説明

車両用収納構造

【課題】収納性と利便性とを兼ね備えた車両用収納構造を提供する。
【解決手段】周囲の車室フロア1よりも下方に凹入するように形成されたフロア凹入部15と、このフロア凹入部15内の収納空間19を開閉可能に覆うとともに、その開放時に起立状態に変位するリッド部材21と、上記起立状態にあるリッド部材21をその姿勢のまま保持するダンパ25とを設けて収納部9を構成する。そして、上記リッド部材21の裏面側に、物品を保持可能な物品保持部37を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納するための収納部が車室フロアに設けられた車両用収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車室フロアに設けられた凹部内に収容され、上面部に開口部を有したケース本体と、このケース本体内の収納空間を開閉可能に覆うリッド部材(蓋)とからなる小物入れを、後列シートの設置部前方の車室フロアに設けた車両用収納構造が知られている。
【特許文献1】特開2000−335313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された車両用収納構造によれば、車室フロアのスペースを有効活用して、乗員の邪魔にならないように物品をすっきり収納することができる。しかしながら、フロア部に設けられたケース本体内に物品を収納する上記構成では、物品を出し入れする際に乗員が足元のフロア部までいちいち手を伸ばす必要があり、利便性に欠ける等の問題があった。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、収納性と利便性とを兼ね備えた車両用収納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、物品を収納するための収納部が車室フロアに設けられた車両用収納構造であって、上記収納部は、その周囲の車室フロアよりも下方に凹入するように形成されたフロア凹入部と、このフロア凹入部内の収納空間を開閉可能に覆うとともに、その開放時に起立状態に変位するリッド部材と、上記起立状態にあるリッド部材をその姿勢のまま保持する姿勢保持手段とを有し、上記リッド部材の裏面側には、物品を保持可能な物品保持部が設けられていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0006】
本発明によれば、フロア凹入部内の収納空間を開閉可能に覆うリッド部材を起立状態のまま保持する姿勢保持手段を設けるとともに、上記リッド部材の裏面側に、車室内の物品を保持可能な物品保持部を設けたため、リッド部材を起立状態に保持しつつ、その状態で車室内に露出する上記物品保持部に対して物品の出し入れを容易に行うことができ、物品出し入れ時の利便性を簡単な構成で効果的に向上させることができる。しかも、上記物品保持部を使用する必要がないときには、上記フロア凹入部内の収納空間をリッド部材で閉止することにより、このリッド部材裏面の物品保持部を上記収納空間にすっきり収納して隠蔽することができ、不使用時における乗員の乗車スペースを良好に確保することができる。
【0007】
上記リッド部材が、上記フロア凹入部の周縁部に枢支された基端部を支点に回動可能に設けられている場合、上記物品保持部は、その内部から物品を出し入れするための開口部を上記リッド部材の先端部側に有することが好ましい(請求項2)。
【0008】
このように、物品を出し入れするための開口部がリッド部材の先端部側(リッド部材の基端部と反対側)を向く状態で物品保持部を設けた場合には、上記リッド部材が起立状態に変位したときに上記開口部が上方を向くため、この上向きの開口部を通じて物品を容易に出し入れできるという利点がある。
【0009】
上記車室フロア上に乗員用シートが設けられている場合には、この乗員用シートの前方側に位置する車室フロアに上記収納部が設けられていることが好ましい(請求項3)。
【0010】
このようにすれば、後席乗員の足元部のデッドスペースを利用して収納部を設けることができ、車室内空間を有効利用した効率的な収納構造を構築できるという利点がある。
【0011】
この構成において、上記乗員用シートの前方側にさらに前列の乗員用シートが設けられている場合、これら両シートの間に位置する車室フロアに上記収納部が設けられ、上記リッド部材が起立状態となることにより車室内に露出した上記物品保持部に対し上記前列の乗員用シートに着座した乗員がアクセス可能なように上記リッド部材が配設されていることが好ましい(請求項4)。
【0012】
このようにすれば、前後両側のシートに着座した乗員がそれぞれ物品保持部を利用することができるため、多くの乗員が利用可能でより使い勝手に優れた車両用収納構造を実現できるという利点がある。
【0013】
さらにこの場合、上記リッド部材は、上記フロア凹入部の周縁部に枢支された車両後方側の端部を支点に回動可能に設けられていることが好ましい(請求項5)。
【0014】
このようにすれば、上記リッド部材の起立時において、物品保持部がリッド部材に対して車両の前方側に配置されることとなるため、車両の後方側に手を伸ばして上記物品保持部から物品を出し入れする必要のある前列の乗員用シートに着座した乗員にとって、この物品保持部に対する物品の出し入れ作業性がより向上するという利点がある。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、収納性と利便性とを兼ね備えた車両用収納構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1および図2は、本発明の車両用収納構造の実施形態を示している。本図に示すように、車室の底部を形成する車室フロア1上には、運転席3および助手席4からなる前列シート5と、この前列シート5の後方側に位置し、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたいわゆるベンチシートタイプの後列シート7とが配設されている。そして、上記車室フロア1のうちこれら前列シート5および後列シート7の間に位置する部分に、小物類等の物品を収納するための左右一対の収納部9,9が設けられている。
【0017】
上記車室フロア1は、図2に示すように、フロアパネル11やその上面を覆うフロアマット13等から構成されている。この車室フロア1のうち上記収納部9の設置部にあたる部分は、周囲の車室フロア1よりも下方に凹入するように形成されたフロア凹入部15とされ、このフロア凹入部15が上記収納部9の一部をなすように構成されている。また、上記フロア凹入部15におけるフロアパネル11の上面には、その凹形状に沿うように形成された発泡ウレタン等からなる被覆材17が敷設されている。
【0018】
上記収納部9は、図2〜図5に示すように、上記フロア凹入部15内に形成された収納空間19を開閉可能に覆うリッド部材21を有している。このリッド部材21は、平面視で略矩形をなす板状体からなり、閉止時における車両の後方側の端部が上記フロア凹入部15の後縁部にヒンジ部材23を介して枢支されることにより、このヒンジ部材23を支点に回動可能に設けられている(図5の矢印B参照)。すなわち、リッド部材21は、上記収納空間19を閉止する倒伏状態(図2の状態)から、上記ヒンジ部材23を支点に回動して起立状態(図4,5の状態)に変位することにより、上記収納空間19を前端部側から開放するように構成されている。
【0019】
上記リッド部材21の上面には、その周辺の車室フロア1と同様のフロアマット13が敷設されているとともに、乗員が手を掛けてリッド部材21を開閉操作するための取手部(図示省略)が設けられている。そして、リッド部材21は、上記取手部を持った乗員の開閉操作に応じて上記倒伏状態と起立状態との間で変位し、それによって上記収納空間19を開閉するように構成されている。
【0020】
上記リッド部材21とフロア凹入部15との間には、上記起立状態(図4,5の状態)にあるリッド部材21をその姿勢のまま保持するためのダンパ25(本発明にかかる姿勢保持手段に相当)が設けられている。このダンパ25は、長手方向に伸縮可能とされ、一端側がリッド部材21の裏面(閉止時に収納空間19を覆う側の面)に取付金具27を介して枢支されるとともに、他端側がフロア凹入部15の内側面に取付金具29を介して枢支されることにより、上記リッド部材21が乗員によって開閉操作(回動操作)されるのに応じて、長手方向に伸縮しつつ揺動変位するように構成されている。そして、上記リッド部材21が起立状態にあるときには、乗員が開閉操作を行わない限り、上記ダンパ25の伸縮抵抗によって上記リッド部材21が起立状態のまま保持されるようになっている。
【0021】
上記ダンパ25の他端側をフロア凹入部15の内側面(収納空間19の形成面)に取り付けるための上記取付金具29は、図3に示すように、車体の側端部を構成するサイドシル31に取り付けられたブラケット33に固定されており、これによってダンパ25の取付剛性が確保されるようになっている。すなわち、サイドシル31の内側面に、上記フロア凹入部15の被覆材17の内部において車幅方向内方側に突出するように形成されたブラケット33が設置され(より具体的には、被覆材17が部分的に除去されてその部分にブラケット33が設置され)、上記収納空間19の形成面の一部を構成するこのブラケット33の先端部に、上記取付金具29が固定されている。そして、このようにダンパ25の他端側が上記取付金具29およびブラケット33を介してサイドシル31に接続されることにより、ダンパ25の取付剛性が確保され、このダンパ25を介して上記リッド部材21が高剛性に支持されるようになっている。なお、図3において符号35は、車室フロア1の車幅方向中心部に設置されるフロアトンネルである。
【0022】
上記リッド部材21の裏面側には、このリッド部材21が起立状態にあるときに物品を保持するための物品保持部37が設けられている。この物品保持部37は、図4に示すように、可撓性を有する布製部材等からなる袋状体41と、この袋状体41を部分的に保形するためのフレーム39とを有しており、上記袋状体41とリッド部材21の裏面との間の空間に上記物品が収納されるようになっている。なお、上記物品保持部37は、リッド部材21が図2に示される倒伏状態にあるときには、上記フロア凹入部15の収納空間19に収納されるようになっている。
【0023】
上記フレーム39は、図4に示すように、正面視で略コ字状に折曲された棒状体からなり、その左右両端部が、上記リッド部材21の基端部側(ヒンジ部材23の設置部側)を向く姿勢で当該リッド部材21の裏面に取付金具38を介して枢支されることにより、この取付金具38の設置部を支点に回動可能に設けられている(図5の矢印C参照)。
【0024】
上記袋状体41は、上記フレーム39の各辺に囲まれた領域を覆う前壁部43と、この前壁部43の左右両側辺部と上記リッド部材21の裏面との間に設置された側壁部45,45とを有している。そして、これら前壁部43および側壁部45,45と、上記リッド部材21の裏面との間に形成された空間の底部が、上記前壁部43および側壁部45の下端部と連続形成された底壁部47によって閉塞されるようになっている。一方、図4における袋状体41の上端部(上記底壁部47とは反対側の端部)は閉塞されずに開口しており、この開口部48が、上記物品保持部37に対して物品を出し入れするため出し入れ口として構成されている。
【0025】
上記前壁部43は、矩形状に形成されてその周縁部が上記フレーム39の各辺に沿うように設置され、当該フレーム39の保形作用によりその形状が上記矩形形状のまま維持されるようになっている。一方、上記側壁部45は、側面視で略扇形をなし、その一方の側辺部に形成された折り返し部45aが上記リッド部材21の裏面に接着等によって固定されている。そして、このような構造を有する袋状体41は、その側面幅(側壁部45の幅)が上記側壁部45の折り返し部45aを基点に拡大または縮小することが可能なように構成させており、これに応じて袋状体41内部の空間容積が適宜変化するようになっている(図4の矢印Aおよび図5の矢印C参照)。
【0026】
次に、以上のように構成された収納部9を使用する際の乗員の動作について説明する。まず、乗員は、リッド部材21が収納空間19を閉止した図2の状態にある収納部9に対し、上記リッド部材21の図略の取手部に手を掛けてこれを上方に引っ張り上げるように操作することにより、図5の矢印Bに示すように、上記リッド部材21をダンパ25の抵抗力に抗して開方向に回動させる。これにより、リッド部材21が図4および図5に示されるような起立状態に変位し、このリッド部材21の裏面側に設けられた物品保持部37が車室内に現われて当該物品保持部37が使用可能な状態になる。このとき、上記起立状態に変位したリッド部材21は、上記ダンパ25の抵抗力によってその姿勢のまま保持される。
【0027】
次いで、乗員は、図5の矢印Cに示すように、物品保持部37における袋状体41の側面幅(図4に示される側壁部45の幅)を広げるようにフレーム39をリッド部材21との取付部(取付金具38の設置部)を支点に回動変位させることにより、上記袋状体41内部の空間容積を必要に応じて拡大させる。なお、リッド部材21の起立時の角度やフレーム39が回動する際の取付金具38との摺動抵抗等によっては、このような動作が物品保持部37の自重によって自動的になされる。
【0028】
そして、上記のようにして物品保持部37を車室内に露出させた乗員は、頻繁に使用する小物等の物品をこの物品保持部37に収納することにより、その収納された物品を上記物品保持部37の開口部48を通じていつでも容易に取り出すことができ、当該物品を必要に応じてすぐに使うことができる。
【0029】
また、上記物品保持部37を使用する必要がなくなったときには、この物品保持部37内の物品を適宜取り出した後に、上記リッド部材21を上記ダンパ25の抵抗力に抗して下方に倒すように回動操作し、このリッド部材21を図2に示される倒伏状態に変位させる。これにより、フロア凹入部15の収納空間19がリッド部材21によって閉止されるとともに、この収納空間19の内部に上記物品保持部37が収納される。そして、このように倒伏状態に変位したリッド部材21の上面(より詳しくはこれを覆うフロアマット13の上面)により、周囲の車室フロア1の上面とともにフラットな床面が形成されるようになっている。
【0030】
このとき、収納空間19内に収納された上記物品保持部37は、収納空間19の高さ寸法に合わせてその側面幅(袋状体41の側壁部45の幅)を狭めるように収縮変形するが、それ程大きくない物品であれば、その物品を入れたままの状態で上記物品保持部37を収納空間19に収納することができる。なお、車体構造上、上記フロア凹入部15の凹入代を図示の高さよりもさらに大きくできる場合には、収納空間19の高さがその分大きくなり、物品保持部37がその幅をほとんど狭めることなく収納空間19に収納されるため、多くの物品を入れたままの状態であっても上記物品保持部37を収納空間19に収納することが可能になる。また、上記収納空間19に収納された物品保持部37の下方部にさらに物品を収納することもできる。
【0031】
以上説明したような収納部9は、車室フロア1のうち前列シート5および後列シート7の間に位置する部分に設けられていることから、後列シート7に着座した乗員(後席乗員)だけでなく、前列シート5に着座した乗員(前席乗員)もこの収納部9を利用することが可能である。例えば、図6に示すように、運転席3(図例では車両の右側に配置)に着座した乗員は、運転席3の斜め後方に手を伸ばすことにより、車室内の左右両側に設けられた上記収納部9,9のうち車両左側の収納部9(助手席4の後方に位置する収納部9)を容易に利用することができる。なおこのとき、助手席4に備わるリクライニング機能を用いてこの助手席4のシートバックを前方に倒伏させておけば、より円滑に上記収納部9に手を伸ばすことができる。そして、上記のように後方に伸ばした手で上記リッド部材21を立ち上げ、このリッド部材21裏面の物品保持部37を車室内に露出させることにより、この物品保持部37に対し物品の出し入れを容易に行うことができる。しかも、リッド部材21をその後端部を支点に回動させて立ち上げることにより、その起立状態においてリッド部材21の裏面を車両前方側に向ける(つまりリッド部材21裏面の物品保持部37を上記リッド部材21に対し車両前方側に配置する)ことができるため、後席乗員はより容易に物品保持部37にアクセスして物品の出し入れを行うことができる。
【0032】
ところで、上記のようにリッド部材21を立ち上げると、後列シート7に乗員が着座している場合に、この起立したリッド部材21が後席乗員にとって邪魔になるおそれがあるが、左右の収納部9,9のうちのいずれを使用するかを後席乗員の着座位置等に応じて適宜変更することにより、上記のような事態を生じることなく収納部9を使用することができる。例えば、後列シート7上の左右いずれか一方側にのみ乗員が着座している場合には、この後席乗員が着座している側と反対側の収納部9のリッド部材21を立ち上げることにより、上記後席乗員にとって邪魔にならない状態で収納部9を使用することができる。また、例えば後列シート7上の左右いずれか一方側にチャイルドシートを介して幼児が着座している場合には、このチャイルドシートが設置された側と同じ側の収納部9を使用しても、上記チャイルドシート上の幼児にとって邪魔にならない状態で上記リッド部材21を立ち上げることができるため、上記チャイルドシートと同じ側の収納部9を使用するとよい。特にこの場合には、幼児のすぐ前方に物品保持部37を設置できるため、幼児を世話するための小物類をこの物品保持部37に収納することにより、これらの小物類を容易に出し入れしながら、幼児の世話を車室内で円滑に行うことができる。
【0033】
上記のように周囲の車室フロア1よりも下方に凹入するように形成されたフロア凹入部15と、このフロア凹入部15内の収納空間19の上方開口を開閉可能に覆うとともに、その開放時に起立状態に変位するリッド部材21と、上記起立状態にあるリッド部材21をその姿勢のまま保持する姿勢保持手段としてのダンパ25とを有した収納部9において、そのリッド部材21の裏面側に、上記起立状態にあるリッド部材21に対し物品を保持可能な物品保持部37を設けた上記実施形態の車両用収納構造によれば、収納性と利便性とを良好に両立できるという利点がある。
【0034】
すなわち、フロア凹入部15の収納空間19を開閉可能に覆うリッド部材21を起立状態のまま保持するダンパ25を設けるとともに、上記リッド部材21の裏面側に、車室内の物品を保持可能な物品保持部37を設けたため、リッド部材21を起立状態に保持しつつ、その状態で車室内に露出する上記物品保持部37に対して物品の出し入れを容易に行うことができ、物品出し入れ時の利便性を簡単な構成で効果的に向上させることができる。しかも、上記物品保持部37を使用する必要がないときには、上記リッド部材21を閉方向に回動操作する(収納空間19をリッド部材21で閉止する)ことにより、このリッド部材21裏面の物品保持部37を、フロア部に設けられた上記収納空間19内にすっきり収納して隠蔽することができ、不使用時における乗員の乗車スペースを良好に確保することができる。
【0035】
また、上記実施形態のように、回動可能なリッド部材21の裏面に設置される上記物品保持部37を、その開口部48が上記リッド部材21の先端部側(つまりフロア凹入部15の周縁部に枢支されるリッド部材21の基端部とは反対側)を向くように配設した場合には、上記リッド部材21が起立状態に変位したときに上記開口部48が上方を向くため、この上向きの開口部48を通じて物品を容易に出し入れできるという利点がある。
【0036】
また、上記実施形態のように、後列シート7の前方側に位置する車室フロア1に上記収納部9を設けた場合には、後席乗員の足元部のデッドスペースを利用して収納部9を配設することができ、車室内空間を有効利用した効率的な収納構造を構築できるという利点がある。さらに、図6等に示したように、車室フロア1の左右両側に収納部9,9を設けた場合には、後列シート7上の左右いずれか一方側にのみ乗員が着座しているときに、この後席乗員の着座位置とは反対側の収納部9を使用することにより、上記後席乗員にとって邪魔にならない状態でリッド部材21を立ち上げて物品の出し入れを行うことができるため、後席乗員にとっての収納部9の使い勝手を効果的に向上させることができる。
【0037】
さらに、上記実施形態のように、前列シート5および後列シート7の間に収納部9を設け、そのリッド部材21が起立状態となることにより車室内に露出した上記物品保持部37に対し後席乗員がアクセス可能なように上記リッド部材21を配設した場合には、後席乗員だけでなく前席乗員も上記物品保持部37を利用することができるため、多くの乗員が利用可能でより使い勝手に優れた車両用収納構造を実現できるという利点がある。
【0038】
なお、上記実施形態では、リッド部材21をその車両後方側の端部を支点に回動可能に設けたが、このリッド部材21の回動支点を車両前方側の端部や側方側の端部等の他の部分に設けることも可能である。これに対し、上記実施形態のように、リッド部材21をその後端部を支点に回動可能に設けた場合には、上記リッド部材21の起立時において、物品保持部37がリッド部材21に対して車両の前方側に配置されることとなるため(図2参照)、車両の後方側に手を伸ばして上記物品保持部37から物品を出し入れする必要のある前席乗員にとって、この物品保持部37に対する物品の出し入れ作業性がより向上するという利点がある。
【0039】
また、上記実施形態では、車室フロア1の左右両側に同一構造の収納部9,9をそれぞれ設けたが、このうちのどちらかの収納部9については、物品保持部37およびダンパ25を省略することにより、従来技術と同様に、収納空間19内に直接物品を収納する構造としてもよい。このようにすれば、この物品保持部37等が省略された側の収納空間19内に比較的大容量な収納容積を確保できるとともに、物品の使用頻度に応じて、上記物品保持部37が省略された側の収納部9と、もう一方の収納部9(上記実施形態と同構造の収納部9)とを使い分けることができ、便利である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両用収納構造を説明するための車室内の平面図である。
【図2】上記車両用収納構造を示す側面断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】収納部の使用状態を説明するための斜視図である。
【図5】収納部の使用状態を説明するための側面断面図である。
【図6】収納部を使用する乗員の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0041】
1 車室フロア
5 前列シート(前列の乗員用シート)
7 後列シート(乗員用シート)
9 収納部
15 フロア凹入部
19 収納空間
21 リッド部材
25 ダンパ(姿勢保持手段)
37 物品保持部
42 収納空間
48 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納するための収納部が車室フロアに設けられた車両用収納構造であって、
上記収納部は、
その周囲の車室フロアよりも下方に凹入するように形成されたフロア凹入部と、
このフロア凹入部内の収納空間を開閉可能に覆うとともに、その開放時に起立状態に変位するリッド部材と、
上記起立状態にあるリッド部材をその姿勢のまま保持する姿勢保持手段とを有し、
上記リッド部材の裏面側には、物品を保持可能な物品保持部が設けられていることを特徴とする車両用収納構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両用収納構造において、
上記リッド部材は、上記フロア凹入部の周縁部に枢支された基端部を支点に回動可能に設けられ、
上記物品保持部は、その内部から物品を出し入れするための開口部を上記リッド部材の先端部側に有することを特徴とする車両用収納構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用収納構造において、
上記車室フロア上には乗員用シートが設けられ、この乗員用シートの前方側に位置する室フロアに上記収納部が設けられていることを特徴とする車両用収納構造。
【請求項4】
請求項3記載の車両用収納構造において、
上記乗員用シートの前方側に前列の乗員用シートが設けられ、これら両シートの間に位置する車室フロアに上記収納部が設けられており、
上記リッド部材が起立状態となることにより車室内に露出した上記物品保持部に対し上記前列の乗員用シートに着座した乗員がアクセス可能なように上記リッド部材が配設されていることを特徴とする車両用収納構造。
【請求項5】
請求項4記載の車両用収納構造において、
上記リッド部材は、上記フロア凹入部の周縁部に枢支された車両後方側の端部を支点に回動可能に設けられていることを特徴とする車両用収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−149927(P2008−149927A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340877(P2006−340877)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】