車両用フード構造
【課題】 フードの形状や強度を維持することができるようにするとともに、フードの軽量化を図ることができる車両用フード構造を提供する。
【解決手段】車両用フード構造は、車体の外側面として配設されるフードパネル1を備えている。フードパネル1は、フード本体11を有しており、フード本体11における内側面の端末間にワイヤーケーブル2が張設されている。このワイヤーケーブル2を緊張させてフード本体11を湾曲させることによって、フードパネル1に引張曲面が形成されている。
【解決手段】車両用フード構造は、車体の外側面として配設されるフードパネル1を備えている。フードパネル1は、フード本体11を有しており、フード本体11における内側面の端末間にワイヤーケーブル2が張設されている。このワイヤーケーブル2を緊張させてフード本体11を湾曲させることによって、フードパネル1に引張曲面が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フード構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両におけるエンジンルームを覆うボンネットなどのフードが設けられたフード構造として、従来、アウタパネルにインナパネルが取り付けられた車両用フード構造が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この車両用フード構造では、アウタパネルにインナパネルを取り付けてフードを形成することにより、フードに物体が衝突したときの衝突吸収性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4076487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示された車両用フード構造では、フードがアウタパネルとインナパネルとを有していることから、重量が大きくなったり、生産過程が多工程となったりすることが懸念される。そこで、インナパネルを用いることなく、アウタパネルによってフードを形成することが考えられる。インナパネルを省くことにより、軽量化や生産性の向上を図ることができる。
【0005】
ところが、インナパネルを省いたフードとすると、フードの形状や強度を維持する部材がなくなることから、フードの形状や強度の維持が困難となるという問題があった。フードの形状や強度を維持するためには、フードを形成するアウタパネルの板厚を大きくするなどして耐性を高いものとすることが考えられるが、アウタパネルの板厚を大きくした場合、結局フードの軽量化を図ることができなくなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、フードの形状や強度を維持することができるようにするとともに、フードの軽量化を図ることができる車両用フード構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る車両用フード構造は、車体の外側面として配設されるフードパネルを備える車両用フード構造であって、フードパネルにおける車体の内側面の端末間にワイヤーを張設し、ワイヤーを緊張させてフードを湾曲させることによってフードパネルに引張曲面が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る車両用フード構造は、フードパネルにおける車体の内側面の端末間にワイヤーを張設し、ワイヤーを緊張させてフードを湾曲させることによってフードパネルに引張曲面が形成されている。このため、ワイヤーの張力でフードが湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネルによってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーを用いていることから、フードの軽量化に寄与することができる。
【0009】
ここで、ワイヤーの張力を調整する張力調整機構が設けられている態様とすることができる。
【0010】
このように、ワイヤーの張力を調整する張力調整機構が設けられていることにより、ワイヤーの張力を容易に調整することができる。ここで、フードの形状や強度はワイヤーの張力によって調整することができるので、張力調整機構を用いることにより、フードの形状や強度を容易に調整することができる。
【0011】
また、張力調整機構は、ワイヤーの延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材と、フードパネルに設けられ、スリット部材が係合される係合部と、を備える態様とすることができる。
【0012】
このように、ワイヤーの延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材を用いることにより、係合部に係合するスリットを複数のスリットの中から選択するだけでワイヤーの長さが調整されることとなる。したがって、ワイヤーの長さ調整を容易に行うことができる。
【0013】
さらに、張力調整機構は、ワイヤーの延在方向を中心とした螺旋状の溝が形成された螺旋状スリット部材と、フードパネルに設けられ、螺旋状溝部材が係合される係合部と、を備える態様とすることができる。
【0014】
このように、ワイヤーの延在方向を中心とした螺旋状の溝が形成された螺旋状溝部材を用いることにより、螺旋状溝部材のねじ込み量を変えるだけでワイヤーの長さが調整されることとなる。したがって、ワイヤーの長さ調整を容易に行うことができる。
【0015】
また、フードパネルは、フードパネル本体と、フードパネル本体の側部に形成され、フードパネルの端末となるフランジ部とを備えており、フランジ部の肉厚は、フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている態様とすることができる。
【0016】
このようにフランジ部の肉厚は、フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている。このため、ワイヤーを張設する際の剛性を確保することができ、フードの曲面形状を精度よく調整することができる。
【0017】
さらに、フランジ部は、フードパネル本体から延在した部分を折り曲げることによってフードパネル本体の肉厚よりも厚くされている態様とすることができる。
【0018】
このように、フランジ部は、フードパネル本体から延在した部分を折り曲げることによってフードパネル本体の肉厚よりも厚くされていることにより、肉厚のフランジ部を容易に形成することができる。
【0019】
また、フードパネル本体から延在した部分に補強部材を取り付けることによってフードパネル本体の肉厚よりも厚くされている態様とすることができる。
【0020】
このように、フランジ部に、補強部材を取り付けることによってフードパネル本体の肉厚よりも厚くされていることにより、容易にフランジを補強することができる。
【0021】
また、フードパネルは、フードパネル本体と、フードパネル本体の側部に形成され、フードパネルの端末となるフランジ部とを備えており、ランジ部にビードが形成されている態様とすることができる。
【0022】
このように、フランジ部にビードが形成されていることにより、容易にフランジを補強することができる。
【0023】
さらに、ワイヤーを切断するワイヤー切断手段を備え、フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となったときに、ワイヤー切断手段によってワイヤーを切断する態様とすることができる。
【0024】
フードパネルはワイヤーの張力によってフードパネルが外側へ膨らむように湾曲形成されている。ここで、フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となったときに、ワイヤー切断手段によってワイヤーを切断することにより、フードパネルの湾曲面を容易に後退させることができ、衝撃吸収性能を高めることができる。ここで、本発明における「フードパネルに掛かる外側荷重」とは、実際のフードパネルに掛かった外側荷重のほか、たとえば、障害物と車両との相対関係に基づいて算出され、フードパネルに掛かると想定される外側荷重も含まれる。
【0025】
あるいは、フードパネルに複数のワイヤーが張設されており、フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となるごとに、複数のワイヤーを順次切断する態様とすることができる。
【0026】
このように、フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となるごとに、複数のワイヤーを順次切断することにより、外側荷重の大きさに応じてフードパネルを後退させることができる。したがって、その分衝撃吸収性能を高めることができる。
【0027】
また、ワイヤー切断手段は、ワイヤーを挟んだフードパネルの反対側に配置され、ワイヤーの張設方向に交差し、ワイヤーに面する方向を向いて配設された突起部を備える態様とすることができる。
【0028】
このように、ワイヤー切断手段は、ワイヤーに面する方向を向いて配設された突起部であることにより、外側荷重が加わって後退した部位におけるワイヤーが切断されることとなる。したがって、フードパネルの外側面の荷重が掛かった位置におけるワイヤーを切断することができ、衝撃吸収性能を高めることができる。
【0029】
さらに、フードパネルに掛かる外側荷重を取得する外側荷重取得手段を備え、外側荷重取得手段で取得された外側荷重が所定のしきい値を超えたときに、ワイヤーを切断する態様とすることができる。
【0030】
このように、外側荷重取得手段によって外側荷重を取得することにより、たとえば衝突検出のために別途設けられるプリクラッシュセンサを外側荷重取得手段として用いることができる。
【0031】
また、ワイヤーに絡めてフードパネルの端末に取り付けられ、ワイヤーの張力を調整する調整ワイヤーを備え、調整ワイヤーの引張調整を行う引張調整手段を備える態様とすることができる。
【0032】
このように、ワイヤーに絡めてフードパネルの端末に取り付けられ、ワイヤーの張力を調整する調整ワイヤーが設けられていることにより、調整ワイヤーの長さ調整をするだけでワイヤーの張力を調整することができる。
【0033】
さらに、フードパネルにおける車体の前後方向端末間を連結するプリクラッシュワイヤーを備え、車体と障害物との衝突が予測された際に、プリクラッシュワイヤーを牽引するプリクラッシュワイヤー牽引手段を備える態様とすることができる。
【0034】
車体と障害物との衝突が予測された際に、プリクラッシュワイヤーが牽引されることにより、フードパネルが外方向に突出するように屈曲し、フードパネルの縁部がフードパネルの近傍にある部材、たとえばフードパネルがエンジンフードである場合にフロントウィンドウから離れる方向に移動する。このため、車体に衝突が生じた際におけるフロントウィンドウに対するフードパネルの衝突を防止することができる。
【0035】
また、プリクラッシュワイヤーの張設方向に交差する方向に移動するアクチュエータと、アクチュエータを移動させる駆動手段と、を備え、車体と障害物との衝突が予測された際に、駆動手段によってアクチュエータを移動させる態様とすることができる。
【0036】
このように、プリクラッシュワイヤーの張設方向に交差する方向に移動するアクチュエータを備えることにより、車体に衝突が生じた場合などに即座にプリクラッシュワイヤーを緊張させることができる。したがって、フロントウィンドウに対するフードパネルの接触を好適に防止することができる。
【0037】
あるいは、ワイヤーに大重量部を形成した態様とすることができる。
【0038】
このように、ワイヤーに大重量部が形成されていることにより、車体の振動によるワイヤーの共振を抑制することができる。そのため、ワイヤーの振動に伴うフードの形状変化を軽減することができる。
【0039】
また、大重量部が錘を取り付けることによって形成されており、錘の形状が、ワイヤーの振動方向に応じて設定されている態様とすることができる。
【0040】
このように、錘の形状が、ワイヤーの振動方向に応じて設定されていることにより、種々の態様に応じた振動の抑制に寄与することができる。錘の形状としては、たとえば断面形状が円形、楕円形、方形、長方形、三角形などとなるようにすることができる。
【0041】
さらに、大重量部は、ワイヤーを太径として形成されている態様とすることができる。
【0042】
このように、ワイヤーを太径として局部的に大重量部を形成することにより、ワイヤー自体が制振性を有してフードの形状変化を抑制することができる。
【0043】
また、ワイヤーは、大重量部が金属で形成され、大重量部以外の部分が軽量素材で形成されている態様とすることができる。
【0044】
このように、樹脂等の強度のある軽量素材でワイヤーを構成するとともに、金属材料を大重量部として用いることができる。
【0045】
また、上記課題を解決した本発明に係る車両用フード構造は、車体の外側面として配設されるフードパネルを備える車両用フード構造であって、フードパネルにおける車体の内側面の端末間に牽引材を張設し、牽引材を緊張させてフードを湾曲させることによってフードパネルに引張曲面が形成されていることを特徴とする。
【0046】
本発明に係る車両用フード構造は、フードパネルにおける車体の内側面の端末間に牽引材を張設してフードを湾曲させることによってフードパネルに引張曲面が形成されている。このように牽引剤が調節されることによってワイヤーの張力でフードが湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネルによってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなく牽引材を用いていることから、フードの軽量化に寄与することができる。
【0047】
ここで、張力調整機構は、牽引材の延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材と、フードパネルに設けられ、スリット部材が係合される係合部と、を備える態様とすることができる。
【0048】
このように、牽引材の延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材を用いることにより、係合部に係合するスリットを複数のスリットの中から選択するだけで牽引材の長さが調整されることとなる。したがって、牽引材の長さ調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明に係る車両用フード構造によれば、フードの形状および強度を維持することができるようにするとともに、フードの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態に係る車両用フード構造の斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る車両用フード構造の正断面図である。
【図3】パネル本体とワイヤーケーブルの接合位置の拡大斜視図である。
【図4】第2の実施形態に係る車両用フード構造の正断面図である。
【図5】(a)はフードパネルに対するワイヤーケーブルの取付部の拡大分解斜視図、(b)フードパネルに対するワイヤーケーブルの取付部の拡大斜視図。
【図6】第3の実施形態に係る車両用フード構造の斜視図である。
【図7】張力調整部材の正断面図である。
【図8】第4の実施形態に係る車両用フード構造の要部正断面図である。
【図9】第5の実施形態に係る車両用フード構造の要部拡大分解斜視図である。
【図10】第5の実施形態に係る車両用フード構造の正断面図である。
【図11】第6の実施形態に係る車両用フード構造の要部拡大分解斜視図である。
【図12】第7の実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。
【図13】第8の実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。
【図14】第9の実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。
【図15】第9の実施形態に係る車両用フードパネルの分解斜視図である。
【図16】第10実施形態に係る車両用フードパネルの斜視図である。
【図17】図16のI−I線断面図である。
【図18】第11の実施形態に係る車両用フード構造を裏側から見た裏面図である。
【図19】図18のII−II線断面図である。
【図20】(a)は、フードパネルに物体が衝突した状態を示す模式図、(b)はその衝突が起きた際にワイヤーケーブルが切断しない場合の変形量に対する荷重の変化を示すグラフである。
【図21】(a)は、フードパネルに物体が衝突した状態を示す模式図、(b)はその衝突が起きた際に複数のワイヤーケーブルが順次切断する場合の変形量に対する荷重の変化を示すグラフである。
【図22】第12の実施形態に係る車両用フード構造の正断面図である。
【図23】第13の実施形態に係る車両用フード構造の模式的斜視図である。
【図24】第13の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は従ワイヤーケーブルの長さを短くする前の状態を示す模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さを短くした後の状態を示す模式的斜視図である。
【図25】複数のワイヤーケーブルのそれぞれに長さ調整機構を設けた車両用フード構造の模式的斜視図である。
【図26】第14の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【図27】第15の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、第3ワイヤーケーブルの長さ調整前の概略斜視図、(b)は第3ワイヤーケーブルの長さ調整後の概略斜視図である。
【図28】第16の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【図29】結び目が形成されていない主ワイヤーケーブルを備える車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【図30】第17の実施形態に係る車両用フード構造を備えた車両の一部切欠斜視図である。
【図31】第17の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)はモータを作動させる前の側断面図、(b)はモータを作動させた後の側断面図である。
【図32】第17の実施形態に係る車両用フード構造の衝突時の経時変化に沿った状態を示す図である。
【図33】第18の実施形態に係る車両用フード構造を裏側から見た状態を模式的に示す裏面図である。
【図34】図33のII−II線断面図である。
【図35】2自由度振動系モデルを示す図である。
【図36】2自由度振動系における振幅の経時変化を示すグラフである。
【図37】(a)〜(f)は、ワイヤーケーブルの断面形状を示す断面図である。
【図38】(a)〜(d)は、ワイヤーケーブルの断面形状を示す断面図である。
【図39】(a)〜(c)は、ワイヤーケーブルの側面形状を示す側面図である。
【図40】他のワイヤーケーブルの例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0052】
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係る車両用フード構造の斜視図、図2は車両用フード構造の正断面図である。
【0053】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、本発明のワイヤーまたは牽引材を形成する。フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、フランジ12が形成されている。このフランジ12は、パネル本体11を折り返して形成されている。このため、パネル本体11とフランジ12とは一体的に形成されている。
【0054】
また、フランジ12は、車体に取り付けられた後、フードパネル1が閉じた状態で略水平に配置される水平面を備える態様とされている。パネル本体11の両側端末にそれぞれ設けられたフランジ12には、図3に示すように、ワイヤーケーブル2を取り付けるための係合孔13がそれぞれ形成されている。係合孔13は、パネル本体11の両側方における各フランジ12において、フードパネル1が取り付けられる車両の前後方向に離間して形成されている。このため、2本のワイヤーケーブル2は、それぞれ車両の幅方向に沿って張設されるとともに、両ワイヤーケーブル2は、車両の前後方向に互いに離間して配置される。なお、図1,3中、フードパネル1が車両に取り付けられた際の車両の前後方向をX方向、車両の左右方向をY方向、上下方向をZ方向として示している。
【0055】
この係合孔13は、フランジ12を貫通した状態で形成されており、大径部13Aおよび幅狭部13Bを備えている。大径部13Aと幅狭部13Bとは連続して形成されている。このうち、大径部13Aは、略円形状とされており、幅狭部13Bはスリット状に形成されている。幅狭部13Bにおける幅は、大径部13Aの径よりも小さくされており、幅狭部13Bの長手方向は、フードパネル1が取り付けられる車両の前後方向に沿う方向に形成されている。
【0056】
さらに、ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と、ケーブル本体21の両端部にそれぞれ取り付けられた係合球22を備えている。ケーブル本体21は、鋼線などの金属線や樹脂製の樹脂線などによって形成されている。また、係合球22は、ケーブル本体21に両端部に対して、それぞれ強固に固定されている。
【0057】
係合球22は、たとえば鉛球によって構成されており、その径が係合孔13における大径部13Aの径よりも小さく、幅狭部13Bにおける幅よりも大きくされている。ワイヤーケーブル2における係合球22がフードパネル1における係合孔13に係合されることによって、ワイヤーケーブル2がフードパネル1に張設される。
【0058】
ワイヤーケーブル2をフードパネル1に取り付ける前の状態では、ケーブル本体21の長さは、パネル本体11の幅方向の長さよりも短くされている。また、フードパネル1にワイヤーケーブル2が取り付けられた際には、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21は、フードパネル1におけるパネル本体11の両側端末間に緊張した状態で張設されている。このため、フードパネル1におけるパネル本体11は、ワイヤーケーブル2が張設される前よりも外側に反り上がり、湾曲した状態となっている。
【0059】
次に、フードパネル1に対するワイヤーケーブル2の取り付け手順について説明する。
フードパネル1にワイヤーケーブル2を取り付ける際には、パネル本体11の両側端末に設けられたフランジ12のうちの一方における係合孔13の大径部13Aにワイヤーケーブル2における係合球22を上側から挿入する。次に、係合球22を後方に移動させ、ケーブル本体21の端部を係合孔13の大径部13Aから幅狭部13Bに移動させる。こうして、係合孔13に対してワイヤーケーブル2の一端部が係合される。
【0060】
続いて、ワイヤーケーブル2の一端部が係合孔13に係合されたら、ワイヤーケーブル2を他端側から引張して、フードパネル1の他端側に設けられたフランジ12に形成された係合孔13の大径部13Aにワイヤーケーブル2の他端側に設けられた係合球22を挿入する。このとき、ワイヤーケーブル2が引張されることにより、ワイヤーケーブル2の張力によってフードパネル1のパネル本体11が湾曲する。
【0061】
それから、係合孔13の大径部13Aに挿入された係合球22を幅狭部13Bの方向に移動させ、ワイヤーケーブル2をフードパネル1に取り付ける。ここで、ワイヤーケーブル2を取り付けると、パネル本体11が湾曲し、パネル本体11の湾曲に対する反力によってワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21が緊張させられる。こうして、ワイヤーケーブル2が張設される。
【0062】
続いて、本実施形態に係る車両用フード構造の作用について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造では、フードパネル1における車体の内側面の端末間にワイヤーケーブル2を張設し、ワイヤーケーブル2を緊張させてフードパネル1のパネル本体11を湾曲させてフードパネルに引張曲面が形成されている。このため、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0063】
このとき、インナパネルを用いる必要がないことから、インナパネルを設ける際の作業等を不要とすることができる。具体的には、外周接着剤やその塗布装置を不要とすることができる。さらには、外周ヘミング型なども不要とすることができる。その結果として、工数やコストの低減に寄与することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る車両フード構造では、フードパネル1のフランジ12に係合孔13を形成し、この係合孔13にワイヤーケーブル2の係合球22を挿入してワイヤーケーブル2をフードパネル1の両側端末に取り付けている。このため、溶接などを行うことなく、ワイヤーケーブル2をフードパネル1に対して容易に張設することができる。
【0065】
さらには、フードパネル1は、ワイヤーケーブル2の張力によってパネル本体11が湾曲させられ、その湾曲形状が保たれている。このため、ワイヤーケーブル2の張力を調整するだけで、パネル本体11の湾曲形状を容易に調整することができる。また、係合孔13には大径部13Aのほかに幅狭部13Bが形成されている。この幅狭部13Bが形成されていることにより、ワイヤーケーブル2における係合球22が係合孔13から抜けてしまうことを防止することができる。
【0066】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第1の実施形態と比較して、ワイヤーケーブルの取り付け態様が主に異なっている。図4は、本実施形態に係る車両用フード構造の正断面図、図5は(a)はフードパネルに対するワイヤーケーブルの取付部の拡大分解斜視図、(b)フードパネルに対するワイヤーケーブルの取付部の拡大斜視図である。
【0067】
図4に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設されたワイヤーケーブル2を備えている。フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ14が形成されている。このL型フランジ14は、パネル本体11を2段階で折り返して形成されている。このため、パネル本体11とL型フランジ14とは一体的に形成されている。
【0068】
このL型フランジ14は、車体に取り付けられた際、フードパネル1が閉じた状態で水平に配置される水平面を備える水平部14Aと、垂直に配置される垂直面を備える鉛直部14Bとを有する態様とされている。L型フランジ14における鉛直部14Bには、図5(a)に示すように、係合部15が形成されている。
【0069】
係合部15は、鉛直部14Bの立ち上がり方向(垂直方向)に沿って切り欠かれた形状を有している。この係合部15は、鉛直部14Bの下端部が向けて切り欠かれて形成されており、上方に向けて切り欠かれた直線部15Aと、その上端部に形成された係止孔15Bとを備えている。
【0070】
また、ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21を備えており、ケーブル本体21の両端部には、それぞれ係合部材23が取り付けられている。係合部材23は、円筒部23Aと、円筒部23Aの高さ方向略中央位置に形成されたくびれ部23Bとを備えている。円筒部23Aの先端には、ケーブル本体21の端部が固定されている。また、くびれ部23Bの径は、円筒部23Aの径よりも短くされている。
【0071】
さらに、係合部15における係止孔15Bの径は、直線部15Aの幅よりも大きくされている。また、直線部15Aの幅は、係合部材23におけるくびれ部23Bの幅よりも小さくされている。さらに、係止孔15Bの径は、くびれ部23Bの幅よりも大きく、円筒部23Aの径よりも小さくされている。そして、図5(b)に示すように、係合部15に対してワイヤーケーブル2の一端部が係合されている。
【0072】
フードパネル1に対してワイヤーケーブル2を取り付ける際には、パネル本体11の両側端末に設けられたL型フランジ14のうちの一方における係合部15に、ワイヤーケーブル2における係合部材23を下側から挿入する。次に、係合部材23を上方に移動させる。こうして、係合部15に対してワイヤーケーブル2の一端部が係合される。
【0073】
その後は、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2を他端側から引張する。それから、フードパネル1の他端側に設けられたL型フランジ14に形成された係合部15にワイヤーケーブル2の他端側に設けられた係合部材23を挿入する。このとき、ワイヤーケーブル2が引張されることにより、ワイヤーケーブル2の張力によってフードパネル1のパネル本体11が湾曲する。
【0074】
それから、係合部15に挿入された係合部材23を上方に移動させ、ワイヤーケーブル2をフードパネル1に取り付ける。ここで、ワイヤーケーブル2を取り付けると、パネル本体11が湾曲し、このパネル本体11の湾曲に対する反力によってワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21が緊張させられる。こうして、ワイヤーケーブル2が張設される。
【0075】
本実施形態に係る車両フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。さらに、ワイヤーケーブル2の先端部には、係合部材23が取り付けられている。係合部材23は、円筒部23Aとくびれ部23Bを備えているので、ケーブル本体21との固定を容易に行うことができる。
【0076】
〔第3の実施形態〕
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第1の実施形態と比較して、ワイヤーケーブルに張力調整部材が設けられている点で主に異なっている。図6は、本実施形態に係る車両用フード構造の斜視図、図7は、張力調整部材の正断面図である。
【0077】
図6に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。フードパネル1は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0078】
また、フードパネル1に張設されるワイヤーケーブル2は、図3に示すケーブル本体21を備えており、ケーブル本体21の両端部にそれぞれ係合球22が固定されている。これらの点は、上記第1の実施形態と同様である。さらに、本実施形態では、ケーブル本体21の長さ方向途中位置に、張力調整部材30が設けられている。ケーブル本体21は、張力調整部材30が介在されることにより、2本のケーブル本体21A,21Bによって構成されている。
【0079】
張力調整部材30は、図7に示すように、ケーシング部材31およびインナ部材32を備えている。また、ケーシング部材31は、外形が円筒形状をなす中空の部材であり、左右の端面のうち、一方の面である左面は閉塞され、他方の面である右面は開放されている。ケーシング部材31の左面には第1ケーブル本体21Aの他端部が接合されている。第1ケーブル本体21Aの一端部は、フードパネル1の一方のフランジ12に形成された係合孔13に係合している。さらに、ケーシング部材31の内側には、雌ねじ部が形成されており、雌ねじ部はケーシング部材31の下側開放面に至るまで形成されている。
【0080】
一方、インナ部材32は、外形が円筒形状をなす部材であり、上下の端面のうち、一方の面である上面に第2ケーブル本体21Bの他端部が接合されている。第2ケーブル本体21Bの一端部は、フードパネル1の他方のフランジ12に形成された係合孔13に係合している。さらに、ケーシング部材31の外周面には、雄ねじ部が形成されており、雄ねじ部はインナ部材32の下面にいたるまで形成されている。
【0081】
ケーシング部材31に形成された雌ねじ部には、インナ部材32に形成された雄ねじ部がねじ込まれている。このため、ケーブル本体21は、第1ケーブル本体21Aと第2ケーブル本体21Bとが張力調整部材30によって接合されて形成されている。
【0082】
さらに、張力調整部材30では、ケーシング部材31の内側に雌ねじ部が形成され、インナ部材32の外側に雄ねじ部が形成され、雌ねじ部に雄ねじ部がねじ込まれることにより、ケーシング部材31とインナ部材32とが接合されている。このため、ケーシング部材31に対するインナ部材32のねじ込み量を調整することにより、ワイヤーケーブル2の長さを調整することができる構造となっている。
【0083】
続いて、本実施形態に係る車両用フード構造の作用について説明すると、本実施形態に係る車両フード構造は、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、ワイヤーケーブル2に張力調整部材30が設けられている。張力調整部材30では、ケーシング部材31に対してインナ部材32を相対的に回転させることにより、ケーシング部材31およびインナ部材32にそれぞれ接合されたワイヤーケーブル2間の距離を調整することができる。この結果、ワイヤーケーブル2の長さが調整され、ワイヤーケーブル2の張力が調整される。このように、ケーシング部材31に対してインナ部材32を相対的に回転させるだけ、ワイヤーケーブル2の張力を調整することができる。したがって、ワイヤーケーブル2の張力を非常に容易に調整することができる。
【0085】
〔第4の実施形態〕
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第3の実施形態と比較して、張力調整部材の構成が異なっている。図8に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造における張力調整部材30Aは、ケーシング部材31と、スタッドボルト33とを備えている。また、この態様では、ケーブル本体21は、1本の構成とされている。ケーシング部材31は、図7に示すものと同様のものであり、その上面にケーブル本体21の他端部が接合されている。
【0086】
また、スタッドボルト33は、第2の実施形態に係るフードパネル1におけるL型フランジ14の鉛直部14Bに立設されている。このスタッドボルト33は、第2の実施形態におけるL型フランジ14において係合部15が形成されていた位置に立設されている。スタッドボルト33が立設されているL型フランジ14の鉛直部14Bには係合部15が形成されていない態様となっている。スタッドボルト33に形成された雄ねじ部がケーシング部材31に形成された雌ねじ部にねじ込まれている。
【0087】
本実施形態に係る車両フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。さらに、ワイヤーケーブル2に張力調整部材30Aが設けられており、張力調整部材30Aはスタッドボルト33を備えている。かかる態様の張力調整部材30Aを用いても、ワイヤーケーブル2の張力を容易に調整することができる。
【0088】
〔第5の実施形態〕
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第3の実施形態と比較して、張力調整部材の構成が異なっている。図9に示すように、本実施形態に係る張力調整部材30Bは、複数の円筒部34Aおよび円筒部34A同士の間に形成されたくびれ部34Bを備えている。この張力調整部材30Bは、図5に示す上記第2の実施形態における係合部材23(図5参照)の円筒部23Aとくびれ部23Bとを複数設けた態様と同様の態様によって形成されている。
【0089】
また、フードパネル1の端末には、水平部14Aおよび鉛直部14Bを備えるL型フランジ14が形成されている。さらに、鉛直部14Bには、直線部15Aおよび係止孔15Bを備える係合部15が形成されている。係合部15における直線部15Aの幅は、張力調整部材30Bにおけるくびれ部34Bの幅よりも小さくされている。さらに、係止孔15Bの径は、くびれ部34Bの幅よりも大きく、円筒部34Aの径よりも小さくされている。
【0090】
さらに、図10に示すように、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の一端側に、この張力調整部材30Bが取り付けられている。一方、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の一端側には、図5に示す係合部材23が取り付けられている。
【0091】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0092】
さらに、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の一端側に張力調整部材30Bが取り付けられている。この張力調整部材30Bにおける複数のくびれ部34Bのうち、フードパネル1におけるL型フランジ14に形成された係合部15に係合するくびれ部34Bを適宜選択することにより、ワイヤーケーブル2の長さを容易に調整することができる。この結果、ワイヤーケーブル2の張力を非常に容易に調整することができる。
【0093】
なお、ここでは、ケーブル本体21の一端側に張力調整部材30Bを取り付け、他端側には係合部材23を取り付けているが、ケーブル本体21の両端に張力調整部材30Bを取り付けることもできる。ここで、ケーブル本体21の一端側に張力調整部材30Bを取り付けるようにすることにより、張力調整部材30Bは係合部材23よりも複雑な部品であるから、複雑な部品を少なくすることができる利点がある。また、ケーブル本体21の両端側に張力調整部材30Bを設ければ、フードパネル1の両端側のいずれにおいてもワイヤーケーブル2の張力調整を行うことができる利点がある。
【0094】
〔第6の実施形態〕
続いて、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第3の実施形態と比較して、張力調整部材の構成が異なっている。図11に示すように、本実施形態に係る張力調整部材30Cは、円筒部35Aを備えており、円筒部35Aには、螺旋状に切り欠かれた螺旋溝35Bが形成されている。張力調整部材30Cは、螺旋状溝部材を構成する。
【0095】
さらに、パネル本体11の端末に形成されたL型フランジ14における鉛直部14Bには、段付係合部16が形成されている。段付係合部16は、図9に示す係合部15における直線部15Aおよび係止孔15Bと同様の直線部16Aおよび係止孔16Bを備えている。また、段付係合部16の直線部15Aにおける切欠端部には、張力調整部材30Cにおける螺旋溝35Bとピッチと略同一幅の段差が形成されている。
【0096】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0097】
さらに、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の一端側に張力調整部材30Cが取り付けられている。この張力調整部材30Cにおける螺旋溝35Bを、フードパネル1におけるL型フランジ14に形成された段付係合部16に係合することにより、ワイヤーケーブル2の長さを容易に調整することができる。
【0098】
このとき、螺旋溝35Bは、張力調整部材30Cを回転させることによって段付係合部16にねじ込むことができるので、ねじ込み量を容易に調整することができる。また、ワイヤーケーブル2の張力は、段付係合部16に対する張力調整部材30Cのねじ込み量によって調整される。したがって、ワイヤーケーブル2の張力を非常に容易に調整することができる。
【0099】
〔第7の実施形態〕
続いて、本発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第2の実施形態と比較して、L型フランジの態様が主に異なっている。図12は、本実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。図12に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設されたワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と係合部材23とを備えている。
【0100】
フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ41が形成されている。このL型フランジ41は、パネル本体11を2段階で折り返し、その下端部でさらに折り返して形成されている。こうして、L型フランジ41は、水平部41Aと鉛直部41Bとを備えている。
【0101】
さらに、パネル本体11とL型フランジ14とは一体的に形成されているとともに、鉛直部41Bは水平部41Aよりも厚肉であり、鉛直部41Bの肉厚は水平部41Aの肉厚のおよそ2倍とされている。また、水平部41Aとパネル本体11とはほぼ同一の肉厚とされている。このため、鉛直部41Bは、パネル本体11よりも肉厚であり、鉛直部41Bの肉厚はパネル本体11の肉厚のおよそ2倍とされている。
【0102】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第2の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0103】
さらに、L型フランジ41における鉛直部41Bは、水平部41Aよりも厚肉に形成されている。このため、ワイヤーケーブル2が接続される鉛直部41Bの剛性を高くすることができるので、ワイヤーケーブル2の張力がパネル本体11に好適に伝達されることとなる。この結果、パネル本体11の湾曲形状を精度よく調整することができる。
【0104】
〔第8の実施形態〕
さらに、本発明の第8の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第2の実施形態と比較して、L型フランジの態様が主に異なっている。図13は、本実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。図13に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と係合部材23とを備えている。
【0105】
フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ42が形成されている。このL型フランジ42は、パネル本体11を2段階で折り返して形成されている。こうして、L型フランジ42は、水平部42Aと鉛直部42Bとを備えている。さらに、パネル本体11とL型フランジ42とは一体的に形成されている。ここで、L型フランジ42は、パネル本体11よりも厚肉であり、L型フランジ42の肉厚はパネル本体11の肉厚のおよそ2倍とされている。
【0106】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第2の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0107】
さらに、L型フランジ42は、フードパネル1におけるパネル本体11よりも厚肉に形成されている。このため、ワイヤーケーブル2が接続されるL型フランジ42の剛性を高くすることができるので、ワイヤーケーブル2の張力がパネル本体11に好適に伝達されることとなる。この結果、パネル本体11の湾曲形状を精度よく調整することができる。
【0108】
〔第9の実施形態〕
続いて、本発明の第9の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第2の実施形態と比較して、L型フランジの態様が主に異なっている。図14は、本実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図、図15はその分解斜視図である。
【0109】
図14に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と係合部材23とを備えている。
【0110】
フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ43が形成されている。このL型フランジ43は、パネル本体11を2段階で折り返して形成されている。こうして、L型フランジ43は、水平部43Aと鉛直部43Bとを備えている。さらに、L型フランジ43は、図15にも示すように、補強アングル材43Cを備えている。補強アングル材43Cは、L型フランジ43における水平部43Aおよび鉛直部43Bに対して溶接固定されている。
【0111】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第2の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0112】
さらに、L型フランジ43は、水平部43Aおよび鉛直部43Bに補強アングル材43Cが取り付けられ、フードパネル1におけるパネル本体11よりも厚肉に形成されている。このため、ワイヤーケーブル2が接続されるL型フランジ43の剛性を高くすることができるので、ワイヤーケーブル2の張力がパネル本体11に好適に伝達されることとなる。この結果、パネル本体11の湾曲形状を精度よく調整することができる。
【0113】
〔第10の実施形態〕
次に、本発明の第10の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第2の実施形態と比較して、L型フランジの態様が主に異なっている。図16は、本実施形態に係る車両用フードパネルの斜視図、図17は図16のI−I線断面図である。
【0114】
図16および図17に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と係合部材23とを備えている。
【0115】
フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ44が形成されている。このL型フランジ44は、パネル本体11を2段階で折り返して形成されている。こうして、L型フランジ44は、水平部44Aと鉛直部44Bとを備えている。さらに、L型フランジ44におけるワイヤーケーブル2の係合部材23が係合される位置に対応した水平部44Aと鉛直部44Bとの間の屈曲辺には、図17にも示すビート゛44Cが形成されている。
【0116】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第2の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0117】
さらに、L型フランジ44におけるワイヤーケーブル2の係合部材23が係合される位置に対応した水平部44Aと鉛直部44Bとの間の屈曲辺には、ビート゛44Cが形成されている。このため、ワイヤーケーブル2が接続されるL型フランジ44の剛性を高くすることができるので、ワイヤーケーブル2の張力がパネル本体11に好適に伝達されることとなる。この結果、パネル本体11の湾曲形状を精度よく調整することができる。
【0118】
〔第11の実施形態〕
続いて、本発明の第11の実施形態について説明する。図18は、本実施形態に係る車両用フード構造を裏側から見た裏面図、図19は、図18のII−II線断面図である。図18に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、フードパネル1と、複数本、ここでは6本の第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを備えている。フードパネル1は、図19にも示すように、上記第1の実施形態と同様、パネル本体11とフランジ12とを備えている。
【0119】
また、フランジ12には、6本のワイヤーケーブル2A〜2Fが設けられる位置のそれぞれに上記第1の実施形態と同様の図示しない係合孔が形成されている。さらに、ワイヤーケーブル2A〜2Fは、いずれも上記第1の実施形態におけるワイヤーケーブル2と同様の構成を有しており、図3に示すケーブル本体21と係合球22とを備えて構成されている。
【0120】
他方、本実施形態に係る車両用フード構造では、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのそれぞれに対して、ワイヤー切断手段となる第1切断装置50A〜第6切断装置50Fが設けられている。第1切断装置50A〜第6切断装置50Fは、いずれも第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを切断するカッタ部材と、カッタ部材を駆動するアクチュエータとを備えている。
【0121】
さらに、第1切断装置50A〜第6切断装置50Fにおけるアクチュエータは、それぞれ駆動制御ECU(Electronic control unit)51に接続されており、駆動制御ECU51には、プリクラッシュセンサ52に接続されている。また、駆動制御ECU51とプリクラッシュセンサ52との間にはプリクラッシュECU53が介在されている。
【0122】
駆動制御ECU51は、車両に搭載されたコンピュータであり、CPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。この駆動制御ECU51は、プリクラッシュECU53から受信したプリクラッシュ信号に基づいて、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのうち、切断するワイヤーケーブルを決定する。
【0123】
駆動制御ECU51は、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのうち、切断すると決定したワイヤーケーブルに設けられた第1切断装置50A〜第6切断装置50Fのうちの切断装置に対して切断信号を送信する。駆動制御ECU51が送信した切断信号を受信した切断装置は、アクチュエータによってカッタを駆動させてワイヤーケーブルを切断する。
【0124】
プリクラッシュセンサ52は、たとえば図示しない車両の前部に設けられており、車両前方における物体までの車両からの距離およびこの物体の車両に対する相対速度を検出する。プリクラッシュセンサ52は、物体までの車両からの距離に対応する距離信号および物体の車両に対する相対速度に対応する相対速度信号をプリクラッシュECU53に送信する。
【0125】
プリクラッシュECU53では、プリクラッシュセンサ52から送信される距離信号および相対速度信号に基づいて、車両と物体との衝突可能性を算出する。また、車両と物体との衝突可能性が高く、たとえば所定のしきい値を超えた場合には、車両に物体が衝突することによる外側荷重を算出する。プリクラッシュECU53は、外側荷重取得手段を構成する。また、プリクラッシュECU53は、算出した外側荷重に対応するプリクラッシュ信号を駆動制御ECU51に送信する。
【0126】
次に、本実施形態に係る車両用フード構造の動作・作用について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造では、フードパネルに物体が衝突すると想定される場合に、車両に掛かる外側荷重を推定するとともに、推定した外側荷重に対応させてワイヤーケーブルを切断することにより、物体に与える荷重を軽減する。
【0127】
具体的に、図20(a)に示すように、フードパネル1におけるパネル本体11に物体Mが衝突する例について説明する。この場合、たとえば、図20(a)に示すように、パネル本体11に物体Mが衝突してもワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21がフードパネル1に張設されたままでは、衝撃吸収性が高くなく、図20(b)に示すように、パネル本体11の変形量Sの増加に伴い、パネル本体11からの反力となって物体に掛かる荷重Fが大きくなってしまう。
【0128】
これに対して、図21(a)に示すように、パネル本体11に物体Mが衝突したときに、ワイヤーケーブル2を切断することにより、物体に掛かる荷重Fを軽減することができる。ただし、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fが張設された状態では、1本のワイヤーケーブルを切断したとしても、他のワイヤーケーブルが張設されていることから、物体Mに掛かる荷重Fはある域までは増加し続けることとなる。
【0129】
そこで、プリクラッシュECU53で算出された外側荷重に応じて、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを順次切断するようにして、図21(b)に示すように、パネル本体11の変形量Sが増加しても、物体Mに掛かる荷重が、予め設定された最大荷重FMAXを超えないように調整する。ここでは、パネル本体11の変形量Sが増加し、物体Mに掛かる荷重が最大荷重FMAXに到達するたびに、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを順次1本ずつ切断していく。
【0130】
具体的に、変形量Sが第1変形量S1となって荷重FがFMAXに到達するときに、第5ワイヤーケーブル2Eを切断し、第2変形量S2となって荷重FがFMAXに到達するときに第6ワイヤーケーブル2Fを切断する。続いて、変形量Sが第3変形量S3となって荷重FがFMAXに到達するとときに第4ワイヤーケーブル2Dを切断し、変形量Sが第4変形量S4となって荷重FがFMAXに到達するとときに第2ワイヤーケーブル2Bを切断している。
【0131】
このように、本実施形態に係る車両用フード構造では、パネル本体11の変形量Sが増加しても、物体Mに掛かる荷重が大きくならず、物体Mに掛かる荷重が最大荷重FMAXを超えないようにすることができる。したがって、フードパネル1の湾曲面を容易に後退させることができるようにして、衝撃吸収性能を高めることができる。
【0132】
さらに、本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0133】
〔第12の実施形態〕
本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第11の実施形態と比較して、切断装置の態様が主に異なる。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第11の実施形態と同様、フードパネル1と、複数本、ここでは6本の第1ワイヤーケーブル〜第6ワイヤーケーブルを備えている。
【0134】
また、図22に示すように、ワイヤーケーブル2が設けられた位置における下方のエンジンルーム内には、カッタ装置55が設けられている。このカッタ部材は、6本のワイヤーケーブルのそれぞれに対応させて設けられている。カッタ装置55は、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21を切断可能なカッタ部55Aと、カッタ部55Aを支持する台座55Bとを備えている。
【0135】
カッタ部55Aは、ワイヤーケーブル2を挟んだフードパネル1の反対側に配置され、ワイヤーケーブル2の張設方向に交差し、ワイヤーケーブル2に面する方向を向いて配設された突起部からなる。また、台座55Bがエンジンルームの所定の位置に配置されて固定されている。
【0136】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、物体Mがパネル本体11に衝突すると、パネル本体11がエンジンルーム側に変形する。このパネル本体11の変形に伴って、ワイヤーケーブル2もエンジンルーム側に移動する。ワイヤーケーブル2がエンジンルーム側に移動すると、カッタ装置55におけるカッタ部55Aに当接し、ワイヤーケーブル2が切断される。
【0137】
このように、本実施形態に係る車両用フード構造では、パネル本体11がエンジンルーム側に変形すると、カッタ装置55によってワイヤーケーブル2が切断される。したがって、フードパネル1の湾曲面を容易に後退させることができ、衝撃吸収性能を高めることができる。
【0138】
しかも、パネル本体11が変形する部位は、物体Mが衝突する部位であることから、物体が衝突した部位における近傍のワイヤーケーブルが切断されることとなる。このため、物体に掛かる荷重をさらに低減することができるので、その分衝撃吸収性を高いものとすることができる。
【0139】
さらに、本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0140】
〔第13の実施形態〕
次に、本発明の第13の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第1の実施形態と比較して、ワイヤーケーブルの取付態様が主に異なっている。図23は、本実施形態に係る車両用フード構造の概略斜視図である。図23に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、パネル本体11を備えるフードパネル1を有している。この点は、上記第1の実施形態と同様である。また、パネル本体11の後端部における幅方向端部には、フランジが形成されており、フランジにはワイヤーケーブルを取り付けるための係合孔13が形成されている。
【0141】
また、本実施形態に係る車両用フード構造は、ワイヤーケーブルとして、左右方向に張設された主ワイヤーケーブル60と、前後方向に張設された従ワイヤーケーブル61とを備えている。主ワイヤーケーブル60は、上記第1の実施形態と同様、パネル本体11の側方端末に形成された係合孔13に取り付けられて張設されている。その一方、従ワイヤーケーブル61は、パネル本体11の後端部の幅方向略中央位置に形成された取付部62に取り付けられている。
【0142】
この従ワイヤーケーブル61には、長さ調整機構63が取り付けられている。この長さ調整機構63によって従ワイヤーケーブル61の長さ調整が可能とされている。長さ調整機構63は、引張調整手段となる。また、従ワイヤーケーブル61が主ワイヤーケーブル60の張力を調整する調整ワイヤーとなる。
【0143】
さらに、従ワイヤーケーブル61が、主ワイヤーケーブル60の略中央部に巻きつけられて主ワイヤーケーブル60と従ワイヤーケーブル61とが接合されている。このため、従ワイヤーケーブル61は、両端部がパネル本体11の後端部に形成された取付部62に取り付けられ、主ワイヤーケーブル60で折り返されている。
【0144】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなく主ワイヤーケーブル60を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0145】
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60の略中央部に従ワイヤーケーブル61が巻きつけられており、従ワイヤーケーブル61には長さ調整機構63が取り付けられている。この長さ調整機構63により、従ワイヤーケーブル61の長さが調整される。
【0146】
ここで、図24(a)に示すように、主ワイヤーケーブル60に対して従ワイヤーケーブル61が巻き付けられている状態で、従ワイヤーケーブル61の長さを短くすると、図24(b)に示すように、主ワイヤーケーブル60の中央部が後方に引っ張られ、主ワイヤーケーブル60と従ワイヤーケーブル61によって略Y字形状が形成される。
【0147】
このとき、主ワイヤーケーブル60の張力が増大することから、主ワイヤーケーブル60によってフードパネル1におけるパネル本体11を湾曲させる際の張力が増加し、フードパネル1の湾曲形状を調整することができる。このように、長さ調整機構63によって従ワイヤーケーブル61の長さを調整することにより、フードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができるので、容易にフードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができる。
【0148】
また、たとえば、図25に示すように、パネル本体11に複数のワイヤーケーブル2,2を張設する際、これらのワイヤーケーブル2が絡むことなく設けられていた場合には、ワイヤーケーブル2の長さを調整するために、複数の長さ調整機構を要することとなってしまう。
【0149】
これに対して、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60に対して従ワイヤーケーブル61が巻き付けられて、両者が絡み合っている。このため、従ワイヤーケーブル61の長さを調整する長さ調整機構63を設けるのみで、主ワイヤーケーブル60の張力をも調整することができる。したがって、部品点数の軽減に寄与することができるとともに、ワイヤーケーブルの調整回数を少なくすることができる。
【0150】
〔第14の実施形態〕
続いて、第14の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第13の実施形態と比較して、主ワイヤーケーブル60に対する従ワイヤーケーブル61の巻き付け態様が主に異なっている。図26は、本実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【0151】
図26(a)に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60は、パネル本体11の左右方向に張設され、主ワイヤーケーブル60に対して、従ワイヤーケーブル61が3箇所で巻き付けられている。また、パネル本体11には、その両端部の2箇所に従ワイヤーケーブル61を取り付ける後方端部取付部62が設けられており、その中間位置に、従ワイヤーケーブル61を引っ掛けて折り返す折返部材64が設けられている。
【0152】
従ワイヤーケーブル61は、その両端部がそれぞれパネル本体11における後方端部取付部62に取り付けられるとともに、その長さ方向途中位置で折返部材64に引っ掛けられて折り返されている。また、従ワイヤーケーブル61は、主ワイヤーケーブル60の長さ方向における複数、本実施形態では3箇所の途中位置に巻きつけられている。こうして、従ワイヤーケーブル61は、略V字が並設された形状とされている。さらに、従ワイヤーケーブル61における長さ方向途中位置には、従ワイヤーケーブル61の長さを調整する長さ調整機構63が設けられている。
【0153】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなく主ワイヤーケーブル60を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0154】
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60の3箇所の位置に従ワイヤーケーブル61が巻きつけられており、従ワイヤーケーブル61には長さ調整機構63が取り付けられている。この長さ調整機構63により、従ワイヤーケーブル61の長さが調整される。
【0155】
ここで、図26(a)に示すように、主ワイヤーケーブル60に対して従ワイヤーケーブル61が巻きつけられている状態で、従ワイヤーケーブル61の長さを短くすると、図26(b)に示すように、主ワイヤーケーブル60の中央部が後方に引っ張られる。このような態様によっても、従ワイヤーケーブル61の長さを調整することにより、フードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができるので、容易にフードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができる。さらには、部品点数の軽減に寄与することができるとともに、ワイヤーケーブルの調整回数を少なくすることができる。
【0156】
〔第15の実施形態〕
続いて、第15の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第13の実施形態と比較して、ワイヤーケーブルの張設態様が主に異なっている。図27は、本実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、第3ワイヤーケーブルの長さ調整前の概略斜視図、(b)は第3ワイヤーケーブルの長さ調整後の概略斜視図である。
【0157】
図27(a)に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造では、パネル本体11に対して、左第1ワイヤーケーブル65A、右第1ワイヤーケーブル65B、および第2ワイヤーケーブル66が取り付けられている。また、第1ワイヤーケーブル65A,65Bには、第3ワイヤーケーブル67が巻き付けられている。
【0158】
また、パネル本体11には、第1ワイヤーケーブル65A,65Bを取り付けるための前方端部取付部68が前方両端部近傍位置にそれぞれ設けられている。さらに、パネル本体11における後方位置には、上記第13の実施形態と同様、パネル本体11の後端部の幅方向略中央位置に後方中央取付部62が設けられている。
【0159】
第1ワイヤーケーブル65A,65Bは、その一端部がパネル本体11の前方端部近傍位置に設けられた前方端部取付部68に取り付けられ、他端部が係合孔13に取り付けられている。また、第2ワイヤーケーブル66の両端部は、いずれも後方中央取付部62に取り付けられている。
【0160】
また、第3ワイヤーケーブル67は、一端側が左第1ワイヤーケーブル65Aに巻き付けられており、他端側が右第1ワイヤーケーブル65Bに巻き付けられている。さらに、第3ワイヤーケーブル67の略中央部には、第2ワイヤーケーブル66が巻き付けられている。また、第2ワイヤーケーブル66には、長さ調整機構63が設けられている。
【0161】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、第1ワイヤーケーブル65A,65Bおよび第3ワイヤーケーブル67の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなく主ワイヤーケーブル60を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0162】
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、第3ワイヤーケーブル67の略中央部に第2ワイヤーケーブル66が巻きつけられており、第2ワイヤーケーブル66には長さ調整機構63が取り付けられている。この長さ調整機構63により、従ワイヤーケーブル61の長さが調整される。
【0163】
ここで、図27(a)に示すように、第3ワイヤーケーブル67に対して第2ワイヤーケーブル66が巻きつけられている状態で、第2ワイヤーケーブル66の長さを短くすると、図27(b)に示すように、第3ワイヤーケーブル67の中央部が後方に引っ張られ、第3ワイヤーケーブル67と第2ワイヤーケーブル66によって略Y字形状が形成される。さらには、第3ワイヤーケーブル67が内側に引っ張られることから、第1ワイヤーケーブル65A,65Bも変形する。
【0164】
このとき、第3ワイヤーケーブル67の張力および第1ワイヤーケーブル65A,65Bにおける幅方向の張力が増大することから、第1ワイヤーケーブル65A,65Bおよび第3ワイヤーケーブル67によってフードパネル1におけるパネル本体11を湾曲させる際の張力が増加し、フードパネル1の湾曲形状を調整することができる。このように、長さ調整機構63によって第2ワイヤーケーブル66の長さを調整することにより、フードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができるので、容易にフードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができる。
【0165】
しかも、第1ワイヤーケーブル65A,65Bや第3ワイヤーケーブル67の張り方や、さらに多くのワイヤーケーブルを設けることにより、フードパネル1の湾曲形状が複雑となる場合であっても、対応をしやすくなる。このときでも、長さ調整機構63によって容易に湾曲形状を調整することができる。
【0166】
〔第16の実施形態〕
次に、本発明の第16の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第14の実施形態と比較して、主ワイヤーケーブル60の態様が主に異なっている。図28は、実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【0167】
図28(a)に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60は、パネル本体11の左右方向に張設され、主ワイヤーケーブル60に対して、従ワイヤーケーブル61が3箇所で巻き付けられている。また、パネル本体11には、その両端部2箇所に従ワイヤーケーブル61を取り付ける後方端部取付部62が設けられており、その中間位置に、従ワイヤーケーブル61を引っ掛けて折り返す折返部材64が設けられている。
【0168】
従ワイヤーケーブル61は、その両端部がそれぞれパネル本体11における後方端部取付部62に取り付けられるとともに、その長さ方向途中位置で折返部材64に引っ掛けられて折り返されている。また、従ワイヤーケーブル61は、主ワイヤーケーブル60の長さ方向における複数、本実施形態では3箇所の途中位置に巻きつけられている。こうして、従ワイヤーケーブル61は、略V字が並設された形状とされている。さらに、従ワイヤーケーブル61における長さ方向途中位置には、従ワイヤーケーブル61の長さを調整する長さ調整機構63が設けられている。
【0169】
主ワイヤーケーブル60には、複数の結び目60Aが形成されている。結び目60Aは、主ワイヤーケーブル60を単純に結ぶことによって形成されている。この結び目60Aは主ワイヤーケーブル60における左右方向の両側で従ワイヤーケーブル61が巻き付けられた位置の内側位置と、左右方向の中央で従ワイヤーケーブル61が巻き付けられた位置の両側にそれぞれ形成されている。
【0170】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第14の実施形態と同様、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、フード全体の軽量化に寄与することができる。さらには、長さ調整機構63が取り付けられていることにより、容易にフードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができるとともに、ワイヤーケーブルの調整回数を少なくすることができる。
【0171】
さらに、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60には、複数の結び目60Aが形成されている。仮に、図29(a)に示すように、このような結び目が形成されていない場合について説明する。この場合、従ワイヤーケーブル61の配置によっては、従ワイヤーケーブル61の長さを短くすると、図29(b)に示すように、従ワイヤーケーブル61の主ワイヤーケーブル60に対する巻き付け位置が、主ワイヤーケーブル60の中央方向に寄ってしまい、所望の位置に従ワイヤーケーブル61を調整できないことが懸念される。
【0172】
この点、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60には、複数の結び目60Aが形成されている。このため、図28(b)に示すように、従ワイヤーケーブル61が中央へ移動することを結び目60Aが防止する。このため、従ワイヤーケーブル61の位置を容易に調整することができる。
【0173】
〔第17の実施形態〕
続いて、本発明の第17の実施形態について説明する。図30は、本実施形態に係る車両用フード構造を備えた車両の一部切欠斜視図である。図30に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造では、車両CにおけるフロントウィンドウガラスWの前方に設けられたフードパネル1の内側に車両のプリクラッシュに対応させて用いるプリクラッシュワイヤー70が張設されている。
【0174】
フードパネル1におけるパネル本体11の裏面側における前後方向端末位置には、図31(a)に示すように、プリクラッシュワイヤー取付部71が設けられており、プリクラッシュワイヤー70の両端部は、それぞれプリクラッシュワイヤー取付部71に取り付けられている。このようにして、プリクラッシュワイヤー70は、車両の前後方向に沿って配設されている。
【0175】
また、フードパネル1に覆われたエンジンルーム内には、プリクラッシュワイヤーを牽引するプリクラッシュワイヤー牽引手段となる揺動アクチュエータ機構72が設けられている。揺動アクチュエータ機構72は、ケーシング72Aを備えており、ケーシング72Aの内側に駆動手段となるモータ72Bが設けられている。また、モータ72Bには、アーム部材72Cが取り付けられている。アーム部材72Cは、モータ72Bを作動させることによって駆動されて揺動し、その揺動軌跡上にプリクラッシュワイヤー70が配設されている。
【0176】
アーム部材72Cにおける先端部には、プリクラッシュワイヤー70を押し下げる押下部材72Dが取り付けられている。モータ72Bを作動させると、アーム部材72Cが揺動し、押下部材72Dによってプリクラッシュワイヤー70の長さ方向途中位置が押し下げられて牽引される。アーム部材72Cおよび押下部材72Dが、プリクラッシュワイヤー70の張設方向に交差する方向に移動するアクチュエータとなる。
【0177】
さらに、揺動アクチュエータ機構72におけるモータ72Bには、上記第11の実施形態で説明したプリクラッシュECU53が接続され、プリクラッシュECU53にはプリクラッシュセンサ52が接続されている。プリクラッシュECU53は、車両と物体との衝突可能性が高く、たとえば所定のしきい値を超えた場合には、衝突予測信号を揺動アクチュエータ機構72におけるモータ72Bに送信する。モータ72Bは、衝突予測信号を受信した場合に作動し、図31(b)に示すようにアーム部材72Cを揺動させてプリクラッシュワイヤー70の途中位置を押し下げる。
【0178】
次に、本実施形態に係る車両用フード構造の動作・作用について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造では、フードパネル1に物体が衝突すると想定される場合に、プリクラッシュワイヤー70を牽引することによって、フードパネル1を屈曲させて、フードパネル1がフロントウィンドウガラスWに衝突することを防止するものである。
【0179】
車両Cの正面に物体が衝突した場合などには、衝突によって受ける荷重でフードパネル1が後方に押しやられ、フロントウィンドウガラスWに衝突してしまうことが考えられる。そこで、車両Cの正面に物体が衝突することが予測された場合に、フードパネル1を安定して屈曲させることで、フードパネル1によるフロントウィンドウガラスWの損傷を防止するものである。
【0180】
車両Cに衝突が生じるときに具体的な流れについて図32を用いて説明する。まず、プリクラッシュECU53では、プリクラッシュセンサ52で検出された車両Cの前方における物体の車両Cとの相対速度や相対距離に基づいて、物体が車両Cに衝突する可能性を算出して取得する。物体が車両Cに衝突する可能性から、物体の車両Cに対する衝突を事前に察知する(S1)。
【0181】
次に、物体の車両Cに対する衝突を察知した場合には、プリクラッシュECU53は、揺動アクチュエータ機構72におけるモータ72Bに衝突信号を送信し、モータ72Bを作動させる。モータ72Bが作動すると、アーム部材72Cが揺動し、押下部材72Dによってプリクラッシュワイヤー70を押し下げて引っ張ることとなる(S2)。
【0182】
ここで、プリクラッシュワイヤー70の両端部は、フードパネル1の前後端部に取り付けられている。このため、プリクラッシュワイヤー70が引っ張られると、プリクラッシュワイヤー70の張力によってフードパネル1が外方向に突出するように屈曲し、フードパネル1が「く」の字状に撓む(S3)。
【0183】
その後、プリクラッシュECU53で察知したとおりに、物体が車両Cの前方に衝突した場合に、フードパネル1は、一部が屈曲していることから、この屈曲位置からその屈曲量が大きくなる。このようにして物体が車両Cの前方に衝突した後、フードパネル1を安定して変形させることができる(S4)。こうして、フードパネル1を安定して変形させることにより、フードパネル1の後端部分がフロントウィンドウガラスWに接触することを回避することができる(S5)。その結果、フードパネル1によるフロントウィンドウガラスWの損傷を防止することができる。
【0184】
〔第18の実施形態〕
続いて、本発明の第18の実施形態について説明する。図33は、本実施形態に係る車両用フード構造を裏側から見た状態を模式的に示す裏面図、図34は、図33のIII−III線断面図である。図33に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第11の実施形態と同様、フードパネル1と、複数本、ここでは6本の第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを備えている。フードパネル1は、図34に示すように、パネル本体11とフランジ12とを備えている。
【0185】
また、フランジ12には、6本のワイヤーケーブル2A〜2Fが設けられる位置のそれぞれに上記第1の実施形態と同様の図示しない係合孔が形成されている。さらに、ワイヤーケーブル2A〜2Fは、いずれも上記第1の実施形態におけるワイヤーケーブル2と同様の構成を有しており、図3に示すケーブル本体21と係合球22とを備えて構成されている。
【0186】
他方、本実施形態に係る車両用フード構造では、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのそれぞれに対して、錘となる第1マス部材80A〜第6マス部材80Fがそれぞれ取り付けられている。図33に示す例では、第1マス部材80A〜第6マス部材80Fは、いずれも第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのそれぞれの長手方向略中央位置に設けられているが、実際にはその位置は適宜変更される。
【0187】
いま、図34に示すように、パネル本体11とワイヤーケーブル2との間にマス部材80を挟み込み、パネル本体11の振動を直接ワイヤーに伝達することを考える。この場合、図35に示すような第1質量体M1、第2質量体M2、第1弾性体K1、および第2弾性体K2を備える2自由度振動系として考えることができる。図34に示す車両用フード構造を図35に示す2自由度振動系に当てはめると、第1質量体M1がパネル本体の有効質量、第2質量体M2がワイヤーケーブル2およびマス部材80の有効質量、第1弾性体K1がパネル本体11の剛性、第2弾性体K2がワイヤーケーブル2およびマス部材80の剛性となる。
【0188】
2自由度振動系では、共振周波数f(t)は質量体の質量および弾性体の弾性係数によって決定され、たとえば図36に示す波形を描く。ここで、第1質量体M1および第2質量体M2の質量をm1,m2とし、第1弾性体K1および第2弾性体K2の弾性係数をk1,k2とすると、振幅の第1ピークωn1および第2ピークωn2は、それぞれ下記(1)式および(2)式に基づいて算出される。
【数1】
【0189】
このように、2自由度振動系の共振周波数f(t)は、質量体の質量および弾性体の弾性係数によって決定される。このことから、ワイヤーケーブル2およびマス部材80の質量や弾性係数を調整することによって、共振周波数f(t)を制御することができ、振動の抑制に寄与することができる。
【0190】
次に、具体的にワイヤーケーブル2の質量や弾性係数を調整する手段について説明する。図33に示す例では、ワイヤーケーブル2にマス部材80を取り付けることで重量および弾性係数を調整しているが、ワイヤーケーブル2の断面形状を設定することによって、ワイヤーケーブル2の質量や弾性係数を調整することができる。
【0191】
具体的には、図37(a)に示すように、断面形状が中空の円形である態様とすることができるし、図37(b)に示すように、中実の円形である態様とすることもできる。また、図37(c)に示すように、中空の矩形状とすることもできるし、図37(d)に示すように、中実の矩形状とすることもできる。さらには、図37(e)に示すように、中空の三角形状とすることもできるし、図37(f)に示すように、中実の三角形状とすることもできる。
【0192】
あるいは、図38(a)に示すように、中空の楕円形状とすることもできるし、図38(b)に示すように、中実の楕円形状とすることもできる。さらには、図38(c)に示すように、中空の長方形状とすることもできるし、図38(d)に示すように、中実の長方形状とすることもできる。これらのように、ワイヤーケーブル2の断面形状を設定することによって、ワイヤーケーブル2の質量や弾性係数を調整することができる。
【0193】
さらには、ワイヤーケーブル2の長手方向の形状を調整することによって、ワイヤーケーブル2の質量や弾性係数を調整することもできる。ここでのワイヤーケーブル2の長手方向の形状としては、図39(a)に示すように、側面形状が長方形となる形状としたり、図39(b)に示すように、側面形状が、中央部が膨らんだ太鼓状となる形状としたり、図39(c)に示すように、側面形状が、長手方向の中央部に太径部を備えた上下の稜線が略正規分布となるような正規分布形状としたりすることができる。これらの太鼓状形状や正規分布形状とすれば、ワイヤーケーブル2の長手方向中央部に大重量部が形成される。こうして、ワイヤーケーブル2の質量全体を増加させることなく、有効質量を増加させることができる。
【0194】
ここで、図39(a)〜(c)の各例では、断面形状は円形であるものを想定しているが、そのほか、断面形状は、図37および図38に示す各形状などとすることもできる。もちろん、ここで例示していないその他の形状とすることもできる。
【0195】
さらに、図40に示すワイヤーケーブル90とすることもできる。ワイヤーケーブル90は、長手方向中央部に設けられた中央位置部材91と、長手方向端部に設けられた端位置部材92とを備えている。ここで、中央位置部材91は金属製とされ、端位置部材92としては軽量素材としての樹脂、たとえば繊維強化樹脂が用いられている。中央位置部材91として用いられている金属は、端位置部材92として用いられている樹脂よりも大重量とされている。この場合には、金属製の中央位置部材91によってワイヤーケーブル90の長手方向中央部に大重量部が形成される。
【0196】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。特に、各実施形態において、種々の態様のワイヤーケーブル等を用いているが、各実施形態における態様を適宜組み合わせた態様とすることもできる。また、フードパネルとしては、車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネルを例としている。これに対して、その他のフードを対象とすることもできる。
【0197】
また、上記各実施形態では、牽引材としてワイヤーケーブルを用いているが、その他の牽引材を用いることもできる。その他の牽引材としては、たとえば金属製または樹脂製の
長尺棒材や長尺板材、またこれらの棒材とワイヤーとを組み合わせたものなどを用いることができる。また、これらの牽引材としては、断面円形状、断面矩形状など、適宜の形状のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0198】
1…フードパネル、2…ワイヤーケーブル、11…パネル本体、12…フランジ、13…係合孔、13A…大径部、13B…幅狭部、14…L型フランジ、15…係合部、15A…直線部、15B…係止孔、16…段付係合部、16A…直線部、16B…係止孔、21…ケーブル本体、22…係合球、23…係合部材、23A…円筒部、23B手くびれ部、30…張力調整部材、50A〜50F…切断装置、52…プリクラッシュセンサ、55…カッタ装置、60…主ワイヤーケーブル、60A…結び目、61…従ワイヤーケーブル、63…長さ調整機構、70…プリクラッシュワイヤー、72…揺動アクチュエータ機構、80…マス部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フード構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両におけるエンジンルームを覆うボンネットなどのフードが設けられたフード構造として、従来、アウタパネルにインナパネルが取り付けられた車両用フード構造が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この車両用フード構造では、アウタパネルにインナパネルを取り付けてフードを形成することにより、フードに物体が衝突したときの衝突吸収性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4076487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示された車両用フード構造では、フードがアウタパネルとインナパネルとを有していることから、重量が大きくなったり、生産過程が多工程となったりすることが懸念される。そこで、インナパネルを用いることなく、アウタパネルによってフードを形成することが考えられる。インナパネルを省くことにより、軽量化や生産性の向上を図ることができる。
【0005】
ところが、インナパネルを省いたフードとすると、フードの形状や強度を維持する部材がなくなることから、フードの形状や強度の維持が困難となるという問題があった。フードの形状や強度を維持するためには、フードを形成するアウタパネルの板厚を大きくするなどして耐性を高いものとすることが考えられるが、アウタパネルの板厚を大きくした場合、結局フードの軽量化を図ることができなくなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、フードの形状や強度を維持することができるようにするとともに、フードの軽量化を図ることができる車両用フード構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る車両用フード構造は、車体の外側面として配設されるフードパネルを備える車両用フード構造であって、フードパネルにおける車体の内側面の端末間にワイヤーを張設し、ワイヤーを緊張させてフードを湾曲させることによってフードパネルに引張曲面が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る車両用フード構造は、フードパネルにおける車体の内側面の端末間にワイヤーを張設し、ワイヤーを緊張させてフードを湾曲させることによってフードパネルに引張曲面が形成されている。このため、ワイヤーの張力でフードが湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネルによってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーを用いていることから、フードの軽量化に寄与することができる。
【0009】
ここで、ワイヤーの張力を調整する張力調整機構が設けられている態様とすることができる。
【0010】
このように、ワイヤーの張力を調整する張力調整機構が設けられていることにより、ワイヤーの張力を容易に調整することができる。ここで、フードの形状や強度はワイヤーの張力によって調整することができるので、張力調整機構を用いることにより、フードの形状や強度を容易に調整することができる。
【0011】
また、張力調整機構は、ワイヤーの延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材と、フードパネルに設けられ、スリット部材が係合される係合部と、を備える態様とすることができる。
【0012】
このように、ワイヤーの延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材を用いることにより、係合部に係合するスリットを複数のスリットの中から選択するだけでワイヤーの長さが調整されることとなる。したがって、ワイヤーの長さ調整を容易に行うことができる。
【0013】
さらに、張力調整機構は、ワイヤーの延在方向を中心とした螺旋状の溝が形成された螺旋状スリット部材と、フードパネルに設けられ、螺旋状溝部材が係合される係合部と、を備える態様とすることができる。
【0014】
このように、ワイヤーの延在方向を中心とした螺旋状の溝が形成された螺旋状溝部材を用いることにより、螺旋状溝部材のねじ込み量を変えるだけでワイヤーの長さが調整されることとなる。したがって、ワイヤーの長さ調整を容易に行うことができる。
【0015】
また、フードパネルは、フードパネル本体と、フードパネル本体の側部に形成され、フードパネルの端末となるフランジ部とを備えており、フランジ部の肉厚は、フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている態様とすることができる。
【0016】
このようにフランジ部の肉厚は、フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている。このため、ワイヤーを張設する際の剛性を確保することができ、フードの曲面形状を精度よく調整することができる。
【0017】
さらに、フランジ部は、フードパネル本体から延在した部分を折り曲げることによってフードパネル本体の肉厚よりも厚くされている態様とすることができる。
【0018】
このように、フランジ部は、フードパネル本体から延在した部分を折り曲げることによってフードパネル本体の肉厚よりも厚くされていることにより、肉厚のフランジ部を容易に形成することができる。
【0019】
また、フードパネル本体から延在した部分に補強部材を取り付けることによってフードパネル本体の肉厚よりも厚くされている態様とすることができる。
【0020】
このように、フランジ部に、補強部材を取り付けることによってフードパネル本体の肉厚よりも厚くされていることにより、容易にフランジを補強することができる。
【0021】
また、フードパネルは、フードパネル本体と、フードパネル本体の側部に形成され、フードパネルの端末となるフランジ部とを備えており、ランジ部にビードが形成されている態様とすることができる。
【0022】
このように、フランジ部にビードが形成されていることにより、容易にフランジを補強することができる。
【0023】
さらに、ワイヤーを切断するワイヤー切断手段を備え、フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となったときに、ワイヤー切断手段によってワイヤーを切断する態様とすることができる。
【0024】
フードパネルはワイヤーの張力によってフードパネルが外側へ膨らむように湾曲形成されている。ここで、フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となったときに、ワイヤー切断手段によってワイヤーを切断することにより、フードパネルの湾曲面を容易に後退させることができ、衝撃吸収性能を高めることができる。ここで、本発明における「フードパネルに掛かる外側荷重」とは、実際のフードパネルに掛かった外側荷重のほか、たとえば、障害物と車両との相対関係に基づいて算出され、フードパネルに掛かると想定される外側荷重も含まれる。
【0025】
あるいは、フードパネルに複数のワイヤーが張設されており、フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となるごとに、複数のワイヤーを順次切断する態様とすることができる。
【0026】
このように、フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となるごとに、複数のワイヤーを順次切断することにより、外側荷重の大きさに応じてフードパネルを後退させることができる。したがって、その分衝撃吸収性能を高めることができる。
【0027】
また、ワイヤー切断手段は、ワイヤーを挟んだフードパネルの反対側に配置され、ワイヤーの張設方向に交差し、ワイヤーに面する方向を向いて配設された突起部を備える態様とすることができる。
【0028】
このように、ワイヤー切断手段は、ワイヤーに面する方向を向いて配設された突起部であることにより、外側荷重が加わって後退した部位におけるワイヤーが切断されることとなる。したがって、フードパネルの外側面の荷重が掛かった位置におけるワイヤーを切断することができ、衝撃吸収性能を高めることができる。
【0029】
さらに、フードパネルに掛かる外側荷重を取得する外側荷重取得手段を備え、外側荷重取得手段で取得された外側荷重が所定のしきい値を超えたときに、ワイヤーを切断する態様とすることができる。
【0030】
このように、外側荷重取得手段によって外側荷重を取得することにより、たとえば衝突検出のために別途設けられるプリクラッシュセンサを外側荷重取得手段として用いることができる。
【0031】
また、ワイヤーに絡めてフードパネルの端末に取り付けられ、ワイヤーの張力を調整する調整ワイヤーを備え、調整ワイヤーの引張調整を行う引張調整手段を備える態様とすることができる。
【0032】
このように、ワイヤーに絡めてフードパネルの端末に取り付けられ、ワイヤーの張力を調整する調整ワイヤーが設けられていることにより、調整ワイヤーの長さ調整をするだけでワイヤーの張力を調整することができる。
【0033】
さらに、フードパネルにおける車体の前後方向端末間を連結するプリクラッシュワイヤーを備え、車体と障害物との衝突が予測された際に、プリクラッシュワイヤーを牽引するプリクラッシュワイヤー牽引手段を備える態様とすることができる。
【0034】
車体と障害物との衝突が予測された際に、プリクラッシュワイヤーが牽引されることにより、フードパネルが外方向に突出するように屈曲し、フードパネルの縁部がフードパネルの近傍にある部材、たとえばフードパネルがエンジンフードである場合にフロントウィンドウから離れる方向に移動する。このため、車体に衝突が生じた際におけるフロントウィンドウに対するフードパネルの衝突を防止することができる。
【0035】
また、プリクラッシュワイヤーの張設方向に交差する方向に移動するアクチュエータと、アクチュエータを移動させる駆動手段と、を備え、車体と障害物との衝突が予測された際に、駆動手段によってアクチュエータを移動させる態様とすることができる。
【0036】
このように、プリクラッシュワイヤーの張設方向に交差する方向に移動するアクチュエータを備えることにより、車体に衝突が生じた場合などに即座にプリクラッシュワイヤーを緊張させることができる。したがって、フロントウィンドウに対するフードパネルの接触を好適に防止することができる。
【0037】
あるいは、ワイヤーに大重量部を形成した態様とすることができる。
【0038】
このように、ワイヤーに大重量部が形成されていることにより、車体の振動によるワイヤーの共振を抑制することができる。そのため、ワイヤーの振動に伴うフードの形状変化を軽減することができる。
【0039】
また、大重量部が錘を取り付けることによって形成されており、錘の形状が、ワイヤーの振動方向に応じて設定されている態様とすることができる。
【0040】
このように、錘の形状が、ワイヤーの振動方向に応じて設定されていることにより、種々の態様に応じた振動の抑制に寄与することができる。錘の形状としては、たとえば断面形状が円形、楕円形、方形、長方形、三角形などとなるようにすることができる。
【0041】
さらに、大重量部は、ワイヤーを太径として形成されている態様とすることができる。
【0042】
このように、ワイヤーを太径として局部的に大重量部を形成することにより、ワイヤー自体が制振性を有してフードの形状変化を抑制することができる。
【0043】
また、ワイヤーは、大重量部が金属で形成され、大重量部以外の部分が軽量素材で形成されている態様とすることができる。
【0044】
このように、樹脂等の強度のある軽量素材でワイヤーを構成するとともに、金属材料を大重量部として用いることができる。
【0045】
また、上記課題を解決した本発明に係る車両用フード構造は、車体の外側面として配設されるフードパネルを備える車両用フード構造であって、フードパネルにおける車体の内側面の端末間に牽引材を張設し、牽引材を緊張させてフードを湾曲させることによってフードパネルに引張曲面が形成されていることを特徴とする。
【0046】
本発明に係る車両用フード構造は、フードパネルにおける車体の内側面の端末間に牽引材を張設してフードを湾曲させることによってフードパネルに引張曲面が形成されている。このように牽引剤が調節されることによってワイヤーの張力でフードが湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネルによってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなく牽引材を用いていることから、フードの軽量化に寄与することができる。
【0047】
ここで、張力調整機構は、牽引材の延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材と、フードパネルに設けられ、スリット部材が係合される係合部と、を備える態様とすることができる。
【0048】
このように、牽引材の延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材を用いることにより、係合部に係合するスリットを複数のスリットの中から選択するだけで牽引材の長さが調整されることとなる。したがって、牽引材の長さ調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明に係る車両用フード構造によれば、フードの形状および強度を維持することができるようにするとともに、フードの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態に係る車両用フード構造の斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る車両用フード構造の正断面図である。
【図3】パネル本体とワイヤーケーブルの接合位置の拡大斜視図である。
【図4】第2の実施形態に係る車両用フード構造の正断面図である。
【図5】(a)はフードパネルに対するワイヤーケーブルの取付部の拡大分解斜視図、(b)フードパネルに対するワイヤーケーブルの取付部の拡大斜視図。
【図6】第3の実施形態に係る車両用フード構造の斜視図である。
【図7】張力調整部材の正断面図である。
【図8】第4の実施形態に係る車両用フード構造の要部正断面図である。
【図9】第5の実施形態に係る車両用フード構造の要部拡大分解斜視図である。
【図10】第5の実施形態に係る車両用フード構造の正断面図である。
【図11】第6の実施形態に係る車両用フード構造の要部拡大分解斜視図である。
【図12】第7の実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。
【図13】第8の実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。
【図14】第9の実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。
【図15】第9の実施形態に係る車両用フードパネルの分解斜視図である。
【図16】第10実施形態に係る車両用フードパネルの斜視図である。
【図17】図16のI−I線断面図である。
【図18】第11の実施形態に係る車両用フード構造を裏側から見た裏面図である。
【図19】図18のII−II線断面図である。
【図20】(a)は、フードパネルに物体が衝突した状態を示す模式図、(b)はその衝突が起きた際にワイヤーケーブルが切断しない場合の変形量に対する荷重の変化を示すグラフである。
【図21】(a)は、フードパネルに物体が衝突した状態を示す模式図、(b)はその衝突が起きた際に複数のワイヤーケーブルが順次切断する場合の変形量に対する荷重の変化を示すグラフである。
【図22】第12の実施形態に係る車両用フード構造の正断面図である。
【図23】第13の実施形態に係る車両用フード構造の模式的斜視図である。
【図24】第13の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は従ワイヤーケーブルの長さを短くする前の状態を示す模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さを短くした後の状態を示す模式的斜視図である。
【図25】複数のワイヤーケーブルのそれぞれに長さ調整機構を設けた車両用フード構造の模式的斜視図である。
【図26】第14の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【図27】第15の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、第3ワイヤーケーブルの長さ調整前の概略斜視図、(b)は第3ワイヤーケーブルの長さ調整後の概略斜視図である。
【図28】第16の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【図29】結び目が形成されていない主ワイヤーケーブルを備える車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【図30】第17の実施形態に係る車両用フード構造を備えた車両の一部切欠斜視図である。
【図31】第17の実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)はモータを作動させる前の側断面図、(b)はモータを作動させた後の側断面図である。
【図32】第17の実施形態に係る車両用フード構造の衝突時の経時変化に沿った状態を示す図である。
【図33】第18の実施形態に係る車両用フード構造を裏側から見た状態を模式的に示す裏面図である。
【図34】図33のII−II線断面図である。
【図35】2自由度振動系モデルを示す図である。
【図36】2自由度振動系における振幅の経時変化を示すグラフである。
【図37】(a)〜(f)は、ワイヤーケーブルの断面形状を示す断面図である。
【図38】(a)〜(d)は、ワイヤーケーブルの断面形状を示す断面図である。
【図39】(a)〜(c)は、ワイヤーケーブルの側面形状を示す側面図である。
【図40】他のワイヤーケーブルの例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0052】
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係る車両用フード構造の斜視図、図2は車両用フード構造の正断面図である。
【0053】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、本発明のワイヤーまたは牽引材を形成する。フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、フランジ12が形成されている。このフランジ12は、パネル本体11を折り返して形成されている。このため、パネル本体11とフランジ12とは一体的に形成されている。
【0054】
また、フランジ12は、車体に取り付けられた後、フードパネル1が閉じた状態で略水平に配置される水平面を備える態様とされている。パネル本体11の両側端末にそれぞれ設けられたフランジ12には、図3に示すように、ワイヤーケーブル2を取り付けるための係合孔13がそれぞれ形成されている。係合孔13は、パネル本体11の両側方における各フランジ12において、フードパネル1が取り付けられる車両の前後方向に離間して形成されている。このため、2本のワイヤーケーブル2は、それぞれ車両の幅方向に沿って張設されるとともに、両ワイヤーケーブル2は、車両の前後方向に互いに離間して配置される。なお、図1,3中、フードパネル1が車両に取り付けられた際の車両の前後方向をX方向、車両の左右方向をY方向、上下方向をZ方向として示している。
【0055】
この係合孔13は、フランジ12を貫通した状態で形成されており、大径部13Aおよび幅狭部13Bを備えている。大径部13Aと幅狭部13Bとは連続して形成されている。このうち、大径部13Aは、略円形状とされており、幅狭部13Bはスリット状に形成されている。幅狭部13Bにおける幅は、大径部13Aの径よりも小さくされており、幅狭部13Bの長手方向は、フードパネル1が取り付けられる車両の前後方向に沿う方向に形成されている。
【0056】
さらに、ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と、ケーブル本体21の両端部にそれぞれ取り付けられた係合球22を備えている。ケーブル本体21は、鋼線などの金属線や樹脂製の樹脂線などによって形成されている。また、係合球22は、ケーブル本体21に両端部に対して、それぞれ強固に固定されている。
【0057】
係合球22は、たとえば鉛球によって構成されており、その径が係合孔13における大径部13Aの径よりも小さく、幅狭部13Bにおける幅よりも大きくされている。ワイヤーケーブル2における係合球22がフードパネル1における係合孔13に係合されることによって、ワイヤーケーブル2がフードパネル1に張設される。
【0058】
ワイヤーケーブル2をフードパネル1に取り付ける前の状態では、ケーブル本体21の長さは、パネル本体11の幅方向の長さよりも短くされている。また、フードパネル1にワイヤーケーブル2が取り付けられた際には、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21は、フードパネル1におけるパネル本体11の両側端末間に緊張した状態で張設されている。このため、フードパネル1におけるパネル本体11は、ワイヤーケーブル2が張設される前よりも外側に反り上がり、湾曲した状態となっている。
【0059】
次に、フードパネル1に対するワイヤーケーブル2の取り付け手順について説明する。
フードパネル1にワイヤーケーブル2を取り付ける際には、パネル本体11の両側端末に設けられたフランジ12のうちの一方における係合孔13の大径部13Aにワイヤーケーブル2における係合球22を上側から挿入する。次に、係合球22を後方に移動させ、ケーブル本体21の端部を係合孔13の大径部13Aから幅狭部13Bに移動させる。こうして、係合孔13に対してワイヤーケーブル2の一端部が係合される。
【0060】
続いて、ワイヤーケーブル2の一端部が係合孔13に係合されたら、ワイヤーケーブル2を他端側から引張して、フードパネル1の他端側に設けられたフランジ12に形成された係合孔13の大径部13Aにワイヤーケーブル2の他端側に設けられた係合球22を挿入する。このとき、ワイヤーケーブル2が引張されることにより、ワイヤーケーブル2の張力によってフードパネル1のパネル本体11が湾曲する。
【0061】
それから、係合孔13の大径部13Aに挿入された係合球22を幅狭部13Bの方向に移動させ、ワイヤーケーブル2をフードパネル1に取り付ける。ここで、ワイヤーケーブル2を取り付けると、パネル本体11が湾曲し、パネル本体11の湾曲に対する反力によってワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21が緊張させられる。こうして、ワイヤーケーブル2が張設される。
【0062】
続いて、本実施形態に係る車両用フード構造の作用について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造では、フードパネル1における車体の内側面の端末間にワイヤーケーブル2を張設し、ワイヤーケーブル2を緊張させてフードパネル1のパネル本体11を湾曲させてフードパネルに引張曲面が形成されている。このため、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0063】
このとき、インナパネルを用いる必要がないことから、インナパネルを設ける際の作業等を不要とすることができる。具体的には、外周接着剤やその塗布装置を不要とすることができる。さらには、外周ヘミング型なども不要とすることができる。その結果として、工数やコストの低減に寄与することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る車両フード構造では、フードパネル1のフランジ12に係合孔13を形成し、この係合孔13にワイヤーケーブル2の係合球22を挿入してワイヤーケーブル2をフードパネル1の両側端末に取り付けている。このため、溶接などを行うことなく、ワイヤーケーブル2をフードパネル1に対して容易に張設することができる。
【0065】
さらには、フードパネル1は、ワイヤーケーブル2の張力によってパネル本体11が湾曲させられ、その湾曲形状が保たれている。このため、ワイヤーケーブル2の張力を調整するだけで、パネル本体11の湾曲形状を容易に調整することができる。また、係合孔13には大径部13Aのほかに幅狭部13Bが形成されている。この幅狭部13Bが形成されていることにより、ワイヤーケーブル2における係合球22が係合孔13から抜けてしまうことを防止することができる。
【0066】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第1の実施形態と比較して、ワイヤーケーブルの取り付け態様が主に異なっている。図4は、本実施形態に係る車両用フード構造の正断面図、図5は(a)はフードパネルに対するワイヤーケーブルの取付部の拡大分解斜視図、(b)フードパネルに対するワイヤーケーブルの取付部の拡大斜視図である。
【0067】
図4に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設されたワイヤーケーブル2を備えている。フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ14が形成されている。このL型フランジ14は、パネル本体11を2段階で折り返して形成されている。このため、パネル本体11とL型フランジ14とは一体的に形成されている。
【0068】
このL型フランジ14は、車体に取り付けられた際、フードパネル1が閉じた状態で水平に配置される水平面を備える水平部14Aと、垂直に配置される垂直面を備える鉛直部14Bとを有する態様とされている。L型フランジ14における鉛直部14Bには、図5(a)に示すように、係合部15が形成されている。
【0069】
係合部15は、鉛直部14Bの立ち上がり方向(垂直方向)に沿って切り欠かれた形状を有している。この係合部15は、鉛直部14Bの下端部が向けて切り欠かれて形成されており、上方に向けて切り欠かれた直線部15Aと、その上端部に形成された係止孔15Bとを備えている。
【0070】
また、ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21を備えており、ケーブル本体21の両端部には、それぞれ係合部材23が取り付けられている。係合部材23は、円筒部23Aと、円筒部23Aの高さ方向略中央位置に形成されたくびれ部23Bとを備えている。円筒部23Aの先端には、ケーブル本体21の端部が固定されている。また、くびれ部23Bの径は、円筒部23Aの径よりも短くされている。
【0071】
さらに、係合部15における係止孔15Bの径は、直線部15Aの幅よりも大きくされている。また、直線部15Aの幅は、係合部材23におけるくびれ部23Bの幅よりも小さくされている。さらに、係止孔15Bの径は、くびれ部23Bの幅よりも大きく、円筒部23Aの径よりも小さくされている。そして、図5(b)に示すように、係合部15に対してワイヤーケーブル2の一端部が係合されている。
【0072】
フードパネル1に対してワイヤーケーブル2を取り付ける際には、パネル本体11の両側端末に設けられたL型フランジ14のうちの一方における係合部15に、ワイヤーケーブル2における係合部材23を下側から挿入する。次に、係合部材23を上方に移動させる。こうして、係合部15に対してワイヤーケーブル2の一端部が係合される。
【0073】
その後は、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2を他端側から引張する。それから、フードパネル1の他端側に設けられたL型フランジ14に形成された係合部15にワイヤーケーブル2の他端側に設けられた係合部材23を挿入する。このとき、ワイヤーケーブル2が引張されることにより、ワイヤーケーブル2の張力によってフードパネル1のパネル本体11が湾曲する。
【0074】
それから、係合部15に挿入された係合部材23を上方に移動させ、ワイヤーケーブル2をフードパネル1に取り付ける。ここで、ワイヤーケーブル2を取り付けると、パネル本体11が湾曲し、このパネル本体11の湾曲に対する反力によってワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21が緊張させられる。こうして、ワイヤーケーブル2が張設される。
【0075】
本実施形態に係る車両フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。さらに、ワイヤーケーブル2の先端部には、係合部材23が取り付けられている。係合部材23は、円筒部23Aとくびれ部23Bを備えているので、ケーブル本体21との固定を容易に行うことができる。
【0076】
〔第3の実施形態〕
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第1の実施形態と比較して、ワイヤーケーブルに張力調整部材が設けられている点で主に異なっている。図6は、本実施形態に係る車両用フード構造の斜視図、図7は、張力調整部材の正断面図である。
【0077】
図6に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。フードパネル1は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0078】
また、フードパネル1に張設されるワイヤーケーブル2は、図3に示すケーブル本体21を備えており、ケーブル本体21の両端部にそれぞれ係合球22が固定されている。これらの点は、上記第1の実施形態と同様である。さらに、本実施形態では、ケーブル本体21の長さ方向途中位置に、張力調整部材30が設けられている。ケーブル本体21は、張力調整部材30が介在されることにより、2本のケーブル本体21A,21Bによって構成されている。
【0079】
張力調整部材30は、図7に示すように、ケーシング部材31およびインナ部材32を備えている。また、ケーシング部材31は、外形が円筒形状をなす中空の部材であり、左右の端面のうち、一方の面である左面は閉塞され、他方の面である右面は開放されている。ケーシング部材31の左面には第1ケーブル本体21Aの他端部が接合されている。第1ケーブル本体21Aの一端部は、フードパネル1の一方のフランジ12に形成された係合孔13に係合している。さらに、ケーシング部材31の内側には、雌ねじ部が形成されており、雌ねじ部はケーシング部材31の下側開放面に至るまで形成されている。
【0080】
一方、インナ部材32は、外形が円筒形状をなす部材であり、上下の端面のうち、一方の面である上面に第2ケーブル本体21Bの他端部が接合されている。第2ケーブル本体21Bの一端部は、フードパネル1の他方のフランジ12に形成された係合孔13に係合している。さらに、ケーシング部材31の外周面には、雄ねじ部が形成されており、雄ねじ部はインナ部材32の下面にいたるまで形成されている。
【0081】
ケーシング部材31に形成された雌ねじ部には、インナ部材32に形成された雄ねじ部がねじ込まれている。このため、ケーブル本体21は、第1ケーブル本体21Aと第2ケーブル本体21Bとが張力調整部材30によって接合されて形成されている。
【0082】
さらに、張力調整部材30では、ケーシング部材31の内側に雌ねじ部が形成され、インナ部材32の外側に雄ねじ部が形成され、雌ねじ部に雄ねじ部がねじ込まれることにより、ケーシング部材31とインナ部材32とが接合されている。このため、ケーシング部材31に対するインナ部材32のねじ込み量を調整することにより、ワイヤーケーブル2の長さを調整することができる構造となっている。
【0083】
続いて、本実施形態に係る車両用フード構造の作用について説明すると、本実施形態に係る車両フード構造は、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、ワイヤーケーブル2に張力調整部材30が設けられている。張力調整部材30では、ケーシング部材31に対してインナ部材32を相対的に回転させることにより、ケーシング部材31およびインナ部材32にそれぞれ接合されたワイヤーケーブル2間の距離を調整することができる。この結果、ワイヤーケーブル2の長さが調整され、ワイヤーケーブル2の張力が調整される。このように、ケーシング部材31に対してインナ部材32を相対的に回転させるだけ、ワイヤーケーブル2の張力を調整することができる。したがって、ワイヤーケーブル2の張力を非常に容易に調整することができる。
【0085】
〔第4の実施形態〕
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第3の実施形態と比較して、張力調整部材の構成が異なっている。図8に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造における張力調整部材30Aは、ケーシング部材31と、スタッドボルト33とを備えている。また、この態様では、ケーブル本体21は、1本の構成とされている。ケーシング部材31は、図7に示すものと同様のものであり、その上面にケーブル本体21の他端部が接合されている。
【0086】
また、スタッドボルト33は、第2の実施形態に係るフードパネル1におけるL型フランジ14の鉛直部14Bに立設されている。このスタッドボルト33は、第2の実施形態におけるL型フランジ14において係合部15が形成されていた位置に立設されている。スタッドボルト33が立設されているL型フランジ14の鉛直部14Bには係合部15が形成されていない態様となっている。スタッドボルト33に形成された雄ねじ部がケーシング部材31に形成された雌ねじ部にねじ込まれている。
【0087】
本実施形態に係る車両フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。さらに、ワイヤーケーブル2に張力調整部材30Aが設けられており、張力調整部材30Aはスタッドボルト33を備えている。かかる態様の張力調整部材30Aを用いても、ワイヤーケーブル2の張力を容易に調整することができる。
【0088】
〔第5の実施形態〕
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第3の実施形態と比較して、張力調整部材の構成が異なっている。図9に示すように、本実施形態に係る張力調整部材30Bは、複数の円筒部34Aおよび円筒部34A同士の間に形成されたくびれ部34Bを備えている。この張力調整部材30Bは、図5に示す上記第2の実施形態における係合部材23(図5参照)の円筒部23Aとくびれ部23Bとを複数設けた態様と同様の態様によって形成されている。
【0089】
また、フードパネル1の端末には、水平部14Aおよび鉛直部14Bを備えるL型フランジ14が形成されている。さらに、鉛直部14Bには、直線部15Aおよび係止孔15Bを備える係合部15が形成されている。係合部15における直線部15Aの幅は、張力調整部材30Bにおけるくびれ部34Bの幅よりも小さくされている。さらに、係止孔15Bの径は、くびれ部34Bの幅よりも大きく、円筒部34Aの径よりも小さくされている。
【0090】
さらに、図10に示すように、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の一端側に、この張力調整部材30Bが取り付けられている。一方、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の一端側には、図5に示す係合部材23が取り付けられている。
【0091】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0092】
さらに、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の一端側に張力調整部材30Bが取り付けられている。この張力調整部材30Bにおける複数のくびれ部34Bのうち、フードパネル1におけるL型フランジ14に形成された係合部15に係合するくびれ部34Bを適宜選択することにより、ワイヤーケーブル2の長さを容易に調整することができる。この結果、ワイヤーケーブル2の張力を非常に容易に調整することができる。
【0093】
なお、ここでは、ケーブル本体21の一端側に張力調整部材30Bを取り付け、他端側には係合部材23を取り付けているが、ケーブル本体21の両端に張力調整部材30Bを取り付けることもできる。ここで、ケーブル本体21の一端側に張力調整部材30Bを取り付けるようにすることにより、張力調整部材30Bは係合部材23よりも複雑な部品であるから、複雑な部品を少なくすることができる利点がある。また、ケーブル本体21の両端側に張力調整部材30Bを設ければ、フードパネル1の両端側のいずれにおいてもワイヤーケーブル2の張力調整を行うことができる利点がある。
【0094】
〔第6の実施形態〕
続いて、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第3の実施形態と比較して、張力調整部材の構成が異なっている。図11に示すように、本実施形態に係る張力調整部材30Cは、円筒部35Aを備えており、円筒部35Aには、螺旋状に切り欠かれた螺旋溝35Bが形成されている。張力調整部材30Cは、螺旋状溝部材を構成する。
【0095】
さらに、パネル本体11の端末に形成されたL型フランジ14における鉛直部14Bには、段付係合部16が形成されている。段付係合部16は、図9に示す係合部15における直線部15Aおよび係止孔15Bと同様の直線部16Aおよび係止孔16Bを備えている。また、段付係合部16の直線部15Aにおける切欠端部には、張力調整部材30Cにおける螺旋溝35Bとピッチと略同一幅の段差が形成されている。
【0096】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0097】
さらに、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の一端側に張力調整部材30Cが取り付けられている。この張力調整部材30Cにおける螺旋溝35Bを、フードパネル1におけるL型フランジ14に形成された段付係合部16に係合することにより、ワイヤーケーブル2の長さを容易に調整することができる。
【0098】
このとき、螺旋溝35Bは、張力調整部材30Cを回転させることによって段付係合部16にねじ込むことができるので、ねじ込み量を容易に調整することができる。また、ワイヤーケーブル2の張力は、段付係合部16に対する張力調整部材30Cのねじ込み量によって調整される。したがって、ワイヤーケーブル2の張力を非常に容易に調整することができる。
【0099】
〔第7の実施形態〕
続いて、本発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第2の実施形態と比較して、L型フランジの態様が主に異なっている。図12は、本実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。図12に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設されたワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と係合部材23とを備えている。
【0100】
フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ41が形成されている。このL型フランジ41は、パネル本体11を2段階で折り返し、その下端部でさらに折り返して形成されている。こうして、L型フランジ41は、水平部41Aと鉛直部41Bとを備えている。
【0101】
さらに、パネル本体11とL型フランジ14とは一体的に形成されているとともに、鉛直部41Bは水平部41Aよりも厚肉であり、鉛直部41Bの肉厚は水平部41Aの肉厚のおよそ2倍とされている。また、水平部41Aとパネル本体11とはほぼ同一の肉厚とされている。このため、鉛直部41Bは、パネル本体11よりも肉厚であり、鉛直部41Bの肉厚はパネル本体11の肉厚のおよそ2倍とされている。
【0102】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第2の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0103】
さらに、L型フランジ41における鉛直部41Bは、水平部41Aよりも厚肉に形成されている。このため、ワイヤーケーブル2が接続される鉛直部41Bの剛性を高くすることができるので、ワイヤーケーブル2の張力がパネル本体11に好適に伝達されることとなる。この結果、パネル本体11の湾曲形状を精度よく調整することができる。
【0104】
〔第8の実施形態〕
さらに、本発明の第8の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第2の実施形態と比較して、L型フランジの態様が主に異なっている。図13は、本実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図である。図13に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と係合部材23とを備えている。
【0105】
フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ42が形成されている。このL型フランジ42は、パネル本体11を2段階で折り返して形成されている。こうして、L型フランジ42は、水平部42Aと鉛直部42Bとを備えている。さらに、パネル本体11とL型フランジ42とは一体的に形成されている。ここで、L型フランジ42は、パネル本体11よりも厚肉であり、L型フランジ42の肉厚はパネル本体11の肉厚のおよそ2倍とされている。
【0106】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第2の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0107】
さらに、L型フランジ42は、フードパネル1におけるパネル本体11よりも厚肉に形成されている。このため、ワイヤーケーブル2が接続されるL型フランジ42の剛性を高くすることができるので、ワイヤーケーブル2の張力がパネル本体11に好適に伝達されることとなる。この結果、パネル本体11の湾曲形状を精度よく調整することができる。
【0108】
〔第9の実施形態〕
続いて、本発明の第9の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第2の実施形態と比較して、L型フランジの態様が主に異なっている。図14は、本実施形態に係る車両用フードパネルの正断面図、図15はその分解斜視図である。
【0109】
図14に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と係合部材23とを備えている。
【0110】
フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ43が形成されている。このL型フランジ43は、パネル本体11を2段階で折り返して形成されている。こうして、L型フランジ43は、水平部43Aと鉛直部43Bとを備えている。さらに、L型フランジ43は、図15にも示すように、補強アングル材43Cを備えている。補強アングル材43Cは、L型フランジ43における水平部43Aおよび鉛直部43Bに対して溶接固定されている。
【0111】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第2の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0112】
さらに、L型フランジ43は、水平部43Aおよび鉛直部43Bに補強アングル材43Cが取り付けられ、フードパネル1におけるパネル本体11よりも厚肉に形成されている。このため、ワイヤーケーブル2が接続されるL型フランジ43の剛性を高くすることができるので、ワイヤーケーブル2の張力がパネル本体11に好適に伝達されることとなる。この結果、パネル本体11の湾曲形状を精度よく調整することができる。
【0113】
〔第10の実施形態〕
次に、本発明の第10の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第2の実施形態と比較して、L型フランジの態様が主に異なっている。図16は、本実施形態に係る車両用フードパネルの斜視図、図17は図16のI−I線断面図である。
【0114】
図16および図17に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、図示しない車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネル1およびフードパネル1に張設された2本のワイヤーケーブル2を備えている。ワイヤーケーブル2は、ケーブル本体21と係合部材23とを備えている。
【0115】
フードパネル1は、パネル本体11を有しており、パネル本体11の両側端末には、L型フランジ44が形成されている。このL型フランジ44は、パネル本体11を2段階で折り返して形成されている。こうして、L型フランジ44は、水平部44Aと鉛直部44Bとを備えている。さらに、L型フランジ44におけるワイヤーケーブル2の係合部材23が係合される位置に対応した水平部44Aと鉛直部44Bとの間の屈曲辺には、図17にも示すビート゛44Cが形成されている。
【0116】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第2の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0117】
さらに、L型フランジ44におけるワイヤーケーブル2の係合部材23が係合される位置に対応した水平部44Aと鉛直部44Bとの間の屈曲辺には、ビート゛44Cが形成されている。このため、ワイヤーケーブル2が接続されるL型フランジ44の剛性を高くすることができるので、ワイヤーケーブル2の張力がパネル本体11に好適に伝達されることとなる。この結果、パネル本体11の湾曲形状を精度よく調整することができる。
【0118】
〔第11の実施形態〕
続いて、本発明の第11の実施形態について説明する。図18は、本実施形態に係る車両用フード構造を裏側から見た裏面図、図19は、図18のII−II線断面図である。図18に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、フードパネル1と、複数本、ここでは6本の第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを備えている。フードパネル1は、図19にも示すように、上記第1の実施形態と同様、パネル本体11とフランジ12とを備えている。
【0119】
また、フランジ12には、6本のワイヤーケーブル2A〜2Fが設けられる位置のそれぞれに上記第1の実施形態と同様の図示しない係合孔が形成されている。さらに、ワイヤーケーブル2A〜2Fは、いずれも上記第1の実施形態におけるワイヤーケーブル2と同様の構成を有しており、図3に示すケーブル本体21と係合球22とを備えて構成されている。
【0120】
他方、本実施形態に係る車両用フード構造では、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのそれぞれに対して、ワイヤー切断手段となる第1切断装置50A〜第6切断装置50Fが設けられている。第1切断装置50A〜第6切断装置50Fは、いずれも第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを切断するカッタ部材と、カッタ部材を駆動するアクチュエータとを備えている。
【0121】
さらに、第1切断装置50A〜第6切断装置50Fにおけるアクチュエータは、それぞれ駆動制御ECU(Electronic control unit)51に接続されており、駆動制御ECU51には、プリクラッシュセンサ52に接続されている。また、駆動制御ECU51とプリクラッシュセンサ52との間にはプリクラッシュECU53が介在されている。
【0122】
駆動制御ECU51は、車両に搭載されたコンピュータであり、CPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。この駆動制御ECU51は、プリクラッシュECU53から受信したプリクラッシュ信号に基づいて、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのうち、切断するワイヤーケーブルを決定する。
【0123】
駆動制御ECU51は、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのうち、切断すると決定したワイヤーケーブルに設けられた第1切断装置50A〜第6切断装置50Fのうちの切断装置に対して切断信号を送信する。駆動制御ECU51が送信した切断信号を受信した切断装置は、アクチュエータによってカッタを駆動させてワイヤーケーブルを切断する。
【0124】
プリクラッシュセンサ52は、たとえば図示しない車両の前部に設けられており、車両前方における物体までの車両からの距離およびこの物体の車両に対する相対速度を検出する。プリクラッシュセンサ52は、物体までの車両からの距離に対応する距離信号および物体の車両に対する相対速度に対応する相対速度信号をプリクラッシュECU53に送信する。
【0125】
プリクラッシュECU53では、プリクラッシュセンサ52から送信される距離信号および相対速度信号に基づいて、車両と物体との衝突可能性を算出する。また、車両と物体との衝突可能性が高く、たとえば所定のしきい値を超えた場合には、車両に物体が衝突することによる外側荷重を算出する。プリクラッシュECU53は、外側荷重取得手段を構成する。また、プリクラッシュECU53は、算出した外側荷重に対応するプリクラッシュ信号を駆動制御ECU51に送信する。
【0126】
次に、本実施形態に係る車両用フード構造の動作・作用について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造では、フードパネルに物体が衝突すると想定される場合に、車両に掛かる外側荷重を推定するとともに、推定した外側荷重に対応させてワイヤーケーブルを切断することにより、物体に与える荷重を軽減する。
【0127】
具体的に、図20(a)に示すように、フードパネル1におけるパネル本体11に物体Mが衝突する例について説明する。この場合、たとえば、図20(a)に示すように、パネル本体11に物体Mが衝突してもワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21がフードパネル1に張設されたままでは、衝撃吸収性が高くなく、図20(b)に示すように、パネル本体11の変形量Sの増加に伴い、パネル本体11からの反力となって物体に掛かる荷重Fが大きくなってしまう。
【0128】
これに対して、図21(a)に示すように、パネル本体11に物体Mが衝突したときに、ワイヤーケーブル2を切断することにより、物体に掛かる荷重Fを軽減することができる。ただし、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fが張設された状態では、1本のワイヤーケーブルを切断したとしても、他のワイヤーケーブルが張設されていることから、物体Mに掛かる荷重Fはある域までは増加し続けることとなる。
【0129】
そこで、プリクラッシュECU53で算出された外側荷重に応じて、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを順次切断するようにして、図21(b)に示すように、パネル本体11の変形量Sが増加しても、物体Mに掛かる荷重が、予め設定された最大荷重FMAXを超えないように調整する。ここでは、パネル本体11の変形量Sが増加し、物体Mに掛かる荷重が最大荷重FMAXに到達するたびに、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを順次1本ずつ切断していく。
【0130】
具体的に、変形量Sが第1変形量S1となって荷重FがFMAXに到達するときに、第5ワイヤーケーブル2Eを切断し、第2変形量S2となって荷重FがFMAXに到達するときに第6ワイヤーケーブル2Fを切断する。続いて、変形量Sが第3変形量S3となって荷重FがFMAXに到達するとときに第4ワイヤーケーブル2Dを切断し、変形量Sが第4変形量S4となって荷重FがFMAXに到達するとときに第2ワイヤーケーブル2Bを切断している。
【0131】
このように、本実施形態に係る車両用フード構造では、パネル本体11の変形量Sが増加しても、物体Mに掛かる荷重が大きくならず、物体Mに掛かる荷重が最大荷重FMAXを超えないようにすることができる。したがって、フードパネル1の湾曲面を容易に後退させることができるようにして、衝撃吸収性能を高めることができる。
【0132】
さらに、本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0133】
〔第12の実施形態〕
本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第11の実施形態と比較して、切断装置の態様が主に異なる。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第11の実施形態と同様、フードパネル1と、複数本、ここでは6本の第1ワイヤーケーブル〜第6ワイヤーケーブルを備えている。
【0134】
また、図22に示すように、ワイヤーケーブル2が設けられた位置における下方のエンジンルーム内には、カッタ装置55が設けられている。このカッタ部材は、6本のワイヤーケーブルのそれぞれに対応させて設けられている。カッタ装置55は、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21を切断可能なカッタ部55Aと、カッタ部55Aを支持する台座55Bとを備えている。
【0135】
カッタ部55Aは、ワイヤーケーブル2を挟んだフードパネル1の反対側に配置され、ワイヤーケーブル2の張設方向に交差し、ワイヤーケーブル2に面する方向を向いて配設された突起部からなる。また、台座55Bがエンジンルームの所定の位置に配置されて固定されている。
【0136】
かかる構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、物体Mがパネル本体11に衝突すると、パネル本体11がエンジンルーム側に変形する。このパネル本体11の変形に伴って、ワイヤーケーブル2もエンジンルーム側に移動する。ワイヤーケーブル2がエンジンルーム側に移動すると、カッタ装置55におけるカッタ部55Aに当接し、ワイヤーケーブル2が切断される。
【0137】
このように、本実施形態に係る車両用フード構造では、パネル本体11がエンジンルーム側に変形すると、カッタ装置55によってワイヤーケーブル2が切断される。したがって、フードパネル1の湾曲面を容易に後退させることができ、衝撃吸収性能を高めることができる。
【0138】
しかも、パネル本体11が変形する部位は、物体Mが衝突する部位であることから、物体が衝突した部位における近傍のワイヤーケーブルが切断されることとなる。このため、物体に掛かる荷重をさらに低減することができるので、その分衝撃吸収性を高いものとすることができる。
【0139】
さらに、本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第1の実施形態と同様、ワイヤーケーブル2におけるケーブル本体21の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなくワイヤーケーブル2を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0140】
〔第13の実施形態〕
次に、本発明の第13の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第1の実施形態と比較して、ワイヤーケーブルの取付態様が主に異なっている。図23は、本実施形態に係る車両用フード構造の概略斜視図である。図23に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、パネル本体11を備えるフードパネル1を有している。この点は、上記第1の実施形態と同様である。また、パネル本体11の後端部における幅方向端部には、フランジが形成されており、フランジにはワイヤーケーブルを取り付けるための係合孔13が形成されている。
【0141】
また、本実施形態に係る車両用フード構造は、ワイヤーケーブルとして、左右方向に張設された主ワイヤーケーブル60と、前後方向に張設された従ワイヤーケーブル61とを備えている。主ワイヤーケーブル60は、上記第1の実施形態と同様、パネル本体11の側方端末に形成された係合孔13に取り付けられて張設されている。その一方、従ワイヤーケーブル61は、パネル本体11の後端部の幅方向略中央位置に形成された取付部62に取り付けられている。
【0142】
この従ワイヤーケーブル61には、長さ調整機構63が取り付けられている。この長さ調整機構63によって従ワイヤーケーブル61の長さ調整が可能とされている。長さ調整機構63は、引張調整手段となる。また、従ワイヤーケーブル61が主ワイヤーケーブル60の張力を調整する調整ワイヤーとなる。
【0143】
さらに、従ワイヤーケーブル61が、主ワイヤーケーブル60の略中央部に巻きつけられて主ワイヤーケーブル60と従ワイヤーケーブル61とが接合されている。このため、従ワイヤーケーブル61は、両端部がパネル本体11の後端部に形成された取付部62に取り付けられ、主ワイヤーケーブル60で折り返されている。
【0144】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなく主ワイヤーケーブル60を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0145】
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60の略中央部に従ワイヤーケーブル61が巻きつけられており、従ワイヤーケーブル61には長さ調整機構63が取り付けられている。この長さ調整機構63により、従ワイヤーケーブル61の長さが調整される。
【0146】
ここで、図24(a)に示すように、主ワイヤーケーブル60に対して従ワイヤーケーブル61が巻き付けられている状態で、従ワイヤーケーブル61の長さを短くすると、図24(b)に示すように、主ワイヤーケーブル60の中央部が後方に引っ張られ、主ワイヤーケーブル60と従ワイヤーケーブル61によって略Y字形状が形成される。
【0147】
このとき、主ワイヤーケーブル60の張力が増大することから、主ワイヤーケーブル60によってフードパネル1におけるパネル本体11を湾曲させる際の張力が増加し、フードパネル1の湾曲形状を調整することができる。このように、長さ調整機構63によって従ワイヤーケーブル61の長さを調整することにより、フードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができるので、容易にフードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができる。
【0148】
また、たとえば、図25に示すように、パネル本体11に複数のワイヤーケーブル2,2を張設する際、これらのワイヤーケーブル2が絡むことなく設けられていた場合には、ワイヤーケーブル2の長さを調整するために、複数の長さ調整機構を要することとなってしまう。
【0149】
これに対して、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60に対して従ワイヤーケーブル61が巻き付けられて、両者が絡み合っている。このため、従ワイヤーケーブル61の長さを調整する長さ調整機構63を設けるのみで、主ワイヤーケーブル60の張力をも調整することができる。したがって、部品点数の軽減に寄与することができるとともに、ワイヤーケーブルの調整回数を少なくすることができる。
【0150】
〔第14の実施形態〕
続いて、第14の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第13の実施形態と比較して、主ワイヤーケーブル60に対する従ワイヤーケーブル61の巻き付け態様が主に異なっている。図26は、本実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【0151】
図26(a)に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60は、パネル本体11の左右方向に張設され、主ワイヤーケーブル60に対して、従ワイヤーケーブル61が3箇所で巻き付けられている。また、パネル本体11には、その両端部の2箇所に従ワイヤーケーブル61を取り付ける後方端部取付部62が設けられており、その中間位置に、従ワイヤーケーブル61を引っ掛けて折り返す折返部材64が設けられている。
【0152】
従ワイヤーケーブル61は、その両端部がそれぞれパネル本体11における後方端部取付部62に取り付けられるとともに、その長さ方向途中位置で折返部材64に引っ掛けられて折り返されている。また、従ワイヤーケーブル61は、主ワイヤーケーブル60の長さ方向における複数、本実施形態では3箇所の途中位置に巻きつけられている。こうして、従ワイヤーケーブル61は、略V字が並設された形状とされている。さらに、従ワイヤーケーブル61における長さ方向途中位置には、従ワイヤーケーブル61の長さを調整する長さ調整機構63が設けられている。
【0153】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなく主ワイヤーケーブル60を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0154】
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60の3箇所の位置に従ワイヤーケーブル61が巻きつけられており、従ワイヤーケーブル61には長さ調整機構63が取り付けられている。この長さ調整機構63により、従ワイヤーケーブル61の長さが調整される。
【0155】
ここで、図26(a)に示すように、主ワイヤーケーブル60に対して従ワイヤーケーブル61が巻きつけられている状態で、従ワイヤーケーブル61の長さを短くすると、図26(b)に示すように、主ワイヤーケーブル60の中央部が後方に引っ張られる。このような態様によっても、従ワイヤーケーブル61の長さを調整することにより、フードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができるので、容易にフードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができる。さらには、部品点数の軽減に寄与することができるとともに、ワイヤーケーブルの調整回数を少なくすることができる。
【0156】
〔第15の実施形態〕
続いて、第15の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第13の実施形態と比較して、ワイヤーケーブルの張設態様が主に異なっている。図27は、本実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、第3ワイヤーケーブルの長さ調整前の概略斜視図、(b)は第3ワイヤーケーブルの長さ調整後の概略斜視図である。
【0157】
図27(a)に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造では、パネル本体11に対して、左第1ワイヤーケーブル65A、右第1ワイヤーケーブル65B、および第2ワイヤーケーブル66が取り付けられている。また、第1ワイヤーケーブル65A,65Bには、第3ワイヤーケーブル67が巻き付けられている。
【0158】
また、パネル本体11には、第1ワイヤーケーブル65A,65Bを取り付けるための前方端部取付部68が前方両端部近傍位置にそれぞれ設けられている。さらに、パネル本体11における後方位置には、上記第13の実施形態と同様、パネル本体11の後端部の幅方向略中央位置に後方中央取付部62が設けられている。
【0159】
第1ワイヤーケーブル65A,65Bは、その一端部がパネル本体11の前方端部近傍位置に設けられた前方端部取付部68に取り付けられ、他端部が係合孔13に取り付けられている。また、第2ワイヤーケーブル66の両端部は、いずれも後方中央取付部62に取り付けられている。
【0160】
また、第3ワイヤーケーブル67は、一端側が左第1ワイヤーケーブル65Aに巻き付けられており、他端側が右第1ワイヤーケーブル65Bに巻き付けられている。さらに、第3ワイヤーケーブル67の略中央部には、第2ワイヤーケーブル66が巻き付けられている。また、第2ワイヤーケーブル66には、長さ調整機構63が設けられている。
【0161】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、第1ワイヤーケーブル65A,65Bおよび第3ワイヤーケーブル67の張力でフードパネル1が湾曲させられていることから、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、インナパネルを用いることなく主ワイヤーケーブル60を用いていることから、フード全体の軽量化に寄与することができる。
【0162】
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、第3ワイヤーケーブル67の略中央部に第2ワイヤーケーブル66が巻きつけられており、第2ワイヤーケーブル66には長さ調整機構63が取り付けられている。この長さ調整機構63により、従ワイヤーケーブル61の長さが調整される。
【0163】
ここで、図27(a)に示すように、第3ワイヤーケーブル67に対して第2ワイヤーケーブル66が巻きつけられている状態で、第2ワイヤーケーブル66の長さを短くすると、図27(b)に示すように、第3ワイヤーケーブル67の中央部が後方に引っ張られ、第3ワイヤーケーブル67と第2ワイヤーケーブル66によって略Y字形状が形成される。さらには、第3ワイヤーケーブル67が内側に引っ張られることから、第1ワイヤーケーブル65A,65Bも変形する。
【0164】
このとき、第3ワイヤーケーブル67の張力および第1ワイヤーケーブル65A,65Bにおける幅方向の張力が増大することから、第1ワイヤーケーブル65A,65Bおよび第3ワイヤーケーブル67によってフードパネル1におけるパネル本体11を湾曲させる際の張力が増加し、フードパネル1の湾曲形状を調整することができる。このように、長さ調整機構63によって第2ワイヤーケーブル66の長さを調整することにより、フードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができるので、容易にフードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができる。
【0165】
しかも、第1ワイヤーケーブル65A,65Bや第3ワイヤーケーブル67の張り方や、さらに多くのワイヤーケーブルを設けることにより、フードパネル1の湾曲形状が複雑となる場合であっても、対応をしやすくなる。このときでも、長さ調整機構63によって容易に湾曲形状を調整することができる。
【0166】
〔第16の実施形態〕
次に、本発明の第16の実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第14の実施形態と比較して、主ワイヤーケーブル60の態様が主に異なっている。図28は、実施形態に係る車両用フード構造を示し、(a)は、従ワイヤーケーブルの長さ調整前の模式的斜視図、(b)は従ワイヤーケーブルの長さ調整後の模式的斜視図である。
【0167】
図28(a)に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60は、パネル本体11の左右方向に張設され、主ワイヤーケーブル60に対して、従ワイヤーケーブル61が3箇所で巻き付けられている。また、パネル本体11には、その両端部2箇所に従ワイヤーケーブル61を取り付ける後方端部取付部62が設けられており、その中間位置に、従ワイヤーケーブル61を引っ掛けて折り返す折返部材64が設けられている。
【0168】
従ワイヤーケーブル61は、その両端部がそれぞれパネル本体11における後方端部取付部62に取り付けられるとともに、その長さ方向途中位置で折返部材64に引っ掛けられて折り返されている。また、従ワイヤーケーブル61は、主ワイヤーケーブル60の長さ方向における複数、本実施形態では3箇所の途中位置に巻きつけられている。こうして、従ワイヤーケーブル61は、略V字が並設された形状とされている。さらに、従ワイヤーケーブル61における長さ方向途中位置には、従ワイヤーケーブル61の長さを調整する長さ調整機構63が設けられている。
【0169】
主ワイヤーケーブル60には、複数の結び目60Aが形成されている。結び目60Aは、主ワイヤーケーブル60を単純に結ぶことによって形成されている。この結び目60Aは主ワイヤーケーブル60における左右方向の両側で従ワイヤーケーブル61が巻き付けられた位置の内側位置と、左右方向の中央で従ワイヤーケーブル61が巻き付けられた位置の両側にそれぞれ形成されている。
【0170】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両用フード構造では、上記第14の実施形態と同様、インナパネルを用いなくとも、フードパネル1によってフードの形状や強度を維持することができる。また、フード全体の軽量化に寄与することができる。さらには、長さ調整機構63が取り付けられていることにより、容易にフードパネル1におけるパネル本体11の湾曲形状を調整することができるとともに、ワイヤーケーブルの調整回数を少なくすることができる。
【0171】
さらに、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60には、複数の結び目60Aが形成されている。仮に、図29(a)に示すように、このような結び目が形成されていない場合について説明する。この場合、従ワイヤーケーブル61の配置によっては、従ワイヤーケーブル61の長さを短くすると、図29(b)に示すように、従ワイヤーケーブル61の主ワイヤーケーブル60に対する巻き付け位置が、主ワイヤーケーブル60の中央方向に寄ってしまい、所望の位置に従ワイヤーケーブル61を調整できないことが懸念される。
【0172】
この点、本実施形態に係る車両用フード構造では、主ワイヤーケーブル60には、複数の結び目60Aが形成されている。このため、図28(b)に示すように、従ワイヤーケーブル61が中央へ移動することを結び目60Aが防止する。このため、従ワイヤーケーブル61の位置を容易に調整することができる。
【0173】
〔第17の実施形態〕
続いて、本発明の第17の実施形態について説明する。図30は、本実施形態に係る車両用フード構造を備えた車両の一部切欠斜視図である。図30に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造では、車両CにおけるフロントウィンドウガラスWの前方に設けられたフードパネル1の内側に車両のプリクラッシュに対応させて用いるプリクラッシュワイヤー70が張設されている。
【0174】
フードパネル1におけるパネル本体11の裏面側における前後方向端末位置には、図31(a)に示すように、プリクラッシュワイヤー取付部71が設けられており、プリクラッシュワイヤー70の両端部は、それぞれプリクラッシュワイヤー取付部71に取り付けられている。このようにして、プリクラッシュワイヤー70は、車両の前後方向に沿って配設されている。
【0175】
また、フードパネル1に覆われたエンジンルーム内には、プリクラッシュワイヤーを牽引するプリクラッシュワイヤー牽引手段となる揺動アクチュエータ機構72が設けられている。揺動アクチュエータ機構72は、ケーシング72Aを備えており、ケーシング72Aの内側に駆動手段となるモータ72Bが設けられている。また、モータ72Bには、アーム部材72Cが取り付けられている。アーム部材72Cは、モータ72Bを作動させることによって駆動されて揺動し、その揺動軌跡上にプリクラッシュワイヤー70が配設されている。
【0176】
アーム部材72Cにおける先端部には、プリクラッシュワイヤー70を押し下げる押下部材72Dが取り付けられている。モータ72Bを作動させると、アーム部材72Cが揺動し、押下部材72Dによってプリクラッシュワイヤー70の長さ方向途中位置が押し下げられて牽引される。アーム部材72Cおよび押下部材72Dが、プリクラッシュワイヤー70の張設方向に交差する方向に移動するアクチュエータとなる。
【0177】
さらに、揺動アクチュエータ機構72におけるモータ72Bには、上記第11の実施形態で説明したプリクラッシュECU53が接続され、プリクラッシュECU53にはプリクラッシュセンサ52が接続されている。プリクラッシュECU53は、車両と物体との衝突可能性が高く、たとえば所定のしきい値を超えた場合には、衝突予測信号を揺動アクチュエータ機構72におけるモータ72Bに送信する。モータ72Bは、衝突予測信号を受信した場合に作動し、図31(b)に示すようにアーム部材72Cを揺動させてプリクラッシュワイヤー70の途中位置を押し下げる。
【0178】
次に、本実施形態に係る車両用フード構造の動作・作用について説明する。本実施形態に係る車両用フード構造では、フードパネル1に物体が衝突すると想定される場合に、プリクラッシュワイヤー70を牽引することによって、フードパネル1を屈曲させて、フードパネル1がフロントウィンドウガラスWに衝突することを防止するものである。
【0179】
車両Cの正面に物体が衝突した場合などには、衝突によって受ける荷重でフードパネル1が後方に押しやられ、フロントウィンドウガラスWに衝突してしまうことが考えられる。そこで、車両Cの正面に物体が衝突することが予測された場合に、フードパネル1を安定して屈曲させることで、フードパネル1によるフロントウィンドウガラスWの損傷を防止するものである。
【0180】
車両Cに衝突が生じるときに具体的な流れについて図32を用いて説明する。まず、プリクラッシュECU53では、プリクラッシュセンサ52で検出された車両Cの前方における物体の車両Cとの相対速度や相対距離に基づいて、物体が車両Cに衝突する可能性を算出して取得する。物体が車両Cに衝突する可能性から、物体の車両Cに対する衝突を事前に察知する(S1)。
【0181】
次に、物体の車両Cに対する衝突を察知した場合には、プリクラッシュECU53は、揺動アクチュエータ機構72におけるモータ72Bに衝突信号を送信し、モータ72Bを作動させる。モータ72Bが作動すると、アーム部材72Cが揺動し、押下部材72Dによってプリクラッシュワイヤー70を押し下げて引っ張ることとなる(S2)。
【0182】
ここで、プリクラッシュワイヤー70の両端部は、フードパネル1の前後端部に取り付けられている。このため、プリクラッシュワイヤー70が引っ張られると、プリクラッシュワイヤー70の張力によってフードパネル1が外方向に突出するように屈曲し、フードパネル1が「く」の字状に撓む(S3)。
【0183】
その後、プリクラッシュECU53で察知したとおりに、物体が車両Cの前方に衝突した場合に、フードパネル1は、一部が屈曲していることから、この屈曲位置からその屈曲量が大きくなる。このようにして物体が車両Cの前方に衝突した後、フードパネル1を安定して変形させることができる(S4)。こうして、フードパネル1を安定して変形させることにより、フードパネル1の後端部分がフロントウィンドウガラスWに接触することを回避することができる(S5)。その結果、フードパネル1によるフロントウィンドウガラスWの損傷を防止することができる。
【0184】
〔第18の実施形態〕
続いて、本発明の第18の実施形態について説明する。図33は、本実施形態に係る車両用フード構造を裏側から見た状態を模式的に示す裏面図、図34は、図33のIII−III線断面図である。図33に示すように、本実施形態に係る車両用フード構造は、上記第11の実施形態と同様、フードパネル1と、複数本、ここでは6本の第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fを備えている。フードパネル1は、図34に示すように、パネル本体11とフランジ12とを備えている。
【0185】
また、フランジ12には、6本のワイヤーケーブル2A〜2Fが設けられる位置のそれぞれに上記第1の実施形態と同様の図示しない係合孔が形成されている。さらに、ワイヤーケーブル2A〜2Fは、いずれも上記第1の実施形態におけるワイヤーケーブル2と同様の構成を有しており、図3に示すケーブル本体21と係合球22とを備えて構成されている。
【0186】
他方、本実施形態に係る車両用フード構造では、第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのそれぞれに対して、錘となる第1マス部材80A〜第6マス部材80Fがそれぞれ取り付けられている。図33に示す例では、第1マス部材80A〜第6マス部材80Fは、いずれも第1ワイヤーケーブル2A〜第6ワイヤーケーブル2Fのそれぞれの長手方向略中央位置に設けられているが、実際にはその位置は適宜変更される。
【0187】
いま、図34に示すように、パネル本体11とワイヤーケーブル2との間にマス部材80を挟み込み、パネル本体11の振動を直接ワイヤーに伝達することを考える。この場合、図35に示すような第1質量体M1、第2質量体M2、第1弾性体K1、および第2弾性体K2を備える2自由度振動系として考えることができる。図34に示す車両用フード構造を図35に示す2自由度振動系に当てはめると、第1質量体M1がパネル本体の有効質量、第2質量体M2がワイヤーケーブル2およびマス部材80の有効質量、第1弾性体K1がパネル本体11の剛性、第2弾性体K2がワイヤーケーブル2およびマス部材80の剛性となる。
【0188】
2自由度振動系では、共振周波数f(t)は質量体の質量および弾性体の弾性係数によって決定され、たとえば図36に示す波形を描く。ここで、第1質量体M1および第2質量体M2の質量をm1,m2とし、第1弾性体K1および第2弾性体K2の弾性係数をk1,k2とすると、振幅の第1ピークωn1および第2ピークωn2は、それぞれ下記(1)式および(2)式に基づいて算出される。
【数1】
【0189】
このように、2自由度振動系の共振周波数f(t)は、質量体の質量および弾性体の弾性係数によって決定される。このことから、ワイヤーケーブル2およびマス部材80の質量や弾性係数を調整することによって、共振周波数f(t)を制御することができ、振動の抑制に寄与することができる。
【0190】
次に、具体的にワイヤーケーブル2の質量や弾性係数を調整する手段について説明する。図33に示す例では、ワイヤーケーブル2にマス部材80を取り付けることで重量および弾性係数を調整しているが、ワイヤーケーブル2の断面形状を設定することによって、ワイヤーケーブル2の質量や弾性係数を調整することができる。
【0191】
具体的には、図37(a)に示すように、断面形状が中空の円形である態様とすることができるし、図37(b)に示すように、中実の円形である態様とすることもできる。また、図37(c)に示すように、中空の矩形状とすることもできるし、図37(d)に示すように、中実の矩形状とすることもできる。さらには、図37(e)に示すように、中空の三角形状とすることもできるし、図37(f)に示すように、中実の三角形状とすることもできる。
【0192】
あるいは、図38(a)に示すように、中空の楕円形状とすることもできるし、図38(b)に示すように、中実の楕円形状とすることもできる。さらには、図38(c)に示すように、中空の長方形状とすることもできるし、図38(d)に示すように、中実の長方形状とすることもできる。これらのように、ワイヤーケーブル2の断面形状を設定することによって、ワイヤーケーブル2の質量や弾性係数を調整することができる。
【0193】
さらには、ワイヤーケーブル2の長手方向の形状を調整することによって、ワイヤーケーブル2の質量や弾性係数を調整することもできる。ここでのワイヤーケーブル2の長手方向の形状としては、図39(a)に示すように、側面形状が長方形となる形状としたり、図39(b)に示すように、側面形状が、中央部が膨らんだ太鼓状となる形状としたり、図39(c)に示すように、側面形状が、長手方向の中央部に太径部を備えた上下の稜線が略正規分布となるような正規分布形状としたりすることができる。これらの太鼓状形状や正規分布形状とすれば、ワイヤーケーブル2の長手方向中央部に大重量部が形成される。こうして、ワイヤーケーブル2の質量全体を増加させることなく、有効質量を増加させることができる。
【0194】
ここで、図39(a)〜(c)の各例では、断面形状は円形であるものを想定しているが、そのほか、断面形状は、図37および図38に示す各形状などとすることもできる。もちろん、ここで例示していないその他の形状とすることもできる。
【0195】
さらに、図40に示すワイヤーケーブル90とすることもできる。ワイヤーケーブル90は、長手方向中央部に設けられた中央位置部材91と、長手方向端部に設けられた端位置部材92とを備えている。ここで、中央位置部材91は金属製とされ、端位置部材92としては軽量素材としての樹脂、たとえば繊維強化樹脂が用いられている。中央位置部材91として用いられている金属は、端位置部材92として用いられている樹脂よりも大重量とされている。この場合には、金属製の中央位置部材91によってワイヤーケーブル90の長手方向中央部に大重量部が形成される。
【0196】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。特に、各実施形態において、種々の態様のワイヤーケーブル等を用いているが、各実施形態における態様を適宜組み合わせた態様とすることもできる。また、フードパネルとしては、車体の外側面に配設されるエンジンルームを覆うフードパネルを例としている。これに対して、その他のフードを対象とすることもできる。
【0197】
また、上記各実施形態では、牽引材としてワイヤーケーブルを用いているが、その他の牽引材を用いることもできる。その他の牽引材としては、たとえば金属製または樹脂製の
長尺棒材や長尺板材、またこれらの棒材とワイヤーとを組み合わせたものなどを用いることができる。また、これらの牽引材としては、断面円形状、断面矩形状など、適宜の形状のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0198】
1…フードパネル、2…ワイヤーケーブル、11…パネル本体、12…フランジ、13…係合孔、13A…大径部、13B…幅狭部、14…L型フランジ、15…係合部、15A…直線部、15B…係止孔、16…段付係合部、16A…直線部、16B…係止孔、21…ケーブル本体、22…係合球、23…係合部材、23A…円筒部、23B手くびれ部、30…張力調整部材、50A〜50F…切断装置、52…プリクラッシュセンサ、55…カッタ装置、60…主ワイヤーケーブル、60A…結び目、61…従ワイヤーケーブル、63…長さ調整機構、70…プリクラッシュワイヤー、72…揺動アクチュエータ機構、80…マス部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の外側面として配設されるフードパネルを備える車両用フード構造であって、
前記フードパネルにおける前記車体の内側面の端末間にワイヤーを張設し、
前記ワイヤーを緊張させて前記フードを湾曲させることによって前記フードパネルに引張曲面が形成されていることを特徴とする車両用フード構造。
【請求項2】
前記ワイヤーの張力を調整する張力調整機構が設けられている請求項1に記載の車両用フード構造。
【請求項3】
前記張力調整機構は、
前記ワイヤーの延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材と、
前記フードパネルに設けられ、前記スリット部材が係合される係合部と、
を備える請求項2に記載の車両用フード構造。
【請求項4】
前記張力調整機構は、
前記ワイヤーの延在方向を中心とした螺旋状の溝が形成された螺旋状溝部材と、
前記フードパネルに設けられ、前記螺旋状溝部材が係合される係合部と、
を備える請求項2に記載の車両用フード構造。
【請求項5】
前記フードパネルは、フードパネル本体と、前記フードパネル本体の側部に形成され、前記フードパネルの端末となるフランジ部とを備えており、
前記フランジ部の肉厚は、前記フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記フードパネル本体から延在した部分を折り曲げることによって前記フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている請求項5に記載の車両用フード構造。
【請求項7】
前記フランジ部は、前記フードパネル本体から延在した部分に補強部材を取り付けることによって前記フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている請求項5に記載の車両用フード構造。
【請求項8】
前記フードパネルは、フードパネル本体と、前記フードパネル本体の側部に形成され、前記フードパネルの端末となるフランジ部とを備えており、
前記フランジ部にビードが形成されている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の車両フード構造。
【請求項9】
前記ワイヤーを切断するワイヤー切断手段を備え、
前記フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となったときに、前記ワイヤー切断手段によって前記ワイヤーを切断する請求項1〜請求項8のうちのいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項10】
前記フードパネルに複数のワイヤーが張設されており、
前記フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となるごとに、前記複数のワイヤーを順次切断する請求項9に記載の車両用フード構造。
【請求項11】
前記ワイヤー切断手段は、前記ワイヤーを挟んだ前記フードパネルの反対側に配置され、前記ワイヤーの張設方向に交差し、前記ワイヤーに面する方向を向いて配設された突起部を備える請求項9に記載の車両用フード構造。
【請求項12】
前記フードパネルに掛かる外側荷重を取得する外側荷重取得手段を備え、
前記外側荷重取得手段で取得された外側荷重が所定のしきい値を超えたときに、前記ワイヤーを切断する請求項9に記載の車両用フード構造。
【請求項13】
前記ワイヤーに絡めて前記フードパネルの端末に取り付けられ、前記ワイヤーの張力を調整する調整ワイヤーを備え、
前記調整ワイヤーの引張調整を行う引張調整手段を備える請求項1に記載の車両用フード構造。
【請求項14】
前記フードパネルにおける前記車体の前後方向端末間を連結するプリクラッシュワイヤーを備え、
前記車体と障害物との衝突が予測された際に、前記プリクラッシュワイヤーを牽引するプリクラッシュワイヤー牽引手段を備える請求項1〜請求項13のうちのいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項15】
前記プリクラッシュワイヤーの張設方向に交差する方向に移動するアクチュエータと、前記アクチュエータを移動させる駆動手段と、を備え、
前記車体と障害物との衝突が予測された際に、前記駆動手段によって前記アクチュエータを移動させる請求項14に記載の車両用フード構造。
【請求項16】
前記ワイヤーに大重量部を形成した請求項1〜請求項15のうちのいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項17】
前記大重量部が錘を取り付けることによって形成されており、
前記錘の形状が、前記ワイヤーの振動方向に応じて決定されている請求項16に記載の車両用フード構造。
【請求項18】
前記大重量部は、前記ワイヤーを太径として形成されている請求項16に記載の車両用フード構造。
【請求項19】
前記ワイヤーは、前記大重量部が金属で形成され、前記大重量部以外の部分が軽量素材で形成されている請求項16に記載の車両用フード構造。
【請求項20】
車体の外側面として配設されるフードパネルを備える車両用フード構造であって、
前記フードパネルにおける前記車体の内側面の端末間に牽引材を張設し、
前記牽引材を緊張させて前記フードを湾曲させることによって前記フードパネルに引張曲面が形成されていることを特徴とする車両用フード構造。
【請求項21】
前記張力調整機構は、
前記牽引材の延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材と、
前記フードパネルに設けられ、前記スリット部材が係合される係合部と、
を備える請求項20に記載の車両用フード構造。
【請求項1】
車体の外側面として配設されるフードパネルを備える車両用フード構造であって、
前記フードパネルにおける前記車体の内側面の端末間にワイヤーを張設し、
前記ワイヤーを緊張させて前記フードを湾曲させることによって前記フードパネルに引張曲面が形成されていることを特徴とする車両用フード構造。
【請求項2】
前記ワイヤーの張力を調整する張力調整機構が設けられている請求項1に記載の車両用フード構造。
【請求項3】
前記張力調整機構は、
前記ワイヤーの延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材と、
前記フードパネルに設けられ、前記スリット部材が係合される係合部と、
を備える請求項2に記載の車両用フード構造。
【請求項4】
前記張力調整機構は、
前記ワイヤーの延在方向を中心とした螺旋状の溝が形成された螺旋状溝部材と、
前記フードパネルに設けられ、前記螺旋状溝部材が係合される係合部と、
を備える請求項2に記載の車両用フード構造。
【請求項5】
前記フードパネルは、フードパネル本体と、前記フードパネル本体の側部に形成され、前記フードパネルの端末となるフランジ部とを備えており、
前記フランジ部の肉厚は、前記フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記フードパネル本体から延在した部分を折り曲げることによって前記フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている請求項5に記載の車両用フード構造。
【請求項7】
前記フランジ部は、前記フードパネル本体から延在した部分に補強部材を取り付けることによって前記フードパネル本体の肉厚よりも厚くされている請求項5に記載の車両用フード構造。
【請求項8】
前記フードパネルは、フードパネル本体と、前記フードパネル本体の側部に形成され、前記フードパネルの端末となるフランジ部とを備えており、
前記フランジ部にビードが形成されている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の車両フード構造。
【請求項9】
前記ワイヤーを切断するワイヤー切断手段を備え、
前記フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となったときに、前記ワイヤー切断手段によって前記ワイヤーを切断する請求項1〜請求項8のうちのいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項10】
前記フードパネルに複数のワイヤーが張設されており、
前記フードパネルに掛かる外側荷重が所定のしきい値となるごとに、前記複数のワイヤーを順次切断する請求項9に記載の車両用フード構造。
【請求項11】
前記ワイヤー切断手段は、前記ワイヤーを挟んだ前記フードパネルの反対側に配置され、前記ワイヤーの張設方向に交差し、前記ワイヤーに面する方向を向いて配設された突起部を備える請求項9に記載の車両用フード構造。
【請求項12】
前記フードパネルに掛かる外側荷重を取得する外側荷重取得手段を備え、
前記外側荷重取得手段で取得された外側荷重が所定のしきい値を超えたときに、前記ワイヤーを切断する請求項9に記載の車両用フード構造。
【請求項13】
前記ワイヤーに絡めて前記フードパネルの端末に取り付けられ、前記ワイヤーの張力を調整する調整ワイヤーを備え、
前記調整ワイヤーの引張調整を行う引張調整手段を備える請求項1に記載の車両用フード構造。
【請求項14】
前記フードパネルにおける前記車体の前後方向端末間を連結するプリクラッシュワイヤーを備え、
前記車体と障害物との衝突が予測された際に、前記プリクラッシュワイヤーを牽引するプリクラッシュワイヤー牽引手段を備える請求項1〜請求項13のうちのいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項15】
前記プリクラッシュワイヤーの張設方向に交差する方向に移動するアクチュエータと、前記アクチュエータを移動させる駆動手段と、を備え、
前記車体と障害物との衝突が予測された際に、前記駆動手段によって前記アクチュエータを移動させる請求項14に記載の車両用フード構造。
【請求項16】
前記ワイヤーに大重量部を形成した請求項1〜請求項15のうちのいずれか1項に記載の車両用フード構造。
【請求項17】
前記大重量部が錘を取り付けることによって形成されており、
前記錘の形状が、前記ワイヤーの振動方向に応じて決定されている請求項16に記載の車両用フード構造。
【請求項18】
前記大重量部は、前記ワイヤーを太径として形成されている請求項16に記載の車両用フード構造。
【請求項19】
前記ワイヤーは、前記大重量部が金属で形成され、前記大重量部以外の部分が軽量素材で形成されている請求項16に記載の車両用フード構造。
【請求項20】
車体の外側面として配設されるフードパネルを備える車両用フード構造であって、
前記フードパネルにおける前記車体の内側面の端末間に牽引材を張設し、
前記牽引材を緊張させて前記フードを湾曲させることによって前記フードパネルに引張曲面が形成されていることを特徴とする車両用フード構造。
【請求項21】
前記張力調整機構は、
前記牽引材の延在方向に沿って離間して配置された複数のスリット部が形成されたスリット部材と、
前記フードパネルに設けられ、前記スリット部材が係合される係合部と、
を備える請求項20に記載の車両用フード構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公開番号】特開2010−179734(P2010−179734A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23727(P2009−23727)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]