説明

車両用操舵装置

【課題】 ボールねじ機構及びモータが設けられた部分のコンパクト化を図る。
【解決手段】 軸長方向に摺動自在に設けられ且つボールねじ機構26を備えた操舵軸16と、該操舵軸16を支持するハウジング13と、該ハウジング13に回転軸41を操舵軸16と平行とするようにして取り付けられ且つ円筒状外周面を有するケーシング40を備えたモータ39とを有している。前記ハウジング13にはボールねじ機構26のボールナット30を囲繞する円筒状のボールナット囲繞部22が形成され、前記ボールナット30に設けられた従動歯車37に前記回転軸41に設けられた駆動歯車45が噛み合わされ、前記ボールナット30と前記ケーシング40とは従動歯車37を中にして反対側に配置されている。前記回転軸41の軸心C2と操舵軸16の軸心C1との距離Lが、前記ケーシング40の外周半径Rと前記ボールナット囲繞部22の外周半径rとの和より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置として好適な車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用操舵装置の1つである従来の電動パワーステアリング装置として特許文献1に示すものが知られている。
即ち、軸長方向を車体の左右方向に向けるようにして操舵軸が車体の下部に水平状に位置させられ、該操舵軸は車体の下部に設けられたハウジングに軸心回りには回転しない状態で軸長方向に摺動自在となされている。前記操舵軸の両端にタイロッド及びナックルアームを介して車体の下部に水平揺動自在となされた左右の車輪が連結されている。
【0003】
前記操舵軸は、ステアリングホイールが設けられたコラム軸に、動力伝達機構及びコラム軸の回転運動を操舵軸の軸長方向の運動に変換する運動方向変換機構を介して連結されている。前記操舵軸はボールねじ機構を有している。該ボールねじ機構は、操舵軸に運動方向変換機構と衝突・干渉しないようにして形成されたねじ溝を有するボールねじと、該ボールねじに嵌められており、前記ねじ溝に対向するねじ溝及び前記ねじ溝の両端を繋ぐボール戻り通路を有するボールナットと、前記ねじ溝によって形成される螺旋空間及びボール戻り通路に収納された多数のボールとを有している。
【0004】
前記ハウジングには前記ボールナットを囲繞する円筒状のボールナット囲繞部を有するボールねじ用ハウジングが形成され、前記ボールナット囲繞部に前記ボールナットが回転自在に支持されている。前記ボールねじ用ハウジングに、回転軸を操舵軸と平行とするようにして、正逆回転自在な操舵補助用のモータが取り付けられている。前記モータは円筒状外周面を有するケーシングを備えており、モータの回転軸には駆動歯車が取り付けられ、該駆動歯車がボールナットに設けられた従動歯車に噛み合わされている。前記ボールナットと前記モータのケーシングとは従動歯車を中にして反対側に配置されている。このような構成により、モータによりボールナットを回転させることによりボールねじ(操舵軸)を軸長方向に移動させて左右の車輪を操舵させることが出来る。
【0005】
前記モータは、前記コラム軸に装備されたトルクセンサ(図示略)の検出結果に基づくモータの制御により、ステアリングホイールに加えられる操舵トルクの方向に、該操舵トルクの大きさに対応する回転力を発すべく回転駆動されるようになされている。このような構成により、ステアリングホイールの動きに応じて、操舵力を補助するようにモータが操舵軸を作動する。
【特許文献1】特開2003−312496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の装置には以下の如き問題があった。
即ち、従来の装置においては、ボールナットとモータのケーシングとが従動歯車を中にして反対側に配置されていて、ボールナットとモータのケーシングとが操舵軸の軸長方向と直交する方向に並ばないようにしてコンパクト化(省スペース化)を図ってはいたが、モータの回転軸の軸心と操舵軸の軸心との距離が離れていて、モータのケーシングとハウジングとの間に大きな間隙が形成されたものであったため、ボールねじ機構及びモータが設けられた部分のコンパクト化を十分に達成したものでないという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータの回転軸の軸心と操舵軸の軸心との距離を、ケーシングの外周半径とボールナット囲繞部の外周半径との和より小さくすることにより、ボールねじ機構及びモータが設けられた部分のコンパクト化(省スペース化)を実現することが出来る車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用操舵装置は、軸長方向に摺動自在に設けられ且つボールねじ機構を備えた操舵軸と、該操舵軸を支持するハウジングと、該ハウジングに回転軸を操舵軸と平行とするようにして取り付けられ且つ円筒状外周面を有するケーシングを備えた正逆回転自在なモータとを有し、前記ハウジングには、ボールねじ機構のボールナットを囲繞する円筒状のボールナット囲繞部が形成され、前記ボールナットに設けられた従動歯車に前記回転軸に設けられた駆動歯車が噛み合わされ、前記ボールナットと前記ケーシングとは従動歯車を中にして反対側に配置されている車両用操舵装置において、前記モータの回転軸の軸心と操舵軸の軸心との距離が、前記ケーシングの外周半径と前記ボールナット囲繞部の外周半径との和より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボールナットとモータのケーシングとが従動歯車を中にして反対側に配置され、更に、モータの回転軸の軸心と操舵軸の軸心との距離が、ケーシングの外周半径とボールナット囲繞部の外周半径との和より小さくなされていて、従来の装置と相違して、モータのケーシングとハウジングとの間に大きな間隙が発生しないようにケーシングがハウジングに接近した構造であるので、換言すれば、ケーシングのハウジングに対向する部分がボールナット囲繞部の外周面より操舵軸に接近した構造であるので、ボールねじ機構及びモータが設けられた部分のコンパクト化(省スペース化)を実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は車両用操舵装置の全体構成を示す模式図である。自動車の車室内部(図示略)の前部に円筒状のコラムハウジング2が取り付けられている。該コラムハウジング2には同軸となるようにして上端にステアリングホイール4を有するコラム軸3が回転自在に支持されている。該コラム軸3の下部は、上側の自在継手8、中間軸7及び下側の自在継手8を介してピニオン軸11に接続されている。
【0011】
軸長方向を車体の左右方向に向けるようにして操舵軸16が車体前部の下部に水平状に位置させられ、該操舵軸16は車体の下部に設けられたハウジング13に軸心回りには回転しない状態で軸長方向に摺動自在となされている。
【0012】
前記ハウジング13は、軸長方向の一方側に偏った位置にピニオンハウジング14を有しており、該ピニオンハウジング14に前記ピニオン軸11が回転自在に支持されている。前記ピニオン軸11のピニオンハウジング14内の端部にはピニオン(図示略)が設けられ、該ピニオンが操舵軸16に適長に亘って設けられたラック(図示略)と噛み合わされている。このような構成により、ピニオン軸11の回転により操舵軸16が軸長方向に摺動するようになされている。前記操舵軸16の両端にタイロッド17及びナックルアーム18を介して車体に水平揺動自在となされた左右の車輪19が連結されている。前記ステアリングホイール4を回転させることにより、操舵軸16を軸長方向に摺動させて車輪19の操舵が行われる。
【0013】
図2に示すごとく、ハウジング13の軸長方向の端部(ピニオンハウジング14から遠い方の端部)に後述のボールねじ機構26を収容するためのボールねじ用ハウジング21が設けられ、該ボールねじ用ハウジング21は、ボールナット30を囲繞するボールナット囲繞部22と、従動歯車37及び駆動歯車45を囲繞する歯車囲繞部23とを有している。
【0014】
前記ボールねじ機構26は、ボールねじ用ハウジング21に対向する操舵軸16に設けられたねじ溝28を有するボールねじ27を備えている。該ボールねじ27にボールナット30が嵌められており、該ボールナット30は2つの軸受35を介してボールねじ用ハウジング21に回転自在に支持されている。前記ボールナット30は、前記ねじ溝28に対向するねじ溝31及び前記ねじ溝28、31の両端を繋ぐボール戻り通路32を有している。前記ねじ溝28、31によって形成される螺旋空間及びボール戻り通路32に多数のボール33が収納されている。なお、ボールナット囲繞部22の内径がボールナット30の回転を阻止しない大きさとなされていることは云うまでもない。また、ボールナット囲繞部22の外周半径は可及的に短くなされている。
【0015】
前記ボールナット30に従動歯車37が外嵌されている。前記歯車囲繞部23に軸心を操舵軸16の軸心C1と平行とした貫通孔38が形成され、該貫通孔38の外側縁部に操舵補助用のモータ39がボルト(図示略)により取り付けられている。モータ39は、円筒状外周面を有するケーシング40及び正逆回転自在な回転軸41を有している。該回転軸41の軸心C2は操舵軸16の軸心C1と平行となされている。前記回転軸41に同心となるようにして歯車軸42がスプライン連結され、該歯車軸42は2つの軸受43を介して貫通孔38の内周面に回転自在に支持されている。前記歯車軸42の他端には、従動歯車37に噛み合う駆動歯車45が外嵌されている。なお、歯車軸42と回転軸41とは一体のものであってもよい。
【0016】
前記モータ39の回転軸41の軸心C2と操舵軸16の軸心C1との距離Lが、ケーシング40の外周半径Rとボールナット囲繞部22の外周半径rとの和より小さくなされている。このような構成とすることにより、従来の装置と相違して、モータ39のケーシング40とハウジング13との間に大きな間隙が発生しないようになされて、ケーシング40がハウジング13に接近した構造となり、換言すれば、ケーシング40のハウジング13に対向する部分がボールナット囲繞部22の外周面より操舵軸16に接近した構造となるので、ボールねじ機構26及びモータ39が設けられた部分のコンパクト化(省スペース化)を実現することが出来る。距離Lは短い程コンパクト化の効果は大きい。なお、本実施の形態のようにケーシング40の円筒状外周面に段差が存在する場合は、前記外周半径Rは最大の外周半径を指す。他方、ケーシング40の円筒状外周面に段差が存在しない場合は、前記外周半径Rは、当然にケーシング40の外周半径を指す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態を示す全体構成を示す模式図である。
【図2】図1のA部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0018】
13 ハウジング
16 操舵軸
21 ボールねじ用ハウジング
22 ボールナット囲繞部
23 歯車囲繞部
26 ボールねじ機構
27 ボールねじ
30 ボールナット
33 ボール
37 従動歯車
39 モータ
40 ケーシング
41 回転軸
42 歯車軸
45 駆動歯車
L モータ39の回転軸41の軸心C2と操舵軸16の軸心C1との距離
R ケーシング40の外周半径
r ボールナット囲繞部22の外周半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸長方向に摺動自在に設けられ且つボールねじ機構を備えた操舵軸と、該操舵軸を支持するハウジングと、該ハウジングに回転軸を操舵軸と平行とするようにして取り付けられ且つ円筒状外周面を有するケーシングを備えた正逆回転自在なモータとを有し、前記ハウジングには、ボールねじ機構のボールナットを囲繞する円筒状のボールナット囲繞部が形成され、前記ボールナットに設けられた従動歯車に前記回転軸に設けられた駆動歯車が噛み合わされ、前記ボールナットと前記ケーシングとは従動歯車を中にして反対側に配置されている車両用操舵装置において、前記モータの回転軸の軸心と操舵軸の軸心との距離が、前記ケーシングの外周半径と前記ボールナット囲繞部の外周半径との和より小さいことを特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−218980(P2006−218980A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33552(P2005−33552)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】