車両用成形敷設内装材
【課題】車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材の提供を課題とする。
【解決手段】プレス成形により車室SP1側の凹凸形状31が形成された意匠層30と、厚み方向D3へ繊維45,46が配向された繊維構造体とされた緩衝材40がプレス成形されることにより車室SP1側の凹凸形状31が形成された意匠層30と、が少なくとも積層されて一体化された、車両用成形敷設内装材10。意匠層30となる成形前の意匠材20と、成形前の緩衝材40と、が少なくとも重ねられた状態で同時にプレス成形され、該プレス成形により車室SP1側の凹凸形状31が形成された意匠層30と、前記プレス成形により車体パネル80側の凹凸形状51が形成された緩衝材層50と、が少なくとも積層されて一体化されてもよい。
【解決手段】プレス成形により車室SP1側の凹凸形状31が形成された意匠層30と、厚み方向D3へ繊維45,46が配向された繊維構造体とされた緩衝材40がプレス成形されることにより車室SP1側の凹凸形状31が形成された意匠層30と、が少なくとも積層されて一体化された、車両用成形敷設内装材10。意匠層30となる成形前の意匠材20と、成形前の緩衝材40と、が少なくとも重ねられた状態で同時にプレス成形され、該プレス成形により車室SP1側の凹凸形状31が形成された意匠層30と、前記プレス成形により車体パネル80側の凹凸形状51が形成された緩衝材層50と、が少なくとも積層されて一体化されてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体パネルには、意匠性や高級感を高めるために各種の内装材が敷設されている。略平坦なフロアパネルから上方へ立ち上がったトーボードパネル等にかけての車体パネルの上側には、通常、内装材としてフロアカーペットが敷設される。
また、フロアカーペットのクッション性を向上させるため、フロアカーペットの裏面にフェルトを設けることも行われている。
【0003】
図18は、従来例に係るフロアカーペット910を自動車の前後方向に沿った垂直面で切断したときの端面を示している。フロアカーペット910は、プレス成形されたカーペット本体911の裏面912に平物のフェルト913が後貼りされて形成されている。フェルト913は、原料繊維を解繊機により解繊し、フィーダーに供給して混綿し、カード機に通して繊維フリースを形成し、該繊維フリースをレイヤーにより重合させて複層化し、ニードリング等によって繊維を交絡し、プレス成形により所要の厚みとし、所要のサイズに裁断することにより、形成される。このようにして形成されるフェルト913は、構成する繊維914がフェルト面、すなわち、カーペット本体の裏面912に対して略平行に配向している。
【0004】
図19は、特許文献1に記載の車両用フロアカーペット920の製造方法を示している。この製造方法は、プレス成形型の下型932の形状に沿って形成された剛性を有する薄い下敷き931を用いている。フロアカーペット920は、予め成形されたフェルト層925を下敷き931上に配置した状態で、下敷き931及びフェルト層925を下型932に配置し、フェルト層925の上にカーペット層923を積層し、上型933を下型932に型合わせしてフェルト層925と一体にカーペット層923をプレス成形し、成形されたフロアカーペット920を下敷き931と共に下型932から脱型することにより、形成される。このフェルト層925にも、構成する繊維がフェルト面に並行して配向したフェルトが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−227305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したフロアカーペットに設けられるフェルトの構成繊維は、厚み方向と直交する方向、すなわち、カーペット本体の裏面に沿った方向に配向している。このため、成形されていないフェルトの厚み方向にフロアカーペットを車体パネル上面に沿った深い凹凸形状にプレス成形しようとしても、フェルト層の厚みを部分的に変えることができず、フェルトを車体パネルに沿わせるように深絞り成形することができない。この結果、フロアカーペットは、屈曲部において浮き上がって車室内の見栄えを損なうことになる。
特許文献1に記載の製造方法では、フェルト単体をある程度、車体パネル上面に沿った形状にプレス成形しておくものの、フェルト層の厚みを部分的に変えることができないことに変わりはない。むろん、成形されていないフェルトを凹凸のある下敷き上に配置してカーペット本体とともにプレス成形しようとしても、フェルトを車体パネルに沿わせるように深絞り成形することができない。
【0007】
以上を鑑み、本発明は、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされた緩衝材がプレス成形されることにより前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化されたことを特徴とする。
【0009】
プレス成形される緩衝材に厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体が用いられているので、緩衝材がプレス成形されても緩衝材層が厚み方向への深い成形に追従している。従って、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
【0010】
ここで、本発明を適用可能な車両用成形敷設内装材には、フェルト層を有するフロアカーペット、フェルト層を有するダッシュサイレンサ、フェルト層を有する側壁トリム、等が含まれる。
上記意匠層には、カーペット層、不織布層、織物層、編物層、レザー層、等が含まれる。
上記繊維構造体の繊維が厚み方向へ配向されていることは、繊維の配列方向が緩衝材の表面及び裏面に対して直交する方向へ比較的揃っていることを意味し、繊維を厚み方向へ配向させるための折り返し部分を有することを含む。繊維構造体を構成する繊維は屈曲していることがあるので、繊維構造体の繊維が厚み方向へ配向されていることは、真っ直ぐな繊維が繊維構造体の厚み方向へ平行に並んでいることを意味する訳ではない。
以上より、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体には、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返された波形形状の繊維構造体、該波形形状の繊維構造体の折り返し部分を切除した繊維構造体、等が含まれる。
繊維構造体を構成する繊維は、一種類の繊維でもよいし、主繊維と接着性繊維の組合せ等、二種類以上の繊維の組合せでもよい。
意匠層と緩衝材層とは、同時にプレス成形されることにより形成されてもよいし、別々にプレス成形された後に接着等により一体化されてもよいし、緩衝材層のみ別成形された後に該緩衝材層と意匠層とが一緒にプレス成形されることにより形成されてもよいし、意匠層のみ別成形された後に該意匠層と緩衝材層とが一緒にプレス成形されることにより形成されてもよい。
上記緩衝材層は車両用成形敷設内装材における車体パネル側の面の一部のみに設けられてもよく、このような車両用成形敷設内装材も特許請求の範囲に含まれる。
車両用成形敷設内装材には意匠層と緩衝材層との間に開孔樹脂層や吸音層といった別の層が設けられてもよく、このような車両用成形敷設内装材も特許請求の範囲に含まれる。
さらに、意匠層と緩衝材層が形成された後にフェルト等の別部材が後貼りされた車両用成形敷設内装材も特許請求の範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
請求項3に係る発明では、バインダにより凹凸形状の保持された緩衝材層を有する新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
請求項4、請求項5に係る発明では、吸音性を向上させることができる。
請求項6に係る発明では、車両用成形敷設内装材の裏面形状の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るフロアカーペット(車両用成形敷設内装材)10の車室SP1側の外観を例示する斜視図である。
【図2】フロアカーペット10を車体パネル80とともに図1のA1−A1に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図3】フロアカーペット10を車体パネル80とともに図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図4】折り返し部分47を残した緩衝材40の要部を例示する側面図である。
【図5】折り返し部分47を残した緩衝材40の要部を例示する斜視図である。
【図6】折り返し部分47を切除した緩衝材41の要部を例示する斜視図である。
【図7】ひだM2の積層方向D1の好ましい向きを例示する分解斜視図である。
【図8】フロアカーペット10の製造方法を模式的に例示するブロック図である。
【図9】フロアカーペット10の製造方法の一例を説明するための垂直端面図である。
【図10】プレス成形されたフロアカーペット10を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図11】変形例に係るフロアカーペット11を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図12】変形例に係るフロアカーペット12を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図13】変形例に係るフロアカーペット13を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図14】変形例に係るフロアカーペット14を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図15】変形例に係るフロアカーペット15を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図16】図15に示すフロアカーペット15で重ねられる緩衝材42の向きの一例を説明するための斜視図である。
【図17】1/3オクターブバンド毎の中心周波数に対する緩衝材の垂直入射吸音率の測定結果を例示する図である。
【図18】従来例に係るフロアカーペット910を自動車の前後方向に沿った垂直面で切断したときの端面を示す図。
【図19】従来例に係るフロアカーペット920の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下に説明する実施形態は、本発明を例示するものに過ぎない。
【0014】
(1)車両用成形敷設内装材の構成:
図1〜16は、本発明に係る車両用成形敷設内装材を自動車用フロアカーペットに適用した例を示している。図中、FRONTは前、REARは後、を表している。また、図2は車体パネル80とともにフロアカーペット10を自動車の車幅方向に沿った垂直面で切断したときの垂直端面を例示し、図2は車体パネル80とともにフロアカーペット10を自動車の前後方向に沿った垂直面で切断したときの垂直端面を例示している。
図1に示すフロアカーペット10は、車体の床面を構成する略平坦なフロアパネル(車体パネルの一種)、乗員室前部においてフロアパネル面から上方に立ち上がったトーボードパネル(車体パネルの一種)、等の上に載置される車両用成形敷設内装材とされている。フロアパネルやトーボードパネルの車幅方向の中央部には、図2に示すように上へ膨出して前後に延びたトンネル部TU1が形成されている。図2に示す車体パネル80の車幅方向の両縁部81,81は、車幅方向外側に向かって立ち上がっている。図2,3に示すように、フロアカーペット10は、車体パネル80の車室SP1側に敷設され、乗員室内を装飾する。フロアカーペット10は、コンソールやロッカーパネルなどの突出部を避けるとともに一部がこれらの立壁に沿うように三次元形状に成形されている。
【0015】
フロアカーペット10の基本部分は、カーペット層(意匠層)30と緩衝材層50から構成される。カーペット層30は、車室SP1側の凹凸形状31が形成され、車室SP1に面して配置される。緩衝材層50は、車体パネル80側の凹凸形状51が形成され、車体パネル80に面して配置される。フロアカーペット10は、カーペット層30となる成形前のカーペット本体(意匠材)20(図9参照)がプレス成形されることより車室SP1側の凹凸形状31が形成されたカーペット層30と、緩衝材層50となる成形前の緩衝材40がプレス成形されることにより車体パネル80側の凹凸形状51が形成された緩衝材層50と、が少なくとも積層されて一体化されている。詳しくは後述するが、緩衝材40は、図4,5に示すように、厚み方向D3へ繊維45,46が配向された繊維構造体とされている。
【0016】
図2,3に示すように、カーペット層の凹凸形状31と緩衝材層の凹凸形状51とは、一致していない部分がある。これにより、緩衝材層50は、場所により厚みが異なることとなる。本フロアカーペット10は、緩衝材40に厚み方向D3へ繊維45,46が配向された繊維構造体が用いられているので、緩衝材層50が厚み方向D3への深い成形に追従しており、新規な車両用成形敷設内装材とされている。
【0017】
カーペット層30は、フロアカーペット10に意匠性、良好な触感、耐摩耗性、等の特性を付与する層である。本実施形態のカーペット層30は、基層25の車室SP1側に多数のパイル26が立毛している。図2,3に示すカーペット層30は、パイル26のバックステッチを基層25に有するタフテッドカーペットとされている。むろん、カーペット層には、不織ウェブをニードリングして繊維相互を絡め表面に毛羽を形成したニードルパンチカーペット等を採用することも可能である。
【0018】
基層25を基布で構成する場合、この基布には、スパンボンド不織布等の各種の不織布、各種繊維の編織物、等を用いることができる。基布を構成する繊維には、ポリエステルやPP(ポリプロピレン)やエチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂からなる合成繊維等を用いることができる。
【0019】
基層25は、基布のみで形成されてもよいが、基布の裏面(緩衝材層50側の面)に裏打ちが施されてもよい。この裏打ちには、樹脂材料(エラストマーを含む)、繊維材料、等を用いることができる。前記樹脂材料は、樹脂を含む材料であればよく、樹脂のみからなる材料でもよいし、添加剤が添加された材料でもよい。前記樹脂材料を構成する樹脂は、合成樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂が特に好ましい。この熱可塑性樹脂は、低融点(100〜300℃)の熱可塑性樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンといったオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル、等を用いることができる。前記樹脂材料に熱可塑性の材料を用いることにより、裏打ちを加熱して可塑化させた状態でカーペットを車体パネルに沿った形状にプレス成形すると、カーペットは車体パネルに沿った形状に賦形された状態で形状が保持される。
【0020】
また、前記繊維材料を構成する繊維は、合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、無機繊維、等を用いることができ、熱可塑性の繊維を含む繊維が好ましい。この熱可塑性の繊維を構成する樹脂は、低融点の熱可塑性樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンといったオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル、等を用いることができる。繊維を集合させて保形性及び通気性を有する裏打ちを形成すると、フロアカーペットの吸音性を高めることができる。
【0021】
パイル26を構成するパイル糸には、PP繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維等のポリエステル系の繊維、アクリル系の繊維、等の合成繊維等を用いることができる。これらの繊維の中から選ばれる一種以上の繊維を公知のタフティングマシンにより基布に刺し通して基布の表面にカットパイルやループパイルを形成すると、タフテッドカーペットが形成される。
【0022】
本実施形態の緩衝材層50は、厚み方向D3へ繰り返しウェブM1が折り返された波形形状とされた緩衝材40から形成されている。緩衝材層50は、軽量かつ嵩高とされ、高吸音性を有する。本実施形態の緩衝材層50は、主繊維45と接着性繊維(バインダ)46を含む緩衝材40から形成され、フロアカーペット10の車体パネル80側の面52のうち20%以上の範囲に積層されている。すなわち、緩衝材層50は、フロアカーペット10の車体パネル80側の全面に設けられてもよいし、フロアカーペット10の車体パネル80側の面52のうち一部のみに設けられてもよい。
【0023】
連続したウェブを繰り返し波形に折り返した緩衝材を製造する装置としては、ストルート(STRUTO)法など公知の製法を適用した各種の緩衝材製造装置から適宜選択することができる。
上記緩衝材製造装置としては、例えば、特表2008-538130号公報に記載のテキスタイルラップ装置や、歯車によって連続したウェブを繰り返し波形に折り返す装置が知られている。
図4は、緩衝材製造装置で形成される緩衝材40の要部を例示する側面図である。図4に示すように、各ひだM2では、主繊維45及び接着性繊維46が折り返し部分47を除いて厚み方向D3へ配向している。接着性繊維46の一部は、溶融され、波形に配向した主繊維45どうしを接着している。これにより、図5に示すような波形の繊維構造体とされた緩衝材40が形成されている。
【0024】
形成される緩衝材40は、図5に示すように各ひだM2の折り返し面が緩衝材の幅方向D2及び厚み方向D3を通る面に合わせられ、繊維45,46が厚み方向D3へ配向している。折り返し部分47が集合した表面40a及び裏面40bは、ひだM2の積層方向D1に沿って形成されている。ここで、繊維45,46が厚み方向D3へ配向されていることは、繊維45,46の配列方向が表面40a及び裏面40bに対して直交する方向へ比較的揃っていることを意味し、繊維の折り返し部分47を有することを含む。
【0025】
緩衝材40を形成するための繊維45,46は、合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、無機繊維、反毛繊維、等を用いることができる。
【0026】
主繊維45は、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)の繊維、熱可塑性樹脂に添加剤を添加した繊維、無機繊維、反毛繊維、等を用いることができ、PET等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、ポリアミド、等の熱可塑性樹脂からなる繊維、これらの熱可塑性樹脂を変性させて融点を調整した熱可塑性樹脂からなる繊維、ガラス繊維、レーヨン繊維、衣料反毛繊維、さらに添加剤を添加した材質の繊維、これらの繊維の組合せ、等を用いることができる。主繊維45の繊維径は5〜60μm程度とすることができ、主繊維45の繊維長は10〜100mm程度とすることができる。
試験を行ったところ、主繊維45の少なくとも一部に反毛繊維(好ましくは衣料反毛繊維)を用いることにより緩衝材40の吸音性が向上することが判った。
【0027】
接着性繊維46は、熱可塑性樹脂の繊維、熱可塑性樹脂に添加剤を添加した繊維、等を用いることができ、PET等のポリエステル、PPやPE(ポリエチレン)等のポリオレフィン、ポリアミド、等の熱可塑性樹脂からなる繊維、これらの熱可塑性樹脂を変性させて融点を調整した熱可塑性樹脂からなる繊維、さらに添加剤を添加した材質の繊維、等を用いることができる。主繊維が熱可塑性繊維である場合、接着性繊維には主繊維よりも低い融点を持つ熱可塑性の繊維を用いるのが好ましい。例えば、接着性繊維に主繊維と相溶性のある繊維を用いると、主繊維と接着性繊維との接着性が良好になり、緩衝材層50に十分な形状保持性を付与することができる。接着性繊維の融点は、100〜220℃程度とすることができる。
また、接着性繊維に使用可能な繊維を鞘部とし、該鞘部よりも融点の高い芯部の外周を該鞘部で囲んだ芯鞘構造の繊維を接着性繊維46として用いてもよい。この場合、芯部には、主繊維45に使用可能な繊維を用いることができる。
【0028】
接着性繊維46の繊維径は10〜45μm程度とすることができ、接着性繊維46の繊維長は10〜100mm程度とすることができる。主繊維45と接着性繊維46の配合比は、主繊維を30〜95重量%程度、接着性繊維を5〜70重量%程度とすることができる。
なお、接着性繊維の代わりに繊維状でないバインダを用いて緩衝材40を形成してもよい。
【0029】
緩衝材40の目付けは、300〜1500g/m2の範囲とすることが好ましく、500〜800g/m2の範囲とすることがさらに好ましい。また、緩衝材40の厚みは、10〜50mmの間で適用される車両形状に応じて適宜設計される。緩衝材40の密度は、0.01〜0.15g/m3の範囲とすることが好ましく、0.02〜0.08g/m3の範囲とすることがさらに好ましい。
緩衝材40の圧縮強度を実測したところ、密度が0.01〜0.15g/m3のときに1.5〜40kPaとなり、0.02〜0.08g/m3のときに2〜15kPaとなった。これに対して、繊維が厚み方向と直交する方向に配向した従来のフェルトの圧縮強度を実測したところ、密度0.055g/m3のときに2kPaとなった。また、主に嵩上材として従来用いられているウレタンスラブフォーム等の廃材にイソシアネート等のバインダーを散布して加熱成形されるウレタンチップモールドであっても、密度0.15g/m3のときに圧縮強度が25kPaとなった。このように、緩衝材40は、ウレタンチップモールドのような従来品と比べても低密度で同等の圧縮強度が得られることがわかる。
ここで、上述の圧縮強度は、島津製作所製の精密万能試験機AG-500Aを使用して25%ひずみ時の圧縮応力を測定して得られる値である。この測定の試験条件は、試験片サイズが50mm×50mm×厚さ20mmであり、圧縮速度が10mm/minであり、圧縮部位が全面、予備圧縮無しである。
プレス成形後の緩衝材層50の厚みは、プレス成形前の緩衝材40の厚みの50〜90%であることが好ましい。厚みが50%以上であると、厚み方向へ繊維が配行された繊維構造がプレス成形により破壊され難く、より高い圧縮強度を得ることができるため、好ましい。また、厚みが90%以下であると、プレス成形により隣接層と接着するための良好な反発力が得られ、良好な接着強度が得られるため、好ましい。
【0030】
緩衝材層50を形成するための緩衝材は、厚み方向へ繊維が配向されていればよい。そこで、図6に示すように、上述した緩衝材40の表面40a及び裏面40bの折り返し部分47を切除したような緩衝材41を用いてもよい。
【0031】
なお、意匠層30が車室SP1の底部に配置されるカーペットであり、緩衝材40が厚み方向へ繰り返しウェブが折り返されてひだM2が形成された波形形状とされている場合、図7に示すように、プレス成形する緩衝材40のひだM2の積層方向D1は、車幅方向に向いているのが好ましい。すなわち、図7に示すフロアカーペットの緩衝材層は、ひだM2の積層方向D1を車室SP1の車幅方向に向けた緩衝材40がプレス成形されることにより形成される。
自動車のフロア部の車体パネル80における車幅方向の中央部には、図2で示したように上へ膨出して前後に延びたトンネル部TU1が形成されている。これにより、車体パネル80の車幅方向に沿った垂直断面(例えば図2のA1−A1断面)における上下の凹凸は、車体パネル80の前後方向に沿った垂直断面(例えば図3のA2−A2断面)における上下の凹凸よりも大きくなっている。そこで、緩衝材40のひだM2の積層方向D1を車幅方向に向けることにより、プレス成形時にひだM2がアコーディオン状に展開するため、深い凹凸形状への追従性が向上する。図2で示したように、車体パネル80の車幅方向の両縁部81,81が車幅方向外側に向かって立ち上がっている場合も、同様の効果が得られる。
【0032】
(2)車両用成形敷設内装材の製造方法、並びに、作用及び効果:
図8は、フロアカーペット10の製造方法の一例を示している。本フロアカーペットの製造工程は、成形前のカーペット本体20の原反ロールが所定の場所に置かれ、形成するフロアカーペット10の大きさに合わせて切断した成形前の緩衝材40がカットフェルト置き場に置かれた状態で、開始される。
【0033】
まず、カーペット本体の原反ロールからカーペット本体20が裁断機に搬入され(工程S1)、形成するフロアカーペット10の大きさに合わせてカーペット本体20が定尺に裁断される(工程S2)。裁断されたカーペット本体20は、赤外線ヒーター等の加熱機に搬入され、輻射加熱等により両面加熱されて、基層25が軟化する(工程S3)。加熱軟化したカーペット本体20は、図9に示すようなプレス成形機200に搬入される(工程S4)。
一方、カットフェルト置き場の緩衝材40は、サクションヒーター(熱風循環ヒーター)等の加熱機に搬入され(工程S5)、熱風加熱等により加熱されて、接着性繊維46が軟化する(工程S6)。加熱された緩衝材40は、プレス成形機200に搬入される(工程S7)。
フロアカーペット10の製造方法は、上記方法に限定されない。例えば、工程S3において、カーペット本体20をサクションヒーターで加熱してもよい。また、カーペット本体20と緩衝材40を重ねた状態でサクションヒーターによって同時に加熱しても良い。この際に十分な熱量を確保するため、サクションヒーターによる加熱に加えて赤外線ヒーターによる輻射加熱を同時に行うことも好ましい。
【0034】
図9は、カーペット本体20と緩衝材40を重ねた状態で同時にプレス成形する場合の様子を模式的に示す垂直端面図である。図9に示すプレス成形機200は、プレス成形型210を構成する上型212及び下型214が近接及び離反可能に設けられている。ここで、上型212は、フロアカーペットの車室側の凹凸形状31に合わせた成形面213を下面に有する金型とされている。下型214は、フロアカーペットの車体パネル側の凹凸形状51に合わせた成形面215を上面に有する金型とされている。加熱されたカーペット本体20及び緩衝材40は、上型212側にカーペット本体20が配置され、下型214側に緩衝材40が配置される。むろん、カーペット本体の基層25と緩衝材の表面40a(又は裏面40b)とが対向して配置され、カーペット本体のパイル26が上型212に対向して配置され、緩衝材の裏面40b(又は表面40a)が下型214に対向して配置される。間にカーペット本体20及び緩衝材40を配置した両型212,214を近接させると、トリミング前のフロアカーペット10がプレス成形される。この工程は、図8に示す工程S8に相当する。
緩衝材40に接着性繊維46等のバインダが含まれている場合、カーペット本体の基層25に接着性の裏打ちが無くても、緩衝材40のバインダによりカーペット層30と緩衝材層50とが接着する。
【0035】
トリミング前のフロアカーペット10は、冷却後にプレス成形機200から取り出されて外周裁断機へ搬入される(工程S9)。脱型後、トリミング前のフロアカーペット10は、外周裁断機で外周が裁断される(工程S10)。これにより、図10に示すようなフロアカーペット10が形成される。尚、工程S10における裁断方法は、裁断刃による裁断またはウォータージェット裁断とすることができる。また、工程S9及び工程S10を省略して、工程S8の型212,214を近接させた、フロアカーペット10がプレス成形された状態で、カッターを用いた手裁断によって外周を裁断してもよい。
フロアカーペット10を形成するための緩衝材40に厚み方向D3へ繊維が配向された繊維構造体が用いられているので、緩衝材40がプレス成形されても緩衝材層50が厚み方向D3への深い成形に追従し、緩衝材層50の厚みが部分的に変わっている。これにより、緩衝材層50は、上述したプレス成形により車体パネル80側の凹凸形状51が形成され、固化した接着性繊維46により凹凸形状51が保持される。むろん、カーペット層30は、上述したプレス成形により車室SP1側の凹凸形状31が形成され、固化した基層25によりパイル26の凹凸形状31が保持される。従って、形成されるフロアカーペット10は、凹凸形状31に保持されたカーペット層30と凹凸形状51に保持された緩衝材層50とが少なくとも積層されて一体化されている。
【0036】
以上説明したように、上記フロアカーペット10に例示される車両用成形敷設内装材は、車体パネルの凹凸を埋める緩衝材層が車両用成形敷設内装材のプレス成形と同時に一体成形されるため、従来のようにフェルトを後貼りすることが不要となり、製造工数及び製造コストを低減させることが可能となり、緩衝材層の位置ずれ等の発生を可及的に低減することも可能となる。また、緩衝材層に厚み方向へ繊維が配向した繊維成形体が用いられているので、厚み方向への深い絞り変形が可能となり、車体パネルに形成された深い凹凸に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
【0037】
なお、従来のようにフェルトの構成繊維がカーペット本体の裏面に並行して配向している場合、乗員の足踏み等により厚み方向へ継続的に力を受けると、フェルトが厚み方向に潰されて元の厚みに回復できなくなる、所謂「へたり」が発生し易い。従って、従来のフェルトは、所要の踏み心地等の感触を確保するために高密度にすることが必要である。このため、従来のフロアカーペットは、製品重量が増加することとなり、また、車体パネルの凹凸形状に対応させるために異なる厚みのフェルトを裏面に複数貼る必要がある。このことは、フロアカーペットの部位によって厚み方向の流れ抵抗差が大きくなることに繋がり、防音性能の最適設計を困難にさせることとなる。
本車両用成形敷設内装材は、緩衝材層の繊維が厚み方向へ配列されているため、厚み方向の反発力が高く、従来よりも低密度で所要の踏み心地性や耐へたり性を確保することができる。このため、本車両用成形敷設内装材は、密度を低減させて軽量化させることが可能となり、低コスト化を図ることができるといった優れた効果が得られる。
【0038】
また、本車両用成形敷設内装材は、従来のフェルトに比べて緩衝材を低密度とすることができるため、成形時に高いプレス圧をかける必要が無く、成形コストを低減することも可能となる。
【0039】
(3)変形例:
なお、本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、本発明を適用可能な車両用成形敷設内装材は、フロアカーペット以外にも、ドアトリム、ラゲージサイドトリム、ピラーガーニッシュ内装材といった側壁トリム、ダッシュサイレンサ、ルーフライナ内装材、等でもよい。従って、意匠層を形成するための意匠材は、カーペット地の他、不織布、織物、編物、レザー、等でもよい。これらの意匠材から、不織布層、織物層、編物層、レザー層、等の意匠層が形成される。
上述した意匠層及び緩衝材層は、別々にプレス成形された後に接着されてもよい。また、緩衝材のみをプレス成形して緩衝材層を形成した後に該緩衝材層と意匠材とを少なくとも重ねて一緒にプレス成形してもよい。さらに、意匠材のみをプレス成形して意匠層のみを形成した後に該意匠層と緩衝材とを少なくとも重ねて一緒にプレス成形してもよい。これらの方法により形成される車両用成形敷設内装材も、本発明に含まれる。
車両用成形敷設内装材には、意匠層と緩衝材層との間に別の層が設けられてもよい。
【0040】
図11は、カーペット層(意匠層)30と緩衝材層50との間に開孔樹脂層61及び吸音層62を設けたフロアカーペット11を示している。図11に示すフロアカーペット11は、図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を示している。本フロアカーペット11は、車室SP1から車体パネル80に向かって順にカーペット層(意匠層)30、開孔樹脂層61、吸音層62、緩衝材層50が積層されて一体化されている。
本変形例のカーペット層30を形成するためのカーペット本体(意匠材)20(図9参照)は、該カーペット本体20の厚み方向への通気性を有する。この通気性は、カーペット本体20の厚み方向への流れ抵抗値(ISO 9053に規定される流れ抵抗値)として50〜500N・s/m3が好ましい。カーペット本体の基層25に通気性を阻害する裏打ちを設けないようにして、パイル26の繊維長や繊維径を調整したり、ニードルパンチカーペットの場合はニードリングの度合いを調整したりすることにより、カーペット本体20の通気性を調節することができる。
【0041】
開孔樹脂層61は、厚み方向に貫通した開孔61aが複数形成され、カーペット層30と吸音層62とを高通気状態で接着する。開孔樹脂層61を形成する材料は、樹脂(エラストマーを含む)のみからなる材料でもよいし、添加剤が添加された材料でもよい。前記樹脂は、合成樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂が特に好ましい。この熱可塑性樹脂は、低融点(100〜300℃)の熱可塑性樹脂が好ましく、PEやPPといったオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、変成ポリエステル、等を用いることができる。
上述した材料のフィルムに多数の微小開孔を形成すると、開孔樹脂層61を形成することができる。
【0042】
開孔樹脂層の各開孔61aの直径は、0.5〜3mm程度とすることができる。単位面積当たりの開孔61aの数は、40〜500個/cm2程度とすることができる。開孔樹脂層61の流れ抵抗値は、良好な吸音性能を発揮させる観点から、300〜3500N・s/m3が好ましい。各開孔61aの直径や開孔61aの数を調整することにより、開孔樹脂層61の流れ抵抗値を前述の範囲内にすることができる。例えば、各開孔61aの直径を大きくしたり開孔61aの数を多くしたりすると流れ抵抗値を小さくさせることができ、各開孔61aの直径を小さくしたり開孔61aの数を少なくしたりすると流れ抵抗値を大きくさせることができる。
【0043】
吸音層62は、開孔樹脂層61と緩衝材層50との間に積層されている。吸音層62は、吸音性が付与され、フロアカーペット11の形状を保持する。吸音層62はカーペット層30よりも剛性が高くされ、フロアカーペット11はプレス成形時に吸音層62を賦形することによって本質的に形状が保持される。
繊維を集合させて成形して吸音層62とする場合、該繊維は、合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、無機繊維、反毛繊維、等を用いることができ、PET等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、ポリアミド、等の熱可塑性樹脂からなる繊維、これらの熱可塑性樹脂を変性させて融点を調整した熱可塑性樹脂からなる繊維、ガラス繊維、レーヨン繊維、衣料反毛繊維、さらに添加剤を添加した材質の繊維、これらの繊維の組合せ、等を用いることができる。繊維径は5〜60μm程度とすることができ、繊維長は10〜100mm程度とすることができる。
【0044】
吸音層62の厚みは、2〜5mm程度とすることができる。吸音層62の密度は、50〜300kg/m3とすることができる。吸音層62の流れ抵抗値は、50〜500N・s/m3が好ましい。
【0045】
本フロアカーペット11は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、開孔樹脂層61となる樹脂材料をフィルム状に押し出し、吸音層62となる成形前の吸音材に重ねてローラー等で押圧して積層する。続いて、長尺ドラムの外周に多数の熱針を植設した開孔機によって、所要の開孔径、開孔数で開孔61aを樹脂フィルムに形成する。次に、この積層物の樹脂フィルム側に基層25を対向させて通気性のカーペット本体20を重ねるとともに、該積層物の吸音材側に厚み方向D3へ繊維45,46が配向した緩衝材40を重ね、この状態でサクションヒーターにより該積層物とカーペット本体20と緩衝材層50とを同時に熱風加熱する。加熱後、これらを図9で示したような型212,214の間に搬入し、プレス成形を行う。冷却後、トリミング前のフロアカーペット11を外周裁断機へ搬入し、外周をウォータージェットで裁断すると、フロアカーペット11が形成される。
【0046】
上述したフロアカーペット11の製造方法は、特開2007-161153号公報に示された製法によっても行うことができる。樹脂フィルムに開孔61aを形成する際には、吸音材に重ねる前に開孔機によって形成してもよい。熱針の代わりに、非加熱の針刺し加工を行ってもよい。
また、特開2007-161153号公報に示されるように、パウダー方式、メルト繊維方式、常温ニードリング方式により開孔樹脂層を形成してもよい。
【0047】
以上説明したように、上記フロアカーペット11に例示される車両用成形敷設内装材は、意匠層と緩衝材層との間に開孔樹脂層が設けられ、意匠層が通気性とされていることにより、車室からの音が吸音層や緩衝材層に入射して吸収される。すなわち、車両用成形敷設内装材で反射して車室に戻る車室からの音が少なくなるので、本車両用成形敷設内装材は、吸音性が向上している。
また、開孔樹脂層で車両用成形敷設内装材の通気度を制御することが可能となり、車両に応じた吸音性能を付与することができる。ここで、緩衝材層は繊維が厚み方向に配向されている繊維成形体で低密度とされているため、プレス成形時に圧縮量の大きい部位の反撥力を低減することができ、開孔樹脂層に設けた開孔が潰れて塞がれる可能性を可及的に低減することができる。
さらに、緩衝材層50は、厚み方向のクッション性が優れているため、圧縮量が小さい部位においても一定の反発力が得られる。従って、緩衝材層の接着力不足による剥がれが生じる可能性を低減させることも可能となる。
【0048】
なお、吸音層62と緩衝材層50との間に非通気性の樹脂層を積層してもよい。この非通気性の樹脂層は、遮音層となり、車外から車室へ侵入しようとする騒音を遮断する。これにより、車室内の静粛性を高めることができる。また、非通気性の樹脂層は、吸音層62と緩衝材層50とを接着する機能も有する。
【0049】
さらに、図12は、カーペット層(意匠層)30と緩衝材層50との間に開孔樹脂層61のみを設けたフロアカーペット12を示している。図12に示すフロアカーペット12も、図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を示している。すなわち、本フロアカーペット12は、車室SP1から車体パネル80に向かって順にカーペット層(意匠層)30、開孔樹脂層61、緩衝材層50が積層されて一体化されている。各層は、図11で示したフロアカーペット11と同様の構成とすることができる。
【0050】
本フロアカーペット12は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、開孔樹脂層61となる樹脂材料をフィルム状に押し出し、緩衝材40に重ねてローラー等で押圧して積層する。続いて、長尺ドラムの外周に多数の熱針を植設した開孔機によって、所要の開孔径、開孔数で開孔61aを樹脂フィルムに形成する。次に、この積層物の樹脂フィルム側に基層25を対向させて通気性のカーペット本体20を重ね、この状態でサクションヒーターにより該積層物とカーペット本体20とを同時に熱風加熱する。加熱後、プレス成形を行い、冷却後に外周を裁断すると、フロアカーペット12が形成される。本フロアカーペット12の製造方法も、特開2007-161153号公報に示された各種製法によって行うことができる。
【0051】
本フロアカーペット12に例示される車両用成形敷設内装材は、意匠層と緩衝材層との間に開孔樹脂層が設けられ、意匠層が通気性とされていることにより、車室からの音が緩衝材層に入射して吸収される。すなわち、車両用成形敷設内装材で反射して車室に戻る車室からの音が少なくなるので、本車両用成形敷設内装材は、吸音性が向上している。
【0052】
さらに、図13は、車体パネル80側の面32にフェルト70を後貼りしたフロアカーペット13を示している。本フロアカーペット13は、緩衝材層50が車体パネル80側の面の一部、例えば、30〜70%の範囲に積層されている。本フロアカーペット13は、プレス成形の後に緩衝材層50が設けられていない車体パネル80側の面32にフェルト70が後貼りされている。フェルト70は、構成繊維がフェルト面に対して略平行に配向した従来のフェルトでもよいし、上述した緩衝材40のように構成繊維が厚み方向へ配向した繊維構造体でもよい。また、フェルト70は、平物のフェルトでもよいし、成形されたフェルトでもよい。
【0053】
フェルト70を用いることによって、自動車のフロア面の形状を変更する場合であってもプレス成形型を変えずに対応することができる。例えば、フロアパネル上にダクトの設定がある場合とない場合とがあるように、同じ車両であってもグレードによってフロア面の凹凸形状が一部異なる場合がある。本フロアカーペット13に例示される車両用成形敷設内装材は、車体パネルの形状が一部変わっても、フェルトを後貼りすることにより一つの成形型で対応することができ、車両用成形敷設内装材の裏面形状の自由度を高めることができ、製造コストを低減させることができる。
なお、プレス成形の後に緩衝材層50が設けられた車体パネル80側の面52にフェルト70を後貼りしてもよい。
【0054】
図14は、緩衝材層50の車体パネル80側の面52にフェルト70を後貼りしたフロアカーペット14を示している。このフェルト70は、構成繊維がフェルト面に対して略平行に配向した従来のフェルトとされている。
図15は、緩衝材層50の車体パネル80側の面52に緩衝材42を後貼りしたフロアカーペット15を示している。この緩衝材42は、上述した緩衝材40のように構成繊維が厚み方向へ配向した繊維構造体とされている。
【0055】
上記フロアカーペット14,15に例示される車両用成形敷設内装材は、車体パネルに局所的に深い凹部がある場合等にフェルト70又は緩衝材42で車体パネルの深い凹凸形状に対応させることができ、一つの成形型で対応することができる。従って、本変形例は、さらに、フロアカーペットの踏み心地性等、車両用成形敷設内装材の良好な感触を確保することができる。
【0056】
緩衝材層50に緩衝材42を後貼りする場合、図16に示すように、構成繊維(図4に示す繊維45,46)の折り畳み方向を直交する向きとする等、構成繊維の折り畳み方向を異ならせる向きに後貼りするのが好ましい。これにより、緩衝材層50及び緩衝材42の反発力が高まり、フロアカーペットの踏み心地性及び耐へたり性が高められる等、車両用成形敷設内装材の良好な感触及び耐へたり性が高められる。
【0057】
(4)緩衝材の吸音試験:
以下、本車両用成形敷設内装材を形成するために使用可能な緩衝材の吸音試験の実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0058】
[緩衝材サンプルの調整]
実施例1の主繊維には、PET繊維及び衣料反毛繊維(ロット1)を用いた。実施例2の主繊維には、衣料反毛繊維(ロット1)のみを用いた。実施例3の主繊維には、PET繊維及び衣料反毛繊維(ロット2)を用いた。実施例4の主繊維には、衣料反毛繊維(ロット2)のみを用いた。比較例の主繊維には、PET繊維のみを用いた。実施例1〜4及び比較例の接着性繊維には、PET/PETの芯鞘繊維を用いた。
【0059】
以下の配合比(単位;重量%)の繊維ウェブを特表2008-538130号公報に記載のテキスタイルラップ装置でプリーツ状に折り畳み、目付け600g/m2、厚み20mmの緩衝材サンプルを形成した。
【表1】
【0060】
[吸音性の評価方法]
実施例1〜4及び比較例の緩衝材サンプルを用い、緩衝材の厚み方向へノイズを入射させたときの200〜6300Hzにおける垂直入射吸音率を測定した。垂直入射吸音率は、JIS A1405:2007-2「音響管による吸音率及びインピーダンスの測定−第2部:伝達関数法」に規定される管内法に準拠して1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)の吸音率を測定した。
【0061】
[結果]
結果を、図17に示す。図17は、各実施例及び比較例について200〜6300Hzの1/3オクターブバンド毎の中心周波数(単位:Hz)に対する垂直入射吸音率(単位:無し)の測定結果をグラフにより示している。
上記実施例より、緩衝材に衣料反毛繊維を入れると吸音性能が向上することが判った。従って、本発明の車両用成形敷設内装材は、緩衝材層に反毛繊維を入れると吸音性能が向上することが期待される。
【0062】
(5)まとめ:
上述した実施形態により、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされるとともに前記緩衝材層となる成形前の緩衝材と、が少なくとも重ねられた状態で同時にプレス成形され、該プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、前記プレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面1を有する。
【0063】
また、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材と、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返された波形形状とされるとともに前記緩衝材層となる成形前の緩衝材と、が少なくとも重ねられた状態で同時にプレス成形され、該プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、前記プレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面2を有する。
【0064】
さらに、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされた緩衝材が第一のプレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも重ねられた状態で第二のプレス成形が行われ、該第二のプレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面3を有する。
【0065】
さらに、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材と、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返されて波形形状とされた緩衝材が第一のプレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも重ねられた状態で第二のプレス成形が行われ、該第二のプレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面4を有する。
【0066】
さらに、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材が第一のプレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされるとともに前記緩衝材層となる成形前の緩衝材と、が少なくとも重ねられた状態で第二のプレス成形が行われ、前記意匠層と、前記第二のプレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面5を有する。
【0067】
さらに、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材が第一のプレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返された波形形状とされるとともに前記緩衝材層となる成形前の緩衝材と、が少なくとも重ねられた状態で第二のプレス成形が行われ、前記意匠層と、前記第二のプレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面6を有する。
【0068】
上述した側面1〜6により、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層がプレス成形により一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
【0069】
なお、緩衝材に反毛繊維が含まれていなくても、得られる車両用成形敷設内装材は車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な内装材となる。
また、緩衝材を構成する繊維が一種類であっても、厚み方向へ配向されていれば、得られる車両用成形敷設内装材は車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な内装材となる。
すなわち、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる車両用内装部品でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0070】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10,11,12,13,14,15…フロアカーペット(車両用成形敷設内装材)、
20…カーペット本体(意匠材)、25…基層、26…パイル、
30…カーペット層(意匠層)、31…車室側の凹凸形状、
32…緩衝材層が設けられていない車体パネル側の面、
40,41,42…緩衝材、40a…表面、40b…裏面、
45…主繊維、46…接着性繊維(バインダ)、47…折り返し部分、
50…緩衝材層、51…車体パネル側の凹凸形状、52…車体パネル側の面、
61…開孔樹脂層、62…吸音層、70…フェルト、
80…車体パネル、
200…プレス成形機、
D1…ひだの積層方向、D2…幅方向、D3…厚み方向、
M2…ひだ、
SP1…車室。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体パネルには、意匠性や高級感を高めるために各種の内装材が敷設されている。略平坦なフロアパネルから上方へ立ち上がったトーボードパネル等にかけての車体パネルの上側には、通常、内装材としてフロアカーペットが敷設される。
また、フロアカーペットのクッション性を向上させるため、フロアカーペットの裏面にフェルトを設けることも行われている。
【0003】
図18は、従来例に係るフロアカーペット910を自動車の前後方向に沿った垂直面で切断したときの端面を示している。フロアカーペット910は、プレス成形されたカーペット本体911の裏面912に平物のフェルト913が後貼りされて形成されている。フェルト913は、原料繊維を解繊機により解繊し、フィーダーに供給して混綿し、カード機に通して繊維フリースを形成し、該繊維フリースをレイヤーにより重合させて複層化し、ニードリング等によって繊維を交絡し、プレス成形により所要の厚みとし、所要のサイズに裁断することにより、形成される。このようにして形成されるフェルト913は、構成する繊維914がフェルト面、すなわち、カーペット本体の裏面912に対して略平行に配向している。
【0004】
図19は、特許文献1に記載の車両用フロアカーペット920の製造方法を示している。この製造方法は、プレス成形型の下型932の形状に沿って形成された剛性を有する薄い下敷き931を用いている。フロアカーペット920は、予め成形されたフェルト層925を下敷き931上に配置した状態で、下敷き931及びフェルト層925を下型932に配置し、フェルト層925の上にカーペット層923を積層し、上型933を下型932に型合わせしてフェルト層925と一体にカーペット層923をプレス成形し、成形されたフロアカーペット920を下敷き931と共に下型932から脱型することにより、形成される。このフェルト層925にも、構成する繊維がフェルト面に並行して配向したフェルトが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−227305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したフロアカーペットに設けられるフェルトの構成繊維は、厚み方向と直交する方向、すなわち、カーペット本体の裏面に沿った方向に配向している。このため、成形されていないフェルトの厚み方向にフロアカーペットを車体パネル上面に沿った深い凹凸形状にプレス成形しようとしても、フェルト層の厚みを部分的に変えることができず、フェルトを車体パネルに沿わせるように深絞り成形することができない。この結果、フロアカーペットは、屈曲部において浮き上がって車室内の見栄えを損なうことになる。
特許文献1に記載の製造方法では、フェルト単体をある程度、車体パネル上面に沿った形状にプレス成形しておくものの、フェルト層の厚みを部分的に変えることができないことに変わりはない。むろん、成形されていないフェルトを凹凸のある下敷き上に配置してカーペット本体とともにプレス成形しようとしても、フェルトを車体パネルに沿わせるように深絞り成形することができない。
【0007】
以上を鑑み、本発明は、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされた緩衝材がプレス成形されることにより前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化されたことを特徴とする。
【0009】
プレス成形される緩衝材に厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体が用いられているので、緩衝材がプレス成形されても緩衝材層が厚み方向への深い成形に追従している。従って、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
【0010】
ここで、本発明を適用可能な車両用成形敷設内装材には、フェルト層を有するフロアカーペット、フェルト層を有するダッシュサイレンサ、フェルト層を有する側壁トリム、等が含まれる。
上記意匠層には、カーペット層、不織布層、織物層、編物層、レザー層、等が含まれる。
上記繊維構造体の繊維が厚み方向へ配向されていることは、繊維の配列方向が緩衝材の表面及び裏面に対して直交する方向へ比較的揃っていることを意味し、繊維を厚み方向へ配向させるための折り返し部分を有することを含む。繊維構造体を構成する繊維は屈曲していることがあるので、繊維構造体の繊維が厚み方向へ配向されていることは、真っ直ぐな繊維が繊維構造体の厚み方向へ平行に並んでいることを意味する訳ではない。
以上より、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体には、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返された波形形状の繊維構造体、該波形形状の繊維構造体の折り返し部分を切除した繊維構造体、等が含まれる。
繊維構造体を構成する繊維は、一種類の繊維でもよいし、主繊維と接着性繊維の組合せ等、二種類以上の繊維の組合せでもよい。
意匠層と緩衝材層とは、同時にプレス成形されることにより形成されてもよいし、別々にプレス成形された後に接着等により一体化されてもよいし、緩衝材層のみ別成形された後に該緩衝材層と意匠層とが一緒にプレス成形されることにより形成されてもよいし、意匠層のみ別成形された後に該意匠層と緩衝材層とが一緒にプレス成形されることにより形成されてもよい。
上記緩衝材層は車両用成形敷設内装材における車体パネル側の面の一部のみに設けられてもよく、このような車両用成形敷設内装材も特許請求の範囲に含まれる。
車両用成形敷設内装材には意匠層と緩衝材層との間に開孔樹脂層や吸音層といった別の層が設けられてもよく、このような車両用成形敷設内装材も特許請求の範囲に含まれる。
さらに、意匠層と緩衝材層が形成された後にフェルト等の別部材が後貼りされた車両用成形敷設内装材も特許請求の範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
請求項3に係る発明では、バインダにより凹凸形状の保持された緩衝材層を有する新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
請求項4、請求項5に係る発明では、吸音性を向上させることができる。
請求項6に係る発明では、車両用成形敷設内装材の裏面形状の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るフロアカーペット(車両用成形敷設内装材)10の車室SP1側の外観を例示する斜視図である。
【図2】フロアカーペット10を車体パネル80とともに図1のA1−A1に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図3】フロアカーペット10を車体パネル80とともに図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図4】折り返し部分47を残した緩衝材40の要部を例示する側面図である。
【図5】折り返し部分47を残した緩衝材40の要部を例示する斜視図である。
【図6】折り返し部分47を切除した緩衝材41の要部を例示する斜視図である。
【図7】ひだM2の積層方向D1の好ましい向きを例示する分解斜視図である。
【図8】フロアカーペット10の製造方法を模式的に例示するブロック図である。
【図9】フロアカーペット10の製造方法の一例を説明するための垂直端面図である。
【図10】プレス成形されたフロアカーペット10を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図11】変形例に係るフロアカーペット11を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図12】変形例に係るフロアカーペット12を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図13】変形例に係るフロアカーペット13を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図14】変形例に係るフロアカーペット14を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図15】変形例に係るフロアカーペット15を図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を例示する図である。
【図16】図15に示すフロアカーペット15で重ねられる緩衝材42の向きの一例を説明するための斜視図である。
【図17】1/3オクターブバンド毎の中心周波数に対する緩衝材の垂直入射吸音率の測定結果を例示する図である。
【図18】従来例に係るフロアカーペット910を自動車の前後方向に沿った垂直面で切断したときの端面を示す図。
【図19】従来例に係るフロアカーペット920の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下に説明する実施形態は、本発明を例示するものに過ぎない。
【0014】
(1)車両用成形敷設内装材の構成:
図1〜16は、本発明に係る車両用成形敷設内装材を自動車用フロアカーペットに適用した例を示している。図中、FRONTは前、REARは後、を表している。また、図2は車体パネル80とともにフロアカーペット10を自動車の車幅方向に沿った垂直面で切断したときの垂直端面を例示し、図2は車体パネル80とともにフロアカーペット10を自動車の前後方向に沿った垂直面で切断したときの垂直端面を例示している。
図1に示すフロアカーペット10は、車体の床面を構成する略平坦なフロアパネル(車体パネルの一種)、乗員室前部においてフロアパネル面から上方に立ち上がったトーボードパネル(車体パネルの一種)、等の上に載置される車両用成形敷設内装材とされている。フロアパネルやトーボードパネルの車幅方向の中央部には、図2に示すように上へ膨出して前後に延びたトンネル部TU1が形成されている。図2に示す車体パネル80の車幅方向の両縁部81,81は、車幅方向外側に向かって立ち上がっている。図2,3に示すように、フロアカーペット10は、車体パネル80の車室SP1側に敷設され、乗員室内を装飾する。フロアカーペット10は、コンソールやロッカーパネルなどの突出部を避けるとともに一部がこれらの立壁に沿うように三次元形状に成形されている。
【0015】
フロアカーペット10の基本部分は、カーペット層(意匠層)30と緩衝材層50から構成される。カーペット層30は、車室SP1側の凹凸形状31が形成され、車室SP1に面して配置される。緩衝材層50は、車体パネル80側の凹凸形状51が形成され、車体パネル80に面して配置される。フロアカーペット10は、カーペット層30となる成形前のカーペット本体(意匠材)20(図9参照)がプレス成形されることより車室SP1側の凹凸形状31が形成されたカーペット層30と、緩衝材層50となる成形前の緩衝材40がプレス成形されることにより車体パネル80側の凹凸形状51が形成された緩衝材層50と、が少なくとも積層されて一体化されている。詳しくは後述するが、緩衝材40は、図4,5に示すように、厚み方向D3へ繊維45,46が配向された繊維構造体とされている。
【0016】
図2,3に示すように、カーペット層の凹凸形状31と緩衝材層の凹凸形状51とは、一致していない部分がある。これにより、緩衝材層50は、場所により厚みが異なることとなる。本フロアカーペット10は、緩衝材40に厚み方向D3へ繊維45,46が配向された繊維構造体が用いられているので、緩衝材層50が厚み方向D3への深い成形に追従しており、新規な車両用成形敷設内装材とされている。
【0017】
カーペット層30は、フロアカーペット10に意匠性、良好な触感、耐摩耗性、等の特性を付与する層である。本実施形態のカーペット層30は、基層25の車室SP1側に多数のパイル26が立毛している。図2,3に示すカーペット層30は、パイル26のバックステッチを基層25に有するタフテッドカーペットとされている。むろん、カーペット層には、不織ウェブをニードリングして繊維相互を絡め表面に毛羽を形成したニードルパンチカーペット等を採用することも可能である。
【0018】
基層25を基布で構成する場合、この基布には、スパンボンド不織布等の各種の不織布、各種繊維の編織物、等を用いることができる。基布を構成する繊維には、ポリエステルやPP(ポリプロピレン)やエチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂からなる合成繊維等を用いることができる。
【0019】
基層25は、基布のみで形成されてもよいが、基布の裏面(緩衝材層50側の面)に裏打ちが施されてもよい。この裏打ちには、樹脂材料(エラストマーを含む)、繊維材料、等を用いることができる。前記樹脂材料は、樹脂を含む材料であればよく、樹脂のみからなる材料でもよいし、添加剤が添加された材料でもよい。前記樹脂材料を構成する樹脂は、合成樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂が特に好ましい。この熱可塑性樹脂は、低融点(100〜300℃)の熱可塑性樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンといったオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル、等を用いることができる。前記樹脂材料に熱可塑性の材料を用いることにより、裏打ちを加熱して可塑化させた状態でカーペットを車体パネルに沿った形状にプレス成形すると、カーペットは車体パネルに沿った形状に賦形された状態で形状が保持される。
【0020】
また、前記繊維材料を構成する繊維は、合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、無機繊維、等を用いることができ、熱可塑性の繊維を含む繊維が好ましい。この熱可塑性の繊維を構成する樹脂は、低融点の熱可塑性樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンといったオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル、等を用いることができる。繊維を集合させて保形性及び通気性を有する裏打ちを形成すると、フロアカーペットの吸音性を高めることができる。
【0021】
パイル26を構成するパイル糸には、PP繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維等のポリエステル系の繊維、アクリル系の繊維、等の合成繊維等を用いることができる。これらの繊維の中から選ばれる一種以上の繊維を公知のタフティングマシンにより基布に刺し通して基布の表面にカットパイルやループパイルを形成すると、タフテッドカーペットが形成される。
【0022】
本実施形態の緩衝材層50は、厚み方向D3へ繰り返しウェブM1が折り返された波形形状とされた緩衝材40から形成されている。緩衝材層50は、軽量かつ嵩高とされ、高吸音性を有する。本実施形態の緩衝材層50は、主繊維45と接着性繊維(バインダ)46を含む緩衝材40から形成され、フロアカーペット10の車体パネル80側の面52のうち20%以上の範囲に積層されている。すなわち、緩衝材層50は、フロアカーペット10の車体パネル80側の全面に設けられてもよいし、フロアカーペット10の車体パネル80側の面52のうち一部のみに設けられてもよい。
【0023】
連続したウェブを繰り返し波形に折り返した緩衝材を製造する装置としては、ストルート(STRUTO)法など公知の製法を適用した各種の緩衝材製造装置から適宜選択することができる。
上記緩衝材製造装置としては、例えば、特表2008-538130号公報に記載のテキスタイルラップ装置や、歯車によって連続したウェブを繰り返し波形に折り返す装置が知られている。
図4は、緩衝材製造装置で形成される緩衝材40の要部を例示する側面図である。図4に示すように、各ひだM2では、主繊維45及び接着性繊維46が折り返し部分47を除いて厚み方向D3へ配向している。接着性繊維46の一部は、溶融され、波形に配向した主繊維45どうしを接着している。これにより、図5に示すような波形の繊維構造体とされた緩衝材40が形成されている。
【0024】
形成される緩衝材40は、図5に示すように各ひだM2の折り返し面が緩衝材の幅方向D2及び厚み方向D3を通る面に合わせられ、繊維45,46が厚み方向D3へ配向している。折り返し部分47が集合した表面40a及び裏面40bは、ひだM2の積層方向D1に沿って形成されている。ここで、繊維45,46が厚み方向D3へ配向されていることは、繊維45,46の配列方向が表面40a及び裏面40bに対して直交する方向へ比較的揃っていることを意味し、繊維の折り返し部分47を有することを含む。
【0025】
緩衝材40を形成するための繊維45,46は、合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、無機繊維、反毛繊維、等を用いることができる。
【0026】
主繊維45は、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)の繊維、熱可塑性樹脂に添加剤を添加した繊維、無機繊維、反毛繊維、等を用いることができ、PET等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、ポリアミド、等の熱可塑性樹脂からなる繊維、これらの熱可塑性樹脂を変性させて融点を調整した熱可塑性樹脂からなる繊維、ガラス繊維、レーヨン繊維、衣料反毛繊維、さらに添加剤を添加した材質の繊維、これらの繊維の組合せ、等を用いることができる。主繊維45の繊維径は5〜60μm程度とすることができ、主繊維45の繊維長は10〜100mm程度とすることができる。
試験を行ったところ、主繊維45の少なくとも一部に反毛繊維(好ましくは衣料反毛繊維)を用いることにより緩衝材40の吸音性が向上することが判った。
【0027】
接着性繊維46は、熱可塑性樹脂の繊維、熱可塑性樹脂に添加剤を添加した繊維、等を用いることができ、PET等のポリエステル、PPやPE(ポリエチレン)等のポリオレフィン、ポリアミド、等の熱可塑性樹脂からなる繊維、これらの熱可塑性樹脂を変性させて融点を調整した熱可塑性樹脂からなる繊維、さらに添加剤を添加した材質の繊維、等を用いることができる。主繊維が熱可塑性繊維である場合、接着性繊維には主繊維よりも低い融点を持つ熱可塑性の繊維を用いるのが好ましい。例えば、接着性繊維に主繊維と相溶性のある繊維を用いると、主繊維と接着性繊維との接着性が良好になり、緩衝材層50に十分な形状保持性を付与することができる。接着性繊維の融点は、100〜220℃程度とすることができる。
また、接着性繊維に使用可能な繊維を鞘部とし、該鞘部よりも融点の高い芯部の外周を該鞘部で囲んだ芯鞘構造の繊維を接着性繊維46として用いてもよい。この場合、芯部には、主繊維45に使用可能な繊維を用いることができる。
【0028】
接着性繊維46の繊維径は10〜45μm程度とすることができ、接着性繊維46の繊維長は10〜100mm程度とすることができる。主繊維45と接着性繊維46の配合比は、主繊維を30〜95重量%程度、接着性繊維を5〜70重量%程度とすることができる。
なお、接着性繊維の代わりに繊維状でないバインダを用いて緩衝材40を形成してもよい。
【0029】
緩衝材40の目付けは、300〜1500g/m2の範囲とすることが好ましく、500〜800g/m2の範囲とすることがさらに好ましい。また、緩衝材40の厚みは、10〜50mmの間で適用される車両形状に応じて適宜設計される。緩衝材40の密度は、0.01〜0.15g/m3の範囲とすることが好ましく、0.02〜0.08g/m3の範囲とすることがさらに好ましい。
緩衝材40の圧縮強度を実測したところ、密度が0.01〜0.15g/m3のときに1.5〜40kPaとなり、0.02〜0.08g/m3のときに2〜15kPaとなった。これに対して、繊維が厚み方向と直交する方向に配向した従来のフェルトの圧縮強度を実測したところ、密度0.055g/m3のときに2kPaとなった。また、主に嵩上材として従来用いられているウレタンスラブフォーム等の廃材にイソシアネート等のバインダーを散布して加熱成形されるウレタンチップモールドであっても、密度0.15g/m3のときに圧縮強度が25kPaとなった。このように、緩衝材40は、ウレタンチップモールドのような従来品と比べても低密度で同等の圧縮強度が得られることがわかる。
ここで、上述の圧縮強度は、島津製作所製の精密万能試験機AG-500Aを使用して25%ひずみ時の圧縮応力を測定して得られる値である。この測定の試験条件は、試験片サイズが50mm×50mm×厚さ20mmであり、圧縮速度が10mm/minであり、圧縮部位が全面、予備圧縮無しである。
プレス成形後の緩衝材層50の厚みは、プレス成形前の緩衝材40の厚みの50〜90%であることが好ましい。厚みが50%以上であると、厚み方向へ繊維が配行された繊維構造がプレス成形により破壊され難く、より高い圧縮強度を得ることができるため、好ましい。また、厚みが90%以下であると、プレス成形により隣接層と接着するための良好な反発力が得られ、良好な接着強度が得られるため、好ましい。
【0030】
緩衝材層50を形成するための緩衝材は、厚み方向へ繊維が配向されていればよい。そこで、図6に示すように、上述した緩衝材40の表面40a及び裏面40bの折り返し部分47を切除したような緩衝材41を用いてもよい。
【0031】
なお、意匠層30が車室SP1の底部に配置されるカーペットであり、緩衝材40が厚み方向へ繰り返しウェブが折り返されてひだM2が形成された波形形状とされている場合、図7に示すように、プレス成形する緩衝材40のひだM2の積層方向D1は、車幅方向に向いているのが好ましい。すなわち、図7に示すフロアカーペットの緩衝材層は、ひだM2の積層方向D1を車室SP1の車幅方向に向けた緩衝材40がプレス成形されることにより形成される。
自動車のフロア部の車体パネル80における車幅方向の中央部には、図2で示したように上へ膨出して前後に延びたトンネル部TU1が形成されている。これにより、車体パネル80の車幅方向に沿った垂直断面(例えば図2のA1−A1断面)における上下の凹凸は、車体パネル80の前後方向に沿った垂直断面(例えば図3のA2−A2断面)における上下の凹凸よりも大きくなっている。そこで、緩衝材40のひだM2の積層方向D1を車幅方向に向けることにより、プレス成形時にひだM2がアコーディオン状に展開するため、深い凹凸形状への追従性が向上する。図2で示したように、車体パネル80の車幅方向の両縁部81,81が車幅方向外側に向かって立ち上がっている場合も、同様の効果が得られる。
【0032】
(2)車両用成形敷設内装材の製造方法、並びに、作用及び効果:
図8は、フロアカーペット10の製造方法の一例を示している。本フロアカーペットの製造工程は、成形前のカーペット本体20の原反ロールが所定の場所に置かれ、形成するフロアカーペット10の大きさに合わせて切断した成形前の緩衝材40がカットフェルト置き場に置かれた状態で、開始される。
【0033】
まず、カーペット本体の原反ロールからカーペット本体20が裁断機に搬入され(工程S1)、形成するフロアカーペット10の大きさに合わせてカーペット本体20が定尺に裁断される(工程S2)。裁断されたカーペット本体20は、赤外線ヒーター等の加熱機に搬入され、輻射加熱等により両面加熱されて、基層25が軟化する(工程S3)。加熱軟化したカーペット本体20は、図9に示すようなプレス成形機200に搬入される(工程S4)。
一方、カットフェルト置き場の緩衝材40は、サクションヒーター(熱風循環ヒーター)等の加熱機に搬入され(工程S5)、熱風加熱等により加熱されて、接着性繊維46が軟化する(工程S6)。加熱された緩衝材40は、プレス成形機200に搬入される(工程S7)。
フロアカーペット10の製造方法は、上記方法に限定されない。例えば、工程S3において、カーペット本体20をサクションヒーターで加熱してもよい。また、カーペット本体20と緩衝材40を重ねた状態でサクションヒーターによって同時に加熱しても良い。この際に十分な熱量を確保するため、サクションヒーターによる加熱に加えて赤外線ヒーターによる輻射加熱を同時に行うことも好ましい。
【0034】
図9は、カーペット本体20と緩衝材40を重ねた状態で同時にプレス成形する場合の様子を模式的に示す垂直端面図である。図9に示すプレス成形機200は、プレス成形型210を構成する上型212及び下型214が近接及び離反可能に設けられている。ここで、上型212は、フロアカーペットの車室側の凹凸形状31に合わせた成形面213を下面に有する金型とされている。下型214は、フロアカーペットの車体パネル側の凹凸形状51に合わせた成形面215を上面に有する金型とされている。加熱されたカーペット本体20及び緩衝材40は、上型212側にカーペット本体20が配置され、下型214側に緩衝材40が配置される。むろん、カーペット本体の基層25と緩衝材の表面40a(又は裏面40b)とが対向して配置され、カーペット本体のパイル26が上型212に対向して配置され、緩衝材の裏面40b(又は表面40a)が下型214に対向して配置される。間にカーペット本体20及び緩衝材40を配置した両型212,214を近接させると、トリミング前のフロアカーペット10がプレス成形される。この工程は、図8に示す工程S8に相当する。
緩衝材40に接着性繊維46等のバインダが含まれている場合、カーペット本体の基層25に接着性の裏打ちが無くても、緩衝材40のバインダによりカーペット層30と緩衝材層50とが接着する。
【0035】
トリミング前のフロアカーペット10は、冷却後にプレス成形機200から取り出されて外周裁断機へ搬入される(工程S9)。脱型後、トリミング前のフロアカーペット10は、外周裁断機で外周が裁断される(工程S10)。これにより、図10に示すようなフロアカーペット10が形成される。尚、工程S10における裁断方法は、裁断刃による裁断またはウォータージェット裁断とすることができる。また、工程S9及び工程S10を省略して、工程S8の型212,214を近接させた、フロアカーペット10がプレス成形された状態で、カッターを用いた手裁断によって外周を裁断してもよい。
フロアカーペット10を形成するための緩衝材40に厚み方向D3へ繊維が配向された繊維構造体が用いられているので、緩衝材40がプレス成形されても緩衝材層50が厚み方向D3への深い成形に追従し、緩衝材層50の厚みが部分的に変わっている。これにより、緩衝材層50は、上述したプレス成形により車体パネル80側の凹凸形状51が形成され、固化した接着性繊維46により凹凸形状51が保持される。むろん、カーペット層30は、上述したプレス成形により車室SP1側の凹凸形状31が形成され、固化した基層25によりパイル26の凹凸形状31が保持される。従って、形成されるフロアカーペット10は、凹凸形状31に保持されたカーペット層30と凹凸形状51に保持された緩衝材層50とが少なくとも積層されて一体化されている。
【0036】
以上説明したように、上記フロアカーペット10に例示される車両用成形敷設内装材は、車体パネルの凹凸を埋める緩衝材層が車両用成形敷設内装材のプレス成形と同時に一体成形されるため、従来のようにフェルトを後貼りすることが不要となり、製造工数及び製造コストを低減させることが可能となり、緩衝材層の位置ずれ等の発生を可及的に低減することも可能となる。また、緩衝材層に厚み方向へ繊維が配向した繊維成形体が用いられているので、厚み方向への深い絞り変形が可能となり、車体パネルに形成された深い凹凸に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
【0037】
なお、従来のようにフェルトの構成繊維がカーペット本体の裏面に並行して配向している場合、乗員の足踏み等により厚み方向へ継続的に力を受けると、フェルトが厚み方向に潰されて元の厚みに回復できなくなる、所謂「へたり」が発生し易い。従って、従来のフェルトは、所要の踏み心地等の感触を確保するために高密度にすることが必要である。このため、従来のフロアカーペットは、製品重量が増加することとなり、また、車体パネルの凹凸形状に対応させるために異なる厚みのフェルトを裏面に複数貼る必要がある。このことは、フロアカーペットの部位によって厚み方向の流れ抵抗差が大きくなることに繋がり、防音性能の最適設計を困難にさせることとなる。
本車両用成形敷設内装材は、緩衝材層の繊維が厚み方向へ配列されているため、厚み方向の反発力が高く、従来よりも低密度で所要の踏み心地性や耐へたり性を確保することができる。このため、本車両用成形敷設内装材は、密度を低減させて軽量化させることが可能となり、低コスト化を図ることができるといった優れた効果が得られる。
【0038】
また、本車両用成形敷設内装材は、従来のフェルトに比べて緩衝材を低密度とすることができるため、成形時に高いプレス圧をかける必要が無く、成形コストを低減することも可能となる。
【0039】
(3)変形例:
なお、本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、本発明を適用可能な車両用成形敷設内装材は、フロアカーペット以外にも、ドアトリム、ラゲージサイドトリム、ピラーガーニッシュ内装材といった側壁トリム、ダッシュサイレンサ、ルーフライナ内装材、等でもよい。従って、意匠層を形成するための意匠材は、カーペット地の他、不織布、織物、編物、レザー、等でもよい。これらの意匠材から、不織布層、織物層、編物層、レザー層、等の意匠層が形成される。
上述した意匠層及び緩衝材層は、別々にプレス成形された後に接着されてもよい。また、緩衝材のみをプレス成形して緩衝材層を形成した後に該緩衝材層と意匠材とを少なくとも重ねて一緒にプレス成形してもよい。さらに、意匠材のみをプレス成形して意匠層のみを形成した後に該意匠層と緩衝材とを少なくとも重ねて一緒にプレス成形してもよい。これらの方法により形成される車両用成形敷設内装材も、本発明に含まれる。
車両用成形敷設内装材には、意匠層と緩衝材層との間に別の層が設けられてもよい。
【0040】
図11は、カーペット層(意匠層)30と緩衝材層50との間に開孔樹脂層61及び吸音層62を設けたフロアカーペット11を示している。図11に示すフロアカーペット11は、図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を示している。本フロアカーペット11は、車室SP1から車体パネル80に向かって順にカーペット層(意匠層)30、開孔樹脂層61、吸音層62、緩衝材層50が積層されて一体化されている。
本変形例のカーペット層30を形成するためのカーペット本体(意匠材)20(図9参照)は、該カーペット本体20の厚み方向への通気性を有する。この通気性は、カーペット本体20の厚み方向への流れ抵抗値(ISO 9053に規定される流れ抵抗値)として50〜500N・s/m3が好ましい。カーペット本体の基層25に通気性を阻害する裏打ちを設けないようにして、パイル26の繊維長や繊維径を調整したり、ニードルパンチカーペットの場合はニードリングの度合いを調整したりすることにより、カーペット本体20の通気性を調節することができる。
【0041】
開孔樹脂層61は、厚み方向に貫通した開孔61aが複数形成され、カーペット層30と吸音層62とを高通気状態で接着する。開孔樹脂層61を形成する材料は、樹脂(エラストマーを含む)のみからなる材料でもよいし、添加剤が添加された材料でもよい。前記樹脂は、合成樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂が特に好ましい。この熱可塑性樹脂は、低融点(100〜300℃)の熱可塑性樹脂が好ましく、PEやPPといったオレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、変成ポリエステル、等を用いることができる。
上述した材料のフィルムに多数の微小開孔を形成すると、開孔樹脂層61を形成することができる。
【0042】
開孔樹脂層の各開孔61aの直径は、0.5〜3mm程度とすることができる。単位面積当たりの開孔61aの数は、40〜500個/cm2程度とすることができる。開孔樹脂層61の流れ抵抗値は、良好な吸音性能を発揮させる観点から、300〜3500N・s/m3が好ましい。各開孔61aの直径や開孔61aの数を調整することにより、開孔樹脂層61の流れ抵抗値を前述の範囲内にすることができる。例えば、各開孔61aの直径を大きくしたり開孔61aの数を多くしたりすると流れ抵抗値を小さくさせることができ、各開孔61aの直径を小さくしたり開孔61aの数を少なくしたりすると流れ抵抗値を大きくさせることができる。
【0043】
吸音層62は、開孔樹脂層61と緩衝材層50との間に積層されている。吸音層62は、吸音性が付与され、フロアカーペット11の形状を保持する。吸音層62はカーペット層30よりも剛性が高くされ、フロアカーペット11はプレス成形時に吸音層62を賦形することによって本質的に形状が保持される。
繊維を集合させて成形して吸音層62とする場合、該繊維は、合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、無機繊維、反毛繊維、等を用いることができ、PET等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、ポリアミド、等の熱可塑性樹脂からなる繊維、これらの熱可塑性樹脂を変性させて融点を調整した熱可塑性樹脂からなる繊維、ガラス繊維、レーヨン繊維、衣料反毛繊維、さらに添加剤を添加した材質の繊維、これらの繊維の組合せ、等を用いることができる。繊維径は5〜60μm程度とすることができ、繊維長は10〜100mm程度とすることができる。
【0044】
吸音層62の厚みは、2〜5mm程度とすることができる。吸音層62の密度は、50〜300kg/m3とすることができる。吸音層62の流れ抵抗値は、50〜500N・s/m3が好ましい。
【0045】
本フロアカーペット11は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、開孔樹脂層61となる樹脂材料をフィルム状に押し出し、吸音層62となる成形前の吸音材に重ねてローラー等で押圧して積層する。続いて、長尺ドラムの外周に多数の熱針を植設した開孔機によって、所要の開孔径、開孔数で開孔61aを樹脂フィルムに形成する。次に、この積層物の樹脂フィルム側に基層25を対向させて通気性のカーペット本体20を重ねるとともに、該積層物の吸音材側に厚み方向D3へ繊維45,46が配向した緩衝材40を重ね、この状態でサクションヒーターにより該積層物とカーペット本体20と緩衝材層50とを同時に熱風加熱する。加熱後、これらを図9で示したような型212,214の間に搬入し、プレス成形を行う。冷却後、トリミング前のフロアカーペット11を外周裁断機へ搬入し、外周をウォータージェットで裁断すると、フロアカーペット11が形成される。
【0046】
上述したフロアカーペット11の製造方法は、特開2007-161153号公報に示された製法によっても行うことができる。樹脂フィルムに開孔61aを形成する際には、吸音材に重ねる前に開孔機によって形成してもよい。熱針の代わりに、非加熱の針刺し加工を行ってもよい。
また、特開2007-161153号公報に示されるように、パウダー方式、メルト繊維方式、常温ニードリング方式により開孔樹脂層を形成してもよい。
【0047】
以上説明したように、上記フロアカーペット11に例示される車両用成形敷設内装材は、意匠層と緩衝材層との間に開孔樹脂層が設けられ、意匠層が通気性とされていることにより、車室からの音が吸音層や緩衝材層に入射して吸収される。すなわち、車両用成形敷設内装材で反射して車室に戻る車室からの音が少なくなるので、本車両用成形敷設内装材は、吸音性が向上している。
また、開孔樹脂層で車両用成形敷設内装材の通気度を制御することが可能となり、車両に応じた吸音性能を付与することができる。ここで、緩衝材層は繊維が厚み方向に配向されている繊維成形体で低密度とされているため、プレス成形時に圧縮量の大きい部位の反撥力を低減することができ、開孔樹脂層に設けた開孔が潰れて塞がれる可能性を可及的に低減することができる。
さらに、緩衝材層50は、厚み方向のクッション性が優れているため、圧縮量が小さい部位においても一定の反発力が得られる。従って、緩衝材層の接着力不足による剥がれが生じる可能性を低減させることも可能となる。
【0048】
なお、吸音層62と緩衝材層50との間に非通気性の樹脂層を積層してもよい。この非通気性の樹脂層は、遮音層となり、車外から車室へ侵入しようとする騒音を遮断する。これにより、車室内の静粛性を高めることができる。また、非通気性の樹脂層は、吸音層62と緩衝材層50とを接着する機能も有する。
【0049】
さらに、図12は、カーペット層(意匠層)30と緩衝材層50との間に開孔樹脂層61のみを設けたフロアカーペット12を示している。図12に示すフロアカーペット12も、図1のA2−A2に相当する位置で切断したときの垂直端面を示している。すなわち、本フロアカーペット12は、車室SP1から車体パネル80に向かって順にカーペット層(意匠層)30、開孔樹脂層61、緩衝材層50が積層されて一体化されている。各層は、図11で示したフロアカーペット11と同様の構成とすることができる。
【0050】
本フロアカーペット12は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、開孔樹脂層61となる樹脂材料をフィルム状に押し出し、緩衝材40に重ねてローラー等で押圧して積層する。続いて、長尺ドラムの外周に多数の熱針を植設した開孔機によって、所要の開孔径、開孔数で開孔61aを樹脂フィルムに形成する。次に、この積層物の樹脂フィルム側に基層25を対向させて通気性のカーペット本体20を重ね、この状態でサクションヒーターにより該積層物とカーペット本体20とを同時に熱風加熱する。加熱後、プレス成形を行い、冷却後に外周を裁断すると、フロアカーペット12が形成される。本フロアカーペット12の製造方法も、特開2007-161153号公報に示された各種製法によって行うことができる。
【0051】
本フロアカーペット12に例示される車両用成形敷設内装材は、意匠層と緩衝材層との間に開孔樹脂層が設けられ、意匠層が通気性とされていることにより、車室からの音が緩衝材層に入射して吸収される。すなわち、車両用成形敷設内装材で反射して車室に戻る車室からの音が少なくなるので、本車両用成形敷設内装材は、吸音性が向上している。
【0052】
さらに、図13は、車体パネル80側の面32にフェルト70を後貼りしたフロアカーペット13を示している。本フロアカーペット13は、緩衝材層50が車体パネル80側の面の一部、例えば、30〜70%の範囲に積層されている。本フロアカーペット13は、プレス成形の後に緩衝材層50が設けられていない車体パネル80側の面32にフェルト70が後貼りされている。フェルト70は、構成繊維がフェルト面に対して略平行に配向した従来のフェルトでもよいし、上述した緩衝材40のように構成繊維が厚み方向へ配向した繊維構造体でもよい。また、フェルト70は、平物のフェルトでもよいし、成形されたフェルトでもよい。
【0053】
フェルト70を用いることによって、自動車のフロア面の形状を変更する場合であってもプレス成形型を変えずに対応することができる。例えば、フロアパネル上にダクトの設定がある場合とない場合とがあるように、同じ車両であってもグレードによってフロア面の凹凸形状が一部異なる場合がある。本フロアカーペット13に例示される車両用成形敷設内装材は、車体パネルの形状が一部変わっても、フェルトを後貼りすることにより一つの成形型で対応することができ、車両用成形敷設内装材の裏面形状の自由度を高めることができ、製造コストを低減させることができる。
なお、プレス成形の後に緩衝材層50が設けられた車体パネル80側の面52にフェルト70を後貼りしてもよい。
【0054】
図14は、緩衝材層50の車体パネル80側の面52にフェルト70を後貼りしたフロアカーペット14を示している。このフェルト70は、構成繊維がフェルト面に対して略平行に配向した従来のフェルトとされている。
図15は、緩衝材層50の車体パネル80側の面52に緩衝材42を後貼りしたフロアカーペット15を示している。この緩衝材42は、上述した緩衝材40のように構成繊維が厚み方向へ配向した繊維構造体とされている。
【0055】
上記フロアカーペット14,15に例示される車両用成形敷設内装材は、車体パネルに局所的に深い凹部がある場合等にフェルト70又は緩衝材42で車体パネルの深い凹凸形状に対応させることができ、一つの成形型で対応することができる。従って、本変形例は、さらに、フロアカーペットの踏み心地性等、車両用成形敷設内装材の良好な感触を確保することができる。
【0056】
緩衝材層50に緩衝材42を後貼りする場合、図16に示すように、構成繊維(図4に示す繊維45,46)の折り畳み方向を直交する向きとする等、構成繊維の折り畳み方向を異ならせる向きに後貼りするのが好ましい。これにより、緩衝材層50及び緩衝材42の反発力が高まり、フロアカーペットの踏み心地性及び耐へたり性が高められる等、車両用成形敷設内装材の良好な感触及び耐へたり性が高められる。
【0057】
(4)緩衝材の吸音試験:
以下、本車両用成形敷設内装材を形成するために使用可能な緩衝材の吸音試験の実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0058】
[緩衝材サンプルの調整]
実施例1の主繊維には、PET繊維及び衣料反毛繊維(ロット1)を用いた。実施例2の主繊維には、衣料反毛繊維(ロット1)のみを用いた。実施例3の主繊維には、PET繊維及び衣料反毛繊維(ロット2)を用いた。実施例4の主繊維には、衣料反毛繊維(ロット2)のみを用いた。比較例の主繊維には、PET繊維のみを用いた。実施例1〜4及び比較例の接着性繊維には、PET/PETの芯鞘繊維を用いた。
【0059】
以下の配合比(単位;重量%)の繊維ウェブを特表2008-538130号公報に記載のテキスタイルラップ装置でプリーツ状に折り畳み、目付け600g/m2、厚み20mmの緩衝材サンプルを形成した。
【表1】
【0060】
[吸音性の評価方法]
実施例1〜4及び比較例の緩衝材サンプルを用い、緩衝材の厚み方向へノイズを入射させたときの200〜6300Hzにおける垂直入射吸音率を測定した。垂直入射吸音率は、JIS A1405:2007-2「音響管による吸音率及びインピーダンスの測定−第2部:伝達関数法」に規定される管内法に準拠して1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)の吸音率を測定した。
【0061】
[結果]
結果を、図17に示す。図17は、各実施例及び比較例について200〜6300Hzの1/3オクターブバンド毎の中心周波数(単位:Hz)に対する垂直入射吸音率(単位:無し)の測定結果をグラフにより示している。
上記実施例より、緩衝材に衣料反毛繊維を入れると吸音性能が向上することが判った。従って、本発明の車両用成形敷設内装材は、緩衝材層に反毛繊維を入れると吸音性能が向上することが期待される。
【0062】
(5)まとめ:
上述した実施形態により、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされるとともに前記緩衝材層となる成形前の緩衝材と、が少なくとも重ねられた状態で同時にプレス成形され、該プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、前記プレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面1を有する。
【0063】
また、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材と、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返された波形形状とされるとともに前記緩衝材層となる成形前の緩衝材と、が少なくとも重ねられた状態で同時にプレス成形され、該プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、前記プレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面2を有する。
【0064】
さらに、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされた緩衝材が第一のプレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも重ねられた状態で第二のプレス成形が行われ、該第二のプレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面3を有する。
【0065】
さらに、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材と、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返されて波形形状とされた緩衝材が第一のプレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも重ねられた状態で第二のプレス成形が行われ、該第二のプレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面4を有する。
【0066】
さらに、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材が第一のプレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされるとともに前記緩衝材層となる成形前の緩衝材と、が少なくとも重ねられた状態で第二のプレス成形が行われ、前記意匠層と、前記第二のプレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面5を有する。
【0067】
さらに、本発明は、車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
前記意匠層となる成形前の意匠材が第一のプレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返された波形形状とされるとともに前記緩衝材層となる成形前の緩衝材と、が少なくとも重ねられた状態で第二のプレス成形が行われ、前記意匠層と、前記第二のプレス成形により前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、側面6を有する。
【0068】
上述した側面1〜6により、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層がプレス成形により一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
【0069】
なお、緩衝材に反毛繊維が含まれていなくても、得られる車両用成形敷設内装材は車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な内装材となる。
また、緩衝材を構成する繊維が一種類であっても、厚み方向へ配向されていれば、得られる車両用成形敷設内装材は車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な内装材となる。
すなわち、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる車両用内装部品でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0070】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、車体パネルに形成された深い凹凸形状に追従した緩衝材層が一体化された新規な車両用成形敷設内装材を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能であり、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりして本発明を実施することも可能である。従って、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10,11,12,13,14,15…フロアカーペット(車両用成形敷設内装材)、
20…カーペット本体(意匠材)、25…基層、26…パイル、
30…カーペット層(意匠層)、31…車室側の凹凸形状、
32…緩衝材層が設けられていない車体パネル側の面、
40,41,42…緩衝材、40a…表面、40b…裏面、
45…主繊維、46…接着性繊維(バインダ)、47…折り返し部分、
50…緩衝材層、51…車体パネル側の凹凸形状、52…車体パネル側の面、
61…開孔樹脂層、62…吸音層、70…フェルト、
80…車体パネル、
200…プレス成形機、
D1…ひだの積層方向、D2…幅方向、D3…厚み方向、
M2…ひだ、
SP1…車室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされた緩衝材がプレス成形されることにより前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、車両用成形敷設内装材。
【請求項2】
車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返されて波形形状とされた緩衝材がプレス成形されることにより前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、車両用成形敷設内装材。
【請求項3】
厚み方向へ配向された前記緩衝材の繊維に主繊維とバインダとが含まれ、該バインダにより前記緩衝材層が前記車体パネル側の凹凸形状を保持している、請求項1又は請求項2に記載の車両用成形敷設内装材。
【請求項4】
前記主繊維に反毛繊維が含まれた、請求項3に記載の車両用成形敷設内装材。
【請求項5】
厚み方向に貫通した開孔が複数形成された開孔樹脂層が前記意匠層と前記緩衝材層との間に設けられ、前記意匠層が通気性を有し、該意匠層と前記開孔樹脂層と前記緩衝材層とが少なくとも積層されて一体化された、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両用成形敷設内装材。
【請求項6】
前記緩衝材層が前記車体パネル側の面の一部に積層され、
前記プレス成形の後に前記緩衝材層が設けられていない前記車体パネル側の面にフェルトが後貼りされた、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両用成形敷設内装材。
【請求項7】
前記意匠層が前記車室の底部に配置されるカーペットであり、
前記緩衝材は、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返されてひだが形成された波形形状とされ、
前記緩衝材層は、前記ひだの積層方向を前記車室の車幅方向に向けた前記緩衝材がプレス成形されることにより形成されている、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両用成形敷設内装材。
【請求項1】
車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繊維が配向された繊維構造体とされた緩衝材がプレス成形されることにより前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、車両用成形敷設内装材。
【請求項2】
車室に面する意匠層と車体パネルに面する緩衝材層とを有する車両用成形敷設内装材であって、
プレス成形により前記車室側の凹凸形状が形成された前記意匠層と、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返されて波形形状とされた緩衝材がプレス成形されることにより前記車体パネル側の凹凸形状が形成された前記緩衝材層と、が少なくとも積層されて一体化された、車両用成形敷設内装材。
【請求項3】
厚み方向へ配向された前記緩衝材の繊維に主繊維とバインダとが含まれ、該バインダにより前記緩衝材層が前記車体パネル側の凹凸形状を保持している、請求項1又は請求項2に記載の車両用成形敷設内装材。
【請求項4】
前記主繊維に反毛繊維が含まれた、請求項3に記載の車両用成形敷設内装材。
【請求項5】
厚み方向に貫通した開孔が複数形成された開孔樹脂層が前記意匠層と前記緩衝材層との間に設けられ、前記意匠層が通気性を有し、該意匠層と前記開孔樹脂層と前記緩衝材層とが少なくとも積層されて一体化された、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両用成形敷設内装材。
【請求項6】
前記緩衝材層が前記車体パネル側の面の一部に積層され、
前記プレス成形の後に前記緩衝材層が設けられていない前記車体パネル側の面にフェルトが後貼りされた、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両用成形敷設内装材。
【請求項7】
前記意匠層が前記車室の底部に配置されるカーペットであり、
前記緩衝材は、厚み方向へ繰り返しウェブが折り返されてひだが形成された波形形状とされ、
前記緩衝材層は、前記ひだの積層方向を前記車室の車幅方向に向けた前記緩衝材がプレス成形されることにより形成されている、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両用成形敷設内装材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−173446(P2011−173446A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37091(P2010−37091)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(390031451)株式会社林技術研究所 (83)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(390031451)株式会社林技術研究所 (83)
【Fターム(参考)】
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