説明

車両用ランプ装置

【課題】ランプ装置全体の大型化を防止できるとともに、ヒケの発生による見栄えの悪化を防止できる車両用ランプ装置を提供する。
【解決手段】レンズ15のリブ15cは、その少なくとも一部15c′がランプハウジング10への溶着方向cに対して交差する方向Fから押圧され、レンズ15の少なくとも一部のリブ15c′に対応する外面部分には、押圧治具21が係合する凹部15dが形成され、該凹部15dは、少なくともその一部が前記リブ15c′と重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ開口を有するランプハウジングと、該ランプハウジングにレンズ開口を覆うように配設されたレンズとを備えた車両用ランプ装置に関し、詳細にはレンズをランプハウジングに溶着により固定するようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のリヤランプ装置では、外観の向上を図る観点から、レンズを車体後端面から車体外側面に回り込むよう湾曲させる意匠としたり、また部品点数を低減する観点から、レンズをランプハウジングに熱溶着により一体に固定したりする場合がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、例えば、図9に示すように、レンズ30の外周部にリブ30aを突出形成し、該リブ30aを加熱して押圧治具31によりランプハウジング32に押圧することにより前記レンズ30をランプハウジング32に溶着固定するようにしている。
【0003】
ところで、前記レンズ30を車体外側面に回り込む構造とした場合には、押圧治具31の押圧方向Fをレンズ30の車内側リブ30a′と車外側リブ30aのそれぞれの溶着方向c,dの中間に位置するように設定している。この場合、車内側リブ30a′の溶着方向cに対して押圧方向Fが交差することから、レンズ30の押圧不良,ひいては溶着不良が生じるおそれがある。このような押圧不良を防止するために、レンズ30の車内側リブ30a′の押圧治具31との当たり面aを充分に確保する必要があり、それだけレンズ30のフランジ面bの寸法を大きく設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−191302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来のランプ装置のように、レンズのフランジ面を大きくすると、それだけランプ装置全体が大型化するという問題があり、各種ボディの意匠に制約が生じる。例えば、リヤランプ装置においてフランジ面寸法bを大きくすると、バックドア開口幅wが小さくなるという問題が生じる(図9参照)。ここで、フランジ面寸法を小さくするには、複数の押圧治具でそれぞれ押圧することが考えられるが、このようにするとコストが上昇する。
【0006】
また前記レンズにリブを突出形成する構造した場合には、レンズのリブに対応する外面部にヒケが生じ易く、見栄えが悪化するという問題がある。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、ランプ装置全体の大型化を防止できるとともに、ヒケの発生による見栄えの悪化を防止できる車両用ランプ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、レンズ開口を有する略容器状のランプハウジングと、該ランプハウジングの底部に装着されたランプバルブと、前記ランプハウジングにレンズ開口を覆うように配設されたレンズとを備え、該レンズの外周部に前記ランプハウジングに対向する溶着用リブを形成し、該リブを加熱して押圧治具により前記ランプハウジングに押圧することにより前記レンズをランプハウジングに溶着固定するようにした車両用ランプ装置であって、前記リブは、その少なくとも一部が前記ランプハウジングへの溶着方向に対して交差する方向から押圧され、前記レンズの前記少なくとも一部のリブに対応する外面部分には、前記押圧治具が係合する凹部が形成され、該凹部は、少なくともその一部が前記リブと重なっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るランプ装置によれば、溶着方向に対して交差する方向から押圧されるリブの外面部分に凹部を形成したので、レンズをランプハウジングに押圧する際に押圧治具が凹部に入り込むことにより、押圧治具の当たり面を拡大することができるとともに、レンズのずれを防止でき、これによりリブをランプハウジングに精度よく安定して押圧することができる。その結果、レンズの押圧治具との当たり面を小さくすることができ、それだけランプ装置全体を小型化でき、ひいては各種ボディの意匠上の制約をなくすことができる。
【0010】
また前記凹部の少なくとも一部が前記リブに重なるように形成したので、レンズにリブを形成したことにより生じるヒケの発生を防止することができ、見栄えの悪化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1による自動車の後部車体に配設されたリヤランプ装置の斜視図である。
【図2】前記リヤランプ装置の斜視図である。
【図3】前記リヤランプ装置の断面図(図2のIII-III断面図)である。
【図4】前記リヤランプ装置の断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記リヤランプ装置の断面図(図3のV-V線断面図)である。
【図6】前記リヤランプ装置の溶着部の断面図である。
【図7】前記リヤランプ装置の溶着工程図である。
【図8】本発明の実施例2よるリヤランプ装置の断面図である。
【図9】本発明の成立過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例1による車両用ランプ装置を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図7は、本発明の実施例1による自動車のランプ装置を説明するための図である。
【0014】
図において、1は自動車の後部車体を示しており、該後部車体1は、リヤドア開口2aが形成された左,右のクォータパネル2,2と、該左,右のクォータパネル2の上端部を接続するルーフパネル3と、下端間を接続するフロアパネル4とで構成されている。
【0015】
前記後部車体1の後端面には、前記左,右のクォータパネル2,ルーフパネル3及びフロアパネル4により囲まれたバックドア開口1aが形成されている。該バックドア開口1aにはバックドア5が配設されている(図4参照)。
【0016】
前記後部車体1の左,右のクォータパネル2の後端壁2b,2bには、上下方向に延びる左,右のリヤコンビネーションランプ装置8,8が配設されている。この左,右のリヤコンビネーションランプ装置8は、ブレーキランプ,ターンシグナルランプ,バックアップランプを一体化した構造を有する。
【0017】
前記左,右のリヤコンビネーションランプ装置8は、同一の構造を有し、車両後方に開口する各レンズ開口10aを有する略容器状のランプハウジング10と、該ランプハウジング10の底部10bに装着された各ランプバルブ11,12,13と、前記ランプハウジング10に各レンズ開口10aを覆うように配設された共通のレンズ15とを備えており、詳細には以下の構造を有する。
【0018】
前記ランプハウジング10内は、各隔壁10cにより上から順に略碗形状をなすターンシグナルランプ室A,ブレーキランプ室B,バックアップランプ室Cに画成されており、各ランプ室A〜Cに前記ランプバルブ11,12,13が配置されている。
【0019】
前記ランプハウジング10の各ランプ室A〜Cの内表面には、アルミニュウム蒸着等によりリフレクタ面16が被覆形成されている。各ランプバルブ11〜13からの光は、リフレクタ面16を反射してレンズ開口10aからレンズ15を透過して車両後方に照射される。
【0020】
前記ランプハウジング10の車内側には、フランジ部10dが車幅方向内側に突出形成されており、該フランジ部10dには上,下一対のボルト孔10eが形成されている。前記ランプハウジング10は、ボルト孔10eに挿入されたボルト(不図示)により前記クォータパネル2に取り付けられている。
【0021】
前記レンズ15は、前記ランプハウジング10の各レンズ開口10aを覆うレンズ本体15aと、該レンズ本体15aの車内側縁部に続いて前方に段落ち形成されたフランジ部15bとを有する。このフランジ部15bは前記バックドア5により覆われており、該バックドア5が閉じているときには隠れて外部から見えない。
【0022】
また前記レンズ15は、前記ブレーキランプ,ターンシグナルランプ,バックアップランプに対応した色に着色されている。
【0023】
前記レンズ本体15aは、前記クォータパネル2の後端壁2bから外側壁2cに回り込むように湾曲形成されている。このレンズ本体15aの外側回り込み部15a′は前記外側壁2cに連続面をなすよう形成されている(図4参照)。
【0024】
前記レンズ15の外周部には、これの全周に渡って延びる溶着用リブ15cが車両前方に突出形成されている。このリブ15cの前記フランジ部15bに形成された車内側リブ15c′は、車両前方に突出形成され、前記外側回り込み部15a′に形成された車外側リブ15c′′は斜め内側に傾斜するように突出形成されている。これにより、前記車内側リブ15c′は、後述する押圧治具21によるランプハウジング10への溶着方向c,つまりリブ突出方向に対して交差する方向Fから押圧される。
【0025】
前記ランプハウジング10の外周部の前記溶着用リブ15に対向する部分には、溶着リブ10fが後方に突出形成されている。
【0026】
前記レンズ15は、これのリブ15cをランプハウジング10の溶着リブ10fに加熱溶着することにより、該ランプハウジング10に一体に固定されている。これにより、レンズ15をランプハウジング10に取り付けるためのボルト,クリップ等が不要となっている。
【0027】
詳細には、図5〜図7に示すように、所定温度に加熱した鉄板20を両リブ10f,15cの間に挿入して該リブ10f,15cの先端部を溶融し、前述の押圧治具21によりレンズ15全体をランプハウジング10に押圧することにより、リブ10f,15c同士を溶着する。なお、前記溶着方法としては、熱板溶着以外に、振動溶着,超音波溶着を採用してもよい。
【0028】
そして前記レンズ15のフランジ部15bの車内側リブ15c′に対応する外面部分には、前記押圧治具21が係合する凹部15dが形成されている。この凹部15dは、断面コ字形状をなしており、前記フランジ部15bの上下方向略全長に渡って形成されている。
【0029】
前記凹部15dは、溶着方向c,つまりリブ突出方向に見たとき、その一部が前記車内側リブ15c′と重なるように形成されている。詳細には、凹部15dの外側端部が前記リブ15c′と重合している。
【0030】
また前記押圧治具21には、前記凹部15dに入り込む凸部21aが形成されている。これによりレンズ押圧時に凸部21aが凹部15dに係合することにより、レンズ15の車幅方向におけるずれが防止されている。
【0031】
本実施例によれば、レンズ15の車内側リブ15c′に対応する外面部分に凹部15dを形成したので、レンズ15をランプハウジング10に押圧する際に押圧治具21の凸部21aが凹部15dに入り込むことにより、押圧治具21の当たり面を拡大することができるとともに、レンズ15のずれを防止できる。これにより、前記リブ15c′をランプハウジング10の溶着リブ10fに精度よく安定して押圧することができる。その結果、前記レンズ10のフランジ部15bの突出寸法b′を従来のフランジ面寸法bより大幅に小さくすることができ、それだけランプ装置全体を小型化でき、ひいてはバックドア開口1aの車幅寸法w′を大きくすることができる。特に、レンズ本体15aをクォータパネル2の外側壁2cに回り込むように湾曲形成する意匠とした場合に効果がある。
【0032】
また本実施例では、前記凹部15dの一部を、リブ突出方向に見たとき、前記リブ15c′に重なるように形成したので、前記レンズ10にリブ15cを形成したことにより生じるヒケの発生を防止することができ、見栄えの悪化を防止できる。
【0033】
なお、前記実施例では、前記凹部15dを車内側のフランジ部15bに形成した場合を説明したが、本発明の凹部は、レンズ15のずれを防止するためにものであることから、車外側リブ15c′′の外側面にも形成してもよい。
【0034】
また前記実施例では、前記凹部15dが形成されたフランジ部15bをバックドア5により覆うようにしたが、本発明は、レンズ15の表面に露出するように形成してもよい。このようにした場合には、リヤコンビネーションランプ全体の意匠効果を高めることができる。
【0035】
前記実施例では、自動車のリヤランプ装置を例に説明したが、本発明は自動車のフロント側に配設されたヘッドランプ装置にも適用でき、この場合も前記実施例と同様の効果が得られる。
【0036】
前記実施例では、前記レンズ15の凹部15dを断面コ字形状としたが、本発明の凹部はこれに限られるものではない。
【0037】
図8は、本発明の実施例2によるリヤランプ装置を説明するための図であり、図中、図6と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0038】
本実施例では、レンズ15の凹部15d′を断面三角形状とし、また押圧治具21の凸部21a′を前記凹部15c′に係合する三角形状とした場合である。このようにした場合にも、実施例1と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0039】
8 リヤコンビネーションランプ装置
10 ランプハウジング
10a レンズ開口
10b 底部
11〜13 ランプバルブ
15 レンズ
15c 溶着用リブ
15c′ 車内側リブ(一部のリブ)
15d,15d′ 凹部
21 押圧治具
c 溶着方向
F 押圧方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ開口を有する略容器状のランプハウジングと、該ランプハウジングの底部に装着されたランプバルブと、前記ランプハウジングにレンズ開口を覆うように配設されたレンズとを備え、
該レンズの外周部に前記ランプハウジングに対向する溶着用リブを形成し、該リブを加熱して押圧治具により前記ランプハウジングに押圧することにより前記レンズをランプハウジングに溶着固定するようにした車両用ランプ装置であって、
前記リブは、その少なくとも一部が前記ランプハウジングへの溶着方向に対して交差する方向から押圧され、
前記レンズの前記少なくとも一部のリブに対応する外面部分には、前記押圧治具が係合する凹部が形成され、
該凹部は、少なくともその一部が前記リブと重なっていることを特徴とする車両用ランプ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate