説明

車両用リッドロック装置

【課題】製造が容易で低コストの車両用リッドロック装置の提供。
【解決手段】リッドロック装置1は、電動モータ3を作動させて、ウォーム4を介してウ
ォームホイール5を回動させることにより、ロックシャフト6をハウジング2に対し進退
させて、車両ボデーに設けられたリッドと係脱させる。ロックシャフト6の後端には、合
成樹脂材料にて一体成形された緊急用プルコード7が接続されている。緊急用プルコード
7は、ロックシャフト6に形成された接続孔65aに、シャフト係合部71の挿入部71
2を撓ませながら挿入して接続する。また、緊急用プルコード7のハンドル部72は、車
両ボデーの係合穴に、取付部722を撓ませながら挿入して接続する。リッドロック装置
1に不具合が発生し、電動モータ3によるロックシャフト6の戻し作動ができなくなった
場合、操作者が緊急用プルコード7を引っ張ってロックシャフト6を牽引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボデーに設けられたリッド体を閉止状態で固定する車両用リッドロック
装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両ボデーに設けられ、内部に給油口が収容されたリッドボックスを開閉するリッド体
を、閉止した状態で固定するためのリッドロック装置に関する従来技術があった(例えば
、特許文献1)。このリッドロック装置は、スプリングにより常にシャフト部材をリッド
ボックス内に突出する方向に付勢し、シャフト部材の先端をリッド体と係合させている(
ロック位置)。給油時には電動モータにより駆動されたウォームホイールによってシャフ
ト部材を引き戻し、リッド体との係合を解除している(アンロック位置)。
【0003】
ところで、通常、リッドロック装置のシャフト部材には、緊急時にリッド体との係合を
解除させるために、シャフト部材を引き戻す牽引手段が備えられている。上述した特許文
献1に開示されたリッドロック装置においても、シャフト部材の後端にシャフト部材をア
ンロック位置に引き戻す牽引用のワイヤが結ばれている。
【0004】
このワイヤのシャフト部材に結ばれた側と反対側の端部には、操作者が把持するための
ハンドル部材が接続されており、電動モータ等が故障してシャフト部材とリッド体との係
合解除ができない場合に、車両ボデーのトリム内に収容されたハンドル部材を操作者が引
っ張って、シャフト部材を引き戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−302680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたリッドロック装置においては、牽引用のワイヤの一端部を、シ
ャフト部材の後端に形成された貫通孔に挿通し折り返した後、ワイヤの途中部位に対して
カラー部材によりかしめて、シャフト部材に接続している。
一方、ワイヤの他端部は、操作者が把持するためのハンドル部材に挿通され折り返され
た後、前述した場合と同様に、ワイヤの途中部位に対してカラー部材によりかしめて、ハ
ンドル部材に接続されている。
【0007】
また、特許文献1に開示されたものではないが、ウェビング素材のベルトを牽引用部材
とし、ベルトの両端部をそれぞれシャフト部材またはハンドル部材に挿通した後、折り返
してミシン縫いをして接続しているリッドロック装置に関する従来技術もあった。
このように、従来技術によるリッドロック装置は、その製造工程において、ワイヤ等の
素材の両端部を、それぞれシャフト部材またはハンドル部材に挿通させた後にかしめる、
あるいは縫いつけるという作業を必要としている。したがって、ワイヤ等の長さを調整し
ながら接続するために生産効率が悪く、製造コストの増大を余儀なくされていた。
【0008】
また、ワイヤ等の長さを正確に調整するためゲージ等を必要とし、製造コストを一層増
大させるとともに、牽引用のワイヤは、通常、強度や防錆性の観点からステンレスにて形
成されている場合が多く、使用材料の点においてもコスト高になる要因を含んでいた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造が容易で低コストの
車両用リッドロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る車両用リッドロック装置の発明の構成
上の特徴は、ハウジング内に収容された駆動用モータと、ハウジング内に軸方向に移動可
能に支持され、一端がハウジングより突出して車両ボデーに設けられたリッド体と係合す
ることによりリッド体を開放不能にするとともに、駆動用モータの作動により後退し、リ
ッド体との係合が解除されるシャフト部材と、一側の端部がシャフト部材の他端と接続さ
れ、駆動用モータによってシャフト部材を移動させることが不可能な場合に、操作者が他
側の端部を牽引することにより、シャフト部材の一端をハウジング内に向かって後退させ
て、リッド体との係合を解除する操作用牽引紐と、を備える車両用リッドロック装置にお
いて、操作用牽引紐は、シャフト部材の他端に取り付けられるシャフト係合部と、操作者
が把持するハンドル部と、シャフト係合部とハンドル部とを繋ぐ紐状のコード部を備え、
シャフト係合部、ハンドル部およびコード部は、合成樹脂材料にて一体に形成されたこと
である。
【0010】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1の車両用リッドロック装置において、
シャフト部材およびシャフト係合部のいずれか一方には係合孔が設けられ、シャフト部材
およびシャフト係合部の他方には、係合孔に撓みながら挿入され、その後、復元して係合
孔に固定されるスナップフィットファスナーが形成されたことである。
【0011】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または2の車両用リッドロック装置に
おいて、ハンドル部には、車両ボデーに設けられた取付孔に撓みながら挿入され、その後
、復元して取付孔に固定されるスナップフィットファスナーが形成されたことである。
【0012】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至3のうちのいずれかの車両用リッ
ドロック装置において、シャフト部材の他端には、コード部と当接して、操作者によるコ
ード部の牽引方向を規制するガイド部が形成されたことである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る車両用リッドロック装置によれば、操作用牽引紐のシャフト係合部、ハ
ンドル部およびコード部が、合成樹脂材料にて一体に形成されたことにより、その長さを
調整する必要がなく、コード部をシャフト係合部およびハンドル部とかしめ等により接続
することなしに操作用牽引紐を形成することができる。したがって、部品点数の低減とと
もに、生産性を向上させることができ、製造コストの低減を可能にすることができる。
【0014】
請求項2に係る車両用リッドロック装置によれば、シャフト部材とシャフト係合部の接
続部位に、スナップフィットファスナーを形成したことにより、操作用牽引紐をシャフト
部材に接続する場合に、スナップフィットファスナーを係合孔に挿入するだけでよく、製
造が容易で低コストの車両用リッドロック装置にすることができる。
【0015】
請求項3に係る車両用リッドロック装置によれば、ハンドル部にスナップフィットファ
スナーが形成されたことにより、ハンドル部のスナップフィットファスナーを係合孔に挿
入するだけで、ハンドル部を車両ボデーに対して固定することができ、ハンドル部の車両
ボデーへの固定を容易にし、車両への取付コストを低減することができる。
【0016】
従来技術による車両用リッドロック装置においては、多くの場合、操作用牽引紐の端部
に設けられたハンドル部材と車両ボデーとに、それぞれ面ファスナー(マジックテープ(
登録商標))を貼付し、双方の面ファスナーを互いに係合させることで、ハンドル部材を
車両ボデーに固定していた。
【0017】
このため、取付部品点数の増大を招くとともに、製造工程において、車両ボデーの正確
な位置に対し、ずれ、剥がれ等がないように面ファスナーを貼付しなければならないため
、取付工数が増え製造コストをさらに増大させていた。
本発明の構成によれば、ハンドル部材および車両ボデーへの面ファスナーの貼付を不要
とし、その部品点数および貼付工程の双方の削減が相まって、大幅な製造コストの低減を
することができる。
【0018】
請求項4に係る車両用リッドロック装置によれば、シャフト部材の他端には、コード部
と当接して、操作者によるコード部の牽引方向を規制するガイド部が形成されたことによ
り、シャフト係合部がシャフト部材から外れる方向へ牽引されることを防止することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による車両用リッドロック装置の分解斜視図
【図2】図1に示した車両用リッドロック装置のアンロック位置にある状態を、カバーを取り外して内部を見た場合の正面図
【図3】ロック位置にある車両用リッドロック装置の内部を見た場合の正面図
【図4】車両用リッドロック装置のロックシャフトとリッドとの係合状態を示した部分図
【図5】図1に示した緊急用プルコードの全体図
【図6】図5に示したハンドルを背面方向から見た場合の斜視図
【図7】緊急用プルコードをロックシャフトに取り付けた状態の部分斜視図
【図8】図7に示した緊急用プルコードとロックシャフトとの接続部位を、反対側から見た場合の斜視図
【図9】図3のA−A断面図
【図10】図3のB−B断面図
【図11】ハンドル部を車体に取り付けた状態を側方から見た図
【図12】緊急用プルコードのコード部の変形実施形態を示した部分図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1乃至図11に基づき、本発明の一実施形態によるリッドロック装置1について説明
する。尚、特に断らなければ、図2における右方をリッドロック装置1の前方とし、左方
を後方として説明する。リッドロック装置1(本発明の車両用リッドロック装置に該当す
る)は、車両ボデー8に設けられ、内部に給油口(図示せず)が収容されたリッドボック
ス81を開閉するリッド82と係合して、リッド82(本発明のリッド体に該当する)を
開放不能とするものである(図4示)。
【0021】
図1に示すように、本実施形態によるリッドロック装置1は、ボデー21とカバー22
とによりアクチュエータハウジング2(本発明のハウジングに該当し、以下ハウジングと
言う)が形成され、ハウジング2内に電動モータ3(本発明の駆動用モータに該当する)
、ウォーム4、ウォームホイール5、ロックシャフト6(本発明のシャフト部材に該当す
る)が収容されて形成されている。
【0022】
ボデー21とカバー22はともに合成樹脂材料にて形成され、上述した内部構成品が収
容された後、互いに嵌合されたうえで、ボデー21の係止片211をカバー22の係止突
部221に係合させて一体化される。また、ボデー21の底面部212からは、ホイール
ストッパ213が突出している。ホイールストッパ213は、図1において上方から見た
形状が略四角筒形状を呈しており、ボデー21と一体成形により形成されている。
【0023】
電動モータ3のアウトプットシャフト31はウォーム4に圧入され、ウォーム4は電動
モータ3により回転可能とされている。ウォーム4は金属あるいは合成樹脂材料にて形成
され、外周面41上には歯部(図示せず)が形成されている。ウォーム4に電動モータ3
のアウトプットシャフト31が圧入(電動モータ3とウォーム4とが一体に)された後、
電動モータ3およびウォーム4は、ボデー21の底面部212上にそれぞれ配設される。
ボデー21の端子保持部214には、電力供給用の一対のモータ端子32が固定され、モ
ータ端子32は電動モータ3に電気的に接続される。
【0024】
ウォームホイール5は、合成樹脂材料にて外周面51が円弧状の略扇形に形成されてお
り、表裏を枢支孔52が貫通している。また、ウォームホイール5は、図1において下方
に突出した係合柱53を有し、図2に示すように、係合柱53の近傍には、同じく下方へ
と延びた平坦な第1ストッパ壁54が形成されている。一方、枢支孔52の近傍には、第
1ストッパ壁54と同方向へと延びた第2ストッパ壁55が形成されている。
【0025】
ウォームホイール5は、枢支孔52がボデー21の底面部212から突出したホイール
軸215に嵌合されることにより、ボデー21に対してホイール軸215回りに回転可能
に取り付けられる。ウォームホイール5の外周面51には、歯部(図示せず)が形成され
ており、上述したウォーム4の歯部と噛合している。
【0026】
ロックシャフト6は合成樹脂材料にて長尺状に一体成形されており、先端(図2におい
て右端)には、リッド82と係合するロック部61が形成されている。ロック部61は円
柱状に形成され、先端部にはテーパ部61aが設けられている(図4示)。ロック部61
と隣接する支持部62は、ロック部61よりも大径の円柱状を呈しており、支持部62に
は合成ゴム材料により形成されたシールリング67が装着される。ロックシャフト6のロ
ック部61と支持部62は、ボデー21のシャフト保持部216内に軸方向に移動可能に
挿入される。
【0027】
ロックシャフト6のほぼ中央部には、回避部63が所定距離に渡って形成されている。
回避部63は、ウォームホイール5を上方に重合配置するために、前述した支持部62の
上半分を厚み方向に取り去ったような形状を呈している。
また、回避部63の後方には、連動孔64がロックシャフト6の厚み方向に貫通して形
成されている。連動孔64には、上述したウォームホイール5に形成された係合柱53が
挿入されている。
上述した構成によりロックシャフト6は、ウォームホイール5と係合しながらハウジン
グ2内に軸方向(図2において左右方向)に移動可能に収容されている。
【0028】
また、ロックシャフト6の連動孔64よりも後方(図2において左方)には、平板部6
5が形成されており、平板部65には、後述する緊急用プルコード7の一端部が取り付け
られる接続孔65a(本発明の係合孔に該当する)が、連動孔64の軸方向と同方向に貫
通している。接続孔65aの背面(図9において上方)には、接続孔65aよりも大径の
段付孔65bが形成されている。
【0029】
さらに、ロックシャフト6の後端部には、緊急用プルコード7を支持するためのコード
ガイド部66(本発明のガイド部に該当する)が、平板部65と一体に形成されている。
コードガイド部66は、ロックシャフト6の軸方向に延びる押え部661と、押え部66
1に直交した保持部662とにより形成されており、その断面が略くの字状を呈している
(図7および図8示)。保持部662には、緊急用プルコード7のコード部73が挿入さ
れるガイド溝662aが貫通している。
【0030】
リッドロック装置1を形成する各構成部品をボデー21内に収容した後、ボデー21に
対してカバー22を嵌合させて、ボデー21の係止片211をカバー22の係止突部22
1に係合させて一体化する(前述)。これにより、電動モータ3、ウォーム4、ウォーム
ホイール5およびロックシャフト6を、ボデー21とカバー22とによりがたつき無く保
持することができる。ボデー21のシャフト保持部216の前端部に形成されたシール溝
216aには、合成ゴム材料により形成された防水リング23が装着される。
【0031】
図2に示すように、リッドロック装置1は、リテーナ83を介してリッドボックス81
の支持壁811に搭載される。リテーナ83はリッドロック装置1の構成外の部材であり
、支持壁811に貫通するように取り付けられている。リッドボックス81内(図2にお
いて支持壁811の右方)に突き出たリテーナ83の大径部831と支持壁811との間
には、シールプレート84が介装されており、リッドボックス81の内外を液密的に遮断
している。
リッドロック装置1のシャフト保持部216は、リテーナ83内に挿入されることによ
り支持壁811に固定され、シャフト保持部216とリテーナ83との間に介在する防水
リング23により、双方の間がシールされている。
【0032】
図1に示すように、リッドロック装置1のシャフト保持部216からは、操作レバー2
17が後方に延びており、操作レバー217の途中部位には係合部217aが突出してい
る。シャフト保持部216を、リテーナ83に対し図2において右方に挿入していくと、
係合部217aがリテーナ83の内周面と当接することにより、操作レバー217が図2
において上方へと撓められる。さらに、シャフト保持部216を挿入すると、操作レバー
217が復元して、係合部217aがリテーナ83の凹部832(図2示)と係合するこ
とにより、シャフト保持部216の抜け止めが行われる。
【0033】
シャフト保持部216をリテーナ83に装着した状態において、ロックシャフト6がハ
ウジング2に対し軸方向に移動しても、係合部217aと凹部832との係合により、リ
ッドロック装置1が車両ボデー8から抜けることが防止される。また、後述するように、
緊急用プルコード7により、ロックシャフト6がリッド82との係合が解除される位置に
向けて牽引された場合にも、リッドロック装置1が車両ボデー8から脱落することを完全
に防止することができる。
一方、リッドロック装置1を車両ボデー8から取り外す場合、操作者が操作レバー21
7を図2において上方へと付勢する。このようにして、係合部217aと凹部832との
係合を解除しながら、シャフト保持部216を、リテーナ83から図2における左方に引
き抜くことにより容易に取り外すことができる。
【0034】
図2に示したように、ロックシャフト6がリッド82と非係合状態(アンロック位置)
にあるリッドロック装置1において、電動モータ3を所定の作動条件で作動させる。これ
により、ウォーム4を介してウォームホイール5が、ホイール軸215を中心に図2にお
いて反時計回りに回動する。
このため、ウォームホイール5の係合柱53と連動孔64において係合したロックシャ
フト6が、ハウジング2に対し軸方向(図2において右方)に移動し、ロック部61がハ
ウジング2外に突出する(図3示:ロック位置)。この時、ロック部61はリッドボック
ス81内に突出し、リッド82と係合して開放不能な状態に保持する(図4示)。尚、図
4は、リッドロック装置1の前端部について、図3における上方より見た状態を示してい
る。
【0035】
ウォーム4により回転されたウォームホイール5は、第1ストッパ壁54がホイールス
トッパ213に当接することにより回動が停止される。電動モータ3と接続された図示し
ないコントローラは、ウォームホイール5の回動停止により発生した電動モータ3の負荷
電流を検出し、電動モータ3への電力の供給を停止する。
【0036】
また、図3に示すように、ロックシャフト6がロック位置にあるリッドロック装置1に
おいて、電動モータ3を所定の作動条件で作動させて、ウォームホイール5を上述した場
合と逆向きに(図3において時計回りに)回動させる。これにより、ロックシャフト6を
ハウジング2に対し軸方向(図3において左方)に移動させ、ロック部61をハウジング
2内に格納する(図2示:アンロック位置)。後退したロック部61は、リッド82との
係合が外れてリッド82を開放可能な状態にする。
【0037】
ウォーム4により逆回転されたウォームホイール5は、第2ストッパ壁55がホイール
ストッパ213に当接することにより回動が停止される。コントローラは、ウォームホイ
ール5の回動停止により発生した電動モータ3の負荷電流を検出し、電動モータ3への電
力の供給を停止する。
【0038】
次に、前述した緊急用プルコード7(本発明の操作用牽引紐に該当する)について詳述
する。図5に示すように、緊急用プルコード7は、一端部に設けられ前述したロックシャ
フト6の接続孔65aに装着されるシャフト係合部71と、他端部に形成され、緊急時に
操作者の手により把持されるハンドル部72と、シャフト係合部71とハンドル部72と
を繋ぐコード部73とにより形成されている。
緊急用プルコード7は、ナイロン等(これに限定されるべきものではない)の合成樹脂
材料による一体成形により形成されている。すなわち、シャフト係合部71、ハンドル部
72およびコード部73が、合成樹脂材料により一体的に形成されている。
【0039】
図5に示すように、シャフト係合部71は、真円状の円板部711と、円板部711上
から突出したほぼ円筒形の挿入部712を備えている。挿入部712には、その内周面の
対向する位置をつなぐように、ブリッジ713が形成されている。
また、挿入部712の円周上の対向する2箇所の位置に、矩形の貫通穴714(図5に
おいて一方のみ示す)が形成されており、それぞれの貫通穴714の円板部711の反対
側に位置する辺からは、半径方向外方にフック715が突出している(図9示)。各々の
フック715は片持ち状に形成されており、挿入部712の半径方向内方に撓み可能とな
っている。これにより、フック715を含んだ挿入部712は、スナップフィットファス
ナーとして形成されている。
挿入部712の外径は、ロックシャフト6の接続孔65aの内径よりもわずかに小さく
形成されており、双方のフック715の外縁同士の間の距離は、接続孔65aの内径より
も大きく形成されている(図9示)。
【0040】
次に、ハンドル部72の説明を行うが、図6における上方をハンドル部72の上方とし
て説明する。ハンドル部72は、平板を屈曲させた形状を呈する操作板721と、操作板
721の上部の一面から、ほぼ円筒状に突出した取付部722とを備えている(図5示)
。取付部722の円周上の対向する2箇所の位置には、それぞれスリット723が形成さ
れている。これにより、取付部722は半径方向内方(ハンドル部72の上下方向)に撓
み可能となっており、取付部722はスナップフィットファスナーとして形成されている

【0041】
また、取付部722の上端部には、上方に突出した係合用突起724が一つのみ形成さ
れている。さらに、図6に示すように、係合用突起724と対向した操作板721の部位
には、成形時に係合用突起724を形成するための型抜き孔725が形成されている。
取付部722の外径は、後述する車両ボデー8の取付壁85に形成された係合穴851
の内径よりもわずかに小さく形成されており、係合用突起724の外縁の取付部722の
中心からの距離は、係合穴851の半径よりも大きく形成されている(図11示)。
【0042】
シャフト係合部71とハンドル部72とを繋いでいるコード部73は、断面が真円状を
呈した紐状に形成されており、車両ボデー8のインナパネルとアウタパネル(ともに図示
せず)との間を通って配索される。コード部73は車両ボデー8内の他部品を回避して配
索するために、所定の柔軟性を有するとともに、操作者による引張り荷重に抗するように
、所定の強度を備えている。
【0043】
上述したシャフト係合部71をロックシャフト6に取り付ける場合、コードガイド部6
6のガイド溝662aにコード部73を挿入した後、シャフト係合部71の挿入部712
をロックシャフト6の接続孔65aに挿入していく。これにより、一対のフック715が
挿入部712の半径方向内方に撓みながら、挿入部712が接続孔65aに進入していく

その後、それぞれのフック715は接続孔65aを乗り越えると復元し、シャフト係合
部71は接続孔65aに固定される(図7および図8示)。この状態においてシャフト係
合部71は、フック715により接続孔65aからの脱落が防止されている。
【0044】
シャフト係合部71がロックシャフト6に取り付けられた状態で、円板部711は段付
孔65b内に位置している。挿入部712の軸方向において、フック715と円板部71
1との間の間隔は、接続孔65aが形成された平板部65の厚みと同等であるため、平板
部65はフック715と円板部711とにより挟持されている(図9示)。
シャフト係合部71がロックシャフト6に取り付けられると、コード部73におけるシ
ャフト係合部71の近傍部位は、コードガイド部66のガイド溝662aに挿通される。
この状態においてコード部73は、押え部661と保持部662とにより保持され、その
姿勢が維持されている(図7示)。
【0045】
一方、ハンドル部72は、車両ボデー8の取付壁85に取り付けられる(図11示)。
取付壁85は、これに限定されるべきものではないが、車両のトランク等を形成するイン
ナパネルにより形成されている。図11において、取付壁85の右方がトランク内に該当
しており、ハンドル部72は取付壁85の車両外側に取り付けられる。図11に示すよう
に、取付壁85には係合穴851(本発明の取付孔に該当する)が貫通している。
取付壁85にハンドル部72を取り付ける場合、係合穴851に係合用突起724を当
接させることにより、取付部722を半径方向内方に撓ませながら係合穴851に挿入し
ていく。
【0046】
その後、係合用突起724が係合穴851を乗り越えると、取付部722が復元して係
合穴851に固定される。取付部722の軸方向において、係合用突起724と操作板7
21との間の間隔は、取付壁85の厚みとほぼ同等であるため、取付壁85は係合用突起
724と操作板721とにより挟持され、ハンドル部72は取付壁85に対して、がたつ
かないように固定される。この状態において、係合用突起724の働きにより、取付部7
22が係合穴851から外れることが防止されている。
【0047】
また、図11に示すように、ハンドル部72が取付壁85に取り付けられた状態で、操
作板721の下方部と取付壁85との間には所定の間隙があり、操作者の手が入りやすく
なっている。
リッドロック装置1に不具合が発生し、電動モータ3によるロックシャフト6のアンロ
ック位置への戻し作動ができなくなった場合、操作者は緊急用プルコード7を用いて、自
らの力でロックシャフト6を牽引する。
【0048】
この場合、操作者は車両のトランク等のトリムを取り外し、インナパネルに形成された
作業孔に手を進入させ、インナパネルに取り付けられた操作板721の下方部を掴む。ハ
ンドル部72を、取付部722を中心に図11において時計回りに回転させると、係合用
突起724と係合穴851との係合が解除され、ハンドル部72を取付壁85から容易に
取り外すことができる(図11において、矢印にて示す)。
【0049】
その後、操作者がハンドル部72を牽引することにより、ウォームホイール5、ウォー
ム4および電動モータ3を回転させながら、ロックシャフト6をアンロック位置へと移動
させ、リッド82との係合を解除することができる。リッド82は図示しないスプリング
によって、リッドボックス81を閉鎖する方向に付勢されており、給油が終了した後に、
再びロックシャフト6をロック位置に移動させる必要はない。
緊急用プルコード7が引っ張られた時、ロックシャフト6のコードガイド部66がコー
ド部73に当接し、コード部73の牽引方向が接続孔65aの軸心に対してほぼ垂直方向
に規制されるため、シャフト係合部71がこじられて接続孔65aから脱落することはな
い。
【0050】
本実施形態によれば、緊急用プルコード7のシャフト係合部71、ハンドル部72およ
びコード部73が、合成樹脂材料にて一体に形成されたことにより、その長さを調整する
必要がなく、コード部73とシャフト係合部71およびハンドル部72とを、かしめ等に
より接続することなしに緊急用プルコード7を形成することができる。したがって、部品
点数の低減とともに、生産性を向上させることができ、製造コストの低減を可能にするこ
とができる。
【0051】
また、シャフト係合部71が、スナップフィットファスナーを備えていることにより、
緊急用プルコード7をロックシャフト6に接続する場合に、挿入部712を接続孔65a
に挿入するだけでよく、製造が容易で低コストのリッドロック装置1にすることができる

また、ハンドル部72には、スナップフィットファスナーが形成されたことにより、取
付部722を係合穴851に挿入するだけで、ハンドル部72を車両ボデー8に対して固
定することができ、ハンドル部72の車両ボデー8への固定を容易にし、車両への取付コ
ストを低減することができる。
【0052】
従来技術によるリッドロック装置においては、多くの場合、緊急用プルコードの端部に
設けられたハンドル部と車両ボデーとに、それぞれ面ファスナーを貼付し、双方の面ファ
スナーを互いに係合させることで、ハンドル部を車両ボデーに固定していた。
このため、取付部品点数の増大を招くとともに、製造工程において、車両ボデーの正確
な位置に対し、ずれ、剥がれ等がないように面ファスナーを貼付しなければならないため
、取付工数が増え製造コストをさらに増大させていた。
【0053】
本実施形態の構成によれば、ハンドル部および車両ボデーへの面ファスナーの貼付を不
要とし、その部品点数および貼付工程の双方の削減が相まって、大幅な製造コストの低減
をすることができる。
また、ロックシャフト6の後端には、緊急用プルコード7のコード部73と当接して、
操作者によるコード部73の牽引方向を規制するコードガイド部66が形成されたことに
より、シャフト係合部71がロックシャフト6から外れる方向へ牽引されることを防止す
ることができる。
【0054】
図12は、緊急用プルコード7のコード部73についての変形実施形態を示している。
図12に示されたように、コード部74は合成樹脂材料を用いて成形により波状に形成さ
れている。このため、コード部74は長さ方向に伸縮自在であり、シャフト係合部71の
取付位置とハンドル部72の取付位置との間の距離の様々な変化に対応できる。したがっ
て、リッドロック装置1を、あらゆる車種あるいは様々な仕様の車両に搭載することがで
きるとともに、同一車種の取付寸法のばらつきにも対応できる。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張す
ることができる。
フック715を有する挿入部712をロックシャフト6側に形成し、挿入部712が係
合する接続孔65aをシャフト係合部71側に形成してもよい。
また、本発明を、特許公開公報である特開平4−302680号に記載されたような、
スプリング等によりロックシャフト6が常にロック位置に向けて付勢されており、電動モ
ータ3を作動させることにより、付勢力に抗してロックシャフト6をアンロック位置に移
動させるリッドロック装置に適用してもよい。
また、ハンドル部72は、面ファスナーにより車両ボデー8に取り付けられていてもよ
い。
【符号の説明】
【0056】
図面中、1はリッドロック装置(車両用リッドロック装置)、2はハウジング、3は電
動モータ(駆動用モータ)、6はロックシャフト(シャフト部材)、7は緊急用プルコー
ド(操作用牽引紐)、8は車両ボデー、65aは接続孔(係合孔)、66はコードガイド
部(ガイド部)、71はシャフト係合部、72はハンドル部、73はコード部、82はリ
ッド(リッド体)、715はフック(スナップフィットファスナー)、724は係合用突
起(スナップフィットファスナー)、851は係合穴(取付孔)を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に収容された駆動用モータと、
前記ハウジング内に軸方向に移動可能に支持され、一端が前記ハウジングより突出して
車両ボデーに設けられたリッド体と係合することにより、前記リッド体を開放不能にする
とともに、前記駆動用モータの作動により後退し、前記リッド体との係合が解除されるシ
ャフト部材と、
一側の端部が前記シャフト部材の他端と接続され、前記駆動用モータによって前記シャ
フト部材を移動させることが不可能な場合に、操作者が他側の端部を牽引することにより
、前記シャフト部材の前記一端を前記ハウジング内に向かって後退させて、前記リッド体
との係合を解除する操作用牽引紐と、
を備える車両用リッドロック装置において、
前記操作用牽引紐は、
前記シャフト部材の前記他端に取り付けられるシャフト係合部と、
操作者が把持するハンドル部と、
前記シャフト係合部と前記ハンドル部とを繋ぐ紐状のコード部を備え、
前記シャフト係合部、前記ハンドル部および前記コード部は、合成樹脂材料にて一体に
形成されたことを特徴とする車両用リッドロック装置。
【請求項2】
前記シャフト部材および前記シャフト係合部のいずれか一方には係合孔が設けられ、
前記シャフト部材および前記シャフト係合部の他方には、前記係合孔に撓みながら挿入
され、その後、復元して前記係合孔に固定されるスナップフィットファスナーが形成され
たことを特徴とする請求項1記載の車両用リッドロック装置。
【請求項3】
前記ハンドル部には、前記車両ボデーに設けられた取付孔に撓みながら挿入され、その
後、復元して前記取付孔に固定されるスナップフィットファスナーが形成されたことを特
徴とする請求項1または2に記載の車両用リッドロック装置。
【請求項4】
前記シャフト部材の前記他端には、前記コード部と当接して、操作者による前記コード
部の牽引方向を規制するガイド部が形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のうちの
いずれか一項に記載の車両用リッドロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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