説明

車両用内装品および車両用内装品の製造方法

【課題】表皮材の縁をリッドカバーの内面側に留める手段を必要としない車両用内装品、および表皮材の縁をリッドカバーの内面側に留める作業を必要としない車両用内装品の製造方法を提供すること。
【解決手段】車両用内装品2は、ベース状に形成された基材10と、この基材10の表面を覆う発泡樹脂材20と、この発泡樹脂材20の表面を基材10の縁と共にカバーリングする表皮材30とを備えている。基材10には、その厚み方向を貫通する貫通孔12が形成されている。そして、車両用内装品2は、この貫通孔12から食み出した発泡樹脂材20と表皮材30とを接着させて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装品および車両用内装品の製造方法に関し、詳しくは、ベース状に形成された基材と、この基材の表面を覆う発泡樹脂材と、この発泡樹脂材の表面を基材の縁と共にカバーリングする表皮材とを備えた車両用内装品および車両用内装品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転席と助手席との間に設けられているコンソールボックスは、収納ボックスとしてだけでなく、これら運転席と助手席に着座した乗員のアームレストとしても使用されている。ここで、下記特許文献1には、ベース状に形成された基材(リッドカバー)と、この基材の表面を覆うクッション材と、このクッション材の表面を覆った状態で基材の内面側に巻き込まれる表皮材とから成る車両用内装品であるコンソールボックスの開閉カバーが開示されている。これにより、コンソールボックスをアームレストとして使用した場合でも、その開閉カバーがクッション性を備えているため、乗員の肘が痛くなることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−67105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、タッカー等の留め手段を介して、表皮材の縁を基材の内面側に留めている。そのため、コンソールボックスの開閉カバーの製造工程において、この留め作業が必要となっていた。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決しようとするもので、その課題は、表皮材の縁をリッドカバーの内面側に留める手段を必要としない車両用内装品、および表皮材の縁をリッドカバーの内面側に留める作業を必要としない車両用内装品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、ベース状に形成された基材と、この基材の表面を覆う発泡樹脂材と、この発泡樹脂材の表面を基材の縁と共にカバーリングする表皮材と、を備えた車両用内装品であって、基材には、その厚み方向を貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔から食み出した発泡樹脂材と表皮材とを接着させて成る構成である。
この構成によれば、発泡樹脂材によって、表皮材を基材に留めることができる。そのため、車両用内装品において、従来技術で説明したタッカー等の留め手段を必要とすることがない。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、ベース状に形成された基材と、この基材の表面を覆う発泡樹脂材と、この発泡樹脂材の表面を基材の縁と共にカバーリングする表皮材と、を備えた車両用内装品の製造方法であって、表皮材を金型にセットし、このセットした表皮材と、基材との間に発泡前の発泡樹脂材を流し込み、この流し込んだ発泡樹脂材を発泡させ、この発泡させた発泡樹脂材を基材の厚み方向に貫通するように形成された貫通孔から食み出させ、この食み出させた発泡樹脂材と基材の裏面側に回り込ませた表皮材とを接着させる製造方法である。
この製造方法によれば、発泡樹脂材によって、表皮材を基材に留めることができる。そのため、車両用内装品において、従来技術で説明したタッカー等の留め作業を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るコンソールボックスの開閉カバーにおける基材を内面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係るコンソールボックスの開閉カバーの製造装置の正面図であり、第1工程を示している。
【図3】図3は、図2の次工程である第2工程を示している。
【図4】図4は、図3の次工程である第3工程を示している。
【図5】図5は、図4の次工程である第4工程を示している。
【図6】図6は、図5の次工程である第5工程を示している。
【図7】図7は、図6の次工程である第6工程を示している。
【図8】図8は、図7の次工程である第7工程を示している。
【図9】図9は、図8の次工程である第8工程を示している。
【図10】図10は、図9の次工程である第9工程を示している。
【図11】図11は、図2〜10の工程で製造したコンソールボックスの開閉カバーを内面側から見た斜視図である。
【図12】図12は、図11のXII−XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜12を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、『車両用内装品』の例として、『公知のコンソールボックス(図示しない)の開閉カバー2』を例に説明していく。なお、これら各図では、コンソールボックスの開閉カバー2は、通常の使用状態に対して、その上下が引っくり返された状態(内面側から見た状態)で記載されている。
【0010】
まず、図1を参照して、本発明の実施例に係るコンソールボックスの開閉カバー2(図1において、図示しない)における基材10の全体構成を説明する。この基材10は、コンソールボックスの開閉カバー2の骨格を形成するためのものであり、略矩形状に形成された樹脂製のベース部材である。
【0011】
この基材10における長手方向の両縁の近傍には、その厚み方向を貫通する貫通孔12がそれぞれ形成されている。この実施例では、両縁の近傍に、それぞれ5箇所の貫通孔12が形成されている。また、この基材10の内面における短手方向の中央付近には、基材10の長手方向に沿って2列にリブ14が形成されている。
【0012】
これにより、後述するコンソールカバー製造装置3のピストン78の挟持穴78aに差し込むことができるため、このピストン78を昇降させることで基材10を持ち上げることができる。この実施例では、基材10の長手方向に沿って2列にそれぞれ3箇所のリブ14が形成されている。基材10は、このように構成されている。
【0013】
次に、図2を参照して、上述した基材10から、コンソールボックスの開閉カバー2を製造するコンソールカバー製造装置3の構成を説明する。このコンソールカバー製造装置3は、主として、その骨格を成すフレーム部40と、開閉カバー2を成形する成形部42とから構成されている。以下に、これらフレーム部40と成形部42とを個別に説明していく。
【0014】
はじめに、フレーム部40から説明していく。このフレーム部40は、床フロアFに設置される下フレーム50と、この下フレーム50に対向する上フレーム52と、この両フレーム50、52の向かい合う面(下フレーム50の上面と、上フレーム52の下面)の四隅をそれぞれ橋渡すように締結させる4本の案内軸54、54、54、54とから構成されている。フレーム部40は、このように構成されている。
【0015】
次に、成形部42を説明する。この成形部42は、下フレーム50に組み付けられた下型60と、上フレーム52に組み付けられコンソールカバー製造装置3の駆動源であるメインシリンダ70と、このメインシリンダ70のロッド72の伸縮によって4本の案内軸54、54、54、54に沿って昇降するベースプレート74と、このベースプレート74に一体的に組み付けられた上型76とから構成されている。これら下型60、メインシリンダ70と、ベースプレート74と、上型76とを個別に説明していく。
【0016】
はじめに、下型60から説明していく。この下型60は、後述する発泡樹脂材20(例えば、ポリオールとイソシアネートを混ぜてできる発泡ポリウレタン)を流し込んで開閉カバー2のクッションを成形するため部材である。そのため、この下型60には、所望する形状に発泡樹脂材20を発泡させることができるキャビティ60aが形成されている。また、この下型60には、その左右にブラケット62、62を介して巻込機64、64が取り付けられている。この巻込機64は、そのロッド64aの伸縮によって、キャビティ60aにセットした表皮材30の縁を折り込ませることができるものである。この下型60が、特許請求の範囲に記載の「金型」に相当する。下型60は、このように構成されている。
【0017】
次に、メインシリンダ70を説明する。このメインシリンダ70は、そのロッド72が上フレーム52の厚み方向を貫通するように、上フレーム52の上面に締結されている。このメインシリンダ70は、外部からの油圧によって、そのロッド72を伸縮させることができるように構成されている。このロッド72は、アウタロッド72aと、このアウタロッド72aに対して伸縮可能なインナロッド72bとから成る二重構造となっている。
【0018】
このインナロッド72bの先端には、後述する上型76の内部に配置されているピストン78が締結されている。これにより、インナロッド72bを伸縮させると、上型76からピストン78を進退させることができる。なお、このピストン78の先端面には、基材10のリブ14をそれぞれ差し込み可能な挟持穴78aが形成されている。メインシリンダ70は、このように構成されている。
【0019】
次に、ベースプレート74を説明する。このベースプレート74は、後述する上型76を組み付けるためのベースである。このベースプレート74には、その四隅に4本の案内軸54、54、54、54を差し込み可能な案内孔74a、74a、74a、74aが形成されている。そして、このベースプレート74は、その各案内孔74aが各案内軸54に差し込まれた状態で上述したメインシリンダ70のロッド72の先端に締結されている。これにより、ロッド72を伸縮させると、ベースプレート74を昇降させることができる。ベースプレート74は、このように構成されている。
【0020】
最後に、上型76を説明する。この上型76は、下型60のキャビティ60aに基材10をセットするための部材である。そのため、この上型76は、下型60のキャビティ60aに対して略型締め可能に構成されている。上型76は、このように構成されている。成形部42は、このように(下型60、メインシリンダ70と、ベースプレート74と、上型76とから)構成されている。
【0021】
続いて、図2〜12を参照して、上述したフレーム部40と成形部42とから成るコンソールカバー製造装置3によってコンソールボックスの開閉カバー2を製造する工程(製造方法)を説明する。まず、基材10のリブ14、・・・、14を上型76側のピストン78の挟持穴78a、・・・、78aに差し込んで、基材10を上型76にセットする作業を行う(図2参照)。
【0022】
次に、下型60のキャビティ60aに表皮材30をセットする作業を行う(図3参照)。次に、下型60に取り付けられている吸引装置(図示しない)を動作させて、セットした表皮材30をキャビティ60aの内面に沿わせる作業を行う(図4参照)。なお、表皮材30は、例えば、真空引きにより、下型60へ賦型されてもよい。この場合、下型60には、複数の孔が形成されており、この孔により真空引きされて下型60へと張り付き賦型されることとなる。次に、ノズル66を介して、キャビティ60aに発泡前の発泡樹脂材20を流し込む作業を行う(図5参照)。
【0023】
次に、ベースプレート74を下降させて、下型60と上型76とを型締めする作業を行う(図6参照)。次に、ピストン78を上昇させることなく、上型76のみを上昇させる作業を行う(図7参照)。このとき、キャビティ60aに流し込んだ発泡樹脂材20の発泡は始まっている。次に、左右の巻込機64、64の各ロッド64a、64aを伸ばして、表皮材30の縁を基材10の内面に折り込む作業を行う(図8参照)。
【0024】
このとき、発泡した発泡樹脂材20は、基材10の貫通孔12、・・・、12から食み出した状態となっている。次に、ピストン78を下降させることなく、上昇させた上型76のみを下降させる作業を行う(図9参照)。これにより、折り込まれた表皮材30の縁と、基材10の貫通孔12、・・・、12から食み出している発泡樹脂材20とが接着するため、この表皮材30の縁を基材10の内面側に留めることができる。なお、表皮材30は、発泡樹脂材20が発泡中に接着させることが望ましい。表皮材30の表面にある微細の凹凸内に発泡樹脂材20が発泡したまま入り込み、アンカー効果が生まれ、接着力が高まることとなる。
【0025】
やがて、発泡樹脂材20の発泡が完了すると、開閉カバー2が完成する。このようにして完成した開閉カバー2は、上型76と共にピストン78を上昇させて(図10参照)、ピストン78から取り外すことができる。取り外した(完成した)開閉カバー2は、図11、12に示される状態となっている。
【0026】
本発明の実施例に係るコンソールボックスの開閉カバー2およびその製造方法は、上述したように構成されている。この構成によれば、発泡樹脂材20によって、表皮材30の縁を基材10の内面側に留めることができる。そのため、コンソールボックスの開閉カバー2において、従来技術で説明したタッカー等の留め手段を必要とすることがない。したがって、従来技術で説明したタッカー等の留め作業も必要としない。なお、このように、発泡樹脂材20によって、表皮材30の縁を基材10の内面側に留めることができると、アンカー効果により、この留めの度合いを強固にできる。また、このように、発泡樹脂材20によって、表皮材30の縁を基材10の内面側に留めることができると、発泡樹脂材20の発泡によって表皮材30に生じる皺も伸ばされ、出来上がった開閉カバー2の美観を向上させることができる。
【0027】
実施例では、折り込まれた表皮材30の縁と、基材10の貫通孔12、・・・、12から食み出している発泡樹脂材20とが接着する例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、食み出した発泡樹脂材20が発泡後、この発泡樹脂材20を熱で溶かしてから、折り込まれた表皮材30の縁と接着させても構わない。その場合、折り込まれた表皮材30の縁と、基材10の貫通孔12、・・・、12から食み出している発泡樹脂材20とが直に接着しなくても、従来技術で説明したタッカー等の留め手段を必要とすることがない。
【0028】
また、実施例では、『車両用内装品』の例として、『公知のコンソールボックスの開閉カバー2』を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、『車両用内装品』の例として、単なる『アームレスト』であっても構わない。
【0029】
また、実施例では、発泡樹脂材20として、例えば、ポリオールとイソシアネートを混ぜてできる発泡ポリウレタンを例に説明した。しかし、このような化学発泡に限定されるものでなく、折り込まれた表皮材30の縁と、基材10の貫通孔12、・・・、12から食み出している発泡樹脂材20とが接着できれば、発泡方法や材料は、どのようなものであっても構わない。
【符号の説明】
【0030】
2 開閉カバー(車両用内装品)
10 基材
12 貫通孔
20 発泡樹脂材
30 表皮材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース状に形成された基材と、
この基材の表面を覆う発泡樹脂材と、
この発泡樹脂材の表面を基材の縁と共にカバーリングする表皮材と、を備えた車両用内装品であって、
基材には、その厚み方向を貫通する貫通孔が形成されており、
この貫通孔から食み出した発泡樹脂材と表皮材とを接着させて成る車両用内装品。
【請求項2】
ベース状に形成された基材と、
この基材の表面を覆う発泡樹脂材と、
この発泡樹脂材の表面を基材の縁と共にカバーリングする表皮材と、を備えた車両用内装品の製造方法であって、
表皮材を金型にセットし、
このセットした表皮材と、基材との間に発泡前の発泡樹脂材を流し込み、
この流し込んだ発泡樹脂材を発泡させ、
この発泡させた発泡樹脂材を基材の厚み方向に貫通するように形成された貫通孔から食み出させ、
この食み出させた発泡樹脂材と基材の裏面側に回り込ませた表皮材とを接着させる車両用内装品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−86608(P2012−86608A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233372(P2010−233372)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】