説明

車両用ラゲージドアの開閉機構

【課題】ラゲージドアヒンジトーションバーが車体側のブラケットに設けられた受け部から外れることを防止する。
【解決手段】ラゲージルームの上方側の車体に取付けられたヒンジサポート16と、ラゲージドアとヒンジサポート16とを連結するヒンジアーム14と、ヒンジサポート16とヒンジアーム14との間に介装され、ヒンジアーム14をラゲージドアが開口する方向に付勢するラゲージドアヒンジトーションバー20と、ヒンジサポート16に設けられると共に、車両後方側に開口した側面視でU字状の受け部を有し、当該受け部の閉止端にラゲージドアヒンジトーションバー20が軸支されるブラケット22と、を備える車両用ラゲージドアの開閉機構10であって、溝50を受け部30の下辺部40でかつラゲージドアヒンジトーションバー20の軸支位置Cよりも車両後方側に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ラゲージドアの開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラゲージドアヒンジトーションバーが車体側のブラケットに設けられた受け部に軸支され、該ラゲージドアヒンジトーションバーを捻ることにより生じる捻り力によって、ラゲージドアを開口方向に付勢して開扉状態を保持する車両用ラゲージドアの開閉機構が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭54−044151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構造では、ラゲージルームに収納された荷物を取り出す際に、荷物がラゲージドアヒンジトーションバーに引っ掛かると、ラゲージドアヒンジトーションバーが車体側のブラケットに設けられた受け部から外れる可能性があった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、荷物などがラゲージドアヒンジトーションバーに引っ掛かったとしても、ラゲージドアヒンジトーションバーが車体側のブラケットに設けられた受け部から外れることを防止することができる車両用ラゲージドアの開閉機構を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る車両用ラゲージドアの開閉機構は、ラゲージドアによって開閉されるラゲージルームの上方側の車体に取付けられたヒンジサポートと、前記ラゲージドアと前記ヒンジサポートとを連結するヒンジアームと、前記ヒンジサポートと前記ヒンジアームとの間に介装され、前記ヒンジアームを前記ラゲージドアが開口する方向に付勢するラゲージドアヒンジトーションバーと、前記ヒンジサポートに設けられると共に、車両後方側に開口した側面視でU字状の受け部を有し、当該受け部の閉止端に前記ラゲージドアヒンジトーションバーが軸支されるブラケットと、前記受け部の下辺部でかつ前記ラゲージドアヒンジトーションバーの軸支位置よりも車両後方側に設けられ、前記ラゲージドアヒンジトーションバーが嵌合可能な溝と、を有することを特徴とする。
【0007】
ここで、ラゲージドアヒンジトーションバーの一部がラゲージドアを上方に付勢する力の反力を受けて、ラゲージドアヒンジトーションバーの受け部に軸支されている他の一部には、車両下方向の力が生じる。そのため、荷物等がラゲージドアヒンジトーションバーに引っ掛かり、ラゲージドアヒンジトーションバーが受け部から外れる方向(車両後方)に引っ張られると、ラゲージドアヒンジトーションバーは受け部の下辺部を車両下方向に付勢しながら、受け部から外れる方向(車両後方)に移動する。しかしながら、請求項1に係る本発明では、前記溝が受け部の下辺部に設けられているため、車両後方に移動したラゲージドアヒンジトーションバーは前記溝に嵌合する。その結果、ラゲージドアヒンジトーションバーが受け部から外れることを防止することができる。
【0008】
請求項2記載の本発明に係る車両用ラゲージドアの開閉機構は、請求項1記載の車両用ラゲージドアの開閉機構において、前記ラゲージドアヒンジトーションバーは、前記ヒンジアームに取付けられたヒンジリンクと前記受け部との間に介装されており、かつ前記ラゲージドアヒンジトーションバーと前記溝の後壁部との接触部が、前記ラゲージドアヒンジトーションバーの回動中心から前記ラゲージドアヒンジトーションバーの捻り力を前記ヒンジアームに伝達するヒンジリンクの回転接線方向に引いた線よりも車両上方側に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る本発明では、上記構成の接触部が溝の後壁部に設けられている。そのため、ラゲージドアヒンジトーションバーが前記溝に嵌合した状態において、更にラゲージドアヒンジトーションバーが外れる方向への荷重が加わったとしても、その荷重の前記溝を乗り越える方向への分力を効率よく受け止めることができる。その結果、ラゲージドアヒンジトーションバーが前記溝を乗り越えることを防止できる。
【0010】
請求項3記載の本発明に係る車両用ラゲージドアの開閉機構は、請求項2記載の車両用ラゲージドアの開閉機構において、前記接触部が前記溝の後壁部の上端部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る本発明では、前記接触部が前記溝の後壁部の上端部に設けられている。そのため、ラゲージドアヒンジトーションバーの回動中心からヒンジリンクの回転接線方向に引いた線に対して、該接触部を最も遠くに設定することができる。従って、ラゲージドアヒンジトーションバーが外れる方向への荷重の前記溝を乗り越える方向への分力を最も効率よく受け止めることができ、ラゲージドアヒンジトーションバーが前記溝を乗り越えることをより一層防止できる。
【0012】
請求項4記載の本発明に係る車両用ラゲージドアの開閉機構は、請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の車両用ラゲージドアの開閉機構において、前記ラゲージドアヒンジトーションバーを軸支しかつ前記ラゲージドアヒンジトーションバーが回動する際の摩擦抵抗及び磨耗を低減するU字状のブッシュが前記受け部の前記ラゲージドアヒンジトーションバーの軸支位置に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る本発明では、上記ブッシュがラゲージドアヒンジトーションバーの軸支位置に設けられているため、ラゲージドアヒンジトーションバーが回動する際の摩擦抵抗及び磨耗を低減できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用ラゲージドアの開閉機構は、ラゲージドアヒンジトーションバーが車体側のブラケットに設けられた受け部から外れることを防止することができる、という優れた効果を有する。
【0015】
請求項2記載の本発明に係る車両用ラゲージドアの開閉機構は、ラゲージドアヒンジトーションバーが前記溝を乗り越えることを防止できる、という優れた効果を有する。
【0016】
請求項3記載の本発明に係る車両用ラゲージドアの開閉機構は、ラゲージドアヒンジトーションバーが前記溝を乗り越えることをより一層防止できる、という優れた効果を有する。
【0017】
請求項4記載の本発明に係る車両用ラゲージドアの開閉機構は、ラゲージドアヒンジトーションバーが回動する際の摩擦抵抗及び磨耗を低減できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は図2のラゲージドアの開閉機構におけるラゲージドアヒンジトーションバー外れ防止機構を示す側面図であり、(B)は(A)における受け部の拡大図である。
【図2】ラゲージドアの開閉機構を示す側面図である。
【図3】ラゲージドアの開閉機構を示す拡大斜視図である。
【図4】ラゲージドアの開閉機構を備えた車両を示す斜視図である。
【図5】(A)はヒンジリンク18の回転接線方向Y1を示すラゲージドアの開閉機構の側面図であり、(B)はヒンジリンク18の回転接線方向Y1とラゲージドアヒンジトーションバー20の外れ方向Y2とを示すラゲージドアの開閉機構の側面図である。
【図6】(A)及び(B)は対比例に係る受け部を示す側面図である。
【図7】受け部がラゲージドアヒンジトーションバーから受ける力の向きが示された受け部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図4を用いて、本発明の実施形態に係る車両用ラゲージドアの開閉機構について説明する。なお、車両前後方向前方側を矢印FRで示し、車幅方向外側を矢印OUTで示し、車両上下方向上側を矢印UPで示す。先ず、本実施形態に係る車両用ラゲージドアの開閉機構につい説明し、次いで本発明の要部であるラゲージドアヒンジトーションバーの外れ防止機構について説明する。
【0020】
(ラゲージドアの開閉機構)
図3及び図4図に示されるように、ラゲージドアの開閉機構10は、ラゲージルーム64と車室外側とを開閉可能に隔成するラゲージドア12と、ラゲージドア12を支えるヒンジアーム14と、該ヒンジアーム14と車体とを繋ぐ左右一対のヒンジサポート16と、を備えている。また、ラゲージドアの開閉機構10は、捻り力によってラゲージドア12を開口方向に付勢するラゲージドアヒンジトーションバー20と、該捻り力をヒンジアーム14に伝達するためのヒンジリンク18と、を備えている。さらに、ラゲージドアの開閉機構10は、ラゲージドアヒンジトーションバー20を軸支するブラケット22を備えている。以上の6つの部品を主要な要素として、ラゲージドアの開閉機構10が構成されている。
【0021】
以下に、上述したラゲージドアの開閉機構10を構成する各々の部品について説明する。また、ラゲージドアの開閉機構10を構成する各々の部品の形状等については、ラゲージドア12が開扉状態の各々の部品の形状等について説明する。
【0022】
図4に示されるように、ラゲージドア12は、以下に説明するヒンジアーム14に支持されており、車体のキャビン後方に形成されたラゲージルーム64と車室外側とを開閉可能に隔成する。なお、図示は省略するが、ラゲージドア12にはリアスポイラーやブレーキランプ等が取付けられている。
【0023】
図2に示されるように、ヒンジアーム14は側面視で車両上方側が開口された略C字状に形成されている。具体的には、ヒンジアーム14は、車両前後方向に延在する第1アーム部14Aと、第1アーム部14Aの後端部から第1湾曲部14Cを介して車両上方側に延在する第2アーム部14Dと、を備えている。また、第2アーム部の上端部は、ラゲージドア12に接合される接合部14Eを備えている。さらに、ヒンジアーム14は、第1アーム部14Aの前端部から車両下側から上側に傾斜して延在する第3アーム部14Gを備えている。また、第3アーム部14Gの前端部には、ラゲージドア12を開閉可能に回動するためのヒンジ中心14Hが設けられている。さらに、第1アーム部14Aには、以下に説明するヒンジリンク18を軸支するための軸支部14Bが設けられている。なお、ヒンジアーム14の軽量化を図ると共に強度と剛性を確保すべく、ヒンジアーム14は矩形断面の中空構造とされている。
【0024】
図2及び図3に示されるように、ヒンジサポート16は、車両下側に開口している略ハット型断面の部材が車両前後方向に延在することにより構成された基部16Aと、基部16Aの上側に設けられヒンジアーム14のヒンジ中心14Hが車両下側から上側へ突出するための開口部16Cと、を備えている。また、開口部16Cの右側と左側には、それぞれ前記ヒンジアーム14のヒンジ中心14Hを軸支する軸支部16D及び軸支部16Eとが設けられている。さらに、軸支部16Dには、ヒンジ中心14Hを軸支するための図示しない貫通孔が設けられており、軸支部16Eには、ヒンジ中心を軸支するための図示しない螺子孔が設けられている。該貫通孔及び螺子孔にボルトが挿通されることにより、ヒンジ中心14Hが軸支部16D及び軸支部16Eに軸支されている。なお、ラゲージドア12の開閉に伴いヒンジサポート16には大きな荷重が加わるが、本実施形態のヒンジサポート16には複数のビード16Bが形成され、該ヒンジサポート16の剛性が確保されている。
【0025】
ヒンジリンク18は、一方の端部が上述したヒンジアーム14の軸支部14Bを跨いで軸支され、他方の端部が以下に説明するラゲージヒンジトーションバー20を軸支する軸支部とされている。その結果、ヒンジリンク18は、後方視で略Y字状の形状とされている。具体的には、ヒンジリンク18は、一方の端部が上記ヒンジアーム14の第1アーム部14Aに設けられた軸支部14Bに軸支された一対のリンク基部18A及びリンク基部18Bを備えている。また、ヒンジリンク18は、リンク基部18Aの他方の端部とリンク基部18B他方の端部とを繋ぐ第1パネル18Cと、第1パネル18Cの下面から車両前後方向に延在する第2パネル18Dと、を備えている。さらに、第2パネルの先端には、以下に説明するラゲージドアヒンジトーションバー20の第4延在部20Eを軸支するための溝状の軸支部18Eが形成されている。
【0026】
図3に示されるように、ラゲージドアヒンジトーションバー20は1本の鋼棒に曲げ加工が施されることにより形成されている。具体的には、ラゲージドアヒンジトーションバー20は、車幅方向に延在する基部20Aと、基部20Aの右側端部から屈曲して車両後方から前方に掛けて車両下側から上側に傾斜して延在する第1延在部20Bと、を備えている。また、ラゲージドアヒンジトーションバー20は、以下に説明するブラケット22の受け部30に軸支されかつ第1延在部20Bの端部から屈曲して車両幅方向右側に延在する第2延在部20Cと、第2延在部20Cの右側の端部から屈曲して車両前方から後方に掛けて車両上側から下側に傾斜して延在する第3延在部20Dと、を備えている。更に、ラゲージドアヒンジトーションバー20は、上記ヒンジリンク18の軸支部18Eに軸支されかつ第3延在部20Dの端部から車幅方向右側に延在する第4延在部20Eと、第4延在部20Eの右側の端部から屈曲して車両後方から前方に掛けて車両下側から車両上側へ延在する第5延在部20Fを備えている。また、ラゲージドアヒンジトーションバー20は、以下に説明するブラケット22の受け部32に軸支されかつ第5延在部20Fの前端部から車幅方向右側に延在する第6延在部20Gを備えている。
【0027】
また、ラゲージドアヒンジトーションバー20は、基部20Aの左側の端部から車両前方に屈曲している屈曲部20Hを介して車幅方向左側に延在しかつ以下に説明するブラケット22の軸支部28に軸支される第7延在部20Iを備えている。更に、ラゲージドアヒンジトーションバー20は、第7延在部20Iの車幅方向左側の端部から屈曲して車両前方から後方に掛けて車両上方から下方に傾斜して延在する第8延在部20Jと、ボディーパネルの係止部80に係止されかつ第8延在部20Jの後端部から車幅方向左側に延在する第9延在部20Kと、を備えている。
【0028】
図2及び図3に示されるように、ブラケット22はヒンジサポート16と一体で構成されており、またブラケット22は車両前後方向に延在する一対の板材の前端部及び後端部に軸支部及び受け部としての切りかきが形成されることにより構成されている。具体的には、ブラケット22は、ヒンジサポート16の基部16Aの車幅方向左側の端部から車両前後方向に延在するブラケット基部24と、ヒンジサポート16の基部16Aの車幅方向右側の端部から車両前後方向に延在するブラケット基部26と、を備えている。また、ブラケット基部24及びブラケット基部26の前端部には、上述したラゲージドアヒンジトーションバー20の第7延在部20Iを軸支するための溝状の軸支部28がそれぞれ形成されている。また、ブラケット基部24及びブラケット基部26の後端部には、ラゲージドアヒンジトーションバー20の第2延在部20C及び第6延在部20Gを軸支するための受け部30及び受け部32がそれぞれ形成されている。なお、本実施形態ではブラケット22がヒンジサポート16と一体で構成されている例について説明したが、ブラケット22とヒンジサポート16とをそれぞれ別体の構成としても良い。
【0029】
以上説明した、ブラケット22と一体で構成された2つのヒンジサポート16がラゲージルーム64の上方かつ車幅方向右側と左側の車体にそれぞれ取付けられる。次いで、ラゲージドア12が取付けられた車幅方向右側のヒンジアーム14のヒンジ中心14Gが車幅方向右側のヒンジサポート16の軸支部16D,16Eに取付けられる。同様に、車幅方向左側のヒンジアーム14のヒンジ中心14Gが車幅方向右側のヒンジサポート16の軸支部16D,16Eに取付けられる。その結果、ラゲージドア12は開扉位置から閉扉位置まで回動可能となる。
【0030】
次に、ラゲージドアヒンジトーションバー20の第2延在部20C及び第6延在部20Gが車幅方向右側のブラケット22の受け部30及び受け部32に軸支され、第7延在部20Iが車幅方向左側のブラケット22の軸支部28に軸支される。そして、第4延在部20Eがヒンジリンク18の軸支部18Eに軸支される。そして更に、第8延在部20Jが矢印F方向に加勢された状態で第9延在部20Kがボディーパネルの係止部80に係止されることで、ラゲージヒンジトーションバーに捻り力が生じる。この捻り力をヒンジリンク18を介してヒンジアーム14に伝えることにより、ヒンジアーム14がラゲージドア12の開扉状態を保持している。なお、本実施形態では図3に示されるように、もう1本のラゲージドアヒンジトーションバー20が車幅中心を対称軸として左右略対称に取付けられている。
【0031】
(ラゲージドアヒンジトーションバー外れ防止機構)
次に本発明の要部であるラゲージドアヒンジトーションバーの外れ防止機構が適用されたブラケット22の受け部30について説明する。なお、受け部30と受け部32との主要な構成は同一であるため、以下受け部30について説明し、受け部32についての説明は省略する。
【0032】
図1(A)に示されるように、ブラケット22の後端部には、側面視で車両後方に開口しU字形状とされた受け部30が設けられている。具体的には、受け部30は、車両前後方向に延在する下辺部40と、下辺部40の前端部から車両上側に湾曲した湾曲部42と、湾曲部42の上端部から車両後方に延在する上辺部44と、を備えることにより、受け部30は車両後方に開口したU字形状となっている。また、下辺部40は、車両前方から後方にかけて車両上方から下方に傾斜している。さらに、受け部30の閉止端である湾曲部42は、ラゲージヒンジトーションバー20が軸支される軸支位置Cとなっている。
【0033】
また、本実施形態では、ラゲージドアヒンジトーションバー20を軸支しかつラゲージドアヒンジトーションバー20が回動する際の摩擦抵抗及び磨耗を低減するブッシュ70が、受け部30におけるラゲージドアヒンジトーションバー20が軸支される位置Cに設けられている。そのため、下辺部40はブッシュ70の下辺部40Aとブラケット基部24の下辺部40Bとに分かれているが、下辺部40Aと下辺部40Bとの接続部には極力段差が生じないようになっている。また、下辺部40と同様に、上辺部44はブッシュ70の上辺部44Aとブラケット基部24の下辺部44Bとに分かれているが、下辺部44Aと下辺部44Bとの接続部には極力段差が生じないようになっている。なお、ブッシュ70には銅系の材料が用いられているが、その他鋼系の材料のブッシュや、自己潤滑性に優れている樹脂系材料のブッシュが用いられていても良い。
【0034】
次に、受け部30に形成されたラゲージドアヒンジトーションバーの外れ防止機構としての溝50について説明する。
【0035】
図1(B)に示されるように、溝50は、受け部30の下辺部40でかつラゲージドアヒンジトーションバー20の軸支位置Cよりも車両後方側に設けられている。また、溝50は、受け部30の下辺部40から車両下側に延在する後壁部52と、後壁部52の下端部から車両前方に延在する底壁部54と、底壁部54の前端部から車両上側に延在する前壁部56と、を備えている。そのため、溝50は受け部30の下辺部40を側面視で矩形状に切り欠いた角溝形状となっている。
【0036】
また、溝50の後壁部52では、その高さ方向の中間部にてラゲージドアヒンジトーションバー20が接触するようになっている。以下、接触している部分を「接触部52A」という。本実施形態では、該接触部52Aがラゲージドアヒンジトーションバー20の回動中心Xからヒンジリンク18の回転接線方向Y1に引いた線lよりも車両上方側に設けられている。また、該接触部52Aは後壁部52の上端部52Bに設けられている。なお、ヒンジリンク18の回転接線方向Y1とは、図5(A)に示されるように、ラゲージドアヒンジトーションバー20の軸支位置Cに軸支されかつラゲージドアが開扉状態における、ヒンジリンク18の軸支部18Eの回転接線方向Y1のことをいう。また、後壁部52の上端部52Bとは、図1(B)に示されるように、後壁部52の湾曲部52Cを除いた上端部52Bのことをいう。
【0037】
さらに、図5(B)に示されるように、本実施形態では、ラゲージヒンジトーションバー20の組み付けを容易にすべく、ヒンジリンク18の回転接線方向Y1とラゲージドアヒンジトーションバー20の外れ方向Y2とが略同一な構成となっている。なお、ラゲージドアヒンジトーションバー20の外れ方向Y2とは、ラゲージドアヒンジトーションバー20が軸支位置Cに軸支されかつラゲージドアが開扉状態における、ラゲージドアヒンジトーションバー20の回動中心Xから、ヒンジリンク18の軸支部18Eへ向けた方向Y2のことをいう。
【0038】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0039】
ラゲージドア12が開扉状態となっている場合、ラゲージドアヒンジトーションバー20の第4延在部20Eがラゲージドア12を開扉方向に付勢する力の反力を受けて、第2延在部20Cには車両下方向の力が生じる。そのため、荷物等がラゲージドアヒンジトーションバー20に引っ掛かり、第2延在部20Cが受け部30から外れる方向(車両後方)に引っ張られると、第2延在部は受け部30の下辺部40を車両下方向に付勢しながら、受け部30から外れる方向(車両後方)に移動する。
【0040】
ここで、図6(A)に示されるように、ラゲージドアヒンジトーションバーの外れ防止機構としての溝50が形成されていない受け部300の場合、荷物等がラゲージドアヒンジトーションバー20に引っ掛かり、第2延在部20Cが受け部300から外れる方向(車両後方)に引っ張られると、ラゲージドアヒンジトーションバー20の第2延在部20Cが受け部300から外れてしまうことが考えられる。
【0041】
しかしながら、本実施形態では図2に示されるように、ラゲージドアヒンジトーションバー20が受け部30から外れる方向に移動すると、ラゲージドアヒンジトーションバー20が溝50に嵌合する。その結果、ラゲージドアヒンジトーションバー20が受け部30から外れることを防止できる。
【0042】
また、本実施形態では、上記接触部52Aがラゲージドアヒンジトーションバー20の回動中心Xからヒンジリンク18の回転接線方向に引いた線lよりも車両上方側に設けられている。そのため、ラゲージドアヒンジトーションバー20が溝50に嵌合した状態において、更にラゲージドアヒンジトーションバー20が外れる方向に荷重が加わったとしても、その荷重の溝50を乗り越える方向への分力を効率よく受け止めることができる。その結果、ラゲージドアヒンジトーションバー20が溝50を乗り越えることを防止できる。
【0043】
さらに、本実施形態では、上記接触部52Aが後壁部52の上端部52Bに設けられている。そのため、ラゲージドアヒンジトーションバー20の回動中心Xからヒンジリンク18の回転接線方向Y1に引いた線に対して、該接触部52Bを最も遠くに設定することができる。従って、ラゲージドアヒンジトーションバー20が外れる方向への荷重の前記溝50を乗り越える方向への分力を最も効率よく受け止めることができ、ラゲージドアヒンジトーションバー20が前記溝50を乗り越えることをより一層防止できる。
【0044】
また、本実施形態では、ブッシュ70が軸支位置Cに設けられているため、受け部30とラゲージヒンジトーションバー20とが摺動することによる摩擦抵抗を低減できると共に、受け部やラゲージヒンジトーションバー自体が磨耗することを防止できる。
【0045】
さらに、本実施形態では、ヒンジリンク18の回転接線方向Y1とラゲージドアヒンジトーションバー20の外れ方向Y2とが略同一な構成となっている。このようなレイアウトはラゲージドアヒンジトーションバー20の組み付け性は良いが、ラゲージドアヒンジトーションバー20が受け部30から外れやすいレイアウトとなることが多い。しかしながら、本実施形態では上述した溝50が設けられているため、ラゲージドアヒンジトーションバー20が受け部30から外れることを防止できると共に、ラゲージドアヒンジトーションバー20の組み付けを容易にすることができる。なお、ラゲージドアヒンジトーションバー20が受け部30から外れることを防止するために、図6(B)のようなフックFを設けることが考えられるが、この場合ラゲージドアヒンジトーションバー20が該フックFに引っ掛かりラゲージドアヒンジトーションバー20の組み付け性が悪化することが考えられる。
【0046】
また、図7に示されるように、ラゲージドアヒンジトーションバー20が溝50に嵌合した状態において、ラゲージドア12を開扉状態から閉扉状態にすると、受け部30がラゲージドアヒンジトーションバー20から受ける力の方向がF1の向きからF2の向きへ変化する。その結果、溝50に嵌合しているラゲージドアヒンジトーションバー20は本来軸支されている軸支位置Cに戻る。従って、次にラゲージドア12を開扉状態にするときには、ラゲージドアヒンジトーションバー20が本来軸支されている軸支位置Cにて回動するため、設定どおりのラゲージドアヒンジトーションバー20の捻り力を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、ラゲージドアヒンジトーションバーの外れ防止機構としての溝50を受け部30及び受け部32に設けた例について説明してきたが、該溝50が受け部30又は受け部32のどちらか一方に設けられていれば、ラゲージドアヒンジトーションバーが受け部から外れてしまうことを防止できる。
【0048】
また、本実施形態では、ヒンジリンク18を介してラゲージドアヒンジトーションバー20の捻り力をヒンジアーム14に伝達する例について説明したが、ラゲージドアヒンジトーションバー20を直接ヒンジアーム14に取付けた構成としても良い。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 ラゲージドアの開閉機構
12 ラゲージドア
14 ヒンジアーム
16 ヒンジサポート
18 ヒンジリンク
20 ラゲージドアヒンジトーションバー
22 ブラケット
30 受け部
32 受け部
40 下辺部
40A 下辺部
40B 下辺部
50 溝
52 後壁部
52A 接触部
52B 上端部
64 ラゲージルーム
70 ブッシュ
C 軸支位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラゲージドアによって開閉されるラゲージルームの上方側の車体に取付けられたヒンジサポートと、
前記ラゲージドアと前記ヒンジサポートとを連結するヒンジアームと、
前記ヒンジサポートと前記ヒンジアームとの間に介装され、前記ヒンジアームを前記ラゲージドアが開口する方向に付勢するラゲージドアヒンジトーションバーと、
前記ヒンジサポートに設けられると共に、車両後方側に開口した側面視でU字状の受け部を有し、当該受け部の閉止端に前記ラゲージドアヒンジトーションバーが軸支されるブラケットと、
前記受け部の下辺部でかつ前記ラゲージドアヒンジトーションバーの軸支位置よりも車両後方側に設けられ、前記ラゲージドアヒンジトーションバーが嵌合可能な溝と、
を有する車両用ラゲージドアの開閉機構。
【請求項2】
前記ラゲージドアヒンジトーションバーは、前記ヒンジアームに取付けられたヒンジリンクと前記受け部との間に介装されており、かつ前記ラゲージドアヒンジトーションバーと前記溝の後壁部との接触部が、前記ラゲージドアヒンジトーションバーの回動中心から前記ラゲージドアヒンジトーションバーの捻り力を前記ヒンジアームに伝達するヒンジリンクの回転接線方向に引いた線よりも車両上方側に設けられている請求項1記載の車両用ラゲージドアの開閉機構。
【請求項3】
前記接触部が前記溝の後壁部の上端部に設けられている請求項2記載の車両用ラゲージドアの開閉機構。
【請求項4】
前記ラゲージドアヒンジトーションバーを軸支しかつ前記ラゲージドアヒンジトーションバーが回動する際の摩擦抵抗及び磨耗を低減するU字状のブッシュが前記受け部の前記ラゲージドアヒンジトーションバーの軸支位置に設けられている請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の車両用ラゲージドアの開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−35451(P2013−35451A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174126(P2011−174126)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】