説明

車両用内装装置

【課題】 回動部材の側壁が内倒れしても樹脂製軸の爪部と回動部材の爪嵌合部との係合が外れてしまうことを従来に比べて抑制できる車両用内装装置の提供。
【解決手段】樹脂製軸40の爪部42が、回動部材30の小物入れ部31の装置幅方向の側壁32が内倒れするときに該側壁32が倒れる方向と直交または略直交する方向に弾性変形して復元することで回動部材30の爪嵌合部33に係合する構造になっている。そのため、爪部が回動部材の側壁の内倒れ方向と同方向に弾性変形して復元することで回動部材の爪嵌合部に係合する構造になっている場合(従来)に比べて、回動部材30の側壁32が内倒れしても、樹脂製軸40の爪部42が爪嵌合部33によって押されて弾性変形し難くなり、爪部42と爪嵌合部33との係合が外れてしまうことを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製軸を有する車両用内装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7〜図10は、従来の車両用内装装置が車両用オーバーヘッドコンソール装置である場合を示している。従来の車両用内装装置1は、図7に示すように、固定部材2と、固定部材2に対して閉位置と開位置とに回動可能な回動部材3と、回動部材3の回動軸部を構成する樹脂製軸4と、を有している。
【0003】
回動部材3は、図10に示すように、小物入れ部3aと、小物入れ部3aの装置幅方向の側壁3bに一体的に設けられる爪嵌合部3cと、を備えている。回動部材3は、固定部材2に対して閉位置にあるとき、図8に示す状態にある。回動部材3は、固定部材2に対して開位置にあるとき、図9に示すように、回動部材3に設けられるストッパ部3dが固定部材2に設けられるストッパ受け部2aに当接している。
【0004】
樹脂製軸4は、図7に示すように、固定部材2に設けられる軸受孔2bに挿入され固定部材2に回動可能に支持される軸本体部4aと、回動部材3の爪嵌合部3cに弾性変形して復元することで係合する爪部4bと、を備えている。
【0005】
しかし、従来の車両用内装装置1には、つぎの問題点がある。
図9に示す開位置にある回動部材3の先端部3eに開側に過荷重(大荷重)がかかった場合、固定部材2のストッパ受け部2aが支点となり、テコの原理で回動部材3の側壁3bに図7に示す矢印g方向の力が発生し、側壁3bが矢印g方向に倒れてしまう(内倒れしてしまう)ことがある。
ここで、樹脂製軸4の爪部4bは、回動部材3の側壁3bが内倒れするときに該側壁3bが倒れる方向と同方向に弾性変形して回動部材3の爪嵌合部3cに係合する構造になっている。
そのため、側壁3bが矢印g方向に内倒れすると、樹脂製軸4の爪部4bが爪嵌合部3cによって押されて弾性変形してしまい、爪部4bと爪嵌合部3cとの係合が外れてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】発明協会公開技法公技番号2006−503932号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、回動部材の側壁が内倒れしても樹脂製軸の爪部と回動部材の爪嵌合部との係合が外れてしまうことを従来に比べて抑制できる車両用内装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) (a)車室に開放する凹部と、該凹部を形成する凹部形成壁に設けられる軸受孔と、を備える固定部材と、
(b)小物入れ部と、前記小物入れ部の装置幅方向の側壁の外側に設けられる爪嵌合部と、を備え、前記小物入れ部が前記固定部材の凹部内に入り込む閉位置と該閉位置から車室側に回動した位置であり前記小物入れ部に小物を出し入れ可能な開位置とに前記固定部材に対して回動可能な回動部材と、
(c)前記固定部材の軸受孔に挿入され前記固定部材に回動可能に支持される軸本体部と、前記回動部材の爪嵌合部に弾性変形して復元することで係合する爪部と、を備え、前記回動部材の回動軸部を構成する樹脂製軸と、
を有し、
前記樹脂製軸の爪部は、前記回動部材の前記側壁が内倒れするときに該側壁が倒れる方向と直交または略直交する方向に弾性変形して復元することで前記回動部材の爪嵌合部に係合する、車両用内装装置。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)の車両用内装装置によれば、樹脂製軸の爪部が、回動部材の小物入れ部の装置幅方向の側壁が内倒れするときに該側壁が倒れる方向と直交または略直交する方向に弾性変形して復元することで回動部材の爪嵌合部に係合する構造になっている。そのため、爪部が回動部材の側壁の内倒れ方向と同方向に弾性変形して復元することで回動部材の爪嵌合部に係合する構造になっている場合(従来)に比べて、回動部材の側壁が内倒れしても、樹脂製軸の爪部が爪嵌合部によって押されて弾性変形し難くなり、爪部と爪嵌合部との係合が外れてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明実施例の車両用内装装置の、回動部材が閉位置にあるときの底面図である。
【図2】本発明実施例の車両用内装装置の、回動部材が開位置にあるときの斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】回動部材が開位置にあるときの、図1のB−B線部位での断面図である。
【図6】本発明実施例の車両用内装装置の、回動部材と樹脂製軸のみの分解斜視図である。
【図7】従来の車両用内装装置の、樹脂製軸部位での断面図である。
【図8】従来の車両用内装装置の、回動部材が閉位置にあるときの断面図である。
【図9】従来の車両用内装装置の、回動部材が開位置にあるときの断面図である。
【図10】従来の車両用内装装置の、回動部材と樹脂製軸のみの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明実施例の車両用内装装置を、図1〜図6を参照して、説明する。
本発明実施例の車両用内装装置10は、たとえば、自動車の車両前方側の天井に配置されサングラスなどの図示略の小物を収容可能な車両用オーバーヘッドコンソール装置である。ただし、車両用内装装置10は、車両用オーバーヘッドコンソール装置でなくてもよく、車両用カンバセーションミラー装置であってもよく、その他の小物入れ装置等であってもよい。以下、本発明実施例および図示例では、車両用内装装置10が車両用オーバーヘッドコンソール装置である場合を説明する。
【0012】
車両用内装装置10は、図2に示すように、固定部材20と、回動部材30と、樹脂製軸40と、を有する。車両用内装装置10は、さらに、ダンパ50を有する。
【0013】
固定部材20は、樹脂製であり型成形品である。固定部材20は、車両の内装部材であるオーバーヘッドコンソールに一体に形成されるか、オーバーヘッドコンソールと別体に形成されてオーバーヘッドコンソールに固定して取付けられる。
固定部材20は、車室(下方)に開放する凹部21と、図3に示すように、凹部21を形成する凹部形成壁22に設けられる軸受孔23と、を備える。
軸受孔23は、凹部形成壁22のうちの、装置10の幅方向(車両左右方向)両側の壁に設けられている。軸受孔23は、凹部形成壁22を車両左右方向に貫通する孔である。
【0014】
回動部材30は、樹脂製であり型成形品である。回動部材30は、図6に示すように、サングラスなどの図示略の小物を収容可能な小物入れ部31と、凹部21内で小物入れ部31の装置幅方向の側壁32の外側に設けられる爪嵌合部33(図4、図5参照)と、を備える。
爪嵌合部33は、小物入れ部31の装置幅方向の側壁32から装置幅方向外側に突出する突出部32a内に設けられており、側壁32が矢印g方向(図2、図3、図6参照)に倒れたとき(内倒れしたとき)側壁32と共に矢印g方向に動く。
【0015】
回動部材30は、小物入れ部31が凹部21内に入り込む閉位置30a(図1、図4参照)と、閉位置30aから車室側(下方)に回動した位置であり小物入れ部31に小物を出し入れ可能な開位置30b(図2、図5参照)とに、固定部材20に対して装置幅方向(車両左右方向)に延びる軸芯P(図3参照)まわりに回動可能である。
【0016】
回動部材30が図1、図4に示す閉位置30aにあるとき、回動部材30は図示略のロック装置によって閉位置30aにロックされている(保持されている)。なお、ロック装置は、たとえば公知のハートカム機構を用いたロック装置である。
回動部材30が図2、図5に示す開位置30bにあるとき、図5に示すように、回動部材30に設けられるストッパ部34が固定部材20に設けられるストッパ受け部24に当接しており、それ以上回動部材30が固定部材20に対して開側に回動することが規制されている。
【0017】
樹脂製軸40は、樹脂製であり型成形品である。樹脂製軸40は、図3に示すように、固定部材20および回動部材30と別体に作製されて固定部材20および回動部材30に組付けられる。樹脂製軸40は、回動部材30の回動軸部を構成する。樹脂製軸40は、回動部材30の左右一側の回動軸部のみを構成していてもよく、回動部材30の左右両側の回動軸部を構成していてもよい。
【0018】
樹脂製軸40は、固定部材20の軸受孔23に固定部材20の外側から挿入され固定部材20に回動可能に支持される軸本体部41と、図6に示すように、回動部材30の爪嵌合部33に弾性変形して復元することで係合する爪部42と、ダンパ50に設けられる図示略のダンパギアに噛合するギア部43と、を備える。
【0019】
軸本体部41は、円筒形状または円柱形状である。軸本体部41の軸芯は、装置10の幅方向と平行であり、軸受孔23の軸芯と一致しており、回動部材30の軸芯Pと一致している。軸本体部41は、固定部材20に対して軸本体部41の軸芯まわりに回動可能とされている。
【0020】
爪部42は、軸本体部41と一体に成形されている。爪部42は、軸本体部41の軸受孔23への挿入方向先端部から該挿入方向先方に延びて設けられている。爪部42の延び方向先端は自由端でありフック状とされている。爪部42は、回動部材30の側壁32が矢印g方向に内倒れするときに該側壁32が倒れる方向と直交または略直交する方向に弾性変形して復元することで、回動部材30の爪嵌合部33に係合する。
爪部42が爪嵌合部33に係合するため、樹脂製軸40は、回動部材30に対して相対回転不能であり、回動部材30が固定部材20に対して回動するとき回動部材30と共に(一体的に)固定部材20に対して回動する。
【0021】
ギア部43は、軸本体部41と一体に成形されている。ギア部43は、軸本体部41の軸受孔23への挿入方向根元部に設けられる扇状部分の円弧部分に設けられている。
【0022】
ダンパ50は、回動部材30が固定部材20に対して回動するときに、回動部材30に制動力を付与するために設けられる。ダンパ50は、図2に示すように、固定部材20の凹部形成壁22の外面に取付けられる。
【0023】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
図5に示す開位置30bにある回動部材30の先端部35に開側に過荷重(大荷重)がかかった場合、固定部材20のストッパ受け部24が支点となり、テコの原理で回動部材30の側壁32に図2、図3、図6に示す矢印g方向の力が発生し、側壁32が矢印g方向に倒れてしまう(内倒れしてしまう)ことがある。
ここで、樹脂製軸40の爪部42が、回動部材30の小物入れ部31の装置幅方向の側壁32が内倒れするときに該側壁32が倒れる方向と直交または略直交する方向に弾性変形して復元することで、回動部材30の爪嵌合部33に係合する構造になっている。
そのため、爪部が回動部材の側壁の内倒れ方向と同方向に弾性変形して復元することで回動部材の爪嵌合部に係合する構造になっている場合(従来)に比べて、回動部材30の側壁32が内倒れしても、樹脂製軸40の爪部42が爪嵌合部33によって押されて弾性変形し難くなり、爪部42と爪嵌合部33との係合が外れてしまうことを抑制できる。
【0024】
回動部材30を成形する図示略の上下型およびスライド型を用いて、回動部材30に爪嵌合部33を作製できる。
【符号の説明】
【0025】
10 車両用内装装置
20 固定部材
21 凹部
22 凹部形成壁
23 軸受孔
24 ストッパ受け部
30 回動部材
30a 閉位置
30b 開位置
31 小物入れ部
32 小物入れ部の装置幅方向の側壁
33 爪嵌合部
34 ストッパ部
40 樹脂製軸
41 軸本体部
42 爪部
43 ギア部
50 ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)車室に開放する凹部と、該凹部を形成する凹部形成壁に設けられる軸受孔と、を備える固定部材と、
(b)小物入れ部と、前記小物入れ部の装置幅方向の側壁の外側に設けられる爪嵌合部と、を備え、前記小物入れ部が前記固定部材の凹部内に入り込む閉位置と該閉位置から車室側に回動した位置であり前記小物入れ部に小物を出し入れ可能な開位置とに前記固定部材に対して回動可能な回動部材と、
(c)前記固定部材の軸受孔に挿入され前記固定部材に回動可能に支持される軸本体部と、前記回動部材の爪嵌合部に弾性変形して復元することで係合する爪部と、を備え、前記回動部材の回動軸部を構成する樹脂製軸と、
を有し、
前記樹脂製軸の爪部は、前記回動部材の前記側壁が内倒れするときに該側壁が倒れる方向と直交または略直交する方向に弾性変形して復元することで前記回動部材の爪嵌合部に係合する、車両用内装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−202097(P2010−202097A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51513(P2009−51513)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】