説明

車両用前照灯

【課題】従来の車両用前照灯では、所定の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンの間に光り抜けの部分が形成される場合がある。
【解決手段】この発明は、第2シェード部15の下縁部22が第1シェード部14側に折り曲げられている。この結果、この発明は、第2シェード部15の折曲部22で反射した光L5が第2シェード部15の第2エッジ18から投影レンズ4側に進む。この反射光L5により、補助配光パターンSP1がすれ違い用配光パターンLPとオーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2との間に配光される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロジェクタタイプのヘッドランプなどであって、所定の配光パターン(主配光パターン)、たとえば、すれ違い用配光パターンおよびオーバーヘッドサイン(頭上標識)用の配光パターン(補助配光パターン)と、そのすれ違い用配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンの間に配光される補助配光パターンと、を車両の前方に照射するプロジェクタタイプの車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンとを車両の前方に照射するプロジェクタタイプの車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1参照)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。従来の車両用前照灯は、光源と、リフレクタと、集光レンズと、2枚の薄板構造のシェードと、備えるものである。
【0003】
以下、従来の車両用前照灯の作用について説明する。従来の車両用前照灯は、光源を点灯すると、光源からの光の一部がシェードによって遮蔽されて残りの光が集光レンズ側に通って所定の配光パターンが得られる。また、シェードによって遮蔽された光の一部が2枚のシェードの間を通ってオーバーヘッドサイン用の配光パターンが得られる。
【0004】
ところが、従来の車両用前照灯は、所定の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンの間に光り抜けの部分(暗部)が形成される場合がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−172104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用前照灯では、所定の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンの間に光り抜けの部分(暗部)が形成される場合があるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1にかかる発明)は、シェードが反射光の一部をカットオフする光源側の第1シェード部および投影レンズ側の第2シェード部から構成されていて、第1シェード部と第2シェード部との間にはカットオフした反射光の一部を投影レンズ側に通す空間が設けられていて、第1シェード部と第2シェード部とにはカットオフした反射光の一部を反射させる反射面がそれぞれ設けられていて、第2シェード部の下縁部が第1シェード部側に折り曲げられている、ことを特徴とする。
【0008】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、第1シェード部には反射光の一部を拡散反射させる拡散反射凸部が第2シェード部側に突設されている、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、第2シェード部の折曲部が第1シェード部の拡散反射凸部よりも上方に位置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、前記の課題を解決するための手段により、第1シェード部と第2シェード部との間の空間に入った光の一部が第2シェード部の下縁部の折曲部で反射して第2シェード部の上縁から投影レンズ側に進む。このために、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、第2シェード部の上縁から投影レンズ側に進む光により、所定の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンの間に補助配光パターンとして配光される。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、所定の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンの間の光り抜けの部分(暗部)に補助配光パターンが配光されるので、所定の配光パターンのカットオフラインの明暗差を緩和させて、違和感の無い配光パターンが得られ、交通安全に貢献することができる。その上、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、所定の配光パターンのカットオフライン付近に補助配光パターンが配光されるので、遠方の視認性が向上され、交通安全に貢献することができる。
【0011】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、第1シェード部に拡散反射凸部を設けたので、第1シェード部と第2シェード部との間の空間に入った光の一部が第1シェード部の拡散反射凸部で拡散反射して第2シェード部の下縁から投影レンズ側に進む。このために、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、オーバーヘッドサイン用の配光パターンを適度な照度(光度、光量)でかつ幅広い範囲に配光することができ、最適なオーバーヘッドサイン用の配光パターンが得られる。
【0012】
しかも、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、第1シェード部に拡散反射凸部を設けたので、第1シェード部の強度を上げることができ、その上、第1シェード部と第2シェード部からなるシェードの強度も上げることができる。
【0013】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、第2シェード部の折曲部が第1シェード部の拡散反射凸部よりも上方に位置するので、第1シェード部の拡散反射凸部で拡散反射した拡散反射光の一部が第2シェード部の折曲部で反射して第2シェード部の下縁の折曲部から投影レンズ側に進む。このために、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、下縁部の上下方向の長さを短くした第2シェード部と同様の作用により、オーバーヘッドサイン用の配光パターンの照度(光度、光量)を上げると共に、範囲を所定の配光パターンのカットオフライン付近まで広げることができ、遠方の視認性が向上され、交通安全に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「VU−VD」は、上下の垂直軸、および、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。なお、この明細書および特許請求の範囲において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、この発明にかかる車両用前照灯を車両(自動車)に装備された際の車両の「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」である。
【実施例】
【0015】
以下、この実施例にかかる車両用前照灯の構成について説明する。この実施例にかかる車両用前照灯は、日本の左側通行に使用するものである。欧州の左側通行に使用される車両用前照灯は、この実施例にかかる車両用前照灯とほぼ同様の構成からなる。また、欧州の右側通行および北米の右側通行に使用される車両用前照灯は、この実施例にかかる車両用前照灯と左右がほぼ逆の構成からなる。
【0016】
図1において、符号1は、この実施例にかかる車両用前照灯である。前記車両用前照灯1は、自動車(車両)の前部の左右にそれぞれ装備される、たとえば、プロジェクタタイプのヘッドランプである。また、前記車両用前照灯1は、図1に示すように、光源2と、リフレクタ3と、投影レンズ(集光レンズ、凸レンズ)4と、シェード5と、切替手段としてのばね部材6および駆動ユニット7と、フレーム部材8と、ストッパ9と、ランプハウジング(図示せず)と、図示しないランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、を備えるものである。
【0017】
前記光源2および前記リフレクタ3および前記投影レンズ4および前記シェード5および前記ばね部材6および前記駆動ユニット7および前記フレーム部材8および前記ストッパ9は、ランプユニットを構成する。前記ランプユニットは、前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズにより区画されている灯室(図示せず)内に、たとえば光軸調整機構(図示せず)を介して配置されている。
【0018】
前記光源2は、この例では、放電灯(図示せず)を使用する。前記放電灯は、いわゆる、メタルハライドランプなどの高圧金属蒸気放電灯、高輝度放電灯(HID)などである。前記光源2は、前記リフレクタ3にソケット機構10を介して着脱可能に取り付けられている。なお、前記光源2としては、前記放電灯以外に、ハロゲン電球、白熱電球、LEDなどの半導体型光源でも良い。前記光源2は、発光部11を有する。
【0019】
前記リフレクタ3は、前記光源2からの光L1、L2を前記投影レンズ4側に反射させるものである。前記リフレクタ3は、前記フレーム部材8に固定保持されている。前記リフレクタ3は、前側(前記車両用前照灯1の光の照射方向側)が開口し、かつ、後側が閉塞した中空の凹形状をなす。前記リフレクタ3の後側の閉塞部の中央には、前記光源2が挿入されるための円形の透孔12が設けられている。
【0020】
前記リフレクタ3の内凹面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて、反射面13が形成されている。前記リフレクタ3の反射面13は、楕円もしくは楕円を基調とした反射面、たとえば、回転楕円面や楕円を基本とした自由曲面(NURBS曲面)などの反射面(図1の垂直断面が楕円面をなし、かつ、図示しない水平断面が放物面ないし変形放物面をなす反射面)からなる。このために、前記リフレクタ3の前記反射面13は、第1焦点F1と、第2焦点(水平断面上の焦線)F2と、光軸Z−Zと、をそれぞれ有する。前記リフレクタ3の前記反射面13の自由曲面(NURBS曲面)は、「Mathematical Elemennts for Computer Graphics」(Devid F. Rogers、J Alan Adams)に記載されているNURBSの自由曲面(Non-Uniform Rational B-Spline Surface)である。前記リフレクタ3の前記反射面13の前記第1焦点F1は、前記光源2の前記発光部11もしくはその近傍に位置する。
【0021】
前記投影レンズ4は、前記リフレクタ3の前記反射面13からの反射光L3、L4を車両の前方に投影するものである。前記投影レンズ4は、非球面レンズの凸レンズである。前記投影レンズ4の前方側は、凸非球面をなし、一方、前記投影レンズ4の後方側は、平非球面(もしくは平面)をなす。前記投影レンズ4は、前記フレーム部材8に固定保持されている。前記投影レンズ4は、レンズ焦点(物空間側の焦点面であるメリジオナル像面)F3と、光軸Z1−Z1と、を有する。前記投影レンズ4の焦点F3は、前記反射面13の第2焦点F2もしくはその近傍に位置する。前記投影レンズ4の光軸Z1−Z1と前記反射面13の光軸Z−Zとは、一致もしくはほぼ一致している。なお、前記投影レンズ4の光軸Z1−Z1と前記反射面13の光軸Z−Zとは、左右にずれていても良い。
【0022】
前記シェード5は、前記リフレクタ3の前記反射面13から前記投影レンズ4に向かう反射光L3、L4を、複数の配光パターン、たとえば、図5に示すすれ違い用配光パターンLPおよび補助配光パターンSP1およびオーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2と、図6に示す走行用配光パターンHPとが得られる複数のビーム、すなわち、ロービームと、ハイビームとに切り替えるものである。前記すれ違い用配光パターンLPおよび前記走行用配光パターンHPは、所定の配光パターンであって、主配光パターンである。前記オーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2は、頭上標識用の配光パターンであって、補助配光パターンである。前記シェード5は、製造コストが安価である板構造(この例では、ステンレスやSUS(ばね鋼板)など、光を反射させることができる平板の薄鋼板構造)からなる。
【0023】
前記シェード5は、図1〜図4に示すように、垂直で長く後側(前記光源2側)に位置する第1シェード部14と、同じく垂直で短く前側(前記投影レンズ4側)に位置する第2シェード部15と、水平な取付部16と、から構成されている。前記第1シェード部14と前記第2シェード部15とは、別個の板部材からなり、前記第1シェード部14の左右両端部と前記第2シェード部15の左右両端部とが固定手段(加締め、リベット止め、溶接、接着など)により固定されている。前記第1シェード部14および前記第2シェード部15は、前記反射光L3、L4を前記ロービームと、前記ハイビームとに切り替えるものである。
【0024】
前記第1シェード部14および前記第2シェード部15は、上から見て、前記投影レンズ4の焦点F3に沿って中央部が前記光源2側に突出しかつ左右両端部が前記投影レンズ4側に突出した湾曲形状をなす。前記シェード5は、前記第1シェード部14と前記第2シェード部15とからなる2枚の板構造とすることにより、前記配光パターンLP、HPに生じる色(たとえば、青色)を消すことができる。
【0025】
前記第1シェード部14の上縁には、第1エッジ17が設けられている。また、前記第2シェード部15の上縁には、第2エッジ18が設けられている。前記第1エッジ17は、前記投影レンズ4の焦点F3もしくはその近傍に位置する。すなわち、前記投影レンズ4の焦点F3は、前記第1エッジ17もしくはその近傍に位置する。一方、前記第2エッジ18は、前記第1エッジ17よりも前記投影レンズ4側に位置する。前記第1エッジ17および前記第2エッジ18は、それぞれ、左側の上水平エッジと、右側の下水平エッジと、中央の斜めエッジと、からなる。上水平エッジは、前記すれ違い用配光パターンLPの対向車線側の下水平カットオフラインCLを形成し、下水平エッジは、前記すれ違い用配光パターンLPの走行車線側の上水平カットオフラインCLを形成し、斜めエッジは、前記すれ違い用配光パターンLPの斜めカットオフラインCLを形成する。
【0026】
前記シェード5の前記第1シェード部14および前記第2シェード部15が第1姿勢に切り替えられているときにおいて、前記第1シェード部14および前記第2シェード部15は、前記リフレクタ3の前記反射面13から前記投影レンズ4に向かう反射光L3、L4の一部をカットオフして残りの反射光L3、L4を前記投影レンズ4側に通して前記カットオフラインCLを有する前記すれ違い用配光パターンLPを形成する。このとき、前記第1シェード部14の前記第1エッジ17および前記第2シェード部15の前記第2エッジ18は、前記すれ違い用配光パターンLPの前記カットオフラインCLを形成する。
【0027】
前記ばね部材6および前記駆動ユニット7は、前記シェード5の姿勢を、上方の姿勢と下方の姿勢との間において、前記ロービームと前記ハイビームとが得られる複数の姿勢、すなわち、第1姿勢のロービーム姿勢と第2姿勢のハイビーム姿勢とに切り替えるものである。前記ロービーム姿勢は、図1に示す上方の姿勢(位置)であり、前記ハイビーム姿勢は、図1に示すロービーム姿勢よりも下方に位置する下方の姿勢(位置)である。
【0028】
前記ばね部材6は、ステンレスやSUS(ばね鋼板)などの弾性を有する薄板構造からなる。また、前記ばね部材6は、図1、図3、図4に示すように、左右両端部が半円形をなしかつ上下両端部が水平をなす構造である。前記シェード5と前記ばね部材6とは、一体構造をなす。すなわち、前記シェード5の前記取付部16が前記ばね部材6の上水平部のほぼ中央部と一体に設けられている。なお、前記シェード5と前記ばね部材6とは、それぞれ別個に製造してから一体に固定しても良い。
【0029】
前記ばね部材6は、前記フレーム部材8に固定されている。すなわち、前記ばね部材6の下水平部の固定部19の両端部がスクリュー20止めにより前記フレーム部材8に固定されている。前記シェード5と一体構造の前記ばね部材6が前記フレーム部材8に固定されることにより、前記ばね部材6のばね力が作用する方向は、前記シェード5の姿勢が上方の第1姿勢(ロービーム姿勢)と下方の第2姿勢(ハイビーム姿勢)との間において切り替わる方向と一致もしくはほぼ一致する。
【0030】
前記駆動ユニット7は、ソレノイドから構成されている。前記ソレノイド7は、図1に示すように、前記ばね部材6の空間中に収納されており、かつ、前記ばね部材6の前記固定部19を介して前記フレーム部材8に固定されている。前記ソレノイド7の進退ロッド21の先端は、前記シェード5および前記ばね部材6の前記取付部16に取り付けられている。前記ソレノイド7の進退ロッド21が進退する方向は、図1に示すように、前記ばね部材6のばね力の作用方向および前記シェード5の姿勢の切替方向と一致もしくはほぼ一致する。前記ばね部材6のばね力の作用方向および前記シェード5の姿勢の切替方向および前記ソレノイド7の進退ロッド21の進退方向は、上下の垂直軸VU−VD方向である。
【0031】
前記フレーム部材8には、前記ストッパ9が固定されている。前記ストッパ9は、図1に示すように、前記ソレノイド7が非駆動時において、前記シェード5の前記取付部16が弾性当接して、前記シェード5のロービーム姿勢を規制制動するものである。
【0032】
前記シェード5の前記第1シェード部14と前記第2シェード部15との間の間隔は、中央部が広く、かつ、左右両端部が狭い。これにより、前記すれ違い用配光パターンLPの左右両端部のカットオフラインCLの明暗差をぼかして視認性を向上させることができる。
【0033】
2枚の薄板構造からなる前記シェード5の前記第1シェード部14と前記第2シェード部15との間には、カットオフした前記反射光L4の一部L5、L6、L7を前記投影レンズ4側に通す空間25が設けられている。前記第1シェード部14と前記第2シェード部15とには、カットオフした前記反射光L4の一部L5、L6、L7を反射させる反射面26、27がそれぞれ設けられている。前記反射面26、27は、前記シェード5の素材の面をそのまま使用しても良いし、また、新たに反射面処理を施したものでも良い。前記シェード5の前記空間25を通った光L5、L6、L7により、前記すれ違い用配光パターンLPの上方に形成される補助配光パターンSP1およびオーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2を形成する。
【0034】
なお、前記第1シェード部14および前記第2シェード部15に設ける前記反射面26、27は、少なくとも、相互に対向する前記第1シェード部14の内側の面および前記第2シェード部15の内側の面と、前記第2シェード部15の下縁部(折曲部22)の内外両側の面と、である。また、前記第1シェード部14および前記第2シェード部15に設けた前記反射面26、27は、平面でも、曲面でも、自由曲面でも良い。
【0035】
図2に示すように、前記第2シェード部15の下縁部22が、前記第1シェード部14側に折り曲げられている。前記第2シェード部15の下縁部の折曲部22の折曲角度は、任意に設定する。
【0036】
また、図2に示すように、前記第1シェード部14には、前記反射光L4の一部L6を拡散反射させる拡散反射凸部23が前記第2シェード部15側に突設されている。前記拡散反射凸部23は、断面半円形のビードをなし、左右水平に設けられている。
【0037】
さらに、図2に示すように、前記第2シェード部15の前記折曲部22は、前記第1シェード部14の前記拡散反射凸部23よりも上方に位置する。すなわち、前記第2シェード部15の前記折曲部22の下面と、前記第1シェード部14の前記拡散反射凸部23の内面とは、対向する。
【0038】
この実施例にかかる車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0039】
まず、光源2を点灯する。すると、この光源2の発光部11から光L1、L2が放射される。この光L1、L2は、リフレクタ3の反射面13でシェード5および投影レンズ4側に反射される。すなわち、光L1は、リフレクタ3の下側の反射面13で反射される。また、光L2は、リフレクタ3の上側の反射面13で反射される。
【0040】
このとき、ソレノイド7が非駆動時、すなわち、非通電状態のときには、ばね部材6のばね力により、ソレノイド7の進退ロッド21が前進してかつシェード5が上方に付勢されており、かつ、シェード5の取付部16がストッパ9に弾性当接している。この結果、シェード5は、規制制動されていて、図1に示すロービーム姿勢(第1姿勢)にある。
【0041】
シェード5が図1に示すロービーム姿勢にあるときには、リフレクタ3の反射面13からの反射光L3、L4のうちの一部は、シェード5の第1シェード部14および第2シェード部15により遮蔽される。一方、残りの反射光L3、L4は、投影レンズ4側に進み、投影レンズ4を経て、図5に示すすれ違い用配光パターンLPとして、自動車の前方に投影(放射、照射)される。また、シェード5の第1シェード部14の第1エッジ17および第2シェード部15の第2エッジ18により図5に示すすれ違い用配光パターンLPにカットオフラインCLが形成されている。
【0042】
シェード5の第1シェード部14および第2シェード部15により遮蔽される反射光L3、L4の一部の光L4は、第1シェード部14と第2シェード部15との間の空間25を通って投影レンズ4側に光L5、L6として進む。
【0043】
すなわち、図2に示すように、第1シェード部14の第1エッジ17および第2シェード部15の第2エッジ18側から空間25中に入った光L4の一部L5は、空間25における第1シェード部14の反射面26と第2シェード部15の反射面27とで反射し、また、第2シェード部15の下縁部の折曲部22の内側の反射面27で反射し、さらに、再び第1シェード部14の反射面26と第2シェード部15の反射面27とで反射して、第2シェード部15の第2エッジ18から投影レンズ4側に進む。
【0044】
一方、第1シェード部14の第1エッジ17および第2シェード部15の第2エッジ18側から空間25中に入った光L4の一部は、空間25における第1シェード部14の反射面26と第2シェード部15の反射面27とで反射して、第2シェード部15の下縁から投影レンズ4側に進む。
【0045】
また、第1シェード部14の第1エッジ17および第2シェード部15の第2エッジ18側から空間25中に入った光L4の一部は、空間25における第1シェード部14の反射面26と第2シェード部15の反射面27とで反射し、さらに、第1シェード部14の拡散反射凸部23で拡散反射して第2シェード部15の下縁から投影レンズ4側に進む。
【0046】
さらに、図2に示すように、第1シェード部14の第1エッジ17および第2シェード部15の第2エッジ18側から空間25中に入った光L4の一部は、空間25における第1シェード部14の反射面26と第2シェード部15の反射面27とで反射し、かつ、第1シェード部14の拡散反射凸部23で拡散反射した拡散反射光の一部L6は、第2シェード部15の折曲部22の外側の反射面27で反射して第2シェード部15の下縁の折曲部22から投影レンズ4側に進む。
【0047】
第2シェード部15の下縁から投影レンズ4側に進んだ反射光、および、第2シェード部15の下縁から投影レンズ4側に進んだ拡散反射光、および、第2シェード部15の下縁の折曲部22から投影レンズ4側に進んだ拡散反射光により、図5に示すように、オーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2がすれ違い用配光パターンLPの上方に形成される。一方、第2シェード部15の第2エッジ18から投影レンズ4側に進んだ反射光L5により、図5に示すように、補助配光パターンSP1がすれ違い用配光パターンLPとオーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2との間に配光される。
【0048】
ソレノイド7に通電すると、ソレノイド7が駆動して、ソレノイド7の進退ロッド21がばね部材6のばね力に抗して後退する。これに伴って、シェード5は、図1に示す上方のロービーム姿勢(第1姿勢)から下方のハイビーム姿勢(第2姿勢)に切り替わる。
【0049】
すると、今まで、シェード5の第1シェード部14および第2シェード部15により遮蔽されていたリフレクタ3の反射面13からの反射光L3、L4は、残りの反射光L3、L4と共に、投影レンズ4側に進み、投影レンズ4を経て、図6に示す走行用配光パターンHPとして、自動車の前方に投影(放射、照射)される。
【0050】
このとき、シェード5の第1シェード部14および第2シェード部15により遮蔽されていたリフレクタ3の反射面13からの反射光L3、L4が残りの反射光L3、L4に加わる。このために、走行用配光パターンHPのうちの所定の部分の光度を、所定値以上に保持することができる。
【0051】
そして、ソレノイド7への通電を遮断すると、ソレノイド7が非駆動状態となるので、弾性変形していたばね部材6がばね力に弾性復帰する。この結果、シェード5は、下方のハイビーム姿勢(第2姿勢)から図1に示す上方のロービーム姿勢(第1姿勢)に切り替わる。これにより、図6に示す走行用配光パターンHPから図5に示すすれ違い用配光パターンLPおよび補助配光パターンSP1およびオーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2に切り替わる。
【0052】
この実施例にかかる車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0053】
この実施例にかかる車両用前照灯1は、第1シェード部14と第2シェード部15との間の空間25に入った光の一部L5が第2シェード部15の下縁部の折曲部22の内側の反射面27で反射して第2シェード部15の上縁の第2エッジ18から投影レンズ4側に進む。このために、この実施例にかかる車両用前照灯1は、第2シェード部15の上縁の第2エッジ18から投影レンズ4側に進んだ反射光L5により、図5に示すように、すれ違い用配光パターンLPとオーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2との間に、補助配光パターンSP1として配光される。この結果、この実施例にかかる車両用前照灯1は、すれ違い用配光パターンLPとオーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2との間の光り抜けの部分(暗部)に補助配光パターンSP1が配光されるので、すれ違い用配光パターンLPのカットオフラインCLの明暗差を緩和させて、違和感の無い配光パターンが得られ、交通安全に貢献することができる。その上、この実施例にかかる車両用前照灯1は、すれ違い用配光パターンLPのカットオフラインCL付近に補助配光パターンSP1が配光されるので、遠方の視認性が向上され、交通安全に貢献することができる。
【0054】
また、この実施例にかかる車両用前照灯1は、第1シェード部14に拡散反射凸部23を設けたので、第1シェード部14と第2シェード部15との間の空間25に入った光の一部が第1シェード部14の拡散反射凸部23で拡散反射して第2シェード部15の下縁から投影レンズ4側に進む。このために、この実施例にかかる車両用前照灯1は、オーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2を適度な照度(光度、光量)でかつ幅広い範囲に配光することができ、最適なオーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2が得られる。
【0055】
しかも、この実施例にかかる車両用前照灯1は、第1シェード部14に拡散反射凸部23を設けたので、第1シェード部14の強度を上げることができ、その上、第1シェード部14と第2シェード部15からなるシェード5の強度も上げることができる。
【0056】
さらに、この実施例にかかる車両用前照灯1は、第2シェード部15の折曲部22が第1シェード部14の拡散反射凸部23よりも上方に位置するので、第1シェード部14の拡散反射凸部23で拡散反射した拡散反射光の一部L6が第2シェード部15の折曲部22の外側の反射面27で反射して第2シェード部15の下縁の折曲部22から投影レンズ4側に進む。このために、この実施例にかかる車両用前照灯1は、下縁部の上下方向の長さを短くした第2シェード部と同様の作用により、オーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2の照度(光度、光量)を上げると共に、範囲をすれ違い用配光パターンLPのカットオフラインCL付近まで広げることができ、遠方の視認性が向上され、交通安全に貢献することができる。このように、この実施例にかかる車両用前照灯1は、第1シェード部14の第1エッジ17および第2シェード部15の第2エッジ18側から空間25中に入った光L4を有効に利用することができる。
【0057】
ここで、下縁部の上下方向の長さが長い第2シェード部(図2中の二点鎖線で示す第2シェード部)24の場合における光L4の利用について図2を参照して説明する。すなわち、下縁部の上下方向の長さが長い第2シェード部24の場合は、空間25における第1シェード部14の反射面26と第2シェード部15の反射面27とで反射した反射光のうち、第2シェード24の下縁部(二点鎖線で示されている部分)に進んだ反射光が第2シェード24の下縁部(二点鎖線で示されている部分)で遮蔽され、第2シェード24の下縁よりも下側に進んだ反射光L7が投影レンズ4側に進む。このために、下縁部の上下方向の長さが長い第2シェード部場合は、第1シェード部14の第1エッジ17および第2シェード部15の第2エッジ18側から空間25中に入った光L4を有効に利用することが難しく、このために、オーバーヘッドサイン用の配光パターンの照度(光度、光量)が下がると共に、すれ違い用配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンとの間が広くなる。
【0058】
以下、前記の実施例以外の例について説明する。前記の実施例においては、シェード5が第1シェード部14と第2シェード部15との2枚板構造をなすものである。ところが、この発明においては、空間を有する1枚板構造のシェードでも良い。
【0059】
また、前記の実施例においては、図5に示すすれ違い用配光パターンLPおよび補助配光パターンSP1およびオーバーヘッドサイン用の配光パターンSP2と図6に示す走行用配光パターンHPとが得られるものである。ところが、この発明においては、すれ違い用配光パターンと高速道路用配光パターンとが得られるもの、あるいは、すれ違い用配光パターンと高速道路用配光パターンと走行用配光パターンとが得られるもの、すなわち、複数の配光パターンが得られるものであって、その複数の配光パターンのうち少なくとも1つの配光パターンがカットオフラインを有する配光パターンであれば良い。
【0060】
さらに、前記の実施例においては、シェード5が上下に移動して図5に示すすれ違い用配光パターンLPと図6に示す走行用配光パターンHPとに切り替えるものである。ところが、この発明においては、シェードが固定式であって、配光パターンが切り替えられないものであって、カットオフラインを有する配光パターンであれば良い。
【0061】
さらにまた、前記の実施例においては、駆動ユニットとしてソレノイド7を使用するものである。ところが、この発明においては、駆動ユニットとしてソレノイド以外のものであっても良い。たとえば、モータなどである。
【0062】
さらにまた、前記の実施例においては、前記投影レンズ4の焦点F3が第1エッジ17もしくはその近傍に位置するものである。ところが、この発明においては、投影レンズ4の焦点F3が第1エッジ17と第2エッジ18との間に位置するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明にかかる車両用前照灯の実施例を示し、シェードがロービーム姿勢にあるときのランプユニットの縦断面図(垂直断面図)である。
【図2】同じく、リフレクタの上側の反射面からの反射光を第1シェード部と第2シェード部との間の空間に通過させる状態を示す説明断面図である。
【図3】同じく、シェードおよびばね部材を示す正面図である。
【図4】同じく、シェードおよびばね部材を示す斜視図である。
【図5】同じく、すれ違い用配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンとを示す説明図である。
【図6】同じく、走行用配光パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両用前照灯
2 光源
3 リフレクタ
4 投影レンズ
5 シェード
6 ばね部材(切替手段)
7 ソレノイド(駆動ユニット、切替手段)
8 フレーム部材
9 ストッパ
10 ソケット機構
11 発光部
12 透孔
13 反射面
14 第1シェード部
15 第2シェード部
16 取付部
17 第1エッジ
18 第2エッジ
19 固定部
20 スクリュー
21 進退ロッド
22 折曲部(下縁部)
23 拡散反射凸部
24 上下方向の長さが長い第2シェード部
25 空間
26 反射面
27 反射面
LP すれ違い用配光パターン(所定の配光パターン、主配光パターン)
CL カットオフライン
HP 走行用配光パターン
SP1 補助配光パターン
SP2 オーバーヘッドサイン用の配光パターン
HL−HR 左右の水平線
VU−VD 上下の垂直線(上下の垂直軸)
Z−Z 反射面の光軸
Z1−Z1 投影レンズの光軸
F1 反射面の第1焦点
F2 反射面の第2焦点
F3 投影レンズの焦点
L1 光源から下側の反射面への光
L2 光源から上側の反射面への光
L3 下側の反射面からの反射光
L4 上側の反射面からの反射光
L5 第2シェード部の第2エッジから投影レンズ側に進んだ反射光
L6 第2シェード部の折曲部から投影レンズ側に進んだ反射光
L7 上下方向の長さが長い第2シェード部の下縁から投影レンズ側に進んだ反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンとを車両の前方に照射するプロジェクタタイプの車両用前照灯において、
光源と、
前記光源からの光を反射させるリフレクタと、
前記リフレクタからの反射光を車両の前方に投影する投影レンズと、
前記リフレクタから前記投影レンズに向かう反射光の一部をカットオフして残りの反射光を前記投影レンズ側に通して前記所定の配光パターンを形成し、かつ、カットオフした前記反射光の一部を前記投影レンズ側に通して前記オーバーヘッドサイン用配光パターンを形成するシェードと、
を備え、
前記シェードは、前記反射光の一部をカットオフする前記光源側の第1シェード部および前記投影レンズ側の第2シェード部から構成されていて、
前記第1シェード部と前記第2シェード部との間には、カットオフした前記反射光の一部を前記投影レンズ側に通す空間が設けられていて、
前記第1シェード部と前記第2シェード部とには、カットオフした前記反射光の一部を反射させる反射面がそれぞれ設けられていて、
前記第2シェード部の下縁部が、前記第1シェード部側に折り曲げられている、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記第1シェード部には、前記反射光の一部を拡散反射させる拡散反射凸部が前記第2シェード部側に突設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記第2シェード部の折曲部は、前記第1シェード部の前記拡散反射凸部よりも上方に位置する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−193810(P2009−193810A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33054(P2008−33054)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】