説明

車両用制御装置

【課題】車両の運動エネルギのうち動力伝達機構30を介してフライホイール32に蓄えられる回転エネルギを好適に増大させることのできる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】回生モードであると判断される状況下において、車両の運動エネルギをフライホイール32に回転エネルギとして蓄える回生制御処理を行う。また、回生モードでないと判断されて且つ、フライホイール32の回転速度が規定速度以下であると判断される状況下において、フライホイール32に蓄えられた回転エネルギを用いて第2オルタネータ40に発電させる処理を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転エネルギを蓄えるフライホイール、駆動輪、及び自身に作用するトルクを調節可能なトルク調節手段の間の動力伝達を可能とする動力伝達機構であって、前記フライホイール、前記駆動輪及び前記トルク調節手段のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体、第2の回転体及び第3の回転体の回転速度を共線図上において1直線上に並ばせる動力伝達機構と、車載主機としての内燃機関とを備える車両に適用される車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に見られるように、駆動輪と内燃機関とを接続する回転軸、回転エネルギを蓄えるフライホイール、及び車載発電機の間の動力伝達を可能とする遊星歯車機構を備える車載パワートレインが知られている。詳しくは、このパワートレインの備える上記遊星歯車機構は、フライホイール、回転軸及び車載発電機のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体、第2の回転体及び第3の回転体を有して構成されている。上記パワートレインを用いれば、駆動輪から遊星歯車機構を介してフライホイールに至る動力伝達経路によって、車両の運動エネルギをフライホイールに蓄える回生制御処理を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/010819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記遊星歯車機構を介してフライホイールに蓄えられる運動エネルギは、回生制御処理時における第1の回転体、第2の回転体及び第3の回転体の回転速度に大きく影響を及ぼされる。詳しくは、フライホイールと機械的に連結される第1の回転体の回転速度が低い場合、フライホイールに車両の運動エネルギを十分に蓄えることができなくなる懸念がある。
【0005】
こうした問題を解消し、車両の運動エネルギの有効利用を図る上では、車両の運動エネルギのうちフライホイールに蓄えられるエネルギを増大可能なエネルギ回収手法が要求される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両の運動エネルギのうちフライホイールに蓄えられるエネルギを好適に増大させることのできる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、回転エネルギを蓄えるフライホイール、駆動輪、及び自身に作用するトルクを調節可能なトルク調節手段の間の動力伝達を可能とする動力伝達機構であって、前記フライホイール、前記駆動輪及び前記トルク調節手段のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体、第2の回転体及び第3の回転体の回転速度を共線図上において1直線上に並ばせる動力伝達機構と、車載主機としての内燃機関とを備える車両に適用され、前記内燃機関の動力生成指示がなされない状況下において、前記動力伝達機構を介して前記車両の運動エネルギを前記フライホイールに回転エネルギとして蓄える回生制御処理を行う回生処理手段と、前記回生制御処理が行われる状況以外の状況において、前記フライホイールの回転速度が規定速度以下であると判断されることに基づき、前記フライホイールに蓄えられた回転エネルギを車載機器に供給することに制約を課す処理を行う制約手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、回生制御処理によってフライホイールに蓄えられた回転エネルギをその後車載機器に供給することで、車両の運動エネルギの有効利用を図っている。ここで、本発明者らは、回生制御処理が行われる状況以外の状況においてフライホイールの回転速度を過度に低下させないことで、車両の運動エネルギのうち回生制御処理によってフライホイールに蓄えられるエネルギを増大させることができるとの知見を得た。
【0010】
つまり、動力伝達機構を介して動力伝達が行われる状況下における第1〜第3の回転体に加わるトルクの間には比例関係がある。この関係によれば、回生制御処理が行われる状況下において、車両の走行状態に応じて第2の回転体の印加トルクが定まることで、第1,3の回転体の印加トルクが定まることとなる。また、駆動輪から動力伝達機構を介してフライホイールに供給される車両の運動エネルギは、フライホイールの回転速度とフライホイールの印加トルクとの積に比例する。この比例関係と、車両の走行状態に応じて第1〜3の回転体の印加トルクが定まることとによれば、回生制御処理が行われる状況下においてフライホイールの回転速度が高くなるほど、フライホイール側に供給される車両の運動エネルギを増大させることができる。
【0011】
この点に鑑み、上記発明では、回生制御処理が行われる状況以外の状況において、フライホイールの回転速度が規定速度以下であると判断されることに基づき、フライホイールに蓄えられた回転エネルギを車載機器に供給することに制約を課す。このため、フライホイールの蓄積エネルギの使用によるフライホイールの回転速度の低下を抑制することができ、フライホイールの回転速度が過度に低くなることを極力抑制することができる。すなわち、回生制御処理が開始される際のフライホイールの回転速度を極力高い水準に維持することができる。これにより、回生制御処理が行われる場合に、車両の運動エネルギのうちフライホイールに蓄えられるエネルギを増大させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第2の回転体は、前記内燃機関と連結され、前記回生制御処理が行われる状況以外の状況において前記内燃機関に要求される動力が低いと判断されることに基づき、前記フライホイールの回転速度を前記規定速度よりも高い状態に維持すべく、前記要求される動力を増大させて且つ、前記内燃機関の生成動力を前記動力伝達機構を介して前記フライホイールに供給する回転速度維持手段を更に備えることを特徴とする。
【0013】
内燃機関に要求される動力が低いと通常、内燃機関の熱効率が低下し、内燃機関の同一生成動力(内燃機関の出力軸から取り出される動力)に対する内燃機関の燃料消費量が増大する傾向にある。ここで、上記発明では、回生制御処理が行われる状況以外の状況において内燃機関に要求される動力が低いと判断された場合、内燃機関に要求される動力を増大させて且つ内燃機関の生成動力を動力伝達機構を介してフライホイールに供給する。このため、内燃機関の熱効率を上昇させて、フライホイールに内燃機関の生成動力を供給することができる。これにより、内燃機関の燃料消費量に対する内燃機関の機械損失や冷却損失等に対応する燃料消費量の割合を低減しつつ、フライホイールの回転速度を規定速度よりも高い状態に極力維持することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記第2の回転体は、前記内燃機関と連結され、前記車両には、前記動力伝達機構を介さずに前記内燃機関から動力供給を受けて発電する第1の発電機と、前記第1の回転体及び前記フライホイールの間に介在する第2の発電機とが更に備えられることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、内燃機関を動力供給源として第1の発電機に発電させたり、内燃機関又はフライホイールを動力供給源として第2の発電機に発電させたりすることなどができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記第1の発電機の発電用に前記内燃機関で生成されるエネルギに対する該第1の発電機の発電エネルギの割合である第1の発電効率と、前記第2の発電機の発電用に前記内燃機関で生成されるエネルギに対する該第2の発電機の発電エネルギの割合である第2の発電効率とを算出する発電効率算出手段と、前記算出されたこれら発電効率のうち大きいものに対応する発電機の発電処理を行う発電処理手段とを更に備えることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、第1の発電効率及び第2の発電効率のうち大きいものに対応する発電機(第1の発電機又は第2の発電機)の発電処理を行うことで、単位発電エネルギあたりの車両の消費エネルギを極力小さくすることができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の発明において、前記フライホイールの回転速度が前記規定速度よりも高いと判断されることに基づき、前記フライホイールの回転エネルギを用いて前記第2の発電機に発電させる処理を強制的に行う強制手段を更に備えることを特徴とする。
【0019】
上記発明では、フライホイールの回転エネルギが大きい状況下において、このエネルギを用いて第2の発電機に発電させることができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記第2の回転体は、前記内燃機関と連結され、前記トルク調節手段には、発電機が含まれることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、例えば回生制御処理によってフライホイールに回転エネルギを蓄える場合に、車両の運動エネルギの一部を発電機の発電エネルギに変換することなどができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記車両には、前記駆動輪及び前記第2の回転体の間の動力の伝達及び遮断を切り替える動力伝達遮断手段と、前記第2の回転体の回転を妨げるトルクを付与する制動手段とが更に備えられることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、動力伝達遮断手段によって駆動輪及び第2の回転体の間の動力を遮断して且つ、制動手段によって第2の回転体にこの回転体の回転を妨げるトルクを付与することで、フライホイールを動力供給源として発電機に発電させることができる。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項6又は7記載の発明において、前記車両には、前記フライホイール及び前記第1の回転体の間の動力の伝達及び遮断を切り替える動力伝達遮断手段と、前記第1の回転体の回転を妨げるトルクを付与する制動手段とが更に備えられることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、動力伝達遮断手段によってフライホイール及び第1の回転体の間の動力を遮断して且つ、制動手段によって第1の回転体にこの回転体の回転を妨げるトルクを付与することで、内燃機関を動力供給源として発電機に発電させることができる。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項6〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記フライホイールの回転速度が前記規定速度よりも高いと判断されることに基づき、前記フライホイールの回転エネルギを用いて前記発電機に発電させる処理を強制的に行う強制手段を更に備えることを特徴とする。
【0027】
上記発明では、フライホイールの回転エネルギが大きい状況下において、このエネルギを用いて発電機に発電させることができる。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記制約手段は、前記制約を課す処理として、前記フライホイールに蓄えられた回転エネルギの前記車載機器への供給を禁止する処理を行うことを特徴とする。
【0029】
上記発明では、フライホイールに蓄えられた回転エネルギの低下を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる動力伝達機構の概要を示す図。
【図3】同実施形態にかかるFW回転速度維持処理の手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態にかかる車両の動力伝達経路の概要を示す図。
【図5】同実施形態にかかるエンジン出力及び熱効率の計測結果を示す図。
【図6】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図7】同実施形態にかかるFW回転速度維持処理の手順を示すフローチャート。
【図8】同実施形態にかかる車両の動力伝達経路の概要を示す図。
【図9】その他の実施形態にかかる動力伝達機構の一部の断面構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる車両用制御装置を、車載主機として内燃機関のみが搭載される車両に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0033】
図示されるように、エンジン10は、車載主機としての内燃機関である。エンジン10の出力軸(クランク軸10a)は、変速装置12、シャフト14及びディファレンシャル16を介して駆動輪18に機械的に連結されている。なお、クランク軸10aには、減速歯車20を介して、クランク軸10aに初期回転を付与するスタータ22が設けられている。減速歯車20は、スタータ22側の回転速度よりもクランク軸10a側の回転速度を小さくするための変速手段である。
【0034】
クランク軸10aには、ベルト24を介して第1オルタネータ26が機械的に連結されている。第1オルタネータ26は、図示しないレギュレータ及びロータコイル等を備えて構成され、自身が回転駆動されて発電する機能を有する。詳しくは、第1オルタネータ26は、スタータ22等の車載補機の電源としての機能や、図示しない車載バッテリ(例えば鉛バッテリ)を充電する機能等を有する。ちなみに、第1オルタネータ26の発電電力は、上記レギュレータによってロータコイルに流れる励磁電流を調節することで調節される。具体的には、この発電電力は、励磁電流の調節によって第1オルタネータ26の負荷トルクが大きくなったり、第1オルタネータ26の回転速度が高くなったりするほど大きくなる傾向にある。
【0035】
上記シャフト14には、減速歯車28を介して動力伝達機構30が機械的に連結されている。動力伝達機構30は、互いに連動して回転する回転体であって且つ、駆動輪18(シャフト14)、フライホイール32及びトルク調節装置34の間の動力を伝達可能とする複数の動力伝達用回転体を備えている。詳しくは、動力伝達機構30は、1つの遊星歯車機構によって構成されており、そのサンギアSに増速歯車36を介してフライホイール32が機械的に連結され、キャリアCにシャフト14が機械的に連結され、リングギアRにワンウェイクラッチ38を介してトルク調節装置34が機械的に連結されている。なお、増速歯車36は、動力伝達機構30側(サンギアS側)の回転速度よりもフライホイール32側の回転速度を大きくするための変速手段である。また、ワンウェイクラッチ38は、出力側であるトルク調節装置34側に対する入力側であるリングギアR側の相対回転速度が負でない場合に動力を伝達させる一方向伝達機構である。
【0036】
フライホイール32は、入力される回転エネルギを回転エネルギのまま蓄えるエネルギ蓄積手段である。
【0037】
トルク調節装置34は、動力伝達機構30のリングギアRの回転を妨げる方向のトルクをリングギアRに付与するトルク調節手段である。詳しくは、トルク調節装置34は、リングギアRに付与するトルクを連続的(又は段階的)に可変設定可能なものである。本実施形態では、トルク調節装置34として、一対のクラッチ板を有する湿式クラッチ機構と、ブレーキ機構とを備えて構成されるものを想定している。
【0038】
増速歯車36と動力伝達機構30のサンギアSとの間には、第2オルタネータ40が接続されている。第2オルタネータ40は、第1オルタネータ26と同様に、車載補機の電源としての機能や、車載バッテリを充電する機能等を有する。なお、第2オルタネータ40の発電電力は、第1オルタネータ26と同様に、励磁電流の調節によって第2オルタネータ40の負荷トルクが大きくなったり、第2オルタネータ40の回転速度が高くなったりするほど大きくなる傾向にある。
【0039】
なお、フライホイール32、動力伝達機構30、トルク調節装置34及び第2オルタネータ40等は、実際には、図示しないハウジングに収容されて一体的に構成されている。
【0040】
また、本実施形態において、トルク調節装置34として湿式クラッチ機構を備えるものを採用しているのは、上記ハウジング内の構造が複雑になることを回避するためである。つまり、ハウジング内の動力伝達機構30の遊星歯車機構には、信頼性を維持するために潤滑油が供給される構成とされている。ここで、クラッチ機構として、例えば乾式クラッチ機構を採用する場合、ハウジング内において遊星歯車機構側から乾式クラッチ機構側への潤滑油の流入を防止する必要が生じ、ハウジング内の構造が複雑となる。
【0041】
さらに、本実施形態において、ワンウェイクラッチ38が設けられているのは、停車時等、キャリアの回転速度が過度に低くなる状況下において、リングギアRの回転に起因するフライホイール32の回転エネルギの減少度合いを極力小さくするためである。つまり、キャリアCの回転速度が過度に低くなる状況下、フライホイール32に回転エネルギが蓄積されていると、サンギアS側から動力伝達機構30を介してリングギアR側に動力が伝達されることによって、リングギアRが逆転することがある。この場合、トルク調節装置34の湿式クラッチ機構によって潤滑油が攪拌されることに起因して、フライホイール32の回転エネルギの減少度合いが大きくなる懸念がある。ここで、ワンウェイクラッチ38によれば、リングギアRが逆転される場合、リングギアRとトルク調節装置34との間の動力を遮断することができるため、フライホイール32の回転エネルギの減少度合いを極力小さくすることができる。
【0042】
制御装置44は、車両を制御対象とし、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されるものである。制御装置44には、ユーザのアクセル操作量を検出するアクセルセンサ46や、ユーザのブレーキ操作量を検出するブレーキセンサ48、クランク軸10aの回転速度を検出するクランク角度センサ49、更にはフライホイール32の回転速度を検出する回転速度センサ50等の出力信号が入力される。制御装置44は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、スタータ22による始動制御処理や、エンジン10の燃焼制御処理、更には第1オルタネータ26,第2オルタネータ40による発電制御処理等を行う。
【0043】
上記エンジン10の燃焼制御処理は、アクセルセンサ46の出力値等に基づきエンジン10の要求動力を算出する処理、及びこの要求動力に基づきエンジン10に燃料を供給する処理等からなる処理である。ちなみに、エンジン10の要求動力が大きくなるほど、エンジン10への燃料供給量が多くなる傾向にある。
【0044】
特に、制御装置44は、回生制御処理を行う。この処理は、ユーザによってブレーキ操作(車両の制動指示)がなされる状況下、より詳しくは車両の減速時であって且つエンジン10への燃料の供給を停止させる燃料カット制御が行われる状況下、車両の運動エネルギを動力伝達機構30を介してフライホイール32に蓄えるための処理である。回生制御処理によれば、例えばその後車載バッテリの充電のために第1オルタネータ26(又は第2オルタネータ40)を駆動させる頻度を低下させることができ、エンジン10の燃費低減効果を向上させることが可能となる。なお、ブレーキ操作がなされているか否かは、ブレーキセンサ48の出力値に基づき判断すればよい。また、回生制御処理が行われる状況としては、ブレーキ操作によって車両が減速する状況のみならず、例えばブレーキ操作によって所定の走行速度を維持しつつ車両が下り坂を走行する状況も考えられる。
【0045】
さらに、制御装置44は、回転速度センサ50によって検出されるフライホイール回転速度を規定速度よりも高い状態に極力維持するFW回転速度維持処理を行う。この処理は、回生制御処理が行われる場合に、フライホイール32及びトルク調節装置34のうちフライホイール32側への車両の運動エネルギの配分を増大させるための処理である。以下、図2を用いて、この処理について説明する。
【0046】
図2は、動力伝達機構30のサンギアS、キャリアC及びリングギアRの回転速度の共線図である。なお、図中、矢印は、トルクの向きを示すものである。トルクの向きは、回転速度と同様、図中上側を正としており、これにより、動力伝達機構30に動力が入力される場合の動力の符号を正と定義している。
【0047】
動力伝達機構30を介して動力伝達が行われる状況下におけるサンギアS、キャリアC及びリングギアRへの印加トルクの間には比例関係がある。詳しくは、サンギアSのトルクTs、キャリアCのトルクTc及びリングギアRのトルクTrの関係は、リングギアRの歯数Zrに対するサンギアSの歯数Zsの比ρ(Zs/Zr)を用いて、下式(c1)、(c2)にて表現される。
【0048】
Tr=−Tc/(1+ρ) …(c1)
Ts=−ρTc/(1+ρ) …(c2)
この関係によれば、回生制御処理が行われる状況下において、車両の走行状態に応じてキャリアCへの入力トルクが定まることで、サンギアS及びリングギアRの出力トルクが定まることとなる。なお、キャリアCの回転速度Nc、サンギアSの回転速度Ns及びリングギアRの回転速度Nrのそれぞれについては、下式(c3)で表される関係を満たすことが要求される。
Nr=(1+ρ)×Nc−ρ×Ns …(c3)
また、駆動輪18から動力伝達機構30を介してフライホイール32に供給される車両の運動エネルギは、フライホイール32の回転速度とフライホイール32への入力トルク(サンギアSの出力トルクを増速歯車36の増速比で除算したトルク)との積に比例する。この比例関係と、車両の走行状態に応じてサンギアS、キャリアC及びリングギアRの印加トルクが定まることとによれば、フライホイール回転速度が高くなるほど、トルク調節装置34及びフライホイール32のうちフライホイール32側に供給される車両の運動エネルギが増大することとなる。このため、フライホイール回転速度を規定速度よりも高い状態に極力維持することで、回生制御処理が行われる場合にフライホイール32に回収可能な車両の運動エネルギが増大する。
【0049】
図3に、本実施形態にかかるFW回転速度維持処理を含む車両制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置44によって例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0050】
この一連の処理では、まずステップS10において、回生制御処理を行う状況である回生モードであるか否かを判断する。ここで、回生モードであるか否かは、例えば燃料カット制御の実行中であるか否かで判断すればよい。
【0051】
ステップS10において回生モードでないと判断された場合には、ステップS12に進み、フライホイール回転速度Nfwが規定速度Nα以下であるか否かを判断する。ここで、規定速度Nαは、例えば、所定の走行モード(例えばJC08モード)においてエンジン10の燃費低減効果を向上させる観点から予め実験等で適合される値である。
【0052】
ステップS12においてフライホイール回転速度Nfwが規定速度Nαを上回ると判断された場合には、ステップS14に進み、フライホイール32に蓄えられた回転エネルギを用いて強制的に第2オルタネータ40に発電させる。この処理は、エンジン10に燃料を消費させることなく発電するための処理である。具体的には、図4(A)に示すように、フライホイール32及び増速歯車36(動力伝達経路r1)を介してフライホイール32の回転エネルギを供給することで第2オルタネータ40に発電させる。ここでは、駆動輪18とフライホイール32との間の動力を遮断すべく、トルク調節装置34によるリングギアRへの印加トルクを0とする。
【0053】
なお、摩擦抵抗等によって単位時間あたりに失われるフライホイール32の回転エネルギは、フライホイール回転速度Nfwが高いほど大きくなる傾向にある。このため、この損失分を極力有効に活用すべく、フライホイール回転速度Nfwが高いほど、例えば第2オルタネータ40の発電電力を大きく設定してもよい。
【0054】
図3の説明に戻り、上記ステップS12において肯定判断された場合には、ステップS16に進み、フライホイール32の回転エネルギの利用を禁止する。具体的には、上記回転エネルギを用いた第2オルタネータ40の発電を禁止する。
【0055】
続くステップS18では、エンジン10の要求動力Wegが規定動力Wα以下であるか否かを判断する。
【0056】
ステップS18においてエンジン10の要求動力Wegが規定動力Wα以下であると判断された場合には、エンジン10が低負荷領域で運転されていると判断し、ステップS20に進む。ステップS20では、フライホイール回転速度Nfwを規定速度Nαよりも高い状態に維持すべく、エンジン10の要求動力Wegを増大させて且つ、エンジン10の生成動力を動力伝達機構30を介してフライホイール32に供給する処理を行う。この処理は、エンジン10の燃料消費量のうちエンジン10の機械損失や冷却損失等に対応する燃料消費量の割合を低減しつつ、フライホイール32にエンジン10の生成動力を供給することで、フライホイール回転速度Nfwを規定速度Nαよりも高い状態とするための処理である。
【0057】
つまり、エンジン10の要求動力Wegが低い領域においては通常、図5に示すように、エンジン10の熱効率が低下する傾向にある。このため、エンジン10の同一図示出力を生成するために要求される燃料の燃焼エネルギが増大する傾向にある。こうした点に鑑み、エンジン10の要求動力Wegが低い場合、エンジン10の要求動力Wegを増大させて且つエンジン10の生成動力をフライホイール32に供給することで、エンジン10の機械損失や冷却損失等に対応する燃料をフライホイール32の回転エネルギの蓄積に活用する。
【0058】
上記活用手法について説明すると、具体的には例えば、エンジン10の図示出力を1kW(図中☆1にて表記)から1.6kW(図中☆2にて表記)に増大させ、この増分である0.6kWをフライホイール32の回転エネルギの蓄積に活用する。図示出力が1kW,1.6kWに対応する熱効率が20%,30%であるから、これら図示出力を得る過程における損失が4kW,3.7kWとなる。このため、損失を低減しつつフライホイール32に回転エネルギを蓄えることができる。
【0059】
ちなみに、本ステップの処理によってエンジン10の要求動力Wegを増大させる場合であっても、要求動力Wegの増大分は車両の力行に用いられる動力と比較して小さい傾向にある。このため、本ステップの処理によるエンジン10の要求動力Wegの増大がドライバビリティに与える影響は小さいと考えられる。
【0060】
図3の説明に戻り、上記ステップS18において否定判断された場合や、ステップS20の処理が完了する場合には、ステップS22に進む。ステップS22では、第1オルタネータ26の発電用にエンジン10に投入されるエネルギ(燃料の燃焼によって生成されるエネルギ)に対する第1オルタネータ26の発電エネルギの割合である第1の発電効率ef1と、第2オルタネータ40の発電用にエンジン10に投入されるエネルギ(燃料の燃焼によって生成されるエネルギ)に対する第2オルタネータ40の発電エネルギの割合である第2の発電効率ef2とを算出する。
【0061】
ここで、第1の発電効率ef1は、例えば、制御装置44やエンジン10の燃焼制御用の各種アクチュエータを含む車載機器に要求される電力(要求電力)と、クランク角度センサ49の出力値に基づく第1オルタネータ26の回転速度と、エンジン10の運転状態とから算出し、第2の発電効率ef2は、例えば、要求電力と、回転速度センサ50の出力値に基づく第2オルタネータ40の回転速度と、エンジン10の運転状態とから算出すればよい。ちなみに、第1,2の発電効率ef1,ef2の算出にオルタネータの回転速度を用いるのは、この回転速度によってオルタネータに入力される動力に対するオルタネータの発電電力の割合を把握可能なためである。
【0062】
続くステップS24では、算出された第1の発電効率ef1及び第2の発電効率ef2のうち大きい方に対応するオルタネータへの発電指示を行う。
【0063】
詳しくは、第1の発電効率ef1が大きいと判断された場合、図4(B)に示すように、クランク軸10a及びベルト24(動力伝達経路r2)を介してエンジン10の動力を供給することで第1オルタネータ26に発電させる。ここでは、上記ステップS20においてフライホイール32にエンジン動力を供給する指示がなされていないと判断された場合、トルク調節装置34によるリングギアRへの印加トルクを0とする。これは、駆動輪18とフライホイール32との間の動力を遮断するためである。つまり、上式(c1),(c2)に示すように、動力伝達機構30のいずれかの回転体にトルクを印加しない場合には、これら回転体間の動力伝達がなされない。一方、上記ステップS20においてフライホイール32にエンジン動力を供給する指示がなされていると判断された場合、トルク調節装置34によってリングギアRへトルクを印加する。これは、駆動輪18とフライホイール32との間の動力を伝達状態とするためである。
【0064】
一方、第2の発電効率ef2が大きいと判断された場合、同図(C)に示すように、クランク軸10a、変速装置12、減速歯車28及び動力伝達機構30(動力伝達経路r3)を介してエンジン10の動力を供給することで第2オルタネータ40に発電させる。ここでは、トルク調節装置34によってリングギアRにトルクを印加する。これは、エンジン10の動力を動力伝達機構30を介して第2オルタネータ40に伝達させるための設定である。ちなみに、上記ステップS20においてフライホイール32にエンジン動力を供給する指示がなされていると判断された場合、第2オルタネータ40とともにフライホイール32にもエンジン10の動力を伝達可能なように、トルク調節装置34によってリングギアRに印加するトルクを適宜調節すればよい。一方、上記ステップS20においてフライホイール32にエンジン動力を供給する指示がなされていないと判断された場合、第2オルタネータ40の発電によってフライホイール32の回転エネルギが消費される事態を回避すべく、第2オルタネータ40に要求される発電電力の生成に必要な動力を全てサンギアS側から第2オルタネータ40に供給可能なように、トルク調節装置34によってリングギアRに印加するトルクを適宜調節すればよい。
【0065】
なお、上記ステップS10において肯定判断された場合や、ステップS14、S24の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0066】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0067】
(1)第1の発電効率ef1及び第2の発電効率ef2を算出し、算出されたこれら発電効率ef1,ef2のうち大きい方に対応するオルタネータへの発電指示を行った。これにより、単位発電エネルギあたりに要求されるエンジン10の燃料消費量を極力低減することができる。
【0068】
(2)フライホイール回転速度Nfwが規定速度Nα以下であると判断された場合、フライホイール32の回転エネルギを動力供給源とした第2オルタネータ40の発電を禁止した。これにより、フライホイール回転速度Nfwが過度に低くなることを極力抑制することができ、回生制御処理が開始される際のフライホイール回転速度Nfwを極力高い水準に維持することができる。したがって、回生制御処理によって車両の運動エネルギのうちフライホイール32側に供給されるエネルギを増大させることができる。
【0069】
(3)フライホイール回転速度Nfwが規定速度Nαよりも高いと判断された場合、フライホイール32の回転エネルギを用いて第2オルタネータ40に強制的に発電させた。これにより、エンジン10の燃料消費量を増大させることなく第2オルタネータ40に発電させることができる。
【0070】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0071】
図6に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図6において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0072】
図示されるように、エンジン10のクランク軸10aは、クラッチ52を介して変速装置12に機械的に連結されている。ここで、クラッチ52は、エンジン10と変速装置12との間の締結状態および解除状態を切り替えることで、エンジン10と変速装置12との間の動力の伝達及び遮断を切り替える電子制御式の動力伝達遮断手段である。
【0073】
クラッチ52及び変速装置12間には、減速歯車28、クラッチ54及びロック機構56を介して動力伝達機構30が機械的に連結されている。ここで、クラッチ54は、エンジン10や駆動輪18と動力伝達機構30(キャリアC)との間の締結状態及び解除状態を切り替えることで、エンジン10や駆動輪18とキャリアCとの間の動力の伝達及び遮断を切り替える電子制御式の動力伝達遮断手段である。また、ロック機構56は、動力伝達機構30のキャリアCの回転を禁止する制動手段である。
【0074】
動力伝達機構30のサンギアSには、ロック機構58、クラッチ60及び増速歯車36を介してフライホイール32が機械的に連結されている。ここで、ロック機構58は、動力伝達機構30のサンギアSの回転を禁止する制動手段である。また、クラッチ60は、フライホイール32と動力伝達機構30(サンギアS)との間の締結状態及び解除状態を切り替えることで、フライホイール32とサンギアSとの間の動力の伝達及び遮断を切り替える電子制御式の動力伝達遮断手段である。
【0075】
リングギアRとワンウェイクラッチ42の間には、オルタネータ62が機械的に連結されている。オルタネータ62は、上記第1の実施形態の第1オルタネータ26(又は第2オルタネータ40)と同様の機能を有する。
【0076】
なお、リングギアRには、トルク調節装置34及びオルタネータ62の合計トルクが印加されることとなる。このため、例えば車載バッテリが満充電状態となってオルタネータ62のトルクが小さくなる状況下、リングギアRへの印加トルクが不足する場合、この不足分をトルク調節装置34によって印加すればよい。
【0077】
また、本実施形態において、クラッチ52と変速装置12との間に動力伝達機構30を接続するのは、エンジン10から動力伝達機構30に動力を伝達する場合、変速装置12を動力伝達経路に含めることに起因するエネルギロスを回避するためである。
【0078】
さらに、本実施形態において、制御装置44によって回生制御処理が行われる場合、クラッチ52が遮断状態とされる。
【0079】
図7に、本実施形態にかかるFW回転速度維持処理を含む車両制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置44によって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図7において、先の図3に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0080】
この一連の処理では、ステップS10において否定判断された場合には、ステップS12に進む。そして、ステップS12において否定判断された場合には、ステップS14aに進み、フライホイール32に蓄えられた回転エネルギを用いて強制的にオルタネータ62に発電させる。詳しくは、図8(A)に示すように、増速歯車36、クラッチ60、ロック機構58、動力伝達機構30(動力伝達経路r4)を介してフライホイール32の回転エネルギを供給することでオルタネータ62に発電させる。ここでは、クラッチ54を遮断状態にして且つロック機構56によってキャリアCの回転を禁止するとともに、クラッチ60を締結状態とすることで、オルタネータ62に発電させる。
【0081】
図7の説明に戻り、上記ステップS12において肯定判断された場合には、ステップS16aに進み、フライホイール32の回転エネルギを用いたオルタネータ62の発電を禁止する。
【0082】
続くステップS18において否定された場合や、ステップS20の処理が完了した場合には、ステップS26に進み、エンジン10によってオルタネータ62に発電させる。詳しくは、図8(B)に示すように、エンジン10、クラッチ52、減速歯車28、クラッチ54、ロック機構56、動力伝達機構30(動力伝達経路r5)を介してエンジン10の動力を供給することでオルタネータ62に発電させる。ここでは、クラッチ52,54を締結状態とする。
【0083】
さらに、上記ステップS20においてフライホイール32にエンジン動力の供給指示がなされていると判断された場合、エンジン10、クラッチ52、減速歯車28、クラッチ54、ロック機構56、動力伝達機構30、ロック機構58、クラッチ60及び増速歯車36(動力伝達経路r6)を介してエンジン10からフライホイール32へと動力が供給される。ここでは、クラッチ52,54に加えて、クラッチ60を締結状態として且つ、オルタネータ62の発電によってリングギアRにトルクを印加する。これにより、エンジン動力をフライホイールに伝達する場合に、例えばリングギアRへのトルクの印加をトルク調節装置34に全て担わせるときと比較して、エンジン10の生成エネルギのうちトルク調節装置34のブレーキによって熱エネルギとして放出される損失分を低減できる。
【0084】
なお、上記ステップS10において肯定判断された場合や、ステップS14a、S26の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0085】
このように、本実施形態では、上記構成の車載システムにおいてFW回転速度維持処理を適切に行うことができる。さらに、フライホイール32にエンジン動力の供給指示がなされていると判断された場合、エンジン動力をフライホイール32に伝達するために、トルク調節装置34及びオルタネータ62のうちオルタネータ62を優先的に駆動(発電)させてリングギアRにトルクを印加した。これにより、エンジン10の生成エネルギのうちトルク調節装置34のブレーキによって熱エネルギとして放出される損失分を低減することもできる。
【0086】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0087】
・エンジン10の動力生成指示がなされないか否かの判断手法としては、上記第1の実施形態に例示したものに限らない。例えば、ユーザのエンジンブレーキ要求があると判断された場合、エンジン10の動力生成指示がなされないと判断してもよい。
【0088】
・上記第1の実施形態において、フライホイール回転速度Nfwが規定速度Nα以下であると判断された場合、第1オルタネータ26のみに発電させる制御ロジックを採用してもよい。
【0089】
・フライホイール32に蓄えられた回転エネルギを車載機器に供給する手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、車両の加速時においてフライホイール32の回転エネルギを車両の力行として用いる手法を採用してもよい。また、例えば、上記第1の実施形態において、減速歯車28と駆動輪18との間の動力を伝達又は遮断するクラッチ手段を備え、クラッチ手段によって減速歯車28と駆動輪18との間の動力が遮断されることを条件として、停車時においてスタータ22を用いることなく上記回転エネルギをクランク軸10aへの初期回転付与に用いる手法を採用してもよい。
【0090】
・上記第1の実施形態では、フライホイール回転速度Nfwが規定速度Nα以下であると判断された場合、フライホイール32の回転エネルギの利用を禁止する手法を採用したがこれに限らない。例えば、フライホイール32の回転エネルギの使用量を低下させる手法を採用してもよい。具体的には例えば、第2オルタネータ40の発電指示がなされる場合、このオルタネータの発電電力を低下させればよい。なお、第2オルタネータ40の発電電力の低下によって車載機器の電力を賄うことができないと判断された場合には、エンジン10の動力によって第1オルタネータ26に発電させることで、車載機器の電力の不足分を補償すればよい。
【0091】
・上記第2の実施形態において、リングギアRにトルク調節装置34が接続されない構成を採用してもよい。
【0092】
・上記第2の実施形態において、減速歯車28をシャフト14と連結する構成を採用してもよい。
【0093】
・第1の発電効率ef1及び第2の発電効率ef2の算出手法としては、上記第1の実施形態に例示したものに限らない。例えば、第1の発電効率ef1を、エンジン10から第1オルタネータ26に供給される動力に対する第1オルタネータ26の発電電力の割合として算出し、第2の発電効率ef2を、エンジン10から第2オルタネータ40に供給される動力に対する第2オルタネータ40の発電電力の割合として算出してもよい。
【0094】
・上記各実施形態において、先の図3,7のステップS20の処理を除いてもよい。すなわち、この場合、フライホイール回転速度Nfwが規定速度Nα以下であると判断された場合、強制的にエンジン動力がフライホイール32に供給されることとなる。
【0095】
・上記第1の実施形態において、増速歯車36を備えない構成を採用してもよい。この場合、フライホイール32、動力伝達機構30、トルク調節装置34及び第2オルタネータ40等は、図9(動力伝達機構30の断面構成図)に示すように、ハウジング64に収容されて一体的に構成されればよい。なお、この場合、シャフト14とキャリアCとの間をチェーン66及びスプロケット68を介して連結する構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
10…エンジン、18…駆動輪、26…第1オルタネータ、30…動力伝達機構、32…フライホイール、34…トルク調節装置、44…制御装置(車両用制御装置の一実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転エネルギを蓄えるフライホイール、駆動輪、及び自身に作用するトルクを調節可能なトルク調節手段の間の動力伝達を可能とする動力伝達機構であって、前記フライホイール、前記駆動輪及び前記トルク調節手段のそれぞれに機械的に連結される第1の回転体、第2の回転体及び第3の回転体の回転速度を共線図上において1直線上に並ばせる動力伝達機構と、車載主機としての内燃機関とを備える車両に適用され、
前記内燃機関の動力生成指示がなされない状況下において、前記動力伝達機構を介して前記車両の運動エネルギを前記フライホイールに回転エネルギとして蓄える回生制御処理を行う回生処理手段と、
前記回生制御処理が行われる状況以外の状況において、前記フライホイールの回転速度が規定速度以下であると判断されることに基づき、前記フライホイールに蓄えられた回転エネルギを車載機器に供給することに制約を課す処理を行う制約手段とを備えることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記第2の回転体は、前記内燃機関と連結され、
前記回生制御処理が行われる状況以外の状況において前記内燃機関に要求される動力が低いと判断されることに基づき、前記フライホイールの回転速度を前記規定速度よりも高い状態に維持すべく、前記要求される動力を増大させて且つ、前記内燃機関の生成動力を前記動力伝達機構を介して前記フライホイールに供給する回転速度維持手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記第2の回転体は、前記内燃機関と連結され、
前記車両には、前記動力伝達機構を介さずに前記内燃機関から動力供給を受けて発電する第1の発電機と、前記第1の回転体及び前記フライホイールの間に介在する第2の発電機とが更に備えられることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記第1の発電機の発電用に前記内燃機関で生成されるエネルギに対する該第1の発電機の発電エネルギの割合である第1の発電効率と、前記第2の発電機の発電用に前記内燃機関で生成されるエネルギに対する該第2の発電機の発電エネルギの割合である第2の発電効率とを算出する発電効率算出手段と、
前記算出されたこれら発電効率のうち大きいものに対応する発電機の発電処理を行う発電処理手段とを更に備えることを特徴とする請求項3記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記フライホイールの回転速度が前記規定速度よりも高いと判断されることに基づき、前記フライホイールの回転エネルギを用いて前記第2の発電機に発電させる処理を強制的に行う強制手段を更に備えることを特徴とする請求項3又は4記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記第2の回転体は、前記内燃機関と連結され、
前記トルク調節手段には、発電機が含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記車両には、前記駆動輪及び前記第2の回転体の間の動力の伝達及び遮断を切り替える動力伝達遮断手段と、前記第2の回転体の回転を妨げるトルクを付与する制動手段とが更に備えられることを特徴とする請求項6記載の車両用制御装置。
【請求項8】
前記車両には、前記フライホイール及び前記第1の回転体の間の動力の伝達及び遮断を切り替える動力伝達遮断手段と、前記第1の回転体の回転を妨げるトルクを付与する制動手段とが更に備えられることを特徴とする請求項6又は7記載の車両用制御装置。
【請求項9】
前記フライホイールの回転速度が前記規定速度よりも高いと判断されることに基づき、前記フライホイールの回転エネルギを用いて前記発電機に発電させる処理を強制的に行う強制手段を更に備えることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項10】
前記制約手段は、前記制約を課す処理として、前記フライホイールに蓄えられた回転エネルギの前記車載機器への供給を禁止する処理を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254676(P2012−254676A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127702(P2011−127702)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】