車両用制動システム
【課題】車両用制動システムにおいて、低い製造コストで製造することを可能とする。
【解決手段】シリンダ(81)内に入力ピストン(82)と加圧ピストン(83)とを軸方向に沿って移動自在に支持するとともに入力ピストン(82)の一部を加圧ピストン(83)に嵌合し、また入力ピストン(82)にブレーキペダル(14)を連結する。制御油圧が第2圧力室(R12)の第1供給ポート(93)に供給可能になると共に、第1圧力室(R11)の作動油が貫通孔(92)及び第4圧力室(R14)を介して排出ポート(96)から排出可能になる一方、制御油圧が第2および第3圧力室(R12,R13)の吐出ポート(94,95)から吐出可能とする。
【解決手段】シリンダ(81)内に入力ピストン(82)と加圧ピストン(83)とを軸方向に沿って移動自在に支持するとともに入力ピストン(82)の一部を加圧ピストン(83)に嵌合し、また入力ピストン(82)にブレーキペダル(14)を連結する。制御油圧が第2圧力室(R12)の第1供給ポート(93)に供給可能になると共に、第1圧力室(R11)の作動油が貫通孔(92)及び第4圧力室(R14)を介して排出ポート(96)から排出可能になる一方、制御油圧が第2および第3圧力室(R12,R13)の吐出ポート(94,95)から吐出可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ操作量に応じて車両の付与する制動力を電子制御する車両用制動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用の電子制動システムとして、ブレーキペダルの踏み込みに応じて、各車輪について制動装置の制動力を電子制御するもの、つまり、この制動装置を駆動するホイールシリンダへ供給する油圧を電気的に制御するものが知られている。このような制動装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この公報に記載された車両用制動制御システムでは、車両の操作者または運転者がブレーキペダルを操作すると、マスタシリンダがブレーキペダルの操作量に応じた油圧を発生すると共に、作動油の一部がストロークシミュレータに流れ込み、ブレーキペダルの踏力(すなわち、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれた際の力)に応じたブレーキペダルの操作量(例えばペダルストローク)が制御される。一方、その制動制御システムは、ブレーキECUが検出したペダルストロークに応じて車両の目標減速度を設定し、各車輪に付与する制動力分配を決定し、各ホイールシリンダに所定の液圧を付与するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−243983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の車両用制動制御システムにあっては、ブレーキペダルの操作量に応じた油圧を発生するマスタシリンダに対して、作動油の一部が流れ込むことでブレーキペダルの操作量を制御するストロークシミュレータを設けている。また、マスタシリンダにマスタカット弁を介して四つの車輪に対応する4系統のホイールシリンダに供給する作動油を加圧する加圧機構が設けられている。そのような加圧機構は各車輪のホイールシリンダに対して設けられていることから、油圧系統が複雑で製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって、本発明は、単純な構造を有するとともに、低い製造コストで製造することの可能な車両用制動システムを提供することを目的とする。
【0007】
上記および/またはその他の目的を達成するために、本発明にかかる車両用制動システムは、(a)シリンダ内に軸方向に沿って移動自在に支持された入力ピストンと、(b)入力ピストンに連結された操作部と、(c)シリンダ内に入力ピストンと同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持された加圧ピストンと、(d)入力ピストンが受ける操作部の操作量に応じた制御油圧を設定する制御油圧設定手段と、(e)制御油圧設定手段により設定された制御油圧を加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生させる制御油圧供給手段と、(f)操作部から入力ピストンに作用する操作力を吸収する操作力吸収手段と、を具える。
【0008】
通常の動作時において、本発明の第1の態様にかかる車両用制動システムは、入力ピストンが受けた操作部の操作量に応じた制御油圧を加圧ピストンに作用させることにより制動油圧を生成することが可能であるとともに、操作力吸収手段により入力ピストンに作用された操作力を吸収して操作部に作用される反力を所定値に制御する。これにより、構造が単純であり、且つ低い製造コストで製造可能な制動システムは、適切な制動力制御を行うことが可能となる。
【0009】
本発明にかかる車両用制動システムにあっては、加圧ピストンが、シリンダ内に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に入力ピストンにより押圧可能であり、入力ピストンおよび加圧ピストンのいずれか一方の少なくとも一部が他方に嵌合し、操作力吸収手段が、操作力に応じて入力ピストンが移動する際に入力ピストンと加圧ピストンとの間に配される圧力室の作動油を排出可能とすることにより操作部が作用する操作力を吸収する排出路を具える。
【0010】
通常の作動時において、本発明にかかる車両用制動システムでは、入力ピストンが受ける操作部の操作量に応じた制御油圧を加圧ピストンに作用させることにより制動油圧を生成することが可能であるとともに、操作部が作用させる操作力を圧力室からの作動油の排出を用いて吸収することにより操作部に与えられる反力を適切な値に設定する。異常が発生すると、操作部から作用される操作力が直接入力ピストンを押圧して制動油圧を発生する。これにより、構造が単純であり、且つ低い製造コストで製造可能な制動システムは、適切な制動力制御を行うことが可能となる。
【0011】
本発明にかかる車両用制動システムでは、圧力室の油圧を受ける入力ピストンの第1受圧面積と制御油圧供給手段からの制御油圧を受ける加圧ピストンの第2受圧面積とがほぼ均等になるように設定されても良い。
【0012】
本発明の一態様の車両用制動システムは、入力ピストンが受ける操作部の操作量に応じた反力を設定する反力設定手段と、反力設定手段により設定された反力を入力ピストンに作用させることで操作部に反力を発生させる反力供給手段と、を更に具える。
【0013】
本発明の一態様の車両用制動システムは、入力ピストンを介して操作部に作用される反力を発生させる反力発生手段と、異常発生時に反力発生手段によって操作部へ作用された反力を制限する反力制限手段と、を更に具える。
【0014】
本発明の一態様にかかる車両用制動システムにあっては、(g)入力ピストンが受ける操作部の操作量を検出する操作量検出手段と、(h)操作量検出手段が検出した操作量または発生した制動油圧に応じた反力油圧を設定する反力油圧設定手段と、(i)反力油圧設定手段により設定された反力油圧を入力ピストンに作用させることで操作部に反力を発生させる反力油圧供給手段と、を更に具える。
【0015】
通常の作動時において、本発明の一態様にかかる車両用制動システムでは、入力ピストンが受ける操作部の操作量に応じた制御油圧を加圧ピストンに作用させることにより制動油圧を生成することが可能であるとともに、操作部の操作量に応じた反力油圧を入力ピストンに作用させることにより操作部に作用される反力を所定値に設定することが可能であり、且つ操作部が作用する操作力を操作力吸収手段が吸収する。従って、構造が単純であり、且つ低い製造コストで製造可能な制動システムは、適切な制動力制御を行うことが可能となる。
【0016】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段は、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側と向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室とから制動油圧を吐出可能である。また、この制動システムにあっては、第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサと、第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサとを設けても良い。そして、操作量検出手段の異常時には、制御油圧設定手段は、第1圧力センサの検出圧力と第2圧力センサの検出圧力とがほぼ均等となるように制御油圧を設定しても良い。
【0017】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、入力ピストンに作用させる反力油圧を検出する第3圧力センサと、操作部に作用する反力を検出する反力検出センサとを設けても良い。また、この制動システムにおいて、前記反力油圧供給手段が、反力油圧設定手段が設定した反力油圧と第3圧力センサが検出した実際の反力油圧とがほぼ同じになるように制御されても良い。そして、第3圧力センサの異常を検出した際には、反力油圧設定手段が、反力検出センサが検出した反力に応じて反力油圧を設定しても良い。
【0018】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、操作量検出手段が検出した操作部の操作量と、操作部に作用する反力との相対関係に基づいて反力油圧供給手段の異常を検出しても良い。
【0019】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段が、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側に向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室から制動油圧を吐出可能としても良い。また、この制動システムにおいて、第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサと、第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサとを設けても良い。そして、第2圧力センサによって検出される制動油圧が第1圧力センサによって検出される制動油圧よりも予め設定された所定値以上に小さくなった場合、第3圧力室から吐出される制動油圧の吐出経路に失陥があるものと判定し、反力油圧設定手段が設定する反力油圧を減少させても良い。
【0020】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段が、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側に向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室から制動油圧を吐出可能としても良い。また、この制動システムにあっては、第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサを設けても良い。そして、第1圧力センサによって検出される制動油圧が制御油圧設定手段によって設定された制御油圧よりも予め設定された所定値以上に小さくなった場合、第1圧力室から吐出される制動油圧の吐出経路に失陥があるものと判定し、反力油圧設定手段が設定する反力油圧を減少させても良い。
【0021】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段が、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側に向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室から制動油圧を吐出可能としても良い。また、この制動システムにあっては、第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサと、第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサとを設けても良い。そして、第1圧力センサによって検出される圧力と第2圧力センサによって検出される圧力との差に基づいて入力ピストンと加圧ピストンとの位置関係を判定しても良い。
【0022】
本発明にかかる車両用制動システムでは、操作量検出手段が検出した操作部の操作量に基づいて入力ピストンと加圧ピストンとの接触状態を判定しても良い。そして、入力ピストンと加圧ピストンとが非接触状態にあり、且つ第1圧力センサによって検出される圧力と第2圧力センサによって検出される圧力との差が予め設定された所定値以上であった場合、第1圧力センサ及び前記第2圧力センサのうちの少なくとも一つが異常であると判定しても良い。
【0023】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、入力ピストンに作用させる反力油圧を検出する第3圧力センサと、操作部に作用させる反力を検出する反力検出センサとを設けても良い。第3圧力センサが検出した反力油圧と反力検出センサが検出した反力とに基づいて第3圧力センサまたは反力検出センサの異常を検出しても良い。そして、第3の圧力センサまたは反力検出センサの異常を検出した場合、反力油圧設定手段が設定する反力油圧の変化量を減少させても良い。
【0024】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段が、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側に向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室から制動油圧を吐出可能としても良い。また、反力油圧供給手段が、反力室から入力ピストンに反力油圧を作用させても良い。そして、反力室からの作動油の排出が抑制された際に第1圧力室に作用する制御油圧が上昇した場合、第1圧力室と反力室との間での作動油の漏洩を検出しても良い。さらに、漏洩が検出された場合、制御油圧設定手段は、操作部に作用する反力に基づいて制御油圧を設定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の第1の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図2】図2は、第1の参考例の車両用制動システムにおけるペダルストロークに対する目標出力油圧及び目標反力を表すグラフである。
【図3】図3は、第1の参考例の車両用制動システムによる制動力制御を表すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の第2の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の第3の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図8A】図8Aは、本発明の第3の実施の形態に係る車両用制動システムによる故障判定制御を表すフローチャートである。
【図8B】図8Bは、本発明の第3の実施の形態に係る車両用制動システムによる故障判定制御を表すフローチャートである。
【図8C】図8Cは、本発明の第3の実施の形態に係る車両用制動システムによる故障判定制御を表すフローチャートである。
【図9】図9は、ストロークセンサの故障を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図10】図10は、圧力センサの故障を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図11】図11は、リニア弁の故障を検知する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図12】図12は、反力を与える機構の故障を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図13】図13は、反力作用機構の故障判定を説明するためのペダルストロークに対する油圧及び反力を表すグラフである。
【図14】図14は、制動油圧の異常を判定するルーチンを表すフローチャートである。
【図15】図15は、前輪への油圧経路における失陥を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図16】図16は、後輪への油圧経路における失陥を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図17】図17は、入力ピストンと加圧ピストンとの接触を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図18】図18は、圧力センサの出力間のずれを検出する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図19】図19は、踏力スイッチの出力と反力圧力センサの出力との比較結果の異常を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図20】図20は、第1圧力室から反力室への作動油漏れを判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図21】図21は、反力圧力センサの故障が検知された時の反力油圧の設定を説明するためのグラフである。
【図22】図22は、踏力スイッチの出力と反力圧力センサの出力との比較結果に異常を検出した時の反力油圧の設定を説明するためのグラフである。
【図23】図23は、前輪への油圧経路における失陥検出時の反力油圧設定を説明するためのグラフである。
【図24】図24は、後輪への油圧経路における失陥検出時の反力油圧設定を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明に係る車両用制動装置システムの参考例並びに実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの参考例や実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0027】
(第1の参考例)
図1は、本発明の第1の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図であり、図2は、第1の参考例の車両用制動システムにおけるペダルストロークに対する目標出力油圧及び目標反力を表すグラフであり、図3は、第1の参考例の車両用制動システムにおける制動力制御を表すフローチャートである。
【0028】
第1の参考例の車両用制動システムにおいて、図1に示すように、シリンダ11は、基端部が開口して先端部が閉塞した円筒形状をなし、内部に入力ピストン12と加圧ピストン13が同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されている。入力ピストン12は、シリンダ11の基端部近傍であって、シリンダ11における軸方向へ対向する側の一方に配置され加圧ピストン13は、シリンダ11の先端部近傍であって、シリンダ11の他方の側に配置されている。操作部としてのブレーキペダル14の操作ロッド15は入力ピストン12の基板部に連結されており、入力ピストン12は、車両の運転者または乗員によるブレーキペダル14の操作により操作ロッド15を介して移動可能となっている。2つの支持部材16,17は、シリンダ11内に圧入または螺合されており、支持部材16,17の外周面がシリンダ11の内周面に固定されている。入力ピストン12は、支持部材16,17によって移動可能に支持されていると共に、円盤形状のフランジ部18がシリンダ11の内周面に移動自在に支持されている。そして、入力ピストン12は、フランジ部18と支持部材16,17とが当接することでその移動ストロークが規制(すなわち、入力ピストン12のストロークが決定)されると共に、支持部材16とフランジ部18との間に張設された反力スプリング19によりフランジ部18が支持部材17に当接する位置に付勢支持されている。換言すると、フランジ部18は、通常、反力スプリング19の付勢力によって支持部材17に当接する位置に配される。
【0029】
加圧ピストン13は、図1の紙面で断面がコ字形状をなし、外周面がシリンダ11の内周面に移動自在に支持されている。そして、加圧ピストン13は、前後の端面がそれぞれシリンダ11と支持部材16とに当接することでその移動ストロークが規制されると共に、シリンダ11との間に張設された付勢スプリング20により加圧ピストン13が支持部材16に当接する位置に付勢支持されている。すなわち、加圧ピストン13は、通常、スプリング20の付勢力によって支持部材16に当接する位置に配される。従って、入力ピストン12と加圧ピストン13とは、所定間隔(ストローク)S0をもって離間した状態で保持されており、乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン12が所定ストロークS0だけ前進すると、入力ピストン12は加圧ピストン13に当接して押圧することができる。
【0030】
このようにシリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13とが同軸上に移動自在に配置されることで、入力ピストン12における移動方向一方、つまり、入力ピストン12と加圧ピストン13との間に第1圧力室R1が形成されると共に、入力ピストン12における移動方向他方、つまり、入力ピストン12のフランジ部18と支持部材17との間に第2圧力室R2が形成され、また、シリンダ11と加圧ピストン13との間に第3圧力室R3が形成されている。また、支持部材16と入力ピストン12のフランジ部18との間に反力室R4が形成されている。そして、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは、シリンダ11内に形成されたオリフィスとしての連通路21により連通されている。
【0031】
油圧ポンプ22はモータ23が駆動することで油圧を制動システムの油圧系統へ供給可能となっている。油圧ポンプ22は、配管24を介してリザーバタンク25に連結されると共に、配管26を介してアキュムレータ27に連結されている。アキュムレータ27は、第1油圧供給配管28を介して連通路21の第1供給ポート29に連結されている。第1リニア弁30は第1油圧供給配管28に配置されていると共に、第2リニア弁32は第1油圧供給配管28から配管24に連結される第1油圧排出配管31に配置されている。この第1リニア弁30と第2リニア弁32とは、流量調整式の電磁弁であり、第1リニア弁30はノーマルクローズ、第2リニア弁32はノーマルオープンとなっている。
【0032】
また、アキュムレータ27は、第2油圧供給配管33を介して反力室R4に連通する第2供給ポート34に連結されている。第3リニア弁35はこの第2油圧供給配管33に配置されていると共に、第4リニア弁37は第2油圧供給配管33を第1油圧排出配管31に連結する第2油圧排出配管36に配置されている。また、第2油圧排出配管36には第4リニア弁37を迂回してチェック弁38が配置されている。この第3リニア弁35と第4リニア弁37は、流量調整式の電磁弁であり、第3リニア弁35はノーマルクローズ、第4リニア弁37はノーマルオープンとなっている。
【0033】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置(図示略)を作動させるホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLが設けられており、ABS(Antilock Brake System)40により作動可能となっている。そして、第2圧力室R2に連通するオリフィスとしての第1吐出ポート41には第1吐出油圧配管42が連結されている。この第1吐出油圧配管42は、ABS40に連結され、後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R3に形成されたオリフィスとしての第2吐出ポート43には第2吐出油圧配管44が連結されている。この第2吐出油圧配管44は、ABS40に連結され、前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLに油圧を供給可能となっている。更に、排出油圧配管47は、第3圧力室R3に連通する第1、第2排出ポート45,46とリザーバタンク25とを接続している。
【0034】
なお、シリンダ11と入力ピストン12と加圧ピストン13等との要部には、Oリング48が装着されると共に、ワンウェイシール49が装着されており、油圧の漏洩を防止している。
【0035】
このように構成された第1の参考例の車両用制動システムにて、電子制御ユニット(ECU)51(制御油圧設定手段)は、入力ピストン12が受けるブレーキペダル14の操作量(すなわち、ペダルストローク)に応じた制御油圧を設定する。また、制動システムは、この設定された制御油圧を加圧ピストン13に作用させることで制動油圧を発生させる制御油圧供給手段を含む。そのようにして発生した制動油圧はABS40に供給され、その結果ABS40は、ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLを作動して前輪FR,FL及び後輪RR,RLに制動力を作用させるようにしている。本参考例では、制御油圧を入力ピストン12の第1圧力室R1及び第2圧力室R2に供給することで加圧ピストン13に作用させ、制動油圧を発生させるようにしている。
【0036】
また、第1の参考例では、ブレーキペダル14から入力ピストン12に作用する操作力を吸収する操作力吸収手段が提供されており、入力ピストン12の押圧力を加圧ピストン13に伝達不能とすると共に、この押圧力を操作反力としてブレーキペダル14に作用させないようにしている。本参考例ではこの操作力吸収手段は、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する連通路21と、入力ピストン12と加圧ピストン13との所定間隔S0により構成されている。操作力を操作吸収手段に吸収させるため、シリンダ11の内径の断面積A1に対して、第1圧力室R1の油圧を受ける入力ピストン12の先端部の第1受圧面積A2と、第2圧力室R2の油圧を受ける入力ピストン12のフランジ部18の第2受圧面積A3とを均等に設定している。そして、異常発生時には、ブレーキペダル14からの操作力により入力ピストン12が加圧ピストン13を直接押圧することで、制動油圧を発生させるようにしている。
【0037】
更に、ECU51(反力設定手段)は、入力ピストン12が受けたブレーキペダル14の操作量に応じた反力を設定し、この設定された反力を入力ピストン12に作用させることでブレーキペダル14に反力を発生させる(反力供給手段、反力発生手段)ようにしている。そして、異常発生時には、ブレーキペダル14への反力を制限する(反力制限手段)ことで、ブレーキペダル14の操作不能状態を回避するようにしている。
【0038】
より具体的には、ブレーキペダル14には、このブレーキペダル14のペダルストロークSpを検出するストロークセンサ52と、ブレーキペダル14が踏み込まれた際の踏力またはペダル作動力Fpを検出する踏力センサ53と、所定の踏力に応じてON/OFFする踏力スイッチ54と、踏力を検出してストップランプ(図示略)を点灯するストップランプスイッチ55が設けられており、各検出結果はECU51に出力される。また、第1吐出油圧配管42及び第2吐出油圧配管44には、それぞれ配管42の油圧を検出する第1圧力センサ56及び配管44の油圧を検出する第2圧力センサ57が設けられている。第1圧力センサ56は、第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42を通して後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLへ供給される制動油圧Prを検出し、検出結果をECU51に送信している。一方、第2圧力センサ57は、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44を通して前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLへ供給される制動油圧Pfを検出し、検出結果をECU51に送信している。
【0039】
更に、アキュムレータ27から第2供給ポート34に延伸する第2油圧供給配管33には、第3リニア弁35の下流側に位置して第3圧力センサ58が設けられており、この第3圧力センサ58は反力室R4へ供給される反力油圧Pvを検出し、検出結果をECU51に送信している。アキュムレータ27からの配管26には、第4圧力センサ59が設けられており、この第4圧力センサ59は、アキュムレータ27から各圧力室へ供給される油圧Ppを検出し、検出結果をECU51に送信している。また、前輪FR,FL及び後輪RR,RLのそれぞれに設けられた車輪速センサ60は、それぞれの車輪速を検出しており、検出した各車輪速度をECU51に送信している。
【0040】
動作中、ECU51は、図2に示すように、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整する一方、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得してフィードバック制御をおこない、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。この場合、ECU51は、(図2に示すような)ペダルストロークSpに対する目標出力油圧Prtのマップを格納しており、このマップに基づいてリニア弁30,32を制御する。ブレーキペダル14に与えられる反力Pbは、反力スプリング19によるスプリング力と反力室R4に作用する反力油圧Pvとの加算値であり、スプリング力は反力スプリング19の諸元により決まる定数または固定値となっている。従って、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標反力油圧Pvtを設定し、第3、第4リニア弁35,37の開度を調整する。また、ECU51は、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvを取得し、フィードバック制御を行うことにより目標反力油圧Pvtと反力油圧Pvとが一致するように制御している。この場合、ECU51は、(図2に示すような)ペダルストロークSpに対する目標反力油圧Pvtのマップを格納しており、このマップに基づいて各リニア弁35,37を制御する。
【0041】
ここで、制動油圧Pf,Pr、反力Fp(反力油圧Pv)との関係について説明する。制動油圧Prは、ペダルストロークSpと、制動油圧PrおよびペダルストロークSpに対して予め設定された関数マップとに基づいて設定される。なお、制動油圧Pfと制動油圧Prとはほぼ等しく、Pr=fSp(fはストロークと油圧との関数)となる。また、入力ピストン12に作用する力の釣り合いは下記に示すようになる。
A2×Pr+Sp×k0+A3×Pv=Fp+A3×Pr
Fp=(A2−A3)×Pr+k0×Sp+A3×Pv
なお、k0は、反力スプリング19のばね定数である。面積A2と面積A3とが等しくなるようにシリンダ11、入力ピストン12、および加圧ピストン13を設計した場合、反力は下記のようになる。
Fp=k0×Sp+A3×Pv
【0042】
面積A3は固定値なので、反力Pvにより踏力Fpが決まる。従って、反力Pvを制御することで踏力Fpを可変とすることができ、踏力FpとストロークSpと制動油圧Pf,Prとの関係を任意に設定することができる。
【0043】
ここで、第1の参考例の車両用制動システムによって行われる制動力制御について図3のフローチャートに基づいて説明する。制動力制御において、図3に示すように、まず、ステップS1では、ECU51が、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpを取得し、ステップS2では、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prと、第2圧力センサ57が検出した制動油圧Pfとを取得し、ステップS3では、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvを取得する。
【0044】
次に、ステップS4にて、ペダルストロークSpに基づいて予め設定されたマップを用いて目標出力油圧Prtを演算し、ステップS5にて、ペダルストロークSpに基づいて予め設定されたマップを用いて目標反力油圧Pvtを演算する。そして、ステップS6にて、算出した目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁30,32の開度を調整すると共に、算出した目標反力油圧Pvtに基づいて第3、第4リニア弁35,37の開度を調整する。このとき、ECU51は、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制動油圧Prをフィードバック的に制御すると共に、目標反力油圧Pvtと反力油圧Pvとが一致するように反力油圧Pvをフィードバック的に制御する。
【0045】
図1を参照してより具体的に説明すると、乗員がブレーキペダル14を踏むと、ブレーキペダル14に作用された操作力により入力ピストン12が前進する(すなわち、図1にて左方へ移動する)。このとき、入力ピストン12は前進するが、入力ピストン12と加圧ピストン13との間には所定のストロークS0が設けられているため、入力ピストン12は加圧ピストン13を直接押圧することはない。そのような入力ピストン12の前進に伴い、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通して第2圧力室R2に流れることとなり、入力ピストン12がフリー状態となって、第1圧力室R1は入力ピストン12を介してブレーキペダル14に反力を作用させることはない。
【0046】
乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が前進するため、ストロークセンサ52はペダルストロークSpを検出し、ECU51は、この検出されたペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定すると共に、目標反力油圧Pvtを設定する。そして、ECU51は、この目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁30,32の開度を調整し、第1圧力室R1に所定の制御油圧を作用させる。すると、この制御油圧によって第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42に所定の制動油圧Prが作用すると共に、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44に所定の制動油圧Pfが作用することとなる。そして、この制動油圧Pr,PfがABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0047】
なお、ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12が前進し、第1圧力室R1に所定の制御油圧が作用したとき、加圧ピストン13が移動して第1、第2排出ポート45,46を遮断するために第3圧力室R3が加圧されることとなる。よって、第1圧力室R1に作用する制御油圧に応じて第1圧力室R1と第3圧力室R3との油圧がバランスするので、吐出される制動油圧Pr,Pfはほぼ同等のものとなる。
【0048】
また、ECU51は、目標反力油圧Pvtに基づいて第3、第4リニア弁35,37の開度を調整し、反力室R4に所定の反力油圧を作用させる。すると、この反力油圧と反力スプリング19のスプリング力との加算値が反力Pbとして反力室R4に作用し、この反力Pbが入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達されることとなり、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた反力を付与することができる。
【0049】
ブレーキペダル14に対して反力を付与する油圧系統に異常が発生した際に乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が所定のストロークS0だけ前進し、加圧ピストン13に当接する。そして、入力ピストン12の先端部が加圧ピストン13を直接押圧することとなり、所定の制動油圧Pr,PfがABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用する。この場合、反力室R4内の作動油は、第2供給配管33から反力制限機構として機能する第4リニア弁37を通ってリザーバタンク25に排出されることとなり、ブレーキペダル14が作動不能となったり、操作力が必要以上に重くなったりすることはない。
【0050】
上記のような第1の参考例の車両用制動システムにあっては、シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13とを同軸上に軸方向に沿って移動自在に支持し、入力ピストン12にブレーキペダル14を連結している。また、入力ピストン12の軸方向に対向する両側のそれぞれに形成された圧力室R1,R2を連通路21により連通している。作動時においては、連通路21の第1供給ポート29に制御油圧が供給されると共に、入力ピストン12の反力室R4の第2供給ポート34に反力油圧が供給され、また第1および第3圧力室R1,R3の吐出ポート41,43から制動油圧が与えられる。
【0051】
上記のように構成された制動システムにより、ECU51は、ペダルストロークSpに応じた目標出力油圧Prtを設定し、この目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R1に制御油圧を作用させることで、第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42に所定の制動油圧Prを出力すると共に、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44に所定の制動油圧Pfを出力する。この制動油圧Pr,Pfは、ABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させる。
【0052】
また、このブレーキペダル14の操作により入力ピストン12が前進したとき、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通って第2圧力室R2に流動することで、入力ピストン12は制御油圧を受けることはない。この状況下においてECU51は、ペダルストロークSpに応じた目標反力油圧Pvtを設定し、この目標反力油圧Pvtに基づいて反力室R4に作用する所定の反力油圧を発生させることで、この反力油圧と反力スプリング19のスプリング力との加算値が反力Pbとして入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達されることとなる。よって、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0053】
一方、異常発生時には、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じて入力ピストン12が加圧ピストン13を直接押圧するので、制動油圧を発生させることができ、安全性を向上することができる。
【0054】
上述のような第1の参考例の車両用制動システムにあっては、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を確実に発生させることができると共に、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた反力を適正に付与することができる。その結果、本参考例の制動システムは、単純化された油圧系統または油路を有することから、簡素な構造を有するとともに、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御及び反力制御を可能とすることができる。
【0055】
また、上述のような第1の参考例の車両用制動システムにあっては、操作力吸収手段を、圧力室R1,R2を連通する連通路21および入力ピストン12と加圧ピストン13との所定間隔S0により構成しており、簡単な構成でブレーキペダル14に対する反力変動を抑制または制限することができる。この場合、第1圧力室R1の油圧を受ける入力ピストン12の第1受圧面積A2と、第2圧力室R2の油圧を受ける入力ピストン12のフランジ18の第2受圧面積A3とが均等に設定されており、ブレーキペダル14入力ピストン12に作用する操作力を確実に吸収することができる。
【0056】
更に、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する連通路21と、制動油圧を吐出する第1吐出ポート41と、第2吐出ポート43と、をオリフィスにより構成しており、ブレーキペダル14の操作速度に応じた力を入力ピストン12に反力として伝達することでき、操作性を向上することができる。
【0057】
(第2の参考例)
図4は、本発明の第2の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。なお、図4において、図1において用いられたものと同様の機能および/または構成を有する要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0058】
第2の参考例の車両用制動システムにおいて、図4に示すように、シリンダ11には入力ピストン12と加圧ピストン13とが直列をなして移動自在に支持されており、入力ピストン12には、ブレーキペダル14の操作ロッド15が連結され、反力スプリング19の付勢力によりフランジ部18が支持部材17に当接する位置に付勢支持されている。一方、加圧ピストン13は、付勢スプリング20の付勢力により支持部材16に当接する位置に付勢支持されており、加圧ピストン13と入力ピストン12とは所定の間隔(ストローク)S0をもって離間した状態で保持されている。
【0059】
シリンダ11内には、入力ピストン12と加圧ピストン13との間に第1圧力室R1が形成され、入力ピストン12のフランジ部18と支持部材17との間に第2圧力室R2が形成され、シリンダ11と加圧ピストン13との間に第3圧力室R3が形成され、支持部材16と入力ピストン12のフランジ部18との間に反力室R4が形成されている。そして、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは、入力ピストン12内に形成されたオリフィスとしての連通路61により連通されている。
【0060】
本第2の参考例では、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する連通路61を入力ピストン12内に形成しており、この連通路61は、入力ピストン12の軸に沿って形成された第1孔61aと、この第1孔61aに連通するとともに、入力ピストン12の径方向に沿って形成された第2孔61bとから構成されている。
【0061】
そして、アキュムレータ27から延伸する第1油圧供給配管28が連通路61の第1供給ポート29に連結され、この第1油圧供給配管28に第1リニア弁30が配置されると共に、第1油圧供給配管28に接続された第1油圧排出配管31に第2リニア弁32が配置されている。また、アキュムレータ27から延伸する第2油圧供給配管33が反力室R4の第2供給ポート34に連結され、この第2油圧供給配管33に第3リニア弁35が配置されると共に、第2油圧供給配管33に接続された第2油圧排出配管36に第4リニア弁37が配置されている。
【0062】
一方、第2圧力室R2の第1吐出ポート41は第1吐出油圧配管42を介してABS40に連結され、後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R3の第2吐出ポート43は第2吐出油圧配管44を介してABS40に連結され、前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLに油圧を供給可能となっている。更に、第3圧力室R3の第1、第2排出ポート45,46は排出油圧配管47を介してリザーバタンク25に連結されている。
【0063】
そして、ブレーキペダル14には、検出結果をECU51に送信するストロークセンサ52と踏力センサ53と踏力スイッチ54とストップランプスイッチ55とが設けられている。また、第1、第2吐出油圧配管42,44には、それぞれ検出結果をECU51に送信する第1、第2圧力センサ56,57が設けられている。更に、第2油圧供給配管33には、第3圧力センサ58が設けられているとともに、アキュムレータ27から延伸する配管26には第4圧力センサ59が設けられている。なお、第3圧力センサ58および第4圧力センサ59は、検出結果をECU51へ送信している。
【0064】
そのように構成された制動システムにより、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整する。また、ECU51は、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得し、フィードバック制御を行うことにより目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。また、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標反力油圧Pvtを設定し、第3、第4リニア弁35,37の開度を調整する。また、ECU51は、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvを取得し、フィードバック制御を行うことにより目標反力油圧Pvtと反力油圧Pvとが一致するように制御している。
【0065】
なお、第2の参考例の車両用制動システムの油圧制御については上述した第1の参考例のそれと同様であるため、説明は省略する。
【0066】
第2の参考例の車両用制動システムにあっては、シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13とを同軸上に軸方向に沿って移動自在に支持し、入力ピストン12にブレーキペダル14を連結している。また、2つの圧力室R1,R2を入力ピストン12内に形成した連通路61により連通して、この連通路61の第1供給ポート29に制御油圧を供給可能としている。さらに、反力室R4の第2供給ポート34に反力油圧を供給可能とする一方、各圧力室R1,R3の吐出ポート41,43から制動油圧を伝達可能としている。
【0067】
これにより、ECU51は、目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R1に制御油圧を作用させるので、第1圧力室R1から所定の制動油圧Prが供給されると共に、第3圧力室R3から所定の制動油圧Pfが供給される。その結果、乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を各輪に発生させることができる。また、ブレーキペダル14の操作により入力ピストン12が前進したとき、第1圧力室R1の作動油が連通路61を通って第2圧力室R2に流動し、入力ピストン12は制御油圧を受けない。さらに、ECU51は、目標反力油圧Pvtに基づいて反力室R4に反力油圧を作用させることで、反力Pbを入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達する。よって、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0068】
また、第2の参考例の車両用制動システムにあっては、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する連通路61を、入力ピストン12の軸に沿って形成された第1孔61aと、第1孔61aに連通するとともに、ピストン12の径方向に沿って形成された第2孔61bとから構成している。従って、入力ピストン12に対して孔加工を施すことにより第1孔61aと第2孔61bを形成するだけで連通路61を形成することができ、製造作業または工程を簡素化することができると共に、製造コストを低減することができる。
【0069】
(第3の参考例)
図5は、本発明の第3の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。なお、図5において、先の参考例で説明したものと同様の構成および/または機能を有する要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0070】
第3の参考例の車両用制動システムにおいて、図5に示すように、シリンダ11には入力ピストン12と加圧ピストン13とが直列をなして移動自在に支持されており、入力ピストン12には、ブレーキペダル14の操作ロッド15が連結されている。一方、加圧ピストン13は、入力ピストン12に当接するように付勢スプリング20により付勢されている。シリンダ11内には、入力ピストン12と加圧ピストン13との間に第1圧力室R1が形成され、入力ピストン12のフランジ部18と支持部材17との間に第2圧力室R2が形成され、シリンダ11と加圧ピストン13との間に第3圧力室R3が形成され、支持部材16と入力ピストン12のフランジ部18との間に反力室R4が形成されている。そして、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは連通路21により連通されている。
【0071】
そして、アキュムレータ27から延伸する第1油圧供給配管28が連通路21の第1供給ポート29に連結されており、この第1油圧供給配管28には第1リニア弁30が配置されると共に、第1油圧供給配管28に接続された第1油圧排出配管31には第2リニア弁32が配置されている。また、アキュムレータ27に比べて低容量のアキュムレータ71から延伸する第2油圧供給配管72が反力室R4の第2供給ポート34に連結されており、この第2油圧供給配管72と第1油圧排出配管31とを連結する第2油圧排出配管73にはリリーフ弁74が配置されている。また、第2油圧排出配管73にはリリーフ弁74を迂回するチェック弁75が配置されている。本参考例では、アキュムレータ71、第2油圧供給配管72、第2油圧排出配管73、リリーフ弁74により反力制限手段が構成されている。
【0072】
なお、反力制限手段は、上述の構成または配列に限定されるものではなく、アキュムレータ71、第2油圧供給配管72、第2油圧排出配管73、電磁弁76により構成してもよい。
【0073】
一方、第2圧力室R2の第1吐出ポート41は第1吐出油圧配管42を介してABS40に連結され、第3圧力室R3の第2吐出ポート43は第2吐出油圧配管44を介してABS40に連結されている。更に、第3圧力室R3の第1、第2排出ポート45,46は排出油圧配管47を介してリザーバタンク25に連結されている。付勢スプリング20により加圧ピストン13が入力ピストン12に当接すべく付勢される場合、第1、第2排出ポート45,46は一対のワンウェイシール49を挟んで連通している。
【0074】
ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12が前進し、加圧ピストン13を押圧するとき、第1圧力室R1の作動油は連通路21を通って第2圧力室R2に流れるため、ブレーキペダル14に反力が作用しない。また、加圧ピストン13がストロークS0だけ移動して第1、第2排出ポート45,46を遮断するまでは、第3圧力室R3の作動油は排出油圧配管47を通してリザーバタンク25に流れるため、入力ピストン12に作用する操作力は吸収され、制御油圧が発生しない。その後、加圧ピストン13がストロークS0以上移動して第1、第2排出ポート45,46を遮断し、第1圧力室R1に所定の制御油圧が作用すると、第1圧力室R1及び第3圧力室R3が加圧され、両者の油圧がバランスすることで、同等の制動油圧Pr,Pfが第1および第3圧力室R1,R3から吐出される。
【0075】
ブレーキペダル14には、ストロークセンサ52と、踏力センサ53と、踏力スイッチ54とストップランプスイッチ55とが設けられており、各検出結果をECU51に送信している。また、第1、第2吐出油圧配管42,44には、第1、第2圧力センサ56,57がそれぞれ設けられており、検出結果をECU51に送信している。更に、アキュムレータ27から延伸する配管26には第4圧力センサ59が設けられており、検出結果をECU51に送信している。
【0076】
動作中、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整する。また、ECU51は、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得し、フィードバック制御を行うことにより、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。
【0077】
上述のように構成された第3の参考例の車両用制動システムでは、乗員がブレーキペダル14を踏むことにより、ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12が前進すると、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通して第2圧力室R2に流れるため、ブレーキペダル14に反力を作用させることはない。また、ブレーキペダル14が踏まれることにより加圧ピストン13が入力ピストン12と共に前進した際、第1、第2排出ポート45,46を通して第3圧力室R3の作動油がリザーバタンク25に流れるため、制御油圧が発生しない。
【0078】
そして、入力ピストン12及び加圧ピストン13がストロークS0以上移動すると、ECU51は、ペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定する。そして、ECU51は、この目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁30,32の開度を調整し、第1圧力室R1に制御油圧を作用させる。すると、作用された制御油圧によって第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42に所定の制動油圧Prが作用すると共に、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44に所定の制動油圧Pfが作用することとなる。そして、この制動油圧Pr,PfがABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0079】
また、アキュムレータ71の油圧は第2油圧供給配管72を通して常時反力室R4に作用している。ブレーキペダル14の操作に応じて入力ピストン12が移動すると、反力室R4が加圧されるので、反力室R4の反力Pbが上昇する。そして、この反力Pbが入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達されることとなり、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた反力を付与することができる。
【0080】
そして、ブレーキペダル14に対して反力を付与する油圧系統に異常が発生した際、乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が加圧ピストン13を直接押圧し、所定の制動油圧Pr,PfをABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用させることができる。この場合、反力室R4内の作動油は、第2油圧供給配管72およびリリーフ弁74または電磁弁76を通ってリザーバタンク25に排出されることとなり、ブレーキペダル14が作動不能となったり、操作力が必要以上に重くなったりすることはない。
【0081】
第3の参考例の車両用制動システムにあっては、シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13を同軸上に軸方向に沿って互いに接触した状態で移動自在に支持するとともに、入力ピストン12にブレーキペダル14を連結している。また、2つの圧力室R1,R2を連通路21により連通している。このような構成により、連通路21の第1供給ポート29に制御油圧を供給可能とすると共に、入力ピストン12の反力室R4の第2供給ポート34に反力油圧を供給可能とする一方、各圧力室R1,R3の吐出ポート41,43から制動油圧を吐出可能としている。
【0082】
動作時には、ECU51は、目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R1に作用する制御油圧を発生させることで、第1圧力室R1から所定の制動油圧Prを吐出すると共に、第3圧力室R3から所定の制動油圧Pfを吐出することができ、乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を各輪について発生させることができる。また、ブレーキペダル14の操作により入力ピストン12が前進したとき、第1圧力室R1の作動油は連通路21を通って第2圧力室R2に流動するため、入力ピストン12が制御油圧を受けることはない。さらに、ECU51は、目標反力油圧Pvtに基づいて反力室R4に作用する所定の反力油圧を発生させることで、反力Pbを入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達する。よって、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0083】
また、入力ピストン12と加圧ピストン13とを接触状態で維持する第3の参考例の車両用制動システムにあっては、ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12及び加圧ピストン13が前進する際、この加圧ピストン13がストロークS0だけ移動して第1、第2排出ポート45,46を遮断するまで、第3圧力室R3の作動油をリザーバタンク25に排出するようにしている。
【0084】
従って、乗員がブレーキペダル14を踏んでから、入力ピストン12及び加圧ピストン13がストロークS0以上移動するまでの間、第3圧力室R3の作動油がリザーバタンク25に排出されるため、この期間に制動油圧が発生することはなく、制動油圧に応じた反力が入力ピストン12からブレーキペダル14に伝わることを防止することができる。
【0085】
(第1の実施の形態)
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。なお、図6において、先の参考例で説明したものと同様の構成および/または機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0086】
第1の実施の形態の車両用制動システムにおいて、図6に示すように、シリンダ81には、入力ピストン82と加圧ピストン83とが同軸上に軸方向に沿って移動自在に支持されており、入力ピストン82の一部が加圧ピストン83に嵌合する。また、入力ピストン82には、ブレーキペダル14の操作ロッド15が連結されている。さらに、支持部材84は、その外周面がシリンダ81の内周面に固定されるように、シリンダ81内に圧入または螺合されている。入力ピストン82は、支持部材84によって移動自在に支持されている一方、フランジ部85がシリンダ81に固定されたケース86に当接することでその移動ストロークが規制(すなわち、入力ピストン82のストロークが決定)される。入力ピストン82のフランジ部85は、支持部材84とケース86との間に張設された反力スプリング87によりケース86に当接すべく付勢支持されている。
【0087】
支持部材88は、その外周面がシリンダ81の内周面に固定されるようにシリンダ81内に圧入または螺合されている。加圧ピストン83は、支持部材88により移動可能に支持されており、そのフランジ部89はシリンダ81の内周面に移動自在に支持されている。また、加圧ピストン83は凹部90を有しており、入力ピストン82の先端部が嵌合している。加圧ピストン83は、その先端部がシリンダ81に当接すると共に、フランジ部89が支持部材84に当接することで、軸方向の移動が規制(すなわち、加圧ピストン83のストロークが決定)される。加圧ピストン83は、ピストン83とシリンダ81との間に張設された付勢スプリング91により、支持部材84に当接すべく付勢支持されている。その結果、入力ピストン82の先端部と加圧ピストン83の凹部90の底面とは、所定間隔(ストローク)S0をもって離間している。乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン82が所定ストロークS0だけ前進すると、入力ピストン82は加圧ピストン83に当接し、そのピストン83を押圧する。
【0088】
シリンダ81内には、入力ピストン82と加圧ピストン83との間に第1圧力室R11が形成され、加圧ピストン83のフランジ部89と支持部材84との間に第2圧力室R12が形成され、シリンダ81と加圧ピストン83との間に第3圧力室R13が形成され、支持部材88と加圧ピストン83のフランジ部89との間に第4圧力室R14が形成されている。そして、第1圧力室R11と第4圧力室R14とは、貫通孔92により連通されている。
【0089】
アキュムレータ27から延伸する第1油圧供給配管28は第2圧力室R12の供給ポート93に連結されている。そして、この第1油圧供給配管28には第1リニア弁30が配置されると共に、第1油圧供給配管28に接続された第1油圧排出配管31には第2リニア弁32が配置されている。また、第2圧力室R12の第1吐出ポート94は第1吐出油圧配管42を介してABS40に連結されており、後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R13の第2吐出ポート95は第2吐出油圧配管44を介してABS40に連結されており、前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLに油圧を供給可能となっている。更に、第3圧力室R13の排出ポート96は排出油圧配管47を介してリザーバタンク25に連結されている。
【0090】
なお、シリンダ81と入力ピストン82と加圧ピストン83等の要部とには、Oリング97が装着されると共に、ワンウェイシール98が装着されており、油圧の漏洩を防止している。
【0091】
そして、ブレーキペダル14には、ストロークセンサ52と踏力センサ53と踏力スイッチ54とストップランプスイッチ55とが設けられており、それらは各検出結果をECU51に送信している。また、第1、第2吐出油圧配管42,44には、第1、第2圧力センサ56,57がそれぞれ設けられており、検出結果をECU51に送信している。更に、アキュムレータ27から延伸する配管26には第4圧力センサ59が設けられており、検出結果をECU51に送信している。
【0092】
上述のように構成された第1の実施の形態の車両用制動システムにおいて、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整している。また、ECU51は、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得し、フィードバック制御を行うことによって目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。そのようにして、制動システムは、入力ピストン82が受けるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を発生させることができる。
【0093】
また、第1の実施の形態の車両用制動システムは、ブレーキペダル14から入力ピストン82に作用する操作力を吸収し、押圧力(つまり操作力)を加圧ピストン83に伝達不能とすると共に、ブレーキペダル14に操作反力として作用させないようにするための操作力吸収手段を有している。なお、本実施の形態では、この操作力吸収手段は、第1圧力室R11と貫通孔92と排出ポート96とにより構成されており、シリンダ81の内径の油路面積A11に対して、第1圧力室R11の油圧を受ける入力ピストン82の先端部の第1受圧面積A12と、第2圧力室R12の油圧を受ける加圧ピストン83のフランジ部89の第2受圧面積A13とを均等に設定している。そして、異常発生時には、ブレーキペダル14からの操作力により入力ピストン82が加圧ピストン83を直接押圧することで、制動油圧を発生させるようにしている。
【0094】
具体的には、乗員がブレーキペダル14を踏むと、ブレーキペダル14からの操作力により入力ピストン82が前進する。このとき、入力ピストン82は、入力ピストン82と加圧ピストン83との間に所定のストロークS0が設けられているため、加圧ピストン83を直接押圧することはなく、第1圧力室R11の作動油が貫通孔92から第4圧力室R14に流れ、更に排出ポート96および排出油圧配管47を通してリザーバタンク25に排出される。その結果、入力ピストン82がフリー状態となって、第1圧力室R11は入力ピストン82を介してブレーキペダル14に反力を作用させることはない。
【0095】
ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン82が前進し、第2圧力室R12に所定の制御油圧が作用した際、加圧ピストン83が移動して排出ポート96を遮断するため、第3圧力室R13は加圧されることとなる。第2圧力室R12に作用する制御油圧に応じて第3圧力室R3の油圧がバランスすることで、吐出される制動油圧Pr,Pfはほぼ同等のものとなる。
【0096】
ブレーキペダル14に対して反力を付与する油圧系統に異常が発生した場合、乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン82が所定のストロークS0だけ前進し、その後入力ピストン82の先端部が加圧ピストン83を直接押圧することとなり、所定の制動油圧Pr,PfがABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用する。
【0097】
このように第1の実施の形態の車両用制動システムにあっては、シリンダ81内に入力ピストン82と加圧ピストン83とを軸方向に沿って移動自在に支持するとともに入力ピストン82の一部を加圧ピストン83に嵌合し、また入力ピストン82にブレーキペダル14を連結している。これにより、制御油圧が第2圧力室R12の第1供給ポート93に供給可能になると共に、第1圧力室R11の作動油が貫通孔92及び第4圧力室R14を介して排出ポート96から排出可能になる一方、制御油圧が第2および第3圧力室R12,R13の吐出ポート94,95から吐出可能となっている。
【0098】
動作中、ECU51は、ペダルストロークSpに応じた目標出力油圧Prtを設定し、この目標出力油圧Prtに基づいて第2圧力室R12に制御油圧を作用させることで、第2圧力室R12から第1吐出油圧配管42に所定の制動油圧Prを吐出すると共に、第3圧力室R13から第2吐出油圧配管44に所定の制動油圧Pfを吐出する。この制動油圧Pr,PfはABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用するので、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0099】
このブレーキペダル14の操作に応じて入力ピストン82が前進したとき、第1圧力室R11内の作動油が貫通孔92及び第4圧力室R14を介して排出ポート96から排出されることで、入力ピストン82は制御油圧を受けることはない。そのような状況下において、入力ピストン82は、反力スプリング87のスプリング力を反力としてブレーキペダル14に伝達することとなり、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0100】
一方、異常発生時には、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じて入力ピストン82が加圧ピストン83を直接押圧することで、制動油圧が発生するので、安全性を確保することができる。
【0101】
上述のように、第1の実施の形態の制動システムは、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を確実に発生させることができると共に、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた反力を適正に付与することができる。本実施の形態の制動システムの構造は単純化されたものであり、その結果油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御及び反力制御を可能とすることができる。
【0102】
また、第1の実施の形態の車両用制動システムにあっては、シリンダ81内において、入力ピストン82と加圧ピストン83とが軸方向に沿って移動自在に支持されているとともに、入力ピストン82の一部を加圧ピストン83に嵌合している。又、第1圧力室R11内の作動油を貫通孔92及び圧力室R14を介して排出ポート96から排出することで、ブレーキペダル14の操作力を吸収するようにしている。入力ピストン82の一部が常時加圧ピストン83に嵌合することで、シリンダ81の全長を短縮して装置の小型化を図ることができると共に、入力ピストン82が加圧ピストン83に常時接触することで、衝突音などの発生を防止することができる。
【0103】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。なお、図7において、前述した参考例で説明したものと同様の構成および/または機能を有する要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0104】
第2の実施の形態の車両用制動システムにおいて、図7に示すように、シリンダ101には、入力ピストン102と加圧ピストン103とが同軸上に軸方向に沿って移動自在に支持されているとともに、加圧ピストン103の一部が入力ピストン102に嵌合している。また、入力ピストン102には、ブレーキペダル14の操作ロッド15が連結されている。さらに、入力ピストン102は、その外周面がシリンダ101の内周面により移動自在に支持されている。入力ピストン102の軸方向への移動は、入力ピストン102がシリンダ101に固定された支持部材104に当接することで規制(すなわち、入力ピストン102のストロークが決定)される。また、入力ピストン102は、支持部材104とケース86との間に張設された反力スプリング87により支持部材104に当接されるべく付勢支持されている。
【0105】
加圧ピストン103は、シリンダ101の内周面により移動自在に支持されるフランジ部105を有している。また、入力ピストン102は凹部106を有しており、加圧ピストン103の基端部が嵌合している。そして、加圧ピストン103は、その先端部がシリンダ101に当接すると共に、フランジ部105がシリンダ101に固定された支持部材107に当接することで、軸方向への移動が規制(すなわち、加圧ピストン103のストロークが決定)される。加圧ピストン103は、加圧ピストン103とシリンダ101との間に張設された付勢スプリング108によりフランジ部105が支持部材107に当接する位置に付勢支持されている。これにより、入力ピストン102の凹部106の底面と加圧ピストン103の基端部とは、所定間隔(ストローク)S0をもって離間した状態で保持される。そして、乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン102が所定ストロークS0だけ前進すると、入力ピストン102は加圧ピストン103に当接してこの加圧ピストン103を押圧することができる。
【0106】
シリンダ101内には、入力ピストン102と加圧ピストン103との間に第1圧力室R21が形成され、入力ピストン102と支持部材107との間に第2圧力室R22が形成され、シリンダ101と加圧ピストン103との間に第3圧力室R23が形成されている。
【0107】
そして、アキュムレータ27から延伸する第1油圧供給配管28が第1圧力室R21への第1、第2供給ポート109,110に連結され、この第1油圧供給配管28には第1リニア弁30が配置されると共に、第1油圧供給配管28に接続された第1油圧排出配管31には第2リニア弁32が配置されている。また、第1圧力室R21の第1、第2吐出ポート111,112は第1吐出油圧配管42を介してABS40に連結され、後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R23の第3吐出ポート113は第2吐出油圧配管44を介してABS40に連結され、前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLに油圧を供給可能となっている。更に、加圧ピストン103には、第2圧力室R22と第3圧力室R23とを連通するアイドルポート117が形成されており、また第2圧力室R22の排出ポート114は排出油圧配管47を介してリザーバタンク25に連結されている。
【0108】
なお、シリンダ101と入力ピストン102と加圧ピストン103等との要部には、Oリング115及びワンウェイシール116が装着されており、油圧の漏洩を防止している。
【0109】
ブレーキペダル14には、ストロークセンサ52と踏力センサ53と踏力スイッチ54とストップランプスイッチ55とが設けられ、各検出結果をECU51に送信している。また、第1、第2吐出油圧配管42,44には、第1、第2圧力センサ56,57がそれぞれ設けられ、検出結果をECU51に送信している。更に、アキュムレータ27から延伸する配管26には第4圧力センサ59が設けられ、検出結果をECU51に送信している。
【0110】
上述のように構成された第2の実施の形態の車両用制動システムにて、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整する。また、ECU51は、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得し、フィードバック制御を行うことによって、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。その結果、入力ピストン102が受けるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を発生することができる。
【0111】
第2の実施の形態の制動システムは、ブレーキペダル14から入力ピストン102へ作用する操作力を吸収する操作力吸収手段を有しており、押圧力(つまり操作力)を加圧ピストン103に伝達不能とすると共に、ブレーキペダル14に操作反力として作用させないようにしている。本実施の形態では、この操作力吸収手段を、第2圧力室R22と排出ポート114とから構成し、シリンダ101内の油路面積A21に対して、第2圧力室R22の油圧を受ける入力ピストン102の先端部の第1受圧面積A22と、第1圧力室R21の油圧を受ける加圧ピストン103の基端部の第2受圧面積A23とを均等に設定している。そして、異常発生時には、ブレーキペダル14からの操作力により入力ピストン102が加圧ピストン103を直接押圧することで、制動油圧を発生させるようにしている。
【0112】
具体的には、乗員がブレーキペダル14を踏むと、そのブレーキペダル14の操作力により入力ピストン102が前進する。このとき、入力ピストン102と加圧ピストン103との間には所定のストロークS0が設けられているため、入力ピストン102は加圧ピストン103を直接押圧することはない。入力ピストン102が前進するに伴い、第2圧力室R22の作動油が排出ポート114および排出油圧配管47を通してリザーバタンク25に排出されると共に、第1圧力室R21の作動油が各供給ポート109,110および第1油圧排出配管31を通してリザーバタンク25に排出される。よって、入力ピストン102がフリー状態となって、第1圧力室R21は入力ピストン102を介してブレーキペダル14に反力を作用させることはない。また、入力ピストン102により加圧ピストン103が押圧されるまでは、アイドルポート117により第2圧力室R22と第3圧力室R23とが連通しているため、第3圧力室R23の作動油がアイドルポート117および排出油圧配管47を通してリザーバタンク25に排出されることとなり、制動油圧を発生させることはない。
【0113】
そして、ブレーキペダル14に対して反力を付与する油圧系統に異常が発生したときには、乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン102が所定のストロークS0だけ前進する。すると、入力ピストン102の凹部106の底面が加圧ピストン103を直接押圧することとなり、所定の制動油圧Pr,PfをABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用させることができる。
【0114】
第2の実施の形態の車両用制動システムにあっては、シリンダ101内に入力ピストン102と加圧ピストン103とを軸方向に沿って移動自在に支持しているとともに、加圧ピストン103の一部を入力ピストン102に嵌合しており、また入力ピストン102にブレーキペダル14を連結している。これにより、第1圧力室R21の供給ポート109,110に制御油圧を供給可能とすると共に、第2圧力室R22の作動油を排出ポート114から排出可能とする一方、各圧力室R21,R23の吐出ポート112,113から制動油圧を吐出可能としている。
【0115】
動作中、ECU51は、目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R21に制御油圧を作用させることで、第1圧力室R21から所定の制動油圧Prを吐出すると共に、第3圧力室R23から所定の制動油圧Pfを吐出し、この制動油圧Pr,PfをABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0116】
このブレーキペダル14の操作により入力ピストン102が前進したとき、第2圧力室R22の作動油が排出ポート114から排出されることで、入力ピストン102は制御油圧を受けることはない。そのようにして、反力スプリング87によるスプリング力を反力として入力ピストン102を介してブレーキペダル14に伝達することとなり、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0117】
(第3の実施の形態)
図8A乃至図8Cは、本発明の第3の実施の形態に係る車両用制動システムによる故障判定制御を表すフローチャート、図9は、ストロークセンサ故障判定制御を表すフローチャート、図10は、圧力センサ故障判定制御ルーチンを表すフローチャート、図11は、リニア弁故障検知制御ルーチンを表すフローチャート、図12は、反力機構故障判定制御ルーチンを表すフローチャート、図13は、反力機構故障判定を説明するためのペダルストロークに対する油圧及び反力を表すグラフ、図14は、制動油圧異常判定制御ルーチンを表すフローチャート、図15は、前輪への油圧経路における失陥判定制御ルーチンを表すフローチャート、図16は、後輪への油圧経路における失陥判定制御ルーチンを表すフローチャート、図17は、入力ピストンと加圧ピストンとの接触判定制御ルーチンを表すフローチャート、図18は、圧力センサの出力間ずれ判定制御ルーチンを表すフローチャート、図19は、踏力スイッチ及び反力圧力センサの比較異常判定制御ルーチンを表すフローチャート、図20は、第1圧力室から反力室への漏れ判定制御ルーチンを表すフローチャート、図21は、反力圧力センサ故障判定時の反力油圧設定を説明するためのグラフ、図22は、踏力スイッチ及び反力圧力センサの比較異常判定時の反力油圧設定を説明するためのグラフ、図23は、前輪への油圧経路における失陥検出時の反力油圧設定を説明するためのグラフ、図24は、後輪への油圧経路における失陥検出時の反力油圧設定を説明するためのグラフである。
【0118】
なお、第3の実施の形態にて、車両用制動システムにおける全体構成は、上述した第1の参考例のそれとほぼ同様である。よって、図1を用いて第3の実施の形態について説明すると共に、この第1の参考例で説明したものと同様の構成および/または機能を有する要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0119】
第3の実施の形態の車両用制動システムにおける制動力制御及び反力制御、並びに故障判定制御において、図8Aに示すように、ステップS11では、ペダルストロークSpを検出するストロークセンサ52の故障判定を行い、ステップS12では、反力室R4に供給される反力油圧Pvを検出する第3圧力センサ58の故障判定を行い、ステップS13では、各リニア弁30,32,35,37の故障検知判定を行う。
【0120】
ステップS11のストロークセンサ52の故障判定では、図9のステップS001において、ストロークセンサ52自体のセンサ1の出力とセンサ2の出力とが同じかどうかが判定される。ここで、センサ1の出力とセンサ2の出力とが同じであると判定された場合、ステップS002において、ストロークセンサ52は正常であると判定される一方、センサ1の出力とセンサ2との出力が同じでないと判定された場合、ステップS003において、ストロークセンサ52は故障していると判定される。
【0121】
また、ステップS12の第3圧力センサ58の故障判定では、図10のステップ011において、第3圧力センサ58自体のセンサ1の出力とセンサ2の出力とが同じかどうかが判定される。ここで、センサ1の出力とセンサ2の出力とが同じであると判定された場合、ステップS012において、第3圧力センサ58は正常であると判定される一方、センサ1の出力とセンサ2の出力とが同じでないと判定された場合、ステップS013において、第3圧力センサ58は故障していると判定される。
【0122】
また、ステップS13のリニア弁30,32,35,37の故障検知判定では、図11に示すように、ステップS021において、車両が停止中かどうか、すなわち車両が停止状態にあるかが判定され、ステップS022において、制動システムが作動中かどうかが判定される。より具体的には、ECU51は車輪速センサ60の検出結果に基づいて車両が停止中かどうかを判定し、ストップランプスイッチ55のON/OFF信号により制動システムが作動中かどうかを判定する。そして、ステップS021において車両が停止中でないと判定されたり、ステップS022において制動システムが作動中であると判定された場合、図11のルーチンは終了する。一方、ステップS021において車両が停止中であると判定され、ステップS022において制動システムが非作動中であると判定された場合、ステップS023以降で第3、第4リニア弁35,37の故障検知判定が実行される。
【0123】
ステップS023では、第3リニア弁35を開放して第4リニア弁37を閉止することで、反力室R4の反力油圧Pvを故障チェック圧Pcheckまで加圧する。この場合、第3圧力センサ58により検出される反力油圧Pvが故障チェック圧Pcheckと等しくなるように第3リニア弁35を制御する。そして、反力油圧Pvが故障チェック圧Pcheckと等しくなったら、ステップS024にて、第3リニア弁35及び第4リニア弁37を閉止することで、反力室R4の反力油圧Pvを維持し、ステップS025にて、その圧力変化量が予め設定された規定値よりも少ないかどうかを判定する。ここで、反力室R4における反力油圧Pvの圧力変化量が規定値よりも少なければ、ステップS026にて、リニア弁35,37は正常であると判定する。一方、反力室R4における反力油圧Pvの圧力変化量が規定値以上であると、ステップS027にて、リニア弁35,37は異常であると判定し、ステップS028にて、警告ランプを点灯して乗員に知らせる。
【0124】
なお、図11のフローチャートを参照して第3、第4リニア弁35,37の故障検知処理について説明したが、第1、第2リニア弁30,32の故障もほぼ同様にして検知される。
【0125】
このように各センサ52,58の故障検知処理と各リニア弁30,32,35,37の故障検知処理が完了すると、図8Aに示すように、ステップS14にて、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpを取得し、ステップS15にて、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prと、第2圧力センサ57が検出した制動油圧Pfと、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvとを取得する。そして、ステップS16にて、踏力スイッチ54のON/OFF信号を取得する。
【0126】
続いて、ステップS17では、ブレーキペダル14に操作反力を付与する反力機構の故障判定を行い、ステップS18では、制動油圧の故障判定を行う。また、ステップS19にて、前輪への油圧経路における失陥判定を行い、ステップS20にて、後輪への油圧経路における失陥判定を行う。
【0127】
ステップS17において反力機構の故障を判定する場合、図12のステップS031にて、踏力スイッチ54がONされているかどうかが判定され、踏力スイッチ54がOFF状態であれば、図12のルーチンは終了する。この踏力スイッチ54は、踏力Fpが所定踏力Fp0を超えたときにOFFからONに切り換わるものである。そして、ここで踏力スイッチ54がONされたら、ステップS032にて、ペダルストロークSpがストローク下限値Sminより小さいかどうかを判定し、ステップS033にて、ペダルストロックSpがストローク上限値Smaxより大きいかどうかを判定する。
【0128】
そして、ステップS032で、図13に実線で示される反力Fpのように、ペダルストロークSpがストローク下限値Smin以上であり、ステップS033で、ペダルストロークSpがストローク上限値Smax以下であると判定されたら、ステップS034にて、反力正常と判定する。一方、ステップS032で、図13に点線で示される反力Fp1のように、ペダルストロークSpがストローク下限値Sminより小さかったり、ステップS033で、図13に点線で表す反力Fp2のように、ペダルストロークSpがストローク上限値Smaxより大きいと判定されたときには、ステップS035にて、反力異常と判定し、ステップS036にて、警告ランプを点灯して乗員に知らせる。
【0129】
なお、上述した反力機構の故障判定処理では、踏力スイッチ54がONされたときのペダルストロークSpにより反力の異常を判定したが、図13に示すように、ペダルストロークS2のときに、踏力センサ53が検出した踏力Fpが反力下限値Fmin以上で、且つ、反力上限値Fmax以下であるときに、反力正常と判定するようにしてもよい。
【0130】
また、ステップS18において制動油圧の故障を判定する上では、図14に示すように、ステップS041にて、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prが、目標出力油圧Prtに予め設定された設定値α1を加算した値より大きいかどうかが判定され、ステップS042にて、この制動油圧Prが目標出力油圧Prtから予め設定された設定値α1を減算した値より小さいかどうかが判定される。そして、ステップS041において、制動油圧Prが目標出力油圧Prtに設定値α1を加算した値以下と判定され、ステップS42において、制動油圧Prが目標出力油圧Prtから設定値α1を減算した値以上であると判定されたら、ステップS043にて、制動油圧が正常であると判定される。一方、ステップS041において、制動油圧Prが目標出力油圧Prtに設定値α1を加算した値より大きいと判定され、ステップS042において、制動油圧Prが目標出力油圧Prtから設定値α1を減算した値より小さいと判定されたら、ステップS044にて、制動油圧が異常であると判定され、ステップS045にて、警告ランプが点灯されて乗員に通知される。
【0131】
ステップS19において前輪への油圧経路における失陥を判定する上では、図15のステップS051にて、第2圧力センサ57が検出した制動油圧Pfが、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prから予め設定された設定値α2を減算した値より小さいかどうかが判定される。ここで、制動油圧Pfが制動油圧Prから設定値α2を減算した値より小さいと判定されたら、ステップS052にて、前輪への油圧経路において失陥があると判定される。即ち、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44を通ってABS40に延伸する油圧経路が失陥したときには、制動油圧Pfが低下することとなる。よって、制動油圧Prと制動油圧Pfとを比較することで、制動油圧Pfの低下、つまり、前輪への油圧経路における失陥を検出することができる。
【0132】
ステップS20において後輪への油圧経路における失陥を判定する上では、図16のステップS061において、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prが、目標出力油圧Prtから予め設定された設定値α3を減算した値より小さいかどうかが判定される。ここで、制動油圧Prが目標出力油圧Prtから設定値α3を減算した値より小さいと判定されたら、ステップS062において、後輪への油圧経路において失陥があると判定される。即ち、第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42を通ってABS40に延伸する油圧経路が失陥したときには、制動油圧Prが低下する。よって、制動油圧Prと目標出力油圧Prtとを比較することで、制動油圧Prの低下、つまり、後輪への油圧経路における失陥を検出することができる。
【0133】
更に、図8Aに示すように、ステップS21にて、入力ピストン12と加圧ピストン13とが接触されているか否かが判定され、ステップS22にて、第1、第2圧力センサ56,57の出力にずれがあるか否かが判定される。また、ステップS23にて、踏力スイッチ54と第3圧力センサ58との比較結果において異常があるか否かが判定され、ステップS24にて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油の漏れがあるか否かが判定される。
【0134】
ステップS21の入力ピストン12と加圧ピストン13との接触の有無を判定する場合、図17のステップS071にて、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpが初期ストロークS0(すなわち、入力ピストン12と加圧ピストン13との間隔)より小さいかどうかが判定される。ここで、ステップS071においてペダルストロークSpが初期ストロークS0より小さいと判定されると、ステップS072にて、各ピストン12,13が非接触状態にあると判定される。一方、ペダルストロークSpが初期ストロークS0以上であると判定されると、ステップS073にて、各ピストン12,13が接触状態にあると判定される。
【0135】
ステップS22において第1、第2圧力センサ56,57間の出力のずれを判定する場合、図18のステップS081において2系統の作動油、すなわち制動油圧Prと制動油圧Pfとが等圧であり、且つ予め設定された所定圧以上であるか否かが判定される。また、ステップS081において、上述したステップS21の判定結果に基づき各ピストン12,13が離間しているか(非接触状態にあるか)どうかを判定する。ここで、制動油圧Prと制動油圧Pfとが等圧で、且つ、所定圧以上で、各ピストン12,13が非接触状態にあるときは、ステップS082にて、第1、第2圧力センサ56,57が正常であると判定する。一方、制動油圧Prと制動油圧Pfとが等圧でなかったり、所定圧より低かったり、各ピストン12,13が接触状態にあるときは、ステップS083にて、制動油圧Prと制動油圧Pfとの間に差があり、各ピストン12,13が離間しているか(すなわち、各ピストン12,13が非接触状態にあるか)どうかを判定する。ここで、制動油圧Prと制動油圧Pfとの間に差があり、且つ、各ピストン12,13が非接触状態にあれば、ステップS084にて、第1、第2圧力センサ56,57が異常であると判定し、ステップS085にて、警告ランプを点灯して乗員に知らせる。
【0136】
ステップS23において踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との比較結果において異常があるか否かを判定する場合、図19のステップS091にて、踏力スイッチ54がONされているかどうかが判定される。その結果、踏力スイッチ54がOFF状態であれば、図19のルーチンは終了する。この踏力スイッチ54は、踏力Fpが所定踏力Fp0を超えたときにOFFからONに切り換わる。踏力スイッチ54がONされたとき、ステップS092にて、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvにスプリング力(k0×A3)を加算した値が踏力Fpの下限値Fminより大きく、上限値Fmaxよりも小さいかどうか、つまり、反力油圧Pvが所定の領域にあるかどうかが判定される。ここで、反力油圧Pvが所定の領域にあれば、ステップS093にて、踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が正常であると判定され、反力油圧Pvが所定の領域になければ、ステップS094にて、踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が異常であると判定される。
【0137】
ステップS24において第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れがあるか否かを判定する場合、図20のステップS101にて、反力制御用の第4リニア弁37の開度が大(すなわち、ノーマルオープンであるために電流値が小)であるかどうかが判定される。ここで、第4リニア弁37の開度が大でなければ、ステップS102にて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが無いと判定される。一方、ステップS101にて、第4リニア弁37の開度が大であるとき、ステップS103にて、油圧制御用の第1リニア弁30の開度が大(ノーマルクローズであるために電流値が大)であるかどうかが判定される。ここで、第1リニア弁30の開度が大であれば、ステップS104にて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有ると判定する。
【0138】
つまり、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有ると、反力室R4の油圧が上昇して目標反力油圧Pvtよりも高くなってしまうため、第4リニア弁37の開度を大きくする必要がある。そして、第1圧力室R1の作動油が反力室R4へ流れると、第1圧力室R1の圧力が低下して第1リニア弁30の開度を大きくする。そのため、第4リニア弁37の開度と第1リニア弁30の開度とに基づいて第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れを検出することができる。
【0139】
このように各種の欠陥または異常が判定された場合、以下に説明するように各種の対応策がとられる。図8Bに示すように、ステップS25では、前述したステップS12における判定の結果に基づいて、第3圧力センサ58が故障しているかどうかが判定される。第3圧力センサ58が正常であった場合、ECU51はステップS26に移行する。ステップS26では、ステップS23における判定結果に基づいて、踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が異常であるかどうかが判定される。その関係が正常であった場合、ECU51はステップS27に移行する。ステップS27では、ステップS11における判定結果に基づいて、ストロークセンサ52が異常であるかどうかが判定される。ストロークセンサ52が正常であった場合、図8Cに示すように、ECU51はステップS28に移行する。ステップS28では、ステップS24の判定結果に基づいて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有るかどうかが判定される。漏れが無ければ、ECU51はステップS29に移行する。
【0140】
そして、このステップS29にて、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて、予め設定されたマップを用いて目標出力油圧Prtを演算する。
【0141】
一方、ステップS25にて、第3圧力センサ58が故障していると判定されたときは、ECU51はステップS30に移行する。この第3圧力センサ58が故障していた場合、目標反力油圧Pvtに対して実際の反力油圧Pvをフィードバックできないため、踏力センサ53が検出した踏力Fpに基づいて目標反力油圧Pvtが演算される。即ち、図21に示すように、ブレーキペダル14が操作される初期は入力ピストン12と加圧ピストン13とが非接触状態にあるが、ペダルストロークSpが初期ストロークS0になると、入力ピストン12が加圧ピストン13に当接して接触状態となり、踏力Fpが発生する。従って、ECU51は、入力ピストン12が加圧ピストン13に接触した後に発生した踏力Fpに基づいて目標反力油圧Pvtを設定する。この場合、ブレーキペダル14の急激または突然な操作による反力の増大を抑制するため、上限値Pvmaxを設定している。
【0142】
また、ステップS26にて、踏力スイッチ54(踏力センサ53)の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が異常であると判定された場合、ECU51はステップS31に移行する。踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が異常であると判定された場合、目標反力油圧Pvtに対して実際の反力油圧Pvをフィードバックできないばかりか、踏力センサ53が検出した踏力Fpに基づいた目標反力油圧Pvtの演算もできない。よって、入力ピストン12が加圧ピストン13に接触した後に発生した制動油圧Prに基づいて目標反力油圧Pvtを演算する。この場合、図22のマップに示すように、目標反力油圧Pvtの勾配上限値θmaxを設けると共に、上限値Pvmaxを設定する。
【0143】
ステップS27にて、ストロークセンサ52に故障があると判定された場合、ECU51は、ステップS32に移行する。ストロークセンサ52が故障していた場合、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを演算することができない。この場合、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Pfから所定値ΔPを減算して目標出力油圧Prtを設定する。また、制動油圧Prを制動油圧Pfと等しくなるように設定することも可能である。しかしながら、この場合、加圧ピストン13はサーボ制御によって自動的に前進されるので、乗員に不快感を与える虞がある。よって、目標出力圧PrtはPfよりΔP(センサにおける誤差等に基づく圧力)だけ小さくなるような値に設定される。
【0144】
ステップS28にて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有ると判定された場合、ECU51はステップS33に移行する。第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有ると、第1圧力室R1の作動油が反力室R4および第2油圧排出配管36を通してリザーバタンク25に排出されてしまうため、第4リニア弁37を閉止し、踏力センサ53が検出した踏力Fpに基づいて目標反力油圧Pvtをマップを用いて演算する。
【0145】
また、ステップS34では、ステップS19における前輪への油圧経路における欠陥の有無の判定結果と、ステップS20における後輪への油圧経路における欠陥の有無の判定結果とに基づき、制動油圧を供給する油圧系統に欠陥を検出したか否かが判定される。ここで、油圧系統において欠陥を検出しなかった場合、ステップS35にて、ペダルストロークSpに基づいて予め設定されたマップを用いて目標反力油圧Pvtが演算される。なお、制動油圧Pf,Prの関係から第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prに基づいて目標反力油圧Pvtを設定してもよい。
【0146】
一方、ステップS34にて、油圧系統において欠陥を検出した場合、ECU51はステップS36に移行する。制動油圧を前輪へ作用させる油圧経路において欠陥が発生した際、制動油圧Prに対して制動油圧Pfが低下するので、図23に示されるように、両制動油圧Pr,Pfの差により前輪への油圧経路の欠陥を検出する。前輪への油圧経路の失陥が発生すると、後輪の制動装置だけが作動して制動力が発生し、車両の全体の制動力が若干低下する。よって、この場合、減速度と反力とが一致するように目標反力油圧Pvtを比較的低く設定する。一方、制動油圧を後輪へ作用するための油圧経路に欠陥が発生した際、制動油圧Prは目標出力油圧Prtと比較して減少されるので、図24に示すように、両油圧Prt,Prの差に基づき後輪への油圧経路の欠陥が検出される。後輪への油圧経路に欠陥が発生した場合、前輪の制動装置だけが作動して制動力を発生するので、車両の全体の制動力が若干低下する。よって、この場合、減速度と反力とが一致するように目標反力油圧Pvtを比較的低く設定する。
【0147】
以上のように目標出力油圧Prtと目標反力油圧Pvtとが設定されると、ECU51は、ステップS37にて、演算した目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁30,32の開度を調整すると共に、算出した目標反力油圧Pvtに基づいて第3、第4リニア弁35,37の開度を調整する。すると、第1圧力室R1から制動油圧Prが吐出されると共に、第3圧力室R3から制動油圧Pfが吐出される。そして、この制動油圧Pr,PfがABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用することで、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力が発生する。また、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力が付与される。
【0148】
なお、上述したステップS13においてリニア弁30,32,35,37のいずれか一つの欠陥が検知された場合、またはステップS17において反力機構の欠陥が検知された場合、またはステップS18において制動油圧の異常が検知された場合、またはステップS22によって第1圧力センサ56の出力と第2圧力センサ57の出力との間に差があった場合、油圧制御である制動力制御及び反力制御ができない。そのような場合、乗員がブレーキペダル14を操作して発生する操作力を入力ピストン12から加圧ピストン13に直接伝達することで、制動油圧Pf,Prを発生させ、ABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLを駆動して前輪FR,FL及び後輪RR,RLに制動力を付与する。
【0149】
なお、第3の実施の形態では、第1の参考例の車両用制動システムに関連する故障検出制御処理および異常検出制御処理について詳細に説明したが、第1〜第2の実施の形態の車両用制動システムにも本実施の形態の故障判定制御を適用することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ操作量に応じて車両の付与する制動力を電子制御する車両用制動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用の電子制動システムとして、ブレーキペダルの踏み込みに応じて、各車輪について制動装置の制動力を電子制御するもの、つまり、この制動装置を駆動するホイールシリンダへ供給する油圧を電気的に制御するものが知られている。このような制動装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この公報に記載された車両用制動制御システムでは、車両の操作者または運転者がブレーキペダルを操作すると、マスタシリンダがブレーキペダルの操作量に応じた油圧を発生すると共に、作動油の一部がストロークシミュレータに流れ込み、ブレーキペダルの踏力(すなわち、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれた際の力)に応じたブレーキペダルの操作量(例えばペダルストローク)が制御される。一方、その制動制御システムは、ブレーキECUが検出したペダルストロークに応じて車両の目標減速度を設定し、各車輪に付与する制動力分配を決定し、各ホイールシリンダに所定の液圧を付与するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−243983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の車両用制動制御システムにあっては、ブレーキペダルの操作量に応じた油圧を発生するマスタシリンダに対して、作動油の一部が流れ込むことでブレーキペダルの操作量を制御するストロークシミュレータを設けている。また、マスタシリンダにマスタカット弁を介して四つの車輪に対応する4系統のホイールシリンダに供給する作動油を加圧する加圧機構が設けられている。そのような加圧機構は各車輪のホイールシリンダに対して設けられていることから、油圧系統が複雑で製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって、本発明は、単純な構造を有するとともに、低い製造コストで製造することの可能な車両用制動システムを提供することを目的とする。
【0007】
上記および/またはその他の目的を達成するために、本発明にかかる車両用制動システムは、(a)シリンダ内に軸方向に沿って移動自在に支持された入力ピストンと、(b)入力ピストンに連結された操作部と、(c)シリンダ内に入力ピストンと同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持された加圧ピストンと、(d)入力ピストンが受ける操作部の操作量に応じた制御油圧を設定する制御油圧設定手段と、(e)制御油圧設定手段により設定された制御油圧を加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生させる制御油圧供給手段と、(f)操作部から入力ピストンに作用する操作力を吸収する操作力吸収手段と、を具える。
【0008】
通常の動作時において、本発明の第1の態様にかかる車両用制動システムは、入力ピストンが受けた操作部の操作量に応じた制御油圧を加圧ピストンに作用させることにより制動油圧を生成することが可能であるとともに、操作力吸収手段により入力ピストンに作用された操作力を吸収して操作部に作用される反力を所定値に制御する。これにより、構造が単純であり、且つ低い製造コストで製造可能な制動システムは、適切な制動力制御を行うことが可能となる。
【0009】
本発明にかかる車両用制動システムにあっては、加圧ピストンが、シリンダ内に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に入力ピストンにより押圧可能であり、入力ピストンおよび加圧ピストンのいずれか一方の少なくとも一部が他方に嵌合し、操作力吸収手段が、操作力に応じて入力ピストンが移動する際に入力ピストンと加圧ピストンとの間に配される圧力室の作動油を排出可能とすることにより操作部が作用する操作力を吸収する排出路を具える。
【0010】
通常の作動時において、本発明にかかる車両用制動システムでは、入力ピストンが受ける操作部の操作量に応じた制御油圧を加圧ピストンに作用させることにより制動油圧を生成することが可能であるとともに、操作部が作用させる操作力を圧力室からの作動油の排出を用いて吸収することにより操作部に与えられる反力を適切な値に設定する。異常が発生すると、操作部から作用される操作力が直接入力ピストンを押圧して制動油圧を発生する。これにより、構造が単純であり、且つ低い製造コストで製造可能な制動システムは、適切な制動力制御を行うことが可能となる。
【0011】
本発明にかかる車両用制動システムでは、圧力室の油圧を受ける入力ピストンの第1受圧面積と制御油圧供給手段からの制御油圧を受ける加圧ピストンの第2受圧面積とがほぼ均等になるように設定されても良い。
【0012】
本発明の一態様の車両用制動システムは、入力ピストンが受ける操作部の操作量に応じた反力を設定する反力設定手段と、反力設定手段により設定された反力を入力ピストンに作用させることで操作部に反力を発生させる反力供給手段と、を更に具える。
【0013】
本発明の一態様の車両用制動システムは、入力ピストンを介して操作部に作用される反力を発生させる反力発生手段と、異常発生時に反力発生手段によって操作部へ作用された反力を制限する反力制限手段と、を更に具える。
【0014】
本発明の一態様にかかる車両用制動システムにあっては、(g)入力ピストンが受ける操作部の操作量を検出する操作量検出手段と、(h)操作量検出手段が検出した操作量または発生した制動油圧に応じた反力油圧を設定する反力油圧設定手段と、(i)反力油圧設定手段により設定された反力油圧を入力ピストンに作用させることで操作部に反力を発生させる反力油圧供給手段と、を更に具える。
【0015】
通常の作動時において、本発明の一態様にかかる車両用制動システムでは、入力ピストンが受ける操作部の操作量に応じた制御油圧を加圧ピストンに作用させることにより制動油圧を生成することが可能であるとともに、操作部の操作量に応じた反力油圧を入力ピストンに作用させることにより操作部に作用される反力を所定値に設定することが可能であり、且つ操作部が作用する操作力を操作力吸収手段が吸収する。従って、構造が単純であり、且つ低い製造コストで製造可能な制動システムは、適切な制動力制御を行うことが可能となる。
【0016】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段は、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側と向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室とから制動油圧を吐出可能である。また、この制動システムにあっては、第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサと、第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサとを設けても良い。そして、操作量検出手段の異常時には、制御油圧設定手段は、第1圧力センサの検出圧力と第2圧力センサの検出圧力とがほぼ均等となるように制御油圧を設定しても良い。
【0017】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、入力ピストンに作用させる反力油圧を検出する第3圧力センサと、操作部に作用する反力を検出する反力検出センサとを設けても良い。また、この制動システムにおいて、前記反力油圧供給手段が、反力油圧設定手段が設定した反力油圧と第3圧力センサが検出した実際の反力油圧とがほぼ同じになるように制御されても良い。そして、第3圧力センサの異常を検出した際には、反力油圧設定手段が、反力検出センサが検出した反力に応じて反力油圧を設定しても良い。
【0018】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、操作量検出手段が検出した操作部の操作量と、操作部に作用する反力との相対関係に基づいて反力油圧供給手段の異常を検出しても良い。
【0019】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段が、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側に向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室から制動油圧を吐出可能としても良い。また、この制動システムにおいて、第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサと、第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサとを設けても良い。そして、第2圧力センサによって検出される制動油圧が第1圧力センサによって検出される制動油圧よりも予め設定された所定値以上に小さくなった場合、第3圧力室から吐出される制動油圧の吐出経路に失陥があるものと判定し、反力油圧設定手段が設定する反力油圧を減少させても良い。
【0020】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段が、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側に向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室から制動油圧を吐出可能としても良い。また、この制動システムにあっては、第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサを設けても良い。そして、第1圧力センサによって検出される制動油圧が制御油圧設定手段によって設定された制御油圧よりも予め設定された所定値以上に小さくなった場合、第1圧力室から吐出される制動油圧の吐出経路に失陥があるものと判定し、反力油圧設定手段が設定する反力油圧を減少させても良い。
【0021】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段が、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側に向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室から制動油圧を吐出可能としても良い。また、この制動システムにあっては、第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサと、第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサとを設けても良い。そして、第1圧力センサによって検出される圧力と第2圧力センサによって検出される圧力との差に基づいて入力ピストンと加圧ピストンとの位置関係を判定しても良い。
【0022】
本発明にかかる車両用制動システムでは、操作量検出手段が検出した操作部の操作量に基づいて入力ピストンと加圧ピストンとの接触状態を判定しても良い。そして、入力ピストンと加圧ピストンとが非接触状態にあり、且つ第1圧力センサによって検出される圧力と第2圧力センサによって検出される圧力との差が予め設定された所定値以上であった場合、第1圧力センサ及び前記第2圧力センサのうちの少なくとも一つが異常であると判定しても良い。
【0023】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、入力ピストンに作用させる反力油圧を検出する第3圧力センサと、操作部に作用させる反力を検出する反力検出センサとを設けても良い。第3圧力センサが検出した反力油圧と反力検出センサが検出した反力とに基づいて第3圧力センサまたは反力検出センサの異常を検出しても良い。そして、第3の圧力センサまたは反力検出センサの異常を検出した場合、反力油圧設定手段が設定する反力油圧の変化量を減少させても良い。
【0024】
本発明の一態様の車両用制動システムにあっては、制御油圧供給手段が、制御油圧を入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室または入力ピストンの他方側に配される第2圧力室に供給することで、第1圧力室と、第1圧力室が配される加圧ピストンの一方側に向かい合う加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室から制動油圧を吐出可能としても良い。また、反力油圧供給手段が、反力室から入力ピストンに反力油圧を作用させても良い。そして、反力室からの作動油の排出が抑制された際に第1圧力室に作用する制御油圧が上昇した場合、第1圧力室と反力室との間での作動油の漏洩を検出しても良い。さらに、漏洩が検出された場合、制御油圧設定手段は、操作部に作用する反力に基づいて制御油圧を設定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の第1の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図2】図2は、第1の参考例の車両用制動システムにおけるペダルストロークに対する目標出力油圧及び目標反力を表すグラフである。
【図3】図3は、第1の参考例の車両用制動システムによる制動力制御を表すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の第2の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の第3の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。
【図8A】図8Aは、本発明の第3の実施の形態に係る車両用制動システムによる故障判定制御を表すフローチャートである。
【図8B】図8Bは、本発明の第3の実施の形態に係る車両用制動システムによる故障判定制御を表すフローチャートである。
【図8C】図8Cは、本発明の第3の実施の形態に係る車両用制動システムによる故障判定制御を表すフローチャートである。
【図9】図9は、ストロークセンサの故障を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図10】図10は、圧力センサの故障を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図11】図11は、リニア弁の故障を検知する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図12】図12は、反力を与える機構の故障を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図13】図13は、反力作用機構の故障判定を説明するためのペダルストロークに対する油圧及び反力を表すグラフである。
【図14】図14は、制動油圧の異常を判定するルーチンを表すフローチャートである。
【図15】図15は、前輪への油圧経路における失陥を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図16】図16は、後輪への油圧経路における失陥を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図17】図17は、入力ピストンと加圧ピストンとの接触を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図18】図18は、圧力センサの出力間のずれを検出する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図19】図19は、踏力スイッチの出力と反力圧力センサの出力との比較結果の異常を判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図20】図20は、第1圧力室から反力室への作動油漏れを判定する制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図21】図21は、反力圧力センサの故障が検知された時の反力油圧の設定を説明するためのグラフである。
【図22】図22は、踏力スイッチの出力と反力圧力センサの出力との比較結果に異常を検出した時の反力油圧の設定を説明するためのグラフである。
【図23】図23は、前輪への油圧経路における失陥検出時の反力油圧設定を説明するためのグラフである。
【図24】図24は、後輪への油圧経路における失陥検出時の反力油圧設定を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明に係る車両用制動装置システムの参考例並びに実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの参考例や実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0027】
(第1の参考例)
図1は、本発明の第1の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図であり、図2は、第1の参考例の車両用制動システムにおけるペダルストロークに対する目標出力油圧及び目標反力を表すグラフであり、図3は、第1の参考例の車両用制動システムにおける制動力制御を表すフローチャートである。
【0028】
第1の参考例の車両用制動システムにおいて、図1に示すように、シリンダ11は、基端部が開口して先端部が閉塞した円筒形状をなし、内部に入力ピストン12と加圧ピストン13が同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されている。入力ピストン12は、シリンダ11の基端部近傍であって、シリンダ11における軸方向へ対向する側の一方に配置され加圧ピストン13は、シリンダ11の先端部近傍であって、シリンダ11の他方の側に配置されている。操作部としてのブレーキペダル14の操作ロッド15は入力ピストン12の基板部に連結されており、入力ピストン12は、車両の運転者または乗員によるブレーキペダル14の操作により操作ロッド15を介して移動可能となっている。2つの支持部材16,17は、シリンダ11内に圧入または螺合されており、支持部材16,17の外周面がシリンダ11の内周面に固定されている。入力ピストン12は、支持部材16,17によって移動可能に支持されていると共に、円盤形状のフランジ部18がシリンダ11の内周面に移動自在に支持されている。そして、入力ピストン12は、フランジ部18と支持部材16,17とが当接することでその移動ストロークが規制(すなわち、入力ピストン12のストロークが決定)されると共に、支持部材16とフランジ部18との間に張設された反力スプリング19によりフランジ部18が支持部材17に当接する位置に付勢支持されている。換言すると、フランジ部18は、通常、反力スプリング19の付勢力によって支持部材17に当接する位置に配される。
【0029】
加圧ピストン13は、図1の紙面で断面がコ字形状をなし、外周面がシリンダ11の内周面に移動自在に支持されている。そして、加圧ピストン13は、前後の端面がそれぞれシリンダ11と支持部材16とに当接することでその移動ストロークが規制されると共に、シリンダ11との間に張設された付勢スプリング20により加圧ピストン13が支持部材16に当接する位置に付勢支持されている。すなわち、加圧ピストン13は、通常、スプリング20の付勢力によって支持部材16に当接する位置に配される。従って、入力ピストン12と加圧ピストン13とは、所定間隔(ストローク)S0をもって離間した状態で保持されており、乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン12が所定ストロークS0だけ前進すると、入力ピストン12は加圧ピストン13に当接して押圧することができる。
【0030】
このようにシリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13とが同軸上に移動自在に配置されることで、入力ピストン12における移動方向一方、つまり、入力ピストン12と加圧ピストン13との間に第1圧力室R1が形成されると共に、入力ピストン12における移動方向他方、つまり、入力ピストン12のフランジ部18と支持部材17との間に第2圧力室R2が形成され、また、シリンダ11と加圧ピストン13との間に第3圧力室R3が形成されている。また、支持部材16と入力ピストン12のフランジ部18との間に反力室R4が形成されている。そして、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは、シリンダ11内に形成されたオリフィスとしての連通路21により連通されている。
【0031】
油圧ポンプ22はモータ23が駆動することで油圧を制動システムの油圧系統へ供給可能となっている。油圧ポンプ22は、配管24を介してリザーバタンク25に連結されると共に、配管26を介してアキュムレータ27に連結されている。アキュムレータ27は、第1油圧供給配管28を介して連通路21の第1供給ポート29に連結されている。第1リニア弁30は第1油圧供給配管28に配置されていると共に、第2リニア弁32は第1油圧供給配管28から配管24に連結される第1油圧排出配管31に配置されている。この第1リニア弁30と第2リニア弁32とは、流量調整式の電磁弁であり、第1リニア弁30はノーマルクローズ、第2リニア弁32はノーマルオープンとなっている。
【0032】
また、アキュムレータ27は、第2油圧供給配管33を介して反力室R4に連通する第2供給ポート34に連結されている。第3リニア弁35はこの第2油圧供給配管33に配置されていると共に、第4リニア弁37は第2油圧供給配管33を第1油圧排出配管31に連結する第2油圧排出配管36に配置されている。また、第2油圧排出配管36には第4リニア弁37を迂回してチェック弁38が配置されている。この第3リニア弁35と第4リニア弁37は、流量調整式の電磁弁であり、第3リニア弁35はノーマルクローズ、第4リニア弁37はノーマルオープンとなっている。
【0033】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置(図示略)を作動させるホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLが設けられており、ABS(Antilock Brake System)40により作動可能となっている。そして、第2圧力室R2に連通するオリフィスとしての第1吐出ポート41には第1吐出油圧配管42が連結されている。この第1吐出油圧配管42は、ABS40に連結され、後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R3に形成されたオリフィスとしての第2吐出ポート43には第2吐出油圧配管44が連結されている。この第2吐出油圧配管44は、ABS40に連結され、前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLに油圧を供給可能となっている。更に、排出油圧配管47は、第3圧力室R3に連通する第1、第2排出ポート45,46とリザーバタンク25とを接続している。
【0034】
なお、シリンダ11と入力ピストン12と加圧ピストン13等との要部には、Oリング48が装着されると共に、ワンウェイシール49が装着されており、油圧の漏洩を防止している。
【0035】
このように構成された第1の参考例の車両用制動システムにて、電子制御ユニット(ECU)51(制御油圧設定手段)は、入力ピストン12が受けるブレーキペダル14の操作量(すなわち、ペダルストローク)に応じた制御油圧を設定する。また、制動システムは、この設定された制御油圧を加圧ピストン13に作用させることで制動油圧を発生させる制御油圧供給手段を含む。そのようにして発生した制動油圧はABS40に供給され、その結果ABS40は、ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLを作動して前輪FR,FL及び後輪RR,RLに制動力を作用させるようにしている。本参考例では、制御油圧を入力ピストン12の第1圧力室R1及び第2圧力室R2に供給することで加圧ピストン13に作用させ、制動油圧を発生させるようにしている。
【0036】
また、第1の参考例では、ブレーキペダル14から入力ピストン12に作用する操作力を吸収する操作力吸収手段が提供されており、入力ピストン12の押圧力を加圧ピストン13に伝達不能とすると共に、この押圧力を操作反力としてブレーキペダル14に作用させないようにしている。本参考例ではこの操作力吸収手段は、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する連通路21と、入力ピストン12と加圧ピストン13との所定間隔S0により構成されている。操作力を操作吸収手段に吸収させるため、シリンダ11の内径の断面積A1に対して、第1圧力室R1の油圧を受ける入力ピストン12の先端部の第1受圧面積A2と、第2圧力室R2の油圧を受ける入力ピストン12のフランジ部18の第2受圧面積A3とを均等に設定している。そして、異常発生時には、ブレーキペダル14からの操作力により入力ピストン12が加圧ピストン13を直接押圧することで、制動油圧を発生させるようにしている。
【0037】
更に、ECU51(反力設定手段)は、入力ピストン12が受けたブレーキペダル14の操作量に応じた反力を設定し、この設定された反力を入力ピストン12に作用させることでブレーキペダル14に反力を発生させる(反力供給手段、反力発生手段)ようにしている。そして、異常発生時には、ブレーキペダル14への反力を制限する(反力制限手段)ことで、ブレーキペダル14の操作不能状態を回避するようにしている。
【0038】
より具体的には、ブレーキペダル14には、このブレーキペダル14のペダルストロークSpを検出するストロークセンサ52と、ブレーキペダル14が踏み込まれた際の踏力またはペダル作動力Fpを検出する踏力センサ53と、所定の踏力に応じてON/OFFする踏力スイッチ54と、踏力を検出してストップランプ(図示略)を点灯するストップランプスイッチ55が設けられており、各検出結果はECU51に出力される。また、第1吐出油圧配管42及び第2吐出油圧配管44には、それぞれ配管42の油圧を検出する第1圧力センサ56及び配管44の油圧を検出する第2圧力センサ57が設けられている。第1圧力センサ56は、第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42を通して後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLへ供給される制動油圧Prを検出し、検出結果をECU51に送信している。一方、第2圧力センサ57は、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44を通して前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLへ供給される制動油圧Pfを検出し、検出結果をECU51に送信している。
【0039】
更に、アキュムレータ27から第2供給ポート34に延伸する第2油圧供給配管33には、第3リニア弁35の下流側に位置して第3圧力センサ58が設けられており、この第3圧力センサ58は反力室R4へ供給される反力油圧Pvを検出し、検出結果をECU51に送信している。アキュムレータ27からの配管26には、第4圧力センサ59が設けられており、この第4圧力センサ59は、アキュムレータ27から各圧力室へ供給される油圧Ppを検出し、検出結果をECU51に送信している。また、前輪FR,FL及び後輪RR,RLのそれぞれに設けられた車輪速センサ60は、それぞれの車輪速を検出しており、検出した各車輪速度をECU51に送信している。
【0040】
動作中、ECU51は、図2に示すように、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整する一方、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得してフィードバック制御をおこない、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。この場合、ECU51は、(図2に示すような)ペダルストロークSpに対する目標出力油圧Prtのマップを格納しており、このマップに基づいてリニア弁30,32を制御する。ブレーキペダル14に与えられる反力Pbは、反力スプリング19によるスプリング力と反力室R4に作用する反力油圧Pvとの加算値であり、スプリング力は反力スプリング19の諸元により決まる定数または固定値となっている。従って、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標反力油圧Pvtを設定し、第3、第4リニア弁35,37の開度を調整する。また、ECU51は、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvを取得し、フィードバック制御を行うことにより目標反力油圧Pvtと反力油圧Pvとが一致するように制御している。この場合、ECU51は、(図2に示すような)ペダルストロークSpに対する目標反力油圧Pvtのマップを格納しており、このマップに基づいて各リニア弁35,37を制御する。
【0041】
ここで、制動油圧Pf,Pr、反力Fp(反力油圧Pv)との関係について説明する。制動油圧Prは、ペダルストロークSpと、制動油圧PrおよびペダルストロークSpに対して予め設定された関数マップとに基づいて設定される。なお、制動油圧Pfと制動油圧Prとはほぼ等しく、Pr=fSp(fはストロークと油圧との関数)となる。また、入力ピストン12に作用する力の釣り合いは下記に示すようになる。
A2×Pr+Sp×k0+A3×Pv=Fp+A3×Pr
Fp=(A2−A3)×Pr+k0×Sp+A3×Pv
なお、k0は、反力スプリング19のばね定数である。面積A2と面積A3とが等しくなるようにシリンダ11、入力ピストン12、および加圧ピストン13を設計した場合、反力は下記のようになる。
Fp=k0×Sp+A3×Pv
【0042】
面積A3は固定値なので、反力Pvにより踏力Fpが決まる。従って、反力Pvを制御することで踏力Fpを可変とすることができ、踏力FpとストロークSpと制動油圧Pf,Prとの関係を任意に設定することができる。
【0043】
ここで、第1の参考例の車両用制動システムによって行われる制動力制御について図3のフローチャートに基づいて説明する。制動力制御において、図3に示すように、まず、ステップS1では、ECU51が、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpを取得し、ステップS2では、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prと、第2圧力センサ57が検出した制動油圧Pfとを取得し、ステップS3では、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvを取得する。
【0044】
次に、ステップS4にて、ペダルストロークSpに基づいて予め設定されたマップを用いて目標出力油圧Prtを演算し、ステップS5にて、ペダルストロークSpに基づいて予め設定されたマップを用いて目標反力油圧Pvtを演算する。そして、ステップS6にて、算出した目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁30,32の開度を調整すると共に、算出した目標反力油圧Pvtに基づいて第3、第4リニア弁35,37の開度を調整する。このとき、ECU51は、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制動油圧Prをフィードバック的に制御すると共に、目標反力油圧Pvtと反力油圧Pvとが一致するように反力油圧Pvをフィードバック的に制御する。
【0045】
図1を参照してより具体的に説明すると、乗員がブレーキペダル14を踏むと、ブレーキペダル14に作用された操作力により入力ピストン12が前進する(すなわち、図1にて左方へ移動する)。このとき、入力ピストン12は前進するが、入力ピストン12と加圧ピストン13との間には所定のストロークS0が設けられているため、入力ピストン12は加圧ピストン13を直接押圧することはない。そのような入力ピストン12の前進に伴い、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通して第2圧力室R2に流れることとなり、入力ピストン12がフリー状態となって、第1圧力室R1は入力ピストン12を介してブレーキペダル14に反力を作用させることはない。
【0046】
乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が前進するため、ストロークセンサ52はペダルストロークSpを検出し、ECU51は、この検出されたペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定すると共に、目標反力油圧Pvtを設定する。そして、ECU51は、この目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁30,32の開度を調整し、第1圧力室R1に所定の制御油圧を作用させる。すると、この制御油圧によって第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42に所定の制動油圧Prが作用すると共に、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44に所定の制動油圧Pfが作用することとなる。そして、この制動油圧Pr,PfがABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0047】
なお、ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12が前進し、第1圧力室R1に所定の制御油圧が作用したとき、加圧ピストン13が移動して第1、第2排出ポート45,46を遮断するために第3圧力室R3が加圧されることとなる。よって、第1圧力室R1に作用する制御油圧に応じて第1圧力室R1と第3圧力室R3との油圧がバランスするので、吐出される制動油圧Pr,Pfはほぼ同等のものとなる。
【0048】
また、ECU51は、目標反力油圧Pvtに基づいて第3、第4リニア弁35,37の開度を調整し、反力室R4に所定の反力油圧を作用させる。すると、この反力油圧と反力スプリング19のスプリング力との加算値が反力Pbとして反力室R4に作用し、この反力Pbが入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達されることとなり、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた反力を付与することができる。
【0049】
ブレーキペダル14に対して反力を付与する油圧系統に異常が発生した際に乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が所定のストロークS0だけ前進し、加圧ピストン13に当接する。そして、入力ピストン12の先端部が加圧ピストン13を直接押圧することとなり、所定の制動油圧Pr,PfがABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用する。この場合、反力室R4内の作動油は、第2供給配管33から反力制限機構として機能する第4リニア弁37を通ってリザーバタンク25に排出されることとなり、ブレーキペダル14が作動不能となったり、操作力が必要以上に重くなったりすることはない。
【0050】
上記のような第1の参考例の車両用制動システムにあっては、シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13とを同軸上に軸方向に沿って移動自在に支持し、入力ピストン12にブレーキペダル14を連結している。また、入力ピストン12の軸方向に対向する両側のそれぞれに形成された圧力室R1,R2を連通路21により連通している。作動時においては、連通路21の第1供給ポート29に制御油圧が供給されると共に、入力ピストン12の反力室R4の第2供給ポート34に反力油圧が供給され、また第1および第3圧力室R1,R3の吐出ポート41,43から制動油圧が与えられる。
【0051】
上記のように構成された制動システムにより、ECU51は、ペダルストロークSpに応じた目標出力油圧Prtを設定し、この目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R1に制御油圧を作用させることで、第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42に所定の制動油圧Prを出力すると共に、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44に所定の制動油圧Pfを出力する。この制動油圧Pr,Pfは、ABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させる。
【0052】
また、このブレーキペダル14の操作により入力ピストン12が前進したとき、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通って第2圧力室R2に流動することで、入力ピストン12は制御油圧を受けることはない。この状況下においてECU51は、ペダルストロークSpに応じた目標反力油圧Pvtを設定し、この目標反力油圧Pvtに基づいて反力室R4に作用する所定の反力油圧を発生させることで、この反力油圧と反力スプリング19のスプリング力との加算値が反力Pbとして入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達されることとなる。よって、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0053】
一方、異常発生時には、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じて入力ピストン12が加圧ピストン13を直接押圧するので、制動油圧を発生させることができ、安全性を向上することができる。
【0054】
上述のような第1の参考例の車両用制動システムにあっては、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を確実に発生させることができると共に、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた反力を適正に付与することができる。その結果、本参考例の制動システムは、単純化された油圧系統または油路を有することから、簡素な構造を有するとともに、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御及び反力制御を可能とすることができる。
【0055】
また、上述のような第1の参考例の車両用制動システムにあっては、操作力吸収手段を、圧力室R1,R2を連通する連通路21および入力ピストン12と加圧ピストン13との所定間隔S0により構成しており、簡単な構成でブレーキペダル14に対する反力変動を抑制または制限することができる。この場合、第1圧力室R1の油圧を受ける入力ピストン12の第1受圧面積A2と、第2圧力室R2の油圧を受ける入力ピストン12のフランジ18の第2受圧面積A3とが均等に設定されており、ブレーキペダル14入力ピストン12に作用する操作力を確実に吸収することができる。
【0056】
更に、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する連通路21と、制動油圧を吐出する第1吐出ポート41と、第2吐出ポート43と、をオリフィスにより構成しており、ブレーキペダル14の操作速度に応じた力を入力ピストン12に反力として伝達することでき、操作性を向上することができる。
【0057】
(第2の参考例)
図4は、本発明の第2の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。なお、図4において、図1において用いられたものと同様の機能および/または構成を有する要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0058】
第2の参考例の車両用制動システムにおいて、図4に示すように、シリンダ11には入力ピストン12と加圧ピストン13とが直列をなして移動自在に支持されており、入力ピストン12には、ブレーキペダル14の操作ロッド15が連結され、反力スプリング19の付勢力によりフランジ部18が支持部材17に当接する位置に付勢支持されている。一方、加圧ピストン13は、付勢スプリング20の付勢力により支持部材16に当接する位置に付勢支持されており、加圧ピストン13と入力ピストン12とは所定の間隔(ストローク)S0をもって離間した状態で保持されている。
【0059】
シリンダ11内には、入力ピストン12と加圧ピストン13との間に第1圧力室R1が形成され、入力ピストン12のフランジ部18と支持部材17との間に第2圧力室R2が形成され、シリンダ11と加圧ピストン13との間に第3圧力室R3が形成され、支持部材16と入力ピストン12のフランジ部18との間に反力室R4が形成されている。そして、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは、入力ピストン12内に形成されたオリフィスとしての連通路61により連通されている。
【0060】
本第2の参考例では、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する連通路61を入力ピストン12内に形成しており、この連通路61は、入力ピストン12の軸に沿って形成された第1孔61aと、この第1孔61aに連通するとともに、入力ピストン12の径方向に沿って形成された第2孔61bとから構成されている。
【0061】
そして、アキュムレータ27から延伸する第1油圧供給配管28が連通路61の第1供給ポート29に連結され、この第1油圧供給配管28に第1リニア弁30が配置されると共に、第1油圧供給配管28に接続された第1油圧排出配管31に第2リニア弁32が配置されている。また、アキュムレータ27から延伸する第2油圧供給配管33が反力室R4の第2供給ポート34に連結され、この第2油圧供給配管33に第3リニア弁35が配置されると共に、第2油圧供給配管33に接続された第2油圧排出配管36に第4リニア弁37が配置されている。
【0062】
一方、第2圧力室R2の第1吐出ポート41は第1吐出油圧配管42を介してABS40に連結され、後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R3の第2吐出ポート43は第2吐出油圧配管44を介してABS40に連結され、前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLに油圧を供給可能となっている。更に、第3圧力室R3の第1、第2排出ポート45,46は排出油圧配管47を介してリザーバタンク25に連結されている。
【0063】
そして、ブレーキペダル14には、検出結果をECU51に送信するストロークセンサ52と踏力センサ53と踏力スイッチ54とストップランプスイッチ55とが設けられている。また、第1、第2吐出油圧配管42,44には、それぞれ検出結果をECU51に送信する第1、第2圧力センサ56,57が設けられている。更に、第2油圧供給配管33には、第3圧力センサ58が設けられているとともに、アキュムレータ27から延伸する配管26には第4圧力センサ59が設けられている。なお、第3圧力センサ58および第4圧力センサ59は、検出結果をECU51へ送信している。
【0064】
そのように構成された制動システムにより、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整する。また、ECU51は、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得し、フィードバック制御を行うことにより目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。また、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標反力油圧Pvtを設定し、第3、第4リニア弁35,37の開度を調整する。また、ECU51は、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvを取得し、フィードバック制御を行うことにより目標反力油圧Pvtと反力油圧Pvとが一致するように制御している。
【0065】
なお、第2の参考例の車両用制動システムの油圧制御については上述した第1の参考例のそれと同様であるため、説明は省略する。
【0066】
第2の参考例の車両用制動システムにあっては、シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13とを同軸上に軸方向に沿って移動自在に支持し、入力ピストン12にブレーキペダル14を連結している。また、2つの圧力室R1,R2を入力ピストン12内に形成した連通路61により連通して、この連通路61の第1供給ポート29に制御油圧を供給可能としている。さらに、反力室R4の第2供給ポート34に反力油圧を供給可能とする一方、各圧力室R1,R3の吐出ポート41,43から制動油圧を伝達可能としている。
【0067】
これにより、ECU51は、目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R1に制御油圧を作用させるので、第1圧力室R1から所定の制動油圧Prが供給されると共に、第3圧力室R3から所定の制動油圧Pfが供給される。その結果、乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を各輪に発生させることができる。また、ブレーキペダル14の操作により入力ピストン12が前進したとき、第1圧力室R1の作動油が連通路61を通って第2圧力室R2に流動し、入力ピストン12は制御油圧を受けない。さらに、ECU51は、目標反力油圧Pvtに基づいて反力室R4に反力油圧を作用させることで、反力Pbを入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達する。よって、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0068】
また、第2の参考例の車両用制動システムにあっては、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する連通路61を、入力ピストン12の軸に沿って形成された第1孔61aと、第1孔61aに連通するとともに、ピストン12の径方向に沿って形成された第2孔61bとから構成している。従って、入力ピストン12に対して孔加工を施すことにより第1孔61aと第2孔61bを形成するだけで連通路61を形成することができ、製造作業または工程を簡素化することができると共に、製造コストを低減することができる。
【0069】
(第3の参考例)
図5は、本発明の第3の参考例に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。なお、図5において、先の参考例で説明したものと同様の構成および/または機能を有する要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0070】
第3の参考例の車両用制動システムにおいて、図5に示すように、シリンダ11には入力ピストン12と加圧ピストン13とが直列をなして移動自在に支持されており、入力ピストン12には、ブレーキペダル14の操作ロッド15が連結されている。一方、加圧ピストン13は、入力ピストン12に当接するように付勢スプリング20により付勢されている。シリンダ11内には、入力ピストン12と加圧ピストン13との間に第1圧力室R1が形成され、入力ピストン12のフランジ部18と支持部材17との間に第2圧力室R2が形成され、シリンダ11と加圧ピストン13との間に第3圧力室R3が形成され、支持部材16と入力ピストン12のフランジ部18との間に反力室R4が形成されている。そして、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは連通路21により連通されている。
【0071】
そして、アキュムレータ27から延伸する第1油圧供給配管28が連通路21の第1供給ポート29に連結されており、この第1油圧供給配管28には第1リニア弁30が配置されると共に、第1油圧供給配管28に接続された第1油圧排出配管31には第2リニア弁32が配置されている。また、アキュムレータ27に比べて低容量のアキュムレータ71から延伸する第2油圧供給配管72が反力室R4の第2供給ポート34に連結されており、この第2油圧供給配管72と第1油圧排出配管31とを連結する第2油圧排出配管73にはリリーフ弁74が配置されている。また、第2油圧排出配管73にはリリーフ弁74を迂回するチェック弁75が配置されている。本参考例では、アキュムレータ71、第2油圧供給配管72、第2油圧排出配管73、リリーフ弁74により反力制限手段が構成されている。
【0072】
なお、反力制限手段は、上述の構成または配列に限定されるものではなく、アキュムレータ71、第2油圧供給配管72、第2油圧排出配管73、電磁弁76により構成してもよい。
【0073】
一方、第2圧力室R2の第1吐出ポート41は第1吐出油圧配管42を介してABS40に連結され、第3圧力室R3の第2吐出ポート43は第2吐出油圧配管44を介してABS40に連結されている。更に、第3圧力室R3の第1、第2排出ポート45,46は排出油圧配管47を介してリザーバタンク25に連結されている。付勢スプリング20により加圧ピストン13が入力ピストン12に当接すべく付勢される場合、第1、第2排出ポート45,46は一対のワンウェイシール49を挟んで連通している。
【0074】
ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12が前進し、加圧ピストン13を押圧するとき、第1圧力室R1の作動油は連通路21を通って第2圧力室R2に流れるため、ブレーキペダル14に反力が作用しない。また、加圧ピストン13がストロークS0だけ移動して第1、第2排出ポート45,46を遮断するまでは、第3圧力室R3の作動油は排出油圧配管47を通してリザーバタンク25に流れるため、入力ピストン12に作用する操作力は吸収され、制御油圧が発生しない。その後、加圧ピストン13がストロークS0以上移動して第1、第2排出ポート45,46を遮断し、第1圧力室R1に所定の制御油圧が作用すると、第1圧力室R1及び第3圧力室R3が加圧され、両者の油圧がバランスすることで、同等の制動油圧Pr,Pfが第1および第3圧力室R1,R3から吐出される。
【0075】
ブレーキペダル14には、ストロークセンサ52と、踏力センサ53と、踏力スイッチ54とストップランプスイッチ55とが設けられており、各検出結果をECU51に送信している。また、第1、第2吐出油圧配管42,44には、第1、第2圧力センサ56,57がそれぞれ設けられており、検出結果をECU51に送信している。更に、アキュムレータ27から延伸する配管26には第4圧力センサ59が設けられており、検出結果をECU51に送信している。
【0076】
動作中、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整する。また、ECU51は、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得し、フィードバック制御を行うことにより、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。
【0077】
上述のように構成された第3の参考例の車両用制動システムでは、乗員がブレーキペダル14を踏むことにより、ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12が前進すると、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通して第2圧力室R2に流れるため、ブレーキペダル14に反力を作用させることはない。また、ブレーキペダル14が踏まれることにより加圧ピストン13が入力ピストン12と共に前進した際、第1、第2排出ポート45,46を通して第3圧力室R3の作動油がリザーバタンク25に流れるため、制御油圧が発生しない。
【0078】
そして、入力ピストン12及び加圧ピストン13がストロークS0以上移動すると、ECU51は、ペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定する。そして、ECU51は、この目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁30,32の開度を調整し、第1圧力室R1に制御油圧を作用させる。すると、作用された制御油圧によって第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42に所定の制動油圧Prが作用すると共に、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44に所定の制動油圧Pfが作用することとなる。そして、この制動油圧Pr,PfがABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0079】
また、アキュムレータ71の油圧は第2油圧供給配管72を通して常時反力室R4に作用している。ブレーキペダル14の操作に応じて入力ピストン12が移動すると、反力室R4が加圧されるので、反力室R4の反力Pbが上昇する。そして、この反力Pbが入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達されることとなり、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた反力を付与することができる。
【0080】
そして、ブレーキペダル14に対して反力を付与する油圧系統に異常が発生した際、乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が加圧ピストン13を直接押圧し、所定の制動油圧Pr,PfをABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用させることができる。この場合、反力室R4内の作動油は、第2油圧供給配管72およびリリーフ弁74または電磁弁76を通ってリザーバタンク25に排出されることとなり、ブレーキペダル14が作動不能となったり、操作力が必要以上に重くなったりすることはない。
【0081】
第3の参考例の車両用制動システムにあっては、シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13を同軸上に軸方向に沿って互いに接触した状態で移動自在に支持するとともに、入力ピストン12にブレーキペダル14を連結している。また、2つの圧力室R1,R2を連通路21により連通している。このような構成により、連通路21の第1供給ポート29に制御油圧を供給可能とすると共に、入力ピストン12の反力室R4の第2供給ポート34に反力油圧を供給可能とする一方、各圧力室R1,R3の吐出ポート41,43から制動油圧を吐出可能としている。
【0082】
動作時には、ECU51は、目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R1に作用する制御油圧を発生させることで、第1圧力室R1から所定の制動油圧Prを吐出すると共に、第3圧力室R3から所定の制動油圧Pfを吐出することができ、乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を各輪について発生させることができる。また、ブレーキペダル14の操作により入力ピストン12が前進したとき、第1圧力室R1の作動油は連通路21を通って第2圧力室R2に流動するため、入力ピストン12が制御油圧を受けることはない。さらに、ECU51は、目標反力油圧Pvtに基づいて反力室R4に作用する所定の反力油圧を発生させることで、反力Pbを入力ピストン12を介してブレーキペダル14に伝達する。よって、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0083】
また、入力ピストン12と加圧ピストン13とを接触状態で維持する第3の参考例の車両用制動システムにあっては、ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12及び加圧ピストン13が前進する際、この加圧ピストン13がストロークS0だけ移動して第1、第2排出ポート45,46を遮断するまで、第3圧力室R3の作動油をリザーバタンク25に排出するようにしている。
【0084】
従って、乗員がブレーキペダル14を踏んでから、入力ピストン12及び加圧ピストン13がストロークS0以上移動するまでの間、第3圧力室R3の作動油がリザーバタンク25に排出されるため、この期間に制動油圧が発生することはなく、制動油圧に応じた反力が入力ピストン12からブレーキペダル14に伝わることを防止することができる。
【0085】
(第1の実施の形態)
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。なお、図6において、先の参考例で説明したものと同様の構成および/または機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0086】
第1の実施の形態の車両用制動システムにおいて、図6に示すように、シリンダ81には、入力ピストン82と加圧ピストン83とが同軸上に軸方向に沿って移動自在に支持されており、入力ピストン82の一部が加圧ピストン83に嵌合する。また、入力ピストン82には、ブレーキペダル14の操作ロッド15が連結されている。さらに、支持部材84は、その外周面がシリンダ81の内周面に固定されるように、シリンダ81内に圧入または螺合されている。入力ピストン82は、支持部材84によって移動自在に支持されている一方、フランジ部85がシリンダ81に固定されたケース86に当接することでその移動ストロークが規制(すなわち、入力ピストン82のストロークが決定)される。入力ピストン82のフランジ部85は、支持部材84とケース86との間に張設された反力スプリング87によりケース86に当接すべく付勢支持されている。
【0087】
支持部材88は、その外周面がシリンダ81の内周面に固定されるようにシリンダ81内に圧入または螺合されている。加圧ピストン83は、支持部材88により移動可能に支持されており、そのフランジ部89はシリンダ81の内周面に移動自在に支持されている。また、加圧ピストン83は凹部90を有しており、入力ピストン82の先端部が嵌合している。加圧ピストン83は、その先端部がシリンダ81に当接すると共に、フランジ部89が支持部材84に当接することで、軸方向の移動が規制(すなわち、加圧ピストン83のストロークが決定)される。加圧ピストン83は、ピストン83とシリンダ81との間に張設された付勢スプリング91により、支持部材84に当接すべく付勢支持されている。その結果、入力ピストン82の先端部と加圧ピストン83の凹部90の底面とは、所定間隔(ストローク)S0をもって離間している。乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン82が所定ストロークS0だけ前進すると、入力ピストン82は加圧ピストン83に当接し、そのピストン83を押圧する。
【0088】
シリンダ81内には、入力ピストン82と加圧ピストン83との間に第1圧力室R11が形成され、加圧ピストン83のフランジ部89と支持部材84との間に第2圧力室R12が形成され、シリンダ81と加圧ピストン83との間に第3圧力室R13が形成され、支持部材88と加圧ピストン83のフランジ部89との間に第4圧力室R14が形成されている。そして、第1圧力室R11と第4圧力室R14とは、貫通孔92により連通されている。
【0089】
アキュムレータ27から延伸する第1油圧供給配管28は第2圧力室R12の供給ポート93に連結されている。そして、この第1油圧供給配管28には第1リニア弁30が配置されると共に、第1油圧供給配管28に接続された第1油圧排出配管31には第2リニア弁32が配置されている。また、第2圧力室R12の第1吐出ポート94は第1吐出油圧配管42を介してABS40に連結されており、後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R13の第2吐出ポート95は第2吐出油圧配管44を介してABS40に連結されており、前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLに油圧を供給可能となっている。更に、第3圧力室R13の排出ポート96は排出油圧配管47を介してリザーバタンク25に連結されている。
【0090】
なお、シリンダ81と入力ピストン82と加圧ピストン83等の要部とには、Oリング97が装着されると共に、ワンウェイシール98が装着されており、油圧の漏洩を防止している。
【0091】
そして、ブレーキペダル14には、ストロークセンサ52と踏力センサ53と踏力スイッチ54とストップランプスイッチ55とが設けられており、それらは各検出結果をECU51に送信している。また、第1、第2吐出油圧配管42,44には、第1、第2圧力センサ56,57がそれぞれ設けられており、検出結果をECU51に送信している。更に、アキュムレータ27から延伸する配管26には第4圧力センサ59が設けられており、検出結果をECU51に送信している。
【0092】
上述のように構成された第1の実施の形態の車両用制動システムにおいて、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整している。また、ECU51は、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得し、フィードバック制御を行うことによって目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。そのようにして、制動システムは、入力ピストン82が受けるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を発生させることができる。
【0093】
また、第1の実施の形態の車両用制動システムは、ブレーキペダル14から入力ピストン82に作用する操作力を吸収し、押圧力(つまり操作力)を加圧ピストン83に伝達不能とすると共に、ブレーキペダル14に操作反力として作用させないようにするための操作力吸収手段を有している。なお、本実施の形態では、この操作力吸収手段は、第1圧力室R11と貫通孔92と排出ポート96とにより構成されており、シリンダ81の内径の油路面積A11に対して、第1圧力室R11の油圧を受ける入力ピストン82の先端部の第1受圧面積A12と、第2圧力室R12の油圧を受ける加圧ピストン83のフランジ部89の第2受圧面積A13とを均等に設定している。そして、異常発生時には、ブレーキペダル14からの操作力により入力ピストン82が加圧ピストン83を直接押圧することで、制動油圧を発生させるようにしている。
【0094】
具体的には、乗員がブレーキペダル14を踏むと、ブレーキペダル14からの操作力により入力ピストン82が前進する。このとき、入力ピストン82は、入力ピストン82と加圧ピストン83との間に所定のストロークS0が設けられているため、加圧ピストン83を直接押圧することはなく、第1圧力室R11の作動油が貫通孔92から第4圧力室R14に流れ、更に排出ポート96および排出油圧配管47を通してリザーバタンク25に排出される。その結果、入力ピストン82がフリー状態となって、第1圧力室R11は入力ピストン82を介してブレーキペダル14に反力を作用させることはない。
【0095】
ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン82が前進し、第2圧力室R12に所定の制御油圧が作用した際、加圧ピストン83が移動して排出ポート96を遮断するため、第3圧力室R13は加圧されることとなる。第2圧力室R12に作用する制御油圧に応じて第3圧力室R3の油圧がバランスすることで、吐出される制動油圧Pr,Pfはほぼ同等のものとなる。
【0096】
ブレーキペダル14に対して反力を付与する油圧系統に異常が発生した場合、乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン82が所定のストロークS0だけ前進し、その後入力ピストン82の先端部が加圧ピストン83を直接押圧することとなり、所定の制動油圧Pr,PfがABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用する。
【0097】
このように第1の実施の形態の車両用制動システムにあっては、シリンダ81内に入力ピストン82と加圧ピストン83とを軸方向に沿って移動自在に支持するとともに入力ピストン82の一部を加圧ピストン83に嵌合し、また入力ピストン82にブレーキペダル14を連結している。これにより、制御油圧が第2圧力室R12の第1供給ポート93に供給可能になると共に、第1圧力室R11の作動油が貫通孔92及び第4圧力室R14を介して排出ポート96から排出可能になる一方、制御油圧が第2および第3圧力室R12,R13の吐出ポート94,95から吐出可能となっている。
【0098】
動作中、ECU51は、ペダルストロークSpに応じた目標出力油圧Prtを設定し、この目標出力油圧Prtに基づいて第2圧力室R12に制御油圧を作用させることで、第2圧力室R12から第1吐出油圧配管42に所定の制動油圧Prを吐出すると共に、第3圧力室R13から第2吐出油圧配管44に所定の制動油圧Pfを吐出する。この制動油圧Pr,PfはABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用するので、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0099】
このブレーキペダル14の操作に応じて入力ピストン82が前進したとき、第1圧力室R11内の作動油が貫通孔92及び第4圧力室R14を介して排出ポート96から排出されることで、入力ピストン82は制御油圧を受けることはない。そのような状況下において、入力ピストン82は、反力スプリング87のスプリング力を反力としてブレーキペダル14に伝達することとなり、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0100】
一方、異常発生時には、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じて入力ピストン82が加圧ピストン83を直接押圧することで、制動油圧が発生するので、安全性を確保することができる。
【0101】
上述のように、第1の実施の形態の制動システムは、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を確実に発生させることができると共に、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた反力を適正に付与することができる。本実施の形態の制動システムの構造は単純化されたものであり、その結果油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御及び反力制御を可能とすることができる。
【0102】
また、第1の実施の形態の車両用制動システムにあっては、シリンダ81内において、入力ピストン82と加圧ピストン83とが軸方向に沿って移動自在に支持されているとともに、入力ピストン82の一部を加圧ピストン83に嵌合している。又、第1圧力室R11内の作動油を貫通孔92及び圧力室R14を介して排出ポート96から排出することで、ブレーキペダル14の操作力を吸収するようにしている。入力ピストン82の一部が常時加圧ピストン83に嵌合することで、シリンダ81の全長を短縮して装置の小型化を図ることができると共に、入力ピストン82が加圧ピストン83に常時接触することで、衝突音などの発生を防止することができる。
【0103】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用制動システムを表す概略構成図である。なお、図7において、前述した参考例で説明したものと同様の構成および/または機能を有する要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0104】
第2の実施の形態の車両用制動システムにおいて、図7に示すように、シリンダ101には、入力ピストン102と加圧ピストン103とが同軸上に軸方向に沿って移動自在に支持されているとともに、加圧ピストン103の一部が入力ピストン102に嵌合している。また、入力ピストン102には、ブレーキペダル14の操作ロッド15が連結されている。さらに、入力ピストン102は、その外周面がシリンダ101の内周面により移動自在に支持されている。入力ピストン102の軸方向への移動は、入力ピストン102がシリンダ101に固定された支持部材104に当接することで規制(すなわち、入力ピストン102のストロークが決定)される。また、入力ピストン102は、支持部材104とケース86との間に張設された反力スプリング87により支持部材104に当接されるべく付勢支持されている。
【0105】
加圧ピストン103は、シリンダ101の内周面により移動自在に支持されるフランジ部105を有している。また、入力ピストン102は凹部106を有しており、加圧ピストン103の基端部が嵌合している。そして、加圧ピストン103は、その先端部がシリンダ101に当接すると共に、フランジ部105がシリンダ101に固定された支持部材107に当接することで、軸方向への移動が規制(すなわち、加圧ピストン103のストロークが決定)される。加圧ピストン103は、加圧ピストン103とシリンダ101との間に張設された付勢スプリング108によりフランジ部105が支持部材107に当接する位置に付勢支持されている。これにより、入力ピストン102の凹部106の底面と加圧ピストン103の基端部とは、所定間隔(ストローク)S0をもって離間した状態で保持される。そして、乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン102が所定ストロークS0だけ前進すると、入力ピストン102は加圧ピストン103に当接してこの加圧ピストン103を押圧することができる。
【0106】
シリンダ101内には、入力ピストン102と加圧ピストン103との間に第1圧力室R21が形成され、入力ピストン102と支持部材107との間に第2圧力室R22が形成され、シリンダ101と加圧ピストン103との間に第3圧力室R23が形成されている。
【0107】
そして、アキュムレータ27から延伸する第1油圧供給配管28が第1圧力室R21への第1、第2供給ポート109,110に連結され、この第1油圧供給配管28には第1リニア弁30が配置されると共に、第1油圧供給配管28に接続された第1油圧排出配管31には第2リニア弁32が配置されている。また、第1圧力室R21の第1、第2吐出ポート111,112は第1吐出油圧配管42を介してABS40に連結され、後輪RR,RLのホイールシリンダ39RR,39RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R23の第3吐出ポート113は第2吐出油圧配管44を介してABS40に連結され、前輪FR,FLのホイールシリンダ39FR,39FLに油圧を供給可能となっている。更に、加圧ピストン103には、第2圧力室R22と第3圧力室R23とを連通するアイドルポート117が形成されており、また第2圧力室R22の排出ポート114は排出油圧配管47を介してリザーバタンク25に連結されている。
【0108】
なお、シリンダ101と入力ピストン102と加圧ピストン103等との要部には、Oリング115及びワンウェイシール116が装着されており、油圧の漏洩を防止している。
【0109】
ブレーキペダル14には、ストロークセンサ52と踏力センサ53と踏力スイッチ54とストップランプスイッチ55とが設けられ、各検出結果をECU51に送信している。また、第1、第2吐出油圧配管42,44には、第1、第2圧力センサ56,57がそれぞれ設けられ、検出結果をECU51に送信している。更に、アキュムレータ27から延伸する配管26には第4圧力センサ59が設けられ、検出結果をECU51に送信している。
【0110】
上述のように構成された第2の実施の形態の車両用制動システムにて、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁30,32の開度を調整する。また、ECU51は、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prを取得し、フィードバック制御を行うことによって、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。その結果、入力ピストン102が受けるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を発生することができる。
【0111】
第2の実施の形態の制動システムは、ブレーキペダル14から入力ピストン102へ作用する操作力を吸収する操作力吸収手段を有しており、押圧力(つまり操作力)を加圧ピストン103に伝達不能とすると共に、ブレーキペダル14に操作反力として作用させないようにしている。本実施の形態では、この操作力吸収手段を、第2圧力室R22と排出ポート114とから構成し、シリンダ101内の油路面積A21に対して、第2圧力室R22の油圧を受ける入力ピストン102の先端部の第1受圧面積A22と、第1圧力室R21の油圧を受ける加圧ピストン103の基端部の第2受圧面積A23とを均等に設定している。そして、異常発生時には、ブレーキペダル14からの操作力により入力ピストン102が加圧ピストン103を直接押圧することで、制動油圧を発生させるようにしている。
【0112】
具体的には、乗員がブレーキペダル14を踏むと、そのブレーキペダル14の操作力により入力ピストン102が前進する。このとき、入力ピストン102と加圧ピストン103との間には所定のストロークS0が設けられているため、入力ピストン102は加圧ピストン103を直接押圧することはない。入力ピストン102が前進するに伴い、第2圧力室R22の作動油が排出ポート114および排出油圧配管47を通してリザーバタンク25に排出されると共に、第1圧力室R21の作動油が各供給ポート109,110および第1油圧排出配管31を通してリザーバタンク25に排出される。よって、入力ピストン102がフリー状態となって、第1圧力室R21は入力ピストン102を介してブレーキペダル14に反力を作用させることはない。また、入力ピストン102により加圧ピストン103が押圧されるまでは、アイドルポート117により第2圧力室R22と第3圧力室R23とが連通しているため、第3圧力室R23の作動油がアイドルポート117および排出油圧配管47を通してリザーバタンク25に排出されることとなり、制動油圧を発生させることはない。
【0113】
そして、ブレーキペダル14に対して反力を付与する油圧系統に異常が発生したときには、乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン102が所定のストロークS0だけ前進する。すると、入力ピストン102の凹部106の底面が加圧ピストン103を直接押圧することとなり、所定の制動油圧Pr,PfをABS40を介してホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用させることができる。
【0114】
第2の実施の形態の車両用制動システムにあっては、シリンダ101内に入力ピストン102と加圧ピストン103とを軸方向に沿って移動自在に支持しているとともに、加圧ピストン103の一部を入力ピストン102に嵌合しており、また入力ピストン102にブレーキペダル14を連結している。これにより、第1圧力室R21の供給ポート109,110に制御油圧を供給可能とすると共に、第2圧力室R22の作動油を排出ポート114から排出可能とする一方、各圧力室R21,R23の吐出ポート112,113から制動油圧を吐出可能としている。
【0115】
動作中、ECU51は、目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R21に制御油圧を作用させることで、第1圧力室R21から所定の制動油圧Prを吐出すると共に、第3圧力室R23から所定の制動油圧Pfを吐出し、この制動油圧Pr,PfをABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0116】
このブレーキペダル14の操作により入力ピストン102が前進したとき、第2圧力室R22の作動油が排出ポート114から排出されることで、入力ピストン102は制御油圧を受けることはない。そのようにして、反力スプリング87によるスプリング力を反力として入力ピストン102を介してブレーキペダル14に伝達することとなり、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力を付与することができる。
【0117】
(第3の実施の形態)
図8A乃至図8Cは、本発明の第3の実施の形態に係る車両用制動システムによる故障判定制御を表すフローチャート、図9は、ストロークセンサ故障判定制御を表すフローチャート、図10は、圧力センサ故障判定制御ルーチンを表すフローチャート、図11は、リニア弁故障検知制御ルーチンを表すフローチャート、図12は、反力機構故障判定制御ルーチンを表すフローチャート、図13は、反力機構故障判定を説明するためのペダルストロークに対する油圧及び反力を表すグラフ、図14は、制動油圧異常判定制御ルーチンを表すフローチャート、図15は、前輪への油圧経路における失陥判定制御ルーチンを表すフローチャート、図16は、後輪への油圧経路における失陥判定制御ルーチンを表すフローチャート、図17は、入力ピストンと加圧ピストンとの接触判定制御ルーチンを表すフローチャート、図18は、圧力センサの出力間ずれ判定制御ルーチンを表すフローチャート、図19は、踏力スイッチ及び反力圧力センサの比較異常判定制御ルーチンを表すフローチャート、図20は、第1圧力室から反力室への漏れ判定制御ルーチンを表すフローチャート、図21は、反力圧力センサ故障判定時の反力油圧設定を説明するためのグラフ、図22は、踏力スイッチ及び反力圧力センサの比較異常判定時の反力油圧設定を説明するためのグラフ、図23は、前輪への油圧経路における失陥検出時の反力油圧設定を説明するためのグラフ、図24は、後輪への油圧経路における失陥検出時の反力油圧設定を説明するためのグラフである。
【0118】
なお、第3の実施の形態にて、車両用制動システムにおける全体構成は、上述した第1の参考例のそれとほぼ同様である。よって、図1を用いて第3の実施の形態について説明すると共に、この第1の参考例で説明したものと同様の構成および/または機能を有する要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0119】
第3の実施の形態の車両用制動システムにおける制動力制御及び反力制御、並びに故障判定制御において、図8Aに示すように、ステップS11では、ペダルストロークSpを検出するストロークセンサ52の故障判定を行い、ステップS12では、反力室R4に供給される反力油圧Pvを検出する第3圧力センサ58の故障判定を行い、ステップS13では、各リニア弁30,32,35,37の故障検知判定を行う。
【0120】
ステップS11のストロークセンサ52の故障判定では、図9のステップS001において、ストロークセンサ52自体のセンサ1の出力とセンサ2の出力とが同じかどうかが判定される。ここで、センサ1の出力とセンサ2の出力とが同じであると判定された場合、ステップS002において、ストロークセンサ52は正常であると判定される一方、センサ1の出力とセンサ2との出力が同じでないと判定された場合、ステップS003において、ストロークセンサ52は故障していると判定される。
【0121】
また、ステップS12の第3圧力センサ58の故障判定では、図10のステップ011において、第3圧力センサ58自体のセンサ1の出力とセンサ2の出力とが同じかどうかが判定される。ここで、センサ1の出力とセンサ2の出力とが同じであると判定された場合、ステップS012において、第3圧力センサ58は正常であると判定される一方、センサ1の出力とセンサ2の出力とが同じでないと判定された場合、ステップS013において、第3圧力センサ58は故障していると判定される。
【0122】
また、ステップS13のリニア弁30,32,35,37の故障検知判定では、図11に示すように、ステップS021において、車両が停止中かどうか、すなわち車両が停止状態にあるかが判定され、ステップS022において、制動システムが作動中かどうかが判定される。より具体的には、ECU51は車輪速センサ60の検出結果に基づいて車両が停止中かどうかを判定し、ストップランプスイッチ55のON/OFF信号により制動システムが作動中かどうかを判定する。そして、ステップS021において車両が停止中でないと判定されたり、ステップS022において制動システムが作動中であると判定された場合、図11のルーチンは終了する。一方、ステップS021において車両が停止中であると判定され、ステップS022において制動システムが非作動中であると判定された場合、ステップS023以降で第3、第4リニア弁35,37の故障検知判定が実行される。
【0123】
ステップS023では、第3リニア弁35を開放して第4リニア弁37を閉止することで、反力室R4の反力油圧Pvを故障チェック圧Pcheckまで加圧する。この場合、第3圧力センサ58により検出される反力油圧Pvが故障チェック圧Pcheckと等しくなるように第3リニア弁35を制御する。そして、反力油圧Pvが故障チェック圧Pcheckと等しくなったら、ステップS024にて、第3リニア弁35及び第4リニア弁37を閉止することで、反力室R4の反力油圧Pvを維持し、ステップS025にて、その圧力変化量が予め設定された規定値よりも少ないかどうかを判定する。ここで、反力室R4における反力油圧Pvの圧力変化量が規定値よりも少なければ、ステップS026にて、リニア弁35,37は正常であると判定する。一方、反力室R4における反力油圧Pvの圧力変化量が規定値以上であると、ステップS027にて、リニア弁35,37は異常であると判定し、ステップS028にて、警告ランプを点灯して乗員に知らせる。
【0124】
なお、図11のフローチャートを参照して第3、第4リニア弁35,37の故障検知処理について説明したが、第1、第2リニア弁30,32の故障もほぼ同様にして検知される。
【0125】
このように各センサ52,58の故障検知処理と各リニア弁30,32,35,37の故障検知処理が完了すると、図8Aに示すように、ステップS14にて、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpを取得し、ステップS15にて、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prと、第2圧力センサ57が検出した制動油圧Pfと、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvとを取得する。そして、ステップS16にて、踏力スイッチ54のON/OFF信号を取得する。
【0126】
続いて、ステップS17では、ブレーキペダル14に操作反力を付与する反力機構の故障判定を行い、ステップS18では、制動油圧の故障判定を行う。また、ステップS19にて、前輪への油圧経路における失陥判定を行い、ステップS20にて、後輪への油圧経路における失陥判定を行う。
【0127】
ステップS17において反力機構の故障を判定する場合、図12のステップS031にて、踏力スイッチ54がONされているかどうかが判定され、踏力スイッチ54がOFF状態であれば、図12のルーチンは終了する。この踏力スイッチ54は、踏力Fpが所定踏力Fp0を超えたときにOFFからONに切り換わるものである。そして、ここで踏力スイッチ54がONされたら、ステップS032にて、ペダルストロークSpがストローク下限値Sminより小さいかどうかを判定し、ステップS033にて、ペダルストロックSpがストローク上限値Smaxより大きいかどうかを判定する。
【0128】
そして、ステップS032で、図13に実線で示される反力Fpのように、ペダルストロークSpがストローク下限値Smin以上であり、ステップS033で、ペダルストロークSpがストローク上限値Smax以下であると判定されたら、ステップS034にて、反力正常と判定する。一方、ステップS032で、図13に点線で示される反力Fp1のように、ペダルストロークSpがストローク下限値Sminより小さかったり、ステップS033で、図13に点線で表す反力Fp2のように、ペダルストロークSpがストローク上限値Smaxより大きいと判定されたときには、ステップS035にて、反力異常と判定し、ステップS036にて、警告ランプを点灯して乗員に知らせる。
【0129】
なお、上述した反力機構の故障判定処理では、踏力スイッチ54がONされたときのペダルストロークSpにより反力の異常を判定したが、図13に示すように、ペダルストロークS2のときに、踏力センサ53が検出した踏力Fpが反力下限値Fmin以上で、且つ、反力上限値Fmax以下であるときに、反力正常と判定するようにしてもよい。
【0130】
また、ステップS18において制動油圧の故障を判定する上では、図14に示すように、ステップS041にて、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prが、目標出力油圧Prtに予め設定された設定値α1を加算した値より大きいかどうかが判定され、ステップS042にて、この制動油圧Prが目標出力油圧Prtから予め設定された設定値α1を減算した値より小さいかどうかが判定される。そして、ステップS041において、制動油圧Prが目標出力油圧Prtに設定値α1を加算した値以下と判定され、ステップS42において、制動油圧Prが目標出力油圧Prtから設定値α1を減算した値以上であると判定されたら、ステップS043にて、制動油圧が正常であると判定される。一方、ステップS041において、制動油圧Prが目標出力油圧Prtに設定値α1を加算した値より大きいと判定され、ステップS042において、制動油圧Prが目標出力油圧Prtから設定値α1を減算した値より小さいと判定されたら、ステップS044にて、制動油圧が異常であると判定され、ステップS045にて、警告ランプが点灯されて乗員に通知される。
【0131】
ステップS19において前輪への油圧経路における失陥を判定する上では、図15のステップS051にて、第2圧力センサ57が検出した制動油圧Pfが、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prから予め設定された設定値α2を減算した値より小さいかどうかが判定される。ここで、制動油圧Pfが制動油圧Prから設定値α2を減算した値より小さいと判定されたら、ステップS052にて、前輪への油圧経路において失陥があると判定される。即ち、第3圧力室R3から第2吐出油圧配管44を通ってABS40に延伸する油圧経路が失陥したときには、制動油圧Pfが低下することとなる。よって、制動油圧Prと制動油圧Pfとを比較することで、制動油圧Pfの低下、つまり、前輪への油圧経路における失陥を検出することができる。
【0132】
ステップS20において後輪への油圧経路における失陥を判定する上では、図16のステップS061において、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prが、目標出力油圧Prtから予め設定された設定値α3を減算した値より小さいかどうかが判定される。ここで、制動油圧Prが目標出力油圧Prtから設定値α3を減算した値より小さいと判定されたら、ステップS062において、後輪への油圧経路において失陥があると判定される。即ち、第1圧力室R1から第1吐出油圧配管42を通ってABS40に延伸する油圧経路が失陥したときには、制動油圧Prが低下する。よって、制動油圧Prと目標出力油圧Prtとを比較することで、制動油圧Prの低下、つまり、後輪への油圧経路における失陥を検出することができる。
【0133】
更に、図8Aに示すように、ステップS21にて、入力ピストン12と加圧ピストン13とが接触されているか否かが判定され、ステップS22にて、第1、第2圧力センサ56,57の出力にずれがあるか否かが判定される。また、ステップS23にて、踏力スイッチ54と第3圧力センサ58との比較結果において異常があるか否かが判定され、ステップS24にて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油の漏れがあるか否かが判定される。
【0134】
ステップS21の入力ピストン12と加圧ピストン13との接触の有無を判定する場合、図17のステップS071にて、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpが初期ストロークS0(すなわち、入力ピストン12と加圧ピストン13との間隔)より小さいかどうかが判定される。ここで、ステップS071においてペダルストロークSpが初期ストロークS0より小さいと判定されると、ステップS072にて、各ピストン12,13が非接触状態にあると判定される。一方、ペダルストロークSpが初期ストロークS0以上であると判定されると、ステップS073にて、各ピストン12,13が接触状態にあると判定される。
【0135】
ステップS22において第1、第2圧力センサ56,57間の出力のずれを判定する場合、図18のステップS081において2系統の作動油、すなわち制動油圧Prと制動油圧Pfとが等圧であり、且つ予め設定された所定圧以上であるか否かが判定される。また、ステップS081において、上述したステップS21の判定結果に基づき各ピストン12,13が離間しているか(非接触状態にあるか)どうかを判定する。ここで、制動油圧Prと制動油圧Pfとが等圧で、且つ、所定圧以上で、各ピストン12,13が非接触状態にあるときは、ステップS082にて、第1、第2圧力センサ56,57が正常であると判定する。一方、制動油圧Prと制動油圧Pfとが等圧でなかったり、所定圧より低かったり、各ピストン12,13が接触状態にあるときは、ステップS083にて、制動油圧Prと制動油圧Pfとの間に差があり、各ピストン12,13が離間しているか(すなわち、各ピストン12,13が非接触状態にあるか)どうかを判定する。ここで、制動油圧Prと制動油圧Pfとの間に差があり、且つ、各ピストン12,13が非接触状態にあれば、ステップS084にて、第1、第2圧力センサ56,57が異常であると判定し、ステップS085にて、警告ランプを点灯して乗員に知らせる。
【0136】
ステップS23において踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との比較結果において異常があるか否かを判定する場合、図19のステップS091にて、踏力スイッチ54がONされているかどうかが判定される。その結果、踏力スイッチ54がOFF状態であれば、図19のルーチンは終了する。この踏力スイッチ54は、踏力Fpが所定踏力Fp0を超えたときにOFFからONに切り換わる。踏力スイッチ54がONされたとき、ステップS092にて、第3圧力センサ58が検出した反力油圧Pvにスプリング力(k0×A3)を加算した値が踏力Fpの下限値Fminより大きく、上限値Fmaxよりも小さいかどうか、つまり、反力油圧Pvが所定の領域にあるかどうかが判定される。ここで、反力油圧Pvが所定の領域にあれば、ステップS093にて、踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が正常であると判定され、反力油圧Pvが所定の領域になければ、ステップS094にて、踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が異常であると判定される。
【0137】
ステップS24において第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れがあるか否かを判定する場合、図20のステップS101にて、反力制御用の第4リニア弁37の開度が大(すなわち、ノーマルオープンであるために電流値が小)であるかどうかが判定される。ここで、第4リニア弁37の開度が大でなければ、ステップS102にて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが無いと判定される。一方、ステップS101にて、第4リニア弁37の開度が大であるとき、ステップS103にて、油圧制御用の第1リニア弁30の開度が大(ノーマルクローズであるために電流値が大)であるかどうかが判定される。ここで、第1リニア弁30の開度が大であれば、ステップS104にて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有ると判定する。
【0138】
つまり、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有ると、反力室R4の油圧が上昇して目標反力油圧Pvtよりも高くなってしまうため、第4リニア弁37の開度を大きくする必要がある。そして、第1圧力室R1の作動油が反力室R4へ流れると、第1圧力室R1の圧力が低下して第1リニア弁30の開度を大きくする。そのため、第4リニア弁37の開度と第1リニア弁30の開度とに基づいて第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れを検出することができる。
【0139】
このように各種の欠陥または異常が判定された場合、以下に説明するように各種の対応策がとられる。図8Bに示すように、ステップS25では、前述したステップS12における判定の結果に基づいて、第3圧力センサ58が故障しているかどうかが判定される。第3圧力センサ58が正常であった場合、ECU51はステップS26に移行する。ステップS26では、ステップS23における判定結果に基づいて、踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が異常であるかどうかが判定される。その関係が正常であった場合、ECU51はステップS27に移行する。ステップS27では、ステップS11における判定結果に基づいて、ストロークセンサ52が異常であるかどうかが判定される。ストロークセンサ52が正常であった場合、図8Cに示すように、ECU51はステップS28に移行する。ステップS28では、ステップS24の判定結果に基づいて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有るかどうかが判定される。漏れが無ければ、ECU51はステップS29に移行する。
【0140】
そして、このステップS29にて、ECU51は、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて、予め設定されたマップを用いて目標出力油圧Prtを演算する。
【0141】
一方、ステップS25にて、第3圧力センサ58が故障していると判定されたときは、ECU51はステップS30に移行する。この第3圧力センサ58が故障していた場合、目標反力油圧Pvtに対して実際の反力油圧Pvをフィードバックできないため、踏力センサ53が検出した踏力Fpに基づいて目標反力油圧Pvtが演算される。即ち、図21に示すように、ブレーキペダル14が操作される初期は入力ピストン12と加圧ピストン13とが非接触状態にあるが、ペダルストロークSpが初期ストロークS0になると、入力ピストン12が加圧ピストン13に当接して接触状態となり、踏力Fpが発生する。従って、ECU51は、入力ピストン12が加圧ピストン13に接触した後に発生した踏力Fpに基づいて目標反力油圧Pvtを設定する。この場合、ブレーキペダル14の急激または突然な操作による反力の増大を抑制するため、上限値Pvmaxを設定している。
【0142】
また、ステップS26にて、踏力スイッチ54(踏力センサ53)の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が異常であると判定された場合、ECU51はステップS31に移行する。踏力スイッチ54の出力と第3圧力センサ58の出力との関係が異常であると判定された場合、目標反力油圧Pvtに対して実際の反力油圧Pvをフィードバックできないばかりか、踏力センサ53が検出した踏力Fpに基づいた目標反力油圧Pvtの演算もできない。よって、入力ピストン12が加圧ピストン13に接触した後に発生した制動油圧Prに基づいて目標反力油圧Pvtを演算する。この場合、図22のマップに示すように、目標反力油圧Pvtの勾配上限値θmaxを設けると共に、上限値Pvmaxを設定する。
【0143】
ステップS27にて、ストロークセンサ52に故障があると判定された場合、ECU51は、ステップS32に移行する。ストロークセンサ52が故障していた場合、ストロークセンサ52が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを演算することができない。この場合、第1圧力センサ56が検出した制動油圧Pfから所定値ΔPを減算して目標出力油圧Prtを設定する。また、制動油圧Prを制動油圧Pfと等しくなるように設定することも可能である。しかしながら、この場合、加圧ピストン13はサーボ制御によって自動的に前進されるので、乗員に不快感を与える虞がある。よって、目標出力圧PrtはPfよりΔP(センサにおける誤差等に基づく圧力)だけ小さくなるような値に設定される。
【0144】
ステップS28にて、第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有ると判定された場合、ECU51はステップS33に移行する。第1圧力室R1から反力室R4への作動油漏れが有ると、第1圧力室R1の作動油が反力室R4および第2油圧排出配管36を通してリザーバタンク25に排出されてしまうため、第4リニア弁37を閉止し、踏力センサ53が検出した踏力Fpに基づいて目標反力油圧Pvtをマップを用いて演算する。
【0145】
また、ステップS34では、ステップS19における前輪への油圧経路における欠陥の有無の判定結果と、ステップS20における後輪への油圧経路における欠陥の有無の判定結果とに基づき、制動油圧を供給する油圧系統に欠陥を検出したか否かが判定される。ここで、油圧系統において欠陥を検出しなかった場合、ステップS35にて、ペダルストロークSpに基づいて予め設定されたマップを用いて目標反力油圧Pvtが演算される。なお、制動油圧Pf,Prの関係から第1圧力センサ56が検出した制動油圧Prに基づいて目標反力油圧Pvtを設定してもよい。
【0146】
一方、ステップS34にて、油圧系統において欠陥を検出した場合、ECU51はステップS36に移行する。制動油圧を前輪へ作用させる油圧経路において欠陥が発生した際、制動油圧Prに対して制動油圧Pfが低下するので、図23に示されるように、両制動油圧Pr,Pfの差により前輪への油圧経路の欠陥を検出する。前輪への油圧経路の失陥が発生すると、後輪の制動装置だけが作動して制動力が発生し、車両の全体の制動力が若干低下する。よって、この場合、減速度と反力とが一致するように目標反力油圧Pvtを比較的低く設定する。一方、制動油圧を後輪へ作用するための油圧経路に欠陥が発生した際、制動油圧Prは目標出力油圧Prtと比較して減少されるので、図24に示すように、両油圧Prt,Prの差に基づき後輪への油圧経路の欠陥が検出される。後輪への油圧経路に欠陥が発生した場合、前輪の制動装置だけが作動して制動力を発生するので、車両の全体の制動力が若干低下する。よって、この場合、減速度と反力とが一致するように目標反力油圧Pvtを比較的低く設定する。
【0147】
以上のように目標出力油圧Prtと目標反力油圧Pvtとが設定されると、ECU51は、ステップS37にて、演算した目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁30,32の開度を調整すると共に、算出した目標反力油圧Pvtに基づいて第3、第4リニア弁35,37の開度を調整する。すると、第1圧力室R1から制動油圧Prが吐出されると共に、第3圧力室R3から制動油圧Pfが吐出される。そして、この制動油圧Pr,PfがABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLに作用することで、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力が発生する。また、乗員に対してブレーキペダル14の操作力に応じた適正な反力が付与される。
【0148】
なお、上述したステップS13においてリニア弁30,32,35,37のいずれか一つの欠陥が検知された場合、またはステップS17において反力機構の欠陥が検知された場合、またはステップS18において制動油圧の異常が検知された場合、またはステップS22によって第1圧力センサ56の出力と第2圧力センサ57の出力との間に差があった場合、油圧制御である制動力制御及び反力制御ができない。そのような場合、乗員がブレーキペダル14を操作して発生する操作力を入力ピストン12から加圧ピストン13に直接伝達することで、制動油圧Pf,Prを発生させ、ABS40を介して各ホイールシリンダ39FR,39FL,39RR,39RLを駆動して前輪FR,FL及び後輪RR,RLに制動力を付与する。
【0149】
なお、第3の実施の形態では、第1の参考例の車両用制動システムに関連する故障検出制御処理および異常検出制御処理について詳細に説明したが、第1〜第2の実施の形態の車両用制動システムにも本実施の形態の故障判定制御を適用することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリンダ(81;101)内に軸方向に沿って移動自在に支持された入力ピストン(82;102)と、(b)該入力ピストンに連結された操作部(14)と、(c)前記シリンダ内に前記入力ピストンと同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持された加圧ピストン(83;103)と、(d)前記入力ピストンが受ける前記操作部の操作量に応じた制御油圧を設定する制御油圧設定手段(51)と、(e)該制御油圧設定手段により設定された制御油圧を前記加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生させる制御油圧供給手段(51,30,32)と、(f)前記操作部から前記入力ピストンに作用する操作力を吸収する操作力吸収手段(61,S0;21,S0,45,46;R11,92,96;R22,114)と、を具え、
前記加圧ピストン(83;103)は、前記シリンダ内に前記軸方向に沿って移動自在に支持されると共に前記入力ピストンにより押圧可能であり、前記入力ピストンおよび前記加圧ピストンのいずれか一方の少なくとも一部は他方に嵌合し、前記操作力吸収手段は、前記操作力に応じて前記入力ピストンが移動する際に該入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に配される圧力室(R11;R21,R22)の作動油を排出可能とすることにより前記操作部が作用する操作力を吸収する排出路(92,R14,96;109,110,114)を有することを特徴とする車両用制動システム。
【請求項2】
前記圧力室の油圧を受ける前記入力ピストンの第1受圧面積(A12;A22)と、前記制御油圧供給手段からの制御油圧を受ける前記加圧ピストンの第2受圧面積(A13;A23)とがほぼ均等になるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項3】
前記入力ピストンが受ける前記操作部の操作量に応じた反力を設定する反力設定手段(51)と、該反力設定手段により設定された反力を前記入力ピストンに作用させることで前記操作部に反力を発生させる反力供給手段(51,35,37,19)と、を更に具えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項4】
前記入力ピストンを介して前記操作部に作用される反力を発生させる反力発生手段(51,35,37,19;71,72)と、異常発生時に該反力発生手段によって前記操作部へ作用された反力を制限する反力制限手段(37;71,72,73,74,76)と、を更に具えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項5】
前記反力制限手段は、電磁弁(76)またはリリーフ弁(74)を備えることを特徴とする請求項4に記載の車両用制動システム。
【請求項6】
(g)前記入力ピストンが受ける前記操作部の操作量を検出する操作量検出手段(52)と、(h)前記操作量検出手段が検出した操作量または発生した前記制動油圧に応じた反力油圧を設定する反力油圧設定手段(51)と、(i)該反力油圧設定手段により設定された反力油圧を前記入力ピストンに作用させることで前記操作部に反力を発生させる反力油圧供給手段(51,35,37)と、を更に具えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項7】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側と向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)とから前記制動油圧を吐出可能とし、
前記第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサ(56)と、前記第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサ(57)とを設け、
前記操作量検出手段の故障時に、前記制御油圧設定手段は、前記第1圧力センサの検出圧力と前記第2圧力センサの検出圧力とがほぼ均等となるように前記制御油圧を設定することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項8】
前記入力ピストンに作用させる反力油圧を検出する第3圧力センサ(58)と、前記操作部に作用する反力を検出する反力検出センサ(53)とを設け、
前記反力油圧供給手段は、前記反力油圧設定手段が設定した反力油圧と前記第3圧力センサが検出した実際の反力油圧とがほぼ同じになるように制御され、
前記第3圧力センサの故障を検出した際、前記反力油圧設定手段は、前記反力検出センサが検出した反力に応じて反力油圧を設定することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項9】
前記操作量検出手段が検出した前記操作部の操作量と、前記操作部に作用する反力との相対関係に基づいて前記反力油圧供給手段の故障を検出することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項10】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側に向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)から前記制動油圧
を吐出可能とし、
前記第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサ(56)と、前記第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサ(57)とを設け、
前記第2圧力センサによって検出される制動油圧が前記第1圧力センサによって検出される制動油圧よりも予め設定された所定値以上に小さくなった場合、前記第3圧力室から吐出される制動油圧の吐出経路に失陥があるものと判定し、前記反力油圧設定手段が設定する反力油圧を減少させることを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項11】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側に向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)から前記制動油圧を吐出可能とし、
前記第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサ(56)を設け、
前記第1圧力センサによって検出される制動油圧が前記制御油圧設定手段によって設定された制御油圧よりも予め設定された所定値以上に小さくなった場合、前記第1圧力室から吐出される制動油圧の吐出経路に失陥があるものと判定し、前記反力油圧設定手段が設定する反力油圧を減少させることを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項12】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側に向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)から前記制動油圧を吐出可能とし、
前記第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサ(56)と、前記第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサ(57)とを設け、
前記第1圧力センサによって検出される圧力と前記第2圧力センサによって検出される圧力との差に基づいて前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの位置関係を判定することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項13】
前記操作量検出手段が検出した前記操作部の操作量に基づいて前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの接触状態を判定し、
前記入力ピストンと前記加圧ピストンとが非接触状態にあり、且つ前記第1圧力センサによって検出される圧力と前記第2圧力センサによって検出される圧力との差が予め設定された所定値以上であった場合、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサのうちの少なくとも一つが故障していると判定することを特徴とする請求項12に記載の車両用制動システム。
【請求項14】
前記入力ピストンに作用させる反力油圧を検出する第3圧力センサ(58)と、前記操作部に作用させる反力を検出する反力検出センサ(53,54)とを設け、
前記第3圧力センサが検出した反力油圧と前記反力検出センサが検出した反力とに基づいて前記第3圧力センサまたは前記反力検出センサの故障を検出し、
前記第3圧力センサまたは前記反力検出センサの故障を検出した場合、前記反力油圧設定手段が設定する反力油圧の変化量を減少させることを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項15】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側に向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)から前記制動油圧を吐出可能とし、
前記反力油圧供給手段は、反力室(R4)から前記入力ピストンに反力油圧を作用させ、
前記反力室からの作動油の排出が抑制された際に前記第1圧力室に作用する制御油圧が上昇した場合、前記第1圧力室と前記反力室との間での作動油の漏洩を検出し、
前記漏洩が検出された場合、前記制御油圧設定手段は、前記操作部に作用する反力に基づいて前記制御油圧を設定することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項16】
シリンダ内に軸方向に沿って移動自在に支持された入力ピストンと、
該入力ピストンに連結された操作部と、
前記シリンダ内に前記入力ピストンと同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されると共に前記入力ピストンにより押圧可能な加圧ピストンと、
前記入力ピストンが受ける前記操作部の操作量に応じた制御油圧を設定する制御油圧設定部と、
該制御油圧設定部により設定された制御油圧を前記加圧ピストンに作用させることでホイールシリンダ(39FR〜39RR)に直接作用する制動油圧を発生させる油圧供給部と、
前記入力ピストンが前記操作力に応じて移動した際に前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に配される圧力室からの作動油を排出可能とすることにより前記操作力を吸収する排出路と、を具え、
前記入力ピストンおよび前記加圧ピストンのいずれか一方の少なくとも一部は他方に嵌合することを特徴とする車両用制動システム。
【請求項1】
(a)シリンダ(81;101)内に軸方向に沿って移動自在に支持された入力ピストン(82;102)と、(b)該入力ピストンに連結された操作部(14)と、(c)前記シリンダ内に前記入力ピストンと同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持された加圧ピストン(83;103)と、(d)前記入力ピストンが受ける前記操作部の操作量に応じた制御油圧を設定する制御油圧設定手段(51)と、(e)該制御油圧設定手段により設定された制御油圧を前記加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生させる制御油圧供給手段(51,30,32)と、(f)前記操作部から前記入力ピストンに作用する操作力を吸収する操作力吸収手段(61,S0;21,S0,45,46;R11,92,96;R22,114)と、を具え、
前記加圧ピストン(83;103)は、前記シリンダ内に前記軸方向に沿って移動自在に支持されると共に前記入力ピストンにより押圧可能であり、前記入力ピストンおよび前記加圧ピストンのいずれか一方の少なくとも一部は他方に嵌合し、前記操作力吸収手段は、前記操作力に応じて前記入力ピストンが移動する際に該入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に配される圧力室(R11;R21,R22)の作動油を排出可能とすることにより前記操作部が作用する操作力を吸収する排出路(92,R14,96;109,110,114)を有することを特徴とする車両用制動システム。
【請求項2】
前記圧力室の油圧を受ける前記入力ピストンの第1受圧面積(A12;A22)と、前記制御油圧供給手段からの制御油圧を受ける前記加圧ピストンの第2受圧面積(A13;A23)とがほぼ均等になるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項3】
前記入力ピストンが受ける前記操作部の操作量に応じた反力を設定する反力設定手段(51)と、該反力設定手段により設定された反力を前記入力ピストンに作用させることで前記操作部に反力を発生させる反力供給手段(51,35,37,19)と、を更に具えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項4】
前記入力ピストンを介して前記操作部に作用される反力を発生させる反力発生手段(51,35,37,19;71,72)と、異常発生時に該反力発生手段によって前記操作部へ作用された反力を制限する反力制限手段(37;71,72,73,74,76)と、を更に具えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項5】
前記反力制限手段は、電磁弁(76)またはリリーフ弁(74)を備えることを特徴とする請求項4に記載の車両用制動システム。
【請求項6】
(g)前記入力ピストンが受ける前記操作部の操作量を検出する操作量検出手段(52)と、(h)前記操作量検出手段が検出した操作量または発生した前記制動油圧に応じた反力油圧を設定する反力油圧設定手段(51)と、(i)該反力油圧設定手段により設定された反力油圧を前記入力ピストンに作用させることで前記操作部に反力を発生させる反力油圧供給手段(51,35,37)と、を更に具えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項7】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側と向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)とから前記制動油圧を吐出可能とし、
前記第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサ(56)と、前記第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサ(57)とを設け、
前記操作量検出手段の故障時に、前記制御油圧設定手段は、前記第1圧力センサの検出圧力と前記第2圧力センサの検出圧力とがほぼ均等となるように前記制御油圧を設定することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項8】
前記入力ピストンに作用させる反力油圧を検出する第3圧力センサ(58)と、前記操作部に作用する反力を検出する反力検出センサ(53)とを設け、
前記反力油圧供給手段は、前記反力油圧設定手段が設定した反力油圧と前記第3圧力センサが検出した実際の反力油圧とがほぼ同じになるように制御され、
前記第3圧力センサの故障を検出した際、前記反力油圧設定手段は、前記反力検出センサが検出した反力に応じて反力油圧を設定することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項9】
前記操作量検出手段が検出した前記操作部の操作量と、前記操作部に作用する反力との相対関係に基づいて前記反力油圧供給手段の故障を検出することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項10】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側に向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)から前記制動油圧
を吐出可能とし、
前記第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサ(56)と、前記第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサ(57)とを設け、
前記第2圧力センサによって検出される制動油圧が前記第1圧力センサによって検出される制動油圧よりも予め設定された所定値以上に小さくなった場合、前記第3圧力室から吐出される制動油圧の吐出経路に失陥があるものと判定し、前記反力油圧設定手段が設定する反力油圧を減少させることを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項11】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側に向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)から前記制動油圧を吐出可能とし、
前記第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサ(56)を設け、
前記第1圧力センサによって検出される制動油圧が前記制御油圧設定手段によって設定された制御油圧よりも予め設定された所定値以上に小さくなった場合、前記第1圧力室から吐出される制動油圧の吐出経路に失陥があるものと判定し、前記反力油圧設定手段が設定する反力油圧を減少させることを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項12】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側に向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)から前記制動油圧を吐出可能とし、
前記第1圧力室からの制動油圧を検出する第1圧力センサ(56)と、前記第3圧力室からの制動油圧を検出する第2圧力センサ(57)とを設け、
前記第1圧力センサによって検出される圧力と前記第2圧力センサによって検出される圧力との差に基づいて前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの位置関係を判定することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項13】
前記操作量検出手段が検出した前記操作部の操作量に基づいて前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの接触状態を判定し、
前記入力ピストンと前記加圧ピストンとが非接触状態にあり、且つ前記第1圧力センサによって検出される圧力と前記第2圧力センサによって検出される圧力との差が予め設定された所定値以上であった場合、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサのうちの少なくとも一つが故障していると判定することを特徴とする請求項12に記載の車両用制動システム。
【請求項14】
前記入力ピストンに作用させる反力油圧を検出する第3圧力センサ(58)と、前記操作部に作用させる反力を検出する反力検出センサ(53,54)とを設け、
前記第3圧力センサが検出した反力油圧と前記反力検出センサが検出した反力とに基づいて前記第3圧力センサまたは前記反力検出センサの故障を検出し、
前記第3圧力センサまたは前記反力検出センサの故障を検出した場合、前記反力油圧設定手段が設定する反力油圧の変化量を減少させることを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項15】
前記制御油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側に配される第1圧力室(R1)または前記入力ピストンの他方側に配される第2圧力室(R2)に供給することで、該第1圧力室と、前記第1圧力室が配される前記加圧ピストンの一方側に向かい合う前記加圧ピストンの他方側に配される第3圧力室(R3)から前記制動油圧を吐出可能とし、
前記反力油圧供給手段は、反力室(R4)から前記入力ピストンに反力油圧を作用させ、
前記反力室からの作動油の排出が抑制された際に前記第1圧力室に作用する制御油圧が上昇した場合、前記第1圧力室と前記反力室との間での作動油の漏洩を検出し、
前記漏洩が検出された場合、前記制御油圧設定手段は、前記操作部に作用する反力に基づいて前記制御油圧を設定することを特徴とする請求項6に記載の車両用制動システム。
【請求項16】
シリンダ内に軸方向に沿って移動自在に支持された入力ピストンと、
該入力ピストンに連結された操作部と、
前記シリンダ内に前記入力ピストンと同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されると共に前記入力ピストンにより押圧可能な加圧ピストンと、
前記入力ピストンが受ける前記操作部の操作量に応じた制御油圧を設定する制御油圧設定部と、
該制御油圧設定部により設定された制御油圧を前記加圧ピストンに作用させることでホイールシリンダ(39FR〜39RR)に直接作用する制動油圧を発生させる油圧供給部と、
前記入力ピストンが前記操作力に応じて移動した際に前記入力ピストンと前記加圧ピストンとの間に配される圧力室からの作動油を排出可能とすることにより前記操作力を吸収する排出路と、を具え、
前記入力ピストンおよび前記加圧ピストンのいずれか一方の少なくとも一部は他方に嵌合することを特徴とする車両用制動システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−111490(P2012−111490A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61020(P2012−61020)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2008−523481(P2008−523481)の分割
【原出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2008−523481(P2008−523481)の分割
【原出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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