平板部に複数の有底孔が形成されている。該有底孔を備えることにより、室内側の騒音を有底孔の壁面で乱反射させ、かつ該騒音の音圧を有底孔の底部分の振動により吸収することができるので、車両用フロアスペーサの室内音に対する吸音性能も向上する。前記有底孔における底部の位置はフロアスペーサ本体のフロアフレームに最も近接した位置でもよく、より室内側に近づいた位置でもよい。後者の場合には、室外から室内に入り込む騒音も低減できる。
【0011】
本発明による車両用フロアスペーサの第2形態は、車両のフロアフレームに設置される車両用フロアスペーサであって、室内側となる平板部とフロアフレーム側である前記平板部の裏面から立設した複数本の突条とを有する発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体と、前記突条の間に形成される空間を埋めるようにして配置される吸音材からなる層とを少なくとも備え、かつ少なくとも前記突条の底面を覆うようにして該突条を構成する発泡樹脂材料よりもフロアフレームに対する摩擦係数の小さい材料からなるシートが貼着されていることを特徴とする。
【0012】
上記第2形態の車両用フロアスペーサは、「有底孔」に起因する作用効果を除き、上記第1形態の車両用フロアスペーサと同じ作用効果を奏することができる。さらに、第2形態の車両用フロアスペーサは「突条の底面を覆うようにして該突条を構成する発泡樹脂材料よりもフロアフレームに対する摩擦係数の小さい材料からなるシートが貼着されている」構成を備えることにより、車両用フロアスペーサを車内に設置したときに、前記突条の底面が車両のフレームに接して摺動するときに発生する恐れのある軋み音や摩擦音などの音鳴りを確実に抑制することができる。そのために、室内での高い静音性を一層確実に確保することができる。シートの例として、クラフトテープ、布テープ、クロステープ、セロハンテープ、アルミテープ、ポリエチレンテープ、和紙テープ、ビニールテープ等が挙げられる。中でも、取り扱い性や安価であることから、クラフトテープは好ましい。
【0013】
上記第2形態の車両用フロアスペーサにおいて、前記シートを少なくとも2本以上の突条の底面を連続的に繋ぐようにして貼着するように構成することは、より好ましい。この構成は、ロールに巻き込まれた所定幅のテープを巻き出しながら2本以上の突条の底面に連続して貼り付けていくような手法を採用することにより、容易に形成することができる。この態様とすることにより、突条の間に形成される空間を埋めるようにして配置される吸音材からなる層が、搬送時や車両への組み付け時に、フロアスペーサ本体から落下するような事態が生じるのを効果的に阻止することができる。
【0014】
本発明による第3形態の車両用フロアスペーサは、前記「有底孔」と前記「突条の底面を覆うようにして該突条を構成する発泡樹脂材料よりもフロアフレームに対する摩擦係数の小さい材料からなるシートが貼着されている」構成の双方を備える。この態様では、双方の構成が持つ作用効果の双方を享受することができる。
【0015】
本発明において、フロアスペーサ本体は任意の発泡樹脂成形体で作ることができるが、熱可塑性樹脂ビーズの発泡成形体であることは好ましい。熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、などが挙げられる。
【0016】
なかでも、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合して得られるスチレン改質ポリオレフィン系樹脂、特に、スチレン改質ポリエチレン系樹脂の発泡ビーズを用いることは好ましい。その理由は、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の成形品は、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂に比べて寸法安定性と形状保持性に優れ、ポリスチレン系樹脂に比べ擦れによる粉が出にくいことによる。また、ポリエチレン系樹脂ビーズやポリプロピレン系樹脂ビーズの発泡成形品は全体の寸法収縮率が大きく、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂ビーズの発泡成形品と比較して寸法精度が出にくく、かつ、二次発泡力も小さいことによる。
【0017】
スチレン改質ポリオレフィン系樹脂を用いる場合、スチレン成分の割合は40〜90重量%であり、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%である。スチレン成分の割合が40重量%未満では、材料強度(圧縮強度)が相当低下するので、吸音材を配置するために十分な広さの空間を突条間に形成することができない。90重量%を越える場合には、ポリスチレン系樹脂単体と同様に自動車のフレーム(車体パネル)との擦れ音の発生などの不都合がある。
【0018】
フロアスペーサ本体の成形に際しては、例えば上記するスチレン改質ポリエチレン系樹脂をはじめとする熱可塑性樹脂に、発泡剤を含浸させて発泡性の熱可塑性樹脂とし、該発泡性の熱可塑性樹脂を加熱水蒸気等で3〜70倍の範囲内で予備発泡させることで予備発泡粒子を製造する。次いで、かかる予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、蒸気加熱等によって発泡成形すればよい。発泡成形時の発泡倍率は3〜70倍である。発泡剤にはブタン、プロパン等を用いることができる。
【0019】
本発明において、吸音材からなる層を構成する吸音材に特に制限はなく、自動車の分野で一般に使用されているものを適宜用いることができる。具体的には、フェルト(例えば、綿、化学繊維等の雑反毛をPETで固めたもの)、ポリウレタン発泡体、不織布、車両用部材のリサイクル材(ウレタン、綿、化学繊維等の粉砕品)をPET樹脂で固めたもの、解繊繊維や動植物製繊維材料、グラスウール、アスファルト発泡体、などを挙げることができる。なかでも、フェルト、ポリウレタン発泡体または不織布は好ましく、そのなかでも、高性能中綿素材からなる不織布(シンサレート(商標名))は好ましい。
【0020】
本発明による車両用フロアスペーサの全体形状は、フロアスペーサ本体が、平板部と、その裏面から複数本の突条が立設していることを条件に、任意であり、例えば、車両への設置時に単に水平部を形成する形状のもの、あるいは図13に示すように水平部の先端に乗員の足が乗る傾斜部を備える形状のもの、などが挙げられる。後者の場合には、水平部および傾斜部を構成する双方の平板部の裏面に複数本の突条が立設される。突条は、円柱形状あるいは角柱形状であってもよく、図13に例示するようなスリットをなす形状であってもよい。いずれの場合も、突条と突条の間には空間が形成されるので、その空間を埋めるようにして前記吸音材からなる層が形成される。
【0021】
本発明による各形態の車両用フロアスペーサにおいて、前記吸音材からなる層は、突条間に形成される空間の全体を埋めるようにして形成されてもよく、突条間に形成される空間の一部を埋めるようにして形成されてもよい。当該車両に求められる吸音性能と使用する吸音材の吸音性能を勘案して、いずれかを選択する。後者の場合に、平板部の裏面に突条間に形成される空間の一部が残るようにして吸音材からなる層を形成すると、その残存空間は吸音機能(消音機能)を果たし、吸音性能のさらなる向上を図ることができる。
【0022】
突条間に形成される空間に吸音材を取り付ける態様は任意であり、特に制限はない。接着剤を用いる態様、ステープルのような適宜の留め具を用いる態様などであってよい。しかし、取り付け時の作業効率を考慮すると、吸音材と突条との間の接触のみによって吸音材を所定の位置に保持して、吸音材からなる層を形成する態様は、最も好ましい。この態様は、吸音材を取り付けるときの作業効率が向上することに加え、当該車両用フロアスペーサを廃棄するとき等に、異種材料であるフロアスペーサ本体部分と吸音材とを容易に分別して回収できる利点ももたらされる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、所要の圧縮強度と軽量化を満足しながら、さらに吸音性と室内の静音性を同時に満足できる発泡樹脂成形体からなる車両用フロアスペーサが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明による車両用フロアスペーサを実施の形態に基づき説明する。図1〜図6は第1形態の車両用フロアスペーサAを説明する図であり、図7〜図10は第2形態の車両用フロアスペーサBを説明する図であり、図11と図12は第3形態の車両用フロアスペーサCを説明する図である。
【0025】
本発明による各形態の車両用フロアスペーサA,B,Cは、基本的構成として、フロアスペーサ本体10と吸音材20とを備える。フロアスペーサ本体10は、例えばスチレン改質ポリエチレン系樹脂の予備発泡粒子を型内発泡成形して得られる発泡樹脂成形体であり、吸音材20は、例えばフェルト等である。
【0026】
図1〜図4に示す第1形態の車両用フロアスペーサAの第1の態様A1において、フロアスペーサ本体10は、水平部11aと該水平部11aの先端に位置する傾斜部11bとで構成される。前記水平部11aと傾斜部11bとは、共に、平板部12a,12bと該平板部12a,12bの裏面側に一体成形された複数の突条13a,13bとを備える。図示の例で、平板部12a側の突条13aは16個の円筒体であり、平板部12b側の突条13bは4個の長方体として示してあるが、この個数や形状は任意であり、図示のものに限定されるものではない。
【0027】
前記平板部12a,12bにおける前記突条13a,13bが形成されていない領域には、適数の有底孔15が形成され、それら有底孔15の底部16は、図3に示すように平板部12a,12bのほぼ中間位置、すなわち、より室内側に近づいた位置に形成されている。図示しないが、有底孔15の底部16は、平板部12a,12bの底面、すなわちフロアスペーサ本体10のフロアフレームに最も近接した位置に形成されていてもよい。また、図示の例では、有底孔15は平板部12a,12bの双方に形成されているが、いずれかを省略することもできる。また、有底孔15の個数や大きさは任意である。
【0028】
車両用フロアスペーサA1は、図示しないフロアフレームに存在する凹溝内に収容設置される。その際に、フロアスペーサ本体10の前記水平部11aは主として嵩上げ材として機能してフロア面が平坦面となるのを確保する。傾斜部11bは運転時の乗員の足が置かれる場所であり、乗員の下肢部衝撃吸収パッドとして機能する。
【0029】
車両用フロアスペーサA1において、それが車内に配置されたときに水平部11aに係る上載荷重を考慮して平板部12aに対する突条13aの総面積が設定され、また、衝突時等に生じる衝撃荷重を効果的に吸収できるように傾斜部12bに対する突条13bの総面積が設定される。なお、この設計思想は、前記特許文献1に記載のように既に知られており、その設計思想に基づき突条13a、13bを形成すると、平板部12a,12bの裏面側において、突条と突条との間には空間14a,14bが形成される。
【0030】
なお、水平部11aと傾斜部11bは同じ発泡倍率であってもよいが、傾斜部11bは大きな衝撃荷重を受けることから、それを効果的に吸収できるように異なった発泡倍率として成形してもよい。その場合、傾斜部11b用の予備発泡粒子として、水平部11a用の予備発泡粒子に比して低倍率にて予備発泡させた粒子を用い、成形キャビティ内における水平部11aと傾斜部11bとの境界付近には、双方の粒子が混ざり合わないように予め隔壁を設けておき、区画された各キャビティ内にそれぞれの予備発泡粒子を同時充填し、充填後にキャビティ内から隔壁を速やかに除去して、型内発泡成形することにより、水平部11aと傾斜部11bとで発泡倍率の異なるフロアスペーサ本体10を成形することができる。
【0031】
車両用フロアスペーサA1において、フロアスペーサ本体10の前記突条13a、13bの間の空間14a,14bには、例えば、フェルト、ポリウレタン発泡体または不織布のような吸音材20が埋め込まれ、吸音材からなる層が形成される。図1〜図4に示す車両用フロアスペーサA1では、吸音材20の厚さは、水平部11aにおいては突条13aの高さとほぼ同じであり、水平部11bでは突条13bの高さとほぼ同じである。
【0032】
吸音材20の水平部11aに対応する領域21aには、突条13aに対応する箇所に突条13aの直径よりもやや小さい直径の貫通孔22が形成されており、図4に示すように、フロアスペーサ本体10の裏面から吸音材20を圧入することにより、吸音材20の前記領域21aは、前記空間14aのすべてを埋めるようにして入り込み、吸音材からなる層を形成する。吸音材20は、吸音材20と突条13aとの間の接触でもってその位置に保持される。
【0033】
吸音材20の傾斜部11bに対応する領域21bは、前記領域21aと一部において連続しており、かつ、傾斜部11bの突条13bに対応する箇所には、突条13aの横幅よりもやや狭い幅の切り欠き23が形成されている。領域21bを突条13bの間に圧入することにより、前記領域21bは前記空間14bの埋めるようにして入り込み、吸音材からなる層を形成する。ここでも、吸音材20は、吸音材20と突条13bの間の接触のみでもってその位置に保持される。なお、領域21bの両側に位置する部分21c、21cは必要な場合には補助的に接着剤を用いて取り付けるようにしてもよい。
【0034】
このようにしてフロアスペーサ本体10に吸音材20を取り付けた後の状態が図1〜図3に示される。図示のように、吸音材20はすべて突条間の空間内に収容され、車両用フロアスペーサA1の裏面には、フロアスペーサ本体10の突条13a,13bの下端部が露出している。車両用フロアスペーサA1を車両のフロアフレームに存在する凹溝内に収容設置したときに、突条13a,13bの露出した下端面がフロアフレームに直接接して、そこが上載荷重の支持面となる。
【0035】
上記のようであり、車両用フロアスペーサA1は、フロアスペーサ本体10の裏面には複数本の突条13a,13bが所要の接地面積となるように立設した構成であり、軽量化を満足しながら、圧縮強度を同時に満足することができる。さらに、突条間に形成される空間14a,14bには該空間を埋めるようにして吸音材20からなる層が形成されており、それが吸音壁として機能するので、室内に対する高い吸音性能も確保される。特に、上記第1の態様である車両用フロアスペーサA1を含むすべての第1形態の車両用フロアスペーサAでは、フロアスペーサ本体10に多数の有底孔15を形成したことにより、室内側の騒音を有底孔15の壁面で乱反射させ、かつ該騒音の音圧を有底孔15の底部16の振動により吸収させることができるので、室内音に対する吸音性能も向上する。
【0036】
なお、図1〜図4に示した第1の態様である車両用フロアスペーサA1では、傾斜部11bの裏面にも吸音材20を配置するようにしたが、求められる吸音性能レベルによっては、この領域の吸音材20を省略してもよい。前記したように有底孔15についても同様に省略してもよい。さらに、吸音材20の領域21bの両側に位置する部分21c、21cの部分のみを省略してもよい。いずれであっても、上記車両用フロアスペーサA1を廃棄するとき等に、異種材料であるフロアスペーサ本体10と吸音材20とを容易に分別して回収することができる。
【0037】
フロアスペーサ本体10は、水平部11aのみのものであってもよく、また傾斜部11bのみのものであってもよい。全体が矩形状であるのも一つの例示であり、フロアフレームに形成される凹溝等の形状に応じて、適宜の形状のフロアスペーサ本体10が用いられる。吸音材20と接触する力を大きくするために、突条13a,13bの周面に凹凸を形成してもよい。傾斜部11bに形成する突条13bは、前記したように、突条13aのように円筒形状であってもよい。また、突条13a,13bの水平断面形状は、矩形状や長円状でもよい。
【0038】
図5は、第1形態の車両用フロアスペーサAの他の態様A2〜A4を示す、図3に相当する図である。ここでは、吸音材20からなる層が、突条13a,13b間に形成される空間14a,14bの全部でなく、一部を埋めるようにして形成されている点で、図1〜図4に示した第1の態様の車両用フロアスペーサA1と相違している。他の部材は第1の態様の車両用フロアスペーサA1と同じであり、同じ符号を付している。この形態の車両用フロアスペーサは、吸音材20が高い吸音性能を有する場合等に、有効に用いることができる。
【0039】
図5aに示す第2の態様の車両用フロアスペーサA2では、厚さの薄い吸音材20aが突条13a,13bの下端近傍のみに取り付けてあり、フロアスペーサ本体10の平板部12a,12bと吸音材20aとの間には、空間14cが残存する。この空間14cは吸音室として機能する。図5bに示す第3の態様の車両用フロアスペーサA3では、厚さの薄い吸音材20aがフロアスペーサ本体10の平板部12a,12bの裏面に接するようにして位置しており、図5cに示す第4の態様の車両用フロアスペーサA4では、厚さの薄い吸音材20aが突条13a,13bの中間の高さに位置している。
【0040】
図6は、第1形態の車両用フロアスペーサAの第5の態様A5を示している。ここでは、フロアスペーサ本体10bとして、傾斜部11bの平板部12bの裏面に形成する突条が円筒状の突条13cであるフロアスペーサ本体10bを用いると共に、図6bに示すように、吸音材20bとして、それぞれの突条13a,13cに対応する箇所に十文字の切り込み線24を形成したものを用いている。なお、図では、水平部11aに対応する吸音材20b1と傾斜部11bに対応する吸音材20b2とを分離したものとして示したが、連続していても差し支えない。
【0041】
切り込み線24の位置を突条13a,13cの位置に合わせて、吸音材20bを圧入することにより、図6aに示す形状の車両用フロアスペーサA4が完成する。この形態では突条13a,13cと吸音材20bとの間の摩擦力は一層大きくなり、吸音材20bの埋込態様は一層安定する。
【0042】
図7〜図10は、本発明による第2形態の車両用フロアスペーサBの2つの態様を示している。第2形態の車両用フロアスペーサBは、上記した第1形態の車両用フロアスペーサAと比較して、(1)フロアスペーサ本体10が有底孔15を有しないこと、(2)少なくとも突条13a,13bの底面を覆うようにして、該突条を構成する発泡樹脂材料よりもフロアフレームに対する摩擦係数の小さい材料からなるシート17が貼着されていること、の2点において相違しており、他の構成は同じである。従って、図7〜図10において、第1形態の車両用フロアスペーサAと共通する部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0043】
図7と図8は第2形態の車両用フロアスペーサBの第1の態様B1を示しており、それぞれ前記した図2と図3に対応する。前記したように、フロアスペーサ本体10の平板部12a,12bには貫通孔が形成されてなく、平板部12a,12bの裏面側に一体成形された複数の突条13a,13bのそれぞれの底面には、車両のフロアフレームに対する摩擦係数が、該突条を構成する発泡樹脂材料よりも小さい材料からなるシート17が貼り付けてある。シート17には、例えば低摩擦材料であるクラフトテープが用いられるが、他に、布テープ、クロステープ、セロハンテープ、アルミテープ、ポリエチレンテープ、和紙テープ、ビニールテープのような材料も用いることもできる。
【0044】
第1の態様の車両用フロアスペーサB1は、「有底孔15」に起因する作用効果を除いて、前記第1形態の車両用フロアスペーサAと同じ作用効果を奏することができる。さらに、第1の態様の車両用フロアスペーサB1は、突条13a,13bの底面に前記シート17を貼り付けていることにより、車両用フロアスペーサB1を車内に設置したときに、突条13a,13bの底面がフロアフレームに接して摺動するときに発生する恐れのある軋み音や摩擦音などの音鳴りを確実に抑制することができる。そのために、室内での高い静音性を一層確実に確保することができる。シート17は、突条13a,13bのすべての底面に貼り付けることが望ましいが、一部の突条の底面にのみ貼り付けてもよい。
【0045】
図9と図10は第2形態の車両用フロアスペーサBの第2の態様B2を示しており、それぞれ前記した図2と図3に対応する。ここでは、複数個の突条13aおよび複数個の突条13bの底面を連続的に繋ぐようにして、帯状のテープ17aがそれぞれ貼り付けられている。この態様では、前記した音鳴りを抑制する効果に加えて、突条13a,13bの間に形成される空間を埋めるようにして配置される吸音材20からなる層が、搬送時や車両への組み付け時に、フロアスペーサ本体10から落下するような事態が生じるのを効果的に阻止することができる利点がある。
【0046】
図11と図12は、本発明による第3形態の車両用フロアスペーサCの2つの態様を示す前記図7および図9に対応する図である。第3形態の車両用フロアスペーサCは、前記第1形態の車両用フロアスペーサAにおける平板部12a,12bの裏面側に一体成形された複数の突条13a,13bのそれぞれの底面に、車両のフロアフレームに対する摩擦係数が、該突条を構成する発泡樹脂材料よりも小さい材料からなるシート17が貼り付けたものであり、図11に示す第1の態様の車両用フロアスペーサC1では、突条13a,13bの底面の部分にのみシート17を貼り付けており、図12に示す第2の態様の車両用フロアスペーサC2では、複数個の突条13aおよび複数個の突条13bの底面を連続的に繋ぐようにして、帯状のテープ17aをそれぞれ貼り付けている。上記第3形態の車両用フロアスペーサCは、前記有底孔15の持つ作用効果と、前記シート17が持つ作用効果の双方を享受することができる利点がある。
【0047】
図示しないが、第2形態の車両用フロアスペーサBおよび第3形態の車両用フロアスペーサCのいずれの態様においても、図5に示した厚さの薄い吸音材20aを用いて車両用フロアスペーサとすることは、もちろん可能である。また、図6に示した形態の吸音材20b1,20b2を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による第1形態の車両用フロアスペーサAの第1の態様A1を正面側から見た斜視図。
【図2】図1に示す車両用フロアスペーサを背面側から見た斜視図。
【図3】図2のa−a線による断面図。
【図4】図1に示す車両用フロアスペーサの組み立て状態を説明するための図。
【図5】図5a〜図5cは第1形態の車両用フロアスペーサAの第2〜第4の態様A2,A3,A4を示す、図3に相当する図。
【図6】図6aは第1形態の車両用フロアスペーサAの第5の態様A5を示す側面図であり、図6bはそこで用いる吸音材を示す平面図。
【図7】本発明による第2形態の車両用フロアスペーサBの第1の態様B1を背面側から見た斜視図。
【図8】図7のa−a線による断面図。
【図9】本発明による第2形態の車両用フロアスペーサBの第2の態様B2を背面側から見た斜視図。
【図10】図9のa−a線による断面図。
【図11】本発明による第3形態の車両用フロアスペーサCの第1の態様C1を背面側から見た斜視図。
【図12】本発明による第3形態の車両用フロアスペーサCの第2の態様C2を背面側から見た斜視図。
【図13】従来の車両用フロアスペーサの一例を示す図。
【符号の説明】
【0049】
A,B,C…車両用フロアスペーサ、10…フロアスペーサ本体、11a…水平部、11b…傾斜部、12a,12b…平板部、13a,13b…突条、14a,14b…突条と突条との間の空間、15…貫通孔、16…貫通孔の底部、17、17a…突条を構成する発泡樹脂材料よりもフロアフレームに対する摩擦係数の小さい材料からなるシート、20…吸音材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアフレームに設置される車両用フロアスペーサであって、
室内側となる平板部とフロアフレーム側である前記平板部の裏面から立設した複数本の突条とを有する発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体と、前記突条の間に形成される空間を埋めるようにして配置される吸音材からなる層とを少なくとも備え、かつ前記フロアスペーサ本体における前記平板部には複数の有底孔が形成されていることを特徴とする車両用フロアスペーサ。
【請求項2】
車両のフロアフレームに設置される車両用フロアスペーサであって、
室内側となる平板部とフロアフレーム側である前記平板部の裏面から立設した複数本の突条とを有する発泡樹脂成形体からなるフロアスペーサ本体と、前記突条の間に形成される空間を埋めるようにして配置される吸音材からなる層とを少なくとも備え、かつ少なくとも前記突条の底面を覆うようにして該突条を構成する発泡樹脂材料よりもフロアフレームに対する摩擦係数の小さい材料からなるシートが貼着されていることを特徴とする車両用フロアスペーサ。
【請求項3】
前記シートは少なくとも2本以上の突条の底面を連続的に繋ぐようにして貼着されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用フロアスペーサ。
【請求項4】
前記フロアスペーサ本体における前記平板部には複数の有底孔が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用フロアスペーサ。
【請求項5】
吸音材からなる層は、突条間に形成される空間の全体を埋めるようにして形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用フロアスペーサ。
【請求項6】
吸音材が、フェルト、ポリウレタン発泡体または不織布のいずれかであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用フロアスペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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