説明

車両用制御装置

【課題】基準軸のずれが発生したことを精度よく検出することが可能な車両用制御装置を提供する。
【解決手段】運転者支援システムにおけるヘッド部では、車両に対する物標探査器7の姿勢変化量(傾斜量,加速度)を検知する姿勢検知器8が、物標探査器7とともに筐体30の内部に固定されており、制御部20が、姿勢検知器8にて検知した姿勢変化量が予め設定された閾値変化量(閾値傾斜量,第1の加速度)を上回る場合に、物標探査器7の基準軸のずれが発生したことを検出する。つまり、実際に物標探査器7が車両に対して所定量ずれている場合に、物標探査器7の基準軸のずれが発生しているものとみなすことにより、基準軸のずれが発生したことを精度よく検出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられたレーザレーダ等の基準軸のずれを検出可能な車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行安全性を向上させるための各種制御を行う車両用制御装置では、その制御に必要な構成部品として、レーザレーダ等の物標探査器が車両に搭載されている。例えば、レーザレーダは、車両の前面中央部等に取り付けられ、車両に対して、予め設定された基準軸を含む所定の探査領域に渡ってレーザ光を照射し、そのレーザ光の反射光を受光することにより、車両や歩行者、障害物等の物標を検出する。そして、この検出結果は、例えば先行車両との車間距離を一定に保つ走行制御や、歩行者や障害物の位置を知らせる報知制御等に利用される。
【0003】
このような車両用制御装置では、車両に取り付けられたレーザレーダの基準軸のずれ(つまり、光軸ずれ)が発生すると、本来検出すべき領域から探査領域が乖離したり、物標の位置に係る検出精度が低下したりする可能性がある。このため、車両の走行時にレーザレーダの光軸ずれが発生したことを検出すると、例えば走行制御の実行を禁止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−345518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の車両用制御装置では、レーザレーダ(ひいては車両)に上記探査領域が変化するほどの衝撃が加わったことを検知することにより、光軸ずれが発生したものと推定しているので、必ずしも光軸ずれの発生を精度よく検出できるわけではないという問題があった。
【0006】
例えば、経年変化による取付具の緩み等からレーザレーダが車両に対してずれてしまった場合に、衝撃を検知できないことから光軸ずれの発生を検出できなかったり、衝撃と光軸ずれとの相関性が乏しいことにより、光軸ずれ(ひいては基準軸のずれ)が発生していない状況であっても衝撃によって基準軸のずれが発生したと誤検出してしまったりする可能性があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するために、上記基準軸のずれが発生したことを精度よく検出することが可能な車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた発明である車両用制御装置は、車両に取り付けられた物標探査部と、物標探査部に固定された姿勢検知部と、検出手段とを備える。そして、本発明では、物標探査部が、車両に対して、予め設定された基準軸を含む探査領域に存在する物標を検出し、姿勢検知部が、車両に対する物標検知部の姿勢の変化量(以下「姿勢変化量」とする)を検知する。さらには、検出手段が、姿勢検知部にて検知した姿勢変化量が予め設定された閾値変化量を上回る場合に、上記基準軸のずれが発生したことを検出するように構成した。
【0009】
このような構成では、物標探査部が車両に対して所定量ずれてしまった場合に、閾値を越える姿勢変化量が検知されるので、車両に加わる衝撃の有無に関わらず、物標探査部の基準軸のずれが発生したことを、より確実に検出することが可能となる。また、基準軸のずれが車両に加わる衝撃との相関性に比べて物標探査部のずれとの相関性が極めて高いことから、基準軸のずれに係る誤検出を抑制することも可能となる。よって、本発明によれば、上記基準軸のずれが発生したことを精度よく検出することができる。
【0010】
なお、本発明において、物標探査部は、車両の前面中央部においてその車両の車幅方向と平行に取り付けられ、車両の前進方向に対する右側方および左側方のうち少なくとも一方を向く光軸を上記基準軸として、上記探査領域に渡ってレーザ光を照射し、そのレーザ光の反射波を受光することで物標を検出するレーザレーダであってもよい。
【0011】
この場合、姿勢検知部が、車両における車幅方向の加速度を上記姿勢変化量の一つとして検知する加速度検知部を有する構成において、検出手段は、車両の直進時において加速度検知部にて検知した加速度が、上記閾値変化量として予め設定された第1の加速度を上回る場合に、その車両の車高方向に平行な軸をZ軸とし、上記光軸のずれがこのZ軸回りの方向であると特定してもよい。
【0012】
このような構成では、車両の直進時にレーザレーダが車高方向を軸(Z軸)として所定量だけ回転してしまった場合に、閾値を越える加速度(車幅方向の加速度)が検知されるので、前進方向(車両の全長方向)の加速度の有無に関わらず、レーザレーダの光軸のずれ(光軸ずれ)が発生したことを、より確実に検出することが可能となり、ひいては、Z軸まわりの光軸ずれを精度よく検出することができる。
【0013】
また、姿勢検知部が、重力方向に対する物標探査部の傾斜量を上記姿勢変化量の一つとして検知する傾斜検知部を有する構成において、検出手段は、車両の停止時または定速直進時において傾斜検知部にて検知した傾斜量が、上記閾値変化量として予め設定された閾値傾斜量を上回る場合に、その車両の車高方向に垂直な2軸をX軸およびY軸とし、上記基準軸のずれがこれらX軸およびY軸の少なくとも一方の軸回りの方向であると特定してもよい。なお、閾値傾斜量は、車両の走行道路の勾配をオフセットした傾斜量とする。
【0014】
このような構成では、物標探査部が車幅方向を軸(X軸)として、あるいは全長方向を軸(Y軸)として所定量だけ回転してしまった場合に、閾値を越える傾斜量が検知されるので、ひいては、X軸回り及びY軸回りの少なくとも一方における上記基準軸のずれを精度よく検出することができる。
【0015】
ところで、本発明において、物標探査部が上記レーザレーダである構成では、X軸回り又はY軸回りの光軸ずれが発生した場合、レーザレーダの探査領域について、車両の走行道路(路面)に対する平行度が失われてしまうため、車両の走行安全に係る制御に与える影響が比較的大きくなると考えられる。
【0016】
このため、物標探査部が上記レーザレーダである構成において、検出手段は、上記光軸のずれがこれらX軸およびY軸の少なくとも一方の軸回りの方向であると特定すると、上記傾斜量の大きさに関わらず、レーザレーダの作動を停止させてもよい。
【0017】
このような構成によれば、路面に対する平行度が失われる場合に、レーザレーダの作動を停止させることにより、車両の走行安全に係る制御を確実に禁止することができる。
また、検出手段は、上記光軸のずれがZ軸回りの方向であると特定すると、加速度が、前記第1の加速度よりも大きい値に予め設定された第2の加速度を上回る場合に限り、レーザレーダの作動を停止させてもよい。
【0018】
このような構成によれば、路面に対する平行度が保たれている場合であって、レーザレーダの光軸ずれ(ひいては探査領域のずれ)が許容範囲内であれば、レーザレーダの作動を継続させることにより、車両の走行安全に係る制御が維持され、運転者の利便性を確保することができる。なお、この場合、レーザレーダの作動を継続させつつ、光軸ずれが発生した旨を運転者に報知するとさらによい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】下記実施形態の運転者支援システムの設置場所および探査範囲を車両の平面上に示した模式図である。
【図2】その運転者支援システムの各部の構成を示すブロック図である。
【図3】下記実施形態の物標探査器および姿勢検知器の構成を示す説明図である。
【図4】下記実施形態の姿勢検知器の動作を示す説明図である。
【図5】物標探査器の制御部が実行する光軸判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】探査領域のずれ量の違いを示す説明図である。
【図7】物標探査器の制御部が実行する初期学習処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[全体構成]
図1は、本発明が適用された運転者支援システム1の設置場所および探査範囲を車両の平面上に示した模式図であり、図2は、運転者支援システム1の各部の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、運転者支援システム1は、車両の前面中央部に設置されるヘッド部3と、ヘッド部3に通信可能に接続されて車室内に設置される室内部5とからなる。
【0022】
[ヘッド部]
ヘッド部3は、レーダ波(レーザ光,電波,超音波等)を照射し、その反射波を受信することにより、予め設定された探査領域(ひいては、照射範囲)内に存在する物標を検知する物標探査器7と、物標探査器7の姿勢を検知するための姿勢検知器8とからなる。以下では、車両の前進方向に向かって左を単に「左」、車両の前進方向に向かって右を単に「右」と称するものとする。
【0023】
物標探査器7の探査領域は二つ存在し、車両の左に向けて照射されるレーダ波によって形成される左探査領域SLと、車両の右に向けて照射されるレーダ波によって形成される右探査領域SRとからなる。いずれの探査領域SL,SRも、物標探査器7の設置位置からみた左右方向から、前進方向に所定角度(例えば15°)向いた方向までの範囲をカバーするように設定されている。具体的には、物標探査器7は、レーダ波の照射に係る基準軸が上記のように予め設定された探査領域SL,SRの中心となるよう、車両の製造ラインあるいは整備場にて車両のナンバープレートに取り付けられている。
【0024】
また、物標探査器7は、予め設定された探査周期毎に、各探査領域SL,SRに存在する物標の検出を行い、検出した各物標について、「物標が検知された探査領域」「物標までの距離」「物標との相対速度」を少なくとも含んだ物標情報を生成して、室内部5に供給するように構成されている。
【0025】
[物標探査器]
ここで、図3は、本実施形態の物標探査器7および姿勢検知器8の構成を示す説明図であり、(a)が外観図、(b)が配置図である。また、(a1)及び(b1)が上面図、(a2)及び(b2)が背面の展開図、(a3)及び(a4)が左側及び右側の側面図である。
【0026】
本実施形態の物標探査器7は、図3に示すように、ナンバープレートと車両本体との間に設置された筐体30と、筐体30の側面に固定されたレンズ部40と、筐体30の内部に固定されたレーダ部50とを備えている。
【0027】
筐体30は、その幅及び高さがナンバープレートの幅及び高さよりも若干小さく、車両の正面からみてナンバープレートによって隠れるように、車両本体にナンバープレートを取り付けるためのネジによって共締めされている。なお、筐体30の奥行き(厚み)は30mm以内であるものとする。
【0028】
レンズ部40は、筐体30のレーダ部50から出射されるレーダ波(本実施形態ではレーザ光)の出射窓として、左側側面および右側側面に設けられた左側出射レンズ41および右側出射レンズ42と、レーダ波の反射光の受光窓として、左側側面および右側側面に設けられた左側受光レンズ43および右側受光レンズ44とからなる。
【0029】
レーダ部50は、探査領域SL,SRにレーザ光を出射するための左出射部11および右出射部12と、これら左出射部11および右出射部12から出射される左出射光および右出射光の反射光を受光する左受光部13および右受光部14と、これら左受光部13および右受光部14から送られてくる信号を処理する制御部20とを備えている。
【0030】
左出射部11および右出射部12は、レーダ波となるレーザ光を発生させる光源(図示せず)を有し、その光源から照射されたレーザ光を左側出射レンズ41および右側出射レンズ42の中心に導くことにより、左探査領域SL及び右探査領域SRを生成する。即ち、左出射部11および右出射部12から出射されるレーザ光(左出射光および右出射光)の光軸が前述の基準軸となるように構成されている。
【0031】
左受光部13および右受光部14は、一列に配置された複数の受光素子(ピンフォトダイオード、アバランシェフォトダイオード等)を備えた周知の光検出器からなり、筐体30の外部から左側受光レンズ43および右側受光レンズ44を介して入射する反射光(レーザ光)を受光し、その受光素子からの電圧信号を制御部20に供給する。
【0032】
制御部20は、CPU,ROM,RAM,フラッシュメモリを中心に構成された周知のマイクロコンピュータ(図示せず)と、左受光部13および右受光部14からの電圧信号をマイクロコンピュータが読み取り可能な信号に変換する左信号処理部15および右信号処理部16とからなる。なお、左信号処理部15および右信号処理部16は、マイクロコンピュータと一体に構成されてもよい。
【0033】
また、制御部20は、マイクロコンピュータが行う処理として、後述する光軸判定処理および初期学習処理を実行する。
[姿勢検知器]
次に、本実施形態の姿勢検知器8は、図3(b)に示すように、筐体30の内部においてレーダ部50と一体に固定されており、車両に対する筐体30の姿勢(ひいてはレーダ部50の姿勢)の変化量(姿勢変化量)を検知するものである。
【0034】
具体的には、姿勢検知器8は、重力方向に対するレーダ部50の傾斜量を検知する傾斜センサ17と、車両における車幅方向の加速度を検知する加速度センサ18とを備えている。
【0035】
ここで、図4は、姿勢検知器8の動作を示す説明図であり、(a)は、傾斜センサ17の出力特性を示すグラフ、(b)は、加速度センサ18の検出軸を示す概略図であり、(c)は、車両の軸を示す概略図である。なお、以下では、図4(c)に示すように、車両の車幅方向をX軸、全長方向をY軸、車高方向をZ軸とする。
【0036】
傾斜センサ17は、例えば電解液が充満された円柱状の容器内の中央に電極が設けられてなり、この電極の傾斜に比例する電圧(電極電圧)を発生させる周知のものである。傾斜センサ17の出力電圧は、図4(a)に示すように、当該傾斜センサ17の外部から供給される基準電圧(グランド電圧)に対する電極電圧の比で表される。なお、傾斜センサ17は、筐体30の内部において、筐体30が車両に正常に取り付けられている場合にX−Y平面に平行となる面(水平面)に固定されることが好ましいが、実際には水平面との誤差を吸収するために後述する初期学習処理によって、模擬的な水平状態を表す初期値が設定される。
【0037】
加速度センサ18は、X軸方向に係る車両の加速度を検知するように筐体30の内部に固定されており、図4(b)に示すように、車両の直進時において検出軸方向の加速度が発生した場合に、X−Y平面上においてZ軸回りに当該加速度センサ18が車両本体からずれていると判定するためのものである。
【0038】
つまり、姿勢検知器8は、レーダ部50に固定されているので、傾斜センサ17がX軸回り及びY軸回りの少なくとも一方の光軸ずれを検知し、加速度センサ18がZ軸回りの光軸ずれを検知するようにそれぞれ構成されていることになる。
【0039】
[室内部]
図2に戻り、室内部5は、運転席の正面付近に設置されるスピーカ22と、運転席の右側に位置するAピラー(フロントウインドウを支える左右両側の支柱)に設置される右ランプ23と、運転席の左側に位置するAピラーに設置される左ランプ24と、ヘッド部3(物標探査器7)から物標情報を取得し、取得した物標情報の内容に従って、スピーカ22,右ランプ23,左ランプ24を用いた報知制御を行うマイクロコンピュータ(マイコン)25とを備えている。
【0040】
また、室内部5は、車両状態を検出するために設けられた各種スイッチやセンサ等からなるセンサ群32と、図示しないGPS装置から自車両の位置を取得し、予め用意された地図データに基づき、自車両周辺の地図や、地図上での自車両の位置等を表示し、経路設定,経路案内などを行う周知のナビゲーション装置33とを備えている。
【0041】
なお、地図データには、道路の形状(直線,カーブ等)や勾配(その方向を含む)を表す道路データが含まれている。さらに、道路データには、運転者にとって見通しの悪い交差点(十字路やT字路等)を表す交差道路情報が含まれている。
【0042】
そして、ナビゲーション装置33は、このような道路データに基づいて、自車両が走行中の道路の形状および勾配を表す走行道路情報を、ヘッド部3(物標探査器7)に出力するとともに、ヘッド部3(物標探査器7)から後述する通知情報を入力すると、その入力情報を表示するように構成されている。
【0043】
マイコン25は、このような道路データ(交差道路情報)に基づいて、自車両が十字路やT字路等に進入するタイミングを検出すると、ヘッド部3(物標探査器7)から入力される物標情報に基づいて、運転者にとって注意を要する物標(注意物標)が探査領域SL,SRに存在すると判定した場合、注意物標が存在する側のランプ23,24を点灯させたり、スピーカ22に警告音を出力させたりする。
【0044】
また、マイコン25は、このような運転支援制御を行うとともに、物標探査器7から物標情報を取得できない場合には、運転支援制御を禁止し、その旨をナビゲーション装置33に表示することにより、運転者に報知する。
【0045】
なお、センサ群32には、自車両の速度(車速)を検出する車速センサ36や、自車両の操舵角を検出する操舵角センサ38が少なくとも含まれており、これらセンサ36,38の検出値を表すデータが車両の状態情報としてヘッド部3(物標探査器7)に出力されるようになっている。
【0046】
[光軸判定処理]
ここで、物標探査器7の制御部20が実行する光軸判定処理を、図5のフローチャートに沿って説明する。なお、本処理は、例えば自車両のIGスイッチがオンにされると自動的に起動する。但し、本処理によって一旦、レーダ部50の作動が停止させると、専用のスイッチが手動によってオンにされる(リセットされる)まで、起動しないようになっている。
【0047】
図5に示すように、本処理が起動すると、まず、S110では、センサ群32から入力される状態情報に基づいて、車速センサ36および操舵角センサ38の検出値(つまり、車速および操舵角)のモニタリングを開始する。
【0048】
続くS120では、S110によるモニタリングに基づいて、現在の自車両の状態について、車速が予め設定された初期速度M(例えば60km/h)以上であり、且つ、操舵角がゼロであるという第1条件を満たしているか否かを判断し、ここで、肯定判断した場合にはS170に移行し、一方、否定判断した場合にはS130に移行する。つまり、第1条件は、車両の高速直進時に成立することになる。
【0049】
S130では、S110によるモニタリングに基づいて、現在の自車両の状態について、車速が予め設定された第1の初期期間のあいだ増減がなく(つまり、加減速がなく)、且つ、現在の操舵角がゼロであるという第2条件を満たしているか否かを判断し、ここで、肯定判断した場合にはS135に移行し、一方、否定判断した場合にはS120に戻る。つまり、第2条件は、車両の停止時または定速直進時に成立することになる。
【0050】
続くS135では、ナビゲーション装置33から入力される走行道路情報に基づいて、現在の自車両の走行道路について、直進方向(Y軸方向に相当)および幅方向(X軸方向に相当)の勾配がゼロであるという第3条件を満たしているか否かを判断し、ここで、肯定判断した場合にはS140に移行し、一方、否定判断した場合にはS137に移行する。なお、S137では、重力方向に対するレーダ部50の傾斜量に対してY軸方向およびX軸方向の道路勾配がオフセットされるように閾値傾斜量を設定して、S140に移行する。
【0051】
S140では、姿勢検知器8から入力される傾斜センサ17の検知結果(つまり、重力方向に対するレーダ部50の傾斜量)のモニタリングを開始し、続いて、S140にて予め設定された第2の初期期間のあいだモニタリングされた傾斜量の平均値を算出する(S145)。なお、第2の初期期間は、後述する初期学習処理にて設定される期間であり、具体的には、S145では、上記第2条件が成立している間に、傾斜量の入力回数を加算する傾斜量用カウンタの値がN(例えば1000)を示すと、そのN回入力された傾斜量の平均値を算出して、傾斜量用カウンタの値をリセットする。ちなみに、傾斜量用カウンタの値がNを示す前に、上記第2条件が満たされなくなると、傾斜量用カウンタの値をリセットして、S120に移行することになる。
【0052】
続くS150では、S145にて平均化された傾斜量が予め設定された閾値傾斜量を上回るか否かを判断し、ここで、肯定判断した場合には、予め用意されたX・Y軸ずれフラグをオンに設定して、S160に移行し、一方、否定判断した場合には、予め用意されたX・Y軸ずれフラグをオフに設定して、S120に戻る。
【0053】
S160では、X・Y軸ずれフラグの設定がオンになっているため、X軸回り及びY軸回りの少なくとも一方の光軸ずれが発生している旨を表す通知情報をナビゲーション装置33に出力し、続いて、当該物標探査器7の作動を停止させて(S165)、本処理を終了する。なお、物標探査器7の作動が停止すると、室内部5のマイコンから運転支援制御を禁止する旨を表す情報がナビゲーション装置33に出力されることになる。
【0054】
一方、前述の第1条件を満たした場合(S120;YES)に移行するS170では、姿勢検知器8から入力される加速度センサ18の検知結果(つまり、車幅方向の加速度)のモニタリングを開始し、続いて、S170にて予め設定された第3の初期期間のあいだモニタリングされた加速度の平均値を算出する(S175)。なお、第3の初期期間は、後述する初期学習処理にて設定される期間であり、具体的には、S175では、上記第1条件が成立している間に、加速度の入力回数を加算する加速度用カウンタの値がK(例えば10000)を示すと、そのK回入力された加速度の平均値を算出して、加速度用カウンタの値をリセットする。ちなみに、加速度用カウンタの値がKを示す前に、上記第1条件が満たされなくなると、加速度用カウンタの値をリセットして、S130に移行することになる。
【0055】
続くS180では、S175にて平均化された加速度が予め設定された第1の加速度を上回るか否かを判断し、ここで、肯定判断した場合には、予め用意されたZ軸ずれフラグをオンに設定して、S185に移行し、一方、否定判断した場合には、予め用意されたZ軸ずれフラグをオフに設定して、S120に戻る。
【0056】
そして、S185では、Z軸ずれフラグの設定がオンになっているため、S175にて平均化された加速度が、上記第1の加速度よりも大きい値に予め設定された第2の加速度を上回るか否かを判断し、ここで、肯定判断した場合には、予め用意された作動禁止フラグをオンに設定して、S190に移行し、一方、否定判断した場合には、予め用意された作動禁止フラグをオフに設定して、S165に移行することにより、物標探査器7の作動を停止させて(S165)、本処理を終了する。つまり、S165では、X・Y軸ずれフラグの設定がオンである場合、又は、作動禁止フラグの設定がオンである場合に、物標探査器7の作動を停止させている。
【0057】
そして、S190では、Z軸ずれフラグの設定がオンであり、且つ、作動禁止フラグの設定がオフになっているため、物標探査器7について、Z軸回りの光軸ずれが発生している旨を表す通知情報をナビゲーション装置33に出力し、S130に戻る。
【0058】
このように、本処理では、X軸回りまたはY軸回りについて閾値を上回る光軸ずれが発生すると、物標探査器7の探査領域SL,SRが車高方向(Z軸方向)に傾くことになることから、車両から検出可能な物標までの距離(探査距離)が極めて小さくなってしまう可能性があるため、直ちに当該物標探査器7の作動を停止させることにより、運転支援制御を禁止することにしている。
【0059】
また、本処理では、Z軸回りについて閾値を上回る光軸ずれが発生しても、物標探査器7の探査領域SL,SRとX−Y平面との平行度が維持されることから、探査距離に影響を及ぼさずに済み、光軸ずれが小さい場合には注意物標が非検出となる可能性が小さいため(図6(a)参照)、光軸ずれの発生を運転者に報知しつつ、運転支援制御を継続することにしている。一方、探査距離に影響を及ぼさずに済むものの、光軸ずれが大きい場合には、注意物標が被検出となる可能性が大きいため(図6(b)参照)、直ちに当該物標探査器7の作動を停止させることにより、運転支援制御を禁止することにしている。
【0060】
なお、本処理において、初期速度,第2の初期期間,第3の初期期間,閾値傾斜量におけるオフセット前の初期値,第1の加速度,第2の加速度は、以下の初期学習処理との整合性を図るために、制御部20のフラッシュメモリに予め記憶されている。
【0061】
[初期学習処理]
次に、物標探査器7の制御部20が実行する初期学習処理を、図7のフローチャートに沿って説明する。なお、本処理は、車両の製造ラインあるいは整備場にて、車両のナンバープレートに取り付けられ、例えば専用のスイッチが手動によってオンにされると起動する。
【0062】
図7に示すように、本処理が起動すると、まず、S210では、姿勢検知器8から入力される傾斜センサ17の検知結果を、フラッシュメモリに予め記憶されている第2の初期期間に相当する回数Nだけモニタリング(取り込み)を実施したか否かを判断し、ここで、肯定判断した場合にはS220に移行し、否定判断した場合には、傾斜センサ17の検知結果(傾斜量)の取り込みを実施し(S215)、S210に戻る。
【0063】
S220では、第2の初期期間のあいだモニタリングされた傾斜量の平均値を算出し、続いて、車両を直進走行させ(S225)、さらに車両を加速させ(S227)、S230に移行する。
【0064】
S230では、車速センサ36の検出値に基づいて、車速が初期速度M以上であるか否かを判断し、ここで、肯定判断した場合にはS240に移行し、一方、否定判断した場合にはS227に戻る。
【0065】
S240では、姿勢検知器8から入力される加速度センサ18の検知結果を、フラッシュメモリに予め記憶されている第3の初期期間に相当する回数Kだけモニタリング(取り込み)を実施したか否かを判断し、ここで、肯定判断した場合にはS250に移行し、否定判断した場合には、傾斜センサ17の検知結果(車幅方向の加速度)の取り込みを実施し(S245)、S240に戻る。
【0066】
S250では、第3の初期期間のあいだモニタリングされた車幅方向の加速度の平均値を算出し、S260に移行する。
最後に、S260では、S220にて平均化された傾斜量を、閾値傾斜量におけるオフセット前の初期値とし、S250にて平均化された車幅方向の加速度を、第1の加速度としてそれぞれ設定し、フラッシュメモリに記憶する。さらに、予め設定されたバッファ加速度を第1の加速度に加算したものを第2の加速度として、フラッシュメモリに記憶し、本処理を終了する。なお、バッファ加速度は、車幅方向の加速度と光軸ずれ(ひいては探査領域SL,SRのずれ)との相関性を実験やシミュレーション等によって求め、その相関性から探査領域SL,SRのずれに対する許容度として設定されている。
【0067】
[効果]
以上説明したように、運転者支援システム1におけるヘッド部3では、車両に対する物標探査器7の姿勢変化量(傾斜量,加速度)を検知する姿勢検知器8が、物標探査器7に固定されており、制御部20が、姿勢検知器8にて検知した姿勢変化量が予め設定された閾値変化量(閾値傾斜量,第1の加速度)を上回る場合に、物標探査器7の基準軸のずれが発生したことを検出する。
【0068】
したがって、運転者支援システム1によれば、実際に物標探査器7が車両に対して所定量ずれていることを検出するので、基準軸のずれ(光軸ずれ)が発生したことを精度よく検出することができる。
【0069】
また、運転者支援システム1では、運転者にとって見通しの悪い交差点にて探査領域SL,SRに注意物標が存在する場合に、運転者にその注意物標の存在を報知する制御(運転者支援制御)を行うとともに、所定量を上回る光軸ずれを検出した場合に、物標探査器7の作動を停止することにより、運転者支援制御の実行を禁止する。よって、誤った物標情報に基づいて、運転者支援制御の精度が低下してしまうことを防止できる。
【0070】
また、運転者支援システム1では、Z軸回りの光軸ずれが小さい場合には、光軸ずれの発生を運転者に報知しつつ、運転支援制御を継続するので、運転者支援制御の精度を維持可能な許容範囲において利用者の利便性を確保することができる。
【0071】
また、運転者支援システム1では、初期学習処理において閾値変化量(閾値傾斜量,第1の加速度)を設定する際の条件(初期速度,第2の初期期間,第3の初期期間など)を、光軸判定処理において用いるため、より精度よく光軸ずれの発生を検出することができる。
【0072】
[発明との対応]
なお、本実施形態において、物標探査器7が物標探査部、姿勢検知器8が姿勢検知部、制御部20が検出手段、加速度センサ18が加速度検知部、傾斜センサ17が傾斜検知部に相当する。
【0073】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0074】
例えば、上記実施形態の運転者支援システム1では、制御部20がヘッド部3に設けられているが、これに限定されるものではなく、室内部5に設けられてもよい。さらに言うと、制御部20が行う各種処理を室内部5のマイコン25が行うようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態の光軸判定処理では、道路勾配がゼロでない場合に(S135;NO)、閾値傾斜量をオフセットする(S137)ようにしているが、これに限定されるものではなく、加減速がなく、且つ操舵角がゼロである場合に(S130)、道路勾配がゼロであるとみなして、傾斜量のモニタリングを開始する(S140)ようにしてもよい。さらに言うと、初期学習処理においてX軸方向の道路勾配を予め初期設定値(≒0)としてフラッシュメモリに記憶させてもよい。
【0076】
また、上記実施形態の探査領域SL,SRは、車両の左右方向に設定されているが、これに限定されるものではなく、例えば車両の前進方向あるいは後進方向であってもよい。さらに言うと、上記実施形態の物標探査器7および姿勢検知器8は、車両の前面中央部に設置されているが、これに限定されるものではなく、予め設定された探査領域SL,SRに応じて車両に設置されればよい。
【符号の説明】
【0077】
1…運転者支援システム、3…ヘッド部、5…室内部、7…物標探査器、8…姿勢検知器、11…左出射部、12…右出射部、13…左受光部、14…右受光部、15…左信号処理部、16…右信号処理部、17…傾斜センサ、18…加速度センサ、20…制御部、22…スピーカ、23…右ランプ、24…左ランプ、25…マイコン、30…筐体、32…センサ群、33…ナビゲーション装置、36…車速センサ、38…操舵角センサ、40…レンズ部、41…左側出射レンズ、42…右側出射レンズ、43…左側受光レンズ、44…右側受光レンズ、50…レーダ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられ、該車両に対して、予め設定された基準軸を含む探査領域に存在する物標を検出する物標探査部と、
前記物標探査部に固定され、前記車両に対する該物標探査部の姿勢の変化量である姿勢変化量を検知する姿勢検知部と、
前記姿勢検知部にて検知した前記姿勢変化量が予め設定された閾値変化量を上回る場合に、前記基準軸のずれが発生したことを検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記物標探査部は、前記車両の前面中央部において該車両の車幅方向と平行に取り付けられ、該車両の前進方向に対する右側方および左側方のうち少なくとも一方を向く光軸を前記基準軸として、前記探査領域に渡ってレーザ光を照射し、該レーザ光の反射波を受光することで物標を検出するレーザレーダであり、
前記姿勢検知部は、前記車両における前記車幅方向の加速度を前記姿勢変化量の一つとして検知する加速度検知部を有し、
前記検出手段は、前記車両の直進時において前記加速度検知部にて検知した加速度が、前記閾値変化量として予め設定された第1の加速度を上回る場合に、該車両の車高方向に平行な軸をZ軸とし、前記光軸のずれが該Z軸回りの方向であると特定することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記姿勢検知部は、重力方向に対する前記物標探査部の傾斜量を前記姿勢変化量の一つとして検知する傾斜検知部を有し、
前記検出手段は、車両の停止時または定速直進時において前記傾斜検知部にて検知した傾斜量が、前記閾値変化量として予め前記車両の走行道路の勾配がオフセットされた閾値傾斜量を上回る場合に、該車両の車高方向に垂直な2軸をX軸およびY軸とし、前記基準軸のずれが該X軸およびY軸の少なくとも一方の軸回りの方向であると特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記姿勢検知部は、重力方向に対する前記レーザレーダの傾斜量を前記姿勢変化量の一つとして検知する傾斜検知部を有し、
前記検出手段は、車両の停止時または定速直進時において前記傾斜検知部にて検知した傾斜量が、前記閾値変化量として予め前記車両の走行道路の勾配がオフセットされた閾値傾斜量を上回る場合に、該車両の車高方向に垂直な2軸をX軸およびY軸とし、前記光軸のずれが該X軸およびY軸の少なくとも一方の軸回りの方向であると特定するとともに、該光軸のずれを特定すると、前記傾斜量の大きさに関わらず、前記レーザレーダの作動を停止させることを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記光軸のずれが前記Z軸回りの方向であると特定すると、前記加速度が、前記第1の加速度よりも大きい値に予め設定された第2の加速度を上回る場合に限り、前記レーザレーダの作動を停止させることを特徴とする請求項2または請求項4に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19799(P2013−19799A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153999(P2011−153999)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】