説明

車両用ホイール塗装用のマスキング装置およびマスキング方法

【課題】車両用ホイールの塗装ムラをなくすとともに、マスクの製作,管理のためのコストを削減できるマスキング装置を提供する。
【解決手段】車両用ホイール100を支持する支持台10は、支柱11と、車両用ホイール支持部10aとを有している。車両用ホイール支持部10aは、車両用ホイール100を水平に載せる車両用ホイール設置面12xと、車両用ホイール設置面12xから上方に突出し車両用ホイール100を径方向に位置決めする位置決め凸部13とを含んでいる。ハブ穴用マスク30と、複数のナット座用マスク20は互いに分離している。ハブ穴用マスク30は、被覆部31と、被覆部31の上下面から突出する把持シャフト部32,位置決めシャフト部33を有している。位置決めシャフト部33を支持台10の位置決め穴16に差し込むことにより、ハブ穴用マスク30を径方向に位置決めする。被覆部31がハブ穴103の基準円筒面103xを覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイールを塗装する際に用いられるマスキング装置およびこのマスキング装置を用いたマスキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ホイールを塗装する際、塗膜の形成を回避すべき箇所がある。それは、ハブ穴の内周において車両のハブの基準凸部が嵌められる基準円筒面と、ハブ穴の周りに形成された複数のボルト穴のナット座である。そのため塗装の際には、これらハブ穴の基準円筒面とボルト穴のナット座をマスキングする必要がある。
【0003】
上記マスキングのために、例えば特許文献1に開示されているようなマスキング治具が用いられている。このマスキング治具は、把持部と、この把持部から蛸足のように下方に延びる複数の脚部と、これら脚部の下端に設けられた1つのハブ穴用マスクと、複数のナット座用マスクとを備えている。ハブ穴用マスクは上記把持部の真下に配置され、ナット座用マスクはハブ穴用マスクの周りに配置されている。
【0004】
塗装に先だって上記車両用ホイールを意匠面を上にして水平に支持し、上記マスキング治具を人手で車両用ホイールにセットする。すなわち、マスキング治具を持ち、ハブ穴用マスクをハブ穴の意匠面側端部に載せ、ナット座用マスクをナット座に載せるようにして、セットする。
【特許文献1】実開昭61−106371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のマスキング治具は多数の脚部を有しているため、塗料を車両用ホイールの意匠面に吹き付ける際に、脚部のかげになる箇所で塗装ムラが発生し易かった。また、最近のように多品種少量生産の場合、車両用ホイール毎にハブ穴の径,ボルト穴の数,ナット座の径が異なるのに対応して多数のマスキング治具を用意しなければならず、その製作および管理のためのコストが嵩んだ。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、車両用ホイールを塗装する際に、中央のハブ穴とその周りの複数のボルト穴とをマスキングする装置において、車両用ホイールを支持する支持台と、互いに分離したハブ穴用マスクおよび複数のナット座用マスクとを備え、上記支持台は、支柱とこの支柱の上端部に設けられた車両用ホイール支持部とを有し、この車両用ホイール支持部が、車両用ホイールをその意匠面を上にして水平に載せる車両用ホイール設置面と、この車両用ホイール設置面から上方に突出し車両用ホイールのハブ穴への挿入により車両用ホイールを径方向に位置決めする位置決め凸部とを含み、この位置決め凸部の上面に垂直に延びる位置決め穴を開口させてなり、上記ハブ穴用マスクは、平面形状が円形をなす被覆部と、この被覆部の上面中央から突出する把持シャフト部と、被覆部の下面中央から突出する位置決めシャフト部とを備え、この位置決めシャフト部を上記支持台の位置決め穴に差し込むことにより、ハブ穴用マスクを径方向に位置決めし、この位置決め状態で被覆部がハブ穴の基準円筒面を覆うようになっており、上記ナット座用マスクは、平面形状が円形をなす被覆部を有し、この被覆部がボルト穴のナット座に載ってナット座を覆うことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、ハブ穴用マスクとナット座用マスクが互いに分離されており、これらを脚部で連ねる構成ではないので、塗料吹き付け時に脚部の影で塗装ムラが発生する不都合は生じない。また、種々のハブ穴の径に対応してハブ穴用マスクを用意し、種々のナット座の径に対応してナット座用マスクを用意するだけでよく、これらハブ穴,ナット座の径の組み合わせ,ボルト穴の数の相違に対応してこれらマスクを用意する必要がないので、マスクの製作,管理のためのコストを削減できる。
さらに、ハブ用マスクは、位置決めシャフト部を支持台の位置決め穴に差し込むことにより、その径方向位置決めを容易に行なうことができる。
【0008】
好ましくは、上記支持台の位置決め凸部の上面が平坦で水平をなすマスク設置面として提供され、上記ハブ穴用マスクの被覆部がこのマスク設置面に載り、この被覆部の外周が上記ハブ穴の内周に僅かな隙間を介して対峙し、これより被覆部の下方に位置する上記基準円筒面を塞ぐ。
この構成によれば、ハブ穴用マスクの被覆部がハブ穴に入り込むので、車両用ホイールの意匠面において、ハブ穴の近傍への塗料付着を良好に行なうことができる。
【0009】
好ましくは、上記車両用ホイール支持部は、ボックスと、このボックスと別体をなすコーンヘッドとを有し、上記ボックスの上端には収容穴が形成され、この収容穴を囲むボックス上面が上記車両用ホイール設置面として提供され、上記コーンヘッドは上記ボックスの収容穴に上下方向に移動可能に収容され、上記車両用ホイール設置面から突出して上記位置決め凸部として提供され、さらに上記ボックスには、上記コーンヘッドを上方に付勢する付勢手段と、コーンヘッドの径方向移動を禁じ上下方向移動を案内するガイド手段と、コーンヘッドの上方移動を規制するストッパ手段が設けられている。
上記構成によれば、車両用ホイールのハブ穴の径が異なっても、コーンヘッドがハブ穴の下端周縁に当たることにより、車両用ホイールを径方向に位置決めすることができる。また、車両用ホイールを車両用ホイール設置面に載せることにより、所定高さに安定して支持することができる。
【0010】
好ましくは、上記コーンヘッドの上面が平坦で水平をなすマスク設置面として提供され、上記ハブ穴用マスクの被覆部がこのマスク設置面に載り、この被覆部の外周が上記ハブ穴の内周に僅かな隙間を介して対峙し、これより被覆部の下方に位置する上記基準円筒面を塞ぐ。
この構成によれば、ハブ穴用マスクの被覆部がハブ穴に入り込むので、車両用ホイールの意匠面において、ハブ穴の近傍への塗料付着を良好に行なうことができる。
【0011】
車両用ホイールのハブ穴が小径の場合には、ハブ穴の下端周縁がコーンヘッドの上部に当たるため、コーンヘッドのマスク設置面がハブ穴内に位置する。この場合には、被覆部が円盤形状をなすハブ穴用マスクを用いる。
【0012】
車両用ホイールのハブ穴が大きい場合には、ハブ穴の下端周縁がコーンヘッドの下部に当たるため、コーンヘッドのマスク設置面がハブ穴より上方に位置する。この場合には、被覆部が、上記コーンヘッドのマスク設置面に載る円盤部と、この円盤部の周縁から下方に延びるコーン部とを有する上記ハブ穴用マスクを用いる。これにより、ハブ穴用マスクのコーン部の外周縁が上記車両用ホイールのハブ穴内周に対峙する。
【0013】
好ましくは、上記ナット座用マスクは、円盤形状をなす被覆部の中央下面に形成された挿入凸部を有し、この挿入凸部が車両用ホイールのボルト穴に挿入されることにより、ナット座用マスクの径方向の位置決めがなされる。これにより、ナット座用マスクはナット座を確実に覆うことができる。
【0014】
好ましくは、上記ナット座用マスクの被覆部の下面が、径方向,外方向に向かって下に進む円錐面をなしている。これにより、ナット座用マスクのナット座への接触面積が小さくなり、取り外しが容易となる。
【0015】
好ましくは、上記ハブ穴用マスクは、その把持シャフト部をロボットでチャックされた状態で、車両用ホイールのハブ穴への装着および取り外しがなされる。これにより、ハブ穴用マスクの装着,取り外しを自動化できる。
【0016】
好ましくは、上記ナット座用マスクは、ロボットの吸着部に吸引された状態で、車両用ホイールのボルト穴への装着および取り外しがなされる。これにより、ナット座用マスクの装着,取り外しを自動化できる。
【0017】
さらに本発明は、上記車両用ホイールの塗装用マスキング装置を用いるマスキング方法であって、上記支持台に車両用ホイールを支持し、ハブ穴にハブ穴用マスクを装着し、ボルト穴にナット座用マスクを装着した状態で溶剤塗料を吹き付け、この吹き付け後にハブ穴用マスクを取り外し、ナット座用マスクを装着したまま焼き付けを行ない、焼き付け後にナット座用マスクを取り外すことを特徴とする。
この方法によれば、ハブ穴用マスクを、塗装後,焼き付け前に取り外すので、溶剤塗料の洗浄が容易であるとともに、車両用ホイールを大量生産する場合でも使用するハブ用マスクの数を少なくできる。また、ナット座用マスクは焼き付け工程に取り外すので、この取り外しの際にボルト穴の座ぐり部内周に付着した塗料をこそげ取ることがない。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明では、ハブ用マスクの位置決めが容易でハブ穴の基準円筒面のマスキングを確実に行なうことができ、また、塗装ムラが発生することなく、マスクの製作,管理のためのコストも削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態をなすマスキング装置について、図1〜図5および図6(A)を参照しながら説明する。図1は、搬入ラインの搬送コンベア1に固定された支持台10と、この支持台10にセットする直前の車両用ホイール100とを示す。
【0020】
車両用ホイール100はアルミ鋳造品からなり、ディスク101と、このディスク101の外周縁に設けられたリム102とを有している。
【0021】
ディスク部101の表側の面は、複雑な曲面形状をなす意匠面101aとして提供され、裏側の面の中央部は、ディスク部101の中心軸と直交する平坦なハブ取付面101bとなっている。
【0022】
上記ディスク101の中央にはハブ穴103が形成されており、その周囲には複数例えば5つのボルト穴104が周方向に等しい間隔をなして形成されている。
【0023】
上記ハブ穴103の内周において、その両端から離れた部位は基準円筒面103xとして提供される。この基準円筒面103xは、車両用ホイール100を車両のハブに取り付ける際、ハブの基準凸部が嵌って車両用ホイール100の径方向の位置決めを行なうためのものである。この基準円筒面103xの径は高精度で管理する必要があり、塗膜形成を回避すべき箇所である。
【0024】
上記ボルト穴104の意匠面101a側には座ぐり部104aが形成されるとともに、ナット座104xが形成されている。このナット座104xは、ディスク部101の中心軸と直交する平坦な面をなす。
【0025】
車両用ホイール100を車両のハブに取り付ける際、ハブが車両用ホイール100のハブ取付面101bに当たり、ハブから突出した複数のボルトが車両用ホイール100のボルト穴104に挿入される。これらボルトの先端部に螺合したナットを締め付けることにより、車両用ホイール100がハブに固定される。この際、ナットは座ぐり部104aに収容され、ナット座104xに強い締め付け力で当接するようになっている。そのため、このナット座104xも高精度の平坦度で管理する必要があり、塗膜形成を回避すべき箇所である。
【0026】
次に、上記支持台10について詳述する。支持台10は、搬送コンベア1に固定されて垂直に起立したパイプ形状の支柱11と、この支柱11の上端部に設けられた車両用ホイール支持部10aとを備えている。車両用ホイール支持部10aは、ボックス12と、このボックス12に対して昇降自在なコーンヘッド13(位置決め凸部)とを有している。
【0027】
上記支柱11は、ボックス12の底壁中央を貫通し、その上端部11aがボックス12の内部に配置されている。ボックス12の周壁の上端部は小径をなし、これにより、環状の段差12a(ストッパ手段)が形成されている。ボックス12の上端開口は、コーンヘッド13を収容するための収容穴12bとして提供される。ボックス12の周壁の上端面は水平の平坦面をなし、後述する車両用ホイール設置面12xとして提供される。
【0028】
上記コーンヘッド13は、円盤部13aと、この円盤部13aの外周縁から下方に広がるように延びるコーン部13bと、このコーン部13bの外周縁から下方に延びる円筒部13cと、この円筒部13cの下端縁から径方向,外方向に延びる環状の鍔部13dとを有している。円盤部13aは水平をなし、その平坦な上面が後述するマスク設置面13xとして提供される。
【0029】
上記コーンヘッド13の円盤部13aの下面には垂直に下方に延びるパイプ形状の昇降ロッド14が固定されており、この昇降ロッド14が上記支柱11の上端部11aに挿入されている。これによりコーンヘッド13は、支柱11およびボックス12に対して径方向移動を禁じられた状態で、上下移動を案内されている。このようにして、昇降ロッド14と支柱11の上端部11aは、ガイド手段15を構成している。
【0030】
上記コーンヘッド13の円盤部13aの中央には昇降ロッド14の内部空間に連なる穴が形成されており、これら円盤部13aの穴と昇降ロッド14の内部空間とで、位置決め穴16が構成されている。なお、この位置決め穴16の上端部(円盤形状13aの穴に相当する部位)が他の部位(昇降ロッド14の内部空間に相当する部位)より小径をなしており、後述するハブ穴用マスク30を位置決めする役割を担う。
【0031】
上記コーンヘッド13は、圧縮コイルバネ17(付勢手段)により常に上方へ付勢されている。この圧縮コイルバネ17は、支柱11の上端部および昇降ロッド14に巻かれた状態でボックス12に収容されている。
【0032】
図1に示すように、上記コーンヘッド13は、その鍔部13dがボックス12の環状段差12aに当たることにより、上方への移動を規制されている。
【0033】
図2に示すように、車両用ホイール100はロボット(図示しない)により上記支持台10にセットされる。このセット状態において、車両用ホイール100のハブ取付面101bが支持台10のボックス12の車両用ホイール設置面12xに載ることにより、車両用ホイール100は支持台10に意匠面101aを上にして水平に支持される。
【0034】
上記セット状態において、車両用ホイール100のハブ穴103の下端周縁がコーンヘッド13のコーン部13bに当たり、コーンヘッド13を圧縮コイルバネ17の力に抗して下方へ押す。ハブ穴103の下端周縁のコーンヘッド13への当接位置は、ハブ穴103の内径に応じて変わる。本実施形態のようにハブ穴103の内径が小さいと、図2に示すように、コーンヘッド13のコーン部13bの上部に当たり、コーンヘッド13の下方への移動量が大となる。コーンヘッド13のマスク設置面13xはハブ穴103内に位置している。
【0035】
コーンヘッド13がガイド手段15により径方向移動を禁じられていること、車両用ホイール100のハブ取付面101bが支持台10のボックス12の車両用ホイール設置面12xに載ること、およびハブ穴103の下端周縁の全周がコーンヘッド13のコーン部13bに当たることにより、車両用ホイール100を径方向および上下方向を水平に位置決めでき、その中心を支持台10の中心と一致させることができる。
【0036】
上記のようにして車両用ホイール100を支持した支持台10は、搬送コンベア1により塗装ライン近傍まで搬送される。車両用ホイール100は、支持台10の車両用ホイール設置面12xにより水平に支持された状態で搬送されるので、安定した搬送がなされる。
【0037】
塗装ラインの近傍で、図3に示すようにロボット50により車両用ホイール100のボルト穴104にマスク20(ナット座用マスク)が装着される。
【0038】
上記マスク20は、図4に示すように円盤形状の被覆部21と、この被覆部21の下面中央から下方に突出する円柱形状の挿入凸部22とを有している。被覆部21の下面は、径方向,外方向に向かって下方に進むような円錐面形状をなしている。
【0039】
上記マスク20の装着作業について説明する。上記マスク20は、所定位置に置かれたパレットに予めセットされている。上記ロボット50はエア吸引を行なう吸着部51を有している。
【0040】
最初に停止状態の車両用ホイール100の真上に配置されたビデオカメラ55で車両用ホイール100を撮影する。これにより、車両用ホイール100のボルト穴104の位置を検出する。その後で、ロボット50が吸着部51で上記パレットからマスク20を吸着し、ビデオカメラ55からの位置検出情報に基づいてボルト穴104の真上に位置させ、さらに下降して座ぐり部104aに達したら吸着を解除し、マスク20を座ぐり部104aに落とす。
【0041】
座ぐり部104aに落とされたマスク20は、その挿入凸部22がナット座104xの内周縁に形成されたテーパに案内されてボルト穴104に入り込むことにより、径方向に位置決めされる。そして、被覆部21がナット座104xに載り、このナット座104xを覆う。
【0042】
上記のようにしてマスク20を次々と車両用ホイール100のボルト穴104にセットする。
なお、上記マスク20のセットは、他のロボットにより車両用ホイール100を支持台10から浮かして所定位置に維持した状態で、行なってもよい。
【0043】
次に、ロボットにより車両用ホイール100を、搬入ラインの搬送コンベア1の支持台10(図1〜図3)から、塗装ラインの前段の搬送コンベアに固定された支持台へと運ぶ。本実施形態では、この塗装ラインの支持台は、図1〜図3の搬送コンベア1に設けられた支持台10と同じ構成であるので、その詳細な説明を省略する。
【0044】
上述のようにマスク20を装着した車両用ホイール100は、搬送コンベアにより図5に示す塗装ステージのターンテーブル2近傍まで運ばれ、ここでロボット60によりターンテーブル2に設置された支持台10に移される。ターンテーブル2の支持台10は、図1〜図3の搬送コンベア1に設けられた支持台10と同じ構成であるので、図中対応する構成部に同番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0045】
次に上記ロボット60が、マスク30(ハブ穴用マスク)を車両用ホイール100のハブ穴103に装着する。
本実施形態のようにハブ穴103が小径の場合、図6(A)に示すマスク30が用いられる。このマスク30は、円盤形状をなす被覆部31と、この被覆部31の上面中央から突出する把持シャフト部32と、被覆部31の下面中央から突出する位置決めシャフト部33とを有している。把持シャフト部32と位置決めシャフト部33とは同軸をなし、被覆部31と直交している。位置決めシャフト部33の下端部はテーパをなしている。
【0046】
上記マスク30は洗浄供給装置により車両用ホイール品種に対応するものが所定位置に準備されている。ロボット60はチャック部61を有しており、このチャック部61でマスク30の把持シャフト部32をチャックし、垂直に維持したままハブ穴103の真上まで移動させ、次に下降させ、位置決めシャフト部33の下端部がコーンヘッド13の位置決め穴16の上端近傍に達したら、把持シャフト部32を離して、マスク30を落とす。
【0047】
落とされたマスク30の被覆部31は、ハブ穴103に入り込み、コーンヘッド13のマスク設置面13xに載る。また、位置決めシャフト部33がコーンヘッド13の位置決め穴16に入り込み、この位置決め穴16の小径の上端部(コーンヘッド13の円盤部13aに形成された穴に対応する部位)により、径方向位置決めがなされる。このようにして位置決めされたマスク30の被覆部31の外周は、ハブ穴103の内周に僅かな隙間で対峙し、被覆部31より下方に位置するハブ穴103の基準円筒面103xを覆う。
【0048】
車両用ホイール100がターンテーブル2で回転された状態で、塗装ロボットにより意匠面101aおよびリム102の外周面に溶剤塗料が吹き付けられる。
【0049】
この溶剤塗料の吹き付けに際して、車両用ホイール100のナット座104xはマスク20の被覆部21で覆われ、ハブ穴103の基準円筒面103xもマスク30の被覆部31で覆われているので、これらナット座104x,基準円筒面103xに塗料が付着するのを防止することができる。
【0050】
マスク20,30は、従来のマスキング治具のような蛸足形状の脚部により連結されていないので、この脚部の影による塗装ムラを防止できる。
また、上記マスク30の被覆部31はハブ穴103に入り込んでいるので、ハブ穴103の周囲の意匠面103aへの塗料付着を良好に行なうことができる。
塗料は、ボルト穴104の座ぐり部104a内周にも吹き付けられる。
【0051】
上記塗料吹き付け後、上記ロボット60により、車両用ホイール100のハブ穴103からマスク30を取り外すとともに、車両用ホイール100をターンテーブル2から塗装ラインの後段の搬送コンベアに固定された支持台に移す。このマスク30の取り外しは、前述と同様にロボット60のチャック部61で把持シャフト部32をチャックして行なう。
【0052】
取り外されたマスク30は、洗浄供給装置にセットされて塗料を除去され、格納スペースに格納される。このように、マスク30は、塗装後に直ぐに外されるので、最小限の数を用意すればよい。また、焼き付け前に取り外されるので、被覆部31と把持シャフト部32に付着された塗料の除去は容易である。さらに、車両用ホイール100の移し変え作業において、マスク30の位置決めシャフト部33が邪魔にならない。
【0053】
上記塗装ラインの後段の搬送コンベアおよび支持台は図1〜3の搬送コンベア1および支持台10と同じ構成である。
【0054】
上記塗装ラインの後段の搬送コンベアにより、車両用ホイール100は焼き付けラインへと搬送される。焼き付けラインの近傍に達したら、車両用ホイール100はロボットにより、焼き付けラインの搬送コンベアに固定された支持台(図示しない)へと移される。本実施形態では、この焼き付けラインの支持台も、図1に示す支持台10と同じ構成であるから、その説明を省略する。
【0055】
車両用ホイール100は焼き付けラインの搬送コンベアに搬送されながら、長い炉の中を通り、この過程で塗料の焼き付けがなされる。上述した支持台と同様に車両用ホイール100を所定高さで安定した姿勢で搬送できるので、炉等を傷つけることなく、良好な焼き付けを行なうことができる。
【0056】
この焼き付け終了後に、車両用ホイール100のボルト穴104からマスク20が取り外される。この際用いられるロボットとビデオカメラは、図3と同様である。
【0057】
上述したように、マスク20は焼き付け後に取り外されるので、座ぐり部104aの内周面に付着した塗料が取り外し時にこそげ取られることがなく、この内周面の塗膜形成を良好に行なうことができる。
【0058】
上記マスク20は、下面が円錐面をなしていて、その外周縁だけがナット座104xに当たるので、接触面積が小さく、取り外しが容易である。
【0059】
取り外されたマスク20は、パレットにセットされ、このパレットは搬送コンベアやロボットにより自動的に元の位置に戻される。
溶剤の吹き付け,焼き付けを複数回行なう場合には、最後の焼き付けが終了した後にマスク20を取り外す。
【0060】
次に、本発明の第2実施形態について、図6(B),図7,図8を参照しながら説明する。この実施形態では、図7,図8に示すように、車両用ホイール100のハブ穴103の内径が大きいため、支持台10にセットした時、ハブ穴103の下端周縁がコーンヘッド13のコーン部13bの下部に当接し、コーンヘッド13の下方への移動量は小さい。
【0061】
コーンヘッド13のマスク設置面13xは、ハブ穴103の上方に位置しているので、図6(A)のマスク30では覆うことができない。そのため、本実施形態では図6(B)のマスク40を用いる。
【0062】
上記マスク40は第1実施形態のマスク30と同様に、被覆部41と、把持シャフト部42と、位置決めシャフト部43とを備えている。
【0063】
上記被覆部41は、上記シャフト部42,43と直交する円盤部41aと、この円盤部41aの外周縁から下方に向かって広がるコーン部41bとを有している。コーン部41bの外周は水平に延びる鍔形状をなしている。
【0064】
マスク40を、第1実施形態と同様にしてハブ穴103に装着すると、円盤部41aが支持台10のマスク設置面13xに載り、コーン部41bの外周がハブ穴103の内周に僅かな隙間を介して対峙する。これにより、ハブ穴103の基準円筒面103xを被覆することができる。
【0065】
第2実施形態の他の構成およびマスキング,塗装工程は、第1実施形態と同様であるからその説明を省略する。
【0066】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態を採用可能である。例えば、位置決め凸部は昇降可能なコーンヘッドではなく、所定高さに固定されていてもよい。
ハブ穴用マスクの被覆部を支持台の位置決め凸部に載せずに、ハブ穴の上端近傍の環状段差に載せてハブ穴の基準円筒面を覆ってもよい。
【0067】
上記実施形態では、搬入ライン,塗装ラインの前段および後段,焼き付けラインの搬送コンベアに設置される支持台を同一構成としたが、これら支持台はライン毎に構成を変えてもよい。例えば、搬入ライン,焼き付けラインの支持台は、ハブ穴用マスクのための位置決め穴は無くてもよい。また、焼き付けラインでは車両用ホイール支持をより安定にするために、車両用ホイール設置面を広くしてもよい。
ボックスは、ボックス本体とその上面に固定された環状のテーブルとを有し、このテーブルの上面を車両用ホイール設置面として提供してもよい。
本発明は、溶剤塗装以外の塗装方式、例えば粉体塗装に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態を示す車両用ホイールの塗装用マスキング装置の支持台を、車両用ホイールがセットされる直前の状態で示す縦断面図である。
【図2】同支持台を、車両用ホイールがセットされた状態で示す縦断面図である。
【図3】同マスキング装置を、ボルト穴にマスクが装着された状態で示す縦断面図である。
【図4】上記ボルト穴とマスクを含む要部を拡大して示す縦断面図である。
【図5】同マスキング装置を、ボルト穴およびハブ穴にそれぞれマスクが装着された状態で示す縦断面図である。
【図6】(A)は車両用ホイールのハブ穴が小径の場合に用いられるハブ穴用マスクを示す側面図,(B)は車両用ホイールのハブ穴が大径の場合に用いられるハブ穴用マスクを一部断面にして示す側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態において、大径のハブ穴を有する車両用ホイールをマスキングした状態を示す図5相当図である。
【図8】第2実施形態において、ハブ穴とマスクを含む要部を拡大して示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 支持台
10a 車両用ホイール支持部
11 支柱
12 ボックス
12a 段差(ストッパ手段)
12b 収容穴
12x 車両用ホイール設置面
13 コーンヘッド(位置決め凸部)
13x マスク設置面
15 ガイド手段
16 位置決め穴
17 圧縮コイルバネ(付勢手段)
20 マスク(ナット座用マスク)
21 被覆部
22 挿入凸部
30,40 ハブ穴用マスク
31,41 被覆部
32,42 把持シャフト部
33,43 位置決めシャフト部
41a 円盤部
41b コーン部
100 車両用ホイール
101 ディスク
101a 意匠面
101b ハブ取付面
103 ハブ穴
103x 基準円筒面
104 ボルト穴
104a 座ぐり部
104x ナット座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ホイールを塗装する際に、中央のハブ穴とその周りの複数のボルト穴とをマスキングする装置において、
車両用ホイールを支持する支持台と、互いに分離したハブ穴用マスクおよび複数のナット座用マスクとを備え、
上記支持台は、支柱とこの支柱の上端部に設けられた車両用ホイール支持部とを有し、この車両用ホイール支持部が、車両用ホイールをその意匠面を上にして水平に載せる車両用ホイール設置面と、この車両用ホイール設置面から上方に突出し車両用ホイールのハブ穴への挿入により車両用ホイールを径方向に位置決めする位置決め凸部とを含み、この位置決め凸部の上面に垂直に延びる位置決め穴を開口させてなり、
上記ハブ穴用マスクは、平面形状が円形をなす被覆部と、この被覆部の上面中央から突出する把持シャフト部と、被覆部の下面中央から突出する位置決めシャフト部とを備え、この位置決めシャフト部を上記支持台の位置決め穴に差し込むことにより、ハブ穴用マスクを径方向に位置決めし、この位置決め状態で被覆部がハブ穴の基準円筒面を覆うようになっており、
上記ナット座用マスクは、平面形状が円形をなす被覆部を有し、この被覆部がボルト穴のナット座に載ってナット座を覆うことを特徴とする車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項2】
上記支持台の位置決め凸部の上面が平坦で水平をなすマスク設置面として提供され、上記ハブ穴用マスクの被覆部がこのマスク設置面に載り、この被覆部の外周が上記ハブ穴の内周に僅かな隙間を介して対峙し、これより被覆部の下方に位置する上記基準円筒面を塞ぐことを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項3】
上記車両用ホイール支持部は、ボックスと、このボックスと別体をなすコーンヘッドとを有し、
上記ボックスの上端には収容穴が形成され、この収容穴を囲むボックス上面が上記車両用ホイール設置面として提供され、
上記コーンヘッドは上記ボックスの収容穴に上下方向に移動可能に収容され、上記車両用ホイール設置面から突出して上記位置決め凸部として提供され、
さらに上記ボックスには、上記コーンヘッドを上方に付勢する付勢手段と、コーンヘッドの径方向移動を禁じ上下方向移動を案内するガイド手段と、コーンヘッドの上方移動を規制するストッパ手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項4】
上記コーンヘッドの上面が平坦で水平をなすマスク設置面として提供され、上記ハブ穴用マスクの被覆部がこのマスク設置面に載り、この被覆部の外周が上記ハブ穴の内周に僅かな隙間を介して対峙し、これより被覆部の下方に位置する上記基準円筒面を塞ぐことを特徴とする請求項3に記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項5】
上記ハブ穴用マスクの被覆部が円盤形状をなしていることを特徴とする請求項4に記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項6】
上記ハブ穴用マスクの被覆部が、上記コーンヘッドのマスク設置面に載る円盤部と、この円盤部の周縁から下方に延びるコーン部とを有し、このコーン部の外周縁が上記車両用ホイールのハブ穴内周に対峙することを特徴とする請求項4に記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項7】
上記ナット座用マスクは、円盤形状をなす被覆部の中央下面に形成された挿入凸部を有し、この挿入凸部が車両用ホイールのボルト穴に挿入されることにより、ナット座用マスクの径方向の位置決めがなされることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項8】
上記ナット座用マスクの被覆部の下面が、径方向,外方向に向かって下に進む円錐面をなしていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項9】
上記ハブ穴用マスクは、その把持シャフト部をロボットでチャックされた状態で、車両用ホイールのハブ穴への装着および取り外しがなされることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項10】
上記ナット座用マスクは、ロボットの吸着部に吸引された状態で、車両用ホイールのボルト穴への装着および取り外しがなされることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の車両用ホイールの塗装用マスキング装置を用いるマスキング方法であって、上記支持台に車両用ホイールを支持し、ハブ穴にハブ穴用マスクを装着し、ボルト穴にナット座用マスクを装着した状態で溶剤塗料を吹き付け、この吹き付け後にハブ穴用マスクを取り外し、ナット座用マスクを装着したまま焼き付けを行ない、焼き付け後にナット座用マスクを取り外すことを特徴とするマスキング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−167769(P2007−167769A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369269(P2005−369269)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】