説明

車両用ランプ

【課題】 対向車と先行車の違い、あるいは自車との距離の違いに応じてランプの配光特性を変化させることにより対向車や先行車を眩惑することなく自車の前方の視認性を高める。
【解決手段】 右,左の各ヘッドランプRHL,LHLの各光源から出射された光を遮光するシェードRMS,LMSを、ランプ光軸Lxに対して左右方向に外れた位置において右分割シェードRRS,RLSと左分割シェードRLS,LLSに分割し、それぞれ独立して遮光領域が変化できるように構成する。左ヘッドランプLHLのシェードLMSは分割縁DVをランプ光軸Lxの右側に偏位し、右ヘッドランプRHLのシェードRMSは分割縁DVをランプ光軸Lxの左側に偏位する。他車を検出したときに各分割シェードでの遮光を制御することで対向車や先行車を眩惑することなく自車の前方の広い領域を照明して視認性を高めることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドランプ等の車両の前方を照明するランプに関し、特に他車を眩惑することなく自車の前方の視認性を高めた車両用ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドランプは自車の前方の視認性を高めるためのハイビームと、自車の前方に存在する対向車や先行車を眩惑することがないように配光特性を設定したロービームとで切り換えることができるように構成されている。しかし、従来ではこのビームの切り換えを運転者の手操作により行っているために操作が面倒であり、一般にはロービームで走行を行っているため前方の視認性が犠牲になっている。このような問題に対し、特許文献1の技術では、自車のヘッドランプを基本的にハイビームで点灯するようにし、自車に搭載したカメラにより自車の前方に存在する他車両を検出したときに自動的にロービームに切り換える技術が提案されている。
【特許文献2】特開2007−112249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、通常のヘッドランプではロービームの配光特性は対向車や先行車を眩惑することがないように極力制限した前方領域のみを照明する配光特性に設定している。そのため、特許文献1の技術では対向車や先行車の区別なく前方の自動車を検出したときにロービームに切り換えると、自車の前方に先行車のみが存在する場合でも対向車の眩惑をも考慮したロービームに切り換えられてしまうことになり、この結果自車の前方の照明領域が必要以上に制限されることになり運転者の視認性が低下し、安全走行の面で好ましくない。特に、対向車や先行車が存在する場合に、自車との距離(対向距離や車間距離)が遠い場合にも一律にロービームに切り換えるのでは、ロービームに切り換えている時間が長くなり、その間は自車の遠前方を照明することができずに視認性が低下してしまう。

【0004】
本発明の目的は、自車の前方に存在する車両が対向車と先行車の違い、並びに自車との距離の違いに応じて自車のヘッドランプの配光特性を変化させることにより対向車や先行車を眩惑することなく自車の前方の視認性を高めることを可能にした車両用ランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は光源から出射された光の一部を遮光するシェードを備える車両用ランプであって、シェードはランプ光軸に対して左右方向に外れた位置において左分割シェードと右分割シェードに分割され、かつ左分割シェードと右分割シェードは独立して遮光領域が変化できるように構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の車両用ランプは、好ましくは、車両の右ヘッドランプ及び左ヘッドランプとして構成されており、右ヘッドランプのシェードと左ヘッドランプのシェードは分割位置が相違する。例えば、一方のヘッドランプのシェードは分割位置がランプ光軸の右側に偏位された位置であり、他方のヘッドランプのシェードは分割位置がランプ光軸の左側に偏位された位置とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、右分割シェードと左分割シェードはランプ光軸に対して非対称な形状とされるので、これらの分割シェードを独立して各遮光領域を変化させることにより、右側領域と左側領域を非対称な形態で照明することができる。そのため、車両の右側ランプと左側ランプの各シェードについてそれぞれの右分割シェードと左分割シェードの分割位置を相違させ、その上で各ランプの右分割シェードと左分割シェードを選択して遮光領域を変化させることにより、対向車や先行車を検出したときにそれぞれ好適な配光特性に設定でき、対向車や先行車を眩惑することなく、その一方で自車の前方の広い領域を照明して視認性を高めることが可能になる。
【実施例1】
【0008】
次に、本発明の実施例1を説明する。図1は本発明を自動車のヘッドランプに適用したものであり、自動車CARの左右のヘッドランプLHL,RHLはそれぞれECU(Electronic Control Unit)1に接続されており、このECU1によって配光特性が変化できるように構成されている。前記ECU1には自動車CARの正面に装備された前方監視カメラCAMが接続されており、この前方監視カメラCAMで撮像した画像に基づいて自車の前方領域に存在する対向車や先行車を検出することが可能とされている。そして、ECU1は対向車や先行車を検出したときには前記左右のヘッドランプLHL,RHLに設けられている後述するシェード(遮光板)を駆動制御してその配光特性を切り換えることができるように、特に、検出した他車が対向車の場合と先行車の場合とで異なる配光特性での照明を行うことができるように構成されている。また、後述の説明からも判るように実施例1の自動車CARにはステアリングホイールSTWの操舵角を検出して各ヘッドランプLHL,RHLのランプ光軸を左右に偏向制御できるようにも構成されている。
【0009】
図2は前記左右のヘッドランプLHL,RHLの概略構成を示す図であり、ランプハウジングLH内にそれぞれランプユニットLUを内装している。左右のヘッドランプLHL,RHLの各ランプユニットLUは後述するメインシェードMSを除いて同一構成である。これらのランプユニットLUはランプ光軸Lxに沿って切断した断面構造を示すように、ほぼコ字型をしたブラケット2にプロジェクタ型ランプ3をスイブル軸4によって水平方向に所要角度範囲で回動可能に支持するとともに、当該スイブル軸4の下端部をスイブル機構5に連結している。スイブル機構5は前記ECU1によって制御され、自動車CARの前記ステアリングホイールSTWの操舵角に追従して制御されることで前記プロジェクタ型ランプ3のランプ光軸Lxを左右方向に偏向させ、運転者における操舵方向の視認性を高めることが可能である。また、前記スイブル機構5の下側には前記プロジェクタ型ランプ3を点灯させるための電源としての点灯回路ユニット6が配設されている。
【0010】
前記プロジェクタ型ランプ3は、回転半楕円型をしたリフレクタ31と、このリフレクタ31の前縁部に連結された円筒型のリテーナ32と、このリテーナ32の前縁部に支持された集光レンズ33とを備えている。前記リフレクタ31内にはリフレクタ31の第1焦点F1の近傍位置に光源点を配置した放電バルブ34が取着され、前記点灯回路ユニット6から供給される電力によって放電発光される。また、前記リテーナ32内には前記リフレクタ31の第2焦点F2の近傍位置にメインシェードMSが設けられ、前記放電バルブ34から出射された光の一部を遮光して所望の配光特性に設定できるようにしている。このメインシェードMSには当該配光特性を切り換えるためシェード駆動手段としてのアクチュエータACTが設けられている。また、前記リテーナ32内にはリフレクタ31で反射された迷光を遮光するためのサブシェードSSも設けられている。
【0011】
図3は前記左右の各ヘッドランプLHL,RHLの各プロジェクタ型ランプ3内にそれぞれ設けられているメインシェードをヘッドランプの後面側(光源側)から見た概略斜視図である。また、図4(a)はその後面図である。右ヘッドランプRHLのメインシェード(以下、右メインシェードと称する)RMSは、ランプ光軸Lxに対してほぼ垂直な面に沿って垂直に立設された概ね横長の長方形をした板部材で形成されているが、その上縁は後述するロービーム配光特性の水平カットオフラインと斜めカットオフラインを形成する形状とされている。その上でこの右メインシェードRMSはランプ光軸Lxよりも所要寸法だけ左側(光源側から見て、以下同じ)に偏位した位置で上下方向に延びる分割縁DVによって右分割シェードRRSと左分割シェードRLSとに2分割されている。ここで、図4(b)に右メインシェードRMSの分割縁DVの拡大平面図を示すように、前記分割縁DVは右メインシェードRMSの板厚方向に傾斜した傾斜面となるようにされ、各分割シェードRRS,RLSの各傾斜面は互いに光軸方向に重なるようにされ各傾斜面が当接されたときにリフレクタ31から反射された光が両分割シェードRRS,RLSの間から前方に洩れ出さないようになっている。
【0012】
前記左右の各分割シェードRRS,RLSはシェード板部101と、このシェード板部101の下縁に水平方向に向けられた筒部102が設けられ、これらの筒部102にはシェード傾動軸103が挿通され、右分割シェードRRSはこのシェード傾動軸103を支点にして前方向に傾動可能とされ、左分割シェードRLSはシェード傾動軸103を支点にして後方向に傾動可能とされている。これら左右の各分割シェードRRS,RLSはそれぞれ個別のアクチュエータRRACT,RLACTに連結されており、これらアクチュエータによって各分割シェードRRS,RLSは独立して傾動されるようになっている。ここでは、各アクチュエータRRACT,RLACTは構造の詳細については説明を省略するがソレノイド機構で構成されており、図1に示したECU1での通電制御によってソレノイドに通電したときに突出動作されるアクチュエータ(プランジャ)が各分割シェードRRS,RLSの筒部102から突出した突片104に連結されており、このアクチュエータ(フランジャ)の突出動作によって右分割シェードRRSを垂直状態からランプ前方向に向けて傾動し、左分割シェードRLSを垂直状態からランプ後方向に向けて傾動させるように構成されている。
【0013】
また、左ヘッドランプLHLの左メインシェードLMSは右メインシェードRMSと同じ形状であるが、この左メインシェードLMSを左右に2分割する分割縁DVはランプ光軸Lxよりも所要寸法だけ右側に偏位した位置に設定され、この分割縁DVによって右分割シェードLRSと左分割シェードLLSに2分割されている。分割縁DVが板厚方向の傾斜面として構成されていること、並びに、左右の各分割シェードLRS,LLSはソレノイド機構で構成されるアクチュエータLRACT,LLACTによってそれぞれ独立して前方向又は後方向に傾動させるように構成していることは右メインシェードRMSと同じである。なお、右メインシェードRMSと等価な部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0014】
以上の構成の左右のヘッドランプRHL,LHLでは、放電バルブ34を点灯すると、放電バルブ34から出射されてリフレクタ31で反射された光は第2焦点F2に集光される。このとき照明に寄与しない光はサブシェードSSによって遮光される。照明に寄与する光は第2焦点F2から前方に向けて照射されるが、この際にランプ光軸Lxの下方領域に向けられた光はメインシェードRMS,LMSによって遮光が制御される。すなわち、図4(c)に右メインシェードRMSでの遮光制御を示すように、左右の各分割シェードRRS,RLSが実線のようにほぼ垂直方向に向けられているときには遮光限界S1はほぼランプ光軸Lxに沿った位置にあるが、右分割シェードRRSが破線のように前方に傾動されたときの遮光限界S2と、左分割シェードRLSが破線のように後方に傾動されたときの遮光限界S3はランプ光軸Lxよりも下方の位置になる。これにより、集光レンズ33で屈折されて自動車CARの前方に照射される配光特性は、遮光限界S2,S3では遮光限界S1に比較してランプ光軸Lxよりも上方領域を照明する配光特性となる。これは左ヘッドランプLHLの左メインシェードLMSについても同じである。
【0015】
右ヘッドランプRHLの右メインシェードRMSによる配光特性を図5(a)に示す。この図において、ランプ光軸Lxは自動車CARの水平な直進方向に一致させており、Hはランプ光軸Lxを通る配光水平線、Vはランプ光軸Lxを通る配光垂直線である。右メインシェードRMSの両分割シェードRRS,RLSが垂直方向に向けられているときの照明領域をA(RMS)で示す。この照明領域A(RMS)は両分割シェードRRS,RLSの上縁部の形状に対応して水平カットオフラインと斜めカットオフラインを有して配光水平線Hよりも下側領域を照明する。また、右分割シェードRRSが前方に傾斜されたときには配光水性線Hよりも上方領域で、配光垂直線Vよりも右側に偏位した位置よりも左側の照明領域A(RRS)が加えられた配光となる。左分割シェードRLSが後方向に傾斜されたときには配光水平線Hよりも上方領域で配光垂直線Vよりも右側に偏位した同じ位置よりも右側の照明領域A(RLS)が加えられた配光となる。左ヘッドランプHLHの左メインシェードLMSによる配光特性は図5(b)に示すように、左メインシェードLMSでは左右の分割シェードLRS,LLSは分割縁の位置が右メインシェードRMSとは異なるため両分割シェードLRS,LLSがほぼ垂直の場合には照明領域A(LMS)を照明するが、右分割シェードLRSが傾動されたときには照明領域A(LRS)が加えられ、左分割シェードLLSが傾動されたときには照明領域A(LLS)が加えられた配光特性となる。したがって、左右のヘッドランプRLH,LHLが同時に点灯されたときには、これら図5(a)と(b)の配光が重畳された配光となる。
【0016】
このように構成された実施例1の自動車CARにおいては、左右のヘッドランプRHL,LHLを点灯したときには手動モードと自動モードによる配光制御が可能である。手動制御はこれまでと同様に運転者のスイッチ切換操作によってハイビームとロービームを切り換える制御である。自動制御は、前方監視カメラCAMによって自車の前方領域を撮像し、この撮像した画像に基づいてECU1が対向車や先行車を検出したときには左右のヘッドランプRHL,LHLの各メインシェードRMS,LMSを駆動制御してその配光特性を切り換え、これにより対向車や先行車を眩惑することなく最大の照明領域を確保して運転者の視認性を向上する。以下、各別に説明する。
【0017】
〔手動モード〕
(ハイビーム)
図6(a)はハイビーム時における左右の各ヘッドランプRHL,LHLの各メインシェードRMS,LMSの状態とその配光特性である。手動モードにおいて運転者がスイッチをハイビームに切り換えると、左右のメインシェードRMS,LMSはそれぞれ右分割シェードRRS,LRSが前方向に、左分割シェードRLS,LLSが後方向にそれぞれ傾斜され、図4(c)に示した遮光限界S2,S3となる。そのため、リフレクタ31からの光はランプ光軸Lxの上方に向けて出射される光による照明が行われ、ランプ光軸Lxの上方領域を含む最大領域を照明する配光特性となる。このハイビームの配光特性では自車の前方の視認性が高められることは言うまでもない。
【0018】
(ロービーム)
図6(b)はロービーム時における左右の各メインシェードRMS,LMSの状態とその配光特性であり、手動モードにおいて、運転者がスイッチをロービームに切り換えると、左右のメインシェードRMS,LMSはそれぞれ左右の分割シェードRRS,RLS,LRS,LLSがほぼ垂直な状態に固定される。そのため、図4(c)に示した遮光限界S1となり、リフレクタ31からの光はランプ光軸Lxの上方に向けて照射される光が最大に遮光されるため、各メインシェードRMS,LMSの上縁部の形状に伴なうカットオフラインで配光水平線Hよりも下方領域を照明する配光特性となる。このロービームの配光特性では対向車や先行車に対する眩惑を防止する。
【0019】
〔自動モード〕
(自車の前方領域に対向車と先行車が存在しないとき)
前方監視カメラCAMの撮像画像によりECU1が自車の前方領域に対向車と先行車が存在しないときには、ECU1は左右のヘッドランプRHL,LHLの各メインシェードRMS,LMSを手動モードのハイビームと同じ状態に制御する。すなわち、各メインシェードRMS,LMSの右分割シェードRRS,LRSを前方向に、左分割シェードRLS,LLSを後方向にそれぞれ傾斜する。これにより、図6(a)に示したと同じハイビームの配光特性となり、ランプ光軸Lxの上方領域を含む最大領域を照明するこれにより自車の前方領域の視認性を高くする。
【0020】
(遠前方に対向車あり)
前方監視カメラCAMの撮像画像によりECU1が自車の遠前方領域(ランプ光軸Lxの近傍領域)に対向車を検出したときには、図7(a)に示すように、ECU1は左右のヘッドランプRHL,LHLの各メインシェードRMS,LMSのうち、右ヘッドランプRHLの右メインシェードRMは両分割シェードRRS,RLSを垂直状態に保持するが、左ヘッドランプLHLの左メインシェードLMSでは右分割シェードLRSのみを前方向に傾斜させて遮光限界を緩める。これにより、右ヘッドランプRHLの配光はロービーム配光となり、左ヘッドランプLHLの配光はロービーム配光に加えて図5(b)の領域A(LRS)を照明する配光となる。したがって両者を重ねた配光では、ハイビーム配光に対し配光水平線Hよりも上方領域ではランプ光軸Lxの近傍領域を含む右側領域のみを遮光した配光特性となる。これにより、対向車に対する眩惑を防止する一方で、対向車が存在しない上方左側領域を照明し、自車の走行先の遠前方領域の視認性を高くする。
【0021】
(近前方に対向車あり)
前方監視カメラCAMの撮像画像によりECU1が自車の近前方領域(ランプ光軸Lxよりも右側領域)に対向車を検出したときには、図7(b)に示すように、ECU1は左右のヘッドランプRHL,LHLの各メインシェードRMS,LMSについて、それぞれ右分割シェードRRS,LRSを前方向に傾斜させる。これにより、右ヘッドランプRHLの配光はロービーム配光に加えて図5(a)の領域A(RRS)を照明する配光となり、左ヘッドランプLHLの配光はロービーム配光に加えて図5(b)の領域A(LRS)を照明する配光となる。したがって両者を重ねた配光では、ハイビーム配光に対し配光水平線Hよりも上方領域では、ランプ光軸Lxよりも右側に偏位した位置から右側領域のみを遮光した配光特性となる。これにより、自車の右側に存在する対向車に対する眩惑を防止する一方で、対向車が存在しないランプ光軸の近傍領域ないし上方左側領域を照明し、自車の走行先の遠前方領域の視認性を高くする。
【0022】
(遠前方及び近直前に先行車あり)
前方監視カメラCAMの撮像画像によりECU1が自車の遠前方領域に先行車を検出したときには、図8(a)に示すように、ECU1は左右のヘッドランプRHL,LHLの各メインシェードRMS,LMSのうち、左ヘッドランプLHLの左メインシェードLMSは垂直状態に保持するが、右ヘッドランプRHLの右メインシェードRMSでは左分割シェードRLMのみを後方向に傾斜させる。これにより、右ヘッドランプRHLの配光はロービーム配光に加えて図5(a)の領域A(RLS)を照明する配光となり、左ヘッドランプLHLの配光はロービーム配光となる。したがって両者を重ねた配光では、配光水平線Hよりも上方領域では、ランプ光軸Lxの近傍領域を含む左側領域のみを遮光した配光特性となる。これにより、遠前方に存在する先行車に対する眩惑を防止する一方で、先行車が存在しない上方右側領域を照明し、自車の走行先の遠前方領域の視認性を高くする。
【0023】
(左前方に先行車あり)
前方監視カメラCAMの撮像画像によりECU1が自車の左前方領域に先行車を検出したときには、図8(b)に示すように、ECU1は左右のヘッドランプRHL,LHLの各メインシェードRMS,LMSについて、それぞれ左分割シェードRLS,LLSを前方向に傾斜させる。これにより、右ヘッドランプRHLの配光はロービーム配光に加えて図5(a)の領域A(RLS)を照明する配光となり、左ヘッドランプLHLの配光はロービーム配光に加えて図5(b)の領域A(LLS)を照明する配光となる。したがって両者を重ねた配光では、配光水平線Hよりも上方領域では、ランプ光軸Lxよりも左側に偏位した位置から左側領域のみを遮光した配光特性となる。これにより、自車の左前方に存在する先行車に対する眩惑を防止する一方で、対向車が存在しないランプ光軸の近傍領域ないし上方右側領域を照明し、自車の走行先の遠前方領域の視認性を高くする。
【0024】
ここで、以上の各モード及び各場合において、図2に示したスイブル機構5を動作させてランプ光軸Lxを左右に偏向制御することで、図6〜図8に示した配光特性を右側あるいは左側に偏位させることで、対向車及び先行車に対する眩惑をより確実に防止するようにすることもできる。
【0025】
実施例1では、左右の各メインシェードを左右の分割シェードに分割する分割縁DVは垂直方向に向けられているが、任意の角度で左右方向に傾斜した分割縁となるように構成してもよい。また、実施例1では左右の分割シェードを前後方向に傾動させて遮光範囲を変化させているが、各分割シェードを上下にスライドさせて遮光範囲を変化させるように構成してもよい。さらに、アクチュエータは左右の分割シェードを傾動し、あるいは上下移動させる駆動力を発揮するものであれば実施例1のソレノイド機構に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の車両用ランプを装備した自動車の概念図である。
【図2】本発明の車両用ランプの概略構成を示す断面図である。
【図3】左右のヘッドランプの各メインシェードの概念構成を示す図である。
【図4】各メインシェードの背面図、一部平面図、遮光状態を示す図である。
【図5】左右のメインシェードによる照明領域を示す図である。
【図6】ハイビームとロービームの配光特性を示す図である。
【図7】対向車を検出したときの配光特性を示す図である。
【図8】先行車を検出したときの配光特性を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ECU
3 プロジェクタ型ランプ
5 スイブル機構
6 点灯回路ユニット
31 リフレクタ
33 集光レンズ
34 放電バルブ
RHL,LHL ヘッドランプ
LH ランプハウジング
LU ランプユニット
RMS,LMS メインシェード
RRS,RLS,LRS,LLS 分割シェード
RRACT,RLACT,LRACT,LLACT アクチュエータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光の一部を遮光するシェードを備える車両用ランプであって、前記シェードはランプ光軸に対して左右方向に外れた位置において左分割シェードと右分割シェードとに分割され、かつ前記左分割シェードと右分割シェードは独立して遮光領域が変化できるように構成されていることを特徴とする車両用ランプ。
【請求項2】
車両の右ヘッドランプ及び左ヘッドランプとして構成され、前記右ヘッドランプのシェードと左ヘッドランプのシェードは分割位置が相違することを特徴とする請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項3】
一方のヘッドランプのシェードは分割位置がランプ光軸の右側に偏位された位置であり、他方のヘッドランプのシェードは分割位置がランプ光軸の左側に偏位された位置であることを特徴とする請求項2に記載の車両用ランプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−211963(P2009−211963A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54269(P2008−54269)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】