車両用側突検出装置及びそれを備えた車両用乗員保護システム
【課題】広範囲の衝突検出を可能とし、省スペース化、および、配置の容易化を図ることができる車両用側突検出装置を提供する。
【解決手段】側面ドア1は、外板11と、内板12と、ステー31と、位置センサ32と、補強部材13を備えている。内板12と外板11との間はドアガラス30とドアガラス30の下辺に取り付けられたステー31の移動空間である。コイル2は補強部材13に配置され、内板12側に磁界を発生している。コイル2は磁性体である内板12を内板側部材として、内板12との離隔距離の変化を磁束の変化として検出する。そして、この検出値に基づいて判定手段は、位置センサ32が検出したステーの車両上下方向(垂直方向)の位置により判定方法を選択して、車両と物体とが衝突したことを判定する。
【解決手段】側面ドア1は、外板11と、内板12と、ステー31と、位置センサ32と、補強部材13を備えている。内板12と外板11との間はドアガラス30とドアガラス30の下辺に取り付けられたステー31の移動空間である。コイル2は補強部材13に配置され、内板12側に磁界を発生している。コイル2は磁性体である内板12を内板側部材として、内板12との離隔距離の変化を磁束の変化として検出する。そして、この検出値に基づいて判定手段は、位置センサ32が検出したステーの車両上下方向(垂直方向)の位置により判定方法を選択して、車両と物体とが衝突したことを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面ドアに物体が衝突したことを検出する車両用側突検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の側面ドアに検出センサを搭載する車両用側突検出装置として、例えば、特開平5−93735号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1に記載の車両用側突検出装置では、検出センサの側面ドアへの取り付け構造は、内板に固定された支脚を介して補強部材に近接するように内板側に取り付けられている。検出センサは、補強部材に対して内板側に配置されており、物体が側面ドアに衝突した場合は補強部材が内板側に変形するので、検出センサは補強部材の変形にともなう衝撃を受け作動する。これにより検出センサが送出する検出信号に基づいて車両用側突検出装置は、物体の車両への衝突を検出することができる。なお、検出センサとしては、衝撃センサや電気コイルが使用されている。
【特許文献1】特開平5−93735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、補強部材と内板との間には、側面ドアのドアガラスを上下に開閉するためのスペースが設けられている。そして、ドアガラスを固定し、上下に駆動するためのステーはドアガラス下辺に設けられており(図1)、ドアガラスの開閉にともなってステーが上下に移動する。従って、ドアガラス及びステーが上下に移動する範囲には検出センサを特許文献1に記載されたような方法で配置しづらい。ステーとスペース的に干渉しない位置に配置すると、検出センサを配置する位置が側面ドアの車両前方及び後方の位置に限定されてしまい、側面ドアの車両前後方向にわたる広範囲の衝突検出が困難になるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、距離センサ、特にコイルの磁束を利用して側面ドアの部材の距離の変化に基づいて、車両と物体との衝突を検出する側突検出装置において、側面ドアへの物体の広範囲の衝突検出を可能とし、省スペース化、および、配置の容易化を図ることができる車両用側突検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<第一発明:ステーの位置に応じて車両と物体との衝突判定方法を切り替える発明>
第一発明の車両用側突検出装置は、車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
前記内板、および、前記内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材と前記補強部材との離隔距離を検出する距離センサと、
前記補強部材と前記内板側部材との間に挿入され得る前記側面ドアのドアガラスの位置、または、前記ドアガラスを固定して前記ドアガラスを上下移動させるためのステーの位置を検出する位置センサと、
前記距離センサおよび前記位置センサの出力値に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
第一発明の車両用側突検出装置において、距離センサは、内板、および、内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材、あるいは、補強部材に対して離隔して配置されている。そして、距離センサは、内板側部材と補強部材との離隔距離を検出している。さらに、車両用側突検出装置には位置センサが備えられており、当該位置センサは、ドアガラスの位置、またはドアガラスを固定して前記ドアガラスを上下移動させるためのステーの位置を検出する。判定手段は、距離センサが検出した離隔距離に基づいて車両と物体とが衝突したか、否かを判定する。ここで、距離センサと内板側部材、または距離センサと補強部材の間にステーが存在すると、距離センサが離隔距離を正確に検出することができないおそれがある。すなわち、車両と物体との衝突の判定に誤差が生じるおそれがある。しかし、本発明の車両用側突検出装置によれば、位置センサにより検出されたドアガラスまたはステーの位置を考慮して、衝突判定を行っているため、衝突判定の誤差が発生することを防止できる。なお、距離センサとしては、検出部材から離隔して配置されて検出部材の変位を検出するもので、磁気を利用するもの、レーザなど光線を利用するもの等が考えられる。
【0007】
ここで、第一発明の好適な態様として、前記車両用側突検出装置の前記判定手段は、前記位置センサにより検出される前記ドアガラスの位置または前記ステーの位置に応じて、前記車両と物体との衝突の判定方法を切り替える構成となっている。このように、ドアガラスまたはステーの位置に応じて判定方法を切り替えることにより、衝突判定に際してステーの影響を確実に排除できる。特に、高速な判定が可能となる。
【0008】
さらに、前記判定手段は、前記ステーが前記補強部材と前記内板側部材との間に位置すると前記位置センサにより検出された場合に、前記距離センサにより検出される前記離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて前記車両と物体との衝突を判定し、
前記ステーが前記補強部材と前記内板側部材との間以外に位置すると前記位置センサにより検出された場合に、前記距離センサにより検出される前記離隔距離または当該離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する。
【0009】
この構成により、本発明では、位置センサによりステーの位置を検出し、検出したステーの位置に基づき衝突の判定方法を切り替えている。ステーが補強部材と内板側部材との間に位置している場合には、前述したように距離センサは、補強部材と内板側部材との離隔距離を検出しているので、距離センサは、正確に離隔距離を検出することができない。しかし、距離センサが検出した離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて衝突を判定すれば、仮に距離センサが補強部材とステーとの離隔距離を検出してしまったとしても、距離センサにより検出される離隔距離そのものとは無関係に、衝突を正確に検出することができる。
【0010】
また、ステーが補強部材と内板側部材との間に位置していない場合には、距離センサが検出した離隔距離または離隔距離の単位時間あたりの変化量のどちらに基づいて判定しても正確な判定結果が得られる。
【0011】
従って、ドアガラスの開閉状態により補強部材と内板側部材との間にステーが存在する可能性のある位置に距離センサを配置しても、正確に衝突の判定が可能となり、距離センサの配置位置がステーの存在により限定されることなく、広範囲に配置することができる。なお、ドアガラスの位置の検出もドアガラスの位置からステーの車両上下方向の位置を知るためのものである。
【0012】
<第一発明の他の好適な態様>
第一発明の構成において、前記内板側部材は、金属体または磁性体からなり、前記距離センサは、前記補強部材に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する構成とするとよい。
【0013】
あるいは、第一発明の構成において、前記補強部材は、金属体または磁性体からなり、前記距離センサは、前記内板側部材に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する構成でもよい。
【0014】
本構成では、距離センサであるコイルが発生している磁界は、内板側部材と補強部材との間に発生する。コイルが補強部材に固定されている場合には、物体が外板に衝突して補強部材が車室内側へ変形し、補強部材が内板に近づくように移動した場合、この移動に伴い、コイルが発生する磁界によって、内板側部材である内板または内側部材に渦電流が流れる。或いは、この移動前から渦電流が発生していた場合には、移動に伴って渦電流の量が変化(増加)する。この渦電流の発生または増加による磁界が発生または増加することで、コイルの磁束が減少するように変化する。このように、コイルの磁束は、内板側部材とコイルとの離隔距離に応じて変化する。また、コイルが内板側部材に固定されている場合には、物体が外板に衝突して補強部材が車室内側へ変形し、補強部材が内板に近づくように移動すると、補強部材にコイルが発生する磁界によって渦電流が流れる。つまり、コイルが発生する磁界の範囲が、側突検出可能範囲となる本態様によれば、上記の第一発明の効果が顕著となる。
【0015】
つまり、本態様の車両用側突検出装置により側突検出可能な範囲は、特許文献1に記載のセンサのように支脚等で保持していないので、センサの配置個所が限定されることがなく、またステーの車両上下方向における位置の影響も少なくできるので広範囲とすることが可能である。そして、側突検出可能な範囲を広範囲とした場合であっても、1または少数のコイルを設置することで足りるため、結果として、省スペース化、および、配置の容易化を図ることができる。
【0016】
さらに、補強部材に取り付けられたコイルと内板側部材との間の距離に応じて変化するコイルの磁束、あるいは内板側部材に取り付けられたコイルと補強部材との間の距離に応じて変化するコイルの磁束に基づいて側突検出を行っているため、外板が変形したとしても、補強部材が変形しない程度の衝撃であれば、コイルと内板側部材との離隔距離は変化せず、衝突していないと判定し、乗員保護装置の起動をしないようにできる。一方、補強部材が変形し、コイルと内板側部材との離隔距離が変化するような衝撃を受けた場合には乗員保護が必要な状態と考えられ、この場合には、確実にコイルの磁束が変化することにより衝突検出ができる。
【0017】
さらに、前記ステーは、金属体または磁性体からなる場合であって、上述したように、距離センサとしてコイルを適用する場合に、本発明を適用するとよい。一般に、ステーは金属体または磁性体から形成されることが多い。このような場合に、コイルの磁束により衝突判定を行うと、ステーがコイルの磁束へ及ぼす影響は、非常に大きい。そこで、位置センサにより検出される位置に応じて衝突判定することで、影響が大きいステーが存在していたとしても、確実に衝突判定ができる。
【0018】
さらに、好適な態様として、前記距離センサにより検出される前記離隔距離は、前記磁束の量の大きさに対応し、前記距離センサにより検出される前記離隔距離の単位時間当たりの変化量は、前記磁束の単位時間あたりの変化量に対応する。
【0019】
すなわち、本態様の車両用側突検出装置は、衝突を検出する手段として、コイルが検出する磁束の量の大きさから離隔距離を検出する方法と、コイルが検出する磁束の単位時間あたりの変化量から離隔距離を検出する方法とを備えている。そして、ステーの位置により、この両方法を選択しているので、正確にかつ確実に側突検出が可能となる。また、両方法を併用する場合には、上記の効果に加えて、さらにより早期に側突検出が可能となる。
【0020】
すなわち、ステーがコイルと内板側部材、または補強部材との間に存在しない場合には、コイルが検出する磁束の量の大きさは、コイルと内板側部材、または補強部材との離隔距離を正確に反映している。従って、磁束の量の大きさ、または磁束の単位時間あたりの変化量のどちらに基づいて衝突の判定を行っても正確な判定が可能である。
【0021】
一方、ステーがコイルと内板側部材、または補強部材との間に存在する場合には、磁性体であるステーはコイルが検出する磁束の量に影響を与える。従って、コイルの検出する磁束の量の大きさは内板側部材との離隔距離を正確に反映するものとはならない。しかし、磁束の単位時間あたりの変化量に基づいて判定すれば、コイルと内板側部材、または補強部材との離隔距離が零(磁束の単位時間あたりの変化量も零となる)となるまで磁束の量が変化するので衝突を検出することが可能となる。
【0022】
さらに、好適な態様として、前記コイルの車両上下方向幅は、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。コイルの車両上下方向幅をステーの車両上下方向幅より大きく設定することで、ドアガラスの開閉状態により、ステーがコイルと内板側部材の間に位置しても、ステーの磁束への影響を軽減することができる。これにより、ステーがコイルと内板側部材の間に位置している場合でも磁束に基づきコイルと内板側部材との離隔距離を検出する判定方法を使うことも可能となる。
【0023】
また、この場合の好適な態様として、前記車両用側突検出装置は、さらに、前記コイルは、同一平面上に複数巻回されており、前記コイルの最内周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。同一平面上に複数巻回されているコイルにおいては、内周側ほど磁束が強く分布する。つまり、コイルの内周側形状の影響が大きくなる。そこで、上記のように設定することで、よりステーの磁束への影響を少なくすることができる。
【0024】
または、コイルは、同一平面上に複数巻回されており、コイルの最外周における車両上下方向幅が、ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。コイル全体の大きさが検出範囲に影響を及ぼす。従って、上記のように設定することで、検出感度の低下を防止しつつ、ステーの磁束への影響を低減することができる。
【0025】
上記のように、コイルの車両上下方向幅とステーの車両上下方向幅との関係を設定した構成の車両用側突検出装置においては、前記した磁束の量の大きさに基づく判定方法と磁束の単位時間あたりの変化量に基づく衝突の判定方法とを備え、どちらの判定方法を用いてもよい。
【0026】
<第二発明:コイルの車両上下方向幅をステーの車両上下方向幅より大きく設定した発明>
第二発明の車両用側突検出装置は、
車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
前記内板、および、前記内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材と前記補強部材との離隔距離を検出する距離センサと、
前記距離センサの出力値に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する判定手段と、
を備える車両用側突検出装置であって、
前記補強部材および前記内板側部材の少なくとも一方は、金属体または磁性体からなり、
前記距離センサは、前記補強部材および前記内板側部材の他方に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、
前記コイルの車両上下方向幅は、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定され、
前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定することを特徴とする。
【0027】
第二発明によれば、コイルの車両上下方向幅をステーの車両上下方向幅より大きく設定することで、ドアガラスの開閉状態により、ステーがコイルと内板側部材の間に位置しても、ステーの磁束への影響を軽減することができる。これにより、ステーがコイルと内板側部材の間に位置している場合でも磁束に基づきコイルと内板側部材との離隔距離を検出する判定方法を使うことも可能となる。
【0028】
第二発明の好適な態様として、前記車両用側突検出装置は、さらに、前記コイルは、同一平面上に複数巻回されており、前記コイルの最内周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。同一平面上に複数巻回されているコイルにおいては、内周側ほど磁束が強く分布する。つまり、コイルの内周側形状の影響が大きくなる。そこで、上記のように設定することで、よりステーの磁束への影響を少なくすることができる。
【0029】
第二として、本発明において、コイルは、同一平面上に複数巻回されており、コイルの最外周における車両上下方向幅が、ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。コイル全体の大きさが検出範囲に影響を及ぼす。従って、上記のように設定することで、検出感度の低下を防止しつつ、ステーの磁束への影響を低減することができる。
【0030】
上記のように、コイルの車両上下方向幅とステーの車両上下方向幅との関係を設定した構成の車両用側突検出装置においては、前記した磁束の量の大きさに基づく判定方法と磁束の単位時間あたりの変化量に基づく衝突の判定方法とを備え、どちらの判定方法を用いてもよい。
【0031】
<車両用乗員保護システムについて>
以上のように構成した車両用側突検出装置の衝突判定結果を、乗員保護装置を作動させる際のトリガとして利用することが可能である。ここで、乗員保護装置とは、車両の衝突発生時に動作して乗員を衝撃から保護する装置であり、エアバッグや、シートベルトテンショナーなどが考えられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、側面ドア内に配置されたコイルの磁束等を利用した距離センサを備えた車両用側突検出装置において、距離センサの配置をドアガラスの開閉にともない上下に移動するステーとスペース的に干渉することのない配置とし、かつ、磁束を検出するコイルへの影響も少なくなる構成とし、乗員保護が必要な衝突による車両変形を確実、かつ広範囲に検出可能とした車両用側突検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態についてより詳しく説明する。
【0034】
<第一実施形態>
第一実施形態の車両用側突検出装置について、図1〜図8を参照して説明する。第一実施形態は、平面状コイル21が補強部材13に直接取り付けられた形態であって、平面状コイル21と内板12との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0035】
図1は、図2の側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図(図2のI−I断面図)である。なお、図1において側面ドア1の上方と下方は便宜上省略している。図2は、本発明が適用される側面ドア1を車室内側から見た斜視図であって、内板12の一部を説明の便宜上取り除いた状態を示す図である。図3は、コイル2を示す側面図である。図4は、内板12と平面状コイル21との離隔距離に対する平面状コイル21のインダクタンスLsの関係を示す図である。図5は、車両用側突検出装置を示す回路構成図である。図6は、コイル2と内板12との離隔距離とコイル2の検出する磁束の量の関係を示すグラフである。図7は、衝突発生からの経過時間に対する磁束の量の単位時間あたりの変化量(時間微分値)の絶対値を示す図である。図8は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図で、コイル2とステー31の位置関係の説明図である。
【0036】
図1および図2に示すように、側面ドア1は、車外側に位置する外板11と、外板11から車室内側に離隔して且つ外板11に対向して配置される磁性体(または金属体)の内板12とを備える。さらに、側面ドア1は、円柱棒状からなり、車両前後方向に延びるように、外板11と内板12との間のうち外板11側であって、車両上下方向のほぼ中央に配置されている補強部材13を備えている。つまり、補強部材13は、内板12に対向して離隔配置されている。この補強部材13は、少なくとも外板11の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する。つまり、外板11に物体が衝突した場合に、曲げ剛性の低い外板11が変形したとしても、補強部材13により側面ドア1全体が変形することを抑制している。ここで、第一実施形態においては、内板12が本発明における内板側部材である。
【0037】
補強部材13と内板12との間には、ドアガラス30が上下に移動するスペースが設けられている。また、ドアガラス30の下辺に固定され、ドアガラス30を上下に移動させるためにパワーウインド機構(図示せず)のステー31が位置している。図1において、ドアガラス30が上部に位置している状態(窓が閉まっている状態)を実線で示し、ドアガラス30が下部に位置している状態(窓が開いている状態)を一点鎖線で示している。
【0038】
従って、ドアガラス30及びステー31は、窓の開閉にともなって図1の補強部材13と内板12の間を上下に移動する。さらに、図1、図2に示すように、側面ドア1の下部であってステー31の下方にはステー31に対向して位置センサ32が配置されている。位置センサ32は、ステー31の位置センサ32からの距離を検出して距離データを衝突判定手段60(図5)に送出する。なお、位置センサ32は、ドアガラス30の車両上下方向における位置を検出するものでもよい。位置センサ32がドアガラス30の位置を検出する場合は、ドアガラス30の位置からステー31の位置を衝突判定手段60において算出する。
【0039】
また、図1、図2に示すように、補強部材13の内板12側には、平面状のコイル2が配置されている。そして、コイル2は、図示しない発信器から交流電圧を供給されてコイル2の法線方向(コイル2のコイル軸方向)、すなわち、平面状のコイル2と対向する内板12の方向に磁界を発生している。なお、コイル2は、本発明における距離センサに該当する。
【0040】
次に、本実施形態のコイル2について説明する。補強部材13は、内板12に対向して離隔配置されており、少なくとも外板11の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する。つまり、外板11に物体が衝突した場合に、曲げ剛性の低い外板11が変形したとしても、補強部材13により側面ドア1全体が変形することを抑制している。しかし、補強部材13が内板12側に変形するような衝突である場合、補強部材13に取り付けられたコイル2も内板12側に移動する。従って、コイル2と内板側部材である内板12との離隔距離が変化する。この離隔距離の変化はコイル2の磁束の量の変化として検出回路(本発明の検出手段に該当する)で検出される。
【0041】
コイル2は、図3に示すように、全体として平面状に形成されている。このコイル2は、平面状コイル21と、一対のフィルム22とから構成されている。平面状コイル21は、例えば銅などの導電性材料により平面状に巻回するようにパターン印刷形成されている。一対のフィルム22は、平面状コイル21を両面から挟持して、平面状コイル21が露出しないように被覆している。このフィルム22は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などの可撓性材料により薄膜状に形成されている。つまり、フィルム22は、屈曲自在である。また、平面状コイル21自体についても屈曲変形可能である。従って、コイル2全体として、屈曲変形可能であり、非常に柔軟性が高い。つまり、少なくともコイル2は補強部材13よりも柔軟性が高いため、補強部材13が屈曲した場合であっても、コイル2は破損することなく屈曲する。
【0042】
本実施形態のコイル2と内板12との離隔距離と、コイル2の磁束との関係について図4を参照して説明する。上記したように、側面ドア1の外板11に物体が衝突すると、外板11が車室内側に変形する。そして、この衝撃が大きく、補強部材13を車室内側へ変形させると補強部材13とともにコイル2も内板12側へ移動させる。これにより、補強部材13に取り付けられたコイル2と内板12との離隔距離が短くなる。そうすると、コイル2が発生する磁界によって、内板12に渦電流が流れ内板12に磁界が発生する。磁界の方向は、内板12とコイル2とが対向する方向である。つまり、衝突によって内板12とコイル2との離隔距離が短くなることに伴って内板12に生じた渦電流によって発生したコイル2に鎖交する磁界、すなわちコイル2を通過する磁束が増加する。この磁束はコイル2の磁束を減ずるように作用するので、コイル2のインダクタンスが減少することとなる。
【0043】
図4は、内板12と平面状のコイル2との離隔距離と、コイル2のインダクタンスLsとの関係を示す図である。図4のグラフにおいて、例えば、衝突前のコイル2と内板12との離隔距離をdとし、衝突後の離隔距離をd1と短くなったとすると、コイル2のインダクタンスLsは、図の縦軸に示すように衝突前のAから衝突後のA1へと減少する。このように、コイル2のインダクタンスLsは、内板12とコイル2との離隔距離の変化に応じて変化する。なお、側面ドア1の外板11に物体が衝突した場合であっても、補強部材13に変形が及ばなければ、コイル2のインダクタンスLsは変化しない。
【0044】
次に、本実施形態の車両用側突検出装置は、図5に示すように、発振回路40と、検出回路50と、衝突判定手段60、位置センサ32とから構成される。衝突判定手段60は本発明の判定手段に該当する。
【0045】
検出回路50はコイル2と検出抵抗Roを備えている。コイル2はインダクタンスLsと抵抗Rsの直列回路に相当する。コイル2の一端は発振回路40に接続され、他端は検出抵抗Ro及び衝突判定手段60に接続されている。発振回路40は発振周波数Fの交流電圧Viを検出回路50に印加している。ここで、上記したように、衝突によりコイル2と内板12との離隔距離が小さくなった場合には、コイル2のインダクタンスLsは減少する。コイル2のインダクタンスLsが減少することにより、コイル2のインピーダンスが小さくなる。従って、検出抵抗Roの検出電圧Voは相対的に大きくなる。衝突判定手段60は、検出回路50が出力する検出電圧Voに基づいて物体が衝突したか否かを判定する。
【0046】
次に、本実施形態の衝突判定手段について、図6、図7を参照して説明する。図6は、コイル2と内板12との離隔距離と、コイル2の検出した磁束の量との関係を示すグラフである。図6において、横軸はコイル2の内板12側への移動距離を表している。縦軸はコイル2と錯交する磁束の量の大きさを表している。図6に示すように、衝突まではコイル2と内板12の離隔距離は変化しないので磁束の変位の大きさも変わらず一定であるが、衝突によりコイル2が内板12に近づくことにより磁束の量の大きさは小さくなる。すなわち、コイル2の移動距離が大きい(コイル2が内板12に近づく)程、磁束の量の大きさは小さくなる。本実施形態では、この磁束の量の大きさがあらかじめ設定された一定の値(図6の第一閾値)より小さくなった場合に、衝突であると判定する。なお、コイル2の磁束の量の大きさは、上記したように、図5に示す検出回路50の検出抵抗Roの検出電圧Voとして検出される。従って、本実施形態の検出回路では、コイル2の移動距離が大きくなる程(コイル2が内板12に近づく程)、磁束の量の大きさが小さくなり、コイル2の自己インダクタンスLsは小さくなるので、検出電圧Voは大きくなる。
【0047】
さらに、本実施形態の衝突判定手段は、以下の方法によっても衝突か否かの判定をおこなっている。図7は、検出電圧Voに基づいて、コイル2の量の単位時間当たりの変化量を算出したものである。縦軸は磁束の量の時間変化量であり、横軸は衝突からの時間を表している。図7に示されているように、衝突までは、コイル2に錯交する磁束の量に変化がないので、磁束の量の時間変化量は零である。しかし、衝突直後は磁束の量の時間変化量が大きい(コイル2が急速に内板12側に移動する)、そして、変形が終わった時点で時間変化量は再び零となる。ここで、磁束の量の時間変化量に閾値(図7の第2閾値)を設定して、その閾値を超えた場合に、衝突による変形であると判定する。
【0048】
上記したように、本実施形態は、二つの衝突判定方法を備えているが、本実施形態の特徴は、この二つの衝突判定方法についてステー31の車両上下方向(側面ドア1の垂直方向)の位置によって、判定方法を選択していることである。以下、図1及び図8に基づいて説明する。
【0049】
図1に図示されているステー31(実線及び一点鎖線)は、コイル2の上下の範囲(h)には入っていない。この場合、本発明では、ステーはコイルと内板側部材との間以外の位置にあると定義している。一方、図8に示すようにステー31の一部でもコイル2の上下の範囲(h)内に入っているときは、ステーはコイルと内板側部材との間に位置すると定義する。なお、コイル2の上下の幅(h)は、図3の平面状コイル21のように巻回されているコイル(巻線)の最外周の上下の幅とする。
【0050】
そして、ステー31がコイル2と内板側部材である内板12との間に位置していないときには、上記の二つの衝突判定方法のうちのどちらかを用いて衝突の判定を行う。あるいは、二つの衝突判定方法の両方を用い、時間的に早い方の判定方法で衝突の判定を行ってもよい。両方法を併用して時間的に早い方の判定方法で衝突の判定を行う場合は、より早期に衝突判定を行うことができる。
【0051】
一方、ステー31がコイル2と内板側部材である内板12との間に位置しているときには、上記の二つの衝突判定方法のうちの磁束の量の時間変化量に基づく判定方法により衝突の判定を行う。このような構成とすることで、本発明は、たとえステーがコイル2の磁束の検出スペースに入ってきて、磁束の量の検出によるコイル2と内板12との離隔距離の変化を正確に検出できない場合でも、磁束の量の時間変化量に基づく衝突判定方法により衝突を正確に検出できる。従って、衝突検出用のコイル2を広範囲に配置することができる。なお、上記のステー31の車両上下方向の位置は、図1及び図2に示されているように、側面ドア1の下方であって、ステー31が上下に移動する垂直面と同一の垂直面内にステー31を垂直に見上げるように配置された位置センサにより検出されている。そして、検出された位置データは衝突判定手段60に送られる(図5)。
【0052】
<第一実施形態の変形態様>
本変形態様の車両用側突検出装置について、図9を参照して説明する。本変形態様の第一実施形態と異なる点は、コイル2が、シールド部材100を介して補強部材13に取り付けられる点である。従って、本項では相違点についてのみ説明する。なお、本変形態様も第一実施形態と同様に、コイル2と内板12との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0053】
図9は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第一実施形態においては、コイル2を補強部材13に直接取り付けたが、本変形態様においては、コイル2をシールド部材100に取り付けている。シールド部材100は、矩形の平面状からなり、例えば鉄などの金属体または磁性体からなる。あるいは、シールド部材100は、金属粉末を含んだ樹脂フィルムや、金属粉末を塗布したプラスチック板であってもよい。そして、シールド部材100は、内板12に対向するように補強部材13に取り付けられている。すなわち、コイル2とシールド部材100と補強部材13とは、車両の上下方向の位置が略同じとなっている。
【0054】
そして、コイル2の外形は、シールド部材100の外形より小さく形成されている。このコイル2は、コイル2がシールド部材100の外縁から飛び出さないように、すなわち図9の矢印で示したように平面状コイル21の軸方向から見た視線(軸方向視)において平面状コイル21が平面状補助板100の外縁内におさまるように、シールド部材100の内板12側の面に取り付けられている。
【0055】
さらに、シールド部材100とコイル2とは、上記のような配置関係となるように、隣接した状態で(或いは単に接近した状態でもよい)一体成形されている。このとき、平面状のシールド部材100とコイル2とが電気的に導通していない状態となるように、両者が一体成形されている。例えば、シールド部材100とコイル2との間には、フィルム状の樹脂などが介在するようにされている。なお、シールド部材100は、コイル2と補強部材13との間に介在している。
【0056】
この場合の衝突検出は、第一実施形態と同様である。ただし、第一実施形態のように、コイル2が補強部材13に直接取り付けられる場合には、補強部材13の形状によって、コイル2搭載初期のインダクタンスLsにばらつきが生じるおそれがある。しかし、 本変形態様ではシールド部材100にコイル2を取り付けることで、補強部材13の形状によるコイル2の初期インダクタンスLsのばらつきが生じることを防止または低減できる。
【0057】
さらに、コイル2とシールド部材100とを一体成形していることにより、コイル2の取付状態を安定的にすることができる。その結果、コイル2の初期インダクタンスLsのばらつきをより低減できる。また、両者を一体とすることで、当該一体部材の補強部材13への取付が容易となる。
【0058】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態の車両用側突検出装置について、図10〜図12を参照して説明する。第二実施形態は、コイル2が補強部材13に取り付けられた形態であって、コイル2と内側部材110との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0059】
本実施形態の第一実施形態と異なる点は、内板12が貫通穴を有しない平板状としたが、本実施形態においては、内板が、サービスホールなどの貫通穴を有している点である。従って、本項では相違点についてのみ説明する。その他の検出手段、ステーの位置検出方法、判定手段、ステーの車両上下方向の位置による衝突判定手段の選択、等は第一実施形態と実質的に同様である。
【0060】
図10は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。図11は、側面ドア1の車両前後方向の垂直に切断した断面図である。図12は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
第一実施形態においては、内板12が貫通穴を有しない平板状としたが、本実施形態においては、内板112が、サービスホール112aなどの貫通穴を有している。このサービスホール112aは、側面ドア1の内部に配置するパワーウインド機構やスピーカなどの組み付けや調整用、および、補強部材13に取り付けられるコイル2の組み付けや調整用に設けられている。
【0061】
この場合、サービスホール112aがコイル2に対向する位置に位置していると、コイル2の検出する磁束の量にサービスホール112aの影響がでる。そこで、図10〜図12に示すように、サービスホール112aの少なくとも一部を被覆するように、且つ、平面状コイル21に対向するように、鉄などの金属体または磁性体からなる内側部材110を内板12の車外側の面(外板12側の面)に取り付けている。これにより、サービスホール112aの影響を抑制できる。
【0062】
ここで、内側部材110は、コイル2の外形より大きく形成されており、コイル2に対向するように配置されている。これにより、コイル2に錯交する磁束の量を大きくすることができる。すなわち、側突検出の感度を良好とすることができる。
【0063】
<第二実施形態の変形態様>
第二実施形態の変形態様として、内板12に貫通孔の有無に関わらず、内板12が例えば樹脂モジュールなどの非磁性体からなる場合にも、上記の内側部材110を内板12に取り付けることで、コイル2は確実に磁束の量の変化を検出できる。内板12が樹脂モジュールの場合には、コイル2と内板12との離隔距離に応じて、コイル2に錯交する磁束の量は変化しない。このような場合に、金属体または磁性体の内側部材110を用いることで、確実に側突検出ができる。
【0064】
なお、第一実施形態またはその変形態様における特徴部分を、第二実施形態またはその変形態様に適用することもできる。この場合には、第一実施形態またはその変形態様の構成による効果、および、第二実施形態またはその変形態様の構成による効果を奏することができる。
【0065】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態の車両用側突検出装置について、図13を参照して説明する。第三実施形態は、コイル2が内板12に直接取り付けられた形態であって、コイル2と補強部材13との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0066】
図13は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第一実施形態においては、コイル2を補強部材13に取り付けることとしたが、第三実施形態においては、コイル2を内板12の車外側の面(外板11に対抗する側の面)に取り付ける。具体的には、コイル2は、内板12の車外側の面のうち補強部材13に対向する位置に取り付けられている。
【0067】
ここで、第三実施形態においては、内板12は金属体や磁性体である必要はないが、補強部材13が金属体または磁性体とする必要がある。つまり、第一実施形態においては、平面状コイル21と内板12との離隔距離の変化に応じて、コイル2に錯交する磁束の量が変化したが、第三実施形態においては、コイル2と補強部材13との離隔距離の変化に応じて、コイル2の磁束の量が変化することになる。この点の相違はあるが、その他の検出手段、ステーの位置検出方法、判定手段、ステーの車両上下方向の位置による衝突判定手段の選択、等は第一実施形態と実質的に同様である。
【0068】
<第三実施形態の変形態様>
次に、第三実施形態の変形態様の車両用側突検出装置について、図14及び図15を参照して説明する。本変形態様は、コイル2が平面状のシールド部材120を介して内板12に取り付けられた形態であって、コイル2と補強部材13との離隔距離の変化を検出する形態である。第一実施形態の変形態様では、コイル2がシールド部材を介して補強部材に取り付けられているのに対し、本変形態様はシールド部材を介して内板に取り付けられている点のみが異なるもので、その他の構成、効果等は、第一実施形態の変形態様の場合と同様である。従って、相違点についてのみ説明する。
【0069】
図14は、側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第三実施形態においては、コイル2を内板12の車外側の面に直接取り付けるが、本実施形態においては、コイル2はシールド部材120を介して内板12に取り付けられている。ここで、シールド部材120は、矩形の平板状からなり、例えば鉄などの金属体や磁性体からなる。そして、シールド部材120は、補強部材13に対向するように内板12の車外側の面に取り付けられている。すなわち、コイル2とシールド部材120と補強部材13とは、車両の上下方向の位置が略同じとなっている。図15は内板にサービスホールがある場合で、シールド部材120は、内板112のサービスホール112aの位置に取り付けられているが、シールド部材の効果にサービスホールがある場合と、サービスホールがない場合に差はない。また、非磁性体で構成される内板であってもよい。
【0070】
<第四実施形態>
次に、第四実施形態の車両用側突検出装置について、図16を参照して説明する。第四実施形態は、コイル2が内板12に直接取り付けられた形態であって、コイル2と補強部材用内側部材140との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0071】
図16は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第三実施形態においては、補強部材13に何も取り付けておらず、コイル2は、補強部材13との間で磁界を発生させていた。これに対して、第四実施形態においては、補強部材13のうち内板12側に補強部材用内側部材140を取り付けている。ここで、補強部材用内側部材140は、矩形の平板状からなり、例えば鉄などの金属体または磁性体からなる。そして、補強部材用内側部材140は、内板12に対向するように補強部材13に取り付けられている。なお、第四実施形態においては、補強部材13は、金属や強磁性体でなくてもよい。
【0072】
そして、コイル2のうち平面状コイル21の外形は、補強部材用内側部材140の外形より小さく形成されている。すなわち、補強部材用内側部材140は、少なくとも車両の上下方向において、平面状コイル21の外径寸法よりも大きい。さらに、補強部材用内側部材140は、図示されていないが、車両の前後方向(側面ドア1が閉状態での車両前後方向)において、平面状コイル21の外径寸法よりも大きいことが望ましい。このコイル2は、内板12のうち補強部材用内側部材140に対向する領域に取り付けられている(従って、コイル2と補強部材用内側部材140とは、車両の上下方向においてほぼ同じ位置にある)。つまり、コイル2は、内板12と補強部材用内側部材140との間に配置され、内板12と補強部材用内側部材140とが対向する方向に磁界を発生させる。
【0073】
この場合の衝突検出は、第三実施形態と同様である。ただし、補強部材用内側部材140は、平面状コイル21の外形よりも大きな外形を有している。従って、補強部材13が変形することによる磁界の変化が大きくなり、結果として、コイル2に錯交する磁束の量の変化が大きくなる。つまり、検出感度が高くなる。
【0074】
なお、第三実施形態またはその変形態様における特徴部分を、第四実施形態に適用することもできる。この場合には、第三実施形態またはその変形態様の構成による効果、および、第四実施形態の構成による効果を奏することができる。
【0075】
なお、上述の実施形態においては、シールド部材として平面板状(シート状)の部材を用いているが、必ずしもこの形状である必要はない。例えば、格子状、網目状、波形状であってもよい。さらに、シールド部材を接地(金属製の補強部材やドアなどの車両ボディアースへの電気的接続等)することによって、よりシールド性を高めることも考えられる。
【0076】
<第五実施形態>
第五実施形態の車両用側突検出装置について、図17を参照して説明する。
【0077】
上記した第一実施形態〜第四実施形態及びその変形態様は、二つの衝突判定方法についてステー31の車両上下方向(側面ドア1の垂直方向)の位置によって、判定方法を選択している。これにより、コイルの磁束を利用した衝突の検出を正確、かつ広範囲なものとしている。一方、第五実施形態の発明は、ステーの位置により判定方法を選択することはせず、コイルの車両上下方向の幅(垂直方向幅)をステーの車両上下方向の幅(垂直方向幅)より大きくすることで、ステーがコイルの磁束の検出範囲に入ってきたときの影響を軽減するものである。従って、本実施形態の検出回路の構成は、図5の回路構成図の位置センサ32を取り除いたものとなる。
【0078】
図17は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。図に示すようにコイル2は、補強部材13に取り付けられている。ドアガラス30及びドアガラス30に固定されたステー31は、ドアガラス30の開閉状態によりコイル2と内板12の間(すなわち、コイル2による磁束の検出エリアに位置することもある。ステー31が検出エリアに位置している場合は、上記した二つの判定方法のうちの磁束の量の大きさによる判定方法(図6の判定方法)は、誤差が多くなる。これに対し、本発明は、コイル2の車両上下方向の幅(垂直方向幅:H0)をステーの車両上下方向の幅(垂直方向幅:S0)より大きくすることで、コイルの磁束の量の大きさの検出におけるステーの影響を少なくする。本構成により、本実施形態の車両用側突検出装置は、ステーの如何なる位置においても二つの判定方法を使用すること可能となる。また、第一実施形態〜第四実施形態において配置されている位置センサを設置する必要がない。
【0079】
ここで、コイル2全体の大きさが検出範囲に影響を及ぼす。そして、本実施形態では、コイル2の車両上下方向幅H0は、コイルが同一平面上に複数回巻回されているとして、最外周における車両上下方向幅とする。
【0080】
また、同一平面上に複数巻回されている平面状コイル2においては、内周側ほど磁束が強く分布する。そして、コイル2の内周側形状の影響が大きくなる。従って、コイル2の最内周における車両上下方向幅をコイル2の車両上下方向幅H0としてもよい。これにより、検出感度をより高くすることができる。
【0081】
<本発明の車両側突検出装置を備えた車両用乗員保護システムの実施形態>
上記のように構成された本発明の車両用側突検出装置は、以下のように利用することができる。図18に車両用乗員保護システムの実施形態概要をブロック図で示す。この車両用乗員保護システム300は、エアバッグモジュール400を備えている。エアバッグモジュール400は、衝突発生時にエアバッグを展開することによって車両乗員を衝突による衝撃から保護するものである。ここで図18中の車両用側突検出装置は、既に説明した車両用側突検出装置のうちの何れであってもよい。エアバッグモジュール400は、車両に搭載されたシート(図示しない)の側面付近(例えば側面ドアやシートの側面部)に搭載され、車両用側突検出装置と電気的に接続されている。そして、車両用側突検出装置は、乗員保護が必要な車両衝突があった場合、早期に、かつ確実に乗員保護が必要な衝突か否かを判定し、エアバッグモジュール400に対して展開指令を出力する。これを受けたエアバッグモジュール400は、エアバッグを展開する。これにより、乗員に作用する衝突の衝撃が低減されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第一実施形態における側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図(図2のI−I断面図)である。
【図2】側面ドア1の車室内側から見た斜視図であって、内板12の一部を取り除いた状態を示す図である。
【図3】コイル2を示す側面図である。
【図4】内板12とコイル2との離隔距離に対するコイル2のインダクタンスLsの関係を示す図である。
【図5】車両用側突検出装置を示す回路構成図である。
【図6】コイル2の内板12側への移動距離に対するコイル2の検出した磁束の量を示す図である。
【図7】衝突からの経過時間に対する磁束の量の時間変化量(時間微分値)の絶対値を示す図である。
【図8】第一実施形態のステーとコイルとの関係を示す断面図である。
【図9】第一実施形態の変形態様における側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図10】第二実施形態における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図11】第二実施形態の側面ドア1の車両前後方向の垂直に切断した断面図である。
【図12】第二実施形態の側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
【図13】第三実施形態における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図14】第三実施形態の変形態様における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図15】第三実施形態の変形態様における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図16】第四実施形態の変形態様における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図17】第五実施形態における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図18】車両用乗員保護システムの概要を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
1:側面ドア
11:外板、 12、112:内板、 112a:サービスホール、 13:補強部材
2:コイル(距離センサ)、 21:平面状コイル、 22:フィルム
30:ドアガラス、 31:ステー、 32:位置センサ
40:発振回路
50:検出回路
60:衝突判定手段
100、120:平面状シールド部材
110:内側部材
140:補強部材用内側部材
300:車両用乗員保護システム
400:エアバッグモジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面ドアに物体が衝突したことを検出する車両用側突検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の側面ドアに検出センサを搭載する車両用側突検出装置として、例えば、特開平5−93735号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1に記載の車両用側突検出装置では、検出センサの側面ドアへの取り付け構造は、内板に固定された支脚を介して補強部材に近接するように内板側に取り付けられている。検出センサは、補強部材に対して内板側に配置されており、物体が側面ドアに衝突した場合は補強部材が内板側に変形するので、検出センサは補強部材の変形にともなう衝撃を受け作動する。これにより検出センサが送出する検出信号に基づいて車両用側突検出装置は、物体の車両への衝突を検出することができる。なお、検出センサとしては、衝撃センサや電気コイルが使用されている。
【特許文献1】特開平5−93735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、補強部材と内板との間には、側面ドアのドアガラスを上下に開閉するためのスペースが設けられている。そして、ドアガラスを固定し、上下に駆動するためのステーはドアガラス下辺に設けられており(図1)、ドアガラスの開閉にともなってステーが上下に移動する。従って、ドアガラス及びステーが上下に移動する範囲には検出センサを特許文献1に記載されたような方法で配置しづらい。ステーとスペース的に干渉しない位置に配置すると、検出センサを配置する位置が側面ドアの車両前方及び後方の位置に限定されてしまい、側面ドアの車両前後方向にわたる広範囲の衝突検出が困難になるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、距離センサ、特にコイルの磁束を利用して側面ドアの部材の距離の変化に基づいて、車両と物体との衝突を検出する側突検出装置において、側面ドアへの物体の広範囲の衝突検出を可能とし、省スペース化、および、配置の容易化を図ることができる車両用側突検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<第一発明:ステーの位置に応じて車両と物体との衝突判定方法を切り替える発明>
第一発明の車両用側突検出装置は、車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
前記内板、および、前記内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材と前記補強部材との離隔距離を検出する距離センサと、
前記補強部材と前記内板側部材との間に挿入され得る前記側面ドアのドアガラスの位置、または、前記ドアガラスを固定して前記ドアガラスを上下移動させるためのステーの位置を検出する位置センサと、
前記距離センサおよび前記位置センサの出力値に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
第一発明の車両用側突検出装置において、距離センサは、内板、および、内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材、あるいは、補強部材に対して離隔して配置されている。そして、距離センサは、内板側部材と補強部材との離隔距離を検出している。さらに、車両用側突検出装置には位置センサが備えられており、当該位置センサは、ドアガラスの位置、またはドアガラスを固定して前記ドアガラスを上下移動させるためのステーの位置を検出する。判定手段は、距離センサが検出した離隔距離に基づいて車両と物体とが衝突したか、否かを判定する。ここで、距離センサと内板側部材、または距離センサと補強部材の間にステーが存在すると、距離センサが離隔距離を正確に検出することができないおそれがある。すなわち、車両と物体との衝突の判定に誤差が生じるおそれがある。しかし、本発明の車両用側突検出装置によれば、位置センサにより検出されたドアガラスまたはステーの位置を考慮して、衝突判定を行っているため、衝突判定の誤差が発生することを防止できる。なお、距離センサとしては、検出部材から離隔して配置されて検出部材の変位を検出するもので、磁気を利用するもの、レーザなど光線を利用するもの等が考えられる。
【0007】
ここで、第一発明の好適な態様として、前記車両用側突検出装置の前記判定手段は、前記位置センサにより検出される前記ドアガラスの位置または前記ステーの位置に応じて、前記車両と物体との衝突の判定方法を切り替える構成となっている。このように、ドアガラスまたはステーの位置に応じて判定方法を切り替えることにより、衝突判定に際してステーの影響を確実に排除できる。特に、高速な判定が可能となる。
【0008】
さらに、前記判定手段は、前記ステーが前記補強部材と前記内板側部材との間に位置すると前記位置センサにより検出された場合に、前記距離センサにより検出される前記離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて前記車両と物体との衝突を判定し、
前記ステーが前記補強部材と前記内板側部材との間以外に位置すると前記位置センサにより検出された場合に、前記距離センサにより検出される前記離隔距離または当該離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する。
【0009】
この構成により、本発明では、位置センサによりステーの位置を検出し、検出したステーの位置に基づき衝突の判定方法を切り替えている。ステーが補強部材と内板側部材との間に位置している場合には、前述したように距離センサは、補強部材と内板側部材との離隔距離を検出しているので、距離センサは、正確に離隔距離を検出することができない。しかし、距離センサが検出した離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて衝突を判定すれば、仮に距離センサが補強部材とステーとの離隔距離を検出してしまったとしても、距離センサにより検出される離隔距離そのものとは無関係に、衝突を正確に検出することができる。
【0010】
また、ステーが補強部材と内板側部材との間に位置していない場合には、距離センサが検出した離隔距離または離隔距離の単位時間あたりの変化量のどちらに基づいて判定しても正確な判定結果が得られる。
【0011】
従って、ドアガラスの開閉状態により補強部材と内板側部材との間にステーが存在する可能性のある位置に距離センサを配置しても、正確に衝突の判定が可能となり、距離センサの配置位置がステーの存在により限定されることなく、広範囲に配置することができる。なお、ドアガラスの位置の検出もドアガラスの位置からステーの車両上下方向の位置を知るためのものである。
【0012】
<第一発明の他の好適な態様>
第一発明の構成において、前記内板側部材は、金属体または磁性体からなり、前記距離センサは、前記補強部材に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する構成とするとよい。
【0013】
あるいは、第一発明の構成において、前記補強部材は、金属体または磁性体からなり、前記距離センサは、前記内板側部材に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する構成でもよい。
【0014】
本構成では、距離センサであるコイルが発生している磁界は、内板側部材と補強部材との間に発生する。コイルが補強部材に固定されている場合には、物体が外板に衝突して補強部材が車室内側へ変形し、補強部材が内板に近づくように移動した場合、この移動に伴い、コイルが発生する磁界によって、内板側部材である内板または内側部材に渦電流が流れる。或いは、この移動前から渦電流が発生していた場合には、移動に伴って渦電流の量が変化(増加)する。この渦電流の発生または増加による磁界が発生または増加することで、コイルの磁束が減少するように変化する。このように、コイルの磁束は、内板側部材とコイルとの離隔距離に応じて変化する。また、コイルが内板側部材に固定されている場合には、物体が外板に衝突して補強部材が車室内側へ変形し、補強部材が内板に近づくように移動すると、補強部材にコイルが発生する磁界によって渦電流が流れる。つまり、コイルが発生する磁界の範囲が、側突検出可能範囲となる本態様によれば、上記の第一発明の効果が顕著となる。
【0015】
つまり、本態様の車両用側突検出装置により側突検出可能な範囲は、特許文献1に記載のセンサのように支脚等で保持していないので、センサの配置個所が限定されることがなく、またステーの車両上下方向における位置の影響も少なくできるので広範囲とすることが可能である。そして、側突検出可能な範囲を広範囲とした場合であっても、1または少数のコイルを設置することで足りるため、結果として、省スペース化、および、配置の容易化を図ることができる。
【0016】
さらに、補強部材に取り付けられたコイルと内板側部材との間の距離に応じて変化するコイルの磁束、あるいは内板側部材に取り付けられたコイルと補強部材との間の距離に応じて変化するコイルの磁束に基づいて側突検出を行っているため、外板が変形したとしても、補強部材が変形しない程度の衝撃であれば、コイルと内板側部材との離隔距離は変化せず、衝突していないと判定し、乗員保護装置の起動をしないようにできる。一方、補強部材が変形し、コイルと内板側部材との離隔距離が変化するような衝撃を受けた場合には乗員保護が必要な状態と考えられ、この場合には、確実にコイルの磁束が変化することにより衝突検出ができる。
【0017】
さらに、前記ステーは、金属体または磁性体からなる場合であって、上述したように、距離センサとしてコイルを適用する場合に、本発明を適用するとよい。一般に、ステーは金属体または磁性体から形成されることが多い。このような場合に、コイルの磁束により衝突判定を行うと、ステーがコイルの磁束へ及ぼす影響は、非常に大きい。そこで、位置センサにより検出される位置に応じて衝突判定することで、影響が大きいステーが存在していたとしても、確実に衝突判定ができる。
【0018】
さらに、好適な態様として、前記距離センサにより検出される前記離隔距離は、前記磁束の量の大きさに対応し、前記距離センサにより検出される前記離隔距離の単位時間当たりの変化量は、前記磁束の単位時間あたりの変化量に対応する。
【0019】
すなわち、本態様の車両用側突検出装置は、衝突を検出する手段として、コイルが検出する磁束の量の大きさから離隔距離を検出する方法と、コイルが検出する磁束の単位時間あたりの変化量から離隔距離を検出する方法とを備えている。そして、ステーの位置により、この両方法を選択しているので、正確にかつ確実に側突検出が可能となる。また、両方法を併用する場合には、上記の効果に加えて、さらにより早期に側突検出が可能となる。
【0020】
すなわち、ステーがコイルと内板側部材、または補強部材との間に存在しない場合には、コイルが検出する磁束の量の大きさは、コイルと内板側部材、または補強部材との離隔距離を正確に反映している。従って、磁束の量の大きさ、または磁束の単位時間あたりの変化量のどちらに基づいて衝突の判定を行っても正確な判定が可能である。
【0021】
一方、ステーがコイルと内板側部材、または補強部材との間に存在する場合には、磁性体であるステーはコイルが検出する磁束の量に影響を与える。従って、コイルの検出する磁束の量の大きさは内板側部材との離隔距離を正確に反映するものとはならない。しかし、磁束の単位時間あたりの変化量に基づいて判定すれば、コイルと内板側部材、または補強部材との離隔距離が零(磁束の単位時間あたりの変化量も零となる)となるまで磁束の量が変化するので衝突を検出することが可能となる。
【0022】
さらに、好適な態様として、前記コイルの車両上下方向幅は、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。コイルの車両上下方向幅をステーの車両上下方向幅より大きく設定することで、ドアガラスの開閉状態により、ステーがコイルと内板側部材の間に位置しても、ステーの磁束への影響を軽減することができる。これにより、ステーがコイルと内板側部材の間に位置している場合でも磁束に基づきコイルと内板側部材との離隔距離を検出する判定方法を使うことも可能となる。
【0023】
また、この場合の好適な態様として、前記車両用側突検出装置は、さらに、前記コイルは、同一平面上に複数巻回されており、前記コイルの最内周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。同一平面上に複数巻回されているコイルにおいては、内周側ほど磁束が強く分布する。つまり、コイルの内周側形状の影響が大きくなる。そこで、上記のように設定することで、よりステーの磁束への影響を少なくすることができる。
【0024】
または、コイルは、同一平面上に複数巻回されており、コイルの最外周における車両上下方向幅が、ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。コイル全体の大きさが検出範囲に影響を及ぼす。従って、上記のように設定することで、検出感度の低下を防止しつつ、ステーの磁束への影響を低減することができる。
【0025】
上記のように、コイルの車両上下方向幅とステーの車両上下方向幅との関係を設定した構成の車両用側突検出装置においては、前記した磁束の量の大きさに基づく判定方法と磁束の単位時間あたりの変化量に基づく衝突の判定方法とを備え、どちらの判定方法を用いてもよい。
【0026】
<第二発明:コイルの車両上下方向幅をステーの車両上下方向幅より大きく設定した発明>
第二発明の車両用側突検出装置は、
車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
前記内板、および、前記内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材と前記補強部材との離隔距離を検出する距離センサと、
前記距離センサの出力値に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する判定手段と、
を備える車両用側突検出装置であって、
前記補強部材および前記内板側部材の少なくとも一方は、金属体または磁性体からなり、
前記距離センサは、前記補強部材および前記内板側部材の他方に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、
前記コイルの車両上下方向幅は、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定され、
前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定することを特徴とする。
【0027】
第二発明によれば、コイルの車両上下方向幅をステーの車両上下方向幅より大きく設定することで、ドアガラスの開閉状態により、ステーがコイルと内板側部材の間に位置しても、ステーの磁束への影響を軽減することができる。これにより、ステーがコイルと内板側部材の間に位置している場合でも磁束に基づきコイルと内板側部材との離隔距離を検出する判定方法を使うことも可能となる。
【0028】
第二発明の好適な態様として、前記車両用側突検出装置は、さらに、前記コイルは、同一平面上に複数巻回されており、前記コイルの最内周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。同一平面上に複数巻回されているコイルにおいては、内周側ほど磁束が強く分布する。つまり、コイルの内周側形状の影響が大きくなる。そこで、上記のように設定することで、よりステーの磁束への影響を少なくすることができる。
【0029】
第二として、本発明において、コイルは、同一平面上に複数巻回されており、コイルの最外周における車両上下方向幅が、ステーの車両上下方向幅より大きく設定されているとよい。コイル全体の大きさが検出範囲に影響を及ぼす。従って、上記のように設定することで、検出感度の低下を防止しつつ、ステーの磁束への影響を低減することができる。
【0030】
上記のように、コイルの車両上下方向幅とステーの車両上下方向幅との関係を設定した構成の車両用側突検出装置においては、前記した磁束の量の大きさに基づく判定方法と磁束の単位時間あたりの変化量に基づく衝突の判定方法とを備え、どちらの判定方法を用いてもよい。
【0031】
<車両用乗員保護システムについて>
以上のように構成した車両用側突検出装置の衝突判定結果を、乗員保護装置を作動させる際のトリガとして利用することが可能である。ここで、乗員保護装置とは、車両の衝突発生時に動作して乗員を衝撃から保護する装置であり、エアバッグや、シートベルトテンショナーなどが考えられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、側面ドア内に配置されたコイルの磁束等を利用した距離センサを備えた車両用側突検出装置において、距離センサの配置をドアガラスの開閉にともない上下に移動するステーとスペース的に干渉することのない配置とし、かつ、磁束を検出するコイルへの影響も少なくなる構成とし、乗員保護が必要な衝突による車両変形を確実、かつ広範囲に検出可能とした車両用側突検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態についてより詳しく説明する。
【0034】
<第一実施形態>
第一実施形態の車両用側突検出装置について、図1〜図8を参照して説明する。第一実施形態は、平面状コイル21が補強部材13に直接取り付けられた形態であって、平面状コイル21と内板12との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0035】
図1は、図2の側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図(図2のI−I断面図)である。なお、図1において側面ドア1の上方と下方は便宜上省略している。図2は、本発明が適用される側面ドア1を車室内側から見た斜視図であって、内板12の一部を説明の便宜上取り除いた状態を示す図である。図3は、コイル2を示す側面図である。図4は、内板12と平面状コイル21との離隔距離に対する平面状コイル21のインダクタンスLsの関係を示す図である。図5は、車両用側突検出装置を示す回路構成図である。図6は、コイル2と内板12との離隔距離とコイル2の検出する磁束の量の関係を示すグラフである。図7は、衝突発生からの経過時間に対する磁束の量の単位時間あたりの変化量(時間微分値)の絶対値を示す図である。図8は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図で、コイル2とステー31の位置関係の説明図である。
【0036】
図1および図2に示すように、側面ドア1は、車外側に位置する外板11と、外板11から車室内側に離隔して且つ外板11に対向して配置される磁性体(または金属体)の内板12とを備える。さらに、側面ドア1は、円柱棒状からなり、車両前後方向に延びるように、外板11と内板12との間のうち外板11側であって、車両上下方向のほぼ中央に配置されている補強部材13を備えている。つまり、補強部材13は、内板12に対向して離隔配置されている。この補強部材13は、少なくとも外板11の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する。つまり、外板11に物体が衝突した場合に、曲げ剛性の低い外板11が変形したとしても、補強部材13により側面ドア1全体が変形することを抑制している。ここで、第一実施形態においては、内板12が本発明における内板側部材である。
【0037】
補強部材13と内板12との間には、ドアガラス30が上下に移動するスペースが設けられている。また、ドアガラス30の下辺に固定され、ドアガラス30を上下に移動させるためにパワーウインド機構(図示せず)のステー31が位置している。図1において、ドアガラス30が上部に位置している状態(窓が閉まっている状態)を実線で示し、ドアガラス30が下部に位置している状態(窓が開いている状態)を一点鎖線で示している。
【0038】
従って、ドアガラス30及びステー31は、窓の開閉にともなって図1の補強部材13と内板12の間を上下に移動する。さらに、図1、図2に示すように、側面ドア1の下部であってステー31の下方にはステー31に対向して位置センサ32が配置されている。位置センサ32は、ステー31の位置センサ32からの距離を検出して距離データを衝突判定手段60(図5)に送出する。なお、位置センサ32は、ドアガラス30の車両上下方向における位置を検出するものでもよい。位置センサ32がドアガラス30の位置を検出する場合は、ドアガラス30の位置からステー31の位置を衝突判定手段60において算出する。
【0039】
また、図1、図2に示すように、補強部材13の内板12側には、平面状のコイル2が配置されている。そして、コイル2は、図示しない発信器から交流電圧を供給されてコイル2の法線方向(コイル2のコイル軸方向)、すなわち、平面状のコイル2と対向する内板12の方向に磁界を発生している。なお、コイル2は、本発明における距離センサに該当する。
【0040】
次に、本実施形態のコイル2について説明する。補強部材13は、内板12に対向して離隔配置されており、少なくとも外板11の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する。つまり、外板11に物体が衝突した場合に、曲げ剛性の低い外板11が変形したとしても、補強部材13により側面ドア1全体が変形することを抑制している。しかし、補強部材13が内板12側に変形するような衝突である場合、補強部材13に取り付けられたコイル2も内板12側に移動する。従って、コイル2と内板側部材である内板12との離隔距離が変化する。この離隔距離の変化はコイル2の磁束の量の変化として検出回路(本発明の検出手段に該当する)で検出される。
【0041】
コイル2は、図3に示すように、全体として平面状に形成されている。このコイル2は、平面状コイル21と、一対のフィルム22とから構成されている。平面状コイル21は、例えば銅などの導電性材料により平面状に巻回するようにパターン印刷形成されている。一対のフィルム22は、平面状コイル21を両面から挟持して、平面状コイル21が露出しないように被覆している。このフィルム22は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などの可撓性材料により薄膜状に形成されている。つまり、フィルム22は、屈曲自在である。また、平面状コイル21自体についても屈曲変形可能である。従って、コイル2全体として、屈曲変形可能であり、非常に柔軟性が高い。つまり、少なくともコイル2は補強部材13よりも柔軟性が高いため、補強部材13が屈曲した場合であっても、コイル2は破損することなく屈曲する。
【0042】
本実施形態のコイル2と内板12との離隔距離と、コイル2の磁束との関係について図4を参照して説明する。上記したように、側面ドア1の外板11に物体が衝突すると、外板11が車室内側に変形する。そして、この衝撃が大きく、補強部材13を車室内側へ変形させると補強部材13とともにコイル2も内板12側へ移動させる。これにより、補強部材13に取り付けられたコイル2と内板12との離隔距離が短くなる。そうすると、コイル2が発生する磁界によって、内板12に渦電流が流れ内板12に磁界が発生する。磁界の方向は、内板12とコイル2とが対向する方向である。つまり、衝突によって内板12とコイル2との離隔距離が短くなることに伴って内板12に生じた渦電流によって発生したコイル2に鎖交する磁界、すなわちコイル2を通過する磁束が増加する。この磁束はコイル2の磁束を減ずるように作用するので、コイル2のインダクタンスが減少することとなる。
【0043】
図4は、内板12と平面状のコイル2との離隔距離と、コイル2のインダクタンスLsとの関係を示す図である。図4のグラフにおいて、例えば、衝突前のコイル2と内板12との離隔距離をdとし、衝突後の離隔距離をd1と短くなったとすると、コイル2のインダクタンスLsは、図の縦軸に示すように衝突前のAから衝突後のA1へと減少する。このように、コイル2のインダクタンスLsは、内板12とコイル2との離隔距離の変化に応じて変化する。なお、側面ドア1の外板11に物体が衝突した場合であっても、補強部材13に変形が及ばなければ、コイル2のインダクタンスLsは変化しない。
【0044】
次に、本実施形態の車両用側突検出装置は、図5に示すように、発振回路40と、検出回路50と、衝突判定手段60、位置センサ32とから構成される。衝突判定手段60は本発明の判定手段に該当する。
【0045】
検出回路50はコイル2と検出抵抗Roを備えている。コイル2はインダクタンスLsと抵抗Rsの直列回路に相当する。コイル2の一端は発振回路40に接続され、他端は検出抵抗Ro及び衝突判定手段60に接続されている。発振回路40は発振周波数Fの交流電圧Viを検出回路50に印加している。ここで、上記したように、衝突によりコイル2と内板12との離隔距離が小さくなった場合には、コイル2のインダクタンスLsは減少する。コイル2のインダクタンスLsが減少することにより、コイル2のインピーダンスが小さくなる。従って、検出抵抗Roの検出電圧Voは相対的に大きくなる。衝突判定手段60は、検出回路50が出力する検出電圧Voに基づいて物体が衝突したか否かを判定する。
【0046】
次に、本実施形態の衝突判定手段について、図6、図7を参照して説明する。図6は、コイル2と内板12との離隔距離と、コイル2の検出した磁束の量との関係を示すグラフである。図6において、横軸はコイル2の内板12側への移動距離を表している。縦軸はコイル2と錯交する磁束の量の大きさを表している。図6に示すように、衝突まではコイル2と内板12の離隔距離は変化しないので磁束の変位の大きさも変わらず一定であるが、衝突によりコイル2が内板12に近づくことにより磁束の量の大きさは小さくなる。すなわち、コイル2の移動距離が大きい(コイル2が内板12に近づく)程、磁束の量の大きさは小さくなる。本実施形態では、この磁束の量の大きさがあらかじめ設定された一定の値(図6の第一閾値)より小さくなった場合に、衝突であると判定する。なお、コイル2の磁束の量の大きさは、上記したように、図5に示す検出回路50の検出抵抗Roの検出電圧Voとして検出される。従って、本実施形態の検出回路では、コイル2の移動距離が大きくなる程(コイル2が内板12に近づく程)、磁束の量の大きさが小さくなり、コイル2の自己インダクタンスLsは小さくなるので、検出電圧Voは大きくなる。
【0047】
さらに、本実施形態の衝突判定手段は、以下の方法によっても衝突か否かの判定をおこなっている。図7は、検出電圧Voに基づいて、コイル2の量の単位時間当たりの変化量を算出したものである。縦軸は磁束の量の時間変化量であり、横軸は衝突からの時間を表している。図7に示されているように、衝突までは、コイル2に錯交する磁束の量に変化がないので、磁束の量の時間変化量は零である。しかし、衝突直後は磁束の量の時間変化量が大きい(コイル2が急速に内板12側に移動する)、そして、変形が終わった時点で時間変化量は再び零となる。ここで、磁束の量の時間変化量に閾値(図7の第2閾値)を設定して、その閾値を超えた場合に、衝突による変形であると判定する。
【0048】
上記したように、本実施形態は、二つの衝突判定方法を備えているが、本実施形態の特徴は、この二つの衝突判定方法についてステー31の車両上下方向(側面ドア1の垂直方向)の位置によって、判定方法を選択していることである。以下、図1及び図8に基づいて説明する。
【0049】
図1に図示されているステー31(実線及び一点鎖線)は、コイル2の上下の範囲(h)には入っていない。この場合、本発明では、ステーはコイルと内板側部材との間以外の位置にあると定義している。一方、図8に示すようにステー31の一部でもコイル2の上下の範囲(h)内に入っているときは、ステーはコイルと内板側部材との間に位置すると定義する。なお、コイル2の上下の幅(h)は、図3の平面状コイル21のように巻回されているコイル(巻線)の最外周の上下の幅とする。
【0050】
そして、ステー31がコイル2と内板側部材である内板12との間に位置していないときには、上記の二つの衝突判定方法のうちのどちらかを用いて衝突の判定を行う。あるいは、二つの衝突判定方法の両方を用い、時間的に早い方の判定方法で衝突の判定を行ってもよい。両方法を併用して時間的に早い方の判定方法で衝突の判定を行う場合は、より早期に衝突判定を行うことができる。
【0051】
一方、ステー31がコイル2と内板側部材である内板12との間に位置しているときには、上記の二つの衝突判定方法のうちの磁束の量の時間変化量に基づく判定方法により衝突の判定を行う。このような構成とすることで、本発明は、たとえステーがコイル2の磁束の検出スペースに入ってきて、磁束の量の検出によるコイル2と内板12との離隔距離の変化を正確に検出できない場合でも、磁束の量の時間変化量に基づく衝突判定方法により衝突を正確に検出できる。従って、衝突検出用のコイル2を広範囲に配置することができる。なお、上記のステー31の車両上下方向の位置は、図1及び図2に示されているように、側面ドア1の下方であって、ステー31が上下に移動する垂直面と同一の垂直面内にステー31を垂直に見上げるように配置された位置センサにより検出されている。そして、検出された位置データは衝突判定手段60に送られる(図5)。
【0052】
<第一実施形態の変形態様>
本変形態様の車両用側突検出装置について、図9を参照して説明する。本変形態様の第一実施形態と異なる点は、コイル2が、シールド部材100を介して補強部材13に取り付けられる点である。従って、本項では相違点についてのみ説明する。なお、本変形態様も第一実施形態と同様に、コイル2と内板12との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0053】
図9は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第一実施形態においては、コイル2を補強部材13に直接取り付けたが、本変形態様においては、コイル2をシールド部材100に取り付けている。シールド部材100は、矩形の平面状からなり、例えば鉄などの金属体または磁性体からなる。あるいは、シールド部材100は、金属粉末を含んだ樹脂フィルムや、金属粉末を塗布したプラスチック板であってもよい。そして、シールド部材100は、内板12に対向するように補強部材13に取り付けられている。すなわち、コイル2とシールド部材100と補強部材13とは、車両の上下方向の位置が略同じとなっている。
【0054】
そして、コイル2の外形は、シールド部材100の外形より小さく形成されている。このコイル2は、コイル2がシールド部材100の外縁から飛び出さないように、すなわち図9の矢印で示したように平面状コイル21の軸方向から見た視線(軸方向視)において平面状コイル21が平面状補助板100の外縁内におさまるように、シールド部材100の内板12側の面に取り付けられている。
【0055】
さらに、シールド部材100とコイル2とは、上記のような配置関係となるように、隣接した状態で(或いは単に接近した状態でもよい)一体成形されている。このとき、平面状のシールド部材100とコイル2とが電気的に導通していない状態となるように、両者が一体成形されている。例えば、シールド部材100とコイル2との間には、フィルム状の樹脂などが介在するようにされている。なお、シールド部材100は、コイル2と補強部材13との間に介在している。
【0056】
この場合の衝突検出は、第一実施形態と同様である。ただし、第一実施形態のように、コイル2が補強部材13に直接取り付けられる場合には、補強部材13の形状によって、コイル2搭載初期のインダクタンスLsにばらつきが生じるおそれがある。しかし、 本変形態様ではシールド部材100にコイル2を取り付けることで、補強部材13の形状によるコイル2の初期インダクタンスLsのばらつきが生じることを防止または低減できる。
【0057】
さらに、コイル2とシールド部材100とを一体成形していることにより、コイル2の取付状態を安定的にすることができる。その結果、コイル2の初期インダクタンスLsのばらつきをより低減できる。また、両者を一体とすることで、当該一体部材の補強部材13への取付が容易となる。
【0058】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態の車両用側突検出装置について、図10〜図12を参照して説明する。第二実施形態は、コイル2が補強部材13に取り付けられた形態であって、コイル2と内側部材110との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0059】
本実施形態の第一実施形態と異なる点は、内板12が貫通穴を有しない平板状としたが、本実施形態においては、内板が、サービスホールなどの貫通穴を有している点である。従って、本項では相違点についてのみ説明する。その他の検出手段、ステーの位置検出方法、判定手段、ステーの車両上下方向の位置による衝突判定手段の選択、等は第一実施形態と実質的に同様である。
【0060】
図10は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。図11は、側面ドア1の車両前後方向の垂直に切断した断面図である。図12は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
第一実施形態においては、内板12が貫通穴を有しない平板状としたが、本実施形態においては、内板112が、サービスホール112aなどの貫通穴を有している。このサービスホール112aは、側面ドア1の内部に配置するパワーウインド機構やスピーカなどの組み付けや調整用、および、補強部材13に取り付けられるコイル2の組み付けや調整用に設けられている。
【0061】
この場合、サービスホール112aがコイル2に対向する位置に位置していると、コイル2の検出する磁束の量にサービスホール112aの影響がでる。そこで、図10〜図12に示すように、サービスホール112aの少なくとも一部を被覆するように、且つ、平面状コイル21に対向するように、鉄などの金属体または磁性体からなる内側部材110を内板12の車外側の面(外板12側の面)に取り付けている。これにより、サービスホール112aの影響を抑制できる。
【0062】
ここで、内側部材110は、コイル2の外形より大きく形成されており、コイル2に対向するように配置されている。これにより、コイル2に錯交する磁束の量を大きくすることができる。すなわち、側突検出の感度を良好とすることができる。
【0063】
<第二実施形態の変形態様>
第二実施形態の変形態様として、内板12に貫通孔の有無に関わらず、内板12が例えば樹脂モジュールなどの非磁性体からなる場合にも、上記の内側部材110を内板12に取り付けることで、コイル2は確実に磁束の量の変化を検出できる。内板12が樹脂モジュールの場合には、コイル2と内板12との離隔距離に応じて、コイル2に錯交する磁束の量は変化しない。このような場合に、金属体または磁性体の内側部材110を用いることで、確実に側突検出ができる。
【0064】
なお、第一実施形態またはその変形態様における特徴部分を、第二実施形態またはその変形態様に適用することもできる。この場合には、第一実施形態またはその変形態様の構成による効果、および、第二実施形態またはその変形態様の構成による効果を奏することができる。
【0065】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態の車両用側突検出装置について、図13を参照して説明する。第三実施形態は、コイル2が内板12に直接取り付けられた形態であって、コイル2と補強部材13との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0066】
図13は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第一実施形態においては、コイル2を補強部材13に取り付けることとしたが、第三実施形態においては、コイル2を内板12の車外側の面(外板11に対抗する側の面)に取り付ける。具体的には、コイル2は、内板12の車外側の面のうち補強部材13に対向する位置に取り付けられている。
【0067】
ここで、第三実施形態においては、内板12は金属体や磁性体である必要はないが、補強部材13が金属体または磁性体とする必要がある。つまり、第一実施形態においては、平面状コイル21と内板12との離隔距離の変化に応じて、コイル2に錯交する磁束の量が変化したが、第三実施形態においては、コイル2と補強部材13との離隔距離の変化に応じて、コイル2の磁束の量が変化することになる。この点の相違はあるが、その他の検出手段、ステーの位置検出方法、判定手段、ステーの車両上下方向の位置による衝突判定手段の選択、等は第一実施形態と実質的に同様である。
【0068】
<第三実施形態の変形態様>
次に、第三実施形態の変形態様の車両用側突検出装置について、図14及び図15を参照して説明する。本変形態様は、コイル2が平面状のシールド部材120を介して内板12に取り付けられた形態であって、コイル2と補強部材13との離隔距離の変化を検出する形態である。第一実施形態の変形態様では、コイル2がシールド部材を介して補強部材に取り付けられているのに対し、本変形態様はシールド部材を介して内板に取り付けられている点のみが異なるもので、その他の構成、効果等は、第一実施形態の変形態様の場合と同様である。従って、相違点についてのみ説明する。
【0069】
図14は、側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第三実施形態においては、コイル2を内板12の車外側の面に直接取り付けるが、本実施形態においては、コイル2はシールド部材120を介して内板12に取り付けられている。ここで、シールド部材120は、矩形の平板状からなり、例えば鉄などの金属体や磁性体からなる。そして、シールド部材120は、補強部材13に対向するように内板12の車外側の面に取り付けられている。すなわち、コイル2とシールド部材120と補強部材13とは、車両の上下方向の位置が略同じとなっている。図15は内板にサービスホールがある場合で、シールド部材120は、内板112のサービスホール112aの位置に取り付けられているが、シールド部材の効果にサービスホールがある場合と、サービスホールがない場合に差はない。また、非磁性体で構成される内板であってもよい。
【0070】
<第四実施形態>
次に、第四実施形態の車両用側突検出装置について、図16を参照して説明する。第四実施形態は、コイル2が内板12に直接取り付けられた形態であって、コイル2と補強部材用内側部材140との離隔距離の変化を検出する形態である。
【0071】
図16は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第三実施形態においては、補強部材13に何も取り付けておらず、コイル2は、補強部材13との間で磁界を発生させていた。これに対して、第四実施形態においては、補強部材13のうち内板12側に補強部材用内側部材140を取り付けている。ここで、補強部材用内側部材140は、矩形の平板状からなり、例えば鉄などの金属体または磁性体からなる。そして、補強部材用内側部材140は、内板12に対向するように補強部材13に取り付けられている。なお、第四実施形態においては、補強部材13は、金属や強磁性体でなくてもよい。
【0072】
そして、コイル2のうち平面状コイル21の外形は、補強部材用内側部材140の外形より小さく形成されている。すなわち、補強部材用内側部材140は、少なくとも車両の上下方向において、平面状コイル21の外径寸法よりも大きい。さらに、補強部材用内側部材140は、図示されていないが、車両の前後方向(側面ドア1が閉状態での車両前後方向)において、平面状コイル21の外径寸法よりも大きいことが望ましい。このコイル2は、内板12のうち補強部材用内側部材140に対向する領域に取り付けられている(従って、コイル2と補強部材用内側部材140とは、車両の上下方向においてほぼ同じ位置にある)。つまり、コイル2は、内板12と補強部材用内側部材140との間に配置され、内板12と補強部材用内側部材140とが対向する方向に磁界を発生させる。
【0073】
この場合の衝突検出は、第三実施形態と同様である。ただし、補強部材用内側部材140は、平面状コイル21の外形よりも大きな外形を有している。従って、補強部材13が変形することによる磁界の変化が大きくなり、結果として、コイル2に錯交する磁束の量の変化が大きくなる。つまり、検出感度が高くなる。
【0074】
なお、第三実施形態またはその変形態様における特徴部分を、第四実施形態に適用することもできる。この場合には、第三実施形態またはその変形態様の構成による効果、および、第四実施形態の構成による効果を奏することができる。
【0075】
なお、上述の実施形態においては、シールド部材として平面板状(シート状)の部材を用いているが、必ずしもこの形状である必要はない。例えば、格子状、網目状、波形状であってもよい。さらに、シールド部材を接地(金属製の補強部材やドアなどの車両ボディアースへの電気的接続等)することによって、よりシールド性を高めることも考えられる。
【0076】
<第五実施形態>
第五実施形態の車両用側突検出装置について、図17を参照して説明する。
【0077】
上記した第一実施形態〜第四実施形態及びその変形態様は、二つの衝突判定方法についてステー31の車両上下方向(側面ドア1の垂直方向)の位置によって、判定方法を選択している。これにより、コイルの磁束を利用した衝突の検出を正確、かつ広範囲なものとしている。一方、第五実施形態の発明は、ステーの位置により判定方法を選択することはせず、コイルの車両上下方向の幅(垂直方向幅)をステーの車両上下方向の幅(垂直方向幅)より大きくすることで、ステーがコイルの磁束の検出範囲に入ってきたときの影響を軽減するものである。従って、本実施形態の検出回路の構成は、図5の回路構成図の位置センサ32を取り除いたものとなる。
【0078】
図17は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。図に示すようにコイル2は、補強部材13に取り付けられている。ドアガラス30及びドアガラス30に固定されたステー31は、ドアガラス30の開閉状態によりコイル2と内板12の間(すなわち、コイル2による磁束の検出エリアに位置することもある。ステー31が検出エリアに位置している場合は、上記した二つの判定方法のうちの磁束の量の大きさによる判定方法(図6の判定方法)は、誤差が多くなる。これに対し、本発明は、コイル2の車両上下方向の幅(垂直方向幅:H0)をステーの車両上下方向の幅(垂直方向幅:S0)より大きくすることで、コイルの磁束の量の大きさの検出におけるステーの影響を少なくする。本構成により、本実施形態の車両用側突検出装置は、ステーの如何なる位置においても二つの判定方法を使用すること可能となる。また、第一実施形態〜第四実施形態において配置されている位置センサを設置する必要がない。
【0079】
ここで、コイル2全体の大きさが検出範囲に影響を及ぼす。そして、本実施形態では、コイル2の車両上下方向幅H0は、コイルが同一平面上に複数回巻回されているとして、最外周における車両上下方向幅とする。
【0080】
また、同一平面上に複数巻回されている平面状コイル2においては、内周側ほど磁束が強く分布する。そして、コイル2の内周側形状の影響が大きくなる。従って、コイル2の最内周における車両上下方向幅をコイル2の車両上下方向幅H0としてもよい。これにより、検出感度をより高くすることができる。
【0081】
<本発明の車両側突検出装置を備えた車両用乗員保護システムの実施形態>
上記のように構成された本発明の車両用側突検出装置は、以下のように利用することができる。図18に車両用乗員保護システムの実施形態概要をブロック図で示す。この車両用乗員保護システム300は、エアバッグモジュール400を備えている。エアバッグモジュール400は、衝突発生時にエアバッグを展開することによって車両乗員を衝突による衝撃から保護するものである。ここで図18中の車両用側突検出装置は、既に説明した車両用側突検出装置のうちの何れであってもよい。エアバッグモジュール400は、車両に搭載されたシート(図示しない)の側面付近(例えば側面ドアやシートの側面部)に搭載され、車両用側突検出装置と電気的に接続されている。そして、車両用側突検出装置は、乗員保護が必要な車両衝突があった場合、早期に、かつ確実に乗員保護が必要な衝突か否かを判定し、エアバッグモジュール400に対して展開指令を出力する。これを受けたエアバッグモジュール400は、エアバッグを展開する。これにより、乗員に作用する衝突の衝撃が低減されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第一実施形態における側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図(図2のI−I断面図)である。
【図2】側面ドア1の車室内側から見た斜視図であって、内板12の一部を取り除いた状態を示す図である。
【図3】コイル2を示す側面図である。
【図4】内板12とコイル2との離隔距離に対するコイル2のインダクタンスLsの関係を示す図である。
【図5】車両用側突検出装置を示す回路構成図である。
【図6】コイル2の内板12側への移動距離に対するコイル2の検出した磁束の量を示す図である。
【図7】衝突からの経過時間に対する磁束の量の時間変化量(時間微分値)の絶対値を示す図である。
【図8】第一実施形態のステーとコイルとの関係を示す断面図である。
【図9】第一実施形態の変形態様における側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図10】第二実施形態における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図11】第二実施形態の側面ドア1の車両前後方向の垂直に切断した断面図である。
【図12】第二実施形態の側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。
【図13】第三実施形態における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図14】第三実施形態の変形態様における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図15】第三実施形態の変形態様における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図16】第四実施形態の変形態様における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図17】第五実施形態における側面ドア1の車両左右方向の垂直に切断した断面図である。
【図18】車両用乗員保護システムの概要を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
1:側面ドア
11:外板、 12、112:内板、 112a:サービスホール、 13:補強部材
2:コイル(距離センサ)、 21:平面状コイル、 22:フィルム
30:ドアガラス、 31:ステー、 32:位置センサ
40:発振回路
50:検出回路
60:衝突判定手段
100、120:平面状シールド部材
110:内側部材
140:補強部材用内側部材
300:車両用乗員保護システム
400:エアバッグモジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
前記内板、および、前記内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材と前記補強部材との離隔距離を検出する距離センサと、
前記補強部材と前記内板側部材との間に挿入され得る前記側面ドアのドアガラスの位置、または、前記ドアガラスを固定して前記ドアガラスを上下移動させるためのステーの位置を検出する位置センサと、
前記距離センサおよび前記位置センサの出力値に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする車両用側突検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記位置センサにより検出される前記ドアガラスの位置または前記ステーの位置に応じて、前記車両と物体との衝突の判定方法を切り替える請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記ステーが前記補強部材と前記内板側部材との間に位置すると前記位置センサにより検出された場合に、前記距離センサにより検出される前記離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて前記車両と物体との衝突を判定し、
前記ステーが前記補強部材と前記内板側部材との間以外に位置すると前記位置センサにより検出された場合に、前記距離センサにより検出される前記離隔距離または当該離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項4】
前記内板側部材の少なくとも一部は、金属体または磁性体からなり、
前記距離センサは、前記補強部材に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、
前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項5】
前記補強部材は、金属体または磁性体からなり、
前記距離センサは、前記内板側部材に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、
前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項6】
前記ステーは、金属体または磁性体からなる請求項4または5に記載の車両用側突検出装置。
【請求項7】
前記距離センサにより検出される前記離隔距離は、前記磁束の量の大きさに対応し、
前記距離センサにより検出される前記離隔距離の単位時間当たりの変化量は、前記磁束の単位時間あたりの変化量に対応する請求項4〜6の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項8】
前記コイルの車両上下方向幅は、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項4〜7の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項9】
前記コイルは、同一平面上に複数巻回されており、
前記コイルの最内周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項8に記載の車両用側突検出装置。
【請求項10】
前記コイルの最外周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項8に記載の車両用側突検出装置。
【請求項11】
車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
前記内板、および、前記内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材と前記補強部材との離隔距離を検出する距離センサと、
前記距離センサの出力値に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する判定手段と、
を備える車両用側突検出装置であって、
前記補強部材および前記内板側部材の少なくとも一方は、金属体または磁性体を有しており、
前記距離センサは、前記補強部材および前記内板側部材の他方に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、
前記コイルの車両上下方向幅は、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定され、
前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定することを特徴とする車両用側突検出装置。
【請求項12】
前記コイルは、同一平面上に複数巻回されており、
前記コイルの最内周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項11に記載の車両用側突検出装置。
【請求項13】
前記コイルの最外周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項11に記載の車両用側突検出装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の車両用側突検出装置と、
前記車両用側突検出装置の判定に基づいて作動し、前記車両の乗員を衝突による衝撃から保護する乗員保護装置と、
を備えることを特徴とする車両用乗員保護システム。
【請求項1】
車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
前記内板、および、前記内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材と前記補強部材との離隔距離を検出する距離センサと、
前記補強部材と前記内板側部材との間に挿入され得る前記側面ドアのドアガラスの位置、または、前記ドアガラスを固定して前記ドアガラスを上下移動させるためのステーの位置を検出する位置センサと、
前記距離センサおよび前記位置センサの出力値に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする車両用側突検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記位置センサにより検出される前記ドアガラスの位置または前記ステーの位置に応じて、前記車両と物体との衝突の判定方法を切り替える請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記ステーが前記補強部材と前記内板側部材との間に位置すると前記位置センサにより検出された場合に、前記距離センサにより検出される前記離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて前記車両と物体との衝突を判定し、
前記ステーが前記補強部材と前記内板側部材との間以外に位置すると前記位置センサにより検出された場合に、前記距離センサにより検出される前記離隔距離または当該離隔距離の単位時間あたりの変化量に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項4】
前記内板側部材の少なくとも一部は、金属体または磁性体からなり、
前記距離センサは、前記補強部材に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、
前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項5】
前記補強部材は、金属体または磁性体からなり、
前記距離センサは、前記内板側部材に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、
前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項6】
前記ステーは、金属体または磁性体からなる請求項4または5に記載の車両用側突検出装置。
【請求項7】
前記距離センサにより検出される前記離隔距離は、前記磁束の量の大きさに対応し、
前記距離センサにより検出される前記離隔距離の単位時間当たりの変化量は、前記磁束の単位時間あたりの変化量に対応する請求項4〜6の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項8】
前記コイルの車両上下方向幅は、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項4〜7の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項9】
前記コイルは、同一平面上に複数巻回されており、
前記コイルの最内周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項8に記載の車両用側突検出装置。
【請求項10】
前記コイルの最外周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項8に記載の車両用側突検出装置。
【請求項11】
車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
前記内板、および、前記内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である内板側部材と前記補強部材との離隔距離を検出する距離センサと、
前記距離センサの出力値に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する判定手段と、
を備える車両用側突検出装置であって、
前記補強部材および前記内板側部材の少なくとも一方は、金属体または磁性体を有しており、
前記距離センサは、前記補強部材および前記内板側部材の他方に固定され、磁界を発生させ、前記内板側部材と前記補強部材との離隔距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルであり、
前記コイルの車両上下方向幅は、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定され、
前記判定手段は、前記コイルの前記磁束に基づいて前記車両と物体との衝突を判定することを特徴とする車両用側突検出装置。
【請求項12】
前記コイルは、同一平面上に複数巻回されており、
前記コイルの最内周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項11に記載の車両用側突検出装置。
【請求項13】
前記コイルの最外周における車両上下方向幅が、前記ステーの車両上下方向幅より大きく設定されている請求項11に記載の車両用側突検出装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の車両用側突検出装置と、
前記車両用側突検出装置の判定に基づいて作動し、前記車両の乗員を衝突による衝撃から保護する乗員保護装置と、
を備えることを特徴とする車両用乗員保護システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−250769(P2009−250769A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98519(P2008−98519)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
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