説明

車両用リアシート

【課題】肘掛機能と収納機能とを同時に使用できる車両用リアシートを提供すること。
【解決手段】車両用リアシート1は、シートクッション2とシートバック3とから成り、アームレスト4が備えられている。シートクッション2には、その前方に向けて引き出し可能なスライダ10が備えられている。スライダ10には、トレイ20が収納されている。トレイ20は、スライダ10を引き出すと、スライダ10に収納された収納状態からシートクッション2に着座した乗員が使用可能な展開状態に切り替え可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用リアシートに関し、詳しくは、シートクッションとシートバックとから成り、アームレストが備えられている車両用リアシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションとシートバックとから成り、アームレストが備えられている車両用リアシートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、蓋を開けると、トレイを使用可能なアームレストが備えられている車両用リアシートが開示されている。これにより、肘掛機能としてだけでなく、小物入れ等の収納機能としてもアームレストを使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−5455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、蓋を開けると肘掛機能を果たさないため、肘掛機能と収納機能とを同時に使用できなかった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、肘掛機能と収納機能とを同時に使用できる車両用リアシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、シートクッションとシートバックとから成り、アームレストが備えられている車両用リアシートであって、シートクッションには、その前方に向けて引き出し可能なスライダが備えられており、スライダには、トレイが収納されており、トレイは、スライダを引き出すと、スライダに収納された収納状態からシートクッションに着座した乗員が使用可能な展開状態に切り替え可能となっていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、シートクッションに着座した乗員は展開したトレイを収納機能として使用できるだけでなく、アームレストを肘掛機能として使用できる。そのため、肘掛機能と収納機能とを同時に使用できる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用リアシートであって、トレイは、スライダに対して昇降可能となるように収納状態から展開状態に切り替え可能となっていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、シートクッションに着座した乗員がトレイを使用するとき、乗員はその着座状態のまま(大きく前に屈むことなく)トレイを使用できる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用リアシートであって、トレイは、アームレストの真下に設けられていると共に、その展開状態において、その高さ位置とアームレストの高さ位置とが略面一となっていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、車両用リアシートに着座した乗員は、アームレストに肘をかけながら、トレイを使用できる。したがって、トレイの使用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るリアシートの全体斜視図である。
【図2】図2は、図1の収納ケースを引き出した状態を示す図である。
【図3】図3は、図2のリアシートの側面図である。
【図4】図4は、図2のトレイを引き起こした状態を示す図である。
【図5】図5は、図4のリアシートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜5を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、『スライダ』の例として、『収納ケース10』を説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した各図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、リアシート1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0011】
まず、本発明の実施例に係るリアシート1の構成を説明する。このリアシート1は、公知のシートクッション2と、公知のシートバック3と、公知のアームレスト4とから構成されている。なお、このアームレスト4は、図1からも明らかなように、シートバック3の幅方向における中央に設けられており、シートバック3に収納可能な収納状態からシートクッション2に対して重なり合う使用可能状態へと前倒し可能となっている。なお、上述した各図では、アームレスト4が使用可能状態にあるときを示している。
【0012】
このシートクッション2には、自身の骨格を成すと共に、自身を車両フロアFに組み付けるフレーム(図示しない)を目隠しするための樹脂製のカバー5が取り付けられている。これにより、シートクッション2、すなわち、リアシート1の見栄えを向上させることができる。
【0013】
また、このシートクッション2には、その下方の空間S(シートクッション2のクッション下面と車両フロアFの上面との間の空間)における幅方向の中央からカバー5の開口5a越しに引き出し可能な収納ケース10が公知のスライド機構(左右一対のロアレール40、40と、この両ロアレール40、40にスライド可能な左右一対のアッパレール42、42)を介して備えられている。このように収納ケース10が備えられていると、後述するトレイ20はアームレスト4の真下に設けられることとなる。
【0014】
この収納ケース10の左右の上縁には、後述するように、略Xリンク30の第1のリンク棒32の両基端32a、32aを係合可能な3個の係合孔12(第1の係合孔12a、第2の係合孔12b、第3の係合孔12c)、12(第1の係合孔12a、第2の係合孔12b、第3の係合孔12c)がそれぞれ形成されている。
【0015】
このように係合孔12が3個形成されているため、後述するように、トレイ20を展開させたとき、収納ケース10に対して乗員の所望する高さ位置となるようにトレイ20を調節することができる。なお、第2の係合孔12b、12bは、自身に後述する略Xリンク30の第1のリンク棒32の両基端32a、32aを係合させると、展開状態にあるトレイ20の高さ位置と使用可能状態にあるアームレスト4の高さ位置とが略一致する位置に形成されている(図5参照)。
【0016】
また、この収納ケース10の左右の上縁には、左右に対を成す格好の略Xリンク30を介してトレイ20が組み付けられている。このトレイ20は、後述するように、第1のリンク棒32の両基端32a、32aを収納ケース10の両係合孔12b、12bに係合させて自身を展開させると、その後端が使用可能状態にあるアームレスト4の先端と近接するように形成されている。これにより、アームレスト4とトレイ20とを跨ぐように長い物体(図示しない)を置くことができる。
【0017】
このとき、近接したトレイ20の後端と使用可能状態にあるアームレスト4の先端とを接続させる公知の接続手段(図示しない)により接続させても良い。これにより、トレイ20とアームレスト4とが一体となるため、これらに長い物体を置いたときの安定感を向上させることができる。
【0018】
ここで、この略Xリンク30について詳述すると、この略Xリンク30は3本のリンク棒(第1のリンク棒32、第2のリンク棒34、第3のリンク棒36)から構成されている(図4参照)。第1のリンク棒32は、略コ字状に形成されており、その両先端32b、32bがトレイ20の左右の後側にそれぞれ枢着されている。この第1のリンク棒32の両先端32b、32bに対する反対側の両基端32a、32aは、収納ケース10の左右に形成された係合孔12、12(12a、12a、12b、12b、12c、12c)のいずれかに係合可能となっている。
【0019】
また、第2のリンク棒34は、その一端34aがトレイ20の左の略中央に枢着されており、その他端34bが収納ケース10の左の後側に枢着されている。一方、第3のリンク棒36は、第2のリンク棒34に対して平行を成すように、その一端36aがトレイ20の右の略中央に枢着されており、その他端36bが収納ケース10の右の後側に枢着されている。
【0020】
そのため、この略Xリンク30は、その第1のリンク棒32の両基端32a、32aを収納ケース10の両係合孔12、12から外し折り畳むと、収納ケース10の上縁に重なり合うように収納させた収納状態(図2、3に示す状態)にトレイ20を切り替えることができる。
【0021】
逆に、第1のリンク棒32の両基端32a、32aを収納ケース10の両係合孔12、12に係合させると、シートクッション2に着座した乗員が、その着座状態のまま(大きく前に屈むことなく)、使用可能な展開状態(図4、5に示す状態)にトレイ20を切り替えることができる。このように切り替えることができると、トレイ20は収納ケース10に対して昇降可能となっている。略Xリンク30は、このように構成されている。
【0022】
なお、トレイ20は、収納ケース10がシートクッション2の下方の空間Sに収納された収納状態にあるとき、収納状態になっていることは言うまでもない。リアシート1は、このように構成されている。
【0023】
次に、リアシート1の作用を説明する。この作用の説明を行うにあたって、アームレスト4が使用可能状態にあり、収納ケース10が収納状態(図1に示す状態)にあるときから説明していく。
【0024】
この状態から、まず、リアシート1に着座した乗員は、収納状態にある収納ケース10を引き出す作業を行う(図2〜3参照)。次に、引き出した収納ケース10に収納されているトレイ20を引き起こして展開させる作業を行う。このとき、トレイ20は、第2のリンク棒34と第3のリンク棒36の両他端34b、36bの枢着軸の軸回りに引き起こされる格好となるため、すなわち、トレイ20は、シートクッション2に着座した乗員側に向けて引き起こされる格好となるため、容易にトレイ20を引き起こすことができる。
【0025】
続いて、第1のリンク棒32の両基端32a、32aを収納ケース10の両係合孔12、12に係合させる作業を行う。このとき、3個の係合孔12(12a、12b、12c)のうち、第2の係合孔12bに係合させると、既に説明したように、展開したトレイ20の高さ位置と使用可能状態にあるアームレスト4の高さ位置とを略一致させることができる(図4、5参照)。
【0026】
なお、3個の係合孔12(12a、12b、12c)のうち、第1の係合孔12aに係合させると、展開したトレイ20の高さ位置より使用可能状態にあるアームレスト4の高さ位置を低くさせることができる。これとは逆に、3個の係合孔12(12a、12b、12c)のうち、第3の係合孔12cに係合させると、展開したトレイ20の高さ位置より使用可能状態にあるアームレスト4の高さ位置を高くさせることができる。
【0027】
このようにして、トレイ20を収納状態から展開状態に切り替えることができる。そして、シートクッション2に着座した乗員は、その着座状態のまま(大きく前に屈むことなく)、展開したトレイ20を収納機能として使用できる。このとき、シートクッション2に着座した乗員はアームレスト4を肘掛機能として使用できる。なお、展開したトレイ20を戻すには、上述した作業と逆の作業を行えばよい。
【0028】
本発明の実施例に係るリアシート1は、上述したように構成されている。この構成によれば、シートクッション2に着座した乗員は展開したトレイ20を収納機能として使用できるだけでなく、アームレスト4を肘掛機能として使用できる。そのため、肘掛機能と収納機能とを同時に使用できる。
【0029】
また、この構成によれば、トレイ20は収納ケース10に対して昇降可能となっている。そのため、シートクッション2に着座した乗員がトレイ20を使用するとき、乗員はその着座状態のまま(大きく前に屈むことなく)トレイ20を使用できる。
【0030】
また、この構成によれば、展開状態におけるトレイ20の高さ位置と、使用可能状態におけるアームレスト4の高さ位置とを略一致させることができる。そのため、リアシート1に着座した乗員は、アームレスト4に肘をかけながら、トレイ20を使用できる。したがって、トレイ20の使用性を高めることができる。
【0031】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、トレイ20は、略Xリンク30を介して収納ケース10に組み付けられている例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、トレイ20は、公知のリンク(例えば、Xリンク)を介して収納ケース10に組み付けられていても構わない。
【符号の説明】
【0032】
1 リアシート(車両用リアシート)
2 シートクッション
3 シートバック
4 アームレスト
10 収納ケース(スライダ)
20 トレイ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックとから成り、アームレストが備えられている車両用リアシートであって、
シートクッションには、その前方に向けて引き出し可能なスライダが備えられており、
スライダには、トレイが収納されており、
トレイは、スライダを引き出すと、スライダに収納された収納状態からシートクッションに着座した乗員が使用可能な展開状態に切り替え可能となっていることを特徴とする車両用リアシート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用リアシートであって、
トレイは、スライダに対して昇降可能となるように収納状態から展開状態に切り替え可能となっていることを特徴とする車両用リアシート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用リアシートであって、
トレイは、アームレストの真下に設けられていると共に、その展開状態において、その高さ位置とアームレストの高さ位置とが略面一となっていることを特徴とする車両用リアシート。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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