説明

車両用冷却システム

【課題】空調装置の冷媒を利用してHV機器等の発熱装置を冷却する車両用冷却システムにおいて、高温高負荷運転時でも発熱装置の冷却不足を防止することが可能な車両用冷却システムを提供することである。
【解決手段】冷却システム10は、冷却ファン16が設置された凝縮器12、膨張弁14、空調ブロア17が設置された蒸発器15、圧縮機11、及び冷媒配管18等の冷凍サイクル設備を含む空調装置を備え、HV機器30の冷却系が凝縮器12と膨張弁14の間に組み込まれたシステムであって、HV機器30に流入する冷媒温度Tinを検出する冷媒温度センサ19と、冷媒温度Tinが予め定めた目標温度Tpを超えたときに、通常の冷房運転を中止して、冷媒温度Tinが目標温度Tp以下となるように冷凍サイクル設備の動作を制御する制御装置20と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却システムに関し、特に、冷媒を循環させる冷凍サイクル設備を含み車内を冷房する空調装置を備え、空調装置の冷媒を利用して発熱装置を冷却する車両用冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両は、エンジンの他に、電動機及び電動機を駆動させるための機器(インバータ、発電機、バッテリ等)であるハイブリッド機器(以下、HV機器とする)を備える。これらHV機器は、駆動により発熱する発熱装置であって、過熱を防止するために冷却する必要がある。冷却方法としては、一般的なエンジンのように、発熱装置とラジエータとの間で冷却水を循環させる方法が考えられるが、この場合、ラジエータを新たに設ける必要があるので、車両の軽量化やコスト低減の観点から好ましくはない。
【0003】
このような状況に鑑みて、HV機器の冷却において、空調装置の冷媒を利用した冷却システムが幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、熱を発生する発熱体(例えば、HV機器)と、蒸気圧縮式冷凍サイクルと、凝縮器(コンデンサ)から流出した冷媒を凝縮器の冷媒流入側に導くパイパス通路と、バイパス通路に設けられ発熱体を冷却するための発熱体冷却手段と、過冷却手段とを含む冷却システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005‐90862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のシステムでは、SCポイントの温度が上昇し過ぎないように配慮しながら設計されているが、HV機器の冷却に使用される冷媒の温度は、成り行きとなっている。したがって、高温条件下(例えば、車内温度が高い条件、HV機器の発熱量が多い条件など)では、SCポイントの冷媒温度が上昇して、HV機器の冷却に必要な冷媒の温度を維持することが困難になり、HV機器が冷却不足に陥ることが想定される。
【0006】
一方、HV機器の冷却不足を防止するために、大きな凝縮器を搭載するなど冷却システム機器の強化を行なう方法も考えられるが、この場合には、搭載スペース、コスト、燃費など、更なる問題の発生が想定される。
【0007】
本発明の目的は、空調装置の冷媒を利用してHV機器等の発熱装置を冷却する車両用冷却システムにおいて、高温高負荷運転時でも発熱装置の冷却不足を防止することが可能な車両用冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用冷却システムは、発熱装置に供給される冷媒の温度等を検出して、発熱装置の冷却に必要な冷媒の温度を維持するために、冷凍サイクル設備の動作を制御するシステムである。即ち、本発明に係る車両用冷却システムは、冷媒を循環させる冷凍サイクル設備を含み車内を冷房する空調装置を備え、空調装置の冷媒を利用して車両に搭載された発熱装置を冷却する車両用冷却システムにおいて、発熱装置に供給される空調装置の冷媒の温度又は圧力を検出する検出装置と、検出された冷媒の温度又は圧力に基づいて、冷凍サイクル設備の動作を制御する制御装置と、を有することを特徴とする。
【0009】
より具体的には、冷却ファンが設置された凝縮器(コンデンサ)、膨張弁、空調ブロアが設置された蒸発器、圧縮機(コンプレッサ)、及び各機器を接続し冷媒が循環する冷媒配管を含む冷凍サイクル設備と、設定温度に基づいて冷凍サイクル設備の動作を制御する空調制御部と、から構成される空調装置を備え、車両に搭載された発熱装置の冷却系が空調装置に組み込まれた車両用冷却システムにおいて、発熱装置に供給される空調装置の冷媒の温度又は圧力を検出する検出装置と、検出された冷媒の温度又は圧力とに基づいて、凝縮器の冷却ファン、蒸発器の空調ブロア、及び圧縮機のうち少なくともいずれかの動作を制御する制御装置と、を有することを特徴とする車両用冷却システムである。ここで、発熱装置の冷却系は、凝縮器と膨張弁との間に接続され、検出装置は、凝縮器と発熱装置との間に設置されて、発熱装置に流入する冷媒温度を検出することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る車両用冷却システムにおいて、制御装置は、冷媒の温度又は圧力が予め定めた閾値(目標温度)を超えたときに、空調制御部による設定温度に基づく制御(通常の冷房運転)を禁止(中止)或いは制限して、冷媒の温度又は圧力が閾値以下となるように冷凍サイクル設備の動作を制御することが好ましい。ここで、制御装置及び空調制御部は、1つの装置において上記2つの機能を有するものとすることができる。
【0011】
また、発熱装置に供給される冷媒温度等が閾値(目標温度)を超過したときに、制御装置により動作が制御される冷凍サイクル設備としては、凝縮器の冷却ファン、蒸発器の空調ブロア、圧縮機が挙げられる。そして、制御順序としては、まず、冷却ファンの回転数を増加し、それでも空調用冷媒が目標温度を超えているときには、空調ブロアの回転数を低減し、次いで、圧縮機の回転数を低減することが好ましい。
【0012】
なお、上記発熱装置としては、電動機、インバータ、発電機、二次電池、コンバータ、その他の電子機器、及び燃料電池等が挙げられる。また、制御装置は、冷媒温度とは別に取得した発熱装置の温度に基づき、又は当該発熱装置の温度と冷媒温度又は圧力とに基づき、冷凍サイクル設備の動作を制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用冷却システムによれば、発熱装置に供給される冷媒の温度等を検出して、発熱装置の冷却に必要な冷媒の温度を維持するために空調装置の冷凍サイクル設備の動作を制御するので、高温高負荷運転時でも発熱装置の冷却不足を防止することが可能である。
【0014】
即ち、本発明に係る車両用冷却システムによれば、冷凍サイクル設計時の想定を超える高負荷条件で駆動された場合でも、空調装置の負荷を下げるように制御することで、HV機器冷却のオーバーヒートを回避、遅延させることができる。故に、凝縮器や冷却ファンなどの冷却システム機器の能力を必要以上に確保する必要がなく、冷却システムの仕様(サイズ、コスト、重量)のミニマム化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施の形態における車両用冷却システムの概略構成図である。
【図2】図1に示す冷却システムによるハイブリッド機器の冷却制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を用いて、本発明に係る車両用冷却システムの実施形態につき、以下詳細に説明する。図1に、本発明に係る実施形態の車両用冷却システム10(以下、冷却システム10とする)の概略構成を示す。なお、以下では、冷却システム10は、ハイブリッド車両(以下、HV車両とする)に搭載され、空調設備(A/Cシステム)の冷媒を利用して電動機やインバータ等のハイブリッド機器30(以下、HV機器30とする)を冷却するシステムとして説明する。
【0017】
冷却システム10を搭載するHV車両は、車両の駆動源として、電動機及びエンジンを備え、さらに、電動機を駆動させるために、バッテリから供給される直流電流を交流電流に変換して電動機に交流電流を供給するインバータ、電動機で使用する電力を発電する発電機、及び電動機で使用する電力を蓄積するバッテリ等を備える。
【0018】
空調装置の冷媒を利用して冷却されるHV機器30は、電動機及び電動機を駆動させるための機器であって、駆動により発熱する発熱装置である。例えば、電動機の出力を調整するインバータは、半導体素子のスイッチング動作によって電力変換を行なうものであり、スイッチング動作によって半導体素子が発熱する。故に、インバータには、冷媒を流通可能な冷却器が設置されている。冷却システム10に組み込まれるHV機器30としては、例えば、電動機及びインバータとすることができる。
【0019】
HV機器30には、後述の冷媒温度センサ19とは別に、HV機器30の温度を検出するための温度センサを設置することができる。当該温度センサにより検出されたHV機器30の温度は、例えば、HV車両の動作を統合的に制御するHV制御装置に送信されて電動機の出力制御等に使用される。また、この温度情報を冷却システム10の制御に使用することもできる。
【0020】
図1に示すように、冷却システム10は、車内を冷房する空調装置(A/Cシステム)を備え、空調装置の一部にHV機器30の冷却系が組み込まれたシステムであって、空調装置の冷媒を利用してHV機器30の冷却を行なう。
【0021】
冷却システム10を構成する空調装置は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置であって、冷媒を吸入圧縮する圧縮機11、圧縮機11から吐出する冷媒を凝縮させる凝縮器12、凝縮器12から流出した冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離して液冷媒を流出させるレシーバ13、液冷媒を減圧する膨張弁14、膨張弁14にて減圧された液冷媒を蒸発させる蒸発器15等から構成される冷凍サイクル設備を備える。また、空調装置は、ユーザの設定温度に応じて各冷凍サイクル設備の動作を制御している。
【0022】
その他、冷凍サイクル設備としては、上記各機器を接続して冷媒を循環させるための冷媒配管18、凝縮器12に設置された冷却ファン16、及び蒸発器15に設置された空調ブロア17等が挙げられる。
【0023】
圧縮機11は、低温低圧のガス冷媒を圧縮して、高温高圧のガス冷媒とする機能を有する。圧縮機11としては、例えば、ピストンやモータが鋼製容器の中に一体として密閉された全密閉型圧縮機を用いることができる。圧縮機11は、電動機又はエンジンにより駆動され、空調装置の設定温度に応じて回転数を調整することが可能である。
【0024】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出されたガス冷媒を冷却して凝縮させる熱交換器である。凝縮器12に導入される高温高圧のガス冷媒は、凝縮器12を流通する過程で冷却され凝縮して、幾分低温化した液冷媒になる。凝縮器12の冷却方式は、空冷式とすることができ、凝縮器12には、送風機である冷却ファン16が設置されている。この冷却ファン16は、圧縮機11と同様に、電動機又はエンジンにより駆動され、空調装置の設定温度に応じて回転数を調整することが可能である。
【0025】
膨張弁14は、凝縮器12で冷却され幾分低温化した液冷媒を膨張させて、低温低圧の液冷媒にする機能を有する。膨張弁14は、例えば、圧縮機11に吸入される冷媒の加熱度が所定値となるように、その弁開度が制御される温度式膨張弁である。膨張弁14で低温低圧とされた液冷媒は、蒸発器15に導入される。
【0026】
蒸発器15は、膨張弁14で低温低圧化された液冷媒を蒸発させる熱交換器である。蒸発器15は、多数のフィンを有しており、フィンの間を流通する車内の空気の熱を低温低圧の液冷媒に吸収させる。そして、熱の吸収により液冷媒が蒸発する。蒸発器15には、フィンの間に空気を送るための空調ブロア17が設置されている。この空調ブロア17は、圧縮機11と同様に、電動機又はエンジンにより駆動され、空調装置の設定温度に応じて回転数を調整することが可能である。
【0027】
冷媒配管18は、各冷凍サイクル設備を接続して、冷媒を循環させるための配管である。空調装置が運転されると、図1の矢印で示す方向に冷媒が循環する。そして、蒸発器15から凝縮器12までの冷媒配管18には、ガス冷媒が流れ、凝縮器12から蒸発器15までの冷媒配管18には、液冷媒が流れている。
【0028】
HV機器30は、上記のように、冷却システム10を構成する空調装置の一部に組み込まれている。HV機器30は、例えば、レシーバ13と膨張弁14との間の冷媒配管18に接続される。故に、HV機器30の冷却器には、凝縮器12で冷却され幾分低温化した液冷媒が導入され、HV機器30を冷却した冷媒は、膨張弁14、蒸発器15に循環されて車内を冷房する。
【0029】
冷却システム10は、HV機器30(HV機器30の冷却器)に供給される冷媒の温度等を検出して、HV機器30の冷却に必要な冷媒の温度を維持するために空調装置の冷凍サイクル設備の動作を制御する。この制御を行なうために、冷却システム10は、冷媒温度センサ19及び制御装置20を備える。
【0030】
冷媒温度センサ19は、HV機器30に供給される冷媒の温度を検出するセンサである。例えば、冷媒温度センサ19は、レシーバ13の下流側の冷媒配管18に設置され、HV機器30に流入する冷媒温度Tinを検出する。冷媒温度センサ19により検出された冷媒温度は、制御装置20に送信されてHV機器30の冷却制御等に使用される。なお、冷媒温度センサ19の設置位置は、HV機器30の下流側とすることもでき、この場合は、HV機器30から流出した冷媒温度Toutが検出される。
【0031】
制御装置20は、冷媒温度センサ19により検出された冷媒温度Tinに基づいて、冷凍サイクル設備の動作を制御する機能を有する。また、制御装置20は、通常の冷房運転を行なうための制御機能、即ち、設定温度に基づいて冷凍サイクル設備の動作を制御する機能を含む。即ち、制御装置20は、冷媒温度Tinが予め定めた閾値(以下、目標温度Tpとする)を超えたときに、通常の冷房運転を中止して、冷媒温度Tinが目標温度Tp以下となるように冷凍サイクル設備の動作を制御する。ここで、制御装置20により制御される空調装置の冷凍サイクル設備としては、凝縮器12の冷却ファン16、蒸発器15の空調ブロア17、圧縮機11が挙げられる。
【0032】
即ち、制御装置20は、冷媒温度が目標温度を超えたときには、ユーザの設定温度によらず、冷凍サイクル設備の動作を制御する。なお、冷媒温度が目標温度を超える状態としては、例えば、車内温度が非常に高い状態、HV機器30の発熱量が多い状態などが考えられ、当該目標温度は、HV機器30の過熱防止の観点から決定される。
【0033】
冷媒温度が目標温度を超えたときの制御装置20による冷凍サイクル設備の制御は、通常の冷房運転に与える影響が小さな手段から実行される。例えば、制御装置20は、まず、冷却ファン16の回転数を増加し、それでも冷媒温度が目標温度を超えているときには、空調ブロア17の回転数を低減する。それでもなお冷媒温度が目標温度を超えている場合には、HV機器30の冷却を優先して圧縮機11の回転数を低減する。なお、圧縮機11等の回転数の低減は、段階的に実行することができる。
【0034】
上記構成を備える冷却システム10の作用、特に、制御装置20の作用について、図2を用いて以下説明する。ここで、図2は、冷却システム10によるHV機器30の冷却制御手順を示すフローチャートである。図2のスタートは、空調装置がユーザの設定温度に基づいて通常の冷房運転(通常運転)を行っている状態であり、設定温度を実現するために調整された冷媒は、HV機器30を通ってから蒸発器15に供給されている。
【0035】
制御装置20は、通常運転中において、冷媒温度センサ19により検出される冷媒温度Tinが目標温度Tp以上であるか否かを判定(温度判定)する(S10)。冷媒温度Tinの検出及び温度判定は、任意のタイミングで実行することができる。冷媒温度Tinが目標温度Tp未満であるときには、空調装置は通常運転を継続する。一方、冷媒温度Tinが目標温度Tp以上であるときには、通常運転を中止して、S11以降の冷却制御を実行する。
【0036】
S10において、冷媒温度Tinが目標温度Tp以上であると判定されたときには、まず初めに、冷却ファン16の回転数を増加(冷却ファンHi作動)させる(S11)。冷却ファンHi作動により、凝縮器12に送れられる風量が増加し、凝縮器12における冷媒の冷却効果が向上し冷媒温度Tinが低下することが想定される。そして、再び温度判定を行なう(S12)。S11の手順により、冷媒温度Tinが目標温度Tp未満になれば、冷却ファン16を通常運転に戻し、空調装置は通常運転を継続する(S13)。
【0037】
冷却ファン16の回転数を増加させてもなお冷媒温度Tinが目標温度Tp以上であるときには、空調ブロア17の回転数を低減(空調ブロアLo作動)させる(S14)。空調ブロアLo作動により、蒸発器15で吸収される熱量が減少し、冷媒温度Tinが低下することが想定される。そして、再び温度判定を行い(S15)、冷媒温度Tinが目標温度Tp未満になれば、空調ブロア17を通常運転に戻し、空調装置は通常運転を継続する(S16)。
【0038】
空調ブロア17の回転数を低減させてもなお冷媒温度Tinが目標温度Tp以上であるときには、圧縮機11の回転数を低減させる(S17)。そして、再び温度判定を行い(S18)、冷媒温度Tinが目標温度Tp未満になれば、圧縮機11を通常運転に戻し、空調装置は通常運転を継続する(S19)。一方、冷媒温度Tinが未だ目標温度Tp以上であるときには、さらに圧縮機11の回転数を低減させる。
【0039】
なお、圧縮機11の回転数を段階的に低減させてもなお冷媒温度Tinが目標温度Tp以上であるときには、HV機器30の運転を中止する等の手段を実行することができる。
【0040】
以上のように、冷却システム10は、冷却ファン16が設置された凝縮器12、膨張弁14、空調ブロア17が設置された蒸発器15、圧縮機11、及び冷媒配管18等の冷凍サイクル設備を含む空調装置を備え、HV機器30の冷却系が凝縮器12と膨張弁14の間に組み込まれたシステムであって、HV機器30に流入する冷媒温度Tinを検出する冷媒温度センサ19と、制御装置20と、を有する。
【0041】
制御装置20は、冷媒温度センサ19から冷媒温度Tinを取得し、当該冷媒温度Tinと、予め定めた目標温度Tpとを比較する。そして、冷媒温度Tinが目標温度Tpを超えたと判定すると、通常の冷房運転を中止して、冷媒温度Tinが目標温度Tp以下となるように冷凍サイクル設備の動作を制御する。具体的に、制御装置20は、冷凍サイクル設備の動作を制御する手段として、冷却ファン16の回転数を増加させる手段と、空調ブロア17の回転数を低減させる手段と、圧縮機11の回転数を低減させる手段と、を有する。したがって、冷却システム10によれば、高温高負荷運転時でもHV機器30の冷却不足を防止することが可能である。
【0042】
なお、上記実施形態では、本発明に係る車両用冷却システムは、HV車両に搭載され、空調設備の空調用冷媒を利用してHV機器を冷却するシステムとして説明したが、エンジンのない電気自動車や燃料電池自動車に搭載することもでき、また、HV機器以外の電子機器や燃料電池など、その他の発熱装置についても適用することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、制御装置20は、冷媒温度センサ19から冷媒温度Tinを取得し、冷媒温度Tinと予め定めた目標温度Tpとを比較するものとして説明したが、目標温度の代わりに飽和蒸気圧Ppを閾値として設定することもできる。即ち、本発明に係る車両用冷却システムは、冷媒圧力に基づいて、冷凍サイクル設備の動作を制御するシステムとすることができる。
【0044】
冷媒圧力に基づいて、冷凍サイクル設備の動作を制御するシステムでは、冷媒の相状態(液体か気体か)を判定するために、冷媒温度及び冷媒圧力を検出して管理することができ、HV機器の冷却系には、液冷媒が供給されるように制御することができる。ここで、システムの制御装置は、冷媒温度を冷媒温度センサ19から、冷媒圧力を空調装置に通常設置される圧力センサから、それぞれ取得することができる。
【0045】
当該制御装置は、圧力センサから冷媒圧力を取得し、当該冷媒圧力Pinと、目標温度Tpにおける飽和蒸気圧Ppとを比較する。そして、冷媒圧力Pinが飽和蒸気圧Ppを超えたと判定すると、通常の冷房運転を中止して、冷媒温度Tinが飽和蒸気圧Pp以下となるように冷凍サイクル設備の動作を制御する。なお、冷凍サイクル設備の動作制御手段としては、冷媒温度に基づく場合と同様の手段を有することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 冷却システム、11 圧縮機、12 凝縮器、13 レシーバ、14 膨張弁、15 蒸発器、16 冷却ファン、17 空調ブロア、18 冷媒配管、19 冷媒温度センサ、20 制御装置、30 ハイブリッド機器(HV機器)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる冷凍サイクル設備を含み車内を冷房する空調装置を備え、空調装置の冷媒を利用して車両に搭載された発熱装置を冷却する車両用冷却システムにおいて、
発熱装置に供給される空調装置の冷媒の温度又は圧力を検出する検出装置と、
検出された冷媒の温度又は圧力に基づいて、冷凍サイクル設備の動作を制御する制御装置と、
を有することを特徴とする車両用冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−110961(P2011−110961A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266362(P2009−266362)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】