説明

車両用制御装置

【課題】駆動システムの未始動時においても、車両ずり下がりを防止するための十分な制動力を発生させることができるとともに、十分な操舵アシスト力を発生させることができる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両に搭載される車両用制御装置であって、ハイブリッドシステムの始動および未始動を検出するHVECUを備え、HVECUが、ハイブリッドシステムの未始動時(ステップS1)に、シフトポジションセンサによりPレンジ以外のシフトレンジが検出され、かつ車速Vが発生したこと(ステップS2)を条件として、主バッテリと高圧回路とが電気的に接続されるようシステムメインリレーを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源として電動機を備えたハイブリッド車両および電気車両に適用される車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮や燃費向上の観点から、内燃機関および電動機のいずれか一方、あるいは双方により駆動力を発生させて走行するハイブリッド車両や電動機の駆動力により走行する電気車両が注目されている。
【0003】
特に、ハイブリッド車両には、上記内燃機関および電動機に加えて昇圧コンバータおよびインバータ等からなる高圧回路、高圧回路に電力を供給したり発電機で発電された電力を蓄えるHVバッテリや、これらを統括制御するハイブリッド制御装置(以下、HVECUという)等で構成された駆動システム、いわゆるハイブリッドシステムが搭載されている。ハイブリッドシステムは、例えば所定の条件下でパワースイッチがONされると始動し、パワースイッチがOFFされると停止し、未始動状態となる。ハイブリッドシステムの未始動時は、高圧回路とHVバッテリとの間に配設されたシステムメインリレーによりHVバッテリから高圧回路に供給される直流電力が遮断されるようになっている。
【0004】
従来、このようなハイブリッドシステムに用いられる車両用制御装置として、坂路走行中にインバータに何らかの故障が生じてインバータが駆動禁止状態とされた場合に、車両ずり下がりを防止するべく、ブレーキ装置を作動してハイブリッド車両を減速、停止させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、登坂路に停車中のハイブリッド車両が発進する際に、電動機により発生させられるクリープトルクを路面勾配に応じて平坦路のクリープトルクより増加させることにより、車両ずり下がりを防止するようにした車両用制御装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−210415号公報
【特許文献2】特開2007−185070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来の車両用制御装置は、いずれもハイブリッドシステムが始動していることを前提として、ブレーキ装置を作動させたり、クリープトルクを増加させるものである。このため、ハイブリッドシステムの未始動時は、システムメインリレーにより高圧回路がHVバッテリから遮断された状態であるため、ブレーキ装置やパワーステアリング装置の電源が確保できない。したがって、ハイブリッドシステムの未始動時は、ブレーキ装置によって所望の制動力を発生させることができず、車両ずり下がりを防止することに関して十分な対策が講じられていないという問題があった。また、ハイブリッドシステムの未始動時は、パワーステアリング装置によって十分な操舵アシスト力を発生させることができないという問題もあった。
【0008】
また、電気車両においてもハイブリッドシステムと同様の駆動システムを搭載しており、上述のハイブリッド車両と同様の問題を有している。
【0009】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、駆動システムの未始動時においても、車両ずり下がりを防止するための十分な制動力を発生させることができるとともに、十分な操舵アシスト力を発生させることができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両用制御装置は、上記目的達成のため、(1)少なくとも電動機を駆動源として備えた車両に搭載される車両用制御装置であって、前記電動機に電力を供給する高圧バッテリと、前記高圧バッテリと前記電動機との間に接続された高圧回路と、前記高圧バッテリと前記高圧回路とを電気的に遮断あるいは接続するリレー手段と、前記高圧回路に接続され、前記高圧回路から供給される電力を用いて操舵ハンドルの操舵をアシストするパワーステアリング手段と、前記高圧回路に接続され、前記高圧回路から供給される電力を用いて前記車両の制動を行うブレーキ手段と、前記車両を駆動する駆動システムの始動および未始動を検出するシステム状態検出手段と、シフトポジションを検出するシフトポジション検出手段と、前記リレー手段により前記高圧バッテリと前記高圧回路とが電気的に遮断されている状態である前記駆動システムの未始動時に、前記シフトポジション検出手段により前記車両の停止を維持するパーキングレンジ以外のシフトレンジが検出され、かつ車速が発生したことを条件として、前記高圧バッテリと前記高圧回路とが電気的に接続されるよう前記リレー手段を制御する制御手段と、を備えた構成を有する。
【0011】
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、駆動システムの未始動時にパーキングレンジ以外のシフトレンジに操作され、かつ車速が発生したことを条件として、制御手段により高圧バッテリと高圧回路とが電気的に接続されるようリレー手段が制御される。したがって、本発明に係る車両用制御装置は、駆動システムの未始動時においてもパワーステアリング手段の駆動源である電動モータおよびブレーキ手段の駆動源である電動ポンプの電源を確保することができる。この結果、本発明に係る車両用制御装置は、駆動システムの未始動時においても、車両ずり下がりを防止するための十分な制動力を発生させることができるとともに、十分な操舵アシスト力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動システムの未始動時においても、車両ずり下がりを防止するための十分な制動力を発生させることができるとともに、十分な操舵アシスト力を発生させることができる車両用制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッドシステムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るハイブリッドシステム未始動時のシステムメインリレー接続制御を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、ハイブリッド車両に適用されるハイブリッドシステムの概略構成図である。本実施の形態においては、本発明に係る車両用制御装置を駆動システムとしてのハイブリッドシステムに適用した例について説明するが、燃料電池車などの電気車両の駆動システムにも適用可能である。
【0016】
図1に示すように、車両としてのハイブリッド車両1には、エンジン2と、モータジェネレータMG1(以下、単にMG1という)と、モータジェネレータMG2(以下、単にMG2という)と、車両用制御装置10とを含んで構成されたハイブリッドシステム100が搭載されている。また、車両用制御装置10は、主バッテリ11と、高圧回路12と、システムメインリレー13と、HVECU14と、パワーステアリング装置15と、ブレーキ装置16とを含んで構成されている。
【0017】
エンジン2は、燃料を燃焼させることにより燃料のエネルギを機械的仕事に変換して出力する熱機関であり、ピストン往復動機関である。
【0018】
MG1は、エンジン2と接続され、エンジン2の始動を行い得る電動機として動作するとともに、エンジン2によって駆動される発電機として動作するようになっている。
【0019】
MG2は、駆動輪5に連結され、この駆動輪5を駆動する電動機として動作するようになっている。本実施の形態におけるMG2は、本発明に係る電動機を構成する。ここで、本実施の形態では、エンジン2およびMG2が駆動輪5を駆動する駆動源として用いられる。
【0020】
主バッテリ11は、充放電可能な直流電源であり、例えばニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池で構成される。主バッテリ11は、システムメインリレー13を介してコンデンサC1に電力を供給する。つまり、主バッテリ11は、コンデンサC1に電力を供給することによりMG2に電力を供給可能に構成されている。また、主バッテリ11は、システムメインリレー13を介してDC/DCコンバータ17に対しても電力を供給可能である。さらに、主バッテリ11は、昇圧コンバータ20から電源ラインPL1に出力される電力を受けて充電される。本実施の形態における主バッテリ11は、本発明に係る高圧バッテリを構成する。
【0021】
高圧回路12は、コンデンサC1と、昇圧コンバータ20と、インバータ21、22と、コンデンサC2とを備えている。また、高圧回路12には、DC/DCコンバータ17が接続されている。高圧回路12は、電源ラインPL1および接地ラインSL1を介して主バッテリ11に接続されている。また、高圧回路12は、インバータ21、22を介してMG1およびMG2に接続されている。すなわち、高圧回路12は、主バッテリ11とMG1およびMG2との間に接続されている。
【0022】
コンデンサC1は、電源ラインPL1と接地ラインSL1との間に接続されている。このコンデンサC1は、電源ラインPL1と接地ラインSL1との間の電圧変動を平滑化する。
【0023】
昇圧コンバータ20は、電源ラインPL1および接地ラインSL1を介して主バッテリ11に接続されるとともに、後述する電源ラインPL2および接地ラインSL2を介してインバータ21、22に接続されている。昇圧コンバータ20は、コンデンサC1から供給される電圧をHVECU14からの信号PWCに基づいて昇圧し、その昇圧した電圧をコンデンサC2に供給する。また、昇圧コンバータ20は、コンデンサC2から供給される電圧をHVECU14からの信号PWCに基づいて降圧し、その降圧した電圧をコンデンサC1に供給する。
【0024】
インバータ21、22の各々は、電源ラインPL2と接地ラインSL2との間に並列に接続されるU相アーム、V相アームおよびW相アームを含む(図示せず)。インバータ21のU、V、W各相アームにおける上アームと下アームとの接続点は、MG1のU、V、W各相コイル(図示せず)にそれぞれ接続されている。また、インバータ22のU、V、W各相アームにおける上アームと下アームとの接続点は、MG2のU、V、W各相コイル(図示せず)にそれぞれ接続されている。
【0025】
インバータ21は、エンジン2の始動時、コンデンサC2から受ける直流電圧をHVECU14からの信号PWI1に基づいて交流電圧に変換してMG1に出力し、MG1を駆動する。これにより、エンジン2がクランキングされ、エンジン2が始動する。また、インバータ21は、エンジン2の動力を用いてMG1が発電した交流電圧をHVECU14からの信号PWI1に基づいて直流電圧に変換してコンデンサC2に出力する。
【0026】
インバータ22は、コンデンサC2から受ける直流電圧をHVECU14からの信号PWI2に基づいて交流電圧に変換してMG2に出力し、MG2を駆動する。これにより、MG2は、ハイブリッド車両1の駆動トルクを発生する。また、インバータ22は、ハイブリッド車両1の回生制動時、駆動輪5からの回転力を受けてMG2が発電した交流電圧をHVECU14からの信号PWI2に基づいて直流電圧に変換してコンデンサC2に出力する。
【0027】
コンデンサC2は、電源ラインPL2と接地ラインSL2との間に接続されている。このコンデンサC2は、電源ラインPL2と接地ラインSL2との間の電圧変動を平滑化する。
【0028】
DC/DCコンバータ17は、電源ラインPL1と接地ラインSL1との間に接続されている。また、DC/DCコンバータ17には、補機バッテリ18が接続されている。
【0029】
DC/DCコンバータ17は、HVECU14からの信号CTL1に基づいて、電源ラインPL1から供給される直流電圧を補機バッテリ18の電圧レベルに変換して補機バッテリ18に出力する。また、DC/DCコンバータ17は、HVECU14からの信号CTL2に基づいて、補機バッテリ18から供給される直流電圧を電源ラインPL1の電圧レベルに変換して電源ラインPL1に出力する。
【0030】
補機バッテリ18は、充放電可能な直流電源であり、例えば鉛電池で構成される。補機バッテリ18は、DC/DCコンバータ17によって電源ラインPL1から電力の供給を受けて充電される。そして、補機バッテリ18は、HVECU14や電圧センサ30、31、32、その他図示しない各補機に動作電力を供給する。また、補機バッテリ18は、DC/DCコンバータ17によって電源ラインPL1に電力を供給することができる。
【0031】
システムメインリレー13は、主バッテリ11と高圧回路12との間に設けられており、リレーSMR1と、リレーSMR2とを有している。システムメインリレー13は、主バッテリ11と高圧回路12とを電気的に遮断あるいは接続するようになっている。本実施の形態におけるシステムメインリレー13は、本発明に係るリレー手段を構成する。
【0032】
リレーSMR1は、主バッテリ11の正極と電源ラインPL1との間に接続される。リレーSMR1は、HVECU14からの信号SE1が活性化されると、電源ラインPL1を主バッテリ11の正極と接続する。
【0033】
リレーSMR2は、主バッテリ11の負極と接地ラインSL1との間に接続される。リレーSMR2は、HVECU14からの信号SE2が活性化されると、接地ラインSL1を主バッテリ11の負極と接続する。
【0034】
HVECU14には、電圧センサ30、31、32、シフトポジションセンサ33および車速センサ34が接続されている。電圧センサ30は、主バッテリ11の電圧VBを検出し、検出した電圧VBをHVECU14に出力するようになっている。電圧センサ31は、コンデンサC1の両端の電圧VLを検出し、検出した電圧VLをHVECU14に出力するようになっている。電圧センサ32は、コンデンサC2の両端の電圧VHを検出し、検出した電圧VHをHVECU14に出力するようになっている。
【0035】
シフトポジションセンサ33は、シフトレバー8の操作位置、つまりシフトレンジを検出し、検出したシフトレンジに対応する信号をHVECU14に出力するようになっている。シフトレンジとしては、例えばハイブリッド車両1の停止状態を維持するパーキングレンジ(以下、Pレンジという)、走行用のドライブレンジ(以下、Dレンジという)やブレーキレンジ(以下、Bレンジという)、中立状態のニュートラルレンジ(以下、Nレンジ)が挙げられる。本実施の形態におけるシフトポジションセンサ33は、本発明に係るシフトポジション検出手段を構成する。
【0036】
車速センサ34は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出し、検出した車速VをHVECU14に出力するようになっている。
【0037】
HVECU14は、電圧センサ31、32により検出された電圧VL、VHに基づき、図示されない外部ECUからMG1、MG2のトルク指令値TR1、TR2およびモータ回転数MRN1、MRN2を取得する。HVECU14は、取得したこれらの信号に基づいて、昇圧コンバータ20を駆動するための信号PWCを生成し、生成した信号PWCを昇圧コンバータ20に出力するようになっている。
【0038】
また、HVECU14は、トルク指令値TR1およびモータ電流ならびに電圧VHに基づいて、MG1を駆動するための信号PWI1を生成し、生成した信号PWI1をインバータ21に出力するようになっている。さらに、HVECU14は、トルク指令値TR2およびモータ電流ならびに電圧VHに基づいて、MG2を駆動するための信号PWI2を生成し、生成した信号PWI2をインバータ22に出力するようになっている。MG1、MG2のモータ電流は、図示しない電流センサによって検出される。
【0039】
また、HVECU14は、図示しないパワースイッチの操作に応じてハイブリッドシステム100の始動を行うようになっている。パワースイッチは、ハイブリッド車両1の車室内に設けられ、電源ポジションの切り替えを行うものである。ハイブリッドシステム100は、例えば運転者がブレーキペダル(図示せず)を踏みながらパワースイッチを押すことによりシステムチェックを経て起動すなわち始動される。また、例えばブレーキペダルを踏まずにパワースイッチが押された場合には、OFF、ACC、IG、OFFの順に電源ポジションが切り替わるようになっている。ここで、例えば電源ポジションがACCやIGの場合は、ハイブリッドシステム100は未始動状態とされる。なお、電源ポジションの切り替えは、パワースイッチに限らず、例えばイグニッションキーによって行われるものであってもよい。HVECU14は、パワースイッチの操作状態に応じてハイブリッドシステム100の始動および未始動を検出するようになっている。本実施の形態において、このようなハイブリッドシステム100の始動および未始動を検出するHVECU14は、本発明に係るシステム状態検出手段を構成する。
【0040】
HVECU14は、ハイブリッドシステム100の未始動時であって所定条件成立時に、後述するシステムメインリレー接続制御を実行するようになっている。すなわち、HVECU14は、ハイブリッドシステム100の未始動時に、シフトポジションセンサ33によりPレンジ以外のシフトレンジが検出され、かつ車速Vが発生したことを条件として、主バッテリ11と高圧回路12とが電気的に接続されるようシステムメインリレー13を制御する。本実施の形態において、このようなシステムメインリレー接続制御を実行するHVECU14は、本発明に係る制御手段を構成する。
【0041】
パワーステアリング装置15は、図示しない電動モータおよびステアリング機構を備え、電動モータの出力トルクをステアリング機構のステアリングシャフトやラックバーなどに伝達することによって、運転者の操舵操作をアシストする装置である。特に、上記電動モータは、高圧回路12に接続されており、高圧回路12から供給される電力を用いて図示しない操舵ハンドルの操舵をアシストする。すなわち、パワーステアリング装置15は、上記電動モータによって操舵アシスト力を発生させる。本実施の形態におけるパワーステアリング装置15は、本発明に係るパワーステアリング手段を構成する。
【0042】
ブレーキ装置16は、ブレーキECU41と、ブレーキアクチュエータ42と、ホイールシリンダ43とを備えている。本実施の形態では、説明の便宜上、駆動輪5に対応するホイールシリンダ43のみを図示したが、従動輪にも同様にホイールシリンダ43が設けられている。ブレーキ装置16は、ホイールシリンダ43に油圧を作用させることにより制動トルクを付与するようになっている。
【0043】
ブレーキECU41は、HVECU14に接続されており、HVECU14からの制御信号によって駆動輪5および従動輪(図示せず)に制動トルクを作用させるとともに、必要に応じてブレーキ装置16の状態に関するデータをHVECU14に出力するようになっている。
【0044】
ブレーキアクチュエータ42は、ホイールシリンダ43に作用させる油圧を調整する各種バルブなどで構成された図示しない油圧制御装置や油圧を発生させる図示しない電動ポンプを備えている。特に、上記電動ポンプは、高圧回路12に接続されており、高圧回路12から供給される電力を用いてハイブリッド車両1の制動を行う油圧を発生させる。本実施の形態におけるブレーキ装置16は、本発明に係るブレーキ手段を構成する。
【0045】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係るHVECU14により実行されるシステムメインリレー接続制御について、説明する。
【0046】
本実施の形態におけるシステムメインリレー接続制御は、ハイブリッドシステム100が未始動状態で実行されるものであるが、例えば電源ポジションがIGの際に実行されるものとする。
【0047】
図2に示すように、HVECU14は、パワースイッチの操作状態に基づき、ハイブリッドシステム100が未始動か否かを判断する(ステップS1)。HVECU14は、ハイブリッドシステム100が未始動でない、つまり始動していると判断した場合には、以降のステップを行うことなく本処理を終了する。
【0048】
HVECU14は、ハイブリッドシステム100が未始動であると判断した場合には、シフトポジションセンサ33によりPレンジ以外のシフトレンジが検出され、かつ車速センサ34の検出結果に基づき車速V(≠0)が発生したか否かを判断する(ステップS2)。ハイブリッドシステム100の未始動時は、上述したようにシステムメインリレー13により主バッテリ11と高圧回路12とが電気的に遮断されている状態である。したがって、この状態では、パワーステアリング装置15の電動モータおよびブレーキ装置16の電動ポンプに主バッテリ11から高圧回路12を介して電力が供給されない状態となっている。このため、このような状態では、パワーステアリング装置15およびブレーキ装置16の電源を確保することが困難であり、これら装置は十分な機能を発揮することができないおそれがある。
【0049】
ここで、上記電動モータおよび電動ポンプが補機バッテリ18からの電力供給を受けて駆動する構成で場合であっても、上記と同様に、やはりパワーステアリング装置15およびブレーキ装置16の電源を確保することが困難である。すなわち、主バッテリ11と高圧回路12とが電気的に遮断されると、補機バッテリ18が主バッテリ11から充電を行うことができなくなるため、結果としてパワーステアリング装置15およびブレーキ装置16の電源を確保することが困難となる。
【0050】
HVECU14は、Pレンジが検出され、かつ車速Vが発生していない(V=0)あるいはステップS2のいずれかの条件が不成立の場合には、以降のステップを行うことなく本処理を終了する。
【0051】
HVECU14は、Pレンジ以外のシフトレンジが検出され、かつ車速V(≠0)が発生していると判断した場合には、ハイブリッド車両1に車両ずり下がりが発生していると判断できる。したがって、HVECU14は、該車両ずり下がりを防止すべく、後述するステップS4〜ステップS7のシステムメインリレー接続動作を開始する(ステップS3)。
【0052】
次いで、HVECU14は、電圧センサ32が正常か否かを判断するために、電圧センサ32により検出された電圧VHとMG1およびMG2のモータ回転数MRN1、MRN2から定まる逆起電圧Veとが略等しいか否かを判断する(ステップS4)。逆起電圧Veは、モータ回転数MRN1およびモータ回転数MRN2をωと置くと、Ve=ke・ωの関係式を用いてHVECU14によって演算される。定数keは、コイル巻き数などから決まる定数である。
【0053】
HVECU14は、電圧VHと逆起電圧Veとが略等しくないと判断した場合には、電圧センサ32が正常に機能していない可能性があるため、以降のステップを行うことなく本処理を終了する。
【0054】
一方、HVECU14は、電圧VHと逆起電圧Veとが略等しいと判断した場合には、電圧センサ32が正常に機能していることが確認され、ステップS5に移行する。ステップS5において、HVECU14は、主バッテリ11の電圧VBと電圧VHとの差分が所定値αよりも大きいか否かを判断する。所定値αは、電圧センサの検出誤差や演算誤差などを考慮した値であり、例えば数十(V)程度とされる。つまり、本ステップでは、HVECU14は、上述した誤差などを加味した上で電圧VBが電圧VHよりも大きいか否かを判断する。なお、上述したステップS4、S5では、電圧VHを用いたが、これに限らず、電圧VHの代わりに電圧VLを用いてもよい。
【0055】
HVECU14は、電圧VBと電圧VHとの差分が所定値αよりも大きいと判断した場合には、システムメインリレー13の溶着チェックを実施した後、システムメインリレー13を接続させる(ステップS6)。これにより、システムメインリレー13の溶着チェック実施後にパワーステアリング装置15およびブレーキ装置16の電源が確保される。
【0056】
ここで、システムメインリレー13の溶着チェックは、例えばリレーSMR1およびリレーSMR2の一方あるいは他方を接続させたときに、電圧VH(あるいは電圧VL)が主バッテリ11の電圧VBと等価となったか否かを判断することにより行う。HVECU14は、この溶着チェックによりリレーSMR1およびリレーSMR2のいずれの接点が溶着しているか否かを判断することができる。したがって、システムメインリレー13の溶着チェックは、電圧VBが電圧VHよりも大きいときにのみ、実施することができる。なお、本実施の形態に示す溶着チェックの方法は、一例であり、これに限らず、電流に基づき判断するなど、その他の公知の方法を用いることができる。
【0057】
一方、HVECU14は、電圧VBと電圧VHとの差分が所定値α以下であると判断した場合には、システムメインリレー13の溶着チェックを実施せずに、システムメインリレー13を接続させる(ステップS7)。これにより、システムメインリレー13の溶着チェックを実施した場合(ステップS6参照)と比較して、早期にパワーステアリング装置15およびブレーキ装置16の電源が確保される。
【0058】
以上のように、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、ハイブリッドシステム100の未始動時にパーキングレンジ以外のシフトレンジに操作され、かつ車速Vが発生したことを条件として、HVECU14により主バッテリ11と高圧回路12とが電気的に接続されるようシステムメインリレー13が制御される。したがって、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、ハイブリッドシステム100の未始動時においてもパワーステアリング装置15の駆動源である電動モータおよびブレーキ装置16の駆動源である電動ポンプの電源を確保することができる。この結果、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、ハイブリッドシステム100の未始動時においても、車両ずり下がりを防止するための十分な制動力を発生させることができるとともに、十分な操舵アシスト力を発生させることができる。
【0059】
以上説明したように、本発明に係る車両用制御装置は、駆動システムの未始動時においても、車両ずり下がりを防止するための十分な制動力を発生させることができるとともに、十分な操舵アシスト力を発生させることができ、駆動源として電動機を備えたハイブリッド車両および電気車両に適用される車両用制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 ハイブリッド車両(車両)
8 シフトレバー
10 車両用制御装置
11 主バッテリ(高圧バッテリ)
12 高圧回路
13 システムメインリレー(リレー手段)
14 HVECU(システム状態検出手段、制御手段)
15 パワーステアリング装置(パワーステアリング手段)
16 ブレーキ装置(ブレーキ手段)
33 シフトポジションセンサ(シフトポジション検出手段)
34 車速センサ
100 ハイブリッドシステム(駆動システム)
MG2 モータジェネレータ(電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電動機を駆動源として備えた車両に搭載される車両用制御装置であって、
前記電動機に電力を供給する高圧バッテリと、
前記高圧バッテリと前記電動機との間に接続された高圧回路と、
前記高圧バッテリと前記高圧回路とを電気的に遮断あるいは接続するリレー手段と、
前記高圧回路に接続され、前記高圧回路から供給される電力を用いて操舵ハンドルの操舵をアシストするパワーステアリング手段と、
前記高圧回路に接続され、前記高圧回路から供給される電力を用いて前記車両の制動を行うブレーキ手段と、
前記車両を駆動する駆動システムの始動および未始動を検出するシステム状態検出手段と、
シフトポジションを検出するシフトポジション検出手段と、
前記リレー手段により前記高圧バッテリと前記高圧回路とが電気的に遮断されている状態である前記駆動システムの未始動時に、前記シフトポジション検出手段により前記車両の停止を維持するパーキングレンジ以外のシフトレンジが検出され、かつ車速が発生したことを条件として、前記高圧バッテリと前記高圧回路とが電気的に接続されるよう前記リレー手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−90507(P2013−90507A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230940(P2011−230940)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】