説明

車両用採暖装置

【課題】装置の故障状態を確実に検出し、故障信号のためのハーネスの増加を最小限に抑えたコストパフォーマンスに優れた車両用採暖装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも並列接続された2つのヒータH1及びヒータH2と、サブヒータHSと、過昇防止用サーモスタットTHと、電流制御素子Q1とが直列接続されており、前記ヒータH1又はヒータH2何れかの断線故障時、前記ヒータH1及びヒータH2両方の断線故障時、前記電流制御素子Q1のOFF故障時、前記電流制御素子Q1のON故障時及び前記過昇防止用サーモスタットTHの開路時の各異常状態に応じて、一本の出力線上に出力される電圧と、前記電流制御素子Q1の駆動信号の組合せによって、前記異常状態の内容が判別されることを特徴とする車両座席用採暖装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用座席など、車両内に取付けられて暖房を行う車両用採暖装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両座席用採暖装置など車両に設置される採暖装置は、ヒータの近傍に設置されたサーミスタなどの温度検知素子の信号によって、MOS FET等の電流制御素子をON/OFF制御することによって目標温度に調節される構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年になり、この種の車両座席用採暖装置においても、安全性の向上のため、ヒータの断線故障、電流制御素子のOFF故障及び電流制御素子のON故障を検出し、ヒータ電流を強制的に遮断したりアラームを発したりする機能が必要とされてきた。更に、座席などに設置される採暖装置には電流制御素子のみを搭載し、他の部分は車体側の統合コントローラに含まれる構成が検討されている。
【0004】
それに対して、例えばSSR(ソリッドステートリレー)のような電流制御素子がOFFまたはON故障した場合の故障検出方法として、電流制御素子の出力電圧または電流の有無をON・OFF信号として検出する通電検知回路の検知信号と、電流制御素子のON・OFF制御信号とが非同期状態になっていることを判定して電流制御素子故障を検出する方式がある。この方式ではさらに、電流制御素子の故障とヒータの断線故障とを区別した検出、即ち、電流制御素子の故障を特定した検出ができるとされている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、ヒータ電流を制御する半導体素子(例えばパワーMOS FET)に負荷電流に比例した信号電流が出力される機能を内蔵したものがあり、コントローラ側のマイクロコンピュータのアナログ入力ポートにより、信号電流の電流値を読み取り、負荷に異常電流が流れていないか監視することで、電流制御素子の故障やヒータの断線などを検出する方法も実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4017183号公報
【特許文献2】特開平11−204236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献2のような従来の構成では、車両用の採暖装置のように電源が直流であると、ヒータの一端が電源ラインに接続され、ヒータと直列に接続された電流制御素子の他端がGNDに接続される場合は、電流制御素子が短絡故障であってもヒータが断線していても、電流制御素子の駆動信号がONの時の通電検知信号は共にほぼ0Vとなる。そのため、ヒータと電流制御素子のどちらが故障しているかを判断できないという問題があった。
【0008】
また、ヒータの断線故障、電流制御素子のOFF故障、電流制御素子のON故障といった異なった故障を検出するためには、複数本の信号線を使用する必要がある。そのため、電流制御素子のみを座席側の採暖装置に内蔵する場合、ヒータと車体側の統合コントローラ間を繋げるハーネスの本数が増え、ハーネスのスペースや重量がアップするという問題もあった。
【0009】
一方、負荷電流に比例した信号電流が出力される機能を内蔵した電流制御素子は、一般の電流制御素子比べかなり高価であり、尚且つ、負荷電流は電源電圧の変動に伴って変化するものである。そのため、負荷電流に比例した信号電流値も同様に変化することになり、コントローラ側のマイクロコンピュータのアナログ入力ポートにより取り込む場合は、電源電圧も同時に取り込み、異常の判定レベルを補正する必要がある。これにより、マイクロコンピュータの資源を大きく消費してしまう問題点があった。
【0010】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、装置の故障状態を確実に検出し、故障信号のためのハーネスの増加を最小限に抑えたコストパフォーマンスに優れた車両用採暖装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するべく、本発明の請求項1による車両用採暖装置は、少なくとも並列接続された2つのヒータH1及びヒータH2と、サブヒータHSと、過昇防止用サーモスタットTHと、電流制御素子Q1とが直列接続されている車両用採暖装置において、前記ヒータH1又はヒータH2何れかの断線故障時、前記ヒータH1及びヒータH2両方の断線故障時、前記電流制御素子Q1のOFF故障時、前記電流制御素子Q1のON故障時及び前記過昇防止用サーモスタットTHの開路時の各異常状態に応じて、一本の出力線上に出力される電圧と、前記電流制御素子Q1の駆動信号の組合せによって、前記異常状態の内容が判別されることを特徴とするものである。
又、請求項2記載の車両用採暖装置は、前記サブヒータHSと前記過昇防止用サーモスタットTHの接続点に、ダイオードD1を介して、前記ヒータH1及びヒータH2の電源電圧V0より低く、且つ、前記電圧V2とは異なる電圧V1が印加され、前記電源電圧V0の変動範囲内において、前記電圧1と前記電圧2の変動範囲が重複しないことを特徴とするものである。
又、請求項3記載の車両用採暖装置は、前記ヒータH1及びヒータH2と前記サブヒータHSとの接続点にトランジスタQ2のベースが接続され、前記サブヒータHSと前記サーモスタットTHの接続点に前記トランジスタQ2のエミッタが接続され、前記トランジスタQ2のコレクタには前記ヒータH1及びヒータH2の電源電圧V0より低い電圧V2が印加され、前記サブヒータHSの抵抗値が、前記ヒータH1及びH2が断線していない状態で前記電流制御素子Q1をONしたときに、前記トランジスタQ2がONし、尚且つ、前記ヒータH1又はヒータH2何れかが断線したときに、前記トランジスタQ2がOFFするように選定されていることを特徴とするものである。
又、請求項4記載の車両用採暖装置は、前記過昇防止用サーモスタットTHと前記電流制御素子Q1の接続点から出力される電圧S2、前記トランジスタQ2のコレクタに入力される電圧S4、及び、前記ダイオードD1に入力される電圧S3とがOR接続され、一本の出力線で出力されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、モニター回路の出力と電流制御素子の駆動信号との組合せにより、複数のヒータの内何れかの断線故障、複数のヒータ全ての断線故障、電流制御素子のOFF故障、電流制御素子のON故障について、全て異なる故障状態として検出することができる。また、出力信号のケーブルは1本で良いため、ハーネスのスペースや重量を最小限に抑えることができる。さらに、電源電圧が変動しても故障状態ごとの出力信号レベルが重複しないため、コントローラ側のマイクロコンピュータのアナログ入力ポートから電源電圧の信号を取り込む必要がなく、マイクロコンピュータの資源の消費は極めて少なく済ますことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図で、車両用採暖装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態は、本発明による車両用採暖装置を車両用座席に適用させたことを想定した例を示すものである。
【0015】
車両用採暖装置は、並列接続された2つのヒータH1及びヒータH2と、サブヒータHSと、過昇防止用サーモスタットTHと、電流制御素子Q1とからなり、前記ヒータH1及び/又はヒータH2の断線故障、前記電流制御素子Q1のOFF故障、前記電流制御素子Q1のON故障及び過昇防止用サーモスタットTHの開路の状態を、一本の出力線上に出力する。ヒータH1及びヒータH2、サブヒータHS、サーモスタットTH及び電流制御素子Q1は直列接続されている。
【0016】
並列接続されたヒータH1及びヒータH2と、サブヒータHSとの接続点にトランジスタQ2のベースを接続し、サブヒータHSとサーモスタットTHの接続点にトランジスタQ2のエミッタを接続し、トランジスタQ2のコレクタにはヒータの電源電圧V0を抵抗R3とR4で分圧した電圧V2を印加する。サブヒータHSの抵抗値は並列接続したヒータH1およびH2が断線していない状態で電流制御素子Q1をONした時に、トランジスタQ2がONし、尚且つヒータH1又はヒータH2の何れかが断線した時に、トランジスタQ2がOFFするように選定する。
【0017】
サブヒータHSとサーモスタットTHの接続点に、ダイオードD1を介して、ヒータの電源電圧V0を抵抗R1とR2で分圧した電圧V1を印加する。電圧V1は、前記電圧V2とは異なるものである。
【0018】
サーモスタットTHと電流制御素子Q1の接続点の電圧信号S2はダイオードD2を介し出力される。電圧V1(抵抗R1と抵抗2の接続点)の電圧信号S3はダイオードD3を介し出力される。電圧V2(抵抗R3と抵抗4の接続点)の電圧信号S4はダイオードD4を介し出力される。ダイオードD2,D3,D4の出力をOR接続することで、電圧信号S2,S3,S4のうち、最も高い電圧の信号が出力される電圧となる。この電圧信号をS1とする。
【0019】
車体側の統合コントローラにおいて、この電圧信号S1と、電流制御素子Q1をON−OFFする駆動信号の検出を行う。そして、電圧信号S1の電圧レベルと駆動信号のON−OFFの組合せによって、ヒータH1又はヒータH2何れかの断線故障時、ヒータH1及びヒータH2両方の断線故障時、電流制御素子Q1のOFF故障時、電流制御素子Q1のON故障時及びサーモスタットTHの開路時の状態が判断されることになる。
【0020】
このように構成される車両用採暖装置について、ヒータ、電流制御素子、及びサーモスタットの状態と駆動信号のON−OFFにより、電圧信号S1の電圧レベルは以下のようになる。
【0021】
(状態1:ヒータ及び電流制御素子Q1が正常、駆動信号がON)
ヒータH1,ヒータH2及び電流制御素子Q1が正常で、駆動信号がONの場合は、電流制御素子Q1はONするためS2の電圧は0Vとなる。同時に、S3はダイオードD1を介してグランドに接続されることから、S3の電圧は0Vとなる。また、トランジスタQ2もベースからエミッタに電流が流れるため、トランジスタQ2がONし、トランジスタQ2のコレクタ電圧は0Vとなり、S4の電圧も0Vとなる。結果的に出力S1は0Vとなる。
【0022】
(状態2:ヒータ及び電流制御素子Q1が正常、駆動信号がOFF)
ヒータおよび電流制御素子Q1が正常で、駆動回路の入力がOFFの場合は、電流制御素子Q1がOFFするためS2の電圧はヒータの印加電圧V0と等しくなる。同時に、S3はダイオードD1に電流が流れないため、S3の電圧はV1となる。また、トランジスタQ2もベースからエミッタに電流が流れないため、トランジスタQ2がOFFし、トランジスタQ2のコレクタS4の電圧はV4となり、S4の電圧もV2となる。S2,S3,S4はOR接続されているため、結果的に最も電圧の高いV0が出力S1となる。
【0023】
(状態3:電流制御素子Q1がON故障、駆動信号がON)
電流制御素子Q1がON故障した場合は、駆動回路の入力に拘わらず、電流制御素子Q1は常時ONのためS2の電圧は0Vとなる。同時に、S3もダイオードD1を介してグランドに接続されるため、S3の電圧は0Vとなる。また、トランジスタQ2もベースからエミッタに電流が流れるため、トランジスタQ2がONし、トランジスタQ2のコレクタ電圧は0Vとなり、S4の電圧も0Vとなる。結果的に出力S1は0Vとなる。
【0024】
(状態4:電流制御素子Q1がON故障、駆動信号がOFF)
前記状態3と同様、電流制御素子Q1がON故障した場合は、駆動回路の入力に拘わらず、電流制御素子Q1は常時ONのためS2の電圧は0Vとなる。同時に、S3はダイオードD1を介してグランドに接続されるため、S3の電圧は0Vとなる。また、トランジスタQ2もベースからエミッタに電流が流れるため、トランジスタQ2がONし、トランジスタQ2のコレクタ電圧は0Vとなり、S4の電圧も0Vとなる。結果的に出力S1は0Vとなる。
【0025】
(状態5:電流制御素子Q1がOFF故障、駆動信号がON)
電流制御素子Q1がOFF故障した場合は、駆動回路の入力に拘わらず、電流制御素子Q1は常にOFFのためS2の電圧はヒータの印加電圧V0と等しくなる。同時に、S3はダイオードD1に電流が流れないため、S3の電圧はV1となる。また、トランジスタQ2もベースからエミッタに電流が流れないため、トランジスタQ2がOFFし、トランジスタQ2のコレクタS4の電圧はV2となり、S4の電圧もV2となる。S2,S3,S4はOR接続されているため、結果的に最も電圧の高いV0がモニター回路の出力S1となる。
【0026】
(状態6:電流制御素子Q1がOFF故障、駆動信号がOFF)
前記状態5と同様、電流制御素子Q1がOFF故障した場合は、駆動回路の入力に拘わらず、電流制御素子Q1は常にOFFのためS2の電圧はヒータの印加電圧V0と等しくなる。同時に、S3はダイオードD1に電流が流れないため、S3の電圧はV1となる。また、トランジスタQ2もベースからエミッタに電流が流れないため、トランジスタQ2がOFFし、トランジスタQ2のコレクタS4の電圧はV2となり、S4の電圧もV2となる。S2,S3,S4はOR接続されているため、結果的に最も電圧の高いV0が出力S1となる。
【0027】
(状態7:ヒータ片側断線故障、駆動信号がON)
ヒータの片側が断線故障し、駆動回路の入力がONの場合は、電流制御素子Q1はONするためS2の電圧はV0となる。同時に、S3はダイオードD1を介してグランドに接続されるため、S3の電圧は0Vとなる。一方、ヒータH1とヒータH2の何れかが断線した時に、トランジスタQ2がOFFするようにサブヒータHSの抵抗値を選定してあることから、トランジスタQ2はOFFとなるため、トランジスタQ2のコレクタ電圧はV2となり、S4の電圧もV2となる。S2,S3,S4はOR接続されているため、結果的に最も電圧の高いV2がモニター回路の出力S1となる。
【0028】
(状態8:ヒータ片側断線故障、駆動信号がOFF)
ヒータの片側が断線故障し、駆動回路の入力がOFFの場合は、駆動回路の入力がOFFの場合は、電流制御素子Q1がOFFするためS2の電圧はヒータの印加電圧V0と等しくなる。同時に、S3はダイオードD1に電流が流れないため、S3の電圧はV1となる。一方、ヒータH1とヒータH2の何れかが断線した時に、トランジスタQ2がOFFするようにサブヒータHSの抵抗値を選定してあることから、トランジスタQ2はOFFとなるため、トランジスタQ2のコレクタ電圧はV2となり、S4の電圧もV2となる。S2,S3,S4はOR接続されているため、結果的に最も電圧の高いV0が出力S1となる。
【0029】
(状態9:ヒータ両側断線故障、駆動信号がON)
ヒータの両側が断線故障し、駆動回路の入力がONした場合は、電流制御素子Q1はONするものの、ベースの電圧が加わらないためS2の電圧は0Vとなる。同時に、S3はダイオードD1を介してグランドに接続されるため、S3の電圧は0Vとなる。一方、トランジスタQ2はベースの電圧が加わらないことからOFFとなるため、トランジスタQ2のコレクタ電圧はV2となり、S4の電圧もV2となる。S2,S3,S4はOR接続されているため、結果的に最も電圧の高いV2が出力S1となる。
【0030】
(状態10:ヒータ両側断線故障、駆動信号がOFF)
ヒータの両側が断線故障し、駆動回路の入力がOFFの場合は、電流制御素子Q1はOFFし、ベースの電圧が加わらなくなるため、S2の電圧はヒータの印加電圧V0ではなく、ダイオードD1を介して電圧V1と等しくなる。同時に、ダイオードD3の出力S3もV1となる。また、トランジスタQ2もベースからエミッタに電流が流れないため、トランジスタQ2がOFFし、トランジスタQ2のコレクタの電圧はV2となり、S4の電圧もV2となる。S2,S3,S4はOR接続されているため、結果的にもっとも電圧の高いV1がモニター回路の出力S1となる。
【0031】
(状態11:サーモスタットTH開路、駆動信号がON)
サーモスタットが動作して開路の状態となり、駆動回路の入力がONした場合は、電流制御素子Q1はONでもサーモスタットに電流が流れないため、S2の電圧は0Vとなる。一方、ダイオードD3の出力について、ダイオードD1に電流が流れないため、S3の電圧はV1となる。また、トランジスタQ2もベースからエミッタに電流が流れないため、トランジスタQ2はOFFし、トランジスタQ2のコレクタ電圧はV2となり、S4の電圧もV2となる。S2,S3,S4はOR接続されているため、結果的に最も電圧の高いV1が出力S1となる。
【0032】
(状態12:サーモスタットTH開路、駆動信号がOFF)
サーモスタットが動作して開路の状態となり、駆動回路の入力がOFFした場合は、電流制御素子Q1はOFFなのでサーモスタットに電流が流れないため、S2の電圧は0Vとなる。一方、S3はダイオードD1に電流が流れないため、S3の電圧はV1となる。また、トランジスタQ2もベースからエミッタに電流が流れないため、トランジスタQ2はOFFし、トランジスタQ2のコレクタ電圧はV2となり、S4の電圧もV2となる。S2,S3,S4はOR接続されているため、結果的に最も電圧の高いV1が出力S1となる。
【0033】
以上をまとめたものが表1となる。この表1の通り、モニター回路の出力S1と駆動信号のON−OFFの組合せによって、故障内容を判断することができる。
【0034】
【表1】

【0035】
図1においてヒータと直列接続された電流制御素子Q1は、ON抵抗が小さいパワーMOS FETの使用が望ましい。電圧V1及びV2はそれぞれ抵抗R1,R2およびR3,R4の抵抗値の選定によって設定されるが、電源電圧V0の変動範囲内において電圧V1と電圧V2の変動範囲が重複しないように設定する。
例えば、電圧V1をV1=1/2×V0、電圧V2をV2=1/4×V0と設定すると、一般的な車両における電源電圧V0の変動範囲(9〜16V)における電圧V1、電圧V2の変化範囲は、V1=4.5〜8V、V2=2.25〜4Vとなり重複させないようにできる。また、電流制御素子Q1と駆動回路とモニター回路C1を同一基板上に実装して、基板自体を熱収縮チューブ等の絶縁物で被覆し、ヒータH1又はH2を配置する基材上に設置すると、取り付けが容易となる。
【0036】
サブヒータHSとサーモスタットTHは熱的に結合される位置に配置されることが好ましい。また、サーモスタットTHの動作温度については、例えば電流制御素子Q1が制御不能になった場合において、ヒータが危険な温度になる手前で作動するように設定することが望ましい。
【0037】
サブヒータHSは、ヒータH1及びヒータH2としてコード状発熱体を使用する場合、このヒータH1及びヒータH2と同じコード状発熱体を適時な長さで使用すると製造上が容易となる。但し、これに限定されることは無く、一般的な公知のヒータを前記のようにサーモスタットTHの近傍に配置すれば良い。
【0038】
ヒータH1とヒータH2は、車両用座席に配置する場合、座席の座面側と背面側にそれぞれ配置するのが一般的であるが、このような態様に限定されない。例えば、座面を2分割し、一方にヒータH1、もう一方にH2を配置することも考えられる。また、ヒータH1、ヒータH2の他に、他のヒータを追加しても構わない。その場合、少なくとも2つのヒータが並列になっていれば良く、他のヒータは、ヒータH1又はヒータH2と並列に接続されても良いし、直列に接続されても良い。このような他のヒータを追加した場合、前記の「片側のヒータが断線」について、「一つのヒータが断線」と読み替えることができる。但し、他のヒータをヒータH1及びヒータH2と直列になるように接続すると、他のヒータのみが断線した場合でも全てのヒータが断線したものとして判断されることに留意する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上詳述したように本発明によれば、装置の故障状態を確実に検出し、故障信号のためのハーネスの増加を最小限に抑えた車両用採暖装置を得ることができる。この採暖装置は、自動車,自動二輪車,自転車,スノーモービル,各種輸送用車両,各種農耕用車両,各種土木建設用重機といった車両において使用することができ、座席、ステアリング、肘掛け、マット、仮眠用毛布などといった部品内に配置されて採暖に供されるものである。
【符号の説明】
【0040】
D1〜D4 ダイオード
H1,H2 ヒータ
HS サブヒータ
Q1 電流制御素子
Q2 トランジスタ
TH サーモスタット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも並列接続された2つのヒータH1及びヒータH2と、サブヒータHSと、過昇防止用サーモスタットTHと、電流制御素子Q1とが直列接続されている車両用採暖装置において、
前記ヒータH1又はヒータH2何れかの断線故障時、前記ヒータH1及びヒータH2両方の断線故障時、前記電流制御素子Q1のOFF故障時、前記電流制御素子Q1のON故障時及び前記過昇防止用サーモスタットTHの開路時の各異常状態に応じて、一本の出力線上に出力される電圧と、前記電流制御素子Q1の駆動信号の組合せによって、前記異常状態の内容が判別されることを特徴とする車両座席用採暖装置。
【請求項2】
前記サブヒータHSと前記過昇防止用サーモスタットTHの接続点に、ダイオードD1を介して、前記ヒータH1及びヒータH2の電源電圧V0より低く、且つ、前記電圧V2とは異なる電圧V1が印加され、
前記電源電圧V0の変動範囲内において、前記電圧V1と前記電圧V2の変動範囲が重複しないことを特徴とする請求項1記載の車両用採暖装置。
【請求項3】
前記ヒータH1及びヒータH2と前記サブヒータHSとの接続点にトランジスタQ2のベースが接続され、前記サブヒータHSと前記サーモスタットTHの接続点に前記トランジスタQ2のエミッタが接続され、前記トランジスタQ2のコレクタには前記ヒータH1及びヒータH2の電源電圧V0より低い電圧V2が印加され、
前記サブヒータHSの抵抗値が、前記ヒータH1及びH2が断線していない状態で前記電流制御素子Q1をONしたときに、前記トランジスタQ2がONし、尚且つ、前記ヒータH1又はヒータH2何れかが断線したときに、前記トランジスタQ2がOFFするように選定されていることを特徴とする請求項1記載の車両用採暖装置。
【請求項4】
前記過昇防止用サーモスタットTHと前記電流制御素子Q1の接続点から出力される電圧S2、前記トランジスタQ2のコレクタに入力される電圧S4、及び、前記ダイオードD1に入力される電圧S3とがOR接続され、一本の出力線で出力されることを特徴とする請求項3記載の車両用採暖装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−225045(P2011−225045A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94900(P2010−94900)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】