説明

車両用小物入れ構造

【課題】 構造を簡素化することによりコストを低減する。
【解決手段】 車両用小物入れ構造10では、ロック機構24が、小物入れ14の少なくとも二箇所で小物入れ14に対して抵抗力を付与する第一のロック機構部26及び第二のロック機構部28を有する構成となっている。この構成によれば、小物入れ14のロックに必要な抵抗力を一つのロック機構部で生成する必要が無く、第一のロック機構部26及び第二のロック機構部28を合わせたロック機構24全体で小物入れ14のロックに必要な抵抗力を生成できれば良い。従って、各ロック機構部を頑丈な構造にする必要が無く、その構造は簡素化されていても良いので、構造を簡素化することによりコストを低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用小物入れ構造に係り、特に、車両に設けられた格納部に格納された格納位置と格納部から引き出された引出位置との間で進退動する小物入れを有し、該小物入れの引き出し時に小物入れに対してロック機構により抵抗力を付与するようにした車両用小物入れ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用小物入れ構造としては、次のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、自動車用小物入れのロック装置の例が開示されている。このロック装置は、ボディと、ボディに回動可能に取付けられたハンドルと、ボディに出入り可能に取付けられるとともにボディから突出する方向にバネで付勢されているフックと、を有している。
【0004】
ハンドルは、第1のリブと第2のリブとを有しており、ボディは、フックと協働して車体側に固定されたストライカを受け入れたときにストライカを保持するストライカ保持部を形成している。また、ボディは、ストライカがストライカ保持部に位置しているときにストライカをフック側に付勢する第3のリブと、第2のリブが摺動係合可能とされた第4のリブと、を有しており、フックは、第1のリブと係合可能とされた係合溝を有している。
【特許文献1】特開2001−20583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、一つのロック装置によって小物入れのロックを行う(小物入れに対して抵抗力を付与する)ようにしているので、フックをストライカと確実且つ強固に係合させる必要がある。このため、ボディによってフックを強固に支持すると共にこの強固に支持されたフックをハンドルによって進退動させるなど構造が複雑化し、このことがコスト高を招いていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、構造を簡素化することによりコストを低減することが可能な車両用小物入れ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両に設けられた格納部に格納された格納位置と前記格納部から引き出された引出位置との間で進退動する小物入れと、前記小物入れの引き出し時に前記小物入れに対して抵抗力を付与するロック機構と、を備えた車両用小物入れ構造において、前記ロック機構は、前記小物入れの前記格納位置から前記引出位置側への異なる引き出し領域で前記小物入れに対してそれぞれ抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有することを特徴とする。
【0008】
このように、請求項1に記載の発明では、ロック機構が、小物入れの格納位置から引出位置側への異なる引き出し領域で小物入れに対してそれぞれ抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有する構成となっている。
【0009】
この構成によれば、小物入れのロックに必要な抵抗力を一つのロック機構部で生成する必要が無く、第一のロック機構部及び第二のロック機構部を合わせたロック機構全体で小物入れのロックに必要な抵抗力を生成できれば良い。従って、各ロック機構部を頑丈な構造にする必要が無く、その構造は簡素化されていても良いので、構造を簡素化することによりコストを低減することが可能となる。
【0010】
また、格納部に格納されている小物入れに衝撃が加わることにより、第一のロック機構部の抵抗力に抗して小物入れが引き出されても、その後には第二のロック機構部によって小物入れに対して抵抗力が付与される。従って、格納部に格納されている小物入れに衝撃が加わっても、小物入れの引き出しを第二のロック機構部によって食い止めることができる。
【0011】
また、前記課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、車両に設けられた格納部に格納された格納位置と前記格納部から引き出された引出位置との間で進退動する小物入れと、前記小物入れに対して抵抗力を付与するロック機構と、を備えた車両用小物入れ構造において、前記ロック機構は、前記小物入れの少なくとも二箇所で前記小物入れに対して抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有すると共に、前記小物入れの前記格納位置から前記引出位置側への第一の引き出し領域では前記第一のロック機構部により前記小物入れに対して抵抗力を付与し、前記小物入れの前記第一の引き出し領域の終端位置から前記引出位置側への第二の引き出し領域では前記第一のロック機構部及び前記第二のロック機構部により前記小物入れに対して抵抗力を付与し、前記小物入れの前記第二の引き出し領域の終端位置から前記引出位置側への第三の引き出し領域では前記第二のロック機構部により前記小物入れに対して抵抗力を付与することを特徴とする。
【0012】
このように、請求項2に記載の発明では、ロック機構が、小物入れの少なくとも二箇所で小物入れに対して抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有する構成となっている。
【0013】
この構成によれば、小物入れのロックに必要な抵抗力を一つのロック機構部で生成する必要が無く、第一のロック機構部及び第二のロック機構部を合わせたロック機構全体で小物入れのロックに必要な抵抗力を生成できれば良い。従って、各ロック機構部を頑丈な構造にする必要が無く、その構造は簡素化されていても良いので、構造を簡素化することによりコストを低減することが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明において、ロック機構は、小物入れの格納位置から引出位置側への第一の引き出し領域では第一のロック機構部により小物入れに対して抵抗力を付与し、小物入れの第一の引き出し領域の終端位置から引出位置側への第二の引き出し領域では第一のロック機構部及び第二のロック機構部により小物入れに対して抵抗力を付与し、小物入れの第二の引き出し領域の終端位置から引出位置側への第三の引き出し領域では第二のロック機構部により小物入れに対して抵抗力を付与する構成である。
【0015】
この構成によれば、格納部に格納されている小物入れに衝撃が加わることにより、第一のロック機構部の抵抗力に抗して小物入れが引き出されて第一の引き出し領域を脱しても、第二の引き出し領域では第一のロック機構部に加えて第二のロック機構部によっても小物入れに対して抵抗力が付与される。従って、格納部に格納されている小物入れに衝撃が加わっても、小物入れの引き出しを第二の引き出し領域で食い止めることができる。
【0016】
このとき、請求項3に記載の発明のように、より好適には、第一のロック機構部は、車体側又は小物入れに設けられた第一のバネ部と、第一のバネ部と対向するように小物入れ又は車体側に設けられて第一のバネ部と小物入れの格納位置にて係合すると共に第一のバネ部と小物入れの第一の引き出し領域及び第二の引き出し領域にて摺接することにより小物入れに対して抵抗力を付与する第一のバネ受け部と、により構成され、第二のロック機構部は、車体側又は小物入れに設けられた第二のバネ部と、第二のバネ部と対向するように小物入れ又は車体側に設けられて第二のバネ部と小物入れの第二の引き出し領域及び第三の引き出し領域にて摺接することにより小物入れに対して抵抗力を付与する第二のバネ受け部と、により構成されるものである。
【0017】
このように、第一のロック機構部が第一のバネ部と第一のバネ受け部とにより構成され、第二のロック機構部が第二のバネ部と第二のバネ受け部とにより構成されていると、部品点数も少なく各ロック機構部の構成が簡素化される。従って、コストを低減することが可能となる。
【0018】
また、前記課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、車両に設けられた格納部に格納された格納位置と前記格納部から引き出された引出位置との間で進退動する小物入れと、前記小物入れの引き出し時に前記小物入れに対して抵抗力を付与するロック機構と、を備えた車両用小物入れ構造において、前記ロック機構は、前記小物入れの少なくとも二箇所で前記小物入れに対して抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有し、前記第一のロック機構部は、車体側又は前記小物入れに設けられた第一のバネ部と、前記第一のバネ部と対向するように前記小物入れ又は前記車体側に設けられて前記第一のバネ部と前記小物入れの前記格納位置にて係合すると共に前記第一のバネ部と前記小物入れの前記格納位置から前記引出位置側への第一の引き出し領域及び前記小物入れの前記第一の引き出し領域の終端位置から前記引出位置側への第二の引き出し領域にて摺接することにより前記小物入れに対して抵抗力を付与する第一のバネ受け部と、により構成され、前記第二のロック機構部は、車体側又は前記小物入れに設けられた第二のバネ部と、前記第二のバネ部と対向するように前記小物入れ又は前記車体側に設けられて前記第二のバネ部と前記小物入れの前記第二の引き出し領域及び前記小物入れの前記第二の引き出し領域の終端位置から前記引出位置側への第三の引き出し領域にて摺接することにより前記小物入れに対して抵抗力を付与する第二のバネ受け部と、により構成されていることを特徴とする。
【0019】
このように、請求項4に記載の発明では、ロック機構が、小物入れの少なくとも二箇所で小物入れに対して抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有する構成となっている。
【0020】
この構成によれば、小物入れのロックに必要な抵抗力を一つのロック機構部で生成する必要が無く、第一のロック機構部及び第二のロック機構部を合わせたロック機構全体で小物入れのロックに必要な抵抗力を生成できれば良い。従って、各ロック機構部を頑丈な構造にする必要が無く、その構造は簡素化されていても良いので、構造を簡素化することによりコストを低減することが可能となる。
【0021】
特に、請求項4に記載の発明では、第一のロック機構部が第一のバネ部と第一のバネ受け部とにより構成され、第二のロック機構部が第二のバネ部と第二のバネ受け部とにより構成されている。この構成によれば、部品点数も少なく各ロック機構部の構成が簡素化される。従って、コストを低減することが可能となる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明において、ロック機構は、小物入れの格納位置から引出位置側への第一の引き出し領域では第一のロック機構部により小物入れに対して抵抗力を付与し、小物入れの第一の引き出し領域の終端位置から引出位置側への第二の引き出し領域では第一のロック機構部及び第二のロック機構部により小物入れに対して抵抗力を付与し、小物入れの第二の引き出し領域の終端位置から引出位置側への第三の引き出し領域では第二のロック機構部により小物入れに対して抵抗力を付与する構成である。
【0023】
この構成によれば、格納部に格納されている小物入れに衝撃が加わることにより、第一のロック機構部の抵抗力に抗して小物入れが引き出されて第一の引き出し領域を脱しても、第二の引き出し領域では第一のロック機構部に加えて第二のロック機構部によっても小物入れに対して抵抗力が付与される。従って、格納部に格納されている小物入れに衝撃が加わっても、小物入れの引き出しを第二の引き出し領域で食い止めることができる。
【0024】
ここで、請求項5に記載の発明のように、第一のロック機構部の小物入れに対して付与する最大抵抗力が、第二のロック機構部の小物入れに対して付与する最大抵抗力よりも強く設定されていると、格納部に格納されている小物入れに対して引き出し初期の抵抗力が強くなる。従って、格納部に格納されている小物入れに衝撃が加わった場合でも、第一のロック機構部の抵抗力に抗して小物入れが引き出されることを抑制することができる。また、第二のロック機構部の小物入れに対して付与する最大抵抗力を、第一のロック機構部の小物入れに対して付与する最大抵抗力よりも弱く設定することにより、小物入れに対して引き出し後期の抵抗力を抑えることができる。従って、小物入れの引き出し操作感も良好となる。
【0025】
さらに、請求項6に記載の発明のように、第二のロック機構部が、小物入れの引き出し方向と平行な両側面に設けられていると、第二のロック機構部によって小物入れの引き出し方向と平行な両側面にて小物入れに対して抵抗力が付与されるようになる。従って、第二のロック機構部による小物入れに対する抵抗力が増加されるので、格納部に格納されている小物入れに衝撃が加わることにより、第一のロック機構部の抵抗力に抗して小物入れが引き出されても、小物入れの引き出しを第二のロック機構部により確実に食い止めることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明によれば、ロック機構が、小物入れの少なくとも二箇所で小物入れに対して抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有する構成となっているので、各ロック機構部を頑丈な構造にする必要が無く、その構造は簡素化されていても良い。従って、構造を簡素化することによりコストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0028】
はじめに、図1乃至図6を参照しながら、本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10の構成について説明する。
【0029】
本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10は、例えば、自動車に備えられた樹脂製のインストルメントパネル12に好適に設置されるものである。本実施形態の車両用小物入れ構造10には、めがねケース入れ、小銭入れ、カード入れ、グローブボックス、ドリンクホルダー、灰皿等として使用される小物入れ14が備えられている。
【0030】
この小物入れ14は、インストルメントパネル12の内部に設けられた回動軸部材16によってインストルメントパネル12に対して回動自在とされている。そして、小物入れ14は、インストルメントパネル12に設けられた格納部18に格納された格納位置と格納部18から引き出された引出位置との間で回動(進退動)するようになっている。
【0031】
また、小物入れ14は、上部が開放した凹部20を備える構成となっており、この凹部20に所定の小物を入れられるようになっている。さらに、小物入れ14の正面側には、引っ掛かり部22が形成されており、この引っ掛かり部22に手を引っ掛けて小物入れ14を手前に引き出せるようになっている。
【0032】
そして、本実施形態の車両用小物入れ構造10には、小物入れ14のR方向への引き出し時に小物入れ14に対して抵抗力を付与するロック機構24が設けられている。このロック機構24は、小物入れ14の上側位置に設けられた第一のロック機構部26と、小物入れ14の引き出し方向と平行な両側面に設けられた第二のロック機構部28とにより構成されている。
【0033】
なお、第二のロック機構部28は、左右対称構造となっている。本実施形態では、第一のロック機構部26及び第二のロック機構部28によって小物入れ14の上側位置及び引き出し方向と平行な両側面の合計三箇所で小物入れ14のR方向への引き出し時に小物入れ14に対して抵抗力が付与されるようになっている。
【0034】
第一のロック機構部26は、図2に示されるように、インストルメントパネル12に設けられた格納部18の内側に固定された金属製の板バネ30(第一のバネ部)と、板バネ30と対向するように小物入れ14の上部に一体に形成されたバネ受け部32(第一のバネ受け部)により構成されている。
【0035】
板バネ30は、バネ受け部32側へ突出する山形の突出部30aを有し、小物入れ14の格納位置にてバネ受け部32の凹部32aと係合する。また、板バネ30に形成された突出部30aには、小物入れ14の引き出し時にバネ受け部32の凹部32aの内壁面と摺接する傾斜面30bが設けられている。一方、バネ受け部32には、凹部32aに隣接して平面状の受け面32bが形成されている。
【0036】
第二のロック機構部28は、図1,図3に示されるように、インストルメントパネル12に一体に設けられた樹脂バネ34(第二のバネ部)と、樹脂バネ34と対向するように小物入れ14の側面部に一体に設けられた上下一対の凸状のリブ36(第二のバネ受け部)により構成されている。
【0037】
樹脂バネ34は、インストルメントパネル12の格納部18の開口部分から格納部18内へ延出し、その先端部にリブ36と係合する先端凸部34aを有して構成されている。樹脂バネ34の先端凸部34aよりも根元側は、バネ本体部34bとして構成されており、小物入れ14の引き出し時に先端凸部34aがリブ36を通過する際に、先端凸部34aをリブ36側へ付勢する。一方、リブ36は、頂上部を挟んだ両側に第一傾斜面36a及び第二傾斜面36bを有して構成されている。
【0038】
そして、第一のロック機構部26は、図1に示されるように、第二のロック機構部28よりも小物入れ14の引き出し方向先側に配置されており、第二のロック機構部28は、小物入れ14の引き出し方向後側に配置されている。
【0039】
このように、本実施形態では、第一のロック機構部26と第二のロック機構部28が小物入れ14の引き出し方向にずれて配置されており、これにより、第一のロック機構部26及び第二のロック機構部28のロック状態の変化によって、図1,図6に示されるように、小物入れ14の引き出し範囲が、格納位置から引出位置側への第一の引き出し領域A1と、第一の引き出し領域A1の終端位置から引出位置側への第二の引き出し領域A2と、第二の引き出し領域A2の終端位置から引出位置側への第三の引き出し領域A3に順に分けられる。
【0040】
つまり、図1,図6に示される小物入れ14の格納位置から引出位置側への第一の引き出し領域A1では、図4(A)に示されるように、第一のロック機構部26の板バネ30がバネ受け部32に押圧摺接されることにより小物入れ14に対して抵抗力が付与される。
【0041】
このとき、図2に示されるように、板バネ30の突出部30aがバネ受け部32の凹部32aと係合しているとき(より詳しくは傾斜面30bが凹部32aの内壁面に押圧摺接されるとき)に、一連の小物入れ14の引き出し操作の中で最も小物入れ14に対する抵抗力が強くなる。すなわち、第一のロック機構部26の小物入れ14に付与する最大抵抗力は、第二のロック機構部28の小物入れ14に付与する最大抵抗力よりも強く設定されている。
【0042】
また、板バネ30の突出部30aがバネ受け部32の凹部32aから脱して突出部30aの頂上部がバネ受け部32の受け面32bに押圧摺接されると抵抗力のピークを超えて徐々に小物入れ14に対する抵抗力が低下する。なお、第二のロック機構部28は、図1,図6に示される小物入れ14の第一の引き出し領域A1では、図5(A)に示されるように、樹脂バネ34とリブ36とが非接触となることにより小物入れ14に対して抵抗力を付与しない(樹脂バネ34とリブ36とは第二の引き出し領域A2の始端位置にて初めて接触する)。
【0043】
そして、図1,図6に示される小物入れ14の第一の引き出し領域A1の終端位置から引出位置側への第二の引き出し領域A2では、図4(B)に示されるように、第一のロック機構部26の板バネ30に形成された突出部30aがバネ受け部32の受け面32bに押圧摺接されると共に、図5(B)に示されるように、第二のロック機構部28の樹脂バネ34に形成された先端凸部34aがリブ36の第一傾斜面36aに押圧摺接されることにより小物入れ14に対して抵抗力が付与される。
【0044】
続いて、図1,図6に示される小物入れ14の第二の引き出し領域A2の終端位置から引出位置側への第三の引き出し領域A3では、第二のロック機構部28の樹脂バネ34に形成された先端凸部34aがリブ36の第一傾斜面36aから第二傾斜面36bに至る領域に押圧摺接されることにより小物入れ14に対して抵抗力が付与される。なお、小物入れ14の第三の引き出し領域A3では、第一のロック機構部26は、板バネ30とバネ受け部32とが非接触となることにより小物入れ14に対して抵抗力を付与しない。
【0045】
そして、小物入れ14が引出位置に引き出されると、図4(C),図5(C)に示されるように、小物入れ14の側面部に設けられた凸部37が格納部18内に設けられたストッパ38と当接し、これにより小物入れ14が引出位置に引き出された状態となる。
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10の作用について説明する。
【0047】
本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10では、ロック機構24が、小物入れ14の少なくとも二箇所で小物入れ14に対して抵抗力を付与する第一のロック機構部26及び第二のロック機構部28を有する構成となっている。
【0048】
この構成によれば、小物入れ14のロックに必要な抵抗力を一つのロック機構部で生成する必要が無く、第一のロック機構部26及び第二のロック機構部28を合わせたロック機構24全体で小物入れ14のロックに必要な抵抗力を生成できれば良い。従って、各ロック機構部を頑丈な構造にする必要が無く、その構造は簡素化されていても良いので、構造を簡素化することによりコストを低減することが可能となる。
【0049】
また、本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10では、第一のロック機構部26が板バネ30とバネ受け部32とにより構成され、第二のロック機構部28が樹脂バネ34とリブ36とにより構成されている。この構成によれば、部品点数も少なく各ロック機構部の構成が簡素化される。従って、コストを低減することが可能となる。
【0050】
さらに、本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10では、上述の如く、第一のロック機構部26が板バネ30とバネ受け部32とにより構成され、第二のロック機構部28が樹脂バネ34とリブ36とにより構成されているので、従来の如くハンドル操作等によるロック解除操作が不要となる。
【0051】
また、本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10において、ロック機構24は、小物入れ14の格納位置から引出位置側への第一の引き出し領域A1では第一のロック機構部26により小物入れ14に対して抵抗力を付与し、小物入れ14の第一の引き出し領域A1の終端位置から引出位置側への第二の引き出し領域A2では第一のロック機構部26及び第二のロック機構部28により小物入れ14に対して抵抗力を付与し、小物入れ14の第二の引き出し領域A2の終端位置から引出位置側への第三の引き出し領域A3では第二のロック機構部28により小物入れ14に対して抵抗力を付与する構成である。
【0052】
この構成によれば、格納部18に格納されている小物入れ14に衝撃が加わることにより、第一のロック機構部26の抵抗力に抗して小物入れ14が引き出されて第一の引き出し領域A1を脱しても、第二の引き出し領域A2では第一のロック機構部26に加えて第二のロック機構部28によっても小物入れ14に対して抵抗力が付与される。従って、格納部18に格納されている小物入れ14に衝撃が加わっても、小物入れ14の引き出しを第二の引き出し領域A2で食い止めることができる。
【0053】
特に、本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10では、第二のロック機構部28が、小物入れ14の引き出し方向と平行な両側面に設けられている。この構成によれば、第二のロック機構部28によって小物入れ14の引き出し方向と平行な両側面にて小物入れ14に対して抵抗力が付与されるようになる。
【0054】
従って、第二の引き出し領域A2における小物入れ14に対する抵抗力が増加されるので、格納部18に格納されている小物入れ14に衝撃が加わることにより、第一のロック機構部26の抵抗力に抗して小物入れ14が引き出されても、小物入れ14の引き出しを第二の引き出し領域A2で確実に食い止めることが可能となる。
【0055】
また、本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10では、第一のロック機構部26の小物入れ14に対して付与する最大抵抗力が、第二のロック機構部28の小物入れ14に対して付与する最大抵抗力よりも強く設定されている。
【0056】
この構成によれば、格納部18に格納されている小物入れ14に対して引き出し初期の抵抗力が強くなる。従って、格納部18に格納されている小物入れ14に衝撃が加わった場合でも、第一のロック機構部26の抵抗力に抗して小物入れ14が引き出されることを抑制することができる。
【0057】
また、第二のロック機構部28の小物入れ14に対して付与する最大抵抗力を、第一のロック機構部26の小物入れ14に対して付与する最大抵抗力よりも弱く設定することにより、小物入れ14に対して引き出し後期の抵抗力を抑えることができる。従って、小物入れ14の引き出し操作感も良好となる。
【0058】
次に、上記本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造10の変形例について説明する。
【0059】
上記実施形態では、小物入れ14がインストルメントパネル12に対して回動することにより格納部18に格納された格納位置と格納部18から引き出された引出位置との間で進退動するようになっていたが、次のようにしても良い。
【0060】
つまり、インストルメントパネル12に溝部を設けると共に、この溝部に移動自在に係合された凸部を小物入れ14に設け、溝部内を凸部が移動することにより小物入れ14がインストルメントパネル12に対してスライドし、これにより小物入れ14が格納部18に格納された格納位置と格納部18から引き出された引出位置との間で進退動するようになっていても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、本発明に係る第一のバネ部が板バネ30で構成され、本発明に係る第二のバネ部が樹脂バネ34で構成されていたが、本発明に係る第一のバネ部が板バネに代えて樹脂バネで構成され、本発明に係る第二のバネ部が樹脂バネに代えて板バネで構成されていても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、図6に示されるように、小物入れ14の第二の引き出し領域A2では、第一のロック機構部26と第二のロック機構部28の両方で小物入れに対して抵抗力を付与するようになっていた(第一のロック機構部26が抵抗力を付与する領域と第二のロック機構部28が抵抗力を付与する領域とがラップしていた)が、次のようにしても良い。
【0063】
つまり、第一のロック機構部26が小物入れ14に対して抵抗力を付与する領域と第二のロック機構部28が小物入れ14に対して抵抗力を付与する領域とが重ならないように(ラップしないように)して、小物入れ14の引き出し時に第一のロック機構部26と第二のロック機構部28が一つずつ小物入れ14に対して抵抗力を順次付与するようにしても良い。
【0064】
このようにしても、小物入れ14のロックに必要な抵抗力を一つのロック機構部で生成する必要が無く、第一のロック機構部26及び第二のロック機構部28を合わせたロック機構24全体で小物入れ14のロックに必要な抵抗力を生成できれば良い。従って、各ロック機構部を頑丈な構造にする必要が無く、その構造は簡素化されていても良いので、構造を簡素化することによりコストを低減することが可能となる。
【0065】
また、格納部18に格納されている小物入れ14に衝撃が加わることにより、第一のロック機構部26の抵抗力に抗して小物入れ14が引き出されても、その後には第二のロック機構部28によって小物入れ14に対して抵抗力が付与される。従って、格納部18に格納されている小物入れ14に衝撃が加わっても、小物入れ14の引き出しを第二のロック機構部28によって食い止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造の構成を示す断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係る第一のロック機構部の構成を示す拡大断面図である。
【図3】図3は図1のA−A線断面図である。
【図4】図4(A)は小物入れが第一の引き出し領域の終端位置にある様子を示す図、図4(B)は小物入れが第二の引き出し領域の終端位置にある様子を示す図、図4(C)は小物入れが引出位置にある様子を示す図である。
【図5】図5(A)は小物入れが第一の引き出し領域の終端位置にある様子を示す図、図5(B)は小物入れが第二の引き出し領域の終端位置にある様子を示す図、図5(C)は小物入れが引出位置にある様子を示す図である。
【図6】図6は本発明の一実施形態に係る車両用小物入れ構造において小物入れの開度と抵抗力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
10 車両用小物入れ構造
14 小物入れ
18 格納部
24 ロック機構
26 第一のロック機構部
28 第二のロック機構部
30 板バネ(第一のバネ部)
32 バネ受け部(第一のバネ受け部)
34 樹脂バネ(第二のバネ部)
36 リブ(第二のバネ受け部)
A1 第一の引き出し領域
A2 第二の引き出し領域
A3 第三の引き出し領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた格納部に格納された格納位置と前記格納部から引き出された引出位置との間で進退動する小物入れと、
前記小物入れの引き出し時に前記小物入れに対して抵抗力を付与するロック機構と、を備えた車両用小物入れ構造において、
前記ロック機構は、前記小物入れの前記格納位置から前記引出位置側への異なる引き出し領域で前記小物入れに対してそれぞれ抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有することを特徴とする車両用小物入れ構造。
【請求項2】
車両に設けられた格納部に格納された格納位置と前記格納部から引き出された引出位置との間で進退動する小物入れと、
前記小物入れの引き出し時に前記小物入れに対して抵抗力を付与するロック機構と、を備えた車両用小物入れ構造において、
前記ロック機構は、前記小物入れの少なくとも二箇所で前記小物入れに対して抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有すると共に、
前記小物入れの前記格納位置から前記引出位置側への第一の引き出し領域では前記第一のロック機構部により前記小物入れに対して抵抗力を付与し、前記小物入れの前記第一の引き出し領域の終端位置から前記引出位置側への第二の引き出し領域では前記第一のロック機構部及び前記第二のロック機構部により前記小物入れに対して抵抗力を付与し、前記小物入れの前記第二の引き出し領域の終端位置から前記引出位置側への第三の引き出し領域では前記第二のロック機構部により前記小物入れに対して抵抗力を付与することを特徴とする車両用小物入れ構造。
【請求項3】
前記第一のロック機構部は、車体側又は前記小物入れに設けられた第一のバネ部と、
前記第一のバネ部と対向するように前記小物入れ又は前記車体側に設けられて前記第一のバネ部と前記小物入れの前記格納位置にて係合すると共に前記第一のバネ部と前記小物入れの前記第一の引き出し領域及び前記第二の引き出し領域にて摺接することにより前記小物入れに対して抵抗力を付与する第一のバネ受け部と、により構成され、
前記第二のロック機構部は、車体側又は前記小物入れに設けられた第二のバネ部と、
前記第二のバネ部と対向するように前記小物入れ又は前記車体側に設けられて前記第二のバネ部と前記小物入れの前記第二の引き出し領域及び前記第三の引き出し領域にて摺接することにより前記小物入れに対して抵抗力を付与する第二のバネ受け部と、により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用小物入れ構造。
【請求項4】
車両に設けられた格納部に格納された格納位置と前記格納部から引き出された引出位置との間で進退動する小物入れと、
前記小物入れの引き出し時に前記小物入れに対して抵抗力を付与するロック機構と、を備えた車両用小物入れ構造において、
前記ロック機構は、前記小物入れの少なくとも二箇所で前記小物入れに対して抵抗力を付与する第一のロック機構部及び第二のロック機構部を有し、
前記第一のロック機構部は、車体側又は前記小物入れに設けられた第一のバネ部と、
前記第一のバネ部と対向するように前記小物入れ又は前記車体側に設けられて前記第一のバネ部と前記小物入れの前記格納位置にて係合すると共に前記第一のバネ部と前記小物入れの前記格納位置から前記引出位置側への第一の引き出し領域及び前記小物入れの前記第一の引き出し領域の終端位置から前記引出位置側への第二の引き出し領域にて摺接することにより前記小物入れに対して抵抗力を付与する第一のバネ受け部と、により構成され、
前記第二のロック機構部は、車体側又は前記小物入れに設けられた第二のバネ部と、
前記第二のバネ部と対向するように前記小物入れ又は前記車体側に設けられて前記第二のバネ部と前記小物入れの前記第二の引き出し領域及び前記小物入れの前記第二の引き出し領域の終端位置から前記引出位置側への第三の引き出し領域にて摺接することにより前記小物入れに対して抵抗力を付与する第二のバネ受け部と、により構成されていることを特徴とする車両用小物入れ構造。
【請求項5】
前記第一のロック機構部の前記小物入れに対して付与する最大抵抗力は、前記第二のロック機構部の前記小物入れに対して付与する最大抵抗力よりも強く設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用小物入れ構造。
【請求項6】
前記第二のロック機構部は、前記小物入れの引き出し方向と平行な両側面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の車両用小物入れ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−50853(P2007−50853A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238943(P2005−238943)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】