説明

車両用光源ユニット

【課題】 蛍光体から放出された光を有効に活用して、小型で十分な光量が得られる電界放出ランプ型の車両用光源ユニットを提供する。
【解決手段】 複数の冷陰極電子源1と、複数の冷陰極電子源1毎に対応し、互いに離間配置されて第1の電界を形成するITO膜4と、複数の第1の電界内毎に配置され、前記複数の冷陰極電子源1毎に対応し、前記ITO膜4に向かって放出された電子により励起されて蛍光物質が光を出射する複数の蛍光体5と、複数の蛍光体5毎に裏面側に配置される複数のリフレクタ6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用光源ユニットに関するものであり、特に、車両用標識灯や車両用前照灯等に用いる車両用灯具に好適な電界放出ランプ型の車両用光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の光源として、電子源から放出された電子を蛍光体の蛍光物質に衝突させ、該蛍光物質を励起させて発光させる電界放出ランプ(FEL:Field Emission Lamp)が提案され、これを光源とする車両用灯具も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、特許文献1に記載される電界放出ランプ型の車両用灯具の構造を示すものである。図3に示す車両用灯具20は、予め真空引きがなされて減圧状態となっている内部空間20aに、陰極(カソード:Cathode)21と、陽極(アノード:Anode)24と、が離間配置されている。また、陽極24は、陰極21と対向している面に蛍光物質からなる蛍光体25が配設されている。この内部空間20aの側壁はリフレクタ26によって構成されていて、内部空間20a側である内側の面には反射部材を有している。リフレクタ26の略円形の開口であるリフレクタ開口部26aを規定する開口縁に沿ってレンズホルダ27が固着されている。レンズホルダ27の他端は凸レンズ28で略円形の開口である凸レンズ後方開口部が嵌着している。
【0004】
また、リフレクタ26の底部となる陰極21側にはリフレクタ26の内面と外面を貫通するように円形の貫通孔22が形成されていて、貫通孔22を塞ぐように貫通孔カバー23が取り付けられている。つまり、貫通孔カバー23は貫通孔22を気密に封止している。すなわち、減圧された車両用灯具20の内部空間20aは、リフレクタ26、レンズホルダ27、及びは凸レンズ28で側壁が形成され、その内部に陰極21,陽極24,蛍光体25が密封収容されている。
【0005】
陰極21は、内部空間20aの後面側(凸レンズ28側を前面側とする)に配置されている。陰極21と陽極24との間に内部空間20aの外部に設けられた電源(図示せず)により電圧が印加され、この電圧により陰極21と陽極24の間に電界が形成されると、陰極21から電子e-が引き出され、この電子e-が陽極24側に加速されながら導かれるようになる。そして、加速した電子e-は陽極24上に配置された蛍光体25に衝突する。
【0006】
蛍光体25を構成している蛍光物質は、電子e-の衝突により所定以上のエネルギーを受け取ると励起して励起状態に遷移し、この励起状態となった蛍光物質が基底状態に戻るときに励起状態と基底状態の差分のエネルギーを光として放出することにより発光する。
【0007】
そして、蛍光体25にて発光した光は、電子の入射方向にかかわらず等方向にほぼ360度に亘って放射され、前面側である光出射方向に向かう光はそのまま凸レンズ28により屈折して外部へ出射され、後方及び側方側の光出射方向に向かう光はリフレクタ26により反射されてから凸レンズ28により屈折して外部へ出射される構造になっている。
【0008】
このような電界放出ランプ型の車両用灯具は、熱の発生がなく、光学系もシンプルであり、従来のバルブ等を使用した車両用灯具に比べてコスト的にも有利な長所を有する。
【特許文献1】特開2006−221979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の電界放出ランプ型の車両灯具では、大きな光量又は広い照射範囲が必要である場合は、所望の配光を得るために凸レンズ28の直径を大きくしたり、陰極21及び陽極24にかかる印加電圧を大きくしたりする必要があるため、車両用灯具が大型化するという問題点があった。特に内部空間20aが高熱化することを防止するため、内部空間20aの領域を広く設計する必要があるという問題点があった。また、蛍光体25一つで放射された光では、リフレクタ26により配光しても照射範囲の中央の強度が強く、周囲が弱くなってしまうため、照射範囲に光強度のムラが生じてしまう問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、蛍光体から放出された光を有効に活用して、小型で十分な光量が得られる電界放出ランプ型の車両用光源ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の車両用光源ユニットは、枠体と、前記枠体内に設けられた複数の陰極と、前記枠体内に設けられ、前記複数の陰極毎に対応し、互いに離間配置されて前記陰極毎に第1の電界を形成する陽極と、前記枠体内の複数の第1の電界内毎に配置され、前記複数の陰極毎に対応する前記陽極に向かって放出された電子により励起されて蛍光物質が光を出射する複数の蛍光体と、前記枠体内の複数の蛍光体の背面側に配置される複数のリフレクタと、前記枠体内に設けられ、前記複数の第1の電界がそれぞれ通過する孔部を有し、前記孔部にて第2の電界を形成して前記複数の第1の電界の領域をそれぞれ制御する制御電極とを備える。
【0012】
この構成によれば、陽極、陰極、蛍光体、及びリフレクタを一つの発光部として複数設けているので、一つの大型光源に比べて蛍光体の割合に対するリフレクタの面積が大きくなるため、リフレクタからの反射光が均一に見えて、面発光光源に近い配光を提供することができる。つまり、光のムラが少ない配光を提供することができる。また、大型光源では焦点距離を長くとる必要があったため、リフレクタを前後方向(光照射方向)に大きくする必要があるため奥行き幅が大きくなっていたが、複数の光源を設けることで、リフレクタは個々の蛍光体に合わせた焦点距離をとればよいため、奥行き幅を小さくすることが可能となり、車両用光源ユニットを小型化することができる。また、上記構成を光透過性が高い枠体内部に真空密閉して配置する際に、従来の大型光源に比べて、奥行き幅が小さいことやシンプルな構造であるため、この真空密閉する工程の作業効率を向上することができる。
【0013】
前記複数のリフレクタは、前記蛍光体毎に対向し複数の凹部を有した一つの高リフレクタから成り、前記複数の凹部に前記複数の第1の電界がそれぞれ通過する孔部を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、制御電極によって、陰極から電子を引き出し、さらに電子を加速させることが可能であるため、陽極に配置された蛍光体へ衝突する電子の運動エネルギーを増大することができる。更に、制御電極は、第1の電界の領域を制御することができるため、陰極から引き出された電子を、陽極に配置された蛍光体に効率的に衝突させることができる。そのため、少量の電圧で効果的に蛍光体の光量を得ることが可能である。また、蛍光体の裏面側に向かって蛍光物質から出射される光をリフレクタにより前面側である光出射方向へ反射させて有効に活用することができる。また、制御電極孔部は、陰極、陽極、リフレクタ、及び蛍光体を配置する際の位置決めとして使用することができるので、取付工程での作業効率を向上することが可能となる。更に、複数のリフレクタは、複数の凹部の中央に孔部を設けた1個の成形品として設けることが可能であるため、この複数の凹部の中央に孔部に合わせて、陰極及び蛍光体の位置の位置決めとして利用することができるので、取付工程での作業効率を向上することが可能となる。つまり、位置決め精度が高くなるため、所望の配光パターンを持つ品質の高い車両用光源ユニットを提供することができる。
【0015】
前記蛍光体は、波長が595nm〜780nmの範囲である赤色光を出射する蛍光物質を有していることを特徴とする。この構成によれば、蛍光体は、赤色光を出射するため、ブレーキ制御状態を示す制動灯等の標識灯で必要な赤色レンズが不要となり、透過性の良い透明なレンズを用いることができる。そのため、透過効率の低い赤色のレンズによる光源出力の増加が不要となるため、電力消費量の低減することができる。
【0016】
前記複数のリフレクタは、対応する前記赤色光を出射する前記蛍光物質を有した蛍光体毎に対向し、前記制御電極は、前記リフレクタの裏面側に配置されることを特徴とする。この構成によれば、複数のリフレクタは、其々の蛍光体から出射される光のうち、蛍光体の後方及び側方側の光出射方向に向かう光を、高反射処理を施した反射面により光出射方向(前面側)へ所望の配光となるように反射させることが可能となる。そのため、法規で定められた光量及び配光範囲を有する車両用灯具として有効に活用することができる。更に、制御電極によって、陰極から電子を引き出し、さらに電子を加速させることが可能であるため、陽極に配置された蛍光体へ衝突させることができるので、赤色光の出射効率を向上することができる。
【0017】
前記蛍光体は、前記孔部の形状を略同等又は小さくした形状を有することを特徴とする。この構成によれば、陰極から引き出された電子は陽極に向かう際に、制御電極に設けられた孔部又はリフレクタに設けられた孔部を通過するので、この孔部形状が第1の電界の主な範囲となるため、電子を受けとる陽極はこの孔部の形状と略同じ大きさを有していればよい。そのため、第1の電界内毎に配置された蛍光体を制御電極孔部及び前記リフレクタ孔部、又はいずれか一方の形状を略同等又は小さくした形状にすることで、蛍光体の陰極側の面の全面で電子と衝突することができるので、発光効率が向上して、光の出射効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蛍光体から放出された光を有効に活用して、小型で十分な光量が得られる電界放出ランプ型の車両用光源ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1及び図2は本発明の実施の形態として示す車両用光源ユニットを示すもので、図1はその外観斜視図、図2は図1のA−A線断面図である。なお、以下の説明において、図2の上方向を前方、下方向を後方とし、左方向を左方、右方向を右方とし、また紙面に垂直な方向を上下方向として説明する。
【0020】
図1及び図2において、光源ユニット10は、電界放出ランプ(FEL)型のユニットであって、ガラス等の光透過性部材である前方側枠体3と、内部空間を予め真空引きがなされて減圧状態になっている枠体7とで密閉している。この枠体7の内部空間には、陰極である複数個の冷陰極電子源1と、陽極であるITO膜4と、無損失ゲート電極2と、蛍光物質からなる複数個の蛍光体5と、リフレクタ6とが、配置されている。すなわち、減圧された枠体7の内部空間には、複数の冷陰極電子源1、ITO膜4,無損失ゲート電極2,複数の蛍光体5,リフレクタ6が密封収容されている。
【0021】
冷陰極電子源1は、枠内7内に設けられ、例えば縦横一列に整列して枠体7の後方側に配置されている。ここでは、枠体7の内部空間に縦に3個、横に4個を配列した12個の冷陰極電子源1(1a、1b、1c…)が配置されている。また、冷陰極電子源1は、例えば平板形状を有し、陽極側である表面に冷陰極部材を有している。また、この冷陰極部材は、微細な表面構造を有するカーボンナノチューブ等で構成されており、表面近傍に形成される電界によって電子を放出する。
【0022】
無損失ゲート電極2は、枠体7内に設けられ、陰極である冷陰極電子源1と陽極であるITO膜4との間に配置され、冷陰極電子源1との間に電子引き出し用の電界を形成する電極である。無損失ゲート電極2には、各冷陰極電子源1a、1b、1c…に対応するゲート電極孔部2a、2b、2c…を設けていて、冷陰極電子源1a、1b、1c…の中心がゲート電極孔部2a、2b、2c…の中央となるように配置されている。ゲート電極孔部a、2b、2c…付近の無損失ゲート電極2と冷陰極電子源1a、1b、1c…との間には、枠体7の外部に設けられた電源(図示せず)により電圧が印加され、この電圧で無損失ゲート電極2と冷陰極電子源1a、1b、1c…との間に電界が形成されると、冷陰極電子源1a、1b、1c…から電子e-が引き出され、この電子e-がゲート電極孔部2a、2b、2c…側に加速されながら導かれるようになる。
【0023】
ITO膜4は、枠体7の前方側に、陰極である冷陰極電子源1に対向して離間配置されている。また、ITO膜4は、可視光の透過率が約90%と非常に高く、電子を輸送する層を有した膜である。また、ITO膜4は、各冷陰極電子源1a、1b、1c…から引き出された電子をさらに加速させる電子加速用の電界を形成する電極であり、ITO膜4と各冷陰極電子源1a、1b、1c…との間には、上記電源によって電圧が印加される。ITO膜4と冷陰極電子源1a、1b、1c…との間に電圧が印加されると、ITO膜4と冷陰極電子源1a、1b、1c…との間に形成されるそれぞれの電界により、陰極16から引き出されてゲート電極孔部2a、2b、2c…を通過した電子e-が、さらにITO膜4に向かって加速されながら導かれるようになる。
【0024】
蛍光体5a、5b、5c…は、冷陰極電子源1と同数個が枠体7の内部に格納され、枠体7の前方側に設けられたITO膜4の冷陰極電子源1側の面上に、各冷陰極電子源1a、1b、1c…の中心が一致するように整然と配置されている。また、蛍光体5を構成している蛍光物質は、所定以上のエネルギーを電子から受け取ると励起して励起状態に遷移し、この励起状態となった蛍光物質が基底状態に戻るときに励起状態と基底状態の差分のエネルギーを光として放出することにより発光する。ここでは、蛍光物質は、励起状態と基底状態の差分のエネルギーを波長が595nm〜780nmの範囲である赤色光として出射する。つまり、冷陰極電子源1から引き出され加速した電子が蛍光体5に衝突することで、赤色光として出射することができて、この電子の持つ運動エネルギーや電子の電界内の数量(密度)に応じて蛍光体5から出射する光量が決定する。
【0025】
リフレクタ6は、枠体7内に設けられ、蛍光体5a、5b、5c…と無損失ゲート電極2との間において、各蛍光体5a、5b、5c…の後方面を凹曲面(放物面形状)を有すリフレクタ凹部6a、6b、6c…が囲むように配置している。また、このリフレクタ凹部6a、6b、6c…の中央には、陰極である冷陰極電子源1と陽極であるITO膜4との間で電子が通過可能とするためのリフレクタ孔部8a、8b、8c…を設けている。このリフレクタ凹部6a、6b、6c…は、各蛍光体5a、5b、5c…が発光した光出射方向と反対の後方側や側面側に向かう光を、光出射方向である前方に反射させて、ITO膜4及び前方側枠体3を通して光出射方向(前方側)に出射させるものでる。また、リフレクタ6は、表面にはアルミ蒸着や銀色塗装等の鏡面が施された高反射処理をした部材である。
【0026】
前方側枠体3は、ガラス等の光透過性の高い部材で構成されており、蛍光体5から光や、リフレクタ6からの反射した光を損失することなく光出射方向である前方へ出射されることができる。
【0027】
つまり、冷陰極電子源1aから引き出される電子は、ゲート電極孔部2aを通過しながら加速して、リフレクタ孔部8aを通過して、陽極であるITO膜4上に設けられた蛍光体5aへ移動する。そのため、冷陰極電子源1aとITO膜4で形成される電界の領域のうち左右方向と上下方向は、ゲート電極孔部2aとリフレクタ孔部8aの形状に制御される。その結果、蛍光体5aに到達した電子が衝突する範囲は、ゲート電極孔部2aとリフレクタ孔部8aの形状にて制御された範囲となるため、蛍光体5aをゲート電極孔部2a及び前記リフレクタ孔部8a、又はいずれか一方の形状を略同等又は小さくした形状とすることで、蛍光体5aの冷陰極電子源1a側の全面に電子が衝突する範囲となり、発光効率を向上させることができる。
【0028】
このように、本実施形態によれば、ITO膜4、冷陰極電子源1、蛍光体5、及びリフレクタ凹部6を一つの発光部として複数設けているので、一つの大型光源に比べて蛍光体の割合に対するリフレクタの面積が大きくなるため、リフレクタ凹部6からの反射光が均一に見えて、面発光光源に近い配光を提供することができる。つまり、光のムラが少ない配光を提供することができる。また、大型光源では焦点距離を長くとる必要があったため、リフレクタを前後方向(光照射方向)に大きくする必要があるため奥行き幅が大きくなっていたが、複数の光源を設けることで、リフレクタ凹部6は個々の蛍光体5に合わせた焦点距離をとればよいため、奥行き幅を小さくすることが可能となり、車両用光源ユニットを小型化することができる。また、光透過性が高い前方側枠体3を有する枠体7の内部に真空密閉して配置する際に、従来の大型光源に比べて、奥行き幅が小さいことやシンプルな構造であるため、この真空密閉する工程の作業効率を向上することができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、無損失ゲート電極2によって、冷陰極電子源1a、1b、1c…から電子を引き出し、さらに電子を加速させることが可能であるため、ITO膜4に配置された蛍光体5a、5b、5c…へ衝突する電子の運動エネルギーを増大することができる。更に、無損失ゲート電極2は、第1の電界の領域を制御することができるため、冷陰極電子源1a、1b、1c…から引き出された電子を、陽極に配置された蛍光体5a、5b、5c…に効率的に衝突させることができる。そのため、少量の電圧で効果的に蛍光体5a、5b、5c…の光量を得ることが可能である。また、蛍光体の裏面側に向かって蛍光物質から出射される光をリフレクタ凹部6a、6b、6c…により前面側である光出射方向へ反射させて有効に活用することができる。また、ゲート電極孔部2a、2b、2c…は、無損失ゲート電極2、リフレクタ凹部6a、6b、6c…、及び蛍光体5a、5b、5c…を配置する際の位置決めとして使用することができるので、取付工程での作業効率を向上することが可能となる。更に、複数のリフレクタ凹部6a、6b、6c…も同様に、冷陰極電子源1a、1b、1c…及び蛍光体5a、5b、5c…の位置の位置決めとして利用することができるので、取付工程での作業効率を向上することが可能となる。つまり、位置決め精度が高くなるため、所望の配光パターンを持つ品質の高い車両用光源ユニットを提供することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、光源ユニット10は、例えば、テールランプ、ターンシグナルランプ、ストップランプ等の信号用灯具として適用することができる。これを例えば、ストップランプとして使用する場合には、蛍光体5から赤色光が出射されるので、透明のアウターレンズを適用することができる。従来の車両用灯具であるストップランプは、光源からは主に白色光であるため、光透過率の低い赤色のアウターレンズを使用し、法規で定められた光量を得るために光源の出力を大きくする必要があった。そのため、必要とする光量を得るための光源の出力を抑えることができるので、電力消費量の低減が可能な車両用灯具を提供できる。また、赤色アウターレンズは、透明のアウターレンズに比べてコストが割高であるため、透明アウターレンズ11を適用することで、コスト低減することができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、複数のリフレクタ凹部6は、其々の蛍光体5a、5b、5c…から出射される光のうち、蛍光体5の後方及び側方側の光出射方向に向かう光を、高反射処理を施した反射面により光出射方向(前面側)へ所望の配光となるように反射させることが可能となる。そのため、法規で定められた光量及び配光範囲を有する車両用灯具として有効に活用することができる。更に、無損失ゲート電極2によって、冷陰極電子源1a、1b、1c…から電子を引き出し、さらに電子を加速させることが可能であるため、ITO膜4に配置された蛍光体5a、5b、5c…へ衝突させることができるので、赤色光の出射効率を向上することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、冷陰極電子源1a、1b、1c…から引き出された電子はITO膜4に向かう際に、ゲート電極孔部2a、2b、2c…及びリフレクタ孔部8a、8b、8c…を通過するので、このゲート電極孔部2a、2b、2c…及びリフレクタ孔部8a、8b、8c…形状が第1の電界の主な範囲となるため、第1の電界内毎に配置された蛍光体5a、5b、5c…をゲート電極孔部2a、2b、2c…及び前リフレクタ孔部8a、8b、8c…、又はいずれか一方の形状を略同等又は小さくした形状にすることで、蛍光体5a、5b、5c…の冷陰極電子源1側の面の全面で電子と衝突することができるので、発光効率が向上して、光の出射効率を向上することができる。
【0033】
その結果、本実施形態によれば、蛍光体5から放出された光を有効に活用して、小型で十分な光量が得られる電界放出ランプ型の車両用光源ユニット10を提供することができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、特許請求の範囲の概念を逸脱しない範囲で、上記実施の形態の構造に種々の変形や変更を施すことも可能である。
【0035】
また、上記実施の形態では光源ユニット10は、縦に3個、横に4個を配列した12個の発光部を有した構成としているが、特に限定していない。車両用灯具として必要な配光範囲・配光パターン・光量を考慮した複数個の発光部を有した光源ユニット10としても構わない。
【0036】
また、上記実施の形態では光源ユニット10の枠体7は直方体の形状をしているが、特に限定していない。例えば、円柱や楕円柱の形状や、所望の車両用灯具の形状に即しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態として示す車両用光源ユニットの外観斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】従来における車両用灯具の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1a、1b、1c… 冷陰極電子源
2 無損失ゲート電極
2a、2b、2c… ゲート電極孔部
3 前方側枠体
4 ITO膜
5a、5b、5c… 蛍光体
6 リフレクタ
6a、6b、6c… リフレクタ凹部
7 枠体
8a、8b、8c… リフレクタ孔部
10 車両用光源ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、
前記枠体内に設けられた複数の陰極と、
前記枠体内に設けられ、前記複数の陰極毎に対応し、互いに離間配置されて前記陰極毎に第1の電界を形成する陽極と、
前記枠体内の複数の第1の電界内毎に配置され、前記複数の陰極毎に対応する前記陽極に向かって放出された電子により励起されて蛍光物質が光を出射する複数の蛍光体と、
前記枠体内の複数の蛍光体の背面側に配置される複数のリフレクタと、
前記枠体内に設けられ、前記複数の第1の電界がそれぞれ通過する孔部を有し、前記孔部にて第2の電界を形成して前記複数の第1の電界の領域をそれぞれ制御する制御電極と、
を備えることを特徴とする車両用光源ユニット。
【請求項2】
前記複数のリフレクタは、前記蛍光体毎に対向し複数の凹部を有した一つの高リフレクタから成り、前記複数の凹部に前記複数の第1の電界がそれぞれ通過する孔部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用光源ユニット。
【請求項3】
前記蛍光体は、波長が595nm〜780nmの範囲である赤色光を出射する蛍光物質を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用光源ユニット。
【請求項4】
前記複数のリフレクタは、対応する前記赤色光を出射する前記蛍光物質を有した蛍光体毎に対向し、
前記制御電極は、前記リフレクタの裏面側に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用光源ユニット。
【請求項5】
前記蛍光体は、前記孔部の形状を略同等又は小さくした形状を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用光源ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−259430(P2009−259430A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104022(P2008−104022)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/電気自動車用の超高効率な省エネ型ランプの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】