説明

車両用ホイール製造用の鋳型

【課題】溶湯の凝固速度を局所的に速めることが可能であり、かつ繰り返し使用が可能な車両用ホイール製造用の鋳型を提供する。
【解決手段】キャビティ50と溶湯流路とを備え、キャビティ50は、ディスク成形部51とリム成形部53とを有し、キャビティ50の壁面の一部を形成する部材は、キャビティ50の壁面の他の部分を形成する部材よりも熱伝導率が高い材質を含む放熱部材41とされており、放熱部材41は、キャビティ50の内部に向かって移動可能に設けられている車両用ホイール製造用の鋳型S。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイール製造用の鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ホイールを製造する際には、低圧鋳造法が広く用いられている。低圧鋳造法は、保持炉(チャンバー)内に保持された溶湯の界面を加圧することにより、溶湯を給湯管(ストーク)内で押し上げて鋳型のキャビティ内へと流し込み、キャビティ内で溶湯を冷却して凝固させる方法である。このとき、溶湯の冷却は、鋳型のキャビティの壁面から放熱されることによりなされる。
【0003】
一般に、車両用ホイールは、リムやハブやスポークなどの部分ごとに厚み(肉厚)が異なる。ここで、上述したように溶湯の冷却がキャビティの壁面からの放熱によりなされるので、車両用ホイールの肉厚が厚い部分(厚肉な部分)を形成する箇所では、壁面までの距離のあるキャビティの中心部まで冷却するには時間がかかる。こうして溶湯の凝固速度が遅くなると、引け巣等が発生しやすくなる。
【0004】
そこで、熱伝導率の異なる部材から組み上げられた車両用ホイール製造用の鋳型が考案されている。この考案されている鋳型は、キャビティの中で車両用ホイールの厚肉な部分を形成する箇所において、キャビティの壁面が熱伝導率の高い部材により形成されている。この高熱伝導率の壁面の働きにより、溶湯が局所的に冷却されやすくなり、溶湯の凝固速度が速まる(例えば、特許文献1、2)。その結果、車両用ホイールの厚肉な部分と肉厚が薄い部分(薄肉な部分)との間で、溶湯が凝固するまでの時間差が小さくなり、引け巣等の鋳造欠陥の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−197550号公報
【特許文献2】特開2001−71095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の考案されている車両用ホイール製造用の鋳型のように、熱伝導率の異なる部材から鋳型を組み上げると、これらの部材のいずれかが溶湯との反応により、キャビティの壁面が局所的に溶損、欠損、腐食等を起こしてしまう。その結果、鋳造を繰り返すことは困難である。
【0007】
上記の問題に鑑みて、本発明の目的は、溶湯の凝固速度を局所的に速めることが可能であり、かつ繰り返し使用が可能な車両用ホイール製造用の鋳型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を本発明によれば達成することができる。具体的には、以下に示す車両用ホイール製造用の鋳型である。
【0009】
[1] 溶湯を充填するためのキャビティと、前記キャビティ内に前記溶湯を注入するための溶湯流路と、を備え、前記キャビティは、前記キャビティの中心から半径方向外側に向けて拡がるディスク成形部と、前記ディスク成形部の外周縁から延びるリム成形部と、を有し、前記キャビティの壁面の一部を形成する部材は、前記キャビティの壁面の他の部分を形成する部材よりも熱伝導率が高い材質を含む放熱部材とされており、前記放熱部材は、前記キャビティの内部に向かって移動可能に設けられている車両用ホイール製造用の鋳型。
【0010】
[2] 前記ディスク成形部は、中心部にあるハブ成形部と、前記ハブ成形部から放射状に分岐して前記ディスク成形部の前記外周縁に向けて延びる複数のスポーク成形部と、を有し、前記放熱部材は、前記スポーク成形部の延びる方向に位置すると共に前記ディスク成形部の前記外周縁と前記リム成形部とが交わる部分における前記キャビティの前記壁面の一部を形成している前記[1]に記載の車両用ホイール製造用の鋳型。
【0011】
[3] 前記放熱部材の位置を固定する固定手段を有する前記[1]または[2]に記載の車両用ホイール製造用の鋳型。
【0012】
[4] 前記固定手段は、前記放熱部材と接続しつつ前記放熱部材とともに前記キャビティ内部に向かって移動可能な接続部と、前記接続部に連結して前記接続部についての前記キャビティ内部に向かう方向への変位および位置決めをする支持部と、を有する前記[3]に記載の車両用ホイール製造用の鋳型。
【0013】
[5] 前記接続部および前記支持部は、ネジ部材およびネジ孔のいずれか一方が設けられて螺合することにより互いに連結するとともに、前記接続部の前記キャビティ内部に向かう方向への変位および位置決めが、前記ネジ部材と前記ネジ孔とによるネジ機構によりなされている前記[4]に記載の車両用ホイール製造用の鋳型。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用ホイール製造用の鋳型は、溶湯の凝固速度を局所的に速めることが可能であり、かつ繰り返し使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の車両用ホイール製造用の鋳型と、これを備えた低圧鋳造装置の模式図である。
【図2】車両用ホイールの平面図であり、また、車両用ホイールと放熱部材との位置関係を説明するための図である。
【図3】図1中の枠A内の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0017】
本発明の車両用ホイール製造用の鋳型(以下、「本発明の鋳型」という)は、溶湯を充填するためのキャビティと、キャビティ内に溶湯を注入するための溶湯流路と、を備えている。このキャビティは、ディスク成形部と、リム成形部とを有する。ディスク成形部は、キャビティの中心から半径方向外側に向けて拡がっている。このディスク成形部に充填された溶湯が凝固すると、車両用ホイールのディスク部分が形作られる。リム成形部は、ディスク成形部の外周縁から延びている。このリム成形部に充填された溶湯が凝固すると、車両用ホイールのリム部分が形作られる。
【0018】
さらに、本発明の鋳型では、キャビティの壁面の一部を形成する部材が、キャビティの壁面の他の部分を形成する部材よりも熱伝導率が高い材質を含む放熱部材とされている。放熱部材により形成されたキャビティの壁面は、熱伝導率が高いので、溶湯の熱を放熱しやすい。すなわち、放熱部材により形成されたキャビティの壁面に接触している溶湯は、キャビティ内の他の部分にある溶湯と比べて、冷却されやすく、その結果、凝固速度が速くなる。
【0019】
車両用ホイールは、通常、部分ごとに厚みが異なり、厚肉な部分は溶湯の凝固が完了するまでに時間がかかる。ここで、車両用ホイールの厚肉な部分を形成する箇所において、キャビティの壁面を放熱部材により形成している場合には、この箇所で局所的に溶湯を速やかに冷却することができ、溶湯の凝固速度を速めることができる。その結果、溶湯を均一に凝固させやすくなり、得られる車両用ホイールにおける引け巣等の鋳造欠陥の発生を抑制することができる。
【0020】
本発明の鋳型では、放熱部材は、銅、銅ニッケル合金などのうちのいずれかを主成分として含んでおり、さらに、放熱部材以外のキャビティを形成する部材は、上述した銅や銅ニッケル合金などよりも熱伝導率が低い鋳鉄、金型用合金(SKD、SCM等)、一般鋼材等が望ましい。
【0021】
また、本発明の鋳型では、放熱部材は、キャビティの内部に向かって移動可能に設けられている。このように放熱部材がキャビティの内部に移動可能な場合には、放熱部材により形成されたキャビティの壁面が溶損等したとしても、簡便に修復することができる。すなわち、放熱部材をキャビティの内部に向かって移動させて、キャビティの内部に突出させ、この突出させた部分を削って元どおりの形状に壁面を加工することができる。こうしてキャビティの壁面の修復を簡便にできるので、本発明の鋳型は大きな手間を掛けずに繰り返し使用することが可能になる。
【0022】
例えば、本発明の鋳型において、放熱部材が銅から形成されており、さらに溶湯がアルミニウムからなる場合には、銅とアルミニウムとの反応により、放熱部材から形成されたキャビティの壁面が溶損等してしまう。このようにキャビティの壁面が溶損等してしまっても、放熱部材について上述した加工を施すことにより、正常な鋳型に回復させることができる。
【0023】
本発明の鋳型では、ディスク成形部が、中心部にあるハブ成形部と、ハブ成形部から放射状に分岐してディスク成形部の外周縁に向けて延びる複数のスポーク成形部とを有する場合には、放熱部材は、スポーク成形部の延びる方向に位置しディスク成形部の外周縁とリム成形部とが交わる部分におけるキャビティの壁面の一部を形成していることが好ましい。ディスク成形部の外周縁とリム成形部とが交わる部分、特にそのうちスポーク成形部の延びる方向に位置する部分は、他の部分よりもキャビティの幅(キャビティの「肉厚」ともいう)が大きくなるので、溶湯が冷却されにくく、ひいては凝固しにくくなる。この部分におけるキャビティの壁面の一部が放熱部材から形成されている場合には、上述したような原理によって、溶湯の冷却を促進し、凝固速度を速めることができる。
【0024】
また、本発明の鋳型では、キャビティの形状を良好に保持させることができるという観点からは、放熱部材の位置を固定する固定手段を有することが好ましい。
【0025】
また、本発明の鋳型に用いられる固定手段は、放熱部材と接続しつつ放熱部材とともにキャビティ内部に向かって移動可能な接続部と、接続部に連結して接続部についてのキャビティ内部に向かう方向への変位および位置決めをする支持部とを有することが好ましい。このように、放熱部材のキャビティの内部に向かう方向への変位および位置決めが固定手段により制御されている場合には、放熱部材の位置決めをより正確に行うことが可能になる。また、放熱部材を位置決めする機構を固定手段に担わせることにより、放熱部材を放熱に適した形状にしやすくなり、その結果、放熱部材によって溶湯の凝固速度を速めることが一層確実にできるようになる。
【0026】
本発明の鋳型に用いられる固定手段は、上述したような接続部および支持部を有する場合、放熱部材の移動量を適切に調整することができるという観点からは、接続部および前記支持部は、ネジ部材およびネジ孔のいずれか一方が設けられて螺合することにより互いに連結するとともに、接続部のキャビティ内部に向かう方向への変位および位置決めが、ネジ部材とネジ孔とによるネジ機構によりなされていることが好ましい。
【0027】
以下、本発明の車両用ホイール製造用の鋳型の具体的な実施形態を参照しつつ、その内容を詳しく説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態の車両用ホイール製造用の鋳型と、これを備えた低圧鋳造装置の断面図である。図示されるように、本低圧鋳造装置Dには、鋳型セットSと、鋳型セットSを載置するための基台10とを備えている。
【0029】
本鋳型セットSの主要な部材は、下型20、上型40、および一対の横型30の、3種の型である。これらの型を組み合わせて鋳型セットSを組み上げると、内部にキャビティ50ができる。このキャビティ50は、車両用ホイ−ルと略同じ形状をした空洞である。本鋳型セットSでは、キャビティ50がディスク成形部51とリム成形部53とから構成されている。さらに、本鋳型セットSでは、ディスク成形部51は、中心部にあるハブ成形部55と、このハブ成形部55から放射状に分岐しているスポーク成形部57とを有する。ディスク成形部51、リム成形部53、ハブ成形部55、スポーク成形部57からは、車両用ホイールにおけるディスク、リム、ハブ、スポークに該当する部分を成形することができる。本鋳型セットSのキャビティ50内で溶湯を充填し、凝固させることにより、車両用ホイール用の鋳造品を成形することができる。
【0030】
図2は、本鋳型セットSを用いて製造することができる車両用ホイールの一具体例の正面図である。本車両用ホイール80は、ディスク81とリム82から構成されている。さらに、ディスク81は、中心部分にあるハブ83と、ハブから放射状に延びる複数のスポーク84とを有する。この車両用ホイール80を本鋳型セットSを用いて製造する場合には、車両用ホイール80と略同じ形状の空洞が、鋳型セットSの内部にキャビティ50として作られていることになる。
【0031】
また、本鋳型セットSでは、下型20の上に凹部が形成されており、この凹部に入子21が嵌めこまれている。車両用ホイ−ルのディスク部を目的の凹凸形状に作り上げることができる。
【0032】
本鋳型セットSでは、一対の横型30は、車両用ホイールの中心軸に当たる箇所を含んだ面で分離する。これら2つの横型30の合せ面のそれぞれには窪みがあり、2つの横型30の合せ面同士を合わせると湯道31が形成される。この湯道31は、本鋳型セットSの両側に1つずつ、すなわち一対ある。これらの湯道31は略L字状をしており、湯道31の一方の端が側端開口311としてキャビティ50のリム成形部53に開口しており、湯道31のもう一方の端が下端開口312として横型30の下面において開口している。これにより、溶湯を下端開口312から湯道31内に流入させ、湯道31内に流入した溶湯を側端開口311からキャビティ50内へと注入することができる。また、側端開口311には、流路が窄まるように堰が形成されている。
【0033】
さらに、本鋳型セットSでは、放熱部材41が横型30に挿し通されている。図3は、図1中の枠A内の拡大図である。この拡大図には、リム成形部53および交差部12近傍が描かれている。本明細書にいう交差部12とは、ディスク成形部51の外周縁17の中でもスポーク成形部57の延びる方向に位置すると共にリム成形部53とが交わる部分のことをいう。図示されるように、本鋳型セットSでは、放熱部材41が交差部12に向けて挿し押されている。これにより、交差部12におけるキャビティ50は、横型30の壁面19aと、上型40の壁面19bと、下型20の壁面19cと、放熱部材41の壁面45とに囲まれて作られる。
【0034】
交差部12は、キャビティ50の容積が大きく、そのために溶湯が他の部分よりも多く溜まる。本鋳型セットSでは、交差部12に溜まる溶湯の一部が放熱部材41により形成された壁面45に接触し、この壁面45から盛んに放熱される。すなわち、本鋳型セットSでは、交差部12に溜まった溶湯が冷却されやすい。そのため、交差部17に溜められた溶湯の凝固速度を速めることができる。こうして交差部17での溶湯の凝固にかかる時間は、他の薄肉な部分[例えば、リム成形部53の中央部(リム底部を成形する部分)]の溶湯の凝固にかかる時間との差が小さくなる。このように溶湯の凝固の凝固時間が部位ごとで差が小さくなるので、得られる車両用ホイールには引け巣等の鋳造欠陥が少なくなる。
【0035】
また、図3に示されるように、横型30の外周面33には、鞘部65が接合している。この鞘部65には、ネジ孔67が設けられている。このネジ孔67は、放熱部材41が横型30に挿し通されている方向(図3中では、Xin方向として示す)に延びている。ネジ孔67には、ストッパー60のネジ部61が挿入されている。こうして、鞘部65のネジ孔67とストッパー60のネジ部61とが螺合し、ストッパー60の位置が固定されている。さらに、ストッパー60には、ネジ部61の根元に頭部63が接合しており、この頭部63が放熱部材41の凹部43に嵌め込まれている。その結果、ストッパー60により放熱部材41の位置を固定している。
【0036】
ストッパー60は、ネジ部材61とネジ孔67とによるネジ機構を操作することにより、放熱部材41が横型30に挿し通されている方向(Xin方向)に沿って前進また後退することが可能である。また、このストッパー60の移動はネジ機構によりなされているので、ストッパー60の位置を微調整できる。このとき、ストッパー60は放熱部材41とともに(Xin方向)に沿って前進また後退するので、放熱部材41の位置についても微調整することができる。
【0037】
例えば、鋳造を繰り返した後、放熱部材41の壁面45が溶損等した場合には、上述したネジ機構を操作することにより放熱部材41をXin方向に前進させて放熱部材41の先端をキャビティ50内に突出させ、次いで、横型30を分離し、放熱部材41の先端の溶損等した部分を削って所定の形状に加工することにより、放熱部材41の壁面45を修復することができる。このとき、放熱部材41の前進がネジ機構により微調整できるので、放熱部材41の先端の突出を最小限に抑えることが可能となり、その結果として、放熱部材41の壁面45を修復する際の放熱部材41の削り量を少なくできる。
【0038】
また、本鋳型セットSによれば、車両用ホイールの軽微な設計変更のために、放熱部材41の壁面45の形状を変更する場合であっても、上述した手法で放熱部材41の壁面45の形状を変えることにより、簡便に対処することができる。
【0039】
また、本鋳型セットSでは、放熱部材41は、横型30に挿し込まれている挿入部47と外部に露出している露出部49とを備えている。露出部49は、挿入部47よりも幅が大きく、これに伴い表面積も大きくなっている。このように露出部49の表面積を大きくすることにより、放熱部材41は放熱しやすくなり、その結果、溶湯の冷却効果が高められている。
【0040】
ここでは図示しないが、溶湯をさらに効果的に冷却したい場合には、露出部49にフィンなどを設けて表面積を拡げ、放熱効果をより高めることが好ましい。
【0041】
本鋳型セットSでは、放熱部材41を位置決めする機構が放熱部材41のみに備えられているのではなく、ストッパー60および鞘部65にも分担されているので、放熱部材41自体の形状には制約が少なくなる。そのため、本鋳型セットSでは、放熱効果を高められるような放熱部材41の形状(特に、露出部49を放熱に適した形状にすること)を採用しやすくなる。
【0042】
図2は、本鋳型セットSを用いて作製される車両用ホイールと放熱部材との位置関係を説明するための図である。図示されるように、本車両用ホイール80は、ハブ83からディスク81の外周縁に向けて6本のスポーク84が放射状に延びている。スポーク84が延びる方向に位置すると共にディスク81の外周縁とリム82との交わる部分は厚肉な部分となっている。そのため、この厚肉な部分を鋳造する際には、溶湯が凝固しににくい。本鋳型セットSを用いて本車両用ホイール80を鋳造する際には、スポーク84が延びる方向に位置すると共にディスク81の外周縁とリム82との交わる部分に放熱部材41の壁面45を当てている。こうすると、厚肉な部分において局所的に溶湯の凝固速度を速めることが可能になる。
【0043】
図2では、6本のスポーク84のうち、4本のスポーク84に放熱部材41が当てられている。残る2本のスポーク84に放熱部材41が当てられていないのは、これらのスポーク84が延びる位置には湯道31が形成されているので、放熱部材41を当てることができないからである。
【0044】
また、図2では、放熱部材41が、本車両用ホイール80の外周側から中心に向かう方向で当てられている形態を示すが、溶湯の凝固速度を速めたい箇所に応じて、放熱部材41を本車両用ホイール80の中心から外周側に向かう方向で当てたり、あるいは本車両用ホイール80の表面から裏面に向かう方向で当てたりしてもよい。
【0045】
本低圧鋳造装置Dでは、基台10の上に鋳型セットSが置かれている。基台10には、中間ストーク70が貫通している。この中間ストーク70は、鉛直方向に対して傾いた方向に延びた状態で配置されることが可能である。中間ストーク70の上端は、湯道31の下端開口312に連結している。これにより、中間ストーク70内に流入した溶湯を湯道31内に送り込むことができる。
【0046】
基台10の下には、溶湯保持炉60が配置されている。溶湯保持炉60内には、溶湯Mが収容されている。溶湯保持炉60には、保持炉ストーク75が装着されている。この保持炉ストーク75は略鉛直方向に延びている。また、保持炉ストーク75の上端は中間ストーク70の下端に連結し、保持炉ストーク75の下端は溶湯保持炉60内に収容された溶湯Mの中に差し込まれている。なお、本低圧鋳造装置Dでは、湯道31と中間ストーク70との間にフィルターRを設けることにより、溶湯に混入した異物を除去できるようにしている。
【0047】
本低圧鋳造装置Dでは、溶湯保持炉60内にガスを供給して溶湯Mを加圧することにより、ストーク(中間ストーク70と保持炉ストーク75)を介して溶湯Mをキャビティ50内へと送り込むことができる。こうして溶湯Mをキャビティ50内および湯道31内に満たした後、溶湯をキャビティ50内および湯道31内で溶湯を凝固させた後、各型を離型すると、車両用ホイール用の鋳造品を得る。この車両用ホイール用の鋳造品については、研削して各部を所望の厚さにすることにより、最終形状の車両用ホイールを得てもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、車両用ホイール製造用の鋳型として利用できる。
【符号の説明】
【0049】
10:基台、12:交差部、17:(ディスク成形部の)外周縁、19a:(横型の)壁面、19b:(上型の)壁面、19c:(下型の)壁面、20:下型、21:入子、30:横型、31:湯道、33:(横型の)外周面、40:上型、41:放熱部材、43:(放熱部材の)凹部、45:(放熱部材)の壁面、47:挿入部、49:露出部、50:キャビティ、51:ディスク成形部、53:リム成形部、55:ハブ成形部、57:スポーク成形部、60:ストッパー、61:ネジ部、63:頭部、65:鞘部、67:ネジ孔、70:中間ストーク、80:車両用ホイール、81:ディスク、82:リム、83:ハブ、84:スポーク、311:(湯道の)側端開口、312:(湯道の)下端開口、D:車両用ホイールの低圧鋳造装置、M:溶湯、R:フィルター、S:鋳型セット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯を充填するためのキャビティと、前記キャビティ内に前記溶湯を注入するための溶湯流路と、を備え、
前記キャビティは、前記キャビティの中心から半径方向外側に向けて拡がるディスク成形部と、前記ディスク成形部の外周縁から延びるリム成形部と、を有し、
前記キャビティの壁面の一部を形成する部材は、前記キャビティの壁面の他の部分を形成する部材よりも熱伝導率が高い材質を含む放熱部材とされており、
前記放熱部材は、前記キャビティの内部に向かって移動可能に設けられている車両用ホイール製造用の鋳型。
【請求項2】
前記ディスク成形部は、中心部にあるハブ成形部と、前記ハブ成形部から放射状に分岐して前記ディスク成形部の前記外周縁に向けて延びる複数のスポーク成形部と、を有し、
前記放熱部材は、前記スポーク成形部の延びる方向に位置すると共に前記ディスク成形部の前記外周縁と前記リム成形部とが交わる部分における前記キャビティの前記壁面の一部を形成している請求項1に記載の車両用ホイール製造用の鋳型。
【請求項3】
前記放熱部材の位置を固定する固定手段を有する請求項1または2に記載の車両用ホイール製造用の鋳型。
【請求項4】
前記固定手段は、前記放熱部材と接続しつつ前記放熱部材とともに前記キャビティ内部に向かって移動可能な接続部と、前記接続部に連結して前記接続部についての前記キャビティ内部に向かう方向への変位および位置決めをする支持部と、を有する請求項3に記載の車両用ホイール製造用の鋳型。
【請求項5】
前記接続部および前記支持部は、ネジ部材およびネジ孔のいずれか一方が設けられて螺合することにより互いに連結するとともに、
前記接続部の前記キャビティ内部に向かう方向への変位および位置決めが、前記ネジ部材と前記ネジ孔とによるネジ機構によりなされている請求項4に記載の車両用ホイール製造用の鋳型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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