説明

車両用内装部品製造方法及び装置

【課題】開口部の周囲などの形状不良を防止し得るようにする。
【解決手段】型39にセットした表皮材46を真空引回路51で真空吸着することにより表皮材46を型面45の形状に賦形する車両用の内装部品32の製造方法であって、型面45を重要度に応じて複数の部位に分類すると共に、真空吸着を、重要度の高い部位から順番に多段に行わせるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用内装部品製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部に、例えば、図4に示すような、インストルメントパネル1などの内装部品2が設けられている。このインストルメントパネル1は、表面意匠を構成する一般面3に対して、空調用エアの吹出口やその他の用途に使用される各種の開口部4を有する構成を備えている。
【0003】
このような内装部品2は、例えば、図5に示すような、内装部品製造装置5を用いて製造される。この内装部品製造装置5は、ベース部7と、このベース部7の上部に設置された型装置8とを備えている。この型装置8は、下型9と、この下型9の上部に載置された上型10とを備えている。そして、ベース部7と上型10との間には、上型10を開閉可能な型開閉装置11が設置されている。
【0004】
上記した型装置8は、ここでは発泡型とされ、下型9はキャビティ型、上型10はコア型となっている。下型9の上面には、インストルメントパネル1の形状をしたキャビティ部が凹設形成される。図6に示すように、このキャビティ部の型面15は、インストルメントパネル1の表皮材16をセット可能なものとされている。また、セットされた表皮材16の裏面側に対して発泡剤(薬液)を注入可能に構成されている。なお、キャビティ部の型面15は、インストルメントパネル1の一般面3に相当する部位15aに対して、開口部4に相当する部位15bが、段差部位15cを有して一段高くなるように段差形成されされている。
【0005】
また、ベース部7には、下型9にセットされた表皮材16を真空吸着することにより表皮材16を型面15の形状に賦形可能な真空引回路21が設けられている。
【0006】
この真空引回路21は、真空ポンプなどの真空源22と、この真空源22の吸込側に一端部を接続された共通管路23と、この共通管路23の途中に設けられた開閉式の電磁弁24と、共通管路23の他端部に接続された分配用のマニホールド25と、このマニホールド25に一端部を接続された複数の分配管26と、この分配管26の他端部に取付けられて、型面15における下型9とベース部7との間に複数形成された真空引用孔部27に接続可能なノズル部28とを備えている。また、図5に示すように、電磁弁24を開閉操作可能な真空引スイッチ29を備えている。
【0007】
そして、下型9に表皮材16をセットし、型開閉装置11を用いて上型10を閉じ、真空引スイッチ29を押して電磁弁24を開き、下型9に接続した真空引回路21で表皮材16を真空吸着することにより、表皮材16を型面15の形状に賦形する。その後、表皮材16の裏面側に発泡剤を注入することにより、型装置8の内部で発泡剤を発泡させて表皮材16の裏面側に発泡層を形成し、インストルメントパネル1を製造する。
【0008】
なお、上記と同様の技術には、例えば、インモールド成形などが存在する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平3−63115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記内装部品製造装置5による内装部品2の製造手段では、真空引回路21を1系統として、表皮材16の全部位を同時に真空吸着するように構成していたため、吸着し易いインストルメントパネル1の一般面3に相当する部位15aが先に吸着されてしまい、開口部4に相当する部位15bやその周辺の段差部15cで表皮材16と型面15とが合わない状態が生じる可能性があり、その結果、開口部4の周囲の形状が崩れてアールダレやシャクレなどの形状不良を起こすおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、型にセットした表皮材を真空引回路で真空吸着することにより表皮材を型面の形状に賦形する車両用内装部品製造方法において、型面を重要度に応じて複数の部位に分類すると共に、真空吸着を、重要度の高い部位から順番に多段に行わせるようにすることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載された発明では、表皮材をセット可能な型と、該型に接続されて、セットされた表皮材を真空吸着することにより表皮材を型面の形状に賦形可能な真空引回路とを備えた車両用内装部品製造装置において、前記真空引回路に、型面を重要度に応じて分類した複数の部位ごとに独立して真空吸着可能な複数の部位別真空吸着系統を設け、各部位別真空吸着系統を、重要度の高い部位から順番に多段に真空吸着を行わせ得るよう、時間差を有して作動可能に構成したことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載された発明では、型面を、少なくとも開口部に相当する部位と、一般面に相当する部位とに2分類し、開口部に相当する部位を、一般面に相当する部位よりも重要度が高くなるよう設定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、型面を重要度に応じて複数の部位に分類すると共に、真空吸着を、重要度の高い部位から順番に多段に行わせるようにすることにより、重要度が高い部位ほど型面と表皮材とが合った状態となるため、全部位を同時に真空吸着する場合に比べて、格段に形状不良を低減・防止することができ、以て、製品歩留りを向上することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、真空引回路に、型面を重要度に応じて分類した複数の部位ごとに独立して真空吸着可能な複数の部位別真空吸着系統を設け、各部位別真空吸着系統を、重要度の高い部位から順番に多段に真空吸着を行わせ得るよう、時間差を有して作動可能に構成したことにより、請求項1の方法を実施可能な装置構成を得ることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、型面を、少なくとも開口部に相当する部位と、一般面に相当する部位とに2分類し、開口部に相当する部位を、一般面に相当する部位よりも重要度が高くなるよう設定したことにより、吸着され難い開口部に相当する部位が一般面に相当する部位よりも先に吸着されるようになるので、開口部の周囲の形状が崩れてアールダレやシャクレなどの形状不良を起こすことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
開口部の周囲などの形状不良を防止し得るようにするなどの目的を、型面を重要度に応じて複数の部位に分類すると共に、真空吸着を、重要度の高い部位から順番に多段に行わせるようにする、という手段で実現した。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0018】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。
【0019】
まず、構成について説明する。自動車などの車両には、車室内の前部に、例えば、図1に示すような、インストルメントパネル31などの内装部品32が設けられている。このインストルメントパネル31は、表面意匠を構成する一般面33に対して、空調用エアの吹出口やその他の用途に使用される各種の開口部34を有する構成を備えている。
【0020】
このような内装部品32は、例えば、図2に示すような、内装部品製造装置35を用いて製造される。この内装部品製造装置35は、ベース部37と、このベース部37の上部に設置された型装置38を備えている。この型装置38は、下型39と、この下型39の上部に載置された上型40とを備えている。そして、ベース部37と上型40との間には、上型40を開閉可能な型開閉装置41が設置されている。この型開閉装置41には、例えば、シリンダ装置などが用いられている。また、下型39と上型40との間には、必要に応じて、上型40の開閉をガイド可能な開閉ガイド装置なども設けられる。
【0021】
上記した型装置38は、ここでは発泡型とされ、下型39はキャビティ型、上型40はコア型となっている。下型39の上面には、インストルメントパネル31の形状をしたキャビティ部が凹設形成される。図3に示すように、このキャビティ部の型面45はインストルメントパネル31の表皮材46をセット可能なものとされている。また、セットされた表皮材46の裏面側に対して発泡剤(薬液)を注入可能に構成されている。なお、キャビティ部の型面45は、インストルメントパネル31の一般面33に相当する部位45aに対して、開口部34に相当する部位45bが、段差部位45cを有して一段高くなるように段差形成されされている。即ち、インストルメントパネル31は、開口部34に相当する部位45bが引込んだ状態に成形され、その後に、段差部位45cを切断することで、開口部34が仕上げられる。なお、型装置38は、発泡型に限らず、表皮材46をインサート成形可能な射出成形型や、表皮材46を賦形のみ行わせる賦形専用型などであっても良い。
【0022】
また、ベース部37には、下型39にセットされた表皮材46を真空吸着することにより表皮材46を型面45の形状に賦形可能な真空引回路51が設けられている。
【0023】
この真空引回路51は、真空ポンプなどの真空源52と、この真空源52の吸込側に一端部を接続された共通管路53およびこの共通管路53の他端部から分岐された分岐管路54,55と、この共通管路53および分岐管路54,55の途中に適宜設けられた開閉式の電磁弁56,57と、分岐管路54,55の他端部に接続された分配用のマニホールド58,59と、このマニホールド58,59に一端部を接続された複数の分配管60,61と、この分配管60,61の他端部に取付けられて、型面45における下型39とベース部37との間に複数形成された真空引用孔部62,63に接続可能なノズル部64,65とを備えている。また、図2に示すように、電磁弁56,57を開閉操作可能な真空引スイッチ66,67を備えている。
【0024】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、型(下型39)に表皮材46をセットして、型(下型39)に接続した真空引回路51で表皮材46を真空吸着することにより表皮材46を型面45の形状に賦形する車両用の内装部品32の製造手段において、型面45を重要度に応じて複数の部位45a、45bに分類すると共に、真空吸着を、重要度の高い部位45a、45bから順番に多段に行い得るように構成する。
【0025】
そのために、真空引回路51に、型面45を重要度に応じて分類した複数の部位45a、45bごとに独立して真空吸着可能な複数の部位別真空吸着系統68,69を設け、各部位別真空吸着系統68,69を、重要度の高い部位45a、45bから順番に多段に真空吸着を行わせ得るよう、時間差を有して作動可能に構成する。
【0026】
より具体的には、例えば、型面45を、少なくとも開口部34に相当する部位45bと、一般面33に相当する部位45aとに2分類し、開口部34に相当する部位45bを、一般面33に相当する部位45aよりも重要度が高くなるよう設定する。
【0027】
そして、一方の部位別真空吸着系統68を、分岐管路54、電磁弁56、マニホールド58、分配管60、ノズル部64、真空引用孔部62、および、真空引スイッチ66で構成し、この一方の部位別真空吸着系統68を、開口部34に相当する部位45bに対応させる。なお、電磁弁56は、この場合、上流側の共通管路53に取付けられているが、分岐管路54に取付けても同じである。なお、真空引用孔部62は、部位45bに直接設けるのではなく、一般面33に相当する部位45aにおける段差部位45cの近傍に、開口部34に相当する部位45bを取り囲むように設けるようにするのが効果的である。なお、開口部34が大きい場合などには、これに加えて部位45bに直接設けるようにする。
【0028】
また、他方の部位別真空吸着系統69を、分岐管路55、電磁弁57、マニホールド59、分配管61、ノズル部65、真空引用孔部63、および、真空引スイッチ67で構成し、この他方の部位別真空吸着系統69を、一般面33に相当する部位45aに対応させる。
【0029】
更に、各部位別真空吸着系統68,69に対して設けられた2つの真空引スイッチ66,67は、時間差を有して順番に手動操作するようにしても良いが、タイマー装置や制御装置を用いて時間差で順番に自動操作し得るよう構成しても良い。
【0030】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0031】
下型39に表皮材46をセットし、型開閉装置41を用いて上型40を閉じ、真空引スイッチ66,67を押して電磁弁56,57を開き、下型39に接続した真空引回路51で表皮材46を真空吸着することにより、表皮材46を型面45の形状に賦形する。
【0032】
この際、先に真空引スイッチ66を操作して、一方の部位別真空吸着系統68による開口部34に相当する部位45bの真空吸着を先行して行わせ、しかる後に、真空引スイッチ67を操作して、他方の部位別真空吸着系統69による一般面33に相当する部位45aの真空吸着を後行して行わせるようにする。
【0033】
すると、開口部34に相当する部位45bの周囲において、型面45と表皮材46との合わせが先に行われ、その後に、一般面33に相当する部位45aにおける型面45と表皮材46との合せが行われることとなる。
【0034】
発泡型の場合には、その後、表皮材46の裏面側に発泡剤を注入することにより、型装置38の内部で発泡剤を発泡させて表皮材46の裏面側に発泡層を形成し、インストルメントパネル31を製造する。
【0035】
このように、この実施例によれば、型面45を重要度に応じて複数の部位45a、45bに分類すると共に、真空吸着を、重要度の高い部位45a、45bから順番に多段に行わせるようにすることにより、重要度が高い部位45a、45bほど型面45と表皮材46とが合った状態となるため、全部位を同時に真空吸着する場合に比べて、格段に形状不良を低減・防止することができ、以て、製品歩留りを向上することができる。
【0036】
そして、真空引回路51に、型面45を重要度に応じて分類した複数の部位45a、45bごとに独立して真空吸着可能な複数の部位別真空吸着系統68,69を設け、各部位別真空吸着系統68,69を、重要度の高い部位45a、45bから順番に多段に真空吸着を行わせ得るよう、時間差を有して作動可能に構成したことにより、上記した作用・効果を現実に実施可能な装置構成を得ることができる。
【0037】
そして、、型面45を、少なくとも開口部34に相当する部位45bと、一般面33に相当する部位45aとに2分類し、開口部34に相当する部位45bを、一般面33に相当する部位45aよりも重要度が高くなるよう設定したことにより、吸着され難い開口部34に相当する部位45aが一般面33に相当する部位45bよりも先に吸着されるようになるので、開口部34の周囲の形状が崩れてアールダレやシャクレなどの形状不良を起こすことを防止することができる。
【0038】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、これらの可能な組合せが含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例にかかる車両用内装部品の斜視図である。
【図2】図1の車両用内装部品を製造する車両用内装部品製造装置の側面図である。
【図3】図2の車両用内装部品製造装置の真空引回路を示す下型部分の縦断面図である。
【図4】従来例にかかる車両用内装部品の斜視図である。
【図5】図1の車両用内装部品を製造する車両用内装部品製造装置の側面図である。
【図6】図5の車両用内装部品製造装置の真空引回路を示す下型部分の縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
32 車両用内装部品
33 一般面
34 開口部
39 型(下型)
45 型面
45a 部位
45b 部位
46 表皮材
51 真空引回路
68 部位別真空吸着系統
69 部位別真空吸着系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型にセットした表皮材を真空引回路で真空吸着することにより表皮材を型面の形状に賦形する車両用内装部品製造方法において、
型面を重要度に応じて複数の部位に分類すると共に、真空吸着を、重要度の高い部位から順番に多段に行わせるようにすることを特徴とする車両用内装部品製造方法。
【請求項2】
表皮材をセット可能な型と、該型に接続されて、セットされた表皮材を真空吸着することにより表皮材を型面の形状に賦形可能な真空引回路とを備えた車両用内装部品製造装置において、
前記真空引回路に、型面を重要度に応じて分類した複数の部位ごとに独立して真空吸着可能な複数の部位別真空吸着系統を設け、
各部位別真空吸着系統を、重要度の高い部位から順番に多段に真空吸着を行わせ得るよう、時間差を有して作動可能に構成したことを特徴とする車両用内装部品製造装置。
【請求項3】
型面を、少なくとも開口部に相当する部位と、一般面に相当する部位とに2分類し、開口部に相当する部位を、一般面に相当する部位よりも重要度が高くなるよう設定したことを特徴とする請求項2記載の車両用内装部品製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−37056(P2008−37056A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217696(P2006−217696)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】