説明

車両用動力伝達装置の油貯留構造

【課題】軸受けへの油の供給量が低減することを抑制できる技術を提供する
【解決手段】油溜め部を、軸受けの軸方向側であって回転部材側とは反対側に設ける。油溜め部は、動力伝達装置が動作していない状態で軸受けの軸方向から見た場合に、外輪の内周縁を下方から上方に向けて横切ることによって、内周縁の外周側から内周側まで延びる側壁部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置の油貯留構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動変速装置や、内燃機関と電気モータとを併用するハイブリッド車両用の動力伝達装置といった、車両用の動力伝達装置が利用されている。動力伝達装置は、種々の回転部材(例えば、モータまたはジェネレータのロータ、ギア等)を有している。動力伝達装置は、回転部材を回転可能に支持する軸受けも、有している。軸受けには、動作を滑らかにするための油が供給される。軸受けに油を供給する供給部の構成としては、種々の構成が利用されている。例えば、回転するファイナルリングギア(デファレンシャルギアのリングギア)が、動力伝達装置のケース内の底部に溜まった油を掻き揚げて、動力伝達装置の各部に油を供給する構成が利用されている(特許文献1参照)。また、内燃機関によって駆動されるオイルポンプが油を軸受けに供給する構成も利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−151261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、種々の原因に起因して、供給部による軸受けへの油の供給量が低減する可能性があった。例えば、車両の速度が遅い場合には、油を掻き揚げるファイナルリングギアの回転速度が遅いので、油の供給量が低減する場合があった。また、油温が低く油の粘度が高い場合にも、掻き揚げによる供給量が低減する場合があった。また、油温が低く油の粘度が高い場合には、重力勾配を利用して油を移送する流路部分において油の移動速度が遅くなり、動力伝達装置の動作開始時における油の供給量が低減する場合があった(動力伝達装置の動作開始から、軸受けへの油の供給開始までの時間が長くなり、動力伝達装置の動作開始の時点での油の供給量が低減する場合があった)。このような油の供給量の低減は、ファイナルリングギア等の回転部材が油を掻き揚げて軸受けに油を供給する場合に限らず、オイルポンプが軸受けに油を供給する場合にも、生じ得る。
【0005】
本発明の主な利点は、軸受けへの油の供給量が低減することを抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
出力シャフトと、
前記出力シャフトに連結された回転部材と、
外輪と、前記回転部材とともに回転する内輪とを有し、前記回転部材を回転可能に支持する軸受けと、
前記軸受けに油を供給する油供給部と、
を備える車両用動力伝達装置の油貯留構造であって、
前記軸受けの軸方向側であって前記回転部材側とは反対側に設けられ、油が出入りするための開口と、前記開口から入った油を貯留するための空間と、を形成する油溜め部を備え、
前記外輪の前記油溜め部側における内周縁の鉛直方向の最下位置の部分は、前記油溜め部の前記開口の下端部分を区画し、
前記油溜め部は、
前記油溜め部の内面のうちの鉛直方向の位置が最も低い内面部分であって、前記外輪の前記内周縁の前記最下位置と比べて低い位置に配置された内面部分を形成する最下内壁部と、
前記最下内壁部から延びて、前記軸受けの軸方向と交差する特定の水平方向側の内面部分を形成する側壁部であって、前記動力伝達装置が動作していない状態で前記軸受けの軸方向から見た場合に、前記外輪の前記内周縁を下方から上方に向けて横切ることによって、前記内周縁の外周側から内周側まで延びる側壁部と、
を含む、
油貯留構造。
【0008】
この構成によれば、軸受けの軸方向側に油溜め部が設けられ、外輪の油溜め部側における内周縁の最下位置(以下「外輪内周縁最下位置」とも呼ぶ)の部分は、油溜め部の開口の下端部分を区画し、その油溜め部の内面のうちの最も低い内面部分は、軸受けの外輪内周縁最下位置よりも低い(深い)位置に配置されている。従って、この油溜め部は、外輪内周最下位置よりも低い部分に、油を溜めることが可能である。例えば、油溜め部は、軸受けの外輪と内輪との間から溢れた油を溜めることができる。また、油溜め部側から軸受けに油が供給される場合には、供給される油の一部を油溜め部が溜めることができる。このように、油溜め部は、油供給部によって供給される油を溜めることができる。
【0009】
さらに、車両用の動力伝達装置は、種々の原因によって、振動し得る。例えば、車両の発進または走行に起因して、動力伝達装置は振動し得る。動力伝達装置が振動した場合には、油溜め部の中で油が動くので、油面が油溜め部の内面に沿って上下する。ここで、上記構成では、油溜め部の水平方向側の内面部分を形成する側壁部は、軸受けの軸方向から見た場合に、外輪の内周縁を下方から上方に向けて横切ることによって、内周縁の外周側から内周側まで延びている。従って、油面は、この側壁部に沿って、内周縁よりも内周側(外輪よりも内周側)の位置まで移動し得る。内周縁よりも内周側(外輪よりも内周側)の位置まで移動した油は、内周縁(すなわち、外輪)を超えて軸受けに流れ得る。このように、油供給部による軸受けへの油の供給量が十分では無い状況下においては、油溜め部は、動力伝達装置の振動を利用して、油溜め部に貯留された油を軸受けに供給することができる。この結果、軸受けへの油の供給量が低減することを抑制できる。
【0010】
[適用例2]
適用例1に記載の貯留構造であって、
前記動力伝達装置を備える車両が停止状態から前進と後進との少なくとも一方を開始することによって前記動力伝達装置が傾いた状態における油溜め部の貯留可能容量は、前記動力伝達装置が動作していない状態における前記油溜め部の貯留可能容量と比べて、小さい、
貯留構造。
【0011】
この構成によれば、車両が停止状態から前進または後進を開始することによって動力伝達装置が傾いた場合には、前記動力伝達装置が動作していない場合と比べて、油溜め部の貯留可能容量が小さくなるので、減少した容量分の油を軸受けに供給することができる。このように、車両が、前進と後進との少なくとも一方を開始した場合に、油溜め部は、直ぐに軸受けに油を供給することができる。この結果、動力伝達装置の動作開始時における軸受けへの油の供給量が低減することを抑制できる。
【0012】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の油貯留構造であって、
前記水平方向を第1水平方向と呼び、前記側壁部を第1側壁部と呼ぶときに、
前記油溜め部は、さらに、
前記最下内壁部から延びて、前記第1水平方向とは反対方向である第2水平方向側の内面部分を形成する側壁部であって、前記動力伝達装置が動作していない状態で前記軸受けの軸方向から見た場合に、前記外輪の前記内周縁に下方から前記内周縁に向かって延びることによって、前記内周縁の外周側から、少なくとも前記内周縁まで延びる第2側壁部を含み、
前記第1側壁部は、前記動力伝達装置を備える車両が停止状態から前進を開始することによって前記動力伝達装置が傾いた場合に、前記第2側壁部から見て相対的に低くなる側に、配置されている、
油貯留構造。
【0013】
この構成によれば、車両が停止状態から前進を開始することによって動力伝達装置が傾いた場合には、動力伝達装置が動作せずに傾いていない場合と比べて、第2側壁部から見た第1側壁部の高さが低くなるので、油面は、第1側壁部に沿って移動する。ここで、第1側壁部は、動力伝達装置が動作していない状態で軸受けの軸方向から見た場合に、外輪の内周縁を下方から上方に向けて横切ることによって、内周縁の外周側から内周側まで延びている。従って、動力伝達装置が傾いた場合に、油面は、第1側壁部に沿って、外輪(内周縁)を乗り越えることができる。この結果、車両が、一般的な動作である前進を開始した場合に、油溜め部は、直ぐに軸受けに油を供給することができる。この結果、動力伝達装置の動作開始時における軸受けへの油の供給量が低減することを抑制できる。
【0014】
[適用例4]
適用例3に記載の油貯留構造であって、
前記動力伝達装置が動作していない状態で前記軸受けの軸方向から見た場合に、前記第1側壁部と前記内周縁とが重なる第1重畳位置は、前記第2側壁部と前記内周縁とが重なる第2重畳位置と比べて、前記軸受けの回転軸を通る鉛直ラインに近い位置に配置されている、
油貯留構造。
【0015】
この構成によれば、動力伝達装置が動作していない状態で見た場合に、第1側壁部と内周縁とが重なる第1重畳位置は、第2側壁部と内周縁とが重なる第2重畳位置と比べて、低い位置に配置される。従って、動力伝達装置の傾きが小さい場合であっても、油面は、容易に、第1重畳位置、すなわち、外輪の内周縁を乗り越えることができる。この結果、油溜め部は、容易に、油を軸受けに供給することができる。
【0016】
また、上記構成によれば、第2側壁部の第2重畳位置は、第1側壁部の第1重畳位置と比べて、鉛直ラインから遠い。従って、油溜め部の鉛直ラインよりも第2側壁部側の部分の容量が小さくなることを抑制できる。この結果、動力伝達装置が傾いた場合に油溜め部によって軸受けに供給される油の量が少なくなることを抑制できる。
【0017】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれかに記載の油貯留構造であって、
前記特定の水平方向側の前記内面部分を形成する側壁部は、前記油溜め部の内部に向かって突出する突出部を含み、
前記突出部は、前記動力伝達装置が動作していない状態で見た場合に、前記外輪の前記内周縁の前記最下位置よりも高い位置に配置された部分を含む、
油貯留構造。
【0018】
この構成によれば、突出部が無い場合と比べて、油面が側壁部に沿って移動した場合(油面が側壁部に対して相対的に上昇した場合)に油が流動し得る空間が突出部によって狭められるので、油面の側壁部に対する相対的な上昇が促進される。従って、油面は、容易に、外輪の内周縁を乗り越えることができる。この結果、油溜め部は、容易に、油を軸受けに供給することができる。
【0019】
[適用例6]
適用例5に記載の油貯留構造であって、
前記突出部を第1突出部と呼ぶときに、
前記油溜め部の、前記側壁部から見て前記特定の水平方向とは反対方向側の内面は、前記油溜め部の内部に向かって突出する第2突出部を含み、
前記第2突出部は、前記動力伝達装置が動作していない状態で見た場合に、前記外輪の前記内周縁の前記最下位置よりも高い位置に配置された部分を含む、
油貯留構造。
【0020】
この構成によれば、油面が、油溜め部における、特定の水平方向とは反対方向側の内面に沿って移動(相対的な上昇)した場合に油が流動し得る空間が第2突出部によって狭められるので、油溜め部の内面に対する油面の相対的な上昇が促進される。従って、油面は、容易に、外輪の内周縁を乗り越えることができる。このように、動力伝達装置が特定の水平方向側に傾いた場合と、動力伝達装置が反対方向側に傾いた場合との、それぞれにおいて、油溜め部は、容易に、油を軸受けに供給することができる。
【0021】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、内燃機関と電気モータとの少なくとも一方の動力を伝達する車両用動力伝達装置に用いられる油貯留構造(油溜め部)、その油貯留構造を備える動力伝達装置、その動力伝達装置を備える車両等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例としての駆動ユニット10を示す概略図である。
【図2】動力伝達装置100の断面図である。
【図3】油溜め部300の構成を示す概略図である。
【図4】油溜め部300の構成を示す概略図である。
【図5】動力伝達装置100(図1)が傾いた状態における油溜め部300を示す説明図である。
【図6】油溜め部の別の実施例を示す概略図である。
【図7】図5と同様の傾いた状態の油溜め部300Bを示している。
【図8】油溜め部の別の実施例を示す概略図である。
【図9】油溜め部の別の実施例を示す概略図である。
【図10】図5と同様の傾いた状態の油溜め部300Cを示している。
【図11】油溜め部の別の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、この発明の実施の形態を第1実施例〜第4実施例と変形例とに基づいて説明する。
【0024】
A.第1実施例:
A1.概略構成:
図1は、本発明の一実施例としての駆動ユニット10を示す概略図である。駆動ユニット10は、内燃機関Eと動力伝達装置100とを有している。図1では、内燃機関Eが、簡略化して示されている。また、車両の横から見た(+Y側から−Y側に向かって見た)動力伝達装置100の概略透視図が示されている。図2は、この動力伝達装置100の断面図である。図2の断面図は、図1のD−D断面と、E−E断面とを示している。D−D断面は、第3軸A3と第1軸A1とを含む断面と、第3軸A3と第2軸A2とを含む断面とを、第3軸A3で接続することによって得られる合成断面である。E−E断面は、第4軸A4を含む断面である。軸A1〜A4の詳細については、後述する。
【0025】
動力伝達装置100は、内燃機関Eと電動モータMG2(「第2回転電機MG2」とも呼ぶ)とを動力源として利用する、いわゆるハイブリッド車両に搭載される。本明細書の図(例えば、図1)において、X方向(+X方向とも呼ぶ)は、車両の前方向を示し、Z方向(+Z方向とも呼ぶ)は、鉛直上方向を示し、Y方向(+Y方向とも呼ぶ)は、+X方向と+Z方向とに直交する水平方向を示している。以下、「+X方向側」を単に「+X側」とも呼び、「+Y方向側」を単に「+Y側」とも呼び、「+Z方向側」を単に「+Z側」とも呼ぶ。「−X方向側」と「−Y方向側」と「−Z方向側」とのそれぞれについても、同様である。
【0026】
図1に示すように、駆動ユニット10は、エンジンマウント20を介して、車体30に搭載されている。エンジンマウント20は、弾性体(例えば、ゴム)と、ダンパとを有している。エンジンマウント20は、駆動ユニット10の振動が車体30に伝わることを抑制する。
【0027】
図2に示すように、動力伝達装置100は、入力シャフトIと、遊星歯車機構PGSと、発電機MG1(「第1回転電機MG1」とも呼ぶ)と、カウンタドライブギア22と、カウンタドリブンギア24と、第2回転電機MG2と、モータ出力ギア23と、ピニオンギア26と、デファレンシャル装置DFDと、を含んでいる。これらの構成要素は、動力伝達装置100のケース4に収容されている。
【0028】
入力シャフトIと、カウンタドライブギア22と、遊星歯車機構PGSと、第1回転電機MG1とは、第1軸A1上に配置されている。第2回転電機MG2とモータ出力ギア23とは、第2軸A2上に配置されている。カウンタドリブンギア24とピニオンギア26とは、第3軸A3上に配置されている。デファレンシャル装置DFDは、第4軸A4上に配置されている。このように、動力伝達装置100は、4つの軸A1〜A4に構成要素が配置された4軸構成を有している。これらの軸A1〜A4は、いずれも、Y方向と平行である。
【0029】
入力シャフトIは、ダンパ21を介して、内燃機関Eの出力シャフトEoに連結されている。また、入力シャフトIは、遊星歯車機構PGSのキャリアcaに連結されている(詳細は後述)。
【0030】
第1回転電機MG1は、第1ステータSt1と第1ロータRo1とを有している。第1ステータSt1は、動力伝達装置100のケース4に固定されている。第1ロータRo1は、遊星歯車機構PGSのサンギアsに、一体となって回転するように、連結されている(詳細は後述)。
【0031】
第2回転電機MG2は、第2ステータSt2と第2ロータRo2とを有している。第2ステータSt2は、ケース4に固定されている。第2ロータRo2は、モータ出力ギア23に、一体となって回転するように、連結されている。
【0032】
第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とは、図示しないパワーコントロール回路に、電気的に接続されている。パワーコントロール回路は、図示しないバッテリに、電気的に接続されている。パワーコントロール回路は、回転電機MG1、MG2を電気的に制御するインバータ回路と、電圧を昇降するコンバータ回路とを有している。パワーコントロール回路の制御の下で、第1回転電機MG1は、モータおよびジェネレータとして動作可能であり、第2回転電機MG2も、モータおよびジェネレータとして動作可能である。
【0033】
遊星歯車機構PGSは、複数のピニオンギアpgと、複数のピニオンギアpgを支持するキャリアcaと、ピニオンギアpgと噛み合うサンギアsと、ピニオンギアpgと噛み合うリングギアrと、を有している。上述したように、キャリアcaは、入力シャフトIに連結され、サンギアsは、第1回転電機MG1の第1ロータRo1に連結されている。また、リングギアrは、カウンタドライブギア22に、一体となって回転するように、連結されている。
【0034】
遊星歯車機構PGSは、動力分配装置としての機能を果たす。例えば、遊星歯車機構PGSは、キャリアcaに伝達された内燃機関Eからの回転駆動力を、第1回転電機MG1(サンギアs)およびカウンタドライブギア22(リングギアr)に伝達する。この場合、第1回転電機MG1は、ジェネレータとして動作することによって、バッテリを充電可能である。また、第1回転電機MG1は、モータとして動作することによって、サンギアsに逆向きのトルクを印加することもできる。これにより、遊星歯車機構PGSは、より大きな回転駆動力をカウンタドライブギア22に伝達することができる。
【0035】
カウンタドライブギア22は、カウンタドリブンギア24と噛み合っている。カウンタドリブンギア24は、ピニオンギア26に、一体となって回転するように、連結されている。カウンタドリブンギア24とピニオンギア26とは、共通のカウンタシャフト25に、設けられている。
【0036】
カウンタシャフト25の一方の端部(−Y側の端部)は第1軸受け50によって回転可能に支持され、他方の端部(+Y側の端部)は第2軸受け60によって回転可能に支持されている。これらの軸受け50、60は、転動体を有する転がり接触軸受け(より具体的には、ローラーベアリング)である。本実施例では、転動体は、テーパードローラである。第1軸受け50は、ケース4に設けられた凹部700に嵌め込まれている。凹部700には、油溜め部300が形成されている。この油溜め部300は、第1軸受け50の軸方向側(−Y側。カウンタシャフト25側の反対側)に、配置されている。この油溜め部300の詳細については、後述する。
【0037】
デファレンシャル装置DFDは、ピニオンギア26と噛み合うリングギア27と、2つの出力シャフトDFo1、DFo2と、を含む複数の回転部材を有している。デファレンシャル装置DFDは、リングギア27に伝達された回転駆動力を、第1出力シャフトDFo1と、第2出力シャフトDFo2とに分配する。各出力シャフトDFo1、DFo2には、図示しない駆動輪が、それぞれ連結されている。
【0038】
また、カウンタドリブンギア24は、さらに、モータ出力ギア23と噛み合っている。第2回転電機MG2は、モータ出力ギア23と、カウンタドリブンギア24と、ピニオンギア26と、デファレンシャル装置DFDとを通じて、回転駆動力を駆動輪に伝達可能である。このように、第2回転電機MG2は、車両の走行用の駆動力を補助することができる。また、車両の減速時には、駆動輪からの駆動力によって駆動される第2回転電機MG2が、ジェネレータとして動作することによって、バッテリを充電可能である。
【0039】
なお、詳細な説明を省略するが、動力伝達装置100の回転部材(例えば、第1ロータRo1)は、それぞれ、軸受けによって回転可能に支持されている。また、内燃機関Eと、第1回転電機MG1と、第2回転電機MG2との制御は、周知の制御であってよい。
【0040】
A2.油供給:
次に、油供給について説明する。図1に示すように、第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3は、いずれも、第4軸A4よりも高い位置に配置されている。そして、3つの軸A1、A2、A3は、車両の前方から後方に向かって、第1軸A1、第3軸A3、第2軸A2の順番に並んでいる。最も低い位置に配置された第4軸A4には、デファレンシャル装置DFDのリングギア27が配置されている。また、動力伝達装置100のケース4の下部には、油を貯留する貯留部(以下、下貯留部29と呼ぶ)が形成されている。下貯留部29は、リングギア27の鉛直下方向に配置されている。リングギア27の下方の一部分は、この下貯留部29に貯留された油(図示せず)に浸っている。従って、リングギア27が回転すると、リングギア27に付着した油が、リングギア27の周辺に飛ばされる。これにより、動力伝達装置100の各要素(例えば、カウンタシャフト25、第1回転電機MG1、遊星歯車機構PGS、カウンタドライブギア22、カウンタドリブンギア24、第2回転電機MG2、ピニオンギア26)に、油が供給される。換言すれば、リングギア27は、下貯留部29に貯留された油を掻き揚げることによって、動力伝達装置100の構成要素に油を供給する。このように、デファレンシャル装置DFDのリングギア27は、動力伝達装置100の構成要素に油を供給する油供給部として機能する。動力伝達装置100の構成要素に供給された油は、自重により動力伝達装置100の内部を落下して、下貯留部29に戻る。
【0041】
なお、動力伝達装置100の上部に、リングギア27によって掻き揚げられた油を一時的に貯留する貯留部(以下「上貯留部」とも呼ぶ)を設けてもよい。そして、この上貯留部から動力伝達装置100の構成要素に油を導く油流路を設けても良い。こうすれば、リングギア27は、直接に油を供給することが難しい位置に配置された要素にも、油を供給することができる。
【0042】
A3.油溜め部の構成:
図3、図4は、油溜め部300の構成を示す概略図である。図3(A)は、動力伝達装置100における、第1軸受け50と凹部700とを含む一部分の断面図を示している。この断面図は、第3軸A3を通り、鉛直方向と平行な断面図である(図中の下方向が鉛直下方向である)。図3(B)は、凹部700を、軸方向から(+Y側から−Y側に向かって)見た図を示している。図4は、凹部700の斜視図を示している。
【0043】
図3(A)に示すように、第1軸受け50は、外輪51と、内輪53と、外輪51と内輪53との間に配置されたローラ52と、を有している。第1軸受け50は、動力伝達装置100のケース4に形成された凹部700に、+Y側から−Y側に向かって、嵌め込まれる。図3(A)の右部分には、第1軸受け50と、後述するプレート59とが、凹部700に挿入される様子が、簡略化して示されている。この凹部700は、+Y側から−Y側に向かって順番に並ぶ3つの部分710、720、730で構成されている。
【0044】
第1部分710は、+Y側から−Y側に向かって延びる円柱状の空間を形成する内壁で構成され、その空間の中心軸は、第3軸A3と一致する。第1部分710の内面は、第3軸A3と平行な円筒状の第1内面710iと、第1内面710iの−Y側に形成され、第3軸A3と直交する平面である第1ベース面710Sと、を有している。第1部分710の+Y側には、第1軸受け50を挿入するための円状の開口が形成されている。
【0045】
第2部分720は、第1ベース面710Sから−Y側に向かって形成された、第1部分710よりも径の小さい略円柱状の空間を形成する内壁で構成されている。第2部分720の内面は、第3軸A3と略平行な第2内面720iと、第2内面720iの−Y側に形成され、第3軸A3と直交する平面である第2ベース面720Sと、を有している。
【0046】
図3(B)、図4に示すように、第3軸A3の軸方向から見た場合に、第2内面720iは、全周に亘って、第1内面710iよりも内周側にシフトした位置に形成されている。具体的には、第2内面720iは、最下面722Dと、最下面722Dの−X側の端部から上方に向かって延びる第1側面721Bと、第1側面721Bの上端から−X方向に向かって延びる第1下面723Bと、最下面722Dの+X側の端部から上方に向かって延びる第2側面721Fと、第2側面721Fの上端から+X方向に向かって延びる第2下面723Fと、第2下面723Fの+X側の端部と第1下面723Bの−X側の端部とを接続する円弧面724と、を有している。最下面722Dは、第3軸A3を中心軸とする円筒の一部分と同じ形状を有している。
【0047】
第1部分710(第1内面710i)の内径は、第1軸受け50(外輪51)の外径と、ほぼ同じである。従って、図3(A)に示すように、第1軸受け50を、第1部分710に、ぴったりと嵌めることができる。また、図3(A)に示すように、外輪51の側面51S(−Y側の面)と、凹部700の第1ベース面710Sとの間には、リング状のプレート59が挟まれる。このプレート59は、第1軸受け50の予圧のためのものである。
【0048】
凹部700の第3部分730は、第2ベース面720Sから−Y方向に向かって形成された、略四角柱状の空間を形成する内壁で構成されている。図3(B)、図4に示すように、第3部分730の内面は、第3軸A3と略平行な第3内面730iと、第3内面730iの−Y側に形成され、第3軸A3と直交する平面である第3ベース面730Sと、を有している。第3内面730iは、最下面732Dと、最下面732Dの−X側の端部から上方に向かって延びる第1側面731Bと、最下面732Dの+X側の端部から上方に向かって延びる第2側面731Fと、これらの側面731B、731Fの上端を接続するとともに水平な上内面732Uと、を有している。第3内面730iの−Y側は、第3ベース面730Sによって塞がれている。なお、最下面732Dは、第3軸A3を中心軸とする円筒の一部分と同じ形状を有している。
【0049】
第3部分730の最下面732Dは、第2部分720の最下面722Dに、段差なく接続され、第3部分730の第1側面731Bは、第2部分720の第1側面721Bと、同一面上にあり、第3部分730の第2側面731Fは、第2部分720の第2側面721Fと、同一面上にあり、そして、第3部分730の上内面732Uは、第2部分720の下面723F、723Bよりも高い位置にある。
【0050】
以上、説明した凹部700の形状は、第3軸A3を含む鉛直面600(図3(B))を対称面とする面対称である。
【0051】
図3、図4には、内周縁51iが示されている。この内周縁51iは、外輪51の凹部700側(−Y側)における内周縁を表している(本実施例では、内周縁51iは、外輪51の凹部700側の側面51Sの内周縁と同じである)。図3(B)に示すように、内周縁51iの最下位置51idは、最下面722D、732Dよりも高く、下面723F、723Bよりも低い位置に配置されている。また、第3軸A3の軸方向からみて、内周縁51iは、側面721F、731F、721B、731Bと交差している。
【0052】
凹部700に、プレート59と、第1軸受け50とを装着することによって、上部に開口300pを有する容器形状の部分300が形成される(油溜め部300に対応する)。油溜め部300の底面は、リング状のプレート59の下部分と最下面722D、732Dとによって形成される。油溜め部300の側面は、プレート59の一部(図示せず)と、外輪51の側面51Sと、第2部分720の側面721F、721Bと、第3部分730の側面731F、731B、730Sとによって形成される。
【0053】
油溜め部300は、第1軸受け50(外輪51と内輪53との間)から凹部700側に流れた油を貯留することができる(図中では、貯留された油400が、ハッチングで示されている)。このような油の流れは、デファレンシャル装置DFD(図1、図2)のリングギア27が第1軸受け50に油を供給した場合に生じ得る。なお、貯留された油400の油面402が、内周縁51iの最下位置51idを超えると、油が外輪51(内周縁51i)を乗り越えて第1軸受け50に流れる。従って、油溜め部300における最高油面は、内周縁51iの最下位置51idと同じである。内周縁51iの最下位置51idが、開口300pの下端部分を定めている。
【0054】
図5は、動力伝達装置100(図1)が傾いた状態における油溜め部300を示す説明図である。図5は、図3(B)と同様に+Y側から−Y側に向かって見た図を示している。図5の下部には油溜め部300の拡大図が示されている。図示するように、油溜め部300、すなわち、動力伝達装置100は、時計回り方向に傾いている。動力伝達装置100のこの傾きは、車両が停止状態から前進を開始したときに、生じる。動力伝達装置100は、前進時に、駆動輪を回転させる(図1では、動力伝達装置100は、駆動輪を反時計回りに、回転させる)。動力伝達装置100は、駆動輪からの反作用によって、反対向きに回転しようとする(図1では、時計回り方向)。ここで、駆動ユニット10は、弾性体を含むエンジンマウント20によって車体30に搭載されている。この結果、車体30はほとんど傾かずに、駆動ユニット10(動力伝達装置100)が傾く。
【0055】
図5に示すように、動力伝達装置100が傾いた結果、最下面722D、732Dは、+X側が高くなり、−X側が低くなるように、傾斜する。油溜め部300に貯留された油は、−X方向に向かって、移動する。図中には、仮想油面412が示されている。仮想油面412は、図3(B)に示した油400と同じ量の油が、傾いた状態の油溜め部300に留まると仮定した場合の油面である。仮想油面412は、水平であるが、油溜め部300に対しては、相対的に傾斜する。油は、第1側面721B、731Bに沿って、内周縁51iよりも内周側に到達する(仮想油面412は、内周縁51iを超えて内周側に到達する)。
【0056】
現実には、内周縁51iよりも内周側に到達した油は、内周縁51i(外輪51)を超えて第1軸受け50に流れる。そして、現実の油面414の高さは、内周縁51iの最下位置51ieと同じとなる(この最下位置51ieは、油溜め部300が傾いた状態における、第2側面721F、731Fと第1側面721B、731Bとの間の範囲内における最下位置である)。現実の油面414は、仮想油面412よりも低い。図中では、傾いた油溜め部300に残る油410が、ハッチングで示されている。
【0057】
なお、図3(A)で説明したように、外輪51の側面51S(−Y側の面)と、凹部700の第1ベース面710Sとの間には、リング状のプレート59が挟まれる。従って、外輪51と第1ベース面710Sとの間には、プレート59の厚み分の隙間が生じる。油溜め部300に貯留された油は、この隙間にも流入する。ただし、この隙間に流入する油量は少ないので、本実施例、および、後述する他の実施例の図では、その隙間に流入する油の図示を省略している。
【0058】
以上、動力伝達装置100が傾いた場合について説明したが、動力伝達装置100が傾いていない状態であっても、動力伝達装置100が動作する場合には、油溜め部300は、第1軸受け50に油を供給することができる。動力伝達装置100が動作する場合には、動力伝達装置100が振動する。例えば、動力伝達装置100に納められた回転部材(例えば、ギア)の回転に起因して、動力伝達装置100は振動する。また、車両が走行することによって、動力伝達装置100は振動する。この振動によって、油溜め部300内で油が動く。動く油は、第1側面721B、731Bにぶつかり得る。第1側面721B、731Bにぶつかった油は、第1側面721B、731Bに沿って、内周縁51iよりも内周側に移動し得る。油の一部は、第1側面721B、731Bにぶつかった勢いに応じて、第1軸受け50に向かって移動しつつ内周縁51iよりも内周側に移動することが可能である。そのような油は、外輪51を乗り越えて第1軸受け50に流れ得る。同様に、第2側面721F、731Fに沿って内周縁51iよりも内周側に移動した油が、第1軸受け50に流れ得る。このように、油溜め部300は、動力伝達装置100の振動を利用して、油を第1軸受け50に供給することもできる。この結果、現実の油面は、図3(B)の油面402よりも低くなり得る。ただし、車両が典型的な走行(例えば、一般道路の巡航)を行った場合には、一般的には、油供給部(例えば、デファレンシャル装置DFDのリングギア27)によって供給される油量が十分である。従って、車両が典型的な走行を終えて停車した状態では、一般的には、油溜め部300は、十分な量の油を、貯留している。従って、次に車両が走行を開始した時点で、油溜め部300は、容易に、第1軸受け50に油を供給することができる。
【0059】
以上のように、本実施例では、第1軸受け50(図3(A))の軸方向側(−Y側)に、上部に開口300pを有する油溜め部300が設けられている。図3(B)に示すように、動力伝達装置100が動作していない状態では、外輪51の内周縁51iの最下位置51idの部分が、開口300pの下端部分を区画(形成)する。油溜め部300の内面のうちの最低部分(最下面722D、732D)は、内周縁51iの最下位置51idよりも低い位置に配置されている。この結果、リングギア27(図1、図2)によって十分な量の油が第1軸受け50に供給される場合に、油溜め部300は、油を溜めることができる。
【0060】
さらに、図3(B)に示すように、第1軸受け50の軸方向から見た場合に(+Y側から−Y側に向かって見た場合に)、第1側面721B、731Bは、外輪51の内周縁51iを下方から上方に向けて横切ることによって、内周縁51iの外周側から内周側まで延びている。これにより、動力伝達装置100が動いた場合には(例えば、動力伝達装置100が傾いた場合や振動した場合には)、油は、第1側面721B、731Bに沿って内周縁51iの内周側に移動し得る。内周縁51iの内周側に移動した油は、外輪51を乗り越えて、第1軸受け50に流れ得る。
【0061】
このように、リングギア27(図1、図2)によって第1軸受け50に供給される油の量(単位時間当たりの量)が低減した場合には、油溜め部300は、動力伝達装置100の動き(振動や傾斜)を利用して、油を、第1軸受け50に供給することができる。例えば、油温が低く油の粘度が高いが故に、リングギア27が第1軸受け50に供給する油量が低減し得る。また、車速が遅いが故に、リングギア27が第1軸受け50に供給する油量が低減し得る。このような場合であっても、動力伝達装置100が動作を開始した場合には、油溜め部300は、動力伝達装置100の振動や傾斜を利用して、第1軸受け50に油を供給することができる。この結果、供給される油量の低減した状態で、第1軸受け50が、長時間に亘って駆動することを抑制できる。
【0062】
また、図5に示すように、車両が停止状態から前進を開始することによって動力伝達装置100が傾いた状態における油溜め部300の貯留可能容量は、動力伝達装置100が動作していない状態における油溜め部300の貯留可能容量(図3(B))と比べて、小さい。この結果、車両が一般的な動作である前進を開始した場合に、油溜め部300は、直ぐに第1軸受け50に油を供給することができる。この結果、動力伝達装置100の動作開始時における第1軸受け50への油の供給量が低減することを抑制できる。
【0063】
また、本実施例では、図3(B)に示すように、第2側面721F、731Fも、外輪51の内周縁51iの外周側から少なくとも内周縁51iまで延びているので、油溜め部300は、適切に、内周縁51iの最下位置51idまで油を貯留することができる。さらに、車両が停止状態から前進を開始することによって動力伝達装置100が傾いた場合に、第2側面721F、731Fから見た第1側面721B、731Bの高さが低くなる。従って、動力伝達装置100が傾いた場合には、油は、第1側面721B、731Bに沿って移動する。ここで、第1側面721B、731Bは、内周縁51iの内周側まで延びている。この結果、油は、容易に、内周縁51iを乗り越えて第1軸受け50に流入することができる。
【0064】
また、車両が停止状態から後進を開始した場合には、動力伝達装置100は、逆方向に傾く(図3(B)では、油溜め部300は、反時計回り方向に回転しようとする)。この場合、油は、第2側面721F、731Fに沿って移動する。ここで、第1軸受け50の軸方向から見た場合に、第2側面721F、731Fは、外輪51の内周縁51iの外周側から内周縁51iを超えて内周側まで延びている。従って、油は、容易に、内周縁51iを乗り越えて第1軸受け50に流入することができる。このように、車両が後進を開始した場合にも、油溜め部300は、油を第1軸受け50に供給することができる。
【0065】
B.第2実施例:
図6は、油溜め部の別の実施例を示す概略図である。図6は、図3(B)と同様に+Y側から−Y側に向かって見た図を示している。第1実施例の油溜め部300(図3、図5)との差異は、第2実施例の油溜め部300Bでは、第1側面721B、731Bが、+X方向に向かってシフトして配置されている点だけである。第2実施例の駆動ユニットの他の構成は、第1実施例の構成と、同じである。従って、第2実施例も、第1実施例と同じ効果をもたらすことができる。さらに、第2実施例は、以下に説明する効果をもたらすこともできる。以下、第2実施例の要素のうちの第1実施例の要素と同じ要素には、同じ符号を付すこととし、重複する説明を省略する。また、油溜め部300の代わりに油溜め部300Bが設けられた凹部を「凹部700B」と呼ぶ。
【0066】
図6の下部には、油溜め部300Bの拡大図が示されている。図示するように、第3軸A3の軸方向から見た場合に、第3軸A3を通る鉛直面600は、油溜め部300Bと重なる。但し、第2実施例では、第1側面721B、731Bと鉛直面600(第3軸A3を通る鉛直ライン)との間の第1距離DBは、第2側面721F、731Fと鉛直面600との間の第2距離DFよりも、短い。この結果、第1側面721B、731Bと内周縁51iとが重なって見える第1重畳位置P1は、第2側面721F、731Fと内周縁51iとが重なって見える第2重畳位置P2よりも、低い位置に配置される。すなわち、第1距離DBが第2距離DFと同じである場合(第1距離DBが長い場合)と比べて、第1重畳位置P1は、低くなる。従って、動力伝達装置が動いた場合には(例えば、動力伝達装置が振動や傾斜した場合には)、第1側面721B、731Bに沿って移動する油は、容易に、第1軸受け50に流入することができる。なお、図中では、貯留された油420がハッチングで示されている。油面422の高さは、内周縁51iの最下位置51idと同じである。
【0067】
図7は、図5と同様に時計周り方向に傾いた状態の油溜め部300Bを示している。図の下部には、300Bの拡大図が示されている。図中には、仮想油面432と、現実の油面434が示されている。仮想油面432は、図6の油420と同じ量の油が、傾いた状態の油溜め部300Bに留まると仮定した場合の油面である。現実の油面434は、仮想油面432よりも低く、内周縁51iの最下位置51ieと同じ高さにある。図中には、傾いた油溜め部300Bに残る油430が、ハッチングで示されている。
【0068】
また、図中には、仮想重畳位置P1xが示されている。仮想重畳位置P1xは、第1距離DBがより長い場合(例えば、第1距離DBが第2距離DFと同じ場合)の第1重畳位置P1に対応する位置である。図示するように、第1重畳位置P1は、仮想重畳位置P1xと比べて、低い。従って、第1側面721B、731Bに沿って移動する油は、第1距離DBが長い場合と比べて容易に、内周縁51iを乗り越えることができる。例えば、凹部700B(動力伝達装置)の傾きが小さくても、油面が内周縁51iを乗り越えることができる。
【0069】
また、図6に示すように、凹部700B(動力伝達装置)が傾いていない状態においては、第2重畳位置P2は、第1重畳位置P1と比べて、鉛直面600から遠い(第2距離DFが第1距離DBよりも長い)。この結果、第2距離DFが短い場合(例えば、第2距離DFが第1距離DBと同じである場合)と比べて、油溜め部300Bの鉛直面600よりも第2側面721F、731F側の部分の容量が小さくなることを抑制できる。この結果、車両の前進開始に応じて凹部700B(動力伝達装置)が傾いた場合に油溜め部300Bによって第1軸受け50に供給される油の量が少なくなることを抑制できる。
【0070】
C.第3実施例:
図8、図9は、油溜め部の別の実施例を示す概略図である。第1実施例の油溜め部300(図3、図5)との差異は、第3実施例の油溜め部300Cでは、凹部700の第3部分730に、第1突出部737が設けられている点だけである。第3実施例の駆動ユニットの他の構成は、第1実施例の構成と、同じである。従って、第3実施例も、第1実施例と同じ効果をもたらすことができる。さらに、第3実施例は、以下に説明する効果をもたらすこともできる。以下、第3実施例の要素のうちの第1実施例の要素と同じ要素には、同じ符号を付すこととし、重複する説明を省略する。また、油溜め部300の代わりに油溜め部300Cが設けられた凹部を「凹部700C」と呼ぶ。
【0071】
図8(A)は、図3(B)と同様に+Y側から−Y側に向かって見た図を示している。図8(B)は、図8(A)のA−A断面を示している。この断面図は、第3軸A3を含み、第1突出部737を横切る断面を示している。図9は、油溜め部300Cの斜視図を示している。図9の下部には、別の方向から見た第1突出部737の拡大斜視図が示されている。図示するように、第1突出部737は、略四角柱状の部分であり、油溜め部300Cの1つの隅(第1側面731Bと第3ベース面730Sと最下面732Dとの交わる隅)に配置されている。第1突出部737の上面737Uは、略水平な面であり、第1側面731Bおよび第3ベース面730Sと交わっている。第1突出部737の第1側面737S1は、第1側面731Bと略平行な面であり、第3ベース面730Sおよび最下面732Dと交わっている。第1突出部737の第2側面737S2は、第3ベース面730Sと略平行な面であり、第1側面731Bおよび最下面732Dと交わっている。図8(A)に示すように、第1側面737S1は、第3軸A3を通る鉛直面600とほぼ重なるように配置され、上面737Uは、内周縁51iの最下位置51idよりも高い位置に配置されている。また、上面737Uは、第1側面721B、731Bと内周縁51iとの重なる第1重畳位置P1よりも高い位置に配置されている。なお、図中には、油溜め部300Cに貯留された油440が、ハッチングで示されている。油440の油面442の高さは、外輪51の内周縁51iの最下位置51idと同じである。
【0072】
図10は、図5と同様に時計周り方向に傾いた状態の油溜め部300Cを示している。図5に示す実施例と同様に、油溜め部300Cに貯留された油は、+X側から−X側に移動する。図中には、仮想油面452が示されている。この仮想油面452は、図8(A)に示す油440と同じ量の油が、傾いた状態の油溜め部300Cに留まると仮定した場合の油面である。ここで、図8に示すように、第1突出部737は、油溜め部300Cが傾いていない状態での油面442よりも高い位置に配置された部分を含んでいる。従って、油が第1側面721B、731Bに沿って内周側に移動する場合に油が流れ得る空間は、第1突出部737が省略された場合と比べて、小さい。この結果、第1突出部737が省略された場合の仮想油面412(図5)と比べて、仮想油面452は、より内周側に位置する。
【0073】
現実には、内周縁51iよりも内周側に到達した油が外輪51を超えて第1軸受け50に流れるので、現実の油面454の高さは、内周縁51iの最下位置51ieと同じとなる。図10では、傾いた油溜め部300Cに残る油450が、ハッチングで示されている。
【0074】
以上のように、第1突出部737を設けることによって、第1側面721B、731Bに対する油面の相対的な上昇を促進することができる。従って、油溜め部300Cは、容易に、油を第1軸受け50に供給することができる。換言すれば、油溜め部300Cは、第1突出部737が省略された場合と比べて小さい傾きで、油を第1軸受け50に供給することができる。
【0075】
D.第4実施例:
図11は、油溜め部の別の実施例を示す説明図である。第3実施例の油溜め部300C(図8、図9)との差異は、第4実施例の油溜め部300Dでは、凹部700Cの第3部分730に、第1突出部737aと第2突出部738aとが設けられている点だけである。第4実施例の駆動ユニットの他の構成は、第1実施例の構成と同じである。従って、第4実施例も、第1実施例と同じ効果をもたらすことができる。さらに、第4実施例は、以下に説明する効果をもたらすこともできる。以下、第4実施例の要素のうちの第1実施例の要素と同じ要素には、同じ符号を付すこととし、重複する説明を省略する。また、油溜め部300の代わりに油溜め部300Dが設けられた凹部を「凹部700D」と呼ぶ。
【0076】
図11は、図3(B)と同様に+Y側から−Y側に向かって見た図を示している。第1突出部737aの形状は、図8、図9に示す第1突出部737の第1側面737S1を−X側にシフトさせて小型化したものと同じである。また、本実施例では、凹部700Dの形状は、第3軸A3を通る鉛直面600を対称面とする面対称である。すなわち、第2突出部738aの形状は、鉛直面600を対称面とする、第1突出部737aの鏡像である。なお、図中には、油溜め部300Dに貯留された油450が、ハッチングで示されている。油450の油面452の高さは、外輪51の内周縁51iの最下位置51idと同じである。
【0077】
このように、第2側面721F、731F側にも、第1突出部737aと同様の形状を有する第2突出部738aが設けられている。この結果、車両が前進を開始した場合に限らず、停止状態から後進を開始した場合にも、油溜め部300Dは、図10の実施例と同様に容易に、油を第1軸受け50に供給することができる。換言すれば、車両が前進を開始した場合と後進を開始した場合とのそれぞれにおいて、油溜め部300Dは、第2突出部738aが省略された場合と比べて小さい傾きで、油を第1軸受け50に供給することができる。
【0078】
E.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0079】
変形例1:
油溜め部の形状は、上述の各実施例の油溜め部300、300B、300C、300Dの形状に限らず、他の種々の形状であってよい。例えば、図7に示す油溜め部300Bに、図11に示す2つの突出部737a、738aのいずれか一方、または、両方を追加してもよい。また、突出部737、737a、738aの形状は、四角柱状に限らず、他の任意の形状(例えば、丸みを帯びた形状)であってもよい。また、第2突出部738aの形状が、第1突出部737aの形状の鏡像とは異なる形状であってもよい。また、突出部737、737a、738aは、最下面722D、732Dから離れた高い位置に設けられていても良い。例えば、突出部737、737a、738aは、油溜め部が傾いていない状態の油面(例えば、(図8(A)油面442)よりも内周側にのみ、設けられていても良い。ここで、第1突出部737、737aは、車両の前進開始時に油溜め部が傾くことによって上昇した油面の下に沈む位置に設けられた部分を含むことが好ましい。第2突出部738aは、車両の後進開始時に油溜め部が傾くことによって上昇した油面の下に沈む位置に設けられた部分を含むことが好ましい。また、突出部737、737a、738aは、第3ベース面730Sから離れた位置に設けられていても良い。例えば、突出部737、737a、738aは、第2部分720に設けられていても良い。
【0080】
また、第3ベース面730Sは、第1軸受け50の軸方向と、斜めに交わっても良い。また、第3ベース面730Sは、平面の代わりに曲面であってもよい。また、油溜め部の側壁部(例えば、図3の第1側面721B、731Bを形成する内壁部)を形成する部材は、任意の部材であってよい。例えば、側壁部は、動力伝達装置100のケース4を用いずに、プレート59によって形成されてもよい。また、側壁部は、ケース4とプレート59とのいずれとも異なる他の部材によって形成されてもよい。油溜め部の最下内壁部(例えば、図3の最下面722D、732Dを形成する内壁部)を形成する部材も、同様に、任意の部材であってよい。一般に、油溜め部を形成する部材は、任意の部材であってよい。また、上述の各実施例において、プレート59が省略されて、第1軸受け50が、第1ベース面710Sと接触する位置に、嵌め込まれても良い。また、上記各実施例において、外輪51(図3(A))の上部分が、第1ベース面710Sによって覆い隠されていても良い。この場合には、油溜め部300、300B、300C、300Dの開口300p、300Bp、300Cp、300Dpは、外輪51の内周縁51iの全周のうちの下部分のみと、連通する。
【0081】
一般には、油溜め部の構成は、以下に説明するような任意の構成であってよい。すなわち、油溜め部は、回転部材を支持する軸受けの軸方向側であって回転部材側とは反対側に設けられている。軸受けの外輪の油溜め部側における内周縁の鉛直方向の最下位置の部分は、油溜め部の開口の下端部分を区画(形成)する。油溜め部は、油溜め部の内面のうちの鉛直方向の位置が最も低い内面部分を形成する最下内壁部を有する。この最下内壁部は、外輪の内周縁の最下位置と比べて低い位置に配置された内面部分を形成する。さらに、油溜め部は、最下内壁部から延びて、軸受けの軸方向と交差する特定の水平方向側の内面部分を形成する側壁部を有する。
【0082】
側壁部の形状は、動力伝達装置が動作していない状態で軸受けの軸方向から見た場合に、外輪の内周縁を下方から上方に向けて横切ることによって、内周縁の外周側から内周側まで延びるような、任意の形状であってよい。例えば、軸受けの軸方向から見た場合に、側壁部が、油溜め部の外側に向かって膨らんだ凹部を含んでも良い。また、側壁部が、油溜め部の内側に向かって突出する突出部を含んでもよい。また、側壁部が、最下内壁部から、外輪の内周縁よりも内周側まで、直線状に延びる壁部であってもよい。また、側壁部が、軸受けの回転軸と平行でなくてもよい。いずれの場合も、動力伝達装置の振動に起因して側壁部にぶつかった油は、側壁部に沿って、外輪の内周縁よりも内周側に移動することができる。この結果、油溜め部は、油を軸受けに供給することができる。
【0083】
ここで、油溜め部における側壁部の内面から軸受けに至る部分を形成する壁部分(例えば、図3(A)のプレート59)は、軸受けの軸方向から見た場合に、側壁部の内面と重なって見える位置、または、側壁部の内面よりも外周側の位置に配置されていることが好ましい。こうすれば、側壁部の内面から軸受けへの油の移動が妨げられないので、油溜め部は、適切に、油を軸受けに供給することができる。上記壁部分のそのような構成は、軸受けの軸方向から見て、側壁部と外輪の内周縁との重なって見える位置(以下、重畳位置と呼ぶ。例えば、図6のP1)よりも内周側の側壁部(以下「油導側壁部」とも呼ぶ)の少なくとも一部において実現されることが好ましい。油導側壁部は、例えば、図6の第1側面721Bの第1重畳位置P1よりも内周側の部分であってよい。また、上記壁部分のそのような構成は、軸受けの軸方向から見て、油導側壁部における、重畳位置を含む少なくとも一部の連続な範囲(例えば、図6の第1側面721Bにおける第1重畳位置P1よりも内周側の範囲)において、実現されることが、さらに好ましい。
【0084】
ここで、上記特定の水平方向を第1水平方向と呼び、上記側壁部を第1側壁部と呼ぶ。油溜め部は、さらに、第1水平方向とは反対方向である第2水平方向側の内面部分を形成する以下のような第2側壁部を有してよい。すなわち、第2側壁部は、動力伝達装置が動作していない状態で軸受けの軸方向から見た場合に、外輪の内周縁に下方から内周縁に向かって延びることによって、内周縁の外周側から、少なくとも内周縁まで延びている。ここで、第2側壁部が、第1側壁部と同様に、内周縁の内周側まで延びていることが好ましい。こうすれば、動力伝達装置の振動に起因して第2側壁部にぶつかった油は、第2側壁部に沿って、外輪の内周縁よりも内周側に移動することができる。この結果、油溜め部は、第1側壁部と第2側壁部との両方を利用して、油を軸受けに供給することができる。ただし、第2側壁部は、内周縁よりも内周側の部分を有していなくてもよい。
【0085】
また、車両が停止状態から前進を開始することによって動力伝達装置が傾いた状態における油溜め部の貯留可能容量を「前進貯留可能容量」と呼び、車両が停止状態から後進を開始することによって動力伝達装置が傾いた状態における油溜め部の貯留可能容量を「後進貯留可能容量」と呼ぶ。また、動力伝達装置が動作していない状態における油溜め部の貯留可能容量を「通常貯留可能容量」と呼ぶ。ここで、前進貯留可能容量と後進貯留可能容量との少なくとも一方が、通常貯留可能容量と比べて小さくなるように、油溜め部が構成されていることが好ましい。こうすれば、動力伝達装置が動作(前進動作と後進動作との少なくとも一方)を開始したときに、油溜め部は、直ぐに軸受けに油を供給することができる。
【0086】
このような油溜め部の構成(形状)は、種々の構成(形状)であってよい。例えば、動力伝達装置が傾いた状態において、軸受けの外輪の油溜め部側における内周縁の最下位置(例えば、図5の最下位置51ie)が、油溜め部の開口の下端部分を区画(形成)してもよい。また、軸受けの軸方向から見て外輪の内周縁と油溜め部の側壁部との重なる位置(例えば、図6の第1重畳位置P1)が、動力伝達装置が傾いた状態における開口の下端部分を区画(形成)してもよい。また、油溜め部の開口(例えば、図3の開口300p)は、動力伝達装置が傾いたことに応じて油を少なくとも軸受けに導く開口であってよい。例えば、開口は、動力伝達装置が傾いたことに応じて、軸受けに加えて他の要素にも油を導いてもよい。いずれの場合も、動力伝達装置が動作していない状態において、外輪の油溜め部側における内周縁の鉛直方向の最下位置の部分(例えば、図3の最下位置51id)が、油溜め部の開口の下端部分を形成することが好ましい。こうすれば、油供給部(例えば、図1のリングギア27)によって十分な量の油が軸受けに供給される場合に、油溜め部は、軸受けの外輪から溢れた油を容易に受けることができる。この結果、油溜め部は、容易に油を貯留することができる。
【0087】
なお、前進貯留可能容量と後進貯留可能容量とのいずれか一方、または、両方が、通常貯留可能容量と比べて大きくなるように、油溜め部が構成されていてもよい。この場合、油溜め部が傾いても油面は内周縁51iを超えることが出来ないが、上述したように、油溜め部は、動力伝達装置の振動を利用して、油を軸受けに供給することができる。
【0088】
なお、第1側壁部は、動力伝達装置を備える車両が停止状態から前進を開始することによって動力伝達装置が傾いた場合に、第2側壁部から見て相対的に低くなる側に配置されてもよく、第2側壁部から見て相対的に高くなる側に配置されてもよい。いずれの場合も、油溜め部は、動力伝達装置の振動を利用して、油を軸受けに供給することができる。
【0089】
また、油溜め部の位置は、軸受けの回転軸を通る鉛直面(例えば、図3(B)の鉛直面600)と交差する位置に限らず、鉛直面の一方側に配置されてもよい。
【0090】
変形例2:
軸受けによって支持される回転部材は、カウンタシャフト25に限らず、任意の回転部材であってよい。例えば、図2に示す実施例においては、油溜め部は、カウンタシャフト25の第2軸受け60の軸方向側(+Y側。カウンタシャフト25から離れる側)に配置されてもよい。また、油溜め部は、第1回転電機MG1の第1ロータRo1を支持する軸受け70の軸方向側(+Y側。第1ロータRo1から離れる側)に配置されてもよい。カウンタシャフト25は、動力伝達装置100の他の回転部材と比べて、強い力を受ける。また、第1回転電機MG1の第1ロータRo1は、動力伝達装置100の他の回転部材と比べて、高速に回転する。従って、これらの回転部材(カウンタシャフト25、第1ロータRo1)の軸受けに、油溜め部を設けることが好ましい。こうすれば、動力伝達装置100は、より円滑に動作することができる。また、油溜め部を、動力伝達装置100の他の回転部材の軸受けに設けても良い。出力シャフト(例えば、出力シャフトDFo1、DFo2)に連結された回転部材は、車両の走行開始時に直ぐに回転する可能性が高い。従って、出力シャフトに連結された回転部材(例えば、カウンタシャフト25や第1ロータRo1)の軸受けに油溜め部を設けることが好ましい。なお、「回転部材が出力シャフトに連結されている」とは、出力シャフトの回転に応じて回転部材が回転するように回転部材が出力シャフトに連結されていることを意味している。また、油溜め部によって油が供給される軸受けは、ローラーベアリングに限らず、ボールベアリングであってもよい。また、軸受けは、外輪と内輪との間に転動体を有する転がり接触軸受けに限らず、転動体を有さない軸受け(例えば、摩擦軸受け)であってもよい。
【0091】
変形例3:
上記各実施例では、内燃機関E(図1)にエンジンマウント20が接続されており、この内燃機関Eに動力伝達装置(例えば、図2の動力伝達装置100)が固定されているが、動力伝達装置に直接的にエンジンマウント20が接続されていてもよい。一般には、動力伝達装置それ自体、または、動力伝達装置を含む装置(例えば、図2の駆動ユニット10)が、弾性体を用いたマウント部材によって、車体30に搭載されてよい(すなわち、動力伝達装置は、弾性体を用いたマウント部材を通じて、直接的または間接的に、車体30に連結されてよい)。こうすれば、車両が停止状態から走行(前進または後進)を開始するときに、動力伝達装置が傾くので、油溜め部(例えば、図3の油溜め部300)は、適切に、軸受け(例えば、図3の第1軸受け50)に油を供給することができる。
【0092】
変形例4:
動力伝達装置は、ハイブリッド車両用の動力伝達装置に限らず、任意の種類の車両で利用される動力伝達装置であってよい。例えば、動力伝達装置は、電気自動車用の動力伝達装置であってもよく、動力源がモータを含まずに内燃機関のみである車両用の動力伝達装置であってもよい。また、軸受けに油を供給する油供給部は、デファレンシャル装置DFDのリングギア27に限らず、他の回転部材であってもよい。また、油供給部は、軸受けに油を供給可能な任意の装置であってよく、例えば、オイルポンプであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
4...ケース
10...駆動ユニット
20...エンジンマウント
21...ダンパ
22...カウンタドライブギア
23...モータ出力ギア
24...カウンタドリブンギア
25...カウンタシャフト
26...ピニオンギア
27...リングギア
29...下貯留部
30...車体
51...外輪
51i...内周縁
51S...側面
51id、51ie...最下位置
52...ローラ
53...内輪
59...プレート
100...動力伝達装置
300、300B、300C、300D...油溜め部
300p、300Bp、300Cp、300Dp...開口
400、410、420、430、440、450...油
402、414、422、434、442、454...油面
412、432...、452仮想油面
600...鉛直面
700、700B、700C、700D...凹部
710...第1部分
710S...第1ベース面
710i...第1内面
720...第2部分
720S...第2ベース面
720i...第2内面
721B...第1側面
721F...第2側面
722D...最下面
723B...第1下面
723F...第2下面
724...円弧面
730...第3部分
730S...第3ベース面
730i...第3内面
731B...第1側面
731F...第2側面
732D...最下面
732U...上内面
737...第1突出部
737U...上面
737S1...第1側面
737S2...第2側面
737a...第1突出部
738a...第2突出部
E...内燃機関
I...入力シャフト
DFo1...第1出力シャフト
DFo2...第2出力シャフト
P1...第1重畳位置
P2...第2重畳位置
A1...第1軸
A2...第2軸
A3...第3軸
A4...第4軸
DB...第1距離
DF...第2距離
PGS...遊星歯車機構
s...サンギア
r...リングギア
ca...キャリア
pg...ピニオンギア
Eo...出力シャフト
MG1...第1回転電機
MG2...第2回転電機
DFD...デファレンシャル装置
Ro1...第1ロータ
Ro2...第2ロータ
St1...第1ステータ
St2...第2ステータ
P1x...仮想重畳位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力シャフトと、
前記出力シャフトに連結された回転部材と、
外輪と、前記回転部材とともに回転する内輪とを有し、前記回転部材を回転可能に支持する軸受けと、
前記軸受けに油を供給する油供給部と、
を備える車両用動力伝達装置の油貯留構造であって、
前記軸受けの軸方向側であって前記回転部材側とは反対側に設けられ、油が出入りするための開口と、前記開口から入った油を貯留するための空間と、を形成する油溜め部を備え、
前記外輪の前記油溜め部側における内周縁の鉛直方向の最下位置の部分は、前記油溜め部の前記開口の下端部分を区画し、
前記油溜め部は、
前記油溜め部の内面のうちの鉛直方向の位置が最も低い内面部分であって、前記外輪の前記内周縁の前記最下位置と比べて低い位置に配置された内面部分を形成する最下内壁部と、
前記最下内壁部から延びて、前記軸受けの軸方向と交差する特定の水平方向側の内面部分を形成する側壁部であって、前記動力伝達装置が動作していない状態で前記軸受けの軸方向から見た場合に、前記外輪の前記内周縁を下方から上方に向けて横切ることによって、前記内周縁の外周側から内周側まで延びる側壁部と、
を含む、
油貯留構造。
【請求項2】
請求項1に記載の貯留構造であって、
前記動力伝達装置を備える車両が停止状態から前進と後進との少なくとも一方を開始することによって前記動力伝達装置が傾いた状態における油溜め部の貯留可能容量は、前記動力伝達装置が動作していない状態における前記油溜め部の貯留可能容量と比べて、小さい、
貯留構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の油貯留構造であって、
前記水平方向を第1水平方向と呼び、前記側壁部を第1側壁部と呼ぶときに、
前記油溜め部は、さらに、
前記最下内壁部から延びて、前記第1水平方向とは反対方向である第2水平方向側の内面部分を形成する側壁部であって、前記動力伝達装置が動作していない状態で前記軸受けの軸方向から見た場合に、前記外輪の前記内周縁に下方から前記内周縁に向かって延びることによって、前記内周縁の外周側から、少なくとも前記内周縁まで延びる第2側壁部を含み、
前記第1側壁部は、前記動力伝達装置を備える車両が停止状態から前進を開始することによって前記動力伝達装置が傾いた場合に、前記第2側壁部から見て相対的に低くなる側に、配置されている、
油貯留構造。
【請求項4】
請求項3に記載の油貯留構造であって、
前記動力伝達装置が動作していない状態で前記軸受けの軸方向から見た場合に、前記第1側壁部と前記内周縁とが重なる第1重畳位置は、前記第2側壁部と前記内周縁とが重なる第2重畳位置と比べて、前記軸受けの回転軸を通る鉛直ラインに近い位置に配置されている、
油貯留構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の油貯留構造であって、
前記特定の水平方向側の前記内面部分を形成する側壁部は、前記油溜め部の内部に向かって突出する突出部を含み、
前記突出部は、前記動力伝達装置が動作していない状態で見た場合に、前記外輪の前記内周縁の前記最下位置よりも高い位置に配置された部分を含む、
油貯留構造。
【請求項6】
請求項5に記載の油貯留構造であって、
前記突出部を第1突出部と呼ぶときに、
前記油溜め部の、前記側壁部から見て前記特定の水平方向とは反対方向側の内面は、前記油溜め部の内部に向かって突出する第2突出部を含み、
前記第2突出部は、前記動力伝達装置が動作していない状態で見た場合に、前記外輪の前記内周縁の前記最下位置よりも高い位置に配置された部分を含む、
油貯留構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−219856(P2012−219856A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83812(P2011−83812)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】