車両用ブレーキ液圧制御装置
【課題】基体の大型化を回避しつつ好適にダンパを配設することができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ液圧を制御する制御弁手段Vと、一対のポンプ6と、一対のポンプ6を駆動するモータ200と、が共通の基体100に配置されてなり、基体100の一方の面に制御弁手段Vが装着されるとともに、基体100の一方の面とは反対側となる他方の面にモータ200が取り付けられた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、基体100の他方の面におけるモータ200の取付面201に、ダンパを構成するためのダンパ穴37が開口していることを特徴とする。
【解決手段】ブレーキ液圧を制御する制御弁手段Vと、一対のポンプ6と、一対のポンプ6を駆動するモータ200と、が共通の基体100に配置されてなり、基体100の一方の面に制御弁手段Vが装着されるとともに、基体100の一方の面とは反対側となる他方の面にモータ200が取り付けられた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、基体100の他方の面におけるモータ200の取付面201に、ダンパを構成するためのダンパ穴37が開口していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、例えば、自動車、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)等の車両のブレーキにおける制動力を制御するようにした車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用ブレーキ液圧制御装置では、一般に、ブレーキ液の流れを制御する電磁弁等が取り付けられた基体を有しており、基体には、車輪ブレーキから開放されたブレーキ液を汲み上げてマスタシリンダ側に戻すポンプが装着されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置では、ポンプの吐出側にダンパが設けられており、ポンプにより生じる脈動がダンパによって減衰されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−258687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した特許文献1では、基体における電磁弁の装着面に、ダンパを構成するためのダンパ穴が形成されていた。このため、電磁弁の装着面に対してダンパを配置するための広いスペースを確保する必要があり、基体の大型化を来たし易いという問題を有していた。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、基体の大型化を回避しつつ好適にダンパを配設することができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために創案された本発明は、ブレーキ液圧を制御する制御弁手段と、一対のポンプと、前記一対のポンプを駆動するモータと、が共通の基体に配置されてなり、前記基体の一方の面に前記制御弁手段が装着されるとともに、前記基体の一方の面とは反対側となる他方の面に前記モータが取り付けられた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記基体の前記他方の面における前記モータの取付面に、ダンパを構成するためのダンパ穴が開口していることを特徴とする。
【0007】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、ダンパを構成するためのダンパ穴は、制御弁手段が配置される基体の一方の面(例えば基体の前面)に配置されず、一方の面とは反対側となる基体の他方の面(例えば基体の後面)に開口しているので、基体を大型化させることなくダンパを配設することができ、各種制御時にポンプから吐出されたブレーキ液の脈動を好適に減衰することができる。
しかも、ダンパ穴は、基体の他方の面におけるモータの取付面に開口しているので、基体の他方の面におけるデッドスペースを効率よく利用して配設することができ、基体の大型化をより一層回避することができる。
【0008】
また、本発明は、前記制御弁手段は、マスタシリンダと車輪ブレーキのホイールシリンダとの間に配置される常開型電磁弁および常閉型電磁弁を有し、前記ダンパおよび前記常開型電磁弁は、前記ポンプの軸心と前記モータの出力軸の軸心とを含む基準面で前記基体を二つの領域に分けたときに、一方の領域に配置されており、前記基体は、前記ポンプと前記ダンパとの間を連通する入口流路と、前記ダンパと前記常開型電磁弁との間を連通する出口流路と、を備え、前記入口流路と前記出口流路とが相互に独立した流路として前記基体に設けられていることを特徴とする。
【0009】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、ダンパおよび常開型電磁弁は、ポンプの軸心とモータの出力軸の軸心とを含む基準面で基体を二つの領域に分けたときに、一方の領域に集約されているので、一方の領域において、ポンプ、ダンパおよび常開型電磁弁を流路で好適に接続することができ、基体における流路の配索が簡単になる。このことは、基体の小型化に寄与する。
また、ポンプとダンパとの間を連通する入口流路と、ダンパと常開型電磁弁との間を連通する出口流路と、を備え、入口流路と出口流路とが相互に独立した流路として基体に設けられているので、ダンパに対する入口流路と出口流路とが別系統となり、ポンプから常開型電磁弁への作動液の流れの途中に、直列にダンパを介在させることができる。
これによって、効果的に脈動を減衰することができる車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。したがって、精度の高いブレーキ液圧制御が可能となる。
【0010】
また、本発明は、前記出口流路に、オリフィスが介設されている構成とするのがよい。このように構成することによって、入口流路からダンパを通じて出口流路に作動液が流れる過程で、ダンパより下流の出口流路のオリフィスで作動液の流れが絞られるようになるので、ダンパ内の広い空間で脈動が反響して打ち消し合うとともに、作動液の弾性で脈動が減衰されるようになり、ポンプによる脈動の減衰を効果的に引き出すことができる。
【0011】
また、本発明は、前記制御弁手段が、レギュレータ弁およびサクション弁を備えていることを特徴とする。このような構成では、電磁弁やモータの作動を制御して作動液の液圧を変動させることで、車輪ブレーキの制動力を制御し、車両の挙動を安定させる車両挙動制御を行うことが可能であり、かかる車両挙動制御時において、作動液の脈動を効果的に低減することができる。したがって、精度の高いブレーキ液圧制御が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基体の大型化を回避しつつ好適にダンパを配設することができる車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の基体の内部を可視化した側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の基体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は前面図、(c)は側面図である。
【図3】同じく基体を示す図であり、(a)は後面図、(b)は底面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部の透視図であって、(a)は前面からみた透視図、(b)は側面からみた透視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部の後面からみた透視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部に形成された各装着穴および流路の内面を可視化した斜視図であって、(a)は前面側からみた斜視図、(b)は後面側からみた斜視図である。
【図7】図2(c)のA1−A1線断面図である。
【図8】(a)は図2(c)のB1−B1線断面図、(b)は図2(c)のC1−C1断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部におけるブレーキ液の流れを示す図であり、(a)は通常ブレーキ時の流れを示す図、(b)はアンチロックブレーキ制御の減圧時のブレーキ液の流れを示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部における車両挙動制御時のブレーキ液の流れを示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の一例について説明する。
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。また、以下の説明において、「上下」の語は、基体100の後記する入口ポート21や出口ポート22L等が上となる状態を基準として使用しているが、実際の設置状態とは必ずしも一致しない。
図1に示すように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ液圧制御装置」という。)Uは、4輪自動車等に用いられるものであり、基体100と、基体100の後面15(他方の面)に組み付けられるモータ200(電動モータ)と、基体100の前面(一方の面)11に組み付けられるコントロールハウジング300と、コントロールハウジング300に収容される制御装置400とを備えて構成されている。
【0015】
ブレーキ液圧制御装置Uは、図11に示す液圧回路を具現化したものであり、四つの車輪ブレーキFR,RL,FL,RRのうちの二つの車輪ブレーキFR,RLを制動するためのブレーキ出力系統K1および残り二つの車輪ブレーキFL,RRを制動するためのブレーキ出力系統K2を備えていて、車輪ブレーキFR,RL,FL,RRごとに(すなわち、一つのブレーキ出力系統につき二つ)設けられた制御弁手段Vによって各車輪の独立したアンチロックブレーキ制御が可能となっており、さらに、各ブレーキ出力系統K1,K2に設けられたレギュレータRとサクション弁4とポンプ6とが協働することによって車両挙動制御が可能になっている。
【0016】
図11において、ブレーキ出力系統K1は、右前および左後の車輪を制動するためのものであり、入口ポート21から出口ポート22R,22Lに至る系統である。なお、入口ポート21には、液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM2に至る配管H1が接続され、出口ポート22R,22Lには、それぞれ車輪ブレーキFR,RLに至る配管H2,H2が接続される。
【0017】
ブレーキ出力系統K2は、左前および右後の車輪を制動するためのものであり、入口ポート23から出口ポート24L,24Rに至る系統である。
入口ポート23には、ブレーキ出力系統K1と同一の液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM1に至る配管H3が接続され、出口ポート24L,24Rには、それぞれ車輪ブレーキFL,RRに至る配管H4,H4が接続される。
ここで、ブレーキ出力系統K2は、ブレーキ出力系統K1と同一の構成であるので、以下では、ブレーキ出力系統K1について説明し、適宜、ブレーキ出力系統K2について説明する。
【0018】
マスタシリンダMはタンデム型であって、このマスタシリンダMには、ブレーキ操作子であるブレーキペダルBPが接続されている。すなわち、1つのブレーキペダルBPに踏力を加えるだけで、4つの車輪ブレーキFR,RL,FL,RRを制動することができる。
【0019】
ブレーキ出力系統K1には、レギュレータ弁としてのレギュレータR、制御弁手段V,V、サクション弁4、リザーバ5、ポンプ6、オリフィス6a、ダンパ7、液圧源側ブレーキ液圧センサ8および車輪側ブレーキ液圧センサ9が設けられている。
【0020】
なお、以下では、入口ポート21からレギュレータRに至る流路(液路)を「出力液圧路A」と称し、レギュレータRから出口ポート22R,22Lに至る流路を「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路Aからポンプ6に至る流路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ6から車輪液圧路Bに至る流路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る流路を「開放路E」と称する。また、「上流側」とは、マスタシリンダM側のことを意味し、「下流側」とは、車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)側のことを意味する。
【0021】
レギュレータRは、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能と、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流が遮断されているときに車輪液圧路Bのブレーキ液圧を所定値以下に調節する機能とを有しており、カット弁1およびチェック弁1aを備えて構成されている。
このようなレギュレータRは、図2(b)(c)に示すように、基体100の上部側において、ポンプ6の上部側となるポンプ穴36(図2(b)においてポンプ穴36は、ポンプ軸Y1で図示、以下同じ)の上方に設けられたカット弁装着穴31に装着されている。
【0022】
図11に戻り、カット弁1は、出力液圧路Aと車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁であり、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。すなわち、カット弁1は、ソレノイドへの通電を制御することによって開弁圧を調節することが可能な構成(リリーフ弁としての機能を併せ備えた構成)となっている。カット弁1は、通常時に開いていることで、ポンプ6から吐出液圧路Dへ吐出して車輪液圧路Bへ流入したブレーキ液が、吸入液圧路Cへ戻ること(循環すること)を許容している。また、カット弁1は、ブレーキペダルBPが操作されたときに、言い換えれば、車輪ブレーキFR,RLへブレーキ液圧を作用させるときに、制御装置400(図1参照、以下同じ)の制御により閉塞され、出力液圧路AからレギュレータRにかかるブレーキ液圧と、ソレノイドへの通電によって制御される、弁を閉じようとする力とのバランスによって、車輪液圧路Bのブレーキ液圧を適宜吸入液圧路Cへ開放して調節することができる。
【0023】
チェック弁1aは、カット弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
【0024】
制御弁手段Vは、車輪ブレーキFR,RLにそれぞれ1つずつ設けられている。制御弁手段Vは、入口弁2、チェック弁2aおよび出口弁3を備えて構成され、車輪液圧路Bを開放しつつ開放路Eを遮断する状態(入口弁2を開、出口弁3を閉)、車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを開放する状態(入口弁2を閉、出口弁3を開)および車輪液圧路Bおよび開放路Eを遮断する状態(入口弁2および出口弁3を閉)を切り換える機能を有している。
【0025】
入口弁2は、車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁であり、開弁状態にあるときに上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。常開型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400(図1参照、以下同じ)と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、電磁コイルを消磁すると開弁する。本実施形態では、各入口弁2としてリニアソレノイド型の電磁弁が採用されており、ソレノイドへの駆動電流が制御装置400によって制御されることによって開弁量を調節することが可能な構成となっている。
このような入口弁2は、図2(b)に示すように、基体100の上部側において、前記したレギュレータRとともにポンプ6の上部側となるポンプ穴36の上方に設けられた内側入口弁装着穴32Aおよび外側入口弁装着穴32Bに装着されている。
【0026】
図11に戻り、チェック弁2aは、その下流側から上流側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、各入口弁2と並列に接続されている。
【0027】
出口弁3は、車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁からなり、閉弁状態にあるときに車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)側からリザーバ5側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときに許容する。出口弁3を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
このような出口弁3は、図2(b)に示すように、基体100の下部側において、ポンプ6の下部側となるポンプ穴36の下方に設けられた内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33Bに装着されている。
【0028】
図11に戻り、サクション弁4は、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものであり、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁からなる。サクション弁4を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
このようなサクション弁4は、図2(b)、図4(a)(b)に示すように、後記するように基体100において、ポンプ穴36の前方に設けられたサクション弁装着穴34に装着され、ポンプ6に直結されている。
【0029】
図11に戻り、リザーバ5は、開放路Eに設けられており、各出口弁3が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。また、リザーバ5とポンプ6との間には、リザーバ5側からポンプ6側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁5aが介設されている。
このようなリザーバ5は、図3(a)に示すように、基体100において、ポンプ穴36の下方となる基体100の下面16に開口するリザーバ穴35(図3(b)参照)に装着され、基体100の下部に設けられている。
【0030】
図11に戻り、ポンプ6は、出力液圧路Aに通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、モータ200の回転力によって駆動され、リザーバ5に一時的に貯留されたブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。また、カット弁1が閉弁状態にあり、サクション弁4が開弁状態にあるときには、ポンプ6は、マスタシリンダM、出力液圧路A、吸入液圧路Cおよびリザーバ5に貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。これにより、ブレーキペダルBPの操作によって発生したブレーキ液圧を増圧することが可能となり、さらには、ブレーキペダルBPを操作していない状態でも車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)にブレーキ液圧を作用させる(車両挙動制御時)ことが可能となる。
このようなポンプ6は、図2(c)等に示すように、基体100において、基体100の左側面13、右側面14から穿設されたポンプ穴36(ポンプ軸Y1)に装着されている。
【0031】
図11に戻り、ダンパ7およびオリフィス6aは、吐出液圧路Dの途中に直列介設されており、その協働作用によってポンプ6から吐出されたブレーキ液の脈動を減衰する役割をなす。ダンパ7には、ポンプ6の吐出口に接続された入口流路Da(吐出液圧路D)を通じてポンプ6からブレーキ液が直接流入するようになっている。そして、ダンパ7に流入して脈動が減衰されたブレーキ液は、前記した入口流路Daとは別に設けられた出口流路Db(吐出液圧路D)に流出され、出口流路Dbに配置されたオリフィス6aを通じて下流側に流れるようになっている。
このようなダンパ7は、図3(a)に示すように、基体100の後面(他方の面)15におけるモータ200の取付面201(モータ200の前面で覆われる部分)から穿設されたダンパ穴37に配設されている。
また、オリフィス6aは、図8(a)に示すように、入口弁2が装着される外側入口弁装着穴32Bに連通する第十一流路61(出口流路Db)に配置されている。オリフィス6aは、基体100の外側から第十一流路61内に圧入されて設けられている。
【0032】
図11に戻り、液圧源側ブレーキ液圧センサ8は、出力液圧路Aのブレーキ液圧、すなわち、マスタシリンダMにおけるブレーキ液圧の大きさを計測するものである。また、液圧源側ブレーキ液圧センサ8は、一方のブレーキ出力系統(本実施形態ではブレーキ出力系統K1)にのみ配置されている。つまり、マスタシリンダMが前記したようにタンデム型であり、ブレーキ出力系統K1,K2におけるブレーキ液圧の大きさは同様であるので、代表して一方のブレーキ出力系統K1にのみ配置されている。
液圧源側ブレーキ液圧センサ8で計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、制御装置400によりマスタシリンダMからブレーキ液圧が出力されているか否か、すなわち、ブレーキペダルBPが踏まれているか否かが判定され、さらに、液圧源側ブレーキ液圧センサ8で計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、車両挙動制御等が行われる。
【0033】
車輪側ブレーキ液圧センサ9は、駆動輪である前輪の車輪ブレーキFR(RL)に作用するブレーキ液圧の大きさを計測するものである。車輪側ブレーキ液圧センサ9で計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、この計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいてアンチロックブレーキ制御や車両挙動制御などが行われる。
【0034】
モータ200は、ブレーキ出力系統K1にあるポンプ6およびブレーキ出力系統K2にあるポンプ6の共通の動力源であり、制御装置400からの指令に基づいて作動する。
モータ200は、図3(a)に示すように、基体100の後面(他方の面)15に円形凹状の取付面201に取り付けられるようになっており、取り付けられた状態で、取付面201に形成されたダンパ穴37を覆うようになっている。
【0035】
制御装置400(図1参照)は、液圧源側ブレーキ液圧センサ8、車輪側ブレーキ液圧センサ9、車輪速度を検出する図示しない車輪速度センサからの出力に基づいて、レギュレータRのカット弁1、制御弁手段Vの入口弁2および出口弁3およびサクション弁4の開閉、並びに、モータ200の作動を制御する。
【0036】
次に、図11の液圧回路を参照しつつ、制御装置400によって実現される通常のブレーキ、アンチロックブレーキ制御および車両挙動制御について説明する。なお、以下に記載する本実施形態では、前輪を駆動輪とする前輪駆動の車両を例に挙げて説明する。
【0037】
(通常のブレーキ)
各車輪がロックする可能性のない通常のブレーキ時においては、前記した複数の電磁弁を駆動させる複数の電磁コイルは、いずれも制御装置400によって消磁させられる。つまり、通常のブレーキにおいては、カット弁1と入口弁2とが開弁状態になっており、出口弁3とサクション弁4とが閉弁状態になっている。
【0038】
このような状態で運転者がブレーキペダルBPを踏み込むと、その踏力に起因して発生したブレーキ液圧は、そのまま車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに伝達され、各輪が制動されることとなる。
【0039】
以上のような通常のブレーキを実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9で右前および左前の車輪ブレーキFR,FLに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、車輪ブレーキFR,FLに好適なブレーキ液圧がかかっていることを確認できる。
【0040】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、ロック状態に陥りそうな車輪の車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに対応する制御弁手段Vを制御して、車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、図示しない車輪速度センサから得られた車輪速度に基づいて、制御装置400によって判断される。
【0041】
ブレーキペダルBPを踏み込んでいる最中に、車輪がロック状態に入りそうになると、制御装置400によりアンチロックブレーキ制御が開始される。
【0042】
なお、以下では、右前にある車輪(車輪ブレーキFRより制動される車輪)がロック状態に入りそうになっていると想定してアンチロックブレーキ制御時の動作を説明する。
【0043】
制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが遮断され、開放路Eが開放される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を励磁して開弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキFRに通じる車輪液圧路Bのブレーキ液が開放路Eを通ってリザーバ5に流入し、その結果、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液圧が減圧される。このとき、車輪側ブレーキ液圧センサ9によって車輪液圧路B内のブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
【0044】
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によりモータ200を駆動させてポンプ6を作動させ、リザーバ5に貯留されたブレーキ液を、吐出液圧路Dを介して車輪液圧路Bに還流する。
【0045】
また、制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合は、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bおよび開放路Eがそれぞれ遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキFR、入口弁2および出口弁3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められることになり、その結果、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液圧が一定に保持される。
【0046】
さらに、制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合には、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが開放され、開放路Eが遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を消磁して開弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、ブレーキペダルBPの踏力に起因して発生したブレーキ液圧が車輪ブレーキFRに直接作用することになり、その結果、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧が増圧される。
【0047】
以上のようなアンチロックブレーキ制御を実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9で右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、制御装置400では、計測されたブレーキ液圧に応じて細かい液圧制御を行うことができる。具体的には、車輪液圧路B内のブレーキ液圧をセンシングしながらその液圧が減圧され過ぎないように出口弁3を開閉する。また、ブレーキ液圧が減圧され過ぎないように出口弁3の開度および開弁時間を設定するようにしてもよい。このようにすれば、車輪側ブレーキ液圧センサ9で計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいた精度の高いブレーキ液圧制御を行うことができ、車輪がロックしそうな状態を脱して車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合に、即座にブレーキ液圧を所望の圧力に戻すことができる。また、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合にも、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を実測しながら、入口弁2および出口弁3の開閉を制御することで、車輪ブレーキFRに最も適したブレーキ液圧を確実且つ容易に保持することができる。
【0048】
(車両挙動制御)
車両挙動制御は、特に雨天時や雪道のコーナリング等の走行時に起こる走行状況等の変化によって起こる挙動の乱れを防止するためのものである。
【0049】
車両の状態に応じて、制御装置400により、横滑り制御やトラクション制御などの車両挙動制御が開始される。なお、以下では、ブレーキペダルBP(図10参照)を操作していないときに右前の車輪(車輪ブレーキFRにより制動される車輪)を制動させて車両の挙動を安定化させる場合を想定する。
【0050】
ブレーキペダルBPを操作していない場合において制御装置400により右前の車輪を制動すべきと判断された場合には、制御装置400により、カット弁1を励磁して閉弁状態にするとともに、サクション弁4を励磁して開弁状態にし、さらに、制動したい右前の車輪に対応する制御弁手段V以外の制御弁手段Vにおいて入口弁2を励磁して閉弁状態にし、かかる状態において、ポンプ6を駆動させるべくモータ200を作動させる。このようにすると、マスタシリンダM、出力液圧路Aおよび吸入液圧路Cに貯留されているブレーキ液が、ポンプ6と吐出液圧路Dとを経由して車輪ブレーキFRに通じる車輪液圧路Bのみに流入し、その結果、車輪ブレーキFRにブレーキ液圧が作用し、右前の車輪が制動されることになる。
【0051】
以上のような車両挙動制御が行われる際に、ポンプ6からの吐出液圧路Dの途中に直列介設されたダンパ7とオリフィス6aの協働作用によって、ポンプ6から吐出されたブレーキ液の脈動が好適に減衰される。
【0052】
なお、出力液圧路Aのブレーキ液圧と車輪液圧路Bのブレーキ液圧との差が設定値以上になった場合には、カット弁1がリリーフ弁として働き、車輪液圧路B内のブレーキ液が出力液圧路Aに逃がされる。
【0053】
また、車輪側ブレーキ液圧センサ9で右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、制御装置400では、車輪液圧路B内のブレーキ液圧が所望の値になるように細かい液圧制御を行うことができ、精度の高いブレーキ液圧制御を行うことができる。
このような精度の高いブレーキ液圧制御が行われている間も、ダンパ7とオリフィス6aの協働作用によって、ポンプ6から吐出されたブレーキ液の脈動が好適に減衰される。
【0054】
次に、ブレーキ液圧制御装置Uの具体的な構造を、図1から図7を参照して詳細に説明する。
【0055】
ブレーキ液圧制御装置Uは、前記したように、基体(ボディ)100と、モータ200と、コントロールハウジング300と、制御装置400とを備えて構成されている。
【0056】
基体100は、略直方体を呈するアルミニウム合金製の押出材または鋳造品からなり、その前面11(一方の面)が実質的に凹凸のない平面に成形されている。基体100には、図2(b)に示すように、二つのブレーキ出力系統K1,K2(図11参照)に対応する二つの流路構成部100A,100Bが形成されている。具体的には、前面11側から見て基体100の右半分(図中に付した中心線Xよりも紙面右側にある領域)にブレーキ出力系統K1に対応する流路構成部100Aが形成されており、基体100の左半分(図中に付した中心線Xより紙面左側にある領域)にブレーキ出力系統K2に対応する流路構成部100Bが形成されている。流路構成部100A,100Bは、本実施形態では、実質的に左右対称に形成されており、その内部構成等も同一であるので、以下では主として流路構成部100Aについて説明する。
【0057】
図2(a)〜(c)、図3(a)(b)を適宜参照して説明すると、流路構成部100Aは、後面15(一方の面とは反対側となる他方の面)に開口する入口ポート21、モータ装着穴20、およびダンパ穴37、上面12に開口する二つの出口ポート22R,22L(流路構成部100Bでは出口ポート24L,24R)のほか、右側面14に開口するポンプ穴36を有し、さらに、前面11に開口する複数の装着穴を有している。
【0058】
基体100の後面15には、モータ装着穴20の軸心を中心として後面15よりも一段深くされた円形凹状の取付面201が形成されている。この取付面201には、モータ200(図1参照、以下同じ)のハウジングの前面カバーが装着されるようにして、モータ200が取り付けられるようになっている。モータ200は、後面15に設けられた取付穴15a(図3(a)参照)に、取付ねじ(不図示)で取り付けられる。
取付面201には、モータ装着穴20の上方に、モータ200の電源端子(不図示)が装着される装着孔20Aが基体100の前後に貫通して設けられている。
そして、取付面201には、モータ装着穴20の上側における装着孔20Aの側方位置に、ダンパ7(図11参照)を構成するダンパ穴37が(装着孔20Aを左右両側から挟むように)開口している。つまり、ダンパ穴37は、モータ装着穴20Aの周囲のデッドスペースに形成されており、ダンパ穴37の開口は、その全部がモータ200によって覆い隠されるようになっている。
これにより、ダンパ穴37の開口に装着される図示しない蓋部材と、取付面201に取り付けられるモータ200と取付面201との間に介設されるシール部材によって、ダンパ穴37は二重にシールされるようになっている。
【0059】
また、流路構成部100Aは、前面11の装着穴として、ポンプ軸Y1と略同じ高さに設けられたサクション弁装着穴34と、ポンプ軸Y1よりも基体100の上部側に設けられたカット弁装着穴31と、ポンプ軸Y1とカット弁装着穴31との間に設けられた内側入口弁装着穴32Aおよび外側入口弁装着穴32Bと、ポンプ軸Y1よりも基体100の下部側に設けられた内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33Bと、を備えている。
【0060】
サクション弁装着穴34にはサクション弁4(図11参照)が装着され、カット弁装着穴31にはレギュレータRをなすカット弁1(図11参照)が装着され、内側入口弁装着穴32Aおよび外側入口弁装着穴32Bには入口弁2(図11参照)がそれぞれ装着され、内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33Bには出口弁3(図11参照)が装着される。
また、前面11には、車輪側ブレーキ液圧センサ9(図11参照)が装着される車輪側センサ装着穴39が、ポンプ軸Y1と内側入口弁装着穴32Aとの間に設けられ、さらに、マスタシリンダMのブレーキ液圧を計測する液圧源側ブレーキ液圧センサ8(図11参照)が装着される液圧源側センサ装着穴38が、内側入口弁装着穴32Aの上方の中心線X上(流路構成部100A、100Bの境界部分)に設けられている。
また、この液圧源側センサ装着穴38の下方に装着孔20Aが貫通して設けられている。
また、図3(b)に示すように、下面16には、リザーバ5を装着するリザーバ穴35が凹設されている。
【0061】
なお、図2(b)に示すように、カット弁装着穴31、内側入口弁装着穴32A、外側入口弁装着穴32B、内側出口弁装着穴33A、外側出口弁装着穴33B、サクション弁装着穴34は、流路構成部100Aの前面11の同一面に開口している。また、本実施形態においては、これらの装着穴の口径が総て同一になっている。
【0062】
なお、本実施形態では、基体100の上部において、内側(図2(a)において基体100の内側)にある出口ポート22Rに、車輪ブレーキFRに至る配管H2(図10参照)が接続され、外側(図2(a)において基体100の外側)にある出口ポート22Lに、車輪ブレーキRLに至る配管H2(図10参照)が接続されるものとする。
【0063】
次に、流路構成部100Aの流路を詳細に説明する。なお、説明において、流路構成部100A(基体100)における前面11、後面15、上面12、下面16、左側面13および右側面14をいうときには、図2各図、図3各図を参照する。また、「内側」は基体100の左右方向において中心線Xに近い側をいい、「外側」は基体100の左右方向において中心線Xから離れる側をいう。
図4(a)(b)、図6(b)に示すように、入口ポート21は、有底円筒状の穴であり、図4(a)、図5に示すように、第一流路51を介してカット弁装着穴31およびサクション弁装着穴34と連通している。第一流路51は、入口ポート21の底面から流路構成部100Aの前面11に向かって穿設された横孔51aと、流路構成部100Aの上面12から下面16に向かって穿設された縦孔51bとからなる。横孔51aは、その前部が縦孔51bと交差しており、また、縦孔51bは、カット弁装着穴31およびサクション弁装着穴34の側壁を上下方向に貫通している(図4(a)、図5参照)。
また、横孔51aの後部には、流路構成部100Aの右側面14から左側面13に向かって穿設された横孔38aが交差している(図6(b)参照)。横孔38aは、その先端が、液圧源側センサ装着穴38の底面から流路構成部100Aの後面15に向かって穿設された横孔38bに連通している(図6(a)参照)。
ここで、入口ポート21の底部から第一流路51の横孔51a、縦孔51bを通じて、カット弁装着穴31の側部に至る流路が図10に示す出力液圧路Aに相当する。
【0064】
図4(a)、図5、図6(a)(b)に示すように、内側にある出口ポート22Rは、有底円筒状の穴であり、第二流路52を介して内側入口弁装着穴32Aと連通している。第二流路52は、内側にある出口ポート22Rの底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、内側入口弁装着穴32Aの側壁と車輪側センサ装着穴39の側壁を上下方向に貫通して内側出口弁装着穴33Aにまで達している。
【0065】
外側にある出口ポート22Lは、有底円筒状の穴であり、第三流路53を介して外側入口弁装着穴32Bと連通している。第三流路53は、外側にある出口ポート22Lの底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、外側入口弁装着穴32Bの側壁を上下方向に貫通して外側出口弁装着穴33Bにまで達している。
【0066】
カット弁装着穴31は、有底の段付き円筒状の穴であり、図5、図6(a)(b)に示すように、その底部が第四流路54および第五流路55を通じてポンプ穴36の側部(上部側壁)に連通している。第四流路54は、流路構成部100Aの右側面14からカット弁装着穴31の底部に向かって穿設された横孔からなり、図6(b)に示すように、内側入口弁装着穴32Aの底部にまで達している。
また、第五流路55は、流路構成部100Aの上面12から外側入口弁装着穴32Bの底部に向かって穿設された縦孔からなり、外側入口弁装着穴32Bにまで達している。
ここで、カット弁装着穴31の底部から第四流路54を介して内側入口弁装着穴32Aに通じ、第二流路52から出口ポート22Rに至る流路、およびカット弁装着穴31の底部から第四流路54および第五流路55を介して外側入口弁装着穴32Bに通じ、第三流路53から出口ポート22Lに至る流路が、図11に示す車輪液圧路Bに相当する。
【0067】
内側入口弁装着穴32Aは、車輪ブレーキFRに対応する有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)、図5、図6(b)に示すように、第二流路52を通じて車輪側センサ装着穴39および内側出口弁装着穴33Aに連通している。また、内側入口弁装着穴32Aは、図5に示すように、第四流路54を介してカット弁装着穴31と連通しており、さらに、図6(a)に示すように、第四流路54、第五流路55を介してポンプ穴36と連通している。
【0068】
外側入口弁装着穴32Bは、車輪ブレーキRLに対応する入口弁2(図11参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)、図5、図6(a)に示すように、第三流路53を通じて外側出口弁装着穴33Bに連通している。また、外側入口弁装着穴32Bは、図5に示すように、第五流路55を通じてポンプ穴36に連通しており、さらに、第五流路55、第四流路54を介してカット弁装着穴31および内側入口弁装着穴32Aと連通している。
【0069】
サクション弁装着穴34は、有底の段付き円筒状の穴であり、図4(b)に示すように、その底部34bに設けられた短い横孔34aを通じてポンプ穴36の前部に直結している。サクション弁装着穴34は、図4(a)に示すように、第一流路51の縦孔51bを通じてカット弁装着穴31に連通しており、さらに、第一流路51の縦孔51b、横孔51aを通じて入口ポート21に連通している。
なお、第一流路51からサクション弁装着穴34を通じてポンプ穴36に至る流路が図11に示す吸入液圧路Cに相当する。
このようなサクション弁装着穴34は、ポンプ穴36のポンプ軸Y1に対して上下方向に、ずらして設けてもよい。
【0070】
内側出口弁装着穴33Aは、車輪ブレーキFRに対応する出口弁3(図11参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図5に示すように、その底部(不図示)から始まる第六流路56を介してリザーバ穴35と連通している。第六流路56は、リザーバ穴35の底面から内側出口弁装着穴33Aの底部に達するように流路構成部100Aの上面12へ向けて穿設された縦孔からなる。
【0071】
外側出口弁装着穴33Bは、車輪ブレーキRLに対応する出口弁3(図11参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図5、図6(b)に示すように、第七流路57を介してリザーバ穴35と連通している。第七流路57は、流路構成部100Aの右側面14から外側出口弁装着穴33Bの底部に向かって穿設された横孔からなり、リザーバ穴35の底部にまで達している。また、外側出口弁装着穴33Bは、図6(b)に示すように、第三流路53を通じて外側入口弁装着穴32Bと出口ポート22Lとに連通している。
ここで、第二流路52から内側出口弁装着穴33Aを通じて第六流路56に至る流路、および第三流路53から外側出口弁装着穴33Bを通じて第七流路57に至る流路が、図11に示す開放路Eに相当する。
【0072】
ポンプ穴36は、ポンプ6(図11参照)が装着される段付き円筒状の穴であり、そのポンプ軸(中心線)Y1が、図4(a)に示すように、モータ装着穴20の中心を通るように形成されている。
また、ポンプ穴36は、図6(b)に示すように、第八流路58および第十流路60を介してダンパ穴37と連通している。第八流路58は、流路構成部100Aの下面16から上面12に向かって穿設された縦孔からなり、ポンプ6の側壁を上下方向に貫通して第十流路60に達している。第十流路60は、流路構成部100Aの右側面14から左側面13に向かって穿設された横孔からなり、ダンパ穴37の側壁にまで達している。
ここで、第八流路58から第十流路60を通じてダンパ穴37に至る流路が、図11に示す入口流路Da(吐出液圧路D)に相当する。
【0073】
入口流路Daは、その中間の少なくとも一箇所に屈折部(屈曲部)を有している。本実施形態の入口流路Daは、一箇所屈折し、略L字状部分を有している。このような屈折部(屈曲部)を有することで、入口流路Daは、ポンプ6の脈動を減衰する作用も備えている。
【0074】
ダンパ穴37は、ダンパ7(図11参照)を構成するための有底の段付き円筒状の穴であり、図6(b)に示すように、第十流路60および第八流路58を介してポンプ穴36と連通し、図5に示すように、第十一流路61を介して外側入口弁装着穴32Bと連通している。第十一流路61は、流路構成部100Aの右側面14から左側面13に向かって穿設された横孔からなり、外側入口弁装着穴32Bの底部を通じてダンパ穴37の側壁まで達している。
ここで、第十一流路61が、図11に示す出口流路Db(吐出液圧路D)に相当する。
ダンパ穴37の開口部は、基体100の後面15側から装着される図示しない蓋部材で密封される。蓋部材で密封されたダンパ穴37は、ポンプ6による脈動を減衰するのに十分な容積を備えている。
【0075】
ポンプ穴36は、第五流路55を介して外側入口弁装着穴32Bに連通しており、さらに、第五流路55および第四流路54を介してカット弁装着穴31と内側入口弁装着穴32Aに連通している。また、ポンプ穴36は、これに直結されたサクション弁装着穴34を介して第一流路51の入口ポート21に連通している。さらに、ポンプ穴36の吸込側(モータ装着穴20に近い側)には、第九流路59が連通している。
なお、ポンプ穴36に装着されたポンプ6は、モータ200の図示しない出力軸に取り付けられた偏心カムによって駆動されるようになっている。
【0076】
図7、図8(b)に示すように、第十流路60は、ダンパ穴37の下部側壁を貫通し、また、図7、図8(a)に示すように、第十一流路61は、ダンパ穴37の上部側壁を貫通しており、第十流路60および第十一流路61は、ダンパ穴37に対して相互に独立した流路を構成している。本実施形態では、第十流路60および第十一流路61は、ポンプ6のポンプ軸Y1と平行に設けられており、第十一流路61が、第十流路60よりも上側に配設され、第十一流路61とポンプ6との間に第十流路60が配設されている。このような構成とすることにより、ダンパ穴37には、ポンプ穴36に連通する第八流路58から第十流路60を介してブレーキ液が流入し、ダンパ穴37からは、第十一流路61を介して外側入口弁装着穴32Bにブレー液が流出するようになっている。
【0077】
第十一流路61の途中には、図7、図8(a)に示すように、前記したオリフィス6aが、基体100の外側から第十一流路61内に圧入されて介設されている。このオリフィス6aは、前記したように、ダンパ7(図11参照)と協働して脈動を減衰する役割をなす。
【0078】
リザーバ穴35は、リザーバ5(図11参照)が装着される有底円筒状の穴であり、図5に示すように、第九流路59を通じてポンプ穴36の吸入側と連通している。第九流路59は、リザーバ穴35の底面から流路構成部100Aの上面12へ向けて穿設された縦孔からなり、その上端がポンプ穴36の下端側壁に達している。第九流路59内には、図11に示すチェック弁5a(一方向弁、図5参照)が装着されている。
【0079】
液圧源側センサ装着穴38は、有底円筒状の穴であり、図2(b)に示すように、基体100の中央部分(すなわち、流路構成部100A,100Bの境界部分)に流路構成部100A,100Bを跨ぐように形成されている。液圧源側センサ装着穴38は、図5、図6(a)(b)に示すように、横孔38b、38aを通じて第一流路51の横孔51aに連通して入口ポート21と連通している。
【0080】
車輪側センサ装着穴39は、有底の段付き円筒状の穴であり、図5、図6(a)に示すように、第二流路52を通じて内側入口弁装着穴32Aおよび第四流路54等を介して入口ポート21と連通している。また、車輪側センサ装着穴39は、第二流路52を通じて内側出口弁装着穴33Aと連通している。
【0081】
モータ装着穴20は、有底の段付き円筒状を呈しており、図3(a)、図5に示すように、基体100の後面15の略中央部分に開口している。モータ装着穴20には、モータ200の図示しない出力軸が挿入されるようになっている。モータ装着穴20の側壁には、図5に示すように、ポンプ穴36が開口しており、このポンプ穴36の開口部近傍には、出力軸の偏心軸部に嵌め込まれてポンプ6に備わるプランジャを押圧するための図示しないボールベアリングが収容されている。バスバー(不図示)が装着される装着孔20Aは、モータ装着穴20の上方に形成されており、基体100を前後方向に貫通している。
【0082】
本実施形態では、図3(a)に示すように、ポンプ6のポンプ軸Y1(軸心)とモータ200の図示しない出力軸の軸心O1とを含む基準面Pで基体100を上側と下側との二つの領域に分けたときに、一方となる上側の領域に、ダンパ穴37が配設されるとともに、内側入口弁装着穴32Aおよび外側入口弁装着穴32Bが配設されている。これによって、前記した基準面Pよりも上側の領域に、ダンパ7および入口弁2がそれぞれ配置されることとなり、前記した第十流路60および第十一流路61も基準面Pより上側の領域に集約して配置されることとなる。
また、上側の領域には、その他にカット弁装着穴31および液圧源側センサ装着穴38が形成されており、基体100の上部側のスペースを有効に利用してレギュレータRや液圧源側ブレーキ液圧センサ8を配置することができる。したがって、入口ポート21等からレギュレータRを通じてポンプ6に至る第一流路51等を直線状とすることができ、簡素な流路の取り回しが可能となって、基体100の小型化を図ることができる。
【0083】
また、下側の領域には、内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33B、およびリザーバ穴35が形成されているので、出口弁3とリザーバ5との間を最小限の流路数(第六流路56、第七流路57)で結ぶことができるとともに、上側の領域から出口弁3の設置スペースを排除して、上側の領域にダンパ穴37の形成スペースを好適に確保することができ、基体100の小型化を図ることができる。なお、出口弁3とリザーバ5が近接配置されるので、簡素な流路の取り回しが可能となり、基体100の小型化を図ることができる。
【0084】
さらに、サクション弁4は、ポンプ6に直結されているので、ポンプ穴36の周りのスペースを有効に利用してサクション弁装着穴34を形成することができ、これによってポンプ穴36の上方に前記した入口流路Daおよび出口流路Dbの形成スペースを好適に確保することができる。
【0085】
図1に示したコントロールハウジング300は、前記した各電磁弁(入口弁2等)、液圧源側ブレーキ液圧センサ8および車輪側ブレーキ液圧センサ9を覆うように、基体100の前面11に設けられた取付穴11a(図2(b)参照)に取付ねじ(不図示)によって一体的に固着されている。このようなコントロールハウジング300は、内部に設けられた図示しない支持板部に、基体100に設置された電磁弁を駆動させるための図示しない電磁コイルが取り付けられている。
【0086】
図1に示す制御装置400は、電子回路がプリントされた基板に半導体チップ等が搭載されてなるものであり、液圧源側ブレーキ液圧センサ8および車輪側ブレーキ液圧センサ9や図示しない車輪速度センサといった各種センサから得られた情報やあらかじめ記憶させておいたプログラム等に基づいて、前記した各電磁弁の開閉やモータ200の作動を制御する。
【0087】
続いて、通常のブレーキ、アンチロックブレーキ制御および車両挙動制御を行った場合のブレーキ液の流れを詳細に説明する。
【0088】
(通常のブレーキ)
通常のブレーキにおいては、前記したように、サクション弁4となる常閉型の電磁弁が閉弁状態にあり、カット弁1となる常開型の電磁弁が開弁状態にあるので、図9(a)に示すように、入口ポート21から流入したブレーキ液は、第一流路51を通ってカット弁装着穴31に流入し、開弁状態にある電磁弁の内部を通って第四流路54に流入する。そして、第四流路54に流入したブレーキ液は、第四流路54から内側入口弁装着穴32Aの底部に流入するとともに、第四流路54から第五流路55を介して外側入口弁装着穴32Bの底部に流入する。
内側入口弁装着穴32Aに流入したブレーキ液は、入口弁2となる常開型の電磁弁が開弁状態にあるので、その内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22Rを通って車輪ブレーキFRに至る。同様に、外側入口弁装着穴32Bに流入したブレーキ液は、入口弁2となる常開型の電磁弁が開弁状態にあるので、その内部を通って第三流路53に流入し、出口ポート22Lを通って車輪ブレーキFLに至る。
【0089】
ここで、入口ポート21から第一流路51に流入したブレーキ液は、第一流路51から横孔38a、38bを通じて液圧源側センサ装着穴38に流入する。そして、液圧源側ブレーキ液圧センサ8によってマスタシリンダMからのブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
また、右前の車輪ブレーキFRに至る第二流路52に流入したブレーキ液は、車輪側センサ装着穴39(図4(b)参照)に流入する。そして、車輪側ブレーキ液圧センサ9によって車輪液圧路B内のブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
【0090】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御によって、例えば、車輪ブレーキFR(図11参照)に作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、前記したように、制御装置400(図1参照)によって車輪ブレーキFRに対応する入口弁2が閉弁状態にされ、出口弁3が開弁状態にされる。そうすると、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液は、図9(b)に示すように、出口ポート22Rおよび第二流路52を通って内側入口弁装着穴32Aの側部に流入する。ここで、内側入口弁装着穴32Aの入口弁2となる常開型の電磁弁は、閉弁状態にあるので、ブレーキ液は、第四流路54に流入することなく、内側入口弁装着穴32Aの側壁と電磁弁の外周面との間にある間隙を通って下方の第二流路52側へ流出し、第二流路52を通じて内側出口弁装着穴33Aに流入する。
【0091】
そして、内側出口弁装着穴33Aに流入したブレーキ液は、出口弁3となる常閉型の電磁弁が開弁状態にあるので、その内部を通って第六流路56に流入し、リザーバ穴35に流入する。なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によってモータ200が駆動されてポンプ6が作動され、その結果、リザーバ穴35に貯留されていたブレーキ液が第九流路59を介してポンプ穴36に吸入され、第八流路58へ吐出される。第八流路58へ吐出されたブレーキ液は、第十流路60を通ってダンパ穴37に流入し、ダンパ穴37から第十一流路61を通じて第五流路55に流入する。この間、ポンプ6による脈動は、ダンパ7および第十一流路61に設けられたオリフィス6aの協働作用によって好適に減衰される。
【0092】
また、車輪ブレーキRL(図11参照)に作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、図9(b)に示すように、ブレーキ液は、出口ポート22Lおよび第三流路53を通って外側出口弁装着穴33Bの側部に流入し、開弁状態にある電磁弁(出口弁3)の内部を通って第七流路57に流入し、リザーバ穴35に流入する。
【0093】
なお、内側出口弁装着穴33Aとリザーバ穴35との間が一本の第六流路56で結ばれ、外側出口弁装着穴33Bとリザーバ穴35との間が一本の第七流路57で結ばれているので、内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33Bからリザーバ穴35へのブレーキ液の流入がスムーズに行われる。
【0094】
次に、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキFR(図11参照)に作用するブレーキ液圧を一定に保持する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2および出口弁3が閉弁状態にされるので、第二流路52へのブレーキ液の流入も第二流路52からのブレーキ液の流出も起こらない。
【0095】
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキFR(図11参照)に作用するブレーキ液圧を増圧する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2が開弁状態にされ、出口弁3が閉弁状態にされるので、ブレーキ液の流れは、通常のブレーキ制御の場合と同じになる。
【0096】
本実施形態では、車輪側ブレーキ液圧センサ9を、右前の車輪ブレーキFRに繋がる出口ポート22Lと第二流路52を介して連通する車輪側センサ装着穴39に装着しているので、以上のようなアンチロックブレーキ制御を実行する際に、車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測できる。これによって、制御装置400で、計測されたブレーキ液圧に応じて細かい液圧制御を行うことができ、車輪ブレーキFRに最も適したブレーキ液圧を確実かつ容易に得ることができる。
【0097】
特に、本実施形態では、ブレーキ負荷が多くかかる前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を車輪側ブレーキ液圧センサ9で測定することで、制動力制御に重点を置いたブレーキ液圧制御が行えるとともに、さらに、前輪は駆動輪でもあるので、トラクション制御にも重点を置いたブレーキ液圧制御が行える。
【0098】
(車両挙動制御)
車両挙動制御において、例えば、車輪ブレーキFR(図11参照)を制動する場合には、前記したように、制御装置400によってカット弁1が閉弁状態にされ、サクション弁4が開弁状態にされたうえで、モータ200が作動してポンプ6(図11参照、以下同じ)が駆動する。ポンプ6が駆動すると、図10に示すように、サクション弁4が開弁状態にあるので、第一流路51側にあるブレーキ液(マスタシリンダMにあるブレーキ液を含む)が、サクション弁4の内部を通ってポンプ穴36に流入する。ポンプ穴36の内部にあるブレーキ液が第八流路58へ吐出される。第八流路58へ吐出されたブレーキ液は、第十流路60を通ってダンパ穴37に流入し、ダンパ穴37から第十一流路61を通じて第五流路55に流入する。この間、ポンプ6による脈動は、ダンパ7および第十一流路61に設けられたオリフィス6aの協働作用によって好適に減衰される。
そして、第五流路55に流したブレーキ液は、第四流路54を通じて内側入口弁装着穴32Aにある入口弁2としての電磁弁の内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22Rを通って車輪ブレーキFRに至る。
ここで、ダンパ7への入口流路Da(図11参照)となる第八流路58および第十流路60と、出口流路(図11参照)となる第十一流路61とは、相互に独立した流路として流路構成部100Aに設けられているので、ポンプ6から吐出されたブレーキ液は、必ずダンパ7を介して下流側に流れることとなる。
【0099】
また、このような車両挙動制御を実行する際にも、車輪側ブレーキ液圧センサ9で右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測できるので、制御装置400では、車輪液圧路B内のブレーキ液圧が所望の値になるように細かい液圧制御を行うことができ、精度の高いブレーキ制御を行うことができる。
【0100】
前記したような具体的な位置関係を有するブレーキ液圧制御装置Uによれば、ダンパ7を構成するダンパ穴37は、各電磁弁が配置される基体100の前面11(一方の面)に配置されず、これとは反対側となる後面15に開口されているので、基体100を大型化させることなくダンパ7を配設することができ、各種制御時にポンプ6から吐出されたブレーキ液の脈動を好適に減衰することができる。
しかも、ダンパ7は、基体100の後面15の取付面201に配設されているので、後面15におけるデッドスペースを効率よく利用して配設することができ、基体100の大型化をより一層回避することができる。
【0101】
また、ポンプ6とダンパ7との間を連通する入口流路Daと、ダンパ7と入口弁2との間を連通する出口流路Dbとが相互に独立した流路として基体100に設けられているので、ダンパ7に対する入口流路Daと出口流路Dbとが別系統となり、ポンプ6から入口弁2へのブレーキ液の流れの途中に、直列にダンパ7を介在させることができる。
これによって、効果的にポンプ6の脈動を減衰することができ、精度の高いブレーキ制御が可能となるブレーキ液圧制御装置Uが得られる。
【0102】
また、ダンパ7および入口弁2は、ポンプ軸Y1とモータ200の出力軸の軸心O1とを含む基準面Pに対して、一方となる上側の領域に集約されているので、基準面Pの上側の領域において、ポンプ穴36、ダンパ穴37、内側入口弁装着穴32A、および外側入口弁装着穴32Bを流路で好適に接続することができ、基体100における流路の配索が簡単になる。このことは、基体100の小型化に寄与する。
【0103】
また、出口流路Db(第十一流路61)に、オリフィス6aが介設されているので、入口流路Daからダンパ7を通じて出口流路Dbにブレーキ液が流れる過程で、出口流路Dbのオリフィス6aでブレーキ液の流れが絞られるようになるので、ダンパ7内にブレーキ液が留まり、ダンパ7内の広い空間で脈動が反響して打ち消し合うとともに、ブレーキ液の弾性で脈動が減衰されるようになり、ポンプ6による脈動の減衰を効果的に引き出すことができる。
【0104】
また、ブレーキ液圧制御装置Uは、車両挙動制御時においてもブレーキ液の脈動を効果的に低減することができ、精度の高いブレーキ液圧制御が可能である。
【0105】
また、駆動輪側の車輪ブレーキFR、FLが、前輪側の車輪ブレーキであるので、前輪駆動車のトラクション制御に必要な車輪側ブレーキ液圧センサ9を、基体100の大型化を招くことなく配置することができる。
また、車輪側ブレーキ液圧センサ9を、ブレーキ負荷が多くかかる前輪のブレーキ液圧検知に用いることができるので、ブレーキ液圧制御の精度を一層向上させることが可能となる。また、後輪のブレーキ液圧検知のためのブレーキ液圧センサは設けなくてよいので、ブレーキ液圧制御装置Uの小型化が達成され、軽量化も達成することができる。
なお、車輪側ブレーキ液圧センサ9は必ずしも設けなくてもよく、マスタシリンダMのブレーキ液圧等に基づいて、制御装置400により推定するように構成してもよい。
【0106】
さらに、本実施形態では、車輪側ブレーキ液圧センサ9,9で、駆動輪である前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を測定するようにしているが、駆動輪の前後位置に関係なく後輪の車輪ブレーキRL,RRに作用するブレーキ液圧を測定する構成としても、ブレーキ液圧制御の精度を向上させることは可能である。
【0107】
また、本実施形態では、前輪駆動の車両を例に挙げて説明したが、本発明は、後輪駆動の車両や4輪駆動の車両であっても適用できるのは勿論である。後輪駆動の車両の場合は、車輪側ブレーキ液圧センサ9,9で、駆動輪である後輪の車輪ブレーキRL、RRに作用するブレーキ液圧を測定すれば、トラクション制御に重点を置いたブレーキ液圧制御が行え、一方、車輪側ブレーキ液圧センサ9,9で、前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を測定すれば、制動力制御に重点を置いたブレーキ液圧制御が行える。また、4輪駆動の車両の場合は、前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を測定すれば、トラクション制御と制動力制御の両方に重点を置いたブレーキ液圧制御が行える。
【符号の説明】
【0108】
U 車両用ブレーキ液圧制御装置(ブレーキ液圧制御装置)
2 入口弁(制御弁手段V、常開型電磁弁)
3 出口弁(制御弁手段V、常閉型電磁弁)
4 サクション弁
6 ポンプ
6a オリフィス
7 ダンパ
11 前面(一方の面)
15 後面(他方の面)
37 ダンパ穴
58 第八流路(入口流路Da)
60 第十流路(入口流路Da)
61 第十一流路(出口流路Db)
100 基体
200 モータ
201 取付面
FR、FL 車輪ブレーキ
M マスタシリンダ
R レギュレータ(レギュレータ弁)
O1 軸心(モータの出力軸)
Y1 ポンプ軸(ポンプの軸心)
P 基準面
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、例えば、自動車、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)等の車両のブレーキにおける制動力を制御するようにした車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用ブレーキ液圧制御装置では、一般に、ブレーキ液の流れを制御する電磁弁等が取り付けられた基体を有しており、基体には、車輪ブレーキから開放されたブレーキ液を汲み上げてマスタシリンダ側に戻すポンプが装着されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置では、ポンプの吐出側にダンパが設けられており、ポンプにより生じる脈動がダンパによって減衰されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−258687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した特許文献1では、基体における電磁弁の装着面に、ダンパを構成するためのダンパ穴が形成されていた。このため、電磁弁の装着面に対してダンパを配置するための広いスペースを確保する必要があり、基体の大型化を来たし易いという問題を有していた。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、基体の大型化を回避しつつ好適にダンパを配設することができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために創案された本発明は、ブレーキ液圧を制御する制御弁手段と、一対のポンプと、前記一対のポンプを駆動するモータと、が共通の基体に配置されてなり、前記基体の一方の面に前記制御弁手段が装着されるとともに、前記基体の一方の面とは反対側となる他方の面に前記モータが取り付けられた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記基体の前記他方の面における前記モータの取付面に、ダンパを構成するためのダンパ穴が開口していることを特徴とする。
【0007】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、ダンパを構成するためのダンパ穴は、制御弁手段が配置される基体の一方の面(例えば基体の前面)に配置されず、一方の面とは反対側となる基体の他方の面(例えば基体の後面)に開口しているので、基体を大型化させることなくダンパを配設することができ、各種制御時にポンプから吐出されたブレーキ液の脈動を好適に減衰することができる。
しかも、ダンパ穴は、基体の他方の面におけるモータの取付面に開口しているので、基体の他方の面におけるデッドスペースを効率よく利用して配設することができ、基体の大型化をより一層回避することができる。
【0008】
また、本発明は、前記制御弁手段は、マスタシリンダと車輪ブレーキのホイールシリンダとの間に配置される常開型電磁弁および常閉型電磁弁を有し、前記ダンパおよび前記常開型電磁弁は、前記ポンプの軸心と前記モータの出力軸の軸心とを含む基準面で前記基体を二つの領域に分けたときに、一方の領域に配置されており、前記基体は、前記ポンプと前記ダンパとの間を連通する入口流路と、前記ダンパと前記常開型電磁弁との間を連通する出口流路と、を備え、前記入口流路と前記出口流路とが相互に独立した流路として前記基体に設けられていることを特徴とする。
【0009】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、ダンパおよび常開型電磁弁は、ポンプの軸心とモータの出力軸の軸心とを含む基準面で基体を二つの領域に分けたときに、一方の領域に集約されているので、一方の領域において、ポンプ、ダンパおよび常開型電磁弁を流路で好適に接続することができ、基体における流路の配索が簡単になる。このことは、基体の小型化に寄与する。
また、ポンプとダンパとの間を連通する入口流路と、ダンパと常開型電磁弁との間を連通する出口流路と、を備え、入口流路と出口流路とが相互に独立した流路として基体に設けられているので、ダンパに対する入口流路と出口流路とが別系統となり、ポンプから常開型電磁弁への作動液の流れの途中に、直列にダンパを介在させることができる。
これによって、効果的に脈動を減衰することができる車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。したがって、精度の高いブレーキ液圧制御が可能となる。
【0010】
また、本発明は、前記出口流路に、オリフィスが介設されている構成とするのがよい。このように構成することによって、入口流路からダンパを通じて出口流路に作動液が流れる過程で、ダンパより下流の出口流路のオリフィスで作動液の流れが絞られるようになるので、ダンパ内の広い空間で脈動が反響して打ち消し合うとともに、作動液の弾性で脈動が減衰されるようになり、ポンプによる脈動の減衰を効果的に引き出すことができる。
【0011】
また、本発明は、前記制御弁手段が、レギュレータ弁およびサクション弁を備えていることを特徴とする。このような構成では、電磁弁やモータの作動を制御して作動液の液圧を変動させることで、車輪ブレーキの制動力を制御し、車両の挙動を安定させる車両挙動制御を行うことが可能であり、かかる車両挙動制御時において、作動液の脈動を効果的に低減することができる。したがって、精度の高いブレーキ液圧制御が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基体の大型化を回避しつつ好適にダンパを配設することができる車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の基体の内部を可視化した側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の基体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は前面図、(c)は側面図である。
【図3】同じく基体を示す図であり、(a)は後面図、(b)は底面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部の透視図であって、(a)は前面からみた透視図、(b)は側面からみた透視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部の後面からみた透視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部に形成された各装着穴および流路の内面を可視化した斜視図であって、(a)は前面側からみた斜視図、(b)は後面側からみた斜視図である。
【図7】図2(c)のA1−A1線断面図である。
【図8】(a)は図2(c)のB1−B1線断面図、(b)は図2(c)のC1−C1断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部におけるブレーキ液の流れを示す図であり、(a)は通常ブレーキ時の流れを示す図、(b)はアンチロックブレーキ制御の減圧時のブレーキ液の流れを示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部における車両挙動制御時のブレーキ液の流れを示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の一例について説明する。
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。また、以下の説明において、「上下」の語は、基体100の後記する入口ポート21や出口ポート22L等が上となる状態を基準として使用しているが、実際の設置状態とは必ずしも一致しない。
図1に示すように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ液圧制御装置」という。)Uは、4輪自動車等に用いられるものであり、基体100と、基体100の後面15(他方の面)に組み付けられるモータ200(電動モータ)と、基体100の前面(一方の面)11に組み付けられるコントロールハウジング300と、コントロールハウジング300に収容される制御装置400とを備えて構成されている。
【0015】
ブレーキ液圧制御装置Uは、図11に示す液圧回路を具現化したものであり、四つの車輪ブレーキFR,RL,FL,RRのうちの二つの車輪ブレーキFR,RLを制動するためのブレーキ出力系統K1および残り二つの車輪ブレーキFL,RRを制動するためのブレーキ出力系統K2を備えていて、車輪ブレーキFR,RL,FL,RRごとに(すなわち、一つのブレーキ出力系統につき二つ)設けられた制御弁手段Vによって各車輪の独立したアンチロックブレーキ制御が可能となっており、さらに、各ブレーキ出力系統K1,K2に設けられたレギュレータRとサクション弁4とポンプ6とが協働することによって車両挙動制御が可能になっている。
【0016】
図11において、ブレーキ出力系統K1は、右前および左後の車輪を制動するためのものであり、入口ポート21から出口ポート22R,22Lに至る系統である。なお、入口ポート21には、液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM2に至る配管H1が接続され、出口ポート22R,22Lには、それぞれ車輪ブレーキFR,RLに至る配管H2,H2が接続される。
【0017】
ブレーキ出力系統K2は、左前および右後の車輪を制動するためのものであり、入口ポート23から出口ポート24L,24Rに至る系統である。
入口ポート23には、ブレーキ出力系統K1と同一の液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM1に至る配管H3が接続され、出口ポート24L,24Rには、それぞれ車輪ブレーキFL,RRに至る配管H4,H4が接続される。
ここで、ブレーキ出力系統K2は、ブレーキ出力系統K1と同一の構成であるので、以下では、ブレーキ出力系統K1について説明し、適宜、ブレーキ出力系統K2について説明する。
【0018】
マスタシリンダMはタンデム型であって、このマスタシリンダMには、ブレーキ操作子であるブレーキペダルBPが接続されている。すなわち、1つのブレーキペダルBPに踏力を加えるだけで、4つの車輪ブレーキFR,RL,FL,RRを制動することができる。
【0019】
ブレーキ出力系統K1には、レギュレータ弁としてのレギュレータR、制御弁手段V,V、サクション弁4、リザーバ5、ポンプ6、オリフィス6a、ダンパ7、液圧源側ブレーキ液圧センサ8および車輪側ブレーキ液圧センサ9が設けられている。
【0020】
なお、以下では、入口ポート21からレギュレータRに至る流路(液路)を「出力液圧路A」と称し、レギュレータRから出口ポート22R,22Lに至る流路を「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路Aからポンプ6に至る流路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ6から車輪液圧路Bに至る流路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る流路を「開放路E」と称する。また、「上流側」とは、マスタシリンダM側のことを意味し、「下流側」とは、車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)側のことを意味する。
【0021】
レギュレータRは、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能と、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流が遮断されているときに車輪液圧路Bのブレーキ液圧を所定値以下に調節する機能とを有しており、カット弁1およびチェック弁1aを備えて構成されている。
このようなレギュレータRは、図2(b)(c)に示すように、基体100の上部側において、ポンプ6の上部側となるポンプ穴36(図2(b)においてポンプ穴36は、ポンプ軸Y1で図示、以下同じ)の上方に設けられたカット弁装着穴31に装着されている。
【0022】
図11に戻り、カット弁1は、出力液圧路Aと車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁であり、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。すなわち、カット弁1は、ソレノイドへの通電を制御することによって開弁圧を調節することが可能な構成(リリーフ弁としての機能を併せ備えた構成)となっている。カット弁1は、通常時に開いていることで、ポンプ6から吐出液圧路Dへ吐出して車輪液圧路Bへ流入したブレーキ液が、吸入液圧路Cへ戻ること(循環すること)を許容している。また、カット弁1は、ブレーキペダルBPが操作されたときに、言い換えれば、車輪ブレーキFR,RLへブレーキ液圧を作用させるときに、制御装置400(図1参照、以下同じ)の制御により閉塞され、出力液圧路AからレギュレータRにかかるブレーキ液圧と、ソレノイドへの通電によって制御される、弁を閉じようとする力とのバランスによって、車輪液圧路Bのブレーキ液圧を適宜吸入液圧路Cへ開放して調節することができる。
【0023】
チェック弁1aは、カット弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
【0024】
制御弁手段Vは、車輪ブレーキFR,RLにそれぞれ1つずつ設けられている。制御弁手段Vは、入口弁2、チェック弁2aおよび出口弁3を備えて構成され、車輪液圧路Bを開放しつつ開放路Eを遮断する状態(入口弁2を開、出口弁3を閉)、車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを開放する状態(入口弁2を閉、出口弁3を開)および車輪液圧路Bおよび開放路Eを遮断する状態(入口弁2および出口弁3を閉)を切り換える機能を有している。
【0025】
入口弁2は、車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁であり、開弁状態にあるときに上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。常開型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400(図1参照、以下同じ)と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、電磁コイルを消磁すると開弁する。本実施形態では、各入口弁2としてリニアソレノイド型の電磁弁が採用されており、ソレノイドへの駆動電流が制御装置400によって制御されることによって開弁量を調節することが可能な構成となっている。
このような入口弁2は、図2(b)に示すように、基体100の上部側において、前記したレギュレータRとともにポンプ6の上部側となるポンプ穴36の上方に設けられた内側入口弁装着穴32Aおよび外側入口弁装着穴32Bに装着されている。
【0026】
図11に戻り、チェック弁2aは、その下流側から上流側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、各入口弁2と並列に接続されている。
【0027】
出口弁3は、車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁からなり、閉弁状態にあるときに車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)側からリザーバ5側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときに許容する。出口弁3を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
このような出口弁3は、図2(b)に示すように、基体100の下部側において、ポンプ6の下部側となるポンプ穴36の下方に設けられた内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33Bに装着されている。
【0028】
図11に戻り、サクション弁4は、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものであり、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁からなる。サクション弁4を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
このようなサクション弁4は、図2(b)、図4(a)(b)に示すように、後記するように基体100において、ポンプ穴36の前方に設けられたサクション弁装着穴34に装着され、ポンプ6に直結されている。
【0029】
図11に戻り、リザーバ5は、開放路Eに設けられており、各出口弁3が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。また、リザーバ5とポンプ6との間には、リザーバ5側からポンプ6側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁5aが介設されている。
このようなリザーバ5は、図3(a)に示すように、基体100において、ポンプ穴36の下方となる基体100の下面16に開口するリザーバ穴35(図3(b)参照)に装着され、基体100の下部に設けられている。
【0030】
図11に戻り、ポンプ6は、出力液圧路Aに通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、モータ200の回転力によって駆動され、リザーバ5に一時的に貯留されたブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。また、カット弁1が閉弁状態にあり、サクション弁4が開弁状態にあるときには、ポンプ6は、マスタシリンダM、出力液圧路A、吸入液圧路Cおよびリザーバ5に貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。これにより、ブレーキペダルBPの操作によって発生したブレーキ液圧を増圧することが可能となり、さらには、ブレーキペダルBPを操作していない状態でも車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)にブレーキ液圧を作用させる(車両挙動制御時)ことが可能となる。
このようなポンプ6は、図2(c)等に示すように、基体100において、基体100の左側面13、右側面14から穿設されたポンプ穴36(ポンプ軸Y1)に装着されている。
【0031】
図11に戻り、ダンパ7およびオリフィス6aは、吐出液圧路Dの途中に直列介設されており、その協働作用によってポンプ6から吐出されたブレーキ液の脈動を減衰する役割をなす。ダンパ7には、ポンプ6の吐出口に接続された入口流路Da(吐出液圧路D)を通じてポンプ6からブレーキ液が直接流入するようになっている。そして、ダンパ7に流入して脈動が減衰されたブレーキ液は、前記した入口流路Daとは別に設けられた出口流路Db(吐出液圧路D)に流出され、出口流路Dbに配置されたオリフィス6aを通じて下流側に流れるようになっている。
このようなダンパ7は、図3(a)に示すように、基体100の後面(他方の面)15におけるモータ200の取付面201(モータ200の前面で覆われる部分)から穿設されたダンパ穴37に配設されている。
また、オリフィス6aは、図8(a)に示すように、入口弁2が装着される外側入口弁装着穴32Bに連通する第十一流路61(出口流路Db)に配置されている。オリフィス6aは、基体100の外側から第十一流路61内に圧入されて設けられている。
【0032】
図11に戻り、液圧源側ブレーキ液圧センサ8は、出力液圧路Aのブレーキ液圧、すなわち、マスタシリンダMにおけるブレーキ液圧の大きさを計測するものである。また、液圧源側ブレーキ液圧センサ8は、一方のブレーキ出力系統(本実施形態ではブレーキ出力系統K1)にのみ配置されている。つまり、マスタシリンダMが前記したようにタンデム型であり、ブレーキ出力系統K1,K2におけるブレーキ液圧の大きさは同様であるので、代表して一方のブレーキ出力系統K1にのみ配置されている。
液圧源側ブレーキ液圧センサ8で計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、制御装置400によりマスタシリンダMからブレーキ液圧が出力されているか否か、すなわち、ブレーキペダルBPが踏まれているか否かが判定され、さらに、液圧源側ブレーキ液圧センサ8で計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、車両挙動制御等が行われる。
【0033】
車輪側ブレーキ液圧センサ9は、駆動輪である前輪の車輪ブレーキFR(RL)に作用するブレーキ液圧の大きさを計測するものである。車輪側ブレーキ液圧センサ9で計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、この計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいてアンチロックブレーキ制御や車両挙動制御などが行われる。
【0034】
モータ200は、ブレーキ出力系統K1にあるポンプ6およびブレーキ出力系統K2にあるポンプ6の共通の動力源であり、制御装置400からの指令に基づいて作動する。
モータ200は、図3(a)に示すように、基体100の後面(他方の面)15に円形凹状の取付面201に取り付けられるようになっており、取り付けられた状態で、取付面201に形成されたダンパ穴37を覆うようになっている。
【0035】
制御装置400(図1参照)は、液圧源側ブレーキ液圧センサ8、車輪側ブレーキ液圧センサ9、車輪速度を検出する図示しない車輪速度センサからの出力に基づいて、レギュレータRのカット弁1、制御弁手段Vの入口弁2および出口弁3およびサクション弁4の開閉、並びに、モータ200の作動を制御する。
【0036】
次に、図11の液圧回路を参照しつつ、制御装置400によって実現される通常のブレーキ、アンチロックブレーキ制御および車両挙動制御について説明する。なお、以下に記載する本実施形態では、前輪を駆動輪とする前輪駆動の車両を例に挙げて説明する。
【0037】
(通常のブレーキ)
各車輪がロックする可能性のない通常のブレーキ時においては、前記した複数の電磁弁を駆動させる複数の電磁コイルは、いずれも制御装置400によって消磁させられる。つまり、通常のブレーキにおいては、カット弁1と入口弁2とが開弁状態になっており、出口弁3とサクション弁4とが閉弁状態になっている。
【0038】
このような状態で運転者がブレーキペダルBPを踏み込むと、その踏力に起因して発生したブレーキ液圧は、そのまま車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに伝達され、各輪が制動されることとなる。
【0039】
以上のような通常のブレーキを実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9で右前および左前の車輪ブレーキFR,FLに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、車輪ブレーキFR,FLに好適なブレーキ液圧がかかっていることを確認できる。
【0040】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、ロック状態に陥りそうな車輪の車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに対応する制御弁手段Vを制御して、車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、図示しない車輪速度センサから得られた車輪速度に基づいて、制御装置400によって判断される。
【0041】
ブレーキペダルBPを踏み込んでいる最中に、車輪がロック状態に入りそうになると、制御装置400によりアンチロックブレーキ制御が開始される。
【0042】
なお、以下では、右前にある車輪(車輪ブレーキFRより制動される車輪)がロック状態に入りそうになっていると想定してアンチロックブレーキ制御時の動作を説明する。
【0043】
制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが遮断され、開放路Eが開放される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を励磁して開弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキFRに通じる車輪液圧路Bのブレーキ液が開放路Eを通ってリザーバ5に流入し、その結果、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液圧が減圧される。このとき、車輪側ブレーキ液圧センサ9によって車輪液圧路B内のブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
【0044】
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によりモータ200を駆動させてポンプ6を作動させ、リザーバ5に貯留されたブレーキ液を、吐出液圧路Dを介して車輪液圧路Bに還流する。
【0045】
また、制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合は、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bおよび開放路Eがそれぞれ遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキFR、入口弁2および出口弁3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められることになり、その結果、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液圧が一定に保持される。
【0046】
さらに、制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合には、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが開放され、開放路Eが遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を消磁して開弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、ブレーキペダルBPの踏力に起因して発生したブレーキ液圧が車輪ブレーキFRに直接作用することになり、その結果、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧が増圧される。
【0047】
以上のようなアンチロックブレーキ制御を実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9で右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、制御装置400では、計測されたブレーキ液圧に応じて細かい液圧制御を行うことができる。具体的には、車輪液圧路B内のブレーキ液圧をセンシングしながらその液圧が減圧され過ぎないように出口弁3を開閉する。また、ブレーキ液圧が減圧され過ぎないように出口弁3の開度および開弁時間を設定するようにしてもよい。このようにすれば、車輪側ブレーキ液圧センサ9で計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいた精度の高いブレーキ液圧制御を行うことができ、車輪がロックしそうな状態を脱して車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合に、即座にブレーキ液圧を所望の圧力に戻すことができる。また、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合にも、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を実測しながら、入口弁2および出口弁3の開閉を制御することで、車輪ブレーキFRに最も適したブレーキ液圧を確実且つ容易に保持することができる。
【0048】
(車両挙動制御)
車両挙動制御は、特に雨天時や雪道のコーナリング等の走行時に起こる走行状況等の変化によって起こる挙動の乱れを防止するためのものである。
【0049】
車両の状態に応じて、制御装置400により、横滑り制御やトラクション制御などの車両挙動制御が開始される。なお、以下では、ブレーキペダルBP(図10参照)を操作していないときに右前の車輪(車輪ブレーキFRにより制動される車輪)を制動させて車両の挙動を安定化させる場合を想定する。
【0050】
ブレーキペダルBPを操作していない場合において制御装置400により右前の車輪を制動すべきと判断された場合には、制御装置400により、カット弁1を励磁して閉弁状態にするとともに、サクション弁4を励磁して開弁状態にし、さらに、制動したい右前の車輪に対応する制御弁手段V以外の制御弁手段Vにおいて入口弁2を励磁して閉弁状態にし、かかる状態において、ポンプ6を駆動させるべくモータ200を作動させる。このようにすると、マスタシリンダM、出力液圧路Aおよび吸入液圧路Cに貯留されているブレーキ液が、ポンプ6と吐出液圧路Dとを経由して車輪ブレーキFRに通じる車輪液圧路Bのみに流入し、その結果、車輪ブレーキFRにブレーキ液圧が作用し、右前の車輪が制動されることになる。
【0051】
以上のような車両挙動制御が行われる際に、ポンプ6からの吐出液圧路Dの途中に直列介設されたダンパ7とオリフィス6aの協働作用によって、ポンプ6から吐出されたブレーキ液の脈動が好適に減衰される。
【0052】
なお、出力液圧路Aのブレーキ液圧と車輪液圧路Bのブレーキ液圧との差が設定値以上になった場合には、カット弁1がリリーフ弁として働き、車輪液圧路B内のブレーキ液が出力液圧路Aに逃がされる。
【0053】
また、車輪側ブレーキ液圧センサ9で右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、制御装置400では、車輪液圧路B内のブレーキ液圧が所望の値になるように細かい液圧制御を行うことができ、精度の高いブレーキ液圧制御を行うことができる。
このような精度の高いブレーキ液圧制御が行われている間も、ダンパ7とオリフィス6aの協働作用によって、ポンプ6から吐出されたブレーキ液の脈動が好適に減衰される。
【0054】
次に、ブレーキ液圧制御装置Uの具体的な構造を、図1から図7を参照して詳細に説明する。
【0055】
ブレーキ液圧制御装置Uは、前記したように、基体(ボディ)100と、モータ200と、コントロールハウジング300と、制御装置400とを備えて構成されている。
【0056】
基体100は、略直方体を呈するアルミニウム合金製の押出材または鋳造品からなり、その前面11(一方の面)が実質的に凹凸のない平面に成形されている。基体100には、図2(b)に示すように、二つのブレーキ出力系統K1,K2(図11参照)に対応する二つの流路構成部100A,100Bが形成されている。具体的には、前面11側から見て基体100の右半分(図中に付した中心線Xよりも紙面右側にある領域)にブレーキ出力系統K1に対応する流路構成部100Aが形成されており、基体100の左半分(図中に付した中心線Xより紙面左側にある領域)にブレーキ出力系統K2に対応する流路構成部100Bが形成されている。流路構成部100A,100Bは、本実施形態では、実質的に左右対称に形成されており、その内部構成等も同一であるので、以下では主として流路構成部100Aについて説明する。
【0057】
図2(a)〜(c)、図3(a)(b)を適宜参照して説明すると、流路構成部100Aは、後面15(一方の面とは反対側となる他方の面)に開口する入口ポート21、モータ装着穴20、およびダンパ穴37、上面12に開口する二つの出口ポート22R,22L(流路構成部100Bでは出口ポート24L,24R)のほか、右側面14に開口するポンプ穴36を有し、さらに、前面11に開口する複数の装着穴を有している。
【0058】
基体100の後面15には、モータ装着穴20の軸心を中心として後面15よりも一段深くされた円形凹状の取付面201が形成されている。この取付面201には、モータ200(図1参照、以下同じ)のハウジングの前面カバーが装着されるようにして、モータ200が取り付けられるようになっている。モータ200は、後面15に設けられた取付穴15a(図3(a)参照)に、取付ねじ(不図示)で取り付けられる。
取付面201には、モータ装着穴20の上方に、モータ200の電源端子(不図示)が装着される装着孔20Aが基体100の前後に貫通して設けられている。
そして、取付面201には、モータ装着穴20の上側における装着孔20Aの側方位置に、ダンパ7(図11参照)を構成するダンパ穴37が(装着孔20Aを左右両側から挟むように)開口している。つまり、ダンパ穴37は、モータ装着穴20Aの周囲のデッドスペースに形成されており、ダンパ穴37の開口は、その全部がモータ200によって覆い隠されるようになっている。
これにより、ダンパ穴37の開口に装着される図示しない蓋部材と、取付面201に取り付けられるモータ200と取付面201との間に介設されるシール部材によって、ダンパ穴37は二重にシールされるようになっている。
【0059】
また、流路構成部100Aは、前面11の装着穴として、ポンプ軸Y1と略同じ高さに設けられたサクション弁装着穴34と、ポンプ軸Y1よりも基体100の上部側に設けられたカット弁装着穴31と、ポンプ軸Y1とカット弁装着穴31との間に設けられた内側入口弁装着穴32Aおよび外側入口弁装着穴32Bと、ポンプ軸Y1よりも基体100の下部側に設けられた内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33Bと、を備えている。
【0060】
サクション弁装着穴34にはサクション弁4(図11参照)が装着され、カット弁装着穴31にはレギュレータRをなすカット弁1(図11参照)が装着され、内側入口弁装着穴32Aおよび外側入口弁装着穴32Bには入口弁2(図11参照)がそれぞれ装着され、内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33Bには出口弁3(図11参照)が装着される。
また、前面11には、車輪側ブレーキ液圧センサ9(図11参照)が装着される車輪側センサ装着穴39が、ポンプ軸Y1と内側入口弁装着穴32Aとの間に設けられ、さらに、マスタシリンダMのブレーキ液圧を計測する液圧源側ブレーキ液圧センサ8(図11参照)が装着される液圧源側センサ装着穴38が、内側入口弁装着穴32Aの上方の中心線X上(流路構成部100A、100Bの境界部分)に設けられている。
また、この液圧源側センサ装着穴38の下方に装着孔20Aが貫通して設けられている。
また、図3(b)に示すように、下面16には、リザーバ5を装着するリザーバ穴35が凹設されている。
【0061】
なお、図2(b)に示すように、カット弁装着穴31、内側入口弁装着穴32A、外側入口弁装着穴32B、内側出口弁装着穴33A、外側出口弁装着穴33B、サクション弁装着穴34は、流路構成部100Aの前面11の同一面に開口している。また、本実施形態においては、これらの装着穴の口径が総て同一になっている。
【0062】
なお、本実施形態では、基体100の上部において、内側(図2(a)において基体100の内側)にある出口ポート22Rに、車輪ブレーキFRに至る配管H2(図10参照)が接続され、外側(図2(a)において基体100の外側)にある出口ポート22Lに、車輪ブレーキRLに至る配管H2(図10参照)が接続されるものとする。
【0063】
次に、流路構成部100Aの流路を詳細に説明する。なお、説明において、流路構成部100A(基体100)における前面11、後面15、上面12、下面16、左側面13および右側面14をいうときには、図2各図、図3各図を参照する。また、「内側」は基体100の左右方向において中心線Xに近い側をいい、「外側」は基体100の左右方向において中心線Xから離れる側をいう。
図4(a)(b)、図6(b)に示すように、入口ポート21は、有底円筒状の穴であり、図4(a)、図5に示すように、第一流路51を介してカット弁装着穴31およびサクション弁装着穴34と連通している。第一流路51は、入口ポート21の底面から流路構成部100Aの前面11に向かって穿設された横孔51aと、流路構成部100Aの上面12から下面16に向かって穿設された縦孔51bとからなる。横孔51aは、その前部が縦孔51bと交差しており、また、縦孔51bは、カット弁装着穴31およびサクション弁装着穴34の側壁を上下方向に貫通している(図4(a)、図5参照)。
また、横孔51aの後部には、流路構成部100Aの右側面14から左側面13に向かって穿設された横孔38aが交差している(図6(b)参照)。横孔38aは、その先端が、液圧源側センサ装着穴38の底面から流路構成部100Aの後面15に向かって穿設された横孔38bに連通している(図6(a)参照)。
ここで、入口ポート21の底部から第一流路51の横孔51a、縦孔51bを通じて、カット弁装着穴31の側部に至る流路が図10に示す出力液圧路Aに相当する。
【0064】
図4(a)、図5、図6(a)(b)に示すように、内側にある出口ポート22Rは、有底円筒状の穴であり、第二流路52を介して内側入口弁装着穴32Aと連通している。第二流路52は、内側にある出口ポート22Rの底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、内側入口弁装着穴32Aの側壁と車輪側センサ装着穴39の側壁を上下方向に貫通して内側出口弁装着穴33Aにまで達している。
【0065】
外側にある出口ポート22Lは、有底円筒状の穴であり、第三流路53を介して外側入口弁装着穴32Bと連通している。第三流路53は、外側にある出口ポート22Lの底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、外側入口弁装着穴32Bの側壁を上下方向に貫通して外側出口弁装着穴33Bにまで達している。
【0066】
カット弁装着穴31は、有底の段付き円筒状の穴であり、図5、図6(a)(b)に示すように、その底部が第四流路54および第五流路55を通じてポンプ穴36の側部(上部側壁)に連通している。第四流路54は、流路構成部100Aの右側面14からカット弁装着穴31の底部に向かって穿設された横孔からなり、図6(b)に示すように、内側入口弁装着穴32Aの底部にまで達している。
また、第五流路55は、流路構成部100Aの上面12から外側入口弁装着穴32Bの底部に向かって穿設された縦孔からなり、外側入口弁装着穴32Bにまで達している。
ここで、カット弁装着穴31の底部から第四流路54を介して内側入口弁装着穴32Aに通じ、第二流路52から出口ポート22Rに至る流路、およびカット弁装着穴31の底部から第四流路54および第五流路55を介して外側入口弁装着穴32Bに通じ、第三流路53から出口ポート22Lに至る流路が、図11に示す車輪液圧路Bに相当する。
【0067】
内側入口弁装着穴32Aは、車輪ブレーキFRに対応する有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)、図5、図6(b)に示すように、第二流路52を通じて車輪側センサ装着穴39および内側出口弁装着穴33Aに連通している。また、内側入口弁装着穴32Aは、図5に示すように、第四流路54を介してカット弁装着穴31と連通しており、さらに、図6(a)に示すように、第四流路54、第五流路55を介してポンプ穴36と連通している。
【0068】
外側入口弁装着穴32Bは、車輪ブレーキRLに対応する入口弁2(図11参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)、図5、図6(a)に示すように、第三流路53を通じて外側出口弁装着穴33Bに連通している。また、外側入口弁装着穴32Bは、図5に示すように、第五流路55を通じてポンプ穴36に連通しており、さらに、第五流路55、第四流路54を介してカット弁装着穴31および内側入口弁装着穴32Aと連通している。
【0069】
サクション弁装着穴34は、有底の段付き円筒状の穴であり、図4(b)に示すように、その底部34bに設けられた短い横孔34aを通じてポンプ穴36の前部に直結している。サクション弁装着穴34は、図4(a)に示すように、第一流路51の縦孔51bを通じてカット弁装着穴31に連通しており、さらに、第一流路51の縦孔51b、横孔51aを通じて入口ポート21に連通している。
なお、第一流路51からサクション弁装着穴34を通じてポンプ穴36に至る流路が図11に示す吸入液圧路Cに相当する。
このようなサクション弁装着穴34は、ポンプ穴36のポンプ軸Y1に対して上下方向に、ずらして設けてもよい。
【0070】
内側出口弁装着穴33Aは、車輪ブレーキFRに対応する出口弁3(図11参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図5に示すように、その底部(不図示)から始まる第六流路56を介してリザーバ穴35と連通している。第六流路56は、リザーバ穴35の底面から内側出口弁装着穴33Aの底部に達するように流路構成部100Aの上面12へ向けて穿設された縦孔からなる。
【0071】
外側出口弁装着穴33Bは、車輪ブレーキRLに対応する出口弁3(図11参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図5、図6(b)に示すように、第七流路57を介してリザーバ穴35と連通している。第七流路57は、流路構成部100Aの右側面14から外側出口弁装着穴33Bの底部に向かって穿設された横孔からなり、リザーバ穴35の底部にまで達している。また、外側出口弁装着穴33Bは、図6(b)に示すように、第三流路53を通じて外側入口弁装着穴32Bと出口ポート22Lとに連通している。
ここで、第二流路52から内側出口弁装着穴33Aを通じて第六流路56に至る流路、および第三流路53から外側出口弁装着穴33Bを通じて第七流路57に至る流路が、図11に示す開放路Eに相当する。
【0072】
ポンプ穴36は、ポンプ6(図11参照)が装着される段付き円筒状の穴であり、そのポンプ軸(中心線)Y1が、図4(a)に示すように、モータ装着穴20の中心を通るように形成されている。
また、ポンプ穴36は、図6(b)に示すように、第八流路58および第十流路60を介してダンパ穴37と連通している。第八流路58は、流路構成部100Aの下面16から上面12に向かって穿設された縦孔からなり、ポンプ6の側壁を上下方向に貫通して第十流路60に達している。第十流路60は、流路構成部100Aの右側面14から左側面13に向かって穿設された横孔からなり、ダンパ穴37の側壁にまで達している。
ここで、第八流路58から第十流路60を通じてダンパ穴37に至る流路が、図11に示す入口流路Da(吐出液圧路D)に相当する。
【0073】
入口流路Daは、その中間の少なくとも一箇所に屈折部(屈曲部)を有している。本実施形態の入口流路Daは、一箇所屈折し、略L字状部分を有している。このような屈折部(屈曲部)を有することで、入口流路Daは、ポンプ6の脈動を減衰する作用も備えている。
【0074】
ダンパ穴37は、ダンパ7(図11参照)を構成するための有底の段付き円筒状の穴であり、図6(b)に示すように、第十流路60および第八流路58を介してポンプ穴36と連通し、図5に示すように、第十一流路61を介して外側入口弁装着穴32Bと連通している。第十一流路61は、流路構成部100Aの右側面14から左側面13に向かって穿設された横孔からなり、外側入口弁装着穴32Bの底部を通じてダンパ穴37の側壁まで達している。
ここで、第十一流路61が、図11に示す出口流路Db(吐出液圧路D)に相当する。
ダンパ穴37の開口部は、基体100の後面15側から装着される図示しない蓋部材で密封される。蓋部材で密封されたダンパ穴37は、ポンプ6による脈動を減衰するのに十分な容積を備えている。
【0075】
ポンプ穴36は、第五流路55を介して外側入口弁装着穴32Bに連通しており、さらに、第五流路55および第四流路54を介してカット弁装着穴31と内側入口弁装着穴32Aに連通している。また、ポンプ穴36は、これに直結されたサクション弁装着穴34を介して第一流路51の入口ポート21に連通している。さらに、ポンプ穴36の吸込側(モータ装着穴20に近い側)には、第九流路59が連通している。
なお、ポンプ穴36に装着されたポンプ6は、モータ200の図示しない出力軸に取り付けられた偏心カムによって駆動されるようになっている。
【0076】
図7、図8(b)に示すように、第十流路60は、ダンパ穴37の下部側壁を貫通し、また、図7、図8(a)に示すように、第十一流路61は、ダンパ穴37の上部側壁を貫通しており、第十流路60および第十一流路61は、ダンパ穴37に対して相互に独立した流路を構成している。本実施形態では、第十流路60および第十一流路61は、ポンプ6のポンプ軸Y1と平行に設けられており、第十一流路61が、第十流路60よりも上側に配設され、第十一流路61とポンプ6との間に第十流路60が配設されている。このような構成とすることにより、ダンパ穴37には、ポンプ穴36に連通する第八流路58から第十流路60を介してブレーキ液が流入し、ダンパ穴37からは、第十一流路61を介して外側入口弁装着穴32Bにブレー液が流出するようになっている。
【0077】
第十一流路61の途中には、図7、図8(a)に示すように、前記したオリフィス6aが、基体100の外側から第十一流路61内に圧入されて介設されている。このオリフィス6aは、前記したように、ダンパ7(図11参照)と協働して脈動を減衰する役割をなす。
【0078】
リザーバ穴35は、リザーバ5(図11参照)が装着される有底円筒状の穴であり、図5に示すように、第九流路59を通じてポンプ穴36の吸入側と連通している。第九流路59は、リザーバ穴35の底面から流路構成部100Aの上面12へ向けて穿設された縦孔からなり、その上端がポンプ穴36の下端側壁に達している。第九流路59内には、図11に示すチェック弁5a(一方向弁、図5参照)が装着されている。
【0079】
液圧源側センサ装着穴38は、有底円筒状の穴であり、図2(b)に示すように、基体100の中央部分(すなわち、流路構成部100A,100Bの境界部分)に流路構成部100A,100Bを跨ぐように形成されている。液圧源側センサ装着穴38は、図5、図6(a)(b)に示すように、横孔38b、38aを通じて第一流路51の横孔51aに連通して入口ポート21と連通している。
【0080】
車輪側センサ装着穴39は、有底の段付き円筒状の穴であり、図5、図6(a)に示すように、第二流路52を通じて内側入口弁装着穴32Aおよび第四流路54等を介して入口ポート21と連通している。また、車輪側センサ装着穴39は、第二流路52を通じて内側出口弁装着穴33Aと連通している。
【0081】
モータ装着穴20は、有底の段付き円筒状を呈しており、図3(a)、図5に示すように、基体100の後面15の略中央部分に開口している。モータ装着穴20には、モータ200の図示しない出力軸が挿入されるようになっている。モータ装着穴20の側壁には、図5に示すように、ポンプ穴36が開口しており、このポンプ穴36の開口部近傍には、出力軸の偏心軸部に嵌め込まれてポンプ6に備わるプランジャを押圧するための図示しないボールベアリングが収容されている。バスバー(不図示)が装着される装着孔20Aは、モータ装着穴20の上方に形成されており、基体100を前後方向に貫通している。
【0082】
本実施形態では、図3(a)に示すように、ポンプ6のポンプ軸Y1(軸心)とモータ200の図示しない出力軸の軸心O1とを含む基準面Pで基体100を上側と下側との二つの領域に分けたときに、一方となる上側の領域に、ダンパ穴37が配設されるとともに、内側入口弁装着穴32Aおよび外側入口弁装着穴32Bが配設されている。これによって、前記した基準面Pよりも上側の領域に、ダンパ7および入口弁2がそれぞれ配置されることとなり、前記した第十流路60および第十一流路61も基準面Pより上側の領域に集約して配置されることとなる。
また、上側の領域には、その他にカット弁装着穴31および液圧源側センサ装着穴38が形成されており、基体100の上部側のスペースを有効に利用してレギュレータRや液圧源側ブレーキ液圧センサ8を配置することができる。したがって、入口ポート21等からレギュレータRを通じてポンプ6に至る第一流路51等を直線状とすることができ、簡素な流路の取り回しが可能となって、基体100の小型化を図ることができる。
【0083】
また、下側の領域には、内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33B、およびリザーバ穴35が形成されているので、出口弁3とリザーバ5との間を最小限の流路数(第六流路56、第七流路57)で結ぶことができるとともに、上側の領域から出口弁3の設置スペースを排除して、上側の領域にダンパ穴37の形成スペースを好適に確保することができ、基体100の小型化を図ることができる。なお、出口弁3とリザーバ5が近接配置されるので、簡素な流路の取り回しが可能となり、基体100の小型化を図ることができる。
【0084】
さらに、サクション弁4は、ポンプ6に直結されているので、ポンプ穴36の周りのスペースを有効に利用してサクション弁装着穴34を形成することができ、これによってポンプ穴36の上方に前記した入口流路Daおよび出口流路Dbの形成スペースを好適に確保することができる。
【0085】
図1に示したコントロールハウジング300は、前記した各電磁弁(入口弁2等)、液圧源側ブレーキ液圧センサ8および車輪側ブレーキ液圧センサ9を覆うように、基体100の前面11に設けられた取付穴11a(図2(b)参照)に取付ねじ(不図示)によって一体的に固着されている。このようなコントロールハウジング300は、内部に設けられた図示しない支持板部に、基体100に設置された電磁弁を駆動させるための図示しない電磁コイルが取り付けられている。
【0086】
図1に示す制御装置400は、電子回路がプリントされた基板に半導体チップ等が搭載されてなるものであり、液圧源側ブレーキ液圧センサ8および車輪側ブレーキ液圧センサ9や図示しない車輪速度センサといった各種センサから得られた情報やあらかじめ記憶させておいたプログラム等に基づいて、前記した各電磁弁の開閉やモータ200の作動を制御する。
【0087】
続いて、通常のブレーキ、アンチロックブレーキ制御および車両挙動制御を行った場合のブレーキ液の流れを詳細に説明する。
【0088】
(通常のブレーキ)
通常のブレーキにおいては、前記したように、サクション弁4となる常閉型の電磁弁が閉弁状態にあり、カット弁1となる常開型の電磁弁が開弁状態にあるので、図9(a)に示すように、入口ポート21から流入したブレーキ液は、第一流路51を通ってカット弁装着穴31に流入し、開弁状態にある電磁弁の内部を通って第四流路54に流入する。そして、第四流路54に流入したブレーキ液は、第四流路54から内側入口弁装着穴32Aの底部に流入するとともに、第四流路54から第五流路55を介して外側入口弁装着穴32Bの底部に流入する。
内側入口弁装着穴32Aに流入したブレーキ液は、入口弁2となる常開型の電磁弁が開弁状態にあるので、その内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22Rを通って車輪ブレーキFRに至る。同様に、外側入口弁装着穴32Bに流入したブレーキ液は、入口弁2となる常開型の電磁弁が開弁状態にあるので、その内部を通って第三流路53に流入し、出口ポート22Lを通って車輪ブレーキFLに至る。
【0089】
ここで、入口ポート21から第一流路51に流入したブレーキ液は、第一流路51から横孔38a、38bを通じて液圧源側センサ装着穴38に流入する。そして、液圧源側ブレーキ液圧センサ8によってマスタシリンダMからのブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
また、右前の車輪ブレーキFRに至る第二流路52に流入したブレーキ液は、車輪側センサ装着穴39(図4(b)参照)に流入する。そして、車輪側ブレーキ液圧センサ9によって車輪液圧路B内のブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
【0090】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御によって、例えば、車輪ブレーキFR(図11参照)に作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、前記したように、制御装置400(図1参照)によって車輪ブレーキFRに対応する入口弁2が閉弁状態にされ、出口弁3が開弁状態にされる。そうすると、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液は、図9(b)に示すように、出口ポート22Rおよび第二流路52を通って内側入口弁装着穴32Aの側部に流入する。ここで、内側入口弁装着穴32Aの入口弁2となる常開型の電磁弁は、閉弁状態にあるので、ブレーキ液は、第四流路54に流入することなく、内側入口弁装着穴32Aの側壁と電磁弁の外周面との間にある間隙を通って下方の第二流路52側へ流出し、第二流路52を通じて内側出口弁装着穴33Aに流入する。
【0091】
そして、内側出口弁装着穴33Aに流入したブレーキ液は、出口弁3となる常閉型の電磁弁が開弁状態にあるので、その内部を通って第六流路56に流入し、リザーバ穴35に流入する。なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によってモータ200が駆動されてポンプ6が作動され、その結果、リザーバ穴35に貯留されていたブレーキ液が第九流路59を介してポンプ穴36に吸入され、第八流路58へ吐出される。第八流路58へ吐出されたブレーキ液は、第十流路60を通ってダンパ穴37に流入し、ダンパ穴37から第十一流路61を通じて第五流路55に流入する。この間、ポンプ6による脈動は、ダンパ7および第十一流路61に設けられたオリフィス6aの協働作用によって好適に減衰される。
【0092】
また、車輪ブレーキRL(図11参照)に作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、図9(b)に示すように、ブレーキ液は、出口ポート22Lおよび第三流路53を通って外側出口弁装着穴33Bの側部に流入し、開弁状態にある電磁弁(出口弁3)の内部を通って第七流路57に流入し、リザーバ穴35に流入する。
【0093】
なお、内側出口弁装着穴33Aとリザーバ穴35との間が一本の第六流路56で結ばれ、外側出口弁装着穴33Bとリザーバ穴35との間が一本の第七流路57で結ばれているので、内側出口弁装着穴33Aおよび外側出口弁装着穴33Bからリザーバ穴35へのブレーキ液の流入がスムーズに行われる。
【0094】
次に、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキFR(図11参照)に作用するブレーキ液圧を一定に保持する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2および出口弁3が閉弁状態にされるので、第二流路52へのブレーキ液の流入も第二流路52からのブレーキ液の流出も起こらない。
【0095】
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキFR(図11参照)に作用するブレーキ液圧を増圧する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2が開弁状態にされ、出口弁3が閉弁状態にされるので、ブレーキ液の流れは、通常のブレーキ制御の場合と同じになる。
【0096】
本実施形態では、車輪側ブレーキ液圧センサ9を、右前の車輪ブレーキFRに繋がる出口ポート22Lと第二流路52を介して連通する車輪側センサ装着穴39に装着しているので、以上のようなアンチロックブレーキ制御を実行する際に、車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測できる。これによって、制御装置400で、計測されたブレーキ液圧に応じて細かい液圧制御を行うことができ、車輪ブレーキFRに最も適したブレーキ液圧を確実かつ容易に得ることができる。
【0097】
特に、本実施形態では、ブレーキ負荷が多くかかる前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を車輪側ブレーキ液圧センサ9で測定することで、制動力制御に重点を置いたブレーキ液圧制御が行えるとともに、さらに、前輪は駆動輪でもあるので、トラクション制御にも重点を置いたブレーキ液圧制御が行える。
【0098】
(車両挙動制御)
車両挙動制御において、例えば、車輪ブレーキFR(図11参照)を制動する場合には、前記したように、制御装置400によってカット弁1が閉弁状態にされ、サクション弁4が開弁状態にされたうえで、モータ200が作動してポンプ6(図11参照、以下同じ)が駆動する。ポンプ6が駆動すると、図10に示すように、サクション弁4が開弁状態にあるので、第一流路51側にあるブレーキ液(マスタシリンダMにあるブレーキ液を含む)が、サクション弁4の内部を通ってポンプ穴36に流入する。ポンプ穴36の内部にあるブレーキ液が第八流路58へ吐出される。第八流路58へ吐出されたブレーキ液は、第十流路60を通ってダンパ穴37に流入し、ダンパ穴37から第十一流路61を通じて第五流路55に流入する。この間、ポンプ6による脈動は、ダンパ7および第十一流路61に設けられたオリフィス6aの協働作用によって好適に減衰される。
そして、第五流路55に流したブレーキ液は、第四流路54を通じて内側入口弁装着穴32Aにある入口弁2としての電磁弁の内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22Rを通って車輪ブレーキFRに至る。
ここで、ダンパ7への入口流路Da(図11参照)となる第八流路58および第十流路60と、出口流路(図11参照)となる第十一流路61とは、相互に独立した流路として流路構成部100Aに設けられているので、ポンプ6から吐出されたブレーキ液は、必ずダンパ7を介して下流側に流れることとなる。
【0099】
また、このような車両挙動制御を実行する際にも、車輪側ブレーキ液圧センサ9で右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測できるので、制御装置400では、車輪液圧路B内のブレーキ液圧が所望の値になるように細かい液圧制御を行うことができ、精度の高いブレーキ制御を行うことができる。
【0100】
前記したような具体的な位置関係を有するブレーキ液圧制御装置Uによれば、ダンパ7を構成するダンパ穴37は、各電磁弁が配置される基体100の前面11(一方の面)に配置されず、これとは反対側となる後面15に開口されているので、基体100を大型化させることなくダンパ7を配設することができ、各種制御時にポンプ6から吐出されたブレーキ液の脈動を好適に減衰することができる。
しかも、ダンパ7は、基体100の後面15の取付面201に配設されているので、後面15におけるデッドスペースを効率よく利用して配設することができ、基体100の大型化をより一層回避することができる。
【0101】
また、ポンプ6とダンパ7との間を連通する入口流路Daと、ダンパ7と入口弁2との間を連通する出口流路Dbとが相互に独立した流路として基体100に設けられているので、ダンパ7に対する入口流路Daと出口流路Dbとが別系統となり、ポンプ6から入口弁2へのブレーキ液の流れの途中に、直列にダンパ7を介在させることができる。
これによって、効果的にポンプ6の脈動を減衰することができ、精度の高いブレーキ制御が可能となるブレーキ液圧制御装置Uが得られる。
【0102】
また、ダンパ7および入口弁2は、ポンプ軸Y1とモータ200の出力軸の軸心O1とを含む基準面Pに対して、一方となる上側の領域に集約されているので、基準面Pの上側の領域において、ポンプ穴36、ダンパ穴37、内側入口弁装着穴32A、および外側入口弁装着穴32Bを流路で好適に接続することができ、基体100における流路の配索が簡単になる。このことは、基体100の小型化に寄与する。
【0103】
また、出口流路Db(第十一流路61)に、オリフィス6aが介設されているので、入口流路Daからダンパ7を通じて出口流路Dbにブレーキ液が流れる過程で、出口流路Dbのオリフィス6aでブレーキ液の流れが絞られるようになるので、ダンパ7内にブレーキ液が留まり、ダンパ7内の広い空間で脈動が反響して打ち消し合うとともに、ブレーキ液の弾性で脈動が減衰されるようになり、ポンプ6による脈動の減衰を効果的に引き出すことができる。
【0104】
また、ブレーキ液圧制御装置Uは、車両挙動制御時においてもブレーキ液の脈動を効果的に低減することができ、精度の高いブレーキ液圧制御が可能である。
【0105】
また、駆動輪側の車輪ブレーキFR、FLが、前輪側の車輪ブレーキであるので、前輪駆動車のトラクション制御に必要な車輪側ブレーキ液圧センサ9を、基体100の大型化を招くことなく配置することができる。
また、車輪側ブレーキ液圧センサ9を、ブレーキ負荷が多くかかる前輪のブレーキ液圧検知に用いることができるので、ブレーキ液圧制御の精度を一層向上させることが可能となる。また、後輪のブレーキ液圧検知のためのブレーキ液圧センサは設けなくてよいので、ブレーキ液圧制御装置Uの小型化が達成され、軽量化も達成することができる。
なお、車輪側ブレーキ液圧センサ9は必ずしも設けなくてもよく、マスタシリンダMのブレーキ液圧等に基づいて、制御装置400により推定するように構成してもよい。
【0106】
さらに、本実施形態では、車輪側ブレーキ液圧センサ9,9で、駆動輪である前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を測定するようにしているが、駆動輪の前後位置に関係なく後輪の車輪ブレーキRL,RRに作用するブレーキ液圧を測定する構成としても、ブレーキ液圧制御の精度を向上させることは可能である。
【0107】
また、本実施形態では、前輪駆動の車両を例に挙げて説明したが、本発明は、後輪駆動の車両や4輪駆動の車両であっても適用できるのは勿論である。後輪駆動の車両の場合は、車輪側ブレーキ液圧センサ9,9で、駆動輪である後輪の車輪ブレーキRL、RRに作用するブレーキ液圧を測定すれば、トラクション制御に重点を置いたブレーキ液圧制御が行え、一方、車輪側ブレーキ液圧センサ9,9で、前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を測定すれば、制動力制御に重点を置いたブレーキ液圧制御が行える。また、4輪駆動の車両の場合は、前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を測定すれば、トラクション制御と制動力制御の両方に重点を置いたブレーキ液圧制御が行える。
【符号の説明】
【0108】
U 車両用ブレーキ液圧制御装置(ブレーキ液圧制御装置)
2 入口弁(制御弁手段V、常開型電磁弁)
3 出口弁(制御弁手段V、常閉型電磁弁)
4 サクション弁
6 ポンプ
6a オリフィス
7 ダンパ
11 前面(一方の面)
15 後面(他方の面)
37 ダンパ穴
58 第八流路(入口流路Da)
60 第十流路(入口流路Da)
61 第十一流路(出口流路Db)
100 基体
200 モータ
201 取付面
FR、FL 車輪ブレーキ
M マスタシリンダ
R レギュレータ(レギュレータ弁)
O1 軸心(モータの出力軸)
Y1 ポンプ軸(ポンプの軸心)
P 基準面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液圧を制御する制御弁手段と、一対のポンプと、前記一対のポンプを駆動するモータと、が共通の基体に配置されてなり、前記基体の一方の面に前記制御弁手段が装着されるとともに、前記基体の一方の面とは反対側となる前記基体の他方の面に前記モータが取り付けられた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記基体の前記他方の面における前記モータの取付面に、ダンパを構成するためのダンパ穴が開口していることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記制御弁手段は、マスタシリンダと車輪ブレーキのホイールシリンダとの間に配置される常開型電磁弁および常閉型電磁弁を有し、
前記ダンパおよび前記常開型電磁弁は、前記ポンプの軸心と前記モータの出力軸の軸心とを含む基準面で前記基体を二つの領域に分けたときに、一方の領域に配置されており、
前記基体は、前記ポンプと前記ダンパとの間を連通する入口流路と、
前記ダンパと前記常開型電磁弁との間を連通する出口流路と、を備え、
前記入口流路と前記出口流路とが相互に独立した流路として前記基体に設けられていることを接続する請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記出口流路には、オリフィスが介設されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記制御弁手段は、レギュレータ弁およびサクション弁を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項1】
ブレーキ液圧を制御する制御弁手段と、一対のポンプと、前記一対のポンプを駆動するモータと、が共通の基体に配置されてなり、前記基体の一方の面に前記制御弁手段が装着されるとともに、前記基体の一方の面とは反対側となる前記基体の他方の面に前記モータが取り付けられた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記基体の前記他方の面における前記モータの取付面に、ダンパを構成するためのダンパ穴が開口していることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記制御弁手段は、マスタシリンダと車輪ブレーキのホイールシリンダとの間に配置される常開型電磁弁および常閉型電磁弁を有し、
前記ダンパおよび前記常開型電磁弁は、前記ポンプの軸心と前記モータの出力軸の軸心とを含む基準面で前記基体を二つの領域に分けたときに、一方の領域に配置されており、
前記基体は、前記ポンプと前記ダンパとの間を連通する入口流路と、
前記ダンパと前記常開型電磁弁との間を連通する出口流路と、を備え、
前記入口流路と前記出口流路とが相互に独立した流路として前記基体に設けられていることを接続する請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記出口流路には、オリフィスが介設されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記制御弁手段は、レギュレータ弁およびサクション弁を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−73502(P2011−73502A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224924(P2009−224924)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
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