説明

車両用ヘッドライト装置の制御方法およびヘッドライト装置

本発明は、2つの離間されたヘッドライト(1,2)を有し、車両(10)前方の走行方向における複数の道路使用者(11,12)が検出され、その際に、第1の包括的配光パターン(39)と第2の包括的配光パターン(40)が形成される、車輌用ヘッドライト装置の制御方法に関している。本発明によれば、第1の包括的配光パターン(39)から前記第2の包括的配光パターン(40)への切り替えの際に、まず中心軸(36)に対する第1の側の少なくとも1つのヘッドライト(2)のライトレンジが、少なくとも、検出された道路使用者(11,12)までの距離よりも当該ライトレンジが短くなるまで低減され、その後で第2の包括的配光パターンが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のヘッドライト装置の制御方法、および、制御装置を含む車両のヘッドライト装置に関する。
【0002】
車両のヘッドライトは、視界条件が低下しているとき、特に暗時に、車両の走行方向の環境を照明する役割を有している。また、ヘッドライトは、他の道路使用者に対する標識としても用いられる。
【0003】
走行方向での発光のために、ロービーム機能およびハイビーム機能を有するヘッドライトを設けることが公知である。ここで、ハイビーム機能とは、きわめて広い範囲の環境照明を行う機能である。ただし、ハイビーム機能には、他の道路使用者、特に先行車両ないし対向車両のドライバーが眩惑されるという欠点を有する。これに対して、ロービーム機能を用いると、他の道路使用者を眩惑しない配光パターンを形成できるが、環境照明の光量はハイビーム機能より格段に小さい。最近は交通密度がきわめて高くなっているので、ハイビーム機能はきわめて稀にしか用いられない。このため、従来のロービーム機能より良好な照明光量を形成しつつハイビーム機能のように他の道路使用者を眩惑することのないヘッドライト装置を形成するという要求が存在する。
【0004】
独国特許出願公開第102007045150号から、車両用ヘッドライト装置の制御方法が公知である。ここでは、ヘッドライト装置は、所定の距離を置いて配置され、それぞれの光ビームによって1つの包括的配光パターンを形成する2つのヘッドライトを含む。さらに、各ヘッドライトは、包括的配光パターンを変化させるためにそれぞれの位置を変更可能な遮光装置を1つずつ含む。この方法では、ヘッドライト装置の発光方向の道路使用者が検出される。こうした道路使用者が識別された場合、少なくとも1つの遮光装置の位置が、道路使用者の識別された方向での包括的配光パターンにおいて、ライトレンジの小さい1つの中央領域とこの中央領域の両脇のライトレンジの大きい2つの側方領域とが生じるように、変更される。この場合、中央領域のライトレンジは、特に道路使用者が識別された方向において、垂直角度すなわち道路使用者までの距離に基づいて制御される。配光パターンは、もっぱら、遮光装置の遮光板の位置変更によって、また、場合によりヘッドライトの発光方向を鉛直軸を中心として旋回させることによって形成される。
【0005】
また、独国特許出願公開第102007028658号には、車両用ヘッドライト装置の別の制御方法が記載されている。ここでは、ヘッドライト装置は右方のヘッドライトユニットおよび左方のヘッドライトユニットを備え、これらはロービームおよびハイビームのためのそれぞれ別個のヘッドライトを含む。この方法では、ヘッドライト装置の発光方向の道路使用者が検出され、こうした道路使用者が識別された場合、ハイビーム用ヘッドライトによって形成された配光パターンが側方の照明光量に関して変更される。これに対して、他方の、ロービーム用ヘッドライトによって形成された配光パターンは変更されない。
【0006】
さらに、独国特許出願公開第102007040042号には、車両の前方視野に光束を形成するシステムが記載されている。このシステムは、それぞれ別個に電気的に駆動される複数のLEDを含むLEDフィールドを有するヘッドライトと、車両周囲の種々の対象物を検出する対象物検出装置と、自車両に対する検出された対象物の位置を求める位置検出装置とを含む。このシステムでは、検出された対象物の領域において照明強度限界値が超過されないように、個々のLEDが駆動される。
【0007】
本発明の課題は、冒頭に言及した形式の車両用ヘッドライト装置の制御方法およびヘッドライト装置において、車両環境をできるだけ良好に照明できると同時に他の道路使用者にも不所望な眩惑を感じさせないような包括的配光パターンを形成できるようにすることである。
【0008】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴を有する車両用ヘッドライト装置の制御方法、および請求項9の特徴を有する車両用ヘッドライト装置によって解決される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明の第1の態様は、所定の距離を置いて配置され、かつ、走行方向で見て車両前方の道路使用者を検出する2つのヘッドライトを備えた、車両用ヘッドライト装置の制御方法に関する。ここでは、中心軸に対する第1の側のライトレンジが同じ中心軸に対する第2の側のライトレンジよりも大きい第1の包括的配光パターンを形成可能である。さらに、少なくとも1つの道路使用者が識別された方向ではこの道路使用者までの距離より小さいライトレンジを有し、かつ、その他の方向では識別された道路使用者までの距離より大きいライトレンジを有するように制御される第2の包括的配光パターンも形成可能である。本発明の方法は、第1の包括的配光パターンを第2の包括的配光パターンへの切り換えの際に、まず、中心軸に対する第1の側の少なくとも1つのヘッドライトのライトレンジを、少なくとも、このライトレンジが識別された道路使用者までの距離よりも小さくなるまで低減し、その後、第2の包括的配光パターンを形成することを特徴とする。
【0010】
前記中心軸とは、特に、直線状の道路において複数の車線を区切る分離ライン(例えばセンターライン)のことである。ここでは、中心軸に対する第1の側とは右方の走行車線であり、中心軸に対する第2の側とは左方の対向車線である。なおこれは右側通行の場合の定義であるが、左側通行の場合にはそれぞれの側が相応にこれとは逆になる。
【0011】
本発明では、複数の態様によって、種々の包括的配光パターンが形成され、さらに、これら種々の包括的配光パターンが切り換えられる。各包括的配光パターンは次のように定義される。
【0012】
第1の包括的配光パターンは、特に、道路上での明暗境界の特性を観察したときに、車輌長手軸方向に関して非対称のパターンである。自車両の走行車線の側、すなわち、中心軸に対する第1の側には、隣接する走行車線の側、例えば1車線道路の場合の対向車線の側よりも大きなライトレンジが形成される。この隣接する走行車線では、対向してくる道路使用者が眩惑されないように、ライトレンジは特にカットラインまでしか届かない。この第1の包括的配光パターンとは、例えば、それ自体公知のロービーム配光パターンでもある。ここでは車両長手軸に対して垂直に配置される遮光部での明暗境界を観察したとき、自車両走行車線側のロービーム配光パターンにおいて、水平線に対し15゜の、明暗境界を特徴付ける傾斜角が形成される。この傾斜角15゜は自車両走行車線での拡張されたライトレンジに相当する。
【0013】
第2の包括的配光パターンは、本発明によれば、以下、マスキングされた継続的ハイビームとも称され、特に、識別された1つまたは複数の道路使用者に応じたライトレンジの制御を特徴とする。こうした1つまたは複数の道路使用者の方向において、つまり、1つまたは複数の道路使用者の幅および距離によって定められる所定の開放角を有する領域においては、ライトレンジを1つまたは複数の道路使用者までの距離よりも小さくする。ここでの距離は、道路使用者が第2の包括的配光パターンによって眩惑されないように定められる。識別された道路使用者が例えば他車両である場合、当該距離は例えば他車両のバンパまでの距離として定義される。識別された道路使用者が例えば自転車もしくは歩行者である場合、当該距離は例えばこれらの道路使用者と路面との接触点までの距離として定義される。
【0014】
マスキングされた継続的ハイビームは、さらに、他方向、すなわち、識別された道路使用者を含む開放角の側方の領域において、この道路使用者までの距離より大きいライトレンジが形成されることを特徴とする。第2の包括的配光パターンでは、識別された道路使用者の方向において、特に、小さなライトレンジを有する1つの中央領域と、その両脇の、大きなライトレンジを有する側方領域とが形成される。このようにすれば、マスキングされた継続的ハイビームにおいて、走行方向の車両環境についての最適な照明光量が得られ、しかも、車両前方の走行方向における道路使用者が眩惑されることはない。垂直に配置される測定スクリーン上でマスキングされた継続的ハイビームの明暗境界を観察すると、特に、識別された道路使用者の前方に水平明暗境界が形成され、この道路使用者の側方に垂直明暗境界が形成され、このとき、識別された道路使用者の側方の領域におけるライトレンジのほうが大きい。第2の包括的配光パターンにおいて識別された道路使用者まで達する中央領域のライトレンジは、有利には、既存のライトレンジ制御装置によって制御される。
【0015】
さらに、本発明の幾つかの態様では、平滑化されたライトレンジとも称される第3の包括的配光パターンが形成される。この平滑化されたライトレンジでは、最大ライトレンジが、識別された道路使用者までしか達しないように制御される。それにより、このライトレンジは、識別された道路使用者との間の間隔距離よりも小さくなるが、固定のものではなく、識別された道路使用者までの距離に応じた制御がなされる。ただし、この平滑化されたライトレンジでは、マスキングされた継続的ハイビームとは異なり、包括的配光パターンの中央における垂直明暗境界は形成されない。
【0016】
「ライトレンジ」なる概念は、本発明においては、光強度が所定の限界値を下回る、角度に依存する道路上の距離のことである。ここでの光強度の限界値は特には明暗境界の場合と同様に定義される。ライトレンジを超える距離では光強度が特に小さいため、他の道路使用者はもはや眩惑されない。角度は特には水平角度であり、これは一方ではヘッドライトもしくはヘッドライト装置を通る長手軸によって形成され、他方では明暗境界上の所定の点と、ヘッドライトもしくはヘッドライト装置を通る長手軸と横軸との交点とをつなぐ線によって形成される。
【0017】
本発明の方法の有利な実施形態では、包括的配光パターンが、第1のヘッドライトの第1の部分配光パターンと第2のヘッドライトの第2の部分配光パターンとの重畳によって形成される。或る包括的配光パターンを別の包括的配光パターンへ切り換える際、特に第1の包括的配光パターンを第2の包括的配光パターンへ切り換える際には、少なくとも第2のヘッドライトのライトレンジ(特には双方のヘッドライトのライトレンジ)が、中心軸の第1の側で低減される。その後、第2の包括的配光パターンを形成するために、第2のヘッドライトの発光装置を、垂直旋回軸を中心として旋回させる。
【0018】
第2の包括的配光パターン、すなわち、マスキングされた継続的ハイビームが、右側通行において、左ヘッドライトの発光方向が右ヘッドライトの発光方向の外側へ旋回されることによって形成されて、2つのヘッドライトの発光方向間の角度が増大する場合、および、左ヘッドライトが中心軸に対する右側すなわち走行車線上で、中心軸に対する左側すなわち対向車線上よりも大きいライトレンジを有する場合には、左ヘッドライトのコーンビームの旋回時に場合により他の道路使用者が眩惑されるという問題が生じる。これを回避するために、本発明の方法では、まず、中心軸に対する第1の側の大きなライトレンジが低減される。この場合にはじめて発光方向が外側へ向かって旋回される。
【0019】
マスキングされた継続的ハイビームの形成前のライトレンジの低減は、ヘッドライト装置によっていわゆる市街地用ビーム機能を形成することにより行われる。市街地用ビーム機能とは、対称の包括的配光パターンであって、制限されたライトレンジ、すなわち、第1の包括的配光パターン(例えばロービーム)の最大ライトレンジよりも小さいライトレンジを有するものを形成することを特徴とする。第2のヘッドライトはカーブ照明の場合と同様に外側へ旋回される。その後、第2の包括的配光パターンが形成される。
【0020】
逆に、第2の包括的配光パターンすなわちマスキングされた継続的ハイビームから第1の包括的配光パターンすなわちロービームへ切り換えられる場合には、まず、市街地用ビーム配光パターンが形成され、ついで、第2のヘッドライトおよび場合により第1のヘッドライトが垂直旋回軸を中心として旋回され、その後、非対称の第1の包括的配光パターンが形成される。このようにして、第1の包括的配光パターンへの切り換え時にも他の道路使用者の眩惑は生じない。
【0021】
さらに、本発明の第1の特徴により、車両用のヘッドライト装置が提供される。本発明のヘッドライト装置は、包括的配光パターンを形成するために、所定の距離を置いて配置された少なくとも2つのヘッドライトを備えている。また、ヘッドライト装置は、走行方向で見て車両前方の道路使用者を検出する道路使用者検出装置と、この道路使用者検出装置に接続され、第1の包括的配光パターンおよび第2の包括的配光パターンを形成する制御装置とを有する。ここで、第1の包括的配光パターンでは、中心軸に対する第1の側のライトレンジが中心軸に対する第2の側のライトレンジよりも大きく、第2の包括的配光パターンでは、包括的配光パターンが、識別された少なくとも1つの道路使用者の方向において当該道路使用者までの距離より小さいライトレンジを有し、かつ、他の方向において当該道路使用者までの距離より大きいライトレンジを有するように、制御される。本発明のヘッドライト装置は、制御装置により、第1の包括的配光パターンから第2の包括的配光パターンへの切り換えの際に、まず、中心軸に対する第1の側の少なくとも1つのヘッドライトのライトレンジが、少なくとも、識別された道路使用者までの距離よりも小さくなるまで低減され、その後、第2の包括的配光パターンが形成されるように、ヘッドライトが駆動されることを特徴とする。
【0022】
本発明の第1の態様のヘッドライト装置は、特に、本発明の第1の特徴の方法の各ステップを完全にまたは部分的に実行するように構成されている。
【0023】
本発明の第1の態様の装置は、特に、非対称の配光パターン、例えばロービームから、いわゆるマスキングされた継続的ハイビームへの移行を行う装置に関する。本発明の方法および本発明の装置によれば、特に、2つの包括的配光パターンを切り換える際に、他の道路使用者が眩惑されることはない。
【0024】
本発明の第2の態様では、車両用ヘッドライト装置を制御する方法が提供される。ここでは、車両前方の走行方向における複数の道路使用者が検出される。この方法では、ヘッドライト装置によって、第3の包括的配光パターンが形成される。ここでは配光パターンが閉ループ制御されて、この配光パターンは、検出された道路使用者の方向において、検出された当該道路使用者との間隔よりも短いライトレンジを有し、別の方向においてはそれ以上の長さのライトレンジを有している。さらに、第2の包括的配光パターンが形成される。ここでは包括的配光パターンが閉ループ制御され、この包括的配光パターンは、検出された少なくとも1つの道路使用者の方向において、検出された道路使用者との間隔よりも短いライトレンジを有し、別の方向においては、検出された道路使用者との間隔よりも長いライトレンジを有する。この方法は次の特徴を有する。すなわち、或る包括的配光パターンから別の包括的配光パターンへの切り換えの間に、検出された道路使用者の方向におけるライトレンジが、水平軸を中心としたヘッドライト装置の光放射方向の旋回によって閉ループ制御され、このライトレンジが検出された道路使用者に達する、という特徴を有する。
【0025】
本発明の第2の態様ではさらに、包括的配光パターンを形成する、間隔の空いた少なくとも2つのヘッドライトと、車両前方走行方向における道路使用者を検出する装置とを有する車両用ヘッドライト装置が提供される。さらにこのヘッドライト装置は制御装置を有しており、この制御装置は道路使用者検出装置と結合されており、この制御装置によって第3の包括的配光パターンが形成される。ここでこの配光パターンが閉ループ制御されて、この配光パターンは、検出された道路使用者の方向において、検出された道路使用者との間隔よりも短くかつ別の方向においてはそれと同じがそれよりも長いライトレンジを有する。さらに、第2の包括的配光パターンが形成される。ここでは包括的配光パターンが閉ループ制御されて、この包括的配光パターンは検出された少なくとも1つの道路使用者の方向において、検出された道路使用者との間隔よりも短いライトレンジを有し、別の方向においては、検出された道路使用者との間隔よりも長いライトレンジを有する。このヘッドライト装置はライトレンジの閉ループ制御を特徴とし、このライトレンジ閉ループ制御によって、或る包括的配光パターンから別の包括的配光パターンへの切り換え中に、検出された道路使用者の方向におけるライトレンジが、水平軸を中心としたヘッドライト装置の光放射方向の旋回によって、ライトレンジが検出された道路使用者に達するように閉ループ制御される。
【0026】
第2の包括的配光パターンは殊に、上述した、マスキングされた継続的ハイビームである。第3の包括的配光パターンは殊に、上述した、平滑化された配光パターンである。但しこれら2つの包括的配光パターン間の切り換え時には殊に、ライトレンジが絶え間なく、検出された道路使用者に達することが保証される。このようにして、本発明の方法および本発明のヘッドライト装置によって、容易かつ低コストに、恒久的に良好な照明を、検出された道路使用者まで供給することができる。
【0027】
本発明のヘッドライト装置の配光パターン閉ループ制御部は、水平軸を中心とした少なくとも1つのヘッドライトの光放射方向の旋回のために、殊に第1のアクチュエータを有している。さらに、ヘッドライト装置は、垂直な軸を中心にした少なくとも1つのヘッドライトの光放射方向の旋回のために、第2のアクチュエータを有している。このアクチュエータは例えば、カーブ照明機能のために既に存在しているアクチュエータである。
【0028】
本発明のヘッドライト装置の別の構成では、これは各ヘッドライトに対して、それぞれ1つのシェード装置を有している。このシェード装置は少なくとも2つの、垂直および/または水平に動く、平板状の遮光板を有している。第2の包括的配光パターン、すなわちマスキングされた継続的ハイビームでは、側面領域は中央領域に対してそれぞれ1つの垂直な明暗境界を形成する。この明暗境界は、2つの遮光板のうちの少なくとも1つの遮光板の垂直位置および/または水平位置を変えることによって形成される。2つの遮光板を垂直および水平にスライドさせるために、ヘッドライト装置は殊に、2つの遮光板と結合されている、共通の第3のアクチュエータを有している。このようにして、種々の、本発明と相応に形成される包括的配光パターンを、3つのアクチュエータのみによって形成することができる。これによって、本発明のヘッドライト装置が低コストで製造および動作される。
【0029】
本発明の第3の態様では、車両用ヘッドライト装置を制御する方法が提供される。ここでは、ヘッドライト装置によって、少なくとも2つの包括的配光パターンが形成される。ここで、これらの包括的配光パターン間は切り換え可能である。本発明の方法では走行特性が検出されて、或る包括的配光パターンから別の包括的配光パターンへの切り換え時に、この或る包括的配光パターンからこの別の包括的配光パターンへの移行のための時間間隔が、この走行特性に依存して特定される。
【0030】
第3の態様のこの方法では、殊に、車両前方の走行方向における道路使用者が検出され、ヘッドライト装置によって形成される包括的配光パターンが閉ループ制御されて、この包括的配光パターンは、少なくとも1つの検出された道路使用者の方向において、検出された道路使用者との間隔よりも小さいライトレンジを有し、別の方向においては、検出された道路使用者との間隔よりも大きいライトレンジを有する。この包括的配光パターンは殊に、上述した第2の包括的配光パターン、すなわち、マスキングされた継続ハイビームである。
【0031】
この走行特性は殊に、車両の走行動的特性および/または加速度の高さ、殊に車両の加速度の絶対値の大きさによって特定される。ここで、或る包括的配光パターンから別の包括的配光パターンへの移行に対する時間間隔は、この走行動的特性が大きくなるほど短くなる。すなわち殊に、加速度ないしは加速度の全体値が大きくなるほど短くなる。このような設計によって、移行時間を走行動的特性に合わせることができ、これによって、ユーザにとって快適な、包括的配光パターン間の切り換えが実現される。
【0032】
時間間隔ΔTは、加速度Bに依存して、殊に以下のように計算される。
【0033】
ΔT=−k1・abs(B)+k2
ここで前記k1に対して、
0.3s3/m≦k1≦2.0s3/m
が当てはまり、前記kに対しては、
2s≦k2≦10s
が当てはまる。
【0034】
有利には、前記kに対して、
0.5s3/m≦k1≦0.9s3/m
が当てはまり、前記k2に対して、
4s≦k2≦6s
が当てはまる。
【0035】
殊に、k1=0.7s3/mおよびk2=5sが当てはまる。
【0036】
さらに、走行特性を、運転者タイプによって特定することができる。運転者タイプの特定時にはまず、運転者が識別される。その後、この運転者に関する目下のデータ、場合によっては過去のデータも呼び出される。最終的に、運転者が特定の運転者タイプに割り当てられる。
【0037】
さらに、運転者タイプはユーザによって自由に選択可能である。例えば運転者は、所望の走行特性を、走行開始前の入力によって特定することができる。
【0038】
本発明の第3の態様ではさらに、車両用ヘッドライト装置が提供される。これは間隔を空けて配置された、包括的配光パターンを形成する少なくとも2つのヘッドライトと、制御装置とを有している。この制御装置によって少なくとも2つの包括的配光パターンが形成され、さらにこの制御装置によって包括的配光パターン間の切り換えが可能である。このヘッドライト装置は、さらに走行特性を検出する検出装置を含んでいる。このヘッドライト装置はタイマーを特徴としており、このタイマーによって、或る包括的配光パターンから別の包括的配光パターンへの切り換え時に、この或る包括的配光パターンからこの別の包括的配光パターンへの移行に対する時間間隔が、走行特性に依存して定められる。
【0039】
本発明の第3の態様によって形成された2つの包括的配光パターンは、第1および第2の上述した包括的配光パターン、並びに第1および第3の上述した包括的配光パターン、並びに第2および第3の上述した包括的配光パターンであり得る。
【0040】
本発明の第3の態様によって、或る包括的配光パターンから別の包括的配光パターンへの切り換えに対する時間間隔が、次のように実現される。すなわち、走行特性に依存して、車両周辺の最適な照明がなされるように実現される。
【0041】
本発明の第4の態様では、車両ヘッドライト装置を制御する方法が提供される。ここでは、車両前方の走行方向において前方を走行している道路使用者と対向して近づいて来る道路使用者とが検出され、ヘッドライト装置によって形成される配光パターンが次のように閉ループ制御される。すなわちこの配光パターンが、検出された前方を走行している道路使用者の方向において、検出された前方走行中の道路使用者との間隔よりも短いライトレンジを有するように閉ループ制御される。ここでこの配光パターンのライトレンジは、隣接走行路の方向においては、別の、殊に対向して近づいて来る道路使用者の検出に依存して、隣接走行路をより強く照明する第1の照明状態と隣接走行路をより弱く照明する第2の照明状態との間で切り換えられる。本発明の方法は、隣接走行路方向におけるライトレンジに対するこの2つの照明状態の切り換えが、別の、殊に対向して近づいて来る道路使用者の検出率に依存して遅延される、ということを特徴とする。
【0042】
ヘッドライト装置によって形成されるこの配光パターンは、殊に上述した第2の包括的配光パターンであり、すなわちマスキングされた継続ハイビームである。このような包括的配光パターンの2つの照明状態において、本発明の方法では、第1の検出された道路使用者の隣の側方領域のライトレンジが、別の道路使用者の検出に依存して整合される。この整合によって、ライトレンジがライトレンジの側方領域において、マスキングされた継続ハイビームの中央領域に相応すると、配光パターンの第1の照明状態がマスキングされた継続ハイビームに相応し、配光パターンの第2の照明状態が上述した第3の総合的配光、すなわち、平滑化されたライトレンジに相応する。
【0043】
遅延時間は殊に、別の道路使用者、殊に対向して近づいて来る道路使用者の検出が頻繁になるほど長くなる。例えば、別の道路使用者が検出される毎に、遅延時間が1つの延長間隔ぶんだけ延長され、この遅延時間は、所定の時間的減衰率によって短くなる。しかし場合によっては、遅延時間に対する最小値および最大値が設定される。これによって、遅延時間が、極めて高い交通密度の場合に相応に長くなることがなくなる。遅延時間の特別な選択によって、運転者にとって快適な光による像が形成される。これは、過度に頻繁な切り換えによる煩わしい印象を与えることがない。
【0044】
さらに延長間隔を、次のことに依存して特定することができる。すなわち、どの水平角度位置で、別の、殊に対向して近づいて来る道路使用者が検出されたのかに依存して特定することができる。殊に、道路使用者が車両前方の左側に、または右側に、または中央に現れるのかが考慮される。最終的には、延長間隔はおよび/または減衰率は、車両速度にも依存して特定される。例えば、市街地道路における典型的な速度領域においては、遅延時間は、対向して近づいて来る道路使用者が検出された場合、増加するときには遅いが、低減するときには速い。他方では、例えば高速道路上で典型的な高速走行時には、新たに検出された別の道路使用者によって、遅延時間の長い延長が生じる。ここでは、遅延時間の低減は、減衰率によって緩慢に行われる。
【0045】
遅延時間は例えば1秒から400秒の範囲にあり、殊に2秒から200秒の範囲にある。
【0046】
本発明による方法の別の形態では、対向して近づいて来る道路使用者が検出されなかったときに、検出された道路使用者の方向おける配光パターンにおいて、短いライトレンジを有する中央領域が形成され、さらにこの中央領域の両側に隣接する、長いライトレンジを有する第1及び第2の側方領域が形成される。従ってここではマスキングされた継続的ハイビームが提供される。そこでは第2の側方領域が、隣接走行路を照明する。このケースでは、第1の、すなわち右側の側方領域が中央領域よりも長いライトレンジを有する場合に、第1の側方領域が中央領域よりも小さいかまたはそれと同じライトレンジを有している場合よりも、減衰率は大きくなる。従ってこの場合に隣接走行路は、マスキングされた継続的ハイビームの別の側方領域が照明される場合に、より迅速に再び照明される。第1の側方領域の照明はこの場合には、殊に、道路使用者の検出にも依存してオンオフされる。従って全体として本発明の方法によれば、道路使用者が比較的多い場合でも、頻繁な切り替えのない配光パターンが実現される。
【0047】
本発明による方法の別の構成では走行路の曲線度合が特定され、この曲線度合が境界値を上回ると、隣接走行路を弱く照明する第2の照明状態に切り換えられる。走行路の湾曲性は、車両のセンサによって特定されたデータから特定される。これは例えば、操舵角旋回角度の時間的な変化である。または螺旋度は、車両の目下の位置と、例えばナビゲーションシステム内に存在するデジタル地形図とに基づいて特定される。
【0048】
本発明の第4の態様では、さらに、車両用ヘッドライト装置が提供される。これは、包括的配光パターンを形成する、間隔の空いた少なくとも2つのヘッドライトと、車両前方走行方向における前方を走行している道路使用者と対向して近づいて来る道路使用者とを検出する装置とを有している。さらにこのヘッドライト装置は、制御装置を含んでいる。この制御装置は道路使用者検出装置と結合されており、この制御装置によって包括的配光パターンが形成される。この包括的配光パターンは次のように閉ループ制御される。すなわち、この包括的配光パターンが、検出された前方走行道路使用者の方向において、この検出された前方走行道路使用者との間隔よりも短いライトレンジを有するように閉ループ制御される。さらにこの包括的配光パターンのライトレンジは隣接走行路の方向において、対向して近づいて来る道路使用者に依存して、隣接走行路を強く照らす少なくとも1つの第1の照明状態と、隣接走行路を弱く照らす第2の照明状態との間で切り換えられる。このヘッドライト装置は、制御装置が遅延ユニットを有するという特徴を有している。この遅延ユニットによって、隣接走行路の方向におけるライトレンジに対するこの2つの照明状態間の切り換えが、対向して近づいて来る道路使用者の検出率に依存して遅滞される。
【0049】
本発明の第4の態様によって、特に、異なる配光パターン間の過度に頻繁な往復的な切り替えを回避することができる。これによって、形成される配光パターンは安定し、また配光パターンの変化に起因してドライバーの気が逸らされることを回避することができる。
【0050】
本発明の第5の態様によれば、車両のヘッドライト装置を開ループ制御するための方法が提供される。この方法においては、車両前方の方向における道路使用者が検出され、またヘッドライト装置によって形成される配光パターンは、検出された少なくとも1つの道路使用者の方向において、この検出された道路使用者までの距離よりも短いライトレンジを有し、且つ、別の方向においては検出された道路使用者までの距離よりも長いライトレンジを有するように閉ループ制御される。この方法は、別の方向におけるライトレンジが、車両の走行方向と、車両から検出された道路使用者または別の検出された交通関与体までの接続線との間の水平方向の角度に依存して閉ループ制御される。ヘッドライト装置によって形成される配光パターンは特に前述の第2の包括的配光パターンである。
【0051】
特に、ライトレンジが別の方向において長くなればなるほど、水平方向の角度はいっそう小さくなる。本発明による方法の1つの実施形態によれば、別の方向におけるライトレンジLに関して以下の関係が成り立つ。
【0052】
LW = Lmax(-mΦ + n)
ここで、Lmaxは最大ライトレンジであり、Φは水平方向の角度であり、またmは、
0.167度-1 ≦ m ≦ 0.4度-1
特に、
0.2度-1 ≦ m ≦ 0.3度-1
特に有利には、
m = 0.25度-1
であり、またnは、
1 ≦ n ≦ 1.2
特に、
1.1 ≦ n ≦ 1.15
特に有利には、
n = 1.125
である。
【0053】
さらには、有利には、所定の角度まではライトレンジが最大ライトレンジに相当し、その所定の角度を過ぎるとライトレンジが最小であると規定される。水平方向の角度Φ≦Φ1に対しては、別の方向におけるライトレンジが最大ライトレンジに相当し、この場合Φ1は0°から2°、特に0.2°から0.8°の範囲にある。さらに、水平方向の角度Φ≧Φ2に対しては、別の方向におけるライトレンジが最小ライトレンジに相当し、この場合Φ2は3°から6°、特に4°から5°の範囲にある。
【0054】
前述のパラメータによって、道路使用者が接近してくる際、または道路使用者が追い越して行く際に、ライトレンジが突然短くはならないことを保証できる。この措置も光像の安定化に寄与する。
【0055】
別の方向におけるライトレンジは特に、車両の走行方向と、車両から別の検出された道路使用者までの接続線との間の水平方向の角度に依存して閉ループ制御される。この場合、配光パターンは特に対向車線を照明する。
【0056】
さらには、別の方向におけるライトレンジを、車両の走行方向と、車両から検出された道路使用者までの接続線との間の水平方向の角度に依存して閉ループ制御することができる。この場合、別の方向における配光パターンは追い越し過程の際に、検出された道路使用者の走行車線に隣接する領域、すなわち右側走行の場合には、追い越される道路使用者に隣接する右側の領域を照明する。特に、対向車線の方向における追い越し過程に関する信号がセットされた後、例えば方向指示器が対向車線の方向に操作された後に、別の方向におけるライトレンジの閉ループ制御を実施することができる。
【0057】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、少なくとも検出された道路使用者の方向における配光パターンでは比較的小さいライトレンジを有する中央領域が形成され、この中央領域の両隣に比較的大きいライトレンジを有する側方領域が形成される。つまり、第2の包括的配光パターンが提供される。この場合、側方領域におけるライトレンジは、車両の走行方向と、車両から検出された道路使用者または別の検出された道路使用者までの接続線との間の水平方向の角度に依存して閉ループ制御される。
【0058】
さらには、水平方向の角度に依存してライトレンジを開ループ制御する場合には、ヒステリシスを設けることができる。
【0059】
さらに本発明の第5の態様によれば、包括的配光パターンを形成する、間隔を空けて設けられている少なくとも2つのヘッドライトと、車両前方の走行方向における道路使用者を検出するための装置とを備えている車両用のヘッドライト装置が提供される。ヘッドライト装置はさらに制御装置を含んでおり、この制御装置は道路使用者検出装置と接続されており、またこの制御装置によって包括的配光パターンを形成することができ、さらには、少なくとも1つの検出された道路使用者の方向において、包括的配光パターンがこの検出された道路使用者までの距離よりも短いライトレンジを有しており、且つ、別の方向においては検出された道路使用者までの距離よりも長いライトレンジを有しているように包括的配光パターンを閉ループ制御することができる。ヘッドライト装置は、別の方向におけるライトレンジを、車両の走行方向と、車両から検出された道路使用者または別の検出された道路使用者までの接続線との間の水平方向の角度に依存して閉ループ制御できるように、制御装置を用いてヘッドライトを駆動制御できることを特徴としている。
【0060】
本発明の第5の態様の方法およびヘッドライト装置によって、特に、自車両の前方に車両が走行しており、且つ、別の車両が接近してくる場合、または、自車両が先行の別の車両を追い越す場合に配光パターンを開ループ制御することができる。この場合には、形成される包括的配光パターンが突然変化しないことが保証される。
【0061】
本発明の第6の態様によれば、車両のヘッドライト装置を開ループ制御するための方法が提供され、この方法によって少なくとも2つの包括的配光パターンを形成することができ、2つの包括的配光パターンを往復的に切り替えることができる。この方法では車両前方の走行方向における道路使用者が検出される。本発明によれば、他の道路使用者の検出率に依存して、2つの包括的配光パターンの内の一方が選択される。
【0062】
本発明の第6の態様による方法によって、交通密度が過度に高い場合、すなわち、ある期間内に非常に多数の道路使用者が検出される場合には、所定の包括的配光パターンを形成することができる。特に、2つの包括的配光パターンは前述の第2の包括的配光パターン、すなわちマスキングされたハイビーム、および第3の包括的配光パターン、すなわち平滑化された(ならされた)ライトレンジである。検出率が所定の限界値を超過すると、この平滑化されたライトレンジが包括的配光パターンとして形成される。これにより、非常に長いライトレンジを有するマスキングされたハイビームの領域を過度に頻繁にオンオフしなければならないことを回避できる。
【0063】
さらに本発明による方法の1つの実施形態によれば、別の検出された道路使用者の位置及び/又は車両速度に依存して包括的配光パターンが選択される。例えば、道路使用者が検出される度に第1の増分値が形成される。道路使用者が検出される度に形成されるこの第1の増分値が積分され、積分された増分値から、車両速度に依存する第2の増分値が減算される。これによって、包括的配光パターンの内の一方を特徴付ける第1の出力信号が形成される。この場合、第1の増分値も付加的に車両速度に依存していて良い。
【0064】
本発明による方法の別の実施形態によれば、包括的配光パターンの選択が択一的または付加的に、車両の時間的な操舵角変化に依存して行なわれる。特に、操舵角変化に依存して第1の操舵角値が形成される。さらに、車両走行速度および操舵角に依存して第2の操舵角値が形成される。続いて、第1の操舵角値および第2の操舵角値に依存して、包括的配光パターンの内の一方を特徴付ける第2の出力信号が形成される。時間的な操舵格変化を考慮することによって、曲がりくねった走行路を検出することができる。所定の包括的配光パターンの使用、例えばマスキングされたハイビームの使用はカーブする走行路においては不利である。したがって付加的に、本発明による方法によって、カーブする走行路においては、その種の走行路に適している包括的配光パターンを形成することができる。例えばこの場合には、平滑化されたライトレンジを形成することができる。
【0065】
本発明による方法の別の実施形態によれば、第3の包括的配光パターンが形成され、これは第1の出力信号または第2の出力信号がそのような包括的配光パターンを特徴付ける場合に行なわれる。さらには、2つの包括的配光パターンを往復的に切り替える場合には、頻繁な切り替えを回避するために、ヒステリシスを設けることができる。
【0066】
さらに本発明の第6の態様によれば、2つの包括的配光パターンを形成する、間隔を空けて設けられている少なくとも2つのヘッドライトと、2つの包括的配光パターンの往復的な切り替えを行なうことができる制御装置と、車両前方の走行方向における道路使用者を検出する装置とを備えている、車両用のヘッドライト到達距離が提供される。本発明によるヘッドライト装置は、2つの包括的配光パターンの内の一方を他の道路使用者の検出率に依存して選択できるように制御装置が構成されていることを特徴とする。
【0067】
本発明によるヘッドライト装置は特に、本発明の第6の態様の方法のステップを完全にまたは部分的に実施できるように構成されている。
【0068】
以下では、本発明の上述の全ての態様と組み合わせることができる、本発明の考えられる実施形態および発展形態を説明する。さらに、以下において説明する実施形態および発展形態を相互に任意に組み合わせることができる。
【0069】
本発明による方法の1つの実施形態においては、一方の包括的配光パターンから他方の包括的配光パターンへの切り替えが自動的に、特に道路使用者の検出に依存して行なわれる。さらには、一方の包括的配光パターンから他方の包括的配光パターンへの切り替えがユーザの操作過程によってトリガされることも考えられる。
【0070】
本発明による方法の別の実施形態によれば、少なくとも1つの包括的配光パターンのエネルギ消費量を調整することができる。特に第2の包括的配光パターンを、ロービームと従来のハイビームとの間においてのみビームを上または下に向けるいわゆるハイビームアシスタントとしてのエネルギ節約モードにおいて動作させることができる。このエネルギ節約モードにおいては、移動頻度が低減されることによって、特にアクチュエータの操作が稀にしか行なわれないことによってエネルギが節約される。
【0071】
さらに本発明による方法においては、多車線の道路を走行しているか否かを検出することができる。ここで多車線の道路とは、隣接する複数の走行路が同一の走行方向に対応付けられているものと解される。多車線の道路が検出されている場合には、隣接する走行路に対する照明状態へと切り替えられ、そのような照明状態ではこの隣接する走行路が比較的短いライトレンジでもって照明される。例えば、平滑化されたライトレンジに関しては第3の包括的配光パターンへの切り替えを行なうことができる。
【0072】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、2つの包括的配光パターンの往復的な切り替えにおいてヒステリシスが設けられる。特に、本発明による方法の第4の態様においては、隣接する走行路の方向におけるライトレンジに関する2つの照明状態の往復的な切り替えにおいてヒステリシスが設けられる。この構成によって、2つの包括的配光パターン間の過度に頻繁な往復的な切り替えを回避することができる。このことは光像の安定化に繋がる。
【0073】
本発明による方法及び本発明によるヘッドライト装置においては、他の道路使用者をカメラ、特に後段に画像処理ソフトウェアが設けられているCCDカメラおよび/またはレーザセンサ、赤外線センサおよび/またはレーダセンサによって検出することができる。それらのセンサによって、他の道路使用者が検出領域内に存在しているか否かが検出される。検出された場合には、この他の道路使用者がどの位置において自車両に相対的に存在しているかがさらに検出される。このようにして、照明された道路使用者しか検出できないのではなく、歩行者のような固有の光源を有していない他の道路使用者も検出することができる。
【0074】
本発明による方法の上述の全ての態様においては、道路使用者(照明された車両の場合)を車両前方の走行方向において、特に以下のやり方で検出することができる。すなわち、可視スペクトル領域にある交通領域の画像が記録され、その画像から閾値を上回る輝度と関連付けられた領域が抽出され、領域が少なくともその領域の大きさに応じて分類され、各領域に対して、領域の分類とこの領域に対応付けられる物理的な大きさとから、車両ライトに関する画像領域の類似性に関する尺度を表す信頼値が形成され、最後に、この信頼値に依存して、車両ライトに対応付けられる領域か否かが決定される。
【0075】
本発明による方法は、遠く離れた光源に由来する画像の明るい領域が近傍の光源に由来する明るい領域と区別されることを考慮する。この区別に基づいて、画像の明るい領域が分類される。しかしながら多くの場合は、この分類によって領域の車両ライトへの一義的な対応付けが不可能になるので、この分類に続いて、少なくとも車両に一義的に対応付けることができない領域に対しては信頼値が決定される。この信頼値に依存して、領域を車両ライトに対応付けることができるか否かを非常に信頼性高く求めることができる。
【0076】
本発明の方法の1つの実施形態によれば、複数の領域を分類する際に、領域の特性から分類値が得られる。この分類値は各領域に割り当てられており、領域の分類値および物理的変量から信頼値が形成される。分類値は、分類する際に各クラスに領域をどの程度良好に、ないしはどの程度一義的に割り当てることができるかを表すものである。したがって分類値は、クラス内部での区別を表している。
【0077】
各領域に対する分類のためにとりわけ特性が決定される。これらの特性は例えば領域の輝度、領域の形状ないし輪郭、および/または、領域内の色を含むことができる。特性はさらに、領域の重心、面積、および/または、主軸、ならびに付加的または択一的に、領域のモノクロのピクセル強度に対する値を含むことができる。領域のモノクロのピクセル強度に関して、最大強度、平均値、標準偏差、領域内の最大値の位置、ヒストグラム分布、および/または、平均勾配値を考慮することができる。さらにこれらの値を、付加的または択一的に、車両ライトの尾灯の色に相当する色、通常は赤色、のピクセルに関してのみ決定することができる。
【0078】
さらには、モノクロのピクセルと赤色のピクセルとの間で種々異なる比較を決定することによって、例えばモノクロレベルの平均値と赤色レベルの平均値の間での比率を決定することによって、色情報を直接得るために用いられる特性を考慮することができる。この関連において「モノクロ」とは、この領域におけるグレー値ないし輝度であるとも解される。
【0079】
最後に本発明の方法においては、複数の順次連続する画像を考慮して特性の平均値を形成することができる。
【0080】
本発明の方法の1つの実施形態によれば、複数の領域の分類値が学習アルゴリズムを用いて獲得され、その後これらの分類値が、不連続の重み付けされた分類値に割り当てられる。それから信頼値が、領域の重み付けされた分類値および物理的変量から形成される。
【0081】
本発明の方法の1つの実施形態によれば、信頼値を形成する際に用いられる物理的変量は、領域内の最大グレー値、とりわけ最大可能なグレー値によって正規化された領域内の最大グレー値である。このように信頼値を決定する際、自車両により近い車両は、遠く離れている車両よりも画像上でより明るい領域を形成するということが考慮される。相応にして、自車両の近くにある車両に割り当てられる領域は、より遠く離れている車両に割り当てられる領域よりも高い信頼値を有する。さらに、車両の固有光の反射によって引き起こされる明るい領域は低い信頼値を獲得し、この反射が非常に遠く離れた構造物によって引き起こされる場合には、この信頼値はさらに低減する。
【0082】
本発明の方法の別の1つの実施形態によれば、領域を1つの車両ライトに割り当てることができるか、または車両の複数の照明に割り当てることができるかが、分類に基づいて既に決定される。その後、分類に基づいて車両ライトを一義的に割り当てることができない領域に対してのみ、信頼値が形成される。
【0083】
本発明の別の1つの実施形態によれば、方法の信用性を改善するために領域の周囲が検査される。この際、1つの領域の近くに別の領域が存在するか否かが決定され、このようにして2つの領域を車両の2つのヘッドライトまたは尾灯に割り当てることができる。したがって複数の領域のペア形成が実施される。ここから二重領域に対する示唆を得ることができ、この二重領域をとりわけ複数の自動車の照明に割り当てることができる。この検査に基づいて領域の分類値を適合させることができる。
【0084】
本発明の方法の別の1つの実施形態によれば、ある領域の時間的な展開を、画像シーケンスに基づいて追跡することができる。しかしながらその領域の追跡は困難であることが多いので、本発明の方法は、信頼値の時間的コヒーレンスを決定することによってこのような領域の追跡とは独立して実施することもできる。この場合には信頼値は、該信頼値の時間的コヒーレンスに依存して変化する。これに関してとりわけ蓄積フィールドが形成され、該蓄積フィールドでは画像の画像点に対して信頼値が蓄積される。例えば蓄積フィールドにおいてある画像から後続の画像に移行する際に、画像点に対する信頼値は、固定値だけ低減することができ、かつ、後続する画像の相応の画像点の信頼値だけ増加することができる。さらには、蓄積フィールドにおいてある画像から後続の画像へと移行する際に、領域に割り当てられたオブジェクトの期待される動きに依存して領域を拡大させることができる。最後に、蓄積フィールドの時間的な展開に基づいて、領域を車両ライトに割り当てるか否かを決定することができ、この際蓄積フィールドの信頼値は時間的なヒステリシスを受けている。
【0085】
本発明による信頼値の時間的コヒーレンスの決定に関する利点は、画像シーケンス内での領域の実施困難な追跡が必要ないことである。その際、領域を確実に車両ライトに割り当てるために、ごく僅かな画像フレームに対する蓄積フィールドを考慮するだけで充分であり、したがって非常に迅速に割り当てを実施することができる。
【0086】
本発明の別の1つの実施形態によれば、交通領域は、40°よりも大きい水平開口角において記録される。このような開口角を使用することの利点は、画像を、暗闇で車両を検出するためだけに使用できるのではなく、他の車両アプリケーション、例えば車両支援システムを検出するためにも使用できることである。しかしながらこのような開口角の場合には非常に離れた車両ライトを検出するのが困難である。したがって本発明の方法の発展形態によれば、車両の尾灯の色、つまり通常は赤色、に相応する波長領域でのみ感応する領域と、とりわけ可視スペクトルにおける入射光の輝度を検出する他の領域とを有するセンサによって画像が記録される。この場合入射光の輝度を検出する領域は、とりわけ近赤外線領域からの光は検出しない。
【0087】
車両の尾灯の色に相当する波長領域のみにある領域は、例えば25%を占める。
【0088】
画像は、とりわけモノクロカメラによって撮影される。
【0089】
以下、添付した図面を参照して実施例に基づき本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明のヘッドライト装置のヘッドライトの実施例を示す概略図
【図2】本発明のヘッドライト装置の実施例を示す概略図
【図3】本発明の方法の実施例によって形成される、測定スクリーン上における第1の包括的配光パターンの放射特性を示す図
【図4】本発明の方法の実施例によって形成される、道路上における第1の包括的配光パターンの放射特性を示す図
【図5】本発明の方法の実施例によって形成される、測定スクリーン上における第2の包括的配光パターンの放射特性を示す図
【図6】本発明の方法の実施例によって形成される、道路上における第2の包括的配光パターンの放射特性を示す図
【図7】本発明の方法の実施例によって形成される、道路上における第3の包括的配光パターンの放射特性を示す図
【図8】他の道路使用者を検出するための装置の概略構造図
【図9】本発明の方法の実施例において実施される、他の道路使用者を検出するための方法ステップを示す図
【図10】他の道路使用者を検出する際に実行されるヒステリシスプロセスを示す図
【図11】本発明の方法の実施例において他の道路使用者を検出する際に使用される、別の考えられる方法ステップを示す図
【図12】第1の包括的配光パターンから第2の包括的配光パターンへと切り換わる際の、公知の方法における配光パターンを示す図
【図13】本発明の方法の実施例に基づいて、第1の包括的配光パターンから第2の包括的配光パターンへと転換する際の配光パターンを示す図
【図14】第2の包括的配光パターンの例を示す図
【図15】本発明の方法の実施例に基づいて、第2の包括的配光パターンの中心領域におけるライトレンジの変化を示す図
【図16】本発明の方法の実施例に基づいて、対向車における左側領域での第2の包括的配光パターンの変化を示す図
【図17】本発明の方法の実施例に基づいて、対向車における左側領域での第2の包括的配光パターンの変化を示す図
【図18】本発明の方法の実施例に基づいて、追い越しプロセスにおける第2の包括的配光パターンの右側領域の変化を示す図
【図19】本発明の方法の実施例に基づいて、追い越しプロセスにおける第2の包括的配光パターンの右側領域の変化を示す図
【図20】本発明の方法の実施例に基づいて、検出された道路使用者に対する水平角に依存して、第2の包括的配光パターンにおける側方領域のヘッドライトレンジが形成される様子を示す線図
【図21】本発明の方法の実施例に基づいて、第1の包括的配光パターンから第2の包括的配光パターンへと切り換える際のオーバーラップ時間を詳細に示す線図
【図22】遅延時間を計算するためのブロック回路図
【図23】本発明の方法の実施例に基づいて、第2の包括的配光パターンと第3の包括的配光パターンとの間の切り換えプロセスを形成するためのブロック回路図
【0091】
一般的に図2に図示されているヘッドライト装置は、2つの隣接する投影型ヘッドライト1および2を含み、これらの投影型ヘッドライトは、車両の右側および左側の前方に公知の方法で配置されている。この投影型ヘッドライト1、2の一つが図1に図示されている。他方の側に配置されている投影型ヘッドライト2は実質的に同一に構成されている。
【0092】
図1には、車両長手軸および垂直線Vによって画定された平面に対して平行な平面上に、投影ヘッドライト1の断面が図示されている。投影型ヘッドライト1は公知の形式および方法で、回転楕円体として形成された反射器6によって取り囲まれた光源3を含む。したがって反射器6は2つの焦点を有する。光源3は反射器6の2つの焦点のうちの1つに設けられている。光源3によって放射された光は、反射器6によって投影レンズ7の方向に投影ヘッドライト1の光放射方向Lへと反射される。平坦な遮光板8および9を備えたシェード装置は、投影レンズ7の焦点に、および、反射器6の2つの焦点の近くに配置されている。平坦な遮光板8および9の垂線は、光放射方向Lに対して実質的に平行に配向されている。光源3と反射器6とレンズ7と遮光板8、9は、ガラスパネル5によって閉鎖されているケーシング4の中に配置されている。投影型ヘッドライト1の包括的配光パターンの明暗境界の形状は、前記遮光板8および9を垂直方向および/または水平方向に移動させることによって変化させることができる。
【0093】
どのようにして遮光板8および9の移動によって種々異なる包括的配光パターンを形成することができるかは、例えば刊行物DE102007045150A1に記載されており、これに関する前記刊行物の内容は引用によって本願に取り込まれる。
【0094】
以下、図2に関連して、右側および左側にそれぞれ1つの図1に図示したようなヘッドライト1,2を含むヘッドライト装置の実施例を説明する。
【0095】
ヘッドライト装置の右ヘッドライト1は制御器13と接続されており、左ヘッドライト2は制御器14と接続されている。制御器13および14によってヘッドライト1および2の部分的配光パターンが制御され、部分的配光パターンは重畳されて包括的配光パターンを形成する。
【0096】
制御器13および14はヘッドライト1および2用のライトレンジ調整器を制御する。ライトレンジ調整器においてヘッドライト1および2は、アクチュエータ19ないし22を用いて水平軸37を中心にして旋回することができる。ヘッドライトの光放射方向Lはこのようにして矢印A(図1)の方向に旋回させることができる。さらには制御器13および14はアクチュエータ20ないし23を制御し、これらのアクチュエータを用いてヘッドライト1および2は垂直軸38を中心にして旋回することができる。アクチュエータ20および23を用いてヘッドライト1ないしヘッドライト2の光放射方向Lを矢印Bの方向に旋回させることができる。アクチュエータ20および23は例えば既存のコーナリングランプの一部である。最後に制御器13および14は、右ヘッドライト1および左ヘッドライト2用の、シェード装置の遮光板8および9の垂直位置および/または水平位置を、アクチュエータ21および24を用いて制御する。
【0097】
以下、図3から7に関連して、種々異なる包括的配光パターンについて説明する。包括的配光パターンは、本発明のヘッドライト装置のヘッドライト1および2によって形成することができる。
【0098】
ヘッドライト装置によって形成される第1の包括的配光パターン39は、図3では、測定スクリーン上における等照度曲線として示されており、図4では道路上の明暗境界に基づいて示されている。包括的配光パターン39は中心軸36に対して非対称である。ここでの中心軸36とは、直線状の走行車線の場合にヘッドライト装置を含む自車両10の走行車線26と対向車線27とを画するセンターラインでもある。対向車線27の領域におけるライトレンジは、走行車線26の領域におけるライトレンジよりも非常に狭く、右側通行の場合には走行車線26の右側におけるライトレンジよりも短い。この非対称性は、図3に図示された測定スクリーン上の配光パターンにおいても見て取れる。第1の包括的配光パターン39の右側には、水平線35との間に15°の角度をなす拡張部42が生じる。明暗境界ないし測定スクリーン上の配光パターンの経過は、本実施例の場合、ヘッドライトのロービームのための現在の欧州規格ECE−R112の基準値に相当する。
【0099】
本発明のヘッドライト装置ないし本発明の方法によって形成された第2の包括的配光パターン40が、図5では、測定スクリーン上における等照度曲線として示されており、図6では、道路上の明暗境界として示されている。第2の包括的配光パターン40は、マスキングされたハイビームである。包括的配光パターン40の特徴は、この包括的配光パターン40が、検出された道路使用者12の方向に、つまり包括的配光パターン40の領域Mにおいて、少なくとも検出された道路使用者12、とりわけ他の道路使用者12との間隔よりも短くなるように調整されるライトレンジを有することである。他の道路使用者12が先行車である場合には、ライトレンジは包括的配光パターン40の領域Mにおいて先行車12のリアバンパーまで達することができる。
【0100】
検出された道路使用者12の方向で中央領域Mの横にある少なくとも1つの側には側方領域Sが形成されており、この側方領域Sではライトレンジが第2の包括的配光パターン40の領域Mにおけるライトレンジよりも大きい。したがって車両10の運転者に車両10の前方の交通領域をより良く照明して提供するために、道路使用者12の横が照明される。側方領域Sにおけるライトレンジは、たとえば従来のハイビーム機能のライトレンジに相当する。好ましくは第2の包括的配光パターン40での別の側にも側方領域Sが形成され、この側方領域Sも中央領域Mにおけるライトレンジよりも大きな照明幅を有する。側方領域Sのライトレンジも、従来のハイビーム機能の照明幅に対応することができる。これにより第2の包括的配光パターン40は、道路使用者12が検出された場合に、配光パターン内で走行方向で道路使用者12の前方で領域が切り抜かれた従来のハイビームに対応することができる。このようにして車両10の運転者には、他の道路使用者12を眩惑することなく交通関与空間の最適な照明が提供される。ヘッドライト装置の照明領域にさらに別の道路使用者、たとえば対向車両11が検出されると、さらにライトレンジがこの道路使用者11の方向でも当該ライトレンジがこの道路使用者11にだけ達するように制御される。
【0101】
図6に示した場合では、第2の包括的配光パターン40の側方領域Sにおけるライトレンジが、対向車両11と自車10との間隔に連続的に適合される。さらに別の構成によれば、中央領域Mの幅が、検出されたすべての道路使用者が側方領域SとSの間のいわゆる回廊状領域内に存在するように選択される。すなわちたとえば図6では図示の車両11と12が回廊状領域内に存在するように選択される。しかしこの場合も、第2の側方領域Sに対するライトレンジは、とりわけ対向車両11の位置に依存して制御される。これについては以下でさらに説明を補足する。
【0102】
以下でも詳細に記載するように、中央領域Mおよび場合により側方領域SとSにおけるライトレンジを制御するために、車両10の前方走行方向にある他の道路使用者についてのデータが画像処理装置15から制御機器16に連続的に伝送される。検出された他の道路使用者12または11の位置に依存して、制御機器16はヘッドライト1と2用の制御器13及び14に制御信号を伝送する。これらの信号に基づき制御器13及び14は、右ヘッドライト1用アクチュエータ19〜21と左ヘッドライト2用アクチュエータ22〜24とを、所望の第2の総合的配光パターン40が形成されるように制御する。このとき垂直方向の明暗境界が、一方では垂直軸38を中心にするヘッドライト1と2の旋回によって、他方ではアクチュエータ21と24による遮光板8と9の操作によって形成される。これに対して中央領域Mにおける水平方向の明暗境界、すなわち中央領域Mのライトレンジは、遮光板8と9の移動によって形成されるのではなく、好ましくはもっぱらライトレンジ制御によって、すなわち水平軸37を中心にするアクチュエータ19と22によるヘッドライト1と2の旋回によって形成される。
【0103】
明暗境界に関連して使用される水平と垂直の概念は、光照射方向Lに対して垂直に配置された測定スクリーン上の配光パターンを基準にする。この場合、水平の明暗境界は、スクリーンが10m離れたときにヘッドライト1と2の取付け高さの下方10cmに配置された水平軸35に対して水平である。垂直の明暗境界はこの水平軸35に対して垂直に延在する。
【0104】
図7には、本発明のヘッドライト装置と本発明の方法により形成された第3の包括的配光パターン41が道路上の明暗境界として図示されている。この第3の包括的配光パターン41は平滑化されたライトレンジとも称される。第3の包括的配光パターンは、配光パターン41の最大ライトレンジが車両10の前方の走行方向で検出された道路使用者12に達するように制御されることを特徴とする。したがってこの第3の包括的配光パターン41では、検出された別の道路使用者12までの最適照明が、この道路使用者12を眩惑することなく保証される。しかしマスキングされた持続ハイビームの側方領域SとSは提供されない。第3の包括的配光パターン41は、ヘッドライト1と2の間に延在する垂直面に対し光放射方向Lの方向で実質的に対称である。第3の包括的配光パターン41では最大ライトレンジが、図7に示すように実質的に開口角全体にわたって形成される。しかし開口角は、対向車両11が第3の包括的配光パターン41を有する車両10とすれ違うときに、反対車線上のこの対向車両11が眩惑されないように選択される。第3の包括的配光パターン41の最大ライトレンジの制御は、遮光板8と9によって行われる。すなわち第2の包括的配光パターン40の中央領域Mにおけるライトレンジの制御とは異なる。
【0105】
さらに車両の走行方向、すなわち通常はヘッドライト1、2の光放射方向で道路使用者を検出するための装置が設けられている。この検出装置は、図2に示すように画像処理装置15が接続されたカメラ18とすることができ、カメラは先行車両12および対向車両11の光を検出する。画像処理装置15により、この光の方向を水平方向にも垂直方向にも検出することができる。画像処理装置15は、前方を指向するカメラにより記録されたシーンを分析する。このシーン中では先行車両12と対向車両11の光の位置が検知される。他車11、12の2つのヘッドライトまたは尾灯の水平方向の間隔に基づいて、画像処理部は付加的に車両の幅を推定することができる。さらに他の道路使用者の光源を検出することができる。最後に、道路照明または集落を推定させる光源を識別することができる。道路照明は通例、カメラ画像における位置、または電源による周波数変調された強度により車両灯から区別することができる。カメラの開口角は、好ましくはヘッドライト装置の開口角に対応する。
【0106】
システムの別の構成によれば、検出装置15はレーザセンサまたはレーダセンサとして構成されており、これにより光放射方向Lの方向で対象物の距離を測定することができる。ここではとりわけ照明されない道路使用者または十分に照明されない道路使用者、たとえば歩行者および場合により自転車を検出することができる。さらに距離測定を介して、配光パターンの眩惑限界内にある目的の道路使用者を検出することができる。最後に、道路使用者の距離、速度および運動方向の測定を介して、車両または道路使用者を良好に分類することができ、これによりヘッドライト装置の誤制御が回避される。対象物の間隔から、垂直角度、すなわち自車からの間隔が計算され、この間隔はヘッドライト装置のための制御量として使用することができる。
【0107】
さらにレーザセンサまたはレーダセンサによる距離測定によって、速度検出を用いて走行車両を静止対象物から区別することができる。さらに走査式レーザ距離測定により、検出された対象物の幅を測定することができ、これにより高い確率で対象物の形式、すなわち道路使用者、自動車または自転車であるか、またはガイドポストであるかを推定することができる。
【0108】
レーザセンサまたはレーダセンサは、とりわけ道路使用者の垂直位置の検出に関する識別確率を高めるためにカメラと組み合わせることもできる。カメラ、レーザセンサまたはレーダセンサは車両の走行支援システムとともにますます使用されているから、このセンサ系をヘッドライト装置の制御にも付加的なコストを発生せずに使用することができる。
【0109】
以下、図8から11に関連して、本発明の実施例による道路使用者を検出するための装置の別の可能な構成について詳細に説明する。
【0110】
この場合、検出装置は、交通領域の画像を可視スペクトルで記録するセンサを有する。このセンサはたとえばフロントウィンドウの後方で走行方向で車両前方の道路を指向することができる。センサはモノクロ画像記録システムであり、これにより自車の前方に600m以上離れて存在する光源をリアルタイムで検出することができる。とりわけ他車の600m以上離れたヘッドライトと、他車の400m以上離れた尾灯を検出することができる。
【0111】
センサはカメラ18に組み込むことができる。カメラは、画像処理にしたがい車両のヘッドライト1、2の制御のために使用される画像記録以外にも使用することができる。センサの画像記録は、車線支援システムのような別の運転者支援システムおよび交通標識識別のためにも使用することができる。センサの多重使用は車両の製造コストを低減する。
【0112】
車両は夜間では通例、車両ヘッドライトの光放射または車両尾灯の光放射に基づいて検出される。ここで、記録された画像中に発生する光強度に関しての単純な閾値形成では確実な車両検出ができないことが判明した。車両自体から放射された光は、車両前方の交通領域に存在する種々の対象物で反射されてこの車両に戻るため、距離が中程度または大きいと、そのような固有反射と別の車両とを区別するのが困難である。この理由から、センサおよびセンサにより記録された画像の後での画像処理をこの問題に適合させることが必要である。
【0113】
まずヘッドライトと尾灯とを効率的に区別できるようにするため、センサは、車両の尾灯色に対応する波長領域にだけ感度のある領域を有する。すなわちこのセンサ領域は、赤色光にだけ感度がある。しかしカラーセンサはモノクロセンサ、すなわち明度またはグレー値を測定するセンサと同等であるから、このセンサは、可視スペクトルの明度を検知する領域をさらに有する。このセンサでは明度に対するセンサ領域が画素の75%であり、赤色光に対する領域が画素の25%である。このようなセンサにより、他の適用も使用することができる画像が記録される。
【0114】
センサの水平開口角はたとえば40゜より大きい。このような開口角では、遠く離れた尾灯を検知するのが困難である。たとえば10cm×10cmの大きさの尾灯は、100m以上の間隔ではセンサの1つの画素以下に結像される。とりわけ尾灯から放射される光は大きな円錐形を形成し、そのため尾灯は約400m離れると約4から10の画素の領域にしか到達しない。しかし色情報をセンサにより記録された画像から得るために、赤色フィルタとカラーフィルタのない3つのピクセルを備えるフィルタ装置が前置で使用されるか、またはいわゆるバイヤーマトリクスが使用される。センサは2×2のブロックを含んでおり、1つは赤色スペクトル領域に感度のあるセクタであり、3つは従来のモノクロ検知器である。モノクロ検知器は色感度のある検知器よりも高い感度を有するが、赤色スペクトル領域の光も検出する。このようなセンサにより、赤色光源を白色光源から区別し、しかし同時にカラーフィルタなしで画素に対して高い感度を提供することができる。センサは近赤外線領域では不感であり、1画素当たり10ビットで対数曲線を使用して動作し、この対数曲線は、情報が失われてしまうような完全飽和に光点が達するのを阻止することに注意すべきである。
【0115】
センサは画像処理装置15と接続されている。画像処理装置15は、センサにより記録された画像を分析し、記録された画像の明るい画像領域を自車の交通領域にある車両に割り当てることができる。画像処理の際には、自車付近にある車両に対する領域であって、センサにより記録された明るい領域は、遠く離れた車両に対する領域から基本的に区別されることが考慮される。さらに対応する相違が、ヘッドライトから由来する明るい領域と、尾灯から由来する領域と生じる。ヘッドライトから由来する明るい領域の強度はより大きく、白であり、これに対して尾灯から由来する明るい領域の強度はより小さく、赤である。さらに画像処理の際には、自車に近い車両に対する装置は、自車から遠く離れた車両に対する装置よりも高速に応答しなければならないことが考慮される。
【0116】
以下では、画像処理装置15の詳細と、本方法の第1の構成で実施される他の道路使用者を検出するためのステップを、図8から10に基づいて説明する。
【0117】
まずステップ100で上に説明したようにセンサによって、自車10の前方の交通領域の画像が可視スペクトルで記録される。
【0118】
ステップ110で抽出ユニット31によって、画像のどの関連領域が所定の閾値を上回る明度を有するかが求められる。この画像領域が抽出される。続いてこの画像領域に対して、これが他車に割り当てられるか、または車両ではない別の対象物に割り当てられるかを決定しなければならない。抽出は単純な閾値形成に基づくから、これは画像処理装置15により非常に高速に、すなわち好ましくはリアルタイムで実行することができる。
【0119】
明度に関して閾値を上回る画像の関連領域は、ブロブとも称される。
【0120】
次に各領域について以下のステップ120から140が実行される。
【0121】
ステップ120では領域が分類ユニット32により分類される。さらに領域に分類値が割り当てられる。そのためにまず、領域の種々の特性が決定される。これらの特性のうち、領域の最大グレー値と領域の赤成分がとくに重要である。さらにこの方法では、潜在的に有益な領域の以下の特性が決定され、分類の際に使用される。(1)領域の2進値、とりわけ面積、中心、広がり、外縁および/または主軸;(2)モノクロ画素からのみ由来する強度またはグレー値、とりわけこの領域内の最大値、平均値、標準偏差、最大値の位置、ヒストグラムの分布および/または平均勾配の大きさ;(3)赤色画素についてのみの上記同じ特性、(4)モノクロ画素と赤色画素との種々の比較により色情報を得ることのできる特性、たとえばモノクロレベルの平均値と赤色レベルの平均値との比。
【0122】
通例、個々の特性または前記の特性に基づいて、光源としての車両を確実に推定することができないから、これら領域の特性に学習アルゴリズムが施される。最後に学習アルゴリズムにより、この領域に対する分類値、すなわち最終的にはこの領域に対して離散的に重み付けされた分類値による分類が行われる。学習アルゴリズムとして、リアルAdaBoostアルゴリズムが使用される。これはR.ScapireとY.Singer著「Improved boosting using confidence−rated predictions」、Machine Learning、Bd.37、Nr.3、297〜336pp.1999に記載されている。この学習アルゴリズムにより、種々の領域を互いに区分するために、車両光の特性における明白な相違が考慮される。小さい領域と小さくない領域とは異なって見え、さらにヘッドライトから由来する領域と尾灯から由来する領域とが区別される。このアプローチに対応して領域が以下の4つの基本クラス、
・Ch,s:自車との距離が中程度〜遠い対向車11を検出するケース
・Cn,ns:自車との距離が近い〜中程度である対向車11を検出するケース
・Ct,s:中程度〜遠い間隔をおいて離れている先行車12を検出するケース
・Ct,ns:自車との距離が近い〜中程度である先行車12を検出するケース
に分けられる。
【0123】
車両に対する誤った対応付けを生成する方が正しい対応付けを見過ごすよりかはましである(その識別自体が間違っていたとしても、検出をし損なうよりはましである)という原則にしたがい、領域を上記クラスに分類した後に、学習アルゴリズムの4つの出力信号の最大値がとられる。
【0124】
ステップ130において既に、上述の基本分類に基づき、領域を車両に対応付けるべきか否かを決定する第1の決定を下すことができる。このような大まかな対応付けが可能である場合には、本方法はステップ140に進む。上述のような大まかな対応付けが可能でない場合には、本方法はステップ150に進む。このステップ150については、後で説明する。
【0125】
車両への上述の大まかな対応付けがステップ130において可能である場合でも、この大まかな対応付けによって車両を100%識別することはできないことが明らかになっている。さらに、自身の反射光や他のオブジェクトの光放出も車両ライトと見なされ得ることを排除することもできない。
【0126】
それゆえ本発明の方法では、ステップ140において信頼度確定ユニット33により、画像の領域が車両ライトに類似する程度を表す信頼値を領域毎に求める。この信頼値は、各領域のすでに求められた分類値と、該領域に対応する物理パラメータとから計算することができる。しかし有利には、学習アルゴリズムを用いて前記分類値から、前記領域の重み付けされた離散的な分離値が求められる。
【0127】
前記分類値は、車両光源から得られた領域の例と、相応の反例とを用いて、上述のリアルアダブーストアルゴリズム(Real-AdaBoost-Algorithmus)から得られる。分類値cが得られ、肯定的な分類値は、領域が車両ライトに類似することを表し、否定的な分類値はその逆を表す。次に前記分類値cを、重み付けされた相応の分類値に離散化する。この重みは、以下のように対応付けられる:
c≧t+が成り立つ場合、 ω=ω+
0≦c<t+が成り立つ場合、 ω=ω0
-≦c<t0が成り立つ場合、 ω=ω-
c<t-が成り立つ場合、 ω=0
上述のt+,t0およびt-は、各クラス毎に設定される閾値であり、ω+,ω0およびω-は、各クラス毎に定義される相応の重み付けである。t+を上回ると、領域を車両に対応付けてもよいとの確信が得られ、t-を下回ると、領域を車両に対応付けてはならないとの確信が得られる。t-〜t+の領域は、分類の出力が確かでないとの評価がなされ、t-〜t0では、他車によって生じた光源に領域が類似すると仮定され、t0〜t-の領域では、領域が車両ライトにより類似すると仮定される。
【0128】
以下の表に、使用される閾値の例を示す:
【表1】

【0129】
したがって、上述の数式でこのような閾値を適用すると、誤って分類される領域がなくなる。さらに、小さくない領域が正しく分類されるのが90%を上回るようになる。
【0130】
このようにして重み付けされた分類値から、各領域毎に信頼値vを計算する。gが、1領域の最大可能濃淡値で正規化された、所与の一領域の最大濃淡値であるとすると、前記信頼値は以下のように定義される:
v=ω×g
上記式中、ωは、各領域に対応する重み付けされた分類値である。したがって信頼値は、分類の確実度と、ここでは各領域の最大濃淡値である物理的パラメータの確実度とを掛け合わせたものから求められる。前記物理的パラメータはとりわけ、所与の領域の最大濃淡値を最大可能な濃淡値で正規化したものである。したがって最大濃淡値は、重み付けされた分類値と物理的パラメータとの双方に影響を与える。しかし、重み付けされた分類値を得る際には、濃淡値の複数の異なる特性を用いて、アルゴリズムによって学習された閾値が使用されるのに対し、該濃淡値は物理的パラメータの計算に直接使用される。
【0131】
信頼値の上述の計算を行う際には、センサによって撮像された画像中において、自車から遠い車両によって生成される領域よりも、自車に近い車両によって生成される領域の方が明るいことが考慮される。したがって、車両に属すると分類される領域、しかも、自車の近傍に位置する車両に属すると分類される領域の信頼値はより高くなる。車両が遠い場合には、この遠い車両に対応する、センサ画像の領域の信頼値は高いが、より近傍の車両に対応する領域の信頼値より低い。反射によって生じる明るい領域が正しく分類された場合、この明るい領域の信頼値はそれほど高くなく、遠くのオブジェクトによって生じる反射によって得られる領域の信頼値はさらに低くなる。
【0132】
ステップ130において、基本分類において車両への分類が生成されないことが判明した場合、ステップ150において、この分類のためにさらなる情報を追加して使用する。その際にはとりわけ、領域の周辺を検査することができる。この検査では、領域の近傍に別の領域が存在するか否かを決定することができ、この決定により、これら2つの領域を他車の2つのヘッドライトまたは尾灯に対応付けることができる。たとえば、ステップ120における基本分類においてt-≦c≦t+であることが判明した領域に対し、とりわけ上述のような周辺検査を行うことができる。周辺検査においてライト対であることが判明した場合、このことは、車両の左右のヘッドライトないしは左右の尾灯によって生じた双子領域であることを示唆する。もちろん、2つのヘッドライトないしは2つの尾灯を有する車両の場合にのみ、前記検査の結果は肯定的になり、オートバイ等の場合には前記検査の結果は肯定的にならない。
【0133】
この周辺の検査時には、各領域毎に、該領域の左側および右側に、該領域の境界に比例するパラメータの窓が配置される。左側および右側の各窓内において、両窓のうち1つの窓内に重心を有する別の領域を探索する。双子領域である可能性のあるこのような領域が見つかった場合、上述の特性のうち幾つかの特性を相互に比較する。各比較には、両領域の比の計算が含まれる。この比は、たとえば両領域の最大濃淡値の比である。上述の複数の比が特性セットを形成し、該特性セットは、たとえば複数の重心の距離、最大濃淡値の絶対値等である別の特性と結合することができる。これらの値が特性セットを形成し、該特性セットは、上記分類を行うための上述のリアルアダブーストアルゴリズムに使用される。上述の分類中に得られた、重み付けされた分類値ωを修正するために、学習アルゴリズムの新たな分類結果が使用される。その際には、以下の規則が用いられる:対形成分類によって負の値が得られた場合(双子領域が存在しない場合)、重み付けされた分類値ωは修正されず、そうでない場合には、この重み付けされた分類値は上昇される。すなわち、ω-はω0となり、ω0はω+となる。その後、このような重み付けされた分類値は、後続の方法ステップを実施する際の基礎とされる。
【0134】
ステップ140において領域の信頼値が求められた後、ステップ160において、複数の前記信頼値の時間的なコヒーレンスが求められる。この時間的なコヒーレンスを求めるためには、時間的なコヒーレンス解析が行われる。次の時間的コヒーレンス解析のための信頼値は、上述の信頼値とは異なる手法で求めることができることに留意されたい。また、上述のように重み付けされた信頼値が求められた場合には、時間的コヒーレンス解析を省略することもできる。
【0135】
コヒーレンス解析を行う手法はターゲット追跡をベースとする。すなわち、センサによって撮像された画像内の領域の時間的変化を追跡する。このようなターゲット追跡は、本発明の方法の第2の実施例においてオプションとして実施される。しかし、このターゲット追跡を実施するのは困難であり、誤差が生じないわけではない。それゆえ第1の実施例では、ターゲット追跡を必要としないコヒーレンス解析を実施する。
【0136】
この実施形態の時間的コヒーレンス解析では累積空間Aを形成し、これを用いて、対応する複数の信頼値が時間的にコヒーレントであるか否かを求める。累積空間Aは、元の画像の次元と同じ次元を有する。累積空間の更新を行う際には、以下のステップを実施する:
1.累積空間Aの値は、A=0から開始して、0から所与の値Mにまで及ぶ。
2.新たな画像kが得られた場合:
(a)Aを縮小させるステップ。そこでは計算ステップA=max(0,A−d)による累積の減少が実施される。ここでdは、減少の割合を決定する固定値である。MAで開始する場合、0を得るためにはMA/d個のステップが必要になる。その際には、累積空間Aとヒステリシス法とにより、異なるセルにおいてdがとり得る値は異なり、この値には2つの選択肢がある。
(b)Aを拡張させるステップ。ここでは各セルの値はターゲットの予測される動きに応じて拡張され、それにより、各画像間で同一のターゲットによって得られた複数の信頼値を組み合わせる。
(c)Aを上昇させるステップ。ここでは、Ai(k)が、現在の画像kにおいて検出された領域iを構成する座標集合であり、かつ、vi(k)がこれに対応する信頼値であると仮定すると、以下の更新式が使用される:
Ai(k)=min(A(k-1)Ai+vi(k),MA
上記式においてAAiは、座標がAiに相当するAのセルを表す。
【0137】
前記拡張ステップでは一種の膨張が行われる。これは、濃淡値の数学的なモルフォロジーに似ているが、構造を決定するその要素は、累積セルが異なると異なってくる。この相違は、画像空間内の異なるターゲットについて予測される動きに基づく:画像が変わっても、水平線の近傍にあるターゲットは比較的静止状態に留まるのに対し、より近くのターゲットの位置はより大きく変化する。さらに、画像の下方縁部の方向に向かう対向車はより高速に動くのに対し、先行車はこのような振舞いを示さない。それゆえ、前記累積空間Aはとりわけ、尾灯によって得られる領域との類似度よりもヘッドライトによって得られる領域との類似度の方が高い領域に使用され、他の領域には別のフィールドが使用される。基本分類中の分類の出力が比較的高い場合、前記別のフィールドはこの分類に応じて選択される。
【0138】
最後に画像kの領域は、累積空間内の相応の位置に関するヒステリシス基準にしたがい、車両ライトとして分類されるか、または車両ライトでないと分類される。このことは、各累積空間に対し、同一の次元の状態フィールドSが対応付けられることを意味する。このヒステリシスは、図10に示されているように、以下のように実施される:
・セルAi,jが0である場合、状態フィールドSi,jの対応する値は偽の値にセットされる。Ai,jの次の減少の割合はd=dtとなる。ただし、dtは固定値である。
・Ai,j≧MA/2である場合、Si,jは真の値にセットされ、d=dtとなる。ここで、dは固定値である。
・0<Ai,j<MA/2である場合、Si,jを変化させず、また、Ai,jの相応の縮小も生じない。
【0139】
したがって、画像kにおいてAi(k)を有する所与の領域iには、最終的に該領域が車両に対応するかまたは対応しないかを決定するために、SAi(k)にOR論理演算が適用される。
【0140】
時間的コヒーレンス解析中に、ヒステリシス基準の最大値はM=2にセットされ、これにより、図10に示されているように、累積空間の1セルに対応付けられるヒステリシスは、MA/2=1を上回る真の状態をとり、再び0値に達する前にヒステリシスが偽の状態に達することはない。減少の制御には、以下の値が選択される:(dt,df)=(45,15)画像。このことは、車両が消えた場合にも、システムが未だ約2秒間にわたって新たな自由な領域を照明していることを意味する。ヘッドライトに類似する領域の累積空間と、尾灯に類似する領域とにも、上述の同じ値を選択する。
【0141】
したがって上述のように、時間的コヒーレンスを求めるために、画像の複数の画素の信頼値が累積された累積空間が形成される。1画像から後続の画像に移行する際には、画素の信頼値を固定値だけ縮小させ、後続の画像中の対応する画素の信頼値だけ増大させる。その際には、1画像から後続の画像へ移行するときに、領域に対応するオブジェクトの予測される動きに依存して該領域を拡張させる。領域が車両ライトに対応付けられるか否かの最終的な判断は、累積空間の時間的な展開に基づいて下される。その際には、累積空間の信頼値に時間的ヒステリシスを適用する。この最終的な対応付けは、ステップ170において対応付けユニット34によって決定される。
【0142】
以下、図11を参照して、他の交通を検出するための方法の第2の実施形態の各ステップを説明する。
【0143】
第1の実施形態と同様に、交通領域の画像を可視スペクトルで撮像するためのセンサと、画像処理装置15とが用いられる。たとえば車両等である道路使用者の検出は、車両ライトに基づいて行われる。すなわち、対向車11の場合には前部のヘッドライトの光放出に基づいて道路使用者の検出が行われ、先行車12の場合には尾灯の光放出に基づいて道路使用者の検出が行われる。
【0144】
ステップ180において、第1の実施形態のステップ100と同様に、自車10より前方の交通領域の画像を撮像する。ステップ190において、第1の実施形態の方法のステップ110と同様に、閾値を超える明るさを有する複数の連続する領域を抽出する。このようにして、センサによって生成された画像内において、所定の強度を超え場合によってはさらに別の所定値を超える複数の連続する明るい画素を探索する。このような画像領域は、他車の光源に属する可能性もあるが、別の光源に属したり、自車から放出された光の反射に属する可能性もある。ステップ190の結果として、明るい画素を有する複数の連続した領域が境界により定められた2値画像が得られる。さらに第1の実施形態と同様に、上記領域について、たとえばとりわけ大きさ、明るさ、色等である特性が求められる。個々の画像の解析により、各領域を車両ライトに対応付けることができる可能性が高いとの結果が得られた場合、この後すぐに、このような領域についてステップ250を実施する。さらに、ステップ240において前記領域の特性に基づき、該領域を分類することができる。最後に、前記領域についてさらに別の情報を得ることができる。以下、この別の情報について説明する。
【0145】
ステップ200において、各領域毎に該領域の周辺解析を実施する。この周辺解析はたとえば、第1の実施形態において説明した、双子領域に基づく対形成を含むことができ、この対形成において、2つの明るい領域が1車両のヘッドライト対または尾灯対に対応付けられる。ステップ240において、ステップ200の周辺解析の結果がさらに処理される。
【0146】
オプションとしてのさらなる処理ステップは、画像列における1つまたは複数の領域の追跡と、1つまたは複数の前記領域の動きの決定とに関する。この処理ステップでは、画像列内において領域を再び見つけるのを容易にするため、ステップ230においてグローバル動き推定を実施する。その際には、車両10自体の動きが計算され、領域の追跡時に相応に考慮される。ステップ230において、画像中の複数のオブジェクトの動きの相関を求めることにより、グローバル動きを求める。車両に設置された走行距離計によって求められる値、または、車両に設置された例えば加速度センサ等である他のセンサによって求められる値を用いて、前記グローバル動きを求めることもできる。また、両アプローチを組み合わせることもできる。こうするためには、たとえば制御装置16を介して画像処理装置15と車両バス17とを接続することができる。ステップ220において、ステップ230において求められた車両のグローバル動きを考慮して、画像列内の複数の個々の画像の動きを求める。
【0147】
前記領域を画像処理装置15によって複数の画像にわたって追跡すれば、さらにステップ210において、画像ごとに幾らか変動しうる前記領域の内部特性を複数の画像にわたって安定化させることも可能である。そのために、ステップ210において、前記領域の特性が複数の画像にわたって時間平均される。この方法ステップはとりわけ非常に小さな領域の色を求めるのに有利である。小さな画像領域の場合、センサの非常に少数のピクセルにしか光が当たらない。カラー画像センサの場合には、個々のピクセルは1つの色のみ、通常は赤、緑または青のみを感受する。色の決定は、前記領域がすべての色成分の十分な数のピクセルを捉えてはじめて可能となる。前記領域の大きさがそのために十分でなければ、ステップ210において、連続する複数の画像で求めた前記領域のピクセルを考慮してよい。
【0148】
ステップ190、200、210および/または220において得られたデータは、ステップ240においてさらに処理される。第1の実施形態で説明したように、前記領域はその大きさと先行ステップで得られた特性とに依存して分類され、前記領域に対して前述のように信頼値、特に重み付けされた信頼値が求められる。信頼値が高ければ高いほど、前記領域を車両照明に、すなわち、対向車11のヘッドライトまたは先行車12の尾灯に割り当てることのできる確率が高くなる。
【0149】
1つの画像の1つの領域の観察だけでは、一意的な分類を行うのに不十分な場合には、ステップ260において、各領域ごとに複数の画像にわたって信頼値が累算される。その際、ステップ220で求めた各領域の動きが考慮される。1つの領域を複数の画像にわたって追跡できる場合には、その領域の信頼値を連続する複数の画像にわたって累積または減分することにより新しい信頼値が求められる。
【0150】
それと並行して、またはその代わりに、各ピクセルごとに信頼値を累積または減分してもよい。そのためには前記領域の追跡は不要である。ステップ250では、先行するステップで求められた画像領域に、すなわち所定の領域の境界内のピクセルに、この領域の信頼値が付される。後続の画像では、第1の実施形態で説明したように、領域のこの信頼値から所定の値が自動的に引かれるので、後続する複数の画像において明るい領域が存在しないような領域の信頼値は、時間とともに零へと低下していく。同時に、後続の各画像において、1つの領域の信頼値にその領域よりも下にある領域の累積された信頼値が加算される。このことから、その領域の現時点の信頼性のみでなく、2次元的な累算を介してこの画像領域内の直前の領域の信頼値も含む、新しい信頼値が得られる。さらに、ステップ250において、1つの領域のこの2次元信頼性マップを、画像から画像へと移行するにしたがって拡大してもよい。この信頼性マップの拡大の方向は物体の予想される動きまたは自車10の予想される動きに合わせることができる。そうすることで、領域の動きにかかわらず、領域は尚も、先行する画像において同じ領域から得られた信頼値にとどまることが保証される。
【0151】
最後に、ステップ240で得られた分類において、領域を車両照明に割り当てることができるか否かに関して、一意的な決定を可能にする信頼値が得られた場合、ステップ240の結果を直接処理してもよい。このようにしてステップ240、250または260で求めた信頼値がステップ270においてまとめられ、領域が該当物体なのか否か、すなわち、この領域における明るさが他の車両の光源に由来するものなのか否かに関して、最終的な決定が下される。
【0152】
ステップ280では、最終的に、他車11、12に割り当てることのできる領域が自車10に対する相応の座標とともに出力される。これらの座標から特に、検出された先行車または対向車11、12の自車10に対する角度位置が得られる。
【0153】
なお、ステップ200、210および220はステップ190の結果に依存してすべて省略してもよいし、これらステップのうちの1つだけまたは幾つかだけを実行してもよい。さらに、ステップ250および260は並列してまたは択一的に実行してもよい。最後に、これらのステップはステップ240の結果に依存して完全に省略してもよい。
【0154】
最後に、第1の実施形態に関連して説明したヒステリシスを使用してもよい。信頼値を上回った場合、領域は該当物体として分類される。比較的低い値を下回った場合には、領域はもはや該当物体として分類されない。処理ステップ250または260における信頼値の累算、または処理ステップ210における累算は、設定された最大値でカットされる。したがって、十分な時間が経つと再びヒステリシス下方閾値を下回ることが保証される。
【0155】
それゆえ、既に説明したセンサを含むカメラ18と画像処理装置15を用いて、自車10の走行方向前方に他の特に照明された道路使用者がいるか否かが把握される。さらに、このような道路使用者の自車に対する位置が求められる。把握された他の道路使用者に関するデータは画像処理装置15から制御機器16へと伝送される。
【0156】
制御機器16はさらに車両バス17に接続されており、車両バス17を介して、車両内で測定されたデータを制御機器16に伝送することができる。例えば、車両バス17を介して、地理データをナビゲーションシステム28から制御機器16へ伝送することができる。ナビゲーションシステム28は受信センサを用いて車両10の現在位置を求めることができる。なお、受信センサは例えばGPS(全地球測位システム)受信器29として形成されていてよい。
【0157】
ヘッドライト装置はさらに車両10の走行特性を把握するための装置25を含んでいてよい。装置25は例えば車両バス17を介して内部クロックおよび車両速度計と接続されていてよく、伝送された速度に基づいて、内部クロックの時間信号を用いて車両10の加速度を求める。装置25は、加速度の値または加速度の絶対値の時間経過から走行動特性を求め、走行特性の特定のクラスに割り当てることができる。さらに、装置25は例えば運転者の入力信号を伝送することもでき、この入力信号を通して走行特性が設定される。最後に、装置25は走行特性を車種に依存して求めることもできる。そのために、装置25は車両バス17を介して運転者の人物を特定するための装置と接続されていてよい。装置25にはこの運転者に関する履歴データを記憶することができるので、装置25は現在の運転者に走行特性を決定する特定の車種を割り当てることができる。装置25によって求められた走行特性はタイマー27に伝送される。タイマー27は、求められた走行特性に依存して、ある1つの包括的配光パターンから別の包括的配光パターンへの移行の時間間隔ΔTを求める。求められた時間間隔ΔTはタイマー27から制御機器16へ伝送され、制御機器16がこれをさらに処理する。
【0158】
制御機器16はさらに遅延ユニット26とも接続されている。遅延ユニット26は、ライトレンジに関して2つの包括的配光パターンの間の切り換えまたは2つの照明状態の間の切り換えを遅延するための遅延時間を求める。遅延ユニット26による遅延時間の算出については、後で詳しく説明する。
【0159】
以下では、本発明の方法の1つの実施例において上記ヘッドライト装置がどのように制御または調整されるかを説明する。
【0160】
図12および13を参照して、どのように第1の包括的配光パターン39から第2の包括的配光パターン40に切り替わるかを説明する。車両10は例えば一車線の車道26を走行している。車両10のヘッドライト装置は第1の包括的配光パターン39を形成している。カメラ18と画像処理装置15とによって他の道路使用者11および12が検出されると、第1の包括的配光パターン39から第2の包括的配光パターン40のマスキングされた継続ハイビームに切り換えるべきとの制御信号が制御機器16へ伝送される。
【0161】
第1の包括的配光パターン39から第2の包括的配光パターン40に移行する際、第2のヘッドライト2の光放射方向Lを第1のヘッドライト1の光放射方向Lから外側に向かって水平に対向車線の方向へと変えるように、左ヘッドライト2の制御器14によってアクチュエータ23が駆動される。第1の包括的配光パターン39の場合、包括的配光パターン39の右側領域における比較的大きなライトレンジはとりわけ第2の左ヘッドライト2の光放射によっても形成されるので、左ヘッドライト2を垂直軸38を軸として旋回させると、他の道路使用者11および12が眩しがらせてしまうという問題が生じる。この状況は図12に概略的に示されている。
【0162】
第1の包括的配光パターン39から第2の包括的配光パターン40に切り換える最中に他の道路使用者11および12を眩しがらせないようにするために、本発明の方法では、左ヘッドライト2(右側通行の場合)のライトレンジは、まず車両26と27の間の中心軸36の右側において、検出された道路使用者11または12までの距離よりも少なくとも小さくなるまで縮小される。その後ではじめて、道路使用者11または12の一方または両方のためにより小さなライトレンジを有する通路を実現するために、検出された道路使用者11および12の左脇の領域におけるライトレンジを大きくすることによって第2の包括的配光パターン40が形成される。本発明の方法による、第1の包括的配光パターン39から第2の包括的配光パターン40への切り換えは、図13に示されている。図13から、切り換えの最中に他の道路使用者を眩しがらせることがないことが分かる。
【0163】
逆に第2の包括的配光パターン40から第1の包括的配光パターン39に切り換える場合には、相応してまず第2の包括的配光パターン40の例えば左側方領域S2をマスキングして、この領域におけるライトレンジを中央領域Mにおけるライトレンジと等しくし、その後、左ヘッドライト2を垂直軸38を軸として旋回させて第1の包括的配光パターン39の位置まで戻す。そうしてはじめて、また左ヘッドライト2によって第1の包括的配光パターン39に特徴的な非対称の配光が形成される。
【0164】
第1の配光パターン39の非対称性を相殺し、他の道路使用者を眩しがらせない程度の小さな最大ライトレンジを提供する、いわゆる市街地光機能をヘッドライト装置で実現できる場合には、第1の包括的配光パターン39から第2の包括的配光パターン40への切り換えの際にも、まず市街地光機能に切り換え、その後、最終的に第2の包括的配光パターン40のマスキングされた継続ハイビームを形成するために、左ヘッドライト2を、場合によっては右ヘッドライト1も垂直軸38を軸として外側に向けて旋回させてよい。
【0165】
図14および15を参照して、第2の包括的配光パターン40の中央領域Mにおけるライトレンジの調整について説明する。この場合、第2の包括的配光パターン40において、図10に示されている例とは異なり、中央領域Mには縮小されたライトレンジ43を有する通路が形成される。先行車12も対向車11a、11bもこの通路内に存在している。左側方領域S2におけるライトレンジの持続的な調整が不利になるような高い交通密度の場合には、画像処理装置15の制御信号によって、このように適合された第2の包括的配光パターン40を形成してよい。
【0166】
図14および15に示されている適合された第2の包括的配光パターン40の側方領域S1およびS2は、例えば両方のヘッドライト1および2の光放射方向Lを垂直軸38を軸としてさらに互いから離れるように旋回させることによって形成される。車両11および12の通路における内部垂直明暗境界は、アクチュエータ21および24によって遮光板8および9を移動させることで形成される。しかし、中央領域Mにおける水平明暗境界、すなわち、この中央領域におけるライトレンジ43は、専らヘッドライト1および2をアクチュエータ19および22によって水平軸37を軸として旋回させることによるライトレンジ調整によってのみ形成される。この調整は、明暗境界43が検出された道路使用者11および12までの距離に一致するように行われる。例えば、対向車11aとすれ違う図14に示されている交通状況を前提にすれば、ライトレンジは図15に示されている値44まで先行車12に近づけられる。第2の包括的配光パターンの中央領域Mにおけるライトレンジ43のこのような調整は、特に上りおよび下り走行においても有利である。
【0167】
図16〜19には、第2の包括的配光パターン40の制御の発展形態が示されている。図12および13を参照して説明した例と同様に、中央領域Mにおけるライトレンジは次の検出される道路使用者11および12に達するまで制御される。それゆえ、中央領域Mに対する開き角は、自車10の走行方向において検出されるすべての道路使用者11および12の方向を捕らえるように選択されている。中央領域Mの右脇の領域には、より大きなライトレンジを有する側方領域S1が形成されている。同様に、中央領域Mの左脇の領域には、拡大されたライトレンジを有する第2の側方領域S2が形成されている。
【0168】
先行車12が検出され、対向車11aが検出された図16に示されている状況では、左側方領域S2におけるライトレンジは最大、すなわちLmaxである。対向車11aがヘッドライト装置を備えた車両10にさらに近づくと、中央領域Mを可能な限り小さな開き角で形成した場合、車両11aの運転者が左側方領域S2から眩しさを感じるという問題が生じる。対向車11aが自車10に近づくと、中央領域Mに対する開き角は拡大される。しかし、対向車11aが側方領域S2の左側の垂直明暗境界に達したら、通り過ぎる車両11aの防眩のために、左側方領域S2を遮断しなければならない、すなわち、左側方領域S2のライトレンジを下げなければならない。車両11aが自車10に近づけば近づくほど、防眩のために左側方領域S2のライトレンジを下げる速度を高くしなければならない。なぜならば、通り過ぎる車両11aの相対角速度が非常に高くなるため、左側方領域S2におけるライトレンジを下げるための時間が非常に短くなってしまうからである。
【0169】
通り過ぎる車両11aを眩しがらせる危険を避けるために、本発明の方法では、第2の包括的配光パターンの左側方領域S2の方向におけるライトレンジLW2は、車両10の走行方向FRと車両10から対向車11aまでを結ぶ線との間の水平角度Φに依存して調整される。第2の包括的配光パターンの左側方領域S2におけるライトレンジLW2が適時に低下させられるので、対向車11aが自車10を通り過ぎるときに、第2の包括的配光パターン40が突然変化することがない。右側方領域S1におけるライトレンジは不変としてよい。この場合、第2の側方領域S1の内部垂直明暗境界は先行車12の位置に依存して調整される。
【0170】
図18及び19には、追い越し過程の際の第2の包括的配光パターンの制御が示されている。自車10の前方には先行車12が存在し、その方向では当該のヘッドライトレンジは先行車12までの距離よりも短い。追い越し過程の際には自車10が対向車線を走行し、先行車両12に接近する。このケースではヘッドライトレンジLW1は、包括的配光パターン40の右方側方領域S1において、自車10の走行方向と、自車10から先行車12までの接続線との間の水平角Φに依存して制御される。自車10が先行車12に近づけば近づくほど、右方側方領域S1におけるヘッドライトレンジLW1は低減する。右方側方領域S1の低減のための制御は、画像処理装置15から伝送されるデータに基づいて自動的に行われる。しかしながらこの制御は場合によっては、対向車線方向への走行方向指示器の設定により、自車10の加速度に対するデータと結び付けられて誘導されてもよい。
【0171】
追い越し過程においては自車10が対向車線を走行して先行車両12に近づく。そのようなケースでは、第2の包括的配光パターン40の右方側方領域S1において、自車10の走行方向と、自車10から先行車12までの接続線との間の水平角Φに依存して制御される。自車10が先行車12に近づけば近づくほど、右方側方領域S1におけるヘッドライトレンジLW1は低減する。右方側方領域S1の低減のための制御は、画像処理装置15から伝送されるデータに基づいて自動的に行われる。しかしながらこの制御は場合によっては、走行方向表示器を対向車線方向へ設定することでも、自車10の加速度に対するデータに結び付けた誘導が可能である。
【0172】
図20にはヘッドライトレンジLW、すなわちヘッドライトレンジLW1乃至LW2と、他の道路使用者11乃至12に対する水平角Φとの間の機能的な関係の一例が示されている。この例では、水平角Φは対向車11の方向においても、(追い越そうとしている)先行車12の方向においても正である。側方領域S1乃至S2のヘッドライトレンジLWは0.5Gradの角度までは最大値、つまりLWmaxに相当する。比較的大きな水平角Φの場合には、前記ヘッドライトレンジLWは4.5Gradから最小値に至るまでリニアに低減し、この最小値のもとでは他の道路使用者にとってもはや眩惑光ではない。その際のヘッドライトレンジは、以下の式のように定められる。
Φ<0.5度のもとでは、
LW = Lmax
0.5度≦Φ≦4.5度のもとでは、
LW= Lmax(−0.25×Φ+1.125)
Φ>4.5度のもとでは、
LW =0である。
【0173】
図20に示されている特性曲線の勾配は可変である。例えばこの勾配は、0.4度-1まで上昇し、0.167度-1まで低下するものであってもよい。ヘッドライトレンジの低下に対する限界角度と、最小ヘッドライトレンジへの到達はこのケースでも変更可能である。
【0174】
その他にも前述したように制御機器16によって1つの包括的配光パターンから別の包括的配光パターンヘ移行する時間間隔を設定することが可能である。この時間間隔は特に第1の包括的配光パターン39又は第3の包括的配光パターン41から第2の包括的配光パターン40への切り替えである。
【0175】
図21の線図には、単位時間当たりのヘッドライトレンジの変化ΔLWが"%/s"の単位で車両加速度に依存して示されている。ここでの0%とは、ヘッドライトレンジLWがロービームのヘッドライトレンジに相応していることを意味し、それに対して100%はハイビーム機能時のヘッドライトレンジに相応していることを意味する。従って例えば毎秒100%のヘッドライトレンジ変化では、ロービーム機能時のヘッドライトレンジからマスキングされた継続ハイビームのヘッドライトレンジへの切換えに1秒の時間間隔ΔTが生じる。相応に毎秒20%のヘッドライトレンジ変化では、マスキングされた継続的ハイビームの完全な活性化に至るまで5秒の時間間隔ΔTが生じる。
【0176】
ヘッドライトレンジ変化ΔLWと、それに伴う、1つの包括的配光パターンから別の包括的配光パターンへの切り替えのための時間間隔ΔTは、以下の式により、加速度Bから算出することが可能である。
【0177】
ΔLW=B×k3
ここで前記k3に対しては以下の条件、
【数1】

特に、以下の条件、
【数2】

さらに有利には以下の条件、
【数3】

が当てはまり、
さらに以下の条件。
【0178】
【数4】

が当てはまる。
【0179】
以下の明細書では図22に基づいて、遅延ユニット26を用いてどのように時間間隔ΔTが定められるのかを説明する。この時間間隔をめぐって、他の道路使用者11,12からの検出レートに依存して、2つの包括的配光パターンの切り替えや1つの包括的配光パターンにおける2つのヘッドライトレンジ間の切り替えが定まる。他の道路使用者11,12の出現や位置に関するデータは、画像処理装置15から制御機器16と車両バス17を介して遅延ユニット26に伝送される。制御機器16は遅延ユニット26から伝送された遅延時間を用いて、切り替え過程が当該時間間隔Tv分だけ遅延するように処理する。
【0180】
以下の明細書では、1つの例として、第1の包括的配光パターン39,すなわち例えばロービームから第2の包括的配光パターン40、すなわちマスキングされた継続的ハイビームへの切り替えに対する遅延時間として、時間間隔Tvが定められているケースを説明する。ここでは遅延ユニット26が信号発生器45を含み、この信号発生器45が第2の包括的配光パターン40から第1の包括的配光パターン39への切り替えを検出し、各切り替え毎に1つの信号をスイッチ46に送信している。ここでは第2の包括的配光パターン40から第1の包括的配光パターン39への切り替え毎に、前記信号発生器45の信号によってスイッチ46の第1の入力側に、時間増分器47から生成される正の時間値が入力するように動作している。例えばそのような切り替えのもとでは、7秒の時間値が前記スイッチ46の第1の入力側に印加され、この時間値はさらに当該スイッチ46の出力側から転送される。
【0181】
信号発生器45からの信号発信と、時間増分器47からの時間値の1回限りの導通の後では、スイッチ46が第2の入力側に切り替り、この第2の入力側がさらなるスイッチ48の出力側と接続する。このさらなるスイッチ48は、さらなる信号発生器49に接続している。このさらなる信号発生器49は、第1の包括的配光パターン39が活性化しているか否かを検出している。第1の包括的配光パターン39が活性化している場合には、前記信号発生器49は前記スイッチ48の第1の入力側を、減衰レートのための第1のタイマー50の出力側に切り替える。この第1のタイマー50は、前記スイッチ48の第1の入力側に継続的に所定の負の時間値を時間単位毎に送出している。例えばこの第1のタイマー50からは、−0.3s-1の減衰レートが前記スイッチ48の第1の入力側に送出され、当該スイッチ48はこの値の減衰レートをその出力側から前記スイッチ46の第2の入力側に供給する。
【0182】
信号発生器49によって第1の包括的配光パターン39が活性化されていないことが検出されると、信号発生器49はスイッチ48を第2の入力側に切り替える。それによりこの第2の入力側は減衰レートのための第2のタイマー51に接続される。この第2のタイマー51は遅延時間を迅速に減少させる。例えば第2のタイマーによって前記スイッチ48の第2の入力側に−0.8s-1の減衰レートが継続的に伝送されると、この減衰レートは、第1の包括的配光パターン39が活性化されていない場合に、スイッチ46の第2の入力側にも転送される。
【0183】
スイッチ46の出力側から送出される時間値は積分器52に伝送され、該積分器52はこれらの値を加算する。但し前記積分器52は遅延時間Tvに対する制限も含んでいる。この遅延時間Tvは2秒〜200秒の間の時間領域においてのみ存在するものであってもよい。この遅延時間Tvは積分器52から出力される。この遅延時間Tvは遅延ユニット26から前記制御機器16に伝送される。
【0184】
信号発生器45は、特に、他の道路使用者、例えば対向車11や先行車12が隣接する車線上で検出された場合に、第2の包括的配光パターン40から第1の包括的配光パターン39への切り替えを検出する。従って遅延時間Tvは他の道路使用者の検出率に依存している。しかしながら代替的に信号発生器45は包括的配光パターンの実際の変更に依存することなく、他の道路使用者が新たに検出されたときには信号をスイッチ46に送出するものであってもよい。この場合の新たに検出された他の道路使用者とは、自車10を追い越していった隣接車線上の先行車12か又はカメラの検出領域を逸脱して自車脇を走り過ぎていった対向車11である。
【0185】
遅延時間Tvは2つの包括的配光パターンの間の切り替えの際の遅延には用いられず、1つの包括的配光パターンの2つの照明状態の間の切り替えの際に利用される。前述したように、例えば第2の包括的配光パターン40、すなわちマスキングされた継続的ハイビームは、2つの照明状態を有している。第1の標準照明状態では、検出された道路使用者に対して又は複数の検出された道路使用者11,12に対していわゆる"回廊"が形成される。図14及び図15に示されているように、この"回廊"の手前には、比較的少ないヘッドライトレンジを伴う中央領域Mが形成され、その側方には、比較的大きなヘッドライトレンジを伴う側方領域S1及びS2が形成されている。他の照明状態では、例えば左方の側方領域S2(右側通行の場合)が省かれる。この領域では、中央領域Mと同じヘッドライトレンジが提供される。このケースでは、図16及び図17に基づいて説明したように、左方領域のヘッドライトレンジを検出された道路使用者に対する水平角度Φに依存して制御することは不要となる。このケースにおいて信号発生器45によって例えば対向車11が頻繁に検出されると、側方領域S2におけるヘッドライトレンジがもはや対向車11に対する水平角度Φに依存して制御されるのではなく、当該側方領域S2におけるヘッドライトレンジの拡大が対向車11が自車10とすれ違うまでの時間間隔Tv分だけ遅延される。この時間間隔Tv内で対向車11が検出された場合、及び(図22に基づいて説明したように)信号発生器45が時間増分器47の時間値を積分器52に供給した場合には、側方領域S2内の照明値が長期に亘って最小に維持され、一時しのぎ的な増分は行われない。
【0186】
さらに制御機器16内では、2つの包括的配光パターン間の切り替え、又は1つの包括的配光パターンにおける2つの照明状態間の切り替えがどのような条件下で行われるかについてが定められる。総じて1つの切り替えが行われたかどうかについての決定のもとでは、制御機器16は、検出された道路使用者の統計及び/又は操舵角の時間的な拡張が考慮される。このことは、以下の明細書において、図23に基づき、第2の包括的配光パターンと第3の包括的配光パターンとの間の切り替えに基づいて説明する。
【0187】
新たな道路使用者、例えば新たな自動車が検出されると、1つの信号が前記画像処理装置15から制御機器16に伝送される。この信号は制御信号としてスイッチ57に供給される。それに関連して前記スイッチ57は、図23に示されている上方の第1の入力側に切り替えられる。この第1の入力側は論理ユニット56の出力側と接続されている。前記論理ユニット56は、2つの入力側を有しており、これらの入力側を介して所定のピッチが供給されている。例えば前記論理ユニット56の位置依存性のピッチは、前記第1の入力側を介して供給される。このことのために、画像処理装置15から伝送される対象の位置は、位置依存性の第1のピッチ増分器に供給される。さらにこの増分器は、特性曲線を介して、新たな対象の位置に1つのピッチを割り当て、それが論理ユニット56に送出される。前記論理ユニット56の第2の入力側には速度依存性のピッチが供給される。このことのために、速度計測ユニット54を用いて目下の車両速度が、速度依存性の第2のピッチ増分器55に供給される。特性曲線に基づき前記第2のピッチ増分器55は、1つのピッチを車輌速度に依存して求め、それを前記論理ユニット56に供給する。この論理ユニット56では、2つの入力側を介して伝送された中から最大ピッチが求められ、当該最大ピッチが前記スイッチ57の第1の入力側に供給される。前記スイッチ57は当該最大ピッチを積分器59に転送する。
【0188】
その後で前記スイッチ57は、図23において下方に示されている第2の入力側に切り替えられる。該第2の入力側は速度依存性のピッチ減分器58に接続されている。このピッチ減分器58には速度計測ユニット54を用いて目下の車輌速度が供給されている。このピッチ減分器58は、特性曲線に基づいて、積分器59の単位時間当たりのピッチの数を減じるピッチ数値を定める。そのためこのピッチ減分器58は、ピッチに対する、速度依存性の低減レートを設定している。
【0189】
積分器59によって定められるピッチは、例えば30〜300の値範囲に制限されてもよい。ピッチ減分器58によって設定された低減レートはこのケースでは毎秒−40から−30の値範囲にあってもよい。
【0190】
さらに、第3の包括的配光パターン41に対するオンオフ閾値を車輌速度に関して直接制御するために、これらのピッチ数値の速度に依存したシフトも行われる。これについては、目下の速度が速度計測ユニット54からさらにシフトユニット61にも供給されている。このシフトユニット61は特性曲線を用いてピッチに対するシフト量を定めている。前記積分器59から送出されたピッチは演算器60の正の入力側に供給され、前記シフトユニット61から送出されたピッチは演算器60の負の入力側に供給される。この演算器60は前記シフトユニット61から伝送されたピッチを、前記積分器59から伝送されたピッチから減算し、その結果をヒステリシスユニット62に送出している。このヒステリシスユニット62は、切り替え閾値を設定しており、それによって、2つの包括的配光パターンの間の過度に頻繁な切り替えが回避されている。
【0191】
最後に、前記演算器60から送出されるピッチに依存して、第1の出力ユニット63を介して、第2の包括的配光パターン40を示す識別信号か又は第3の包括的配光パターン41を示す識別信号が送出される。制御機器16はこの識別信号に依存してヘッドライト装置を駆動し得る。但し、ここではその他にも、車輌10の操舵角変更を考慮することも可能であり、これについては以下に説明する。
【0192】
このケースでは、さらに車輌の操舵角が操舵角検出ユニット64から連続的に検出される。ここで検出された操舵角は、重み係数を生成するための第1の重み係数生成ユニット65に供給されている。この生成ユニット65は操舵角に依存した重み係数を前記論理ユニット66の第1の入力側に送出している。
【0193】
さらに前記速度計測ユニット54から求められた速度値は、さらなる重み係数を生成するための第2の重み係数生成ユニット67に供給されている。この第2のユニット67は前記論理ユニット66の第2の入力側に供給する重み係数を特性曲線を用いて生成している。論理ユニット66は、供給された2つの重み係数のうちの少ない方を決定し、それを重み付けユニット68の第1の入力側に転送する。
【0194】
操舵角検出ユニット64から検出された操舵角は、微分器69にも供給されており、該微分器69は操舵角の時間変化率を定めている。演算器70では角度変化の絶対値が定められ、それが重み付けユニット68の第2の入力側に供給される。それにより当該重み付けユニット68では、車輌速度に対する特性曲線と、操舵角若しくは操舵角変化に依存して1つの特性量が求められ、それがさらなる演算器71の正の入力側に供給される。現下の車輌速度は、さらに前記速度計測ユニット54から別のさらなる閾値発生器72に供給され、該さらなる閾値発生器72は、特性曲線を用いて、速度依存性の閾値を生成し、前記さらなる演算器71の負の入力側に供給している。このさらなる演算器71では、閾値が前記特性量から減じられ、その結果が積分器73に供給される。さらなる閾値発生器72によって生成された閾値は、操舵角変化が全くないか極僅かだけある場合に、前記ユニット71に対する入力値が生じるように選択されている。この入力値は、積分器73によって求められた特性量の低減を引き起こす。この積分器73によって求められた、操舵角変化に対する特性量の低減のための閾値は、毎秒2°〜3°の範囲にある。
【0195】
前記積分器73によって積分された特性量は、操舵角変化を再現している。この積分器73は、求められた操舵角変化をヒステリシスユニット74に伝送している。このヒステリシスユニット74は、交互に頻繁に繰返される切り替えを避けるために、切り替え過程に対するオンオフ閾値を実現するものである。このヒステリシスユニット74は、例えば、積分された操舵角変化の値が約200°を上回ったときに、第2の包括的配光パターン40から第3の包括的配光パターン41への切り替えが行われるように設定されてもよい。また、積分された操舵角変化の値が約100°を下回ったときには、第2の包括的配光パターン40が活性化される。前記ヒステリシスユニット74は、第2の出力ユニット75を介して、第2の包括的配光パターン40を特徴付けるか若しくは第3の包括的配光パターン41を特徴付ける特性量信号を送出している。
【0196】
前記制御機器16は、前記第1の出力ユニット63若しくは第2の出力ユニット75を用いて、どの包括的配光パターンが駆動されるべきかを決定している。この制御機器16内には、その他にもさらなる論理ユニット76が設けられていてもよい。このさらなる論理ユニット76には、前記第1の出力ユニット63と第2の出力ユニット75の特性量信号が供給される。この2つの入力信号から当該さらなる論理ユニット76は、第3の出力ユニット77を介して送出される特性量信号が求められる。このケースでは、そのような特性量信号が第1の出力ユニット63か又は第2の出力ユニット75によって送出されるときに、第3の包括的配光パターン41のための特性量信号が生成される。この特性量信号は、最終的に当該制御機器16がヘッドライト装置を用いて相応の包括的配光パターンを生成するのに用いられる。
【符号の説明】
【0197】
1 右ヘッドライト
2 左ヘッドライト
3 光源
4 ケーシング
5 ガラスパネル
6 反射器
7 投影レンズ
8 第1の遮光板
8a 第1の遮光板によるカットライン
9 第2の遮光板
9a 第2の遮光板によるカットライン
10 ヘッドライト装置を備えた自車両
11 対向車
12 先行車
13 右ヘッドライト用制御器
14 左ヘッドライト用制御器
15 画像処理装置(他の道路使用者を検出するための装置)
16 制御機器
17 車両バス
18 カメラ
19 右ヘッドライト用の第1のアクチュエータ
20 右ヘッドライト用の第2のアクチュエータ
21 右ヘッドライト用の第3のアクチュエータ
22 左ヘッドライト用の第1のアクチュエータ
23 左ヘッドライト用の第2のアクチュエータ
24 左ヘッドライト用の第3のアクチュエータ
25 走行特性を把握するための装置
26 遅延ユニット
27 タイマー
28 ナビゲーション装置
29 GPS装置
30 中心軸
31 抽出ユニット
32 分類ユニット
33 信頼度確定ユニット
34 対応付けユニット
35 水平面
36 中心軸
37 水平軸
38 垂直軸
39 第1の包括的配光パターン(ロービーム時)
40 第2の包括的配光パターン(マスキングされた継続的ハイビーム)
41 第3の包括的配光パターン(平滑化されたライトレンジ)
42 第1の包括的配光パターンにおける傾斜角15°の拡張部
43 ライトレンジ
44 ライトレンジ
45 信号発生器(センサ)
46 スイッチ
47 時間増分器
48 スイッチ
49 信号発生器(センサ)
50 第1のタイマー
51 第2のタイマー
52 積分器
53 位置依存性の第1のピッチ増分器
54 速度計測ユニット
55 位置依存性の第2のピッチ増分器
56 論理ユニット
57 スイッチ
58 位置速度依存性のピッチ増分器
59 積分器
60 演算器
61 シフトユニット
62 ヒステリシスユニット
63 第1の出力ユニット
64 操舵角検出ユニット
65 第1の重み係数生成ユニット
66 論理ユニット
67 第2の重み係数生成ユニット
68 重み付けユニット
69 微分器
70 演算器
73 閾値発生器
100〜170 方法ステップ
180〜280 方法ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの離間されたヘッドライト(1,2)を有する車輌(10)用ヘッドライト装置の制御方法であって、
車両(10)前方の走行方向における道路使用者(11,12)を検出し、その際に、
第1の包括的配光パターン(39)と第2の包括的配光パターン(40)が形成可能であり、
前記第1の包括的配光パターン(39)では、中心軸(36)に対する第1の側のライトレンジが、前記中心軸(36)に対する別の第2の側のライトレンジよりも大きく、
前記第2の包括的配光パターン(40)では、検出された道路使用者(12)の方向の少なくとも1つにおいては、検出された道路使用者(12)までの距離よりも短いライトレンジを有し、かつ別の方向においては、検出された道路使用者(12)までの距離よりも長いライトレンジを有するように、当該第2の包括的配光パターン(40)が閉ループ制御可能である、方法において、
前記第1の包括的配光パターン(39)から前記第2の包括的配光パターン(40)への切り替えの際に、まず中心軸(36)に対する第1の側の少なくとも1つのヘッドライト(2)のライトレンジを、少なくとも、検出された道路使用者(11,12)までの距離よりも短くなるまで低減し、その後で第2の包括的配光パターンを形成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の包括的配光パターン(39,40)を、第1のヘッドライト(1)の第1の部分配光パターンと第2のヘッドライト(2)の第2の部分配光パターンとの重畳によって形成し、第1の包括的配光パターン(39)から第2の包括的配光パターン(40)への切り替えの際に、少なくとも第2のヘッドライト(2)のライトレンジを中心軸(36)に対する第1の側で低減し、その後で、第2の包括的配光パターン(40)を形成するために、第2のヘッドライト(2)の光照射方向(L)を、垂直旋回軸(38)を中心に旋回させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の包括的配光パターン(39)は、ロービームとしての機能を発揮する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第2の包括的配光パターン(40)は、検出された道路使用者(12)の方向のライトレンジを、検出された道路使用者(12)までは達するように閉ループ制御する、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第2の包括的配光パターン(40)では、検出された道路使用者(12)の方向で、小さいライトレンジを有する中央領域(M)と、当該中央領域(M)の両隣に、大きいライトレンジを有する側方領域(S1,S2)とが形成される、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第2の包括的配光パターン(40)では、それぞれ1つの垂直方向の明暗境界が前記中央領域(M)に対して形成される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
一方の包括的配光パターン(39)から他方の包括的配光パターン(40)への切り替えは、検出された道路使用者(12)に依存して自動的に行われる、請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
自車両(10)前方の走行方向における道路使用者(11,12)を検出する際に、
可視スペクトル領域にある交通領域の画像が記録され、
その画像から閾値を上回る輝度と関連付けられた領域が抽出され、
前記領域は少なくともその領域の大きさに応じて分類付けされ、
各領域毎に、領域の分類およびこの領域に対応付けられている物理的な大きさから、車両ライトに対する画像領域の類似性に関する尺度を表す信頼値が形成され、
前記信頼値に依存して、車両ライトに対応付けられる領域か否かが決定される、請求項1から7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
包括的配光パターン(39,40)を生成するための2つの離間されたヘッドライト(1,2)と、
車両(10)の走行方向で複数の道路使用者(11,12)を検出するための装置(15,18)と、
前記道路使用者(11,12)を検出するための装置(15,18)に接続された制御装置とを有し、
前記制御装置を用いることにより、第1の包括的配光パターン(39)と第2の包括的配光パターン(40)が形成可能であり、
前記第1の包括的配光パターン(39)では、中心軸(36)に対する第1の側のライトレンジが、前記中心軸(36)に対する別の第2の側のライトレンジよりも大きく、
前記第2の包括的配光パターン(40)では、検出された道路使用者(12)の方向の少なくとも1つにおいては、検出された道路使用者(12)までの距離よりも短いライトレンジを有し、かつ別の方向においては、検出された道路使用者(12)までの距離よりも長いライトレンジを有するように、当該第2の包括的配光パターン(40)が閉ループ制御可能である、車輌用ヘッドライト装置において、
前記制御装置(16)を用いることにより、前記第1の包括的配光パターン(39)から前記第2の包括的配光パターン(40)への切り替えの際に、まず中心軸(36)に対する第1の側の少なくとも1つのヘッドライト(2)のライトレンジが、少なくとも、検出された道路使用者(11,12)までの距離よりも短くなるまで低減され、その後で第2の包括的配光パターンが形成されることを特徴とする車輌用ヘッドライト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2013−511418(P2013−511418A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539208(P2012−539208)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006345
【国際公開番号】WO2011/060861
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(596107062)フオルクスヴアーゲン アクチエンゲゼルシヤフト (34)
【氏名又は名称原語表記】Volkswagen AG
【住所又は居所原語表記】Wolfsburg,Germany
【Fターム(参考)】