説明

車両用ラジエータのシール構造

【課題】冷却風風上のインタークーラで高温の圧縮空気との熱交換により熱せられた冷却風の温度を下げ、風下のラジエータの冷却水を効率良く冷却する。
【解決手段】圧縮空気を流通させるパイプ部分6a、7aとその先端に形成された拡散部分6b、7bとをそれぞれ有して対向する入口ヘッダー6と出口ヘッダー7との間に、入口ヘッダー6から出口ヘッダー7へ上記圧縮空気を通過させるとともに交差方向に流れる冷却風との間で熱交換を行うコア部4を配置してなるインタークーラ1と、このインタークーラ1の冷却風風下に配列され、冷却水と上記冷却風との間で熱交換を行うラジエータ2とを設け、インタークーラ1とラジエータ2との間の冷却風通路の周囲をシール部材17で包囲して風洞とした車両用ラジエータのシール構造において、インタークーラ1の入口ヘッダー6のパイプ部分6aの風下の範囲にかけて、シール部材17を取り除いて通気口18を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの前面にラジエータ、インタークーラなどの熱交換器を直列に搭載する車両において、ラジエータとインタークーラとの間のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるインタークーラは、過給器で圧縮されて高温となった圧縮空気を内部に流通させる際に熱交換を行い、圧縮空気を冷却して体積を低減し、より多くの圧縮空気をエンジンのインテークマニホールドへ送り込んでいた。
【0003】
インタークーラ1は、図6に示すように、中空に形成した扁平管4aと板材を波形に曲成したアウターフィン4bとを交互に多数積層して、その両端を一対のエンドプレート5に貫装して形成したコア部4を有している。この各エンドプレート5には、圧縮空気を導入する入口ヘッダー6と圧縮空気を送出する出口ヘッダー7とがそれぞれ溶接またはかしめにて取り付けられ、インタークーラ1を形成している。
入口ヘッダー6から流入した圧縮空気は、各扁平管4aに分岐して通過する際にアウターフィン4bの間を通る冷却風によって冷却され、出口ヘッダー7で合流してインテークマニホールド(図示せず)へ送られる。
【0004】
ラジエータ2は、図6、図7に示すように、エンジンで加熱された冷却水を冷却するために車両に搭載され、扁平管8aとアウターフィン8bとを交互に多数積層して、その両端を一対のエンドプレート9に貫装して形成したコア部8を有している。この各エンドプレート9には、アッパータンク11とロアタンク12とがそれぞれ取り付けられ、冷却水をコア部8に導入し、コア部8から送出している。
【0005】
通常、車両のエンジンの前方(冷却風風上)には冷却風を吸引するファン3が置かれ、その前方(冷却風風上)にはエンジンの冷却水を冷却するラジエータ2が配置され、圧縮空気によって高温となるインタークーラ1はラジエータ2より前方(冷却風風上)に搭載されていた(図7)。また、ラジエータ2とファン3との間には導風のため周囲を包囲するファンシュラウド16が設けられている。
【0006】
ファン3には、エンジンに連結してその駆動力によって常に回転させるもの、バイメタルとオイルとを用い、ファン3の前面温度に感応して高気温時のみファンクラッチを接続して回転させるもの、あるいは、電子制御式ファンクラッチまたは電動モータを備え、ラジエータ2の冷却水温度を感知してファン3を駆動させるものがある。
これらのファン3では、車両前面の冷却風取入口から冷却風を吸い込み、インタークーラ1およびラジエータ2のそれぞれのコア部4、8を通過させて熱交換を行っていた。
【0007】
近年では、排気ガス規制の強化や燃費向上のために、エンジンの過給圧が上がる傾向にあり、それに伴い過給器で圧縮された圧縮空気の温度も上昇している。
これに対応するために、インタークーラ1の大型化や、コア部4の扁平管4aやアウターフィン4bの改良による熱交換効率の向上などの改良がされている。
【0008】
また、各熱交換器を通過する冷却風の風量を上げることも熱交換性能の向上につながる。
図7、図8中の実線矢印は強い風の流れを示し、破線矢印は弱い風の流れを示している。
インタークーラ1とラジエータ2との間にシール部材を設けない従来の装置では、停車時や低速走行時には、図7に示すようにファン3がインタークーラ1、ラジエータ2側からエンジン側に吸い込む冷却風が、車両の走行などにより車両内に導入されて各熱交換器の周辺を流れる走行風よりも強いため、インタークーラ1のコア部4を通過しない走行風がインタークーラ1とラジエータ2との間から吸い込まれてラジエータ2に流れる現象(インタークーラバイパス風)が発生する。
その結果、インタークーラ1を通過する冷却風の量が減少して、インタークーラ1の熱交換性能が低下していた。
【0009】
また、高速走行時には、図8に示すように、ファン3が吸い込む冷却風よりも走行風が強いため、インタークーラ1を通過した冷却風がラジエータ2を通過せず、インタークーラ1とラジエータ2との間から流れ出る現象(ラジエータバイパス風)が発生する。
その結果、ラジエータ2を通過する冷却風の量が減少して、ラジエータ2の熱交換性能が低下していた。
【0010】
そこで、効率良く冷却風を流すために、インタークーラ1とラジエータ2との間の冷却風通路の周囲をシール部材17によって包囲し、冷却風の通路を形成することで熱交換性能を向上させようとするものがあった(特許文献1)。
また、特許文献2には、冷却風の流れ方向に直列に配置されたコンデンサとラジエータのシール構造において、平板の一端を巻回して管状に成形して、この平板部分をシール部材とし、管状部分をコンデンサのヘッダーとしたことで、軽量化や部品点数を削減することができるものが記載されている。
さらに、特許文献3には、軟質樹脂フィルムを幅広環状に形成した(腹巻き状)シール部材によって、直列に配列した第一熱交換器、第二熱交換器、ファンシュラウドの側周を包囲したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−12599号公報
【特許文献2】特許第3336915号公報
【特許文献3】特開2006−170502号公報
【0012】
このように、インタークーラ1とラジエータ2との間の冷却風通路の全側周をシール部材17によって包囲することで(図9)、インタークーラ1を通過した冷却風を全てラジエータ2へ流すことができる(図10)。
しかし、低速時でも高速時でも登坂走行などの高負荷走行時には、インタークーラ1の入口ヘッダー6の入口パイプ部分6a付近A部では、圧縮空気の温度がラジエータ冷却水の温度(90〜100℃)以上となる。そのため、インタークーラ1を通過して熱せられた冷却風がそのまま風下のラジエータ2へ流れると、ラジエータ2の一部分では冷却水が放熱できないことになり、むしろ冷却風に加熱されて温度が上昇するおそれもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、車両に搭載されるラジエータにおいて、冷却風風上のインタークーラで高温の圧縮空気との熱交換により熱せられた冷却風の温度を下げ、冷却水を効率良く冷却することのできるラジエータのシール構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、過給器で圧縮された圧縮空気を流通させるパイプ部分とその先端で大口に形成された拡散部分とをそれぞれ有して対向する入口ヘッダーと出口ヘッダーとの間に、上記入口ヘッダーから上記出口ヘッダーへ上記圧縮空気を通過させるとともに交差方向に流れる冷却風との間で熱交換を行うコア部を配置してなるインタークーラと、このインタークーラの冷却風風下に配列され、エンジンの冷却水と上記冷却風との間で熱交換を行うラジエータと、このラジエータの冷却風風下に配列され、上記冷却風を吸引するファンとを設け、上記インタークーラと上記ラジエータとの間の冷却風通路の周囲をシール部材で包囲して風洞とした車両用ラジエータのシール構造において、上記インタークーラの入口ヘッダーのパイプ部分の風下の範囲にかけて、シール部材を取り除いて通気口を形成したことを特徴とする。
【0015】
第2の発明に係る車両用ラジエータのシール構造は、上記通気口を、上記冷却風通路の温度によって、高温下では開放される可動シールで塞いだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、上記インタークーラと上記ラジエータとの間の冷却風通路の周囲をシール部材で包囲して風洞とした車両用ラジエータのシール構造において、上記インタークーラの入口ヘッダーのパイプ部分の風下の範囲にかけて、シール部材を取り除いて通気口を形成したことにより、一般道路での登坂走行など低速走行高負荷時には、インタークーラを通過していない冷えた空気が通気口から流れ込み、インタークーラを通過して熱せられた冷却風と混じり合うことで温度を下げ、風下のラジエータにおいても良好な熱交換性能を得ることができる。
【0017】
また、高速道路での登坂走行など高速走行高負荷時には、インタークーラのパイプ部分付近を通過して特に熱せられた冷却風が通気口より外部に流出するため、ラジエータにおける冷却効率を低下させることなく、良好な熱交換性能を得ることができる。
これらの結果、ファンの前面温度やラジエータの冷却水温度を感知して駆動、停止させるタイプのファンでは、稼働時間を減少させることができ、車両の燃費を向上させることができる。
【0018】
第2の発明によれば、上記通気口を、上記冷却風通路の温度によって、高温下では開放される可動シールで塞いだことにより、冷却風の温度が低い低負荷走行時には通風孔が密閉されるため、インタークーラを通過した冷却風が全てラジエータへ流れ、一定した十分な風量で低温域での熱交換効率が高まるとともに、高負荷走行時に冷却風の温度が上昇すると(75〜100℃の間の所定の温度)、可動シールが開放されて冷却風が通気口から出入りできるようになる。
これにより、低速走行高負荷時にはインタークーラを通過していない冷えた空気が通気口から流れ込み、高速走行高負荷時にはインタークーラのパイプ部分付近を通過して特に熱せられた冷却風が通気口より外部に流出するため、ラジエータにおける良好な熱交換性能を得ることができる。
このため、ファンの前面温度やラジエータの冷却水温度を感知して駆動、停止させるタイプのファンでは、稼働時間をさらに減少させることができ、車両の燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るラジエータのシール構造を示す正面図である。
【図2】同ラジエータのシール構造を示す側方図(低速走行高負荷時)である。
【図3】同ラジエータのシール構造を示す側方図(高速走行高負荷時)である。
【図4】本発明の別形態に係るラジエータのシール構造を示す平面説明図であり、(a)は低負荷時、(b)は高負荷時である。
【図5】本発明の別形態に係る他のラジエータのシール構造を示す平面説明図であり、(a)は低負荷時、(b)は高負荷時である。
【図6】従来のラジエータのシール構造を示す斜視図である。
【図7】同ラジエータのシール構造を示す側方図(低速走行時)である。
【図8】同ラジエータのシール構造を示す側方図(高速走行時)である。
【図9】シール部材を設けた従来のラジエータのシール構造を示す正面図である。
【図10】同ラジエータのシール構造を示す側方図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る車両用ラジエータのシール構造について説明する。
本発明の実施形態においては、図2、図3に示すように、車両の前面からエンジン(図示せず)までの間に、インタークーラ1、ラジエータ2およびファン3が直列に配置されている。
【0021】
インタークーラ1は、図1に示すように(図6も参照)、中空の扁平管4aと波板状のアウターフィン4bとを縦方向に交互に多数積層し、左右の両端を一対の平板状のエンドプレート5に貫装して固定したコア部4を有している。このコア部4では、過給器(図示せず)で圧縮された圧縮空気が扁平管4a中を流れ、冷却風がアウターフィン4bを交差方向に流れて、熱交換により圧縮空気が冷却される。
【0022】
コア部4の両端では、エンドプレート5、5に入口ヘッダー6および出口ヘッダー7が取り付けられる。
入口ヘッダー6は、圧縮空気を導入する入口パイプ部分6aと、この入口パイプ部分6aの先端をエンドプレート5に略一致する大口に形成した拡散部分6bとからなる。エンジンルームのスペースを考慮して、コア部4に入口ヘッダー6を取り付けた際に、入口パイプ部分6aが風下側を向くように屈曲しておく。
入口ヘッダー6は、拡散部分6bをエンドプレート5に一致させて、溶接またはかしめをすることでコア部4に取り付けられる。
【0023】
反対端のエンドプレート5には、入口ヘッダー6と左右対称に形成され、出口パイプ部分7aおよび合流部分7bを有する出口ヘッダー7が溶接またはかしめにて取り付けられる。コア部4で冷却された圧縮空気は出口ヘッダー7の合流部分7bで合流して出口パイプ部分7aからインテークマニホールド(図示せず)へ送出される。
【0024】
ラジエータ2は、図1に示すように(図6も参照)、中空の扁平管8aと波板状のアウターフィン8bとを横方向に交互に多数積層し、上下の両端を一対の平板状のエンドプレート9に貫装して固定したコア部8を有している。このコア部8では、エンジンで加熱された冷却水が扁平管8a中を流れ、冷却風がアウターフィン8bを交差方向に流れて、熱交換により冷却水が冷却される。
また、コア部8の横方向両端にはサイドプレート10を設けて保護している。
【0025】
コア部8の上下端では、エンドプレート9にアッパータンク11およびロアタンク12が取り付けられる。
アッパータンク11は、冷却水を導入する冷却水入口パイプ11aと、この冷却水入口パイプ11aの先端をエンドプレート9に略一致する大口に形成した拡散部分11bとからなる。エンジンルームのスペースを考慮して、コア部8にアッパータンク11を取り付けたときに、冷却水入口パイプ11aが風下側を向くように屈曲しておく。
アッパータンク11は、拡散部分11bをエンドプレート9に一致させて、溶接またはかしめをすることでコア部8に取り付けられる。
【0026】
下端側のエンドプレート9には、アッパータンク11と略同形に形成され、冷却水出口パイプ12aおよび合流部分12bを有するロアタンク12が溶接またはかしめにて取り付けられる。コア部8で冷却された冷却水はロアタンク12の合流部分12bで合流して冷却水出口パイプ12aから再びエンジンへ送出される。
【0027】
ラジエータ2の両側からは、一対のインタークーラブラケット13がそれぞれ前方に突設され、インタークーラ1から下方に突出した被保持部14を保持固定している。
また、ラジエータ2両側のサイドプレート10からは、ラジエータ2を車両に搭載するための一対の車両取付ブラケット15もそれぞれ側方に突設されている。
【0028】
ファン3は、インタークーラ1およびラジエータ2の風下に配設され、ラジエータ2とファン3との間には、導風のためにファン3の側周を取り囲むファンシュラウド16が設置されている。
このファン3が回転することにより、車両の前側に設けられた冷却風取入口から外気を取り入れ、インタークーラ1のコア部4、ラジエータ2のコア部8を通過してエンジン側へと流れる冷却風を発生させる。
【0029】
このようなファン3としては、エンジンに連結してその駆動力によって常に回転させるもの、バイメタルとオイルとを用い、ファン3の前面温度に感応して高気温時のみファンクラッチを接続して回転させるもの、あるいは、電子制御式ファンクラッチまたは電動モータを備え、ラジエータ2の冷却水温度を感知してファン3を駆動させるものから選択することができる。
【0030】
ファンシュラウド16は、ラジエータ2のコア部8の後背面に当接する開口部と、ファン3の前側半分を収容する開口部とを有する筒形に形成され、風下側へと次第に縮径するとともに、四角筒から円筒に連続的に変化する形状とする。
【0031】
インタークーラ1とラジエータ2との間の冷却風通路は、図1の破線で示すシール部材17によってその周囲を包囲し、風洞を形成している。
シール部材17には、使用環境によって、各種ゴム製のもの、樹脂製のもの、金属製のものなどを使用することができる。特に耐久性が必要な環境では金属製のプレートを用いるのが望ましい。
【0032】
シール部材17の取付箇所は冷却風通路の略全周であるが、インタークーラ1の入口ヘッダー6の入口パイプ部分6aの風下ではシール部材17を取り除いて通気口18を開口している。通気口18を設ける範囲としては、上記入口パイプ部分6aの根元部(拡散部分6bとの連結部分)の1〜5倍の寸法とする。
通気口18の位置は、入口パイプ部分6aの位置および入口パイプ部分6aによって高温になる位置に合わせて変更してよく、例えば、入口パイプ部分6aがラジエータ2の上部や下部に形成される場合にはその風下側に通気口18を形成し、また、入口パイプ部分6aがラジエータ2の角部に形成される場合には角部のシール部材17を縦横に亘って取り除いて形成しても良い。
【0033】
これにより、本実施形態のシール構造では、一般道路の登坂走行時などの低速走行高負荷時には、図2に示すように、冷却風が走行風よりも強いため、通気口18からインタークーラバイパス風が部分的に流れ込み、入口パイプ部分6a付近を通過して最も高温になった冷却風と混じり合うことで冷却風の温度を下げるので、ラジエータ2でも良好な熱交換性能を得ることができる。
このとき、冷却風の冷却に必要な分しかインタークーラバイパス風が発生しないため、インタークーラ1の熱交換効率を低下させることがない。
【0034】
また、高速道路の登坂走行時などの高速走行高負荷時には、図3に示すように、冷却風よりも走行風が強いため、入口パイプ部分6a付近を通過して最も高温になった冷却風が通気口18からラジエータバイパス風として外部に流出するので、ラジエータ2における冷却効率を低下させることなく、良好な熱交換性能を得ることができる。
このとき、冷却風の放熱に必要な分しかラジエータバイパス風が発生しないため、冷却風の不足によりラジエータ2の熱交換効率を低下させることがない。
【0035】
これらの結果、ファン3の前面温度やラジエータ2の冷却水温度を感知して駆動、停止させるタイプのファン3では、稼働時間を減少させることができ、車両の燃費を向上させることができる。
【0036】
本発明の実施形態の一例として、インタークーラ1の入口ヘッダー6の入口パイプ部分6aの風下に上記入口パイプ部分6aの根元部と略同じ寸法でシール部材17を取り除いて通気口18を設け、ラジエータ2前面の冷却風温度を測定した。
また、比較例として、インタークーラ1とラジエータ2の間の冷却風通路の全周をシール部材17で囲んだ場合(図9、図10)において、ラジエータ2前面の冷却風温度を測定した。
【0037】
その結果、比較例では、最も高温になる上記入口パイプ部分6aの風下付近では、高負荷走行時の冷却風温度が118℃であった。
これに対して、本発明の実施形態では、最も高温になる上記入口パイプ部分6aの風下付近でも、高負荷走行時の冷却風温度が82℃に抑えられた。
【0038】
<別形態>
別形態は、図4、図5に示すように、通気口18を75〜100℃で作動する可動シール19で塞いだことを特徴とする。
可動シール19には、例えば75〜100℃の間の所定の温度で作動するバイメタルなどの金属を使用する。
可動シール19は、図4のようにラジエータ2のサイドプレート10に一端を取り付け、または図5のようにインタークーラ1の入口ヘッダー6に一端を取り付けて、通気口18を隙間なく覆うようにし、その他の部分は拘束せずに自由に変形できるようにする。
【0039】
以下、例えば75℃で作動するバイメタルを用いた可動シール19を設置した場合について説明する。
負荷が少ない走行状態ではインタークーラ1の圧縮空気の温度が低く、インタークーラ1のコア部4を通過した冷却風の温度も75℃未満になっており、可動シール19は作動せず、他のシール部材17と同様に可動シール19によって通気口18が密閉される(図4(a)、図5(a))。
このため、インタークーラ1を通過した冷却風の全量がラジエータ2へ流れ、一定した十分な風量で低温域での熱交換効率が高まる。
【0040】
他方、登坂走行などの高負荷走行時には、圧縮空気の温度が高くなり、インタークーラ1のコア部4を通過した冷却風の温度も75℃以上となるため、可動シール19が作動して通気口18が開放される(図4(b)、図5(b))。
このため、上記実施形態と同様に、低速走行高負荷時にはインタークーラ1を通過していない冷えた空気が通気口18から流れ込み(インタークーラバイパス風)、高速走行高負荷時にはインタークーラ1の入口パイプ部分6a付近を通過して特に熱せられた冷却風が通気口より外部に流出するため(ラジエータバイパス風)、ラジエータ2における良好な熱交換性能を得ることができる。
【0041】
このように、冷却風の温度に応じて、通気口18の密閉状態と開放状態とを適宜切り替えるため、ファン3の前面温度やラジエータ2の冷却水温度を感知して駆動、停止させるタイプのファン3では、稼働時間をさらに減少させることができ、車両の燃費を向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 インタークーラ
2 ラジエータ
3 ファン
4 コア部
4a 扁平管
4b アウターフィン
5 エンドプレート
6 入口ヘッダー
6a パイプ部分
6b 拡散部分
7 出口ヘッダー
7a パイプ部分
7b 合流部分
8 コア部
8a 扁平管
8b アウターフィン
9 エンドプレート
10 サイドプレート
11 アッパータンク
11a 冷却水入口パイプ
11b 拡散部分
12 ロアタンク
12a 冷却水出口パイプ
12b 合流部分
13 インタークーラブラケット
14 被保持部
15 車両取付ブラケット
16 ファンシュラウド
17 シール部材
18 通気口
19 可動シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給器で圧縮された圧縮空気を流通させるパイプ部分とその先端で大口に形成された拡散部分とをそれぞれ有して対向する入口ヘッダーと出口ヘッダーとの間に、上記入口ヘッダーから上記出口ヘッダーへ上記圧縮空気を通過させるとともに交差方向に流れる冷却風との間で熱交換を行うコア部を配置してなるインタークーラと、
このインタークーラの冷却風風下に配列され、エンジンの冷却水と上記冷却風との間で熱交換を行うラジエータと、
このラジエータの冷却風風下に配列され、上記冷却風を吸引するファンとを設け、
上記インタークーラと上記ラジエータとの間の冷却風通路の周囲をシール部材で包囲して風洞とした車両用ラジエータのシール構造において、
上記インタークーラの入口ヘッダーのパイプ部分の風下の範囲にかけて、シール部材を取り除いて通気口を形成したことを特徴とする車両用ラジエータのシール構造。
【請求項2】
上記通気口を、上記冷却風通路の温度によって、高温下では開放される可動シールで塞いだことを特徴とする請求項1記載の車両用ラジエータのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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