説明

車両用木質床材

【課題】 防水性に優れ、少ない品揃えで多品種の荷台に対応できる車両用木質床材を提供することを目的とする。
【解決手段】 複数枚の単位板を予め接合一体化した一枚の中央木質床板と、この中央木質床板の両側部に配される左右一対の側部木質床板との組み合わせからなり、中央木質床板の長手方向の両端面及び側部木質床板の長手方向の片側端面に雌実を設けると共に、前記雌実同士をやとい実で接合一体化した接合目地部をシーリング処理してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の荷物運搬車両の荷台床として好適な車両用木質床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラック等の車両の荷台に用いる木質床材としては、製材品や合板よりなる床材が広く採用されており、その構造としては、図5に示すように、例えば小幅で長尺の製材品を多数枚、横方向に並べて互いに対向する長手方向の側端面を接合一体化したものや、図6に示すように予め複数枚の合板をスカーフジョイント等で接合し荷台の大きさに合せた1枚の合板よりなるものが知られている。
【0003】
前者の木質床材によれば、荷台上に小幅で長尺の床板片を多数枚組み合せて取り付けるため、著しい手間と労力がかかると共に、節や腐れ等の欠点のない良質の製材品を確保することが年々難しくなり量産に適さないという問題点がある。
【0004】
一方、後者の場合は、一枚物の合板で形成されているので継目が目立たず、工場で製造したものをそのまま荷台に取り付けることができるという利点はあるが、荷台に取り付ける際、木質床材の周辺部に荷台の外周フレームに取り付けるための孔明け加工を施す時に、加工不良が生じると床材全体が不良品となる虞れがある。また、メーカーや車種によって荷台の大きさのバリエーションが非常に多いため、多品種少量生産となり生産効率が悪く、車種毎に在庫を持つことによる保管場所の確保やコストアップの問題があった。
【0005】
これらの問題点を解決するものとして、図7(特許文献1)に示すように、一枚の中央木質床板11とこの両側部に配される左右一対の側部木質床板12との組み合せからなる車両用木質床材Aが提案されている。3枚の合板の組み合せなので手間や労力が軽減され、少量の品揃えの床板を組み合せることにより多品種の荷台に対応できる。
【0006】
また、図8の断面図に示すように、中央木質床板11の長手両側端面に雌実13が形成されている一方、側部木質床板12には長手方向の何れか一方の側端面に前記中央木質床板11の雌実13に嵌合可能な雄実14が形成されている。荷台の大きさに合せて側部木質床板12を所定寸法に切断加工し、床板同士の実部を荷台上で接合し、荷台の外周フレームに取り付けるための孔あけ加工を行う。この時に孔あけ加工に失敗しても側部木質床板12を交換するだけなので、全体を交換するという無駄を省くことができる。
【特許文献1】特開2000−202812
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この構成では実嵌合部を有するので、トラックが雨天時時に走行する場合は、タイヤが水を巻き上げて荷台下部を濡らすと共に、中央木質床板と側部木質床板の実嵌合部(継目)から荷台に水が浸入し荷台に積んだ荷物を濡らすという問題点は解決できなかった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、防水性に優れ、少ない品揃えで多品種の荷台に対応できる車両用木質床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の車両用木質床材は、中央木質床板と、この中央木質床板の両側部に配される左右一対の側部木質床板との組み合わせからなり、前記中央木質床板の長手方向の両端面及び前記側部木質床板の長手方向の片側端面に相互に嵌合する実部を設けると共に、前記実部同士を接合一体化した接合目地部をシーリング処理してなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の中央木質床板の長手方向の両端面及び側部木質床板の長手方向の片側端面に雌実を設けると共に、前記雌実同士を対向させやとい実で接合一体化した接合目地部をシーリング処理してなることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の中央木質床板が複数枚の単位板を予め接合一体化したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、中央木質床板の長手方向の両端面及び前記側部木質床板の長手方向の片側端面に実部を設けると共に、前記実部同士を接合一体化した接合目地部をシーリング処理しているので、トラックが雨天走行時にタイヤが水を巻き上げて、荷台下部を濡らし中央木質床材と側部木質床材の接合目地部から荷台への水の浸入を防止する。また、中央木質床板と側部木質床板との組み合わせによって、多くのメーカーや車種による多彩なバリエーションにも対応できる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の中央木質床板の長手方向の両端面及び側部木質床板の長手方向の片側端面に雌実を設けると共に、前記雌実同士を対向させやとい実で接合一体化した接合目地部をシーリング処理しているので、床板から雄実のような凸部が無くなり、運搬や取扱い時に破損する危険性が減少する。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の中央木質床板が複数枚の単位板を予め接合一体化したものであるので、単位板間の継目から水が浸入することもなく、例えば、荷物の積み込みのため耐摩耗性が要求される荷台後部に配置する単位板は硬い材質を用いる等、使用状況に応じて部位毎に単位板の性能を変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。尚、本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0016】
初めに本発明の第1実施形態にかかる車両用木質床材Aについて、図1及び図2を用いて説明する。車両用木質床材Aは、中央木質床板1及び側部木質床板2から構成される。
【0017】
中央木質床板1は、車両の荷台の中央部分に配置され、市販されている一般的な寸法の合板を単位板(1a、1b、1c‥‥)として、複数枚の単位板を概略の荷台寸法に応じて所望の寸法になるように必要枚数を接合一体化する。接合の方法としては、一般的に使用されるスカーフジョイント(プレーンスカーフ、Vスカーフ等)が用いられ、接合後は強度上も外観上も1枚の合板として使用できる。図1では、3枚の単位板(1a、1b、1c)を使用しているが、所望の寸法によって適宜枚数を変更できる。
【0018】
単位板(1a、1b、1c‥‥)は、合板、集成材、LVL、LVB等の木質板から形成したもので、車両の荷台として使用するために必要な強度を考えると、一般的には比重0.75以上が必要となる。しかし、本発明においては使用される樹種としては特に限定されず、従来より車両用に好適材として使用されたアピトン等の南洋材だけでなく、地球環境に優しい植林木(ユーカリ、カラマツ、アカシアマンギューム等)を広く使用することができるようになる。
【0019】
一般的に植林木は成長が早い反面、材質が柔らかく傷付き易いという欠点があるが、荷物の積み込みのため耐摩耗性の要求される荷台の後部に配置する単位板(図1では1cに該当)だけを、特に硬い材質を使用することにより対応できるので、単位板を接合一体化する本発明の方法では、従来使用の難しかった植林木も容易に利用することができる。
【0020】
一方、側部木質床板2は中央木質床板1の両側部に配設されるもので、中央木質床板1の幅よりも狭くなるように所望の幅寸法に切断して形成する。1種類の中央木質床板1に対して複数種の側部木質床板2を組み合せたセットを、小型から大型までの荷台を網羅できる程度に複数セット品揃えすることにより、多メーカー多品種のトラックの荷台のバリエーションにも対応できる。
【0021】
中央木質床板1と側部木質床板2の接合については図2に示すように。中央木質床板1の長手方向両側部に雌実3を設けると共に、側部木質床板2の長手方向片側端面に前記雌実3と嵌合する雄実4を設ける。なお、これに限定される訳ではなく、中央木質床板側に雌実を側部木質床板側に雄実を設けても良い。
【0022】
前記中央木質床板1と側部木質床板2をトラックの荷台に取り付ける方法としては、図示は省略するが、車両のフレーム上に根太を組み、根太上に中央木質床板1と側部木質床板2を載置させると共に、各々の床板同士の実部を嵌合させ、側部木質床板2にボルト孔を設け根太にボルトで固定し荷台に床板を施工する。
【0023】
その後、雄実4と雌実3から形成される接合目地部5にシーリング材6を充填して、目地部の防水処理を行う。シーリング材6としては木質材の目地処理として通常使用されるものであれば特に特定はしないが、ウレタン系やシリコン系のシーリング材が用いられる。接合目地部5の幅は広すぎると劣化し易く、狭すぎると床板の動きに追従できず切れやすくなるため、具体的には1〜数mmが好ましい。
【0024】
次に第2実施形態にかかる車両用木質床材Aについて、図1、図3及び図4を用いて説明する。この構成では中央木質床板1の長手方向両側部には前記同様に雌実3を設けると共に、側部木質床板2の長手方向片側端面には雄実ではなく雌実3を設け、やとい実7によって前記中央木質床板1と側部木質床板2とを接合する。やとい実4としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、オレフィン等の樹脂成形体が使用される。
【0025】
接合方法を雌雄実からやとい実に変更することで、床板としては雌実(溝)のみが設けられるので、雄実(突出部)が無くなり運搬や取扱い時の実の破損が防止できる。また、やとい実は樹脂製のため防水性に優れると共に、シーリング処理をする際にシーリング材は木質床材部分にのみ接着し、やとい実部分は接着し難いため、三面接着が防止され、目地切れし難くなる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の防水性に優れる車両用木質床材は、少品種の床板で多品種の荷台のバリエーションに対応できるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。

【図面の簡単な説明】
【0027】

【図1】本発明の車両用木質床材の実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明の車両用木質床材の第1実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の車両用木質床材の第2実施形態を示す断面図である。
【図4】図3の接合部分を示す拡大断面図である。
【図5】従来の車両用木質床材の平面図である。
【図6】従来の別の車両用木質床材の平面図である。
【図7】従来のさらに別の車両用木質床材の平面図である。
【図8】図7の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
A 車両用木質床材
1 中央木質床板
2 側部木質床板
3 雌実
4 雄実
5 接合目地部
6 シーリング材
7 やとい実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央木質床板と、この中央木質床板の両側部に配される左右一対の側部木質床板との組み合わせからなり、前記中央木質床板の長手方向の両端面及び前記側部木質床板の長手方向の片側端面に相互に嵌合する実部を設けると共に、前記実部同士を接合一体化した接合目地部をシーリング処理してなることを特徴とする車両用木質床材。
【請求項2】
請求項1に記載の中央木質床板の長手方向の両端面及び側部木質床板の長手方向の片側端面に雌実を設けると共に、前記雌実同士を対向させやとい実で接合一体化した接合目地部をシーリング処理してなることを特徴とする車両用木質床材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の中央木質床板が複数枚の単位板を予め接合一体化したものであることを特徴とする車両用木質床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−72992(P2009−72992A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243367(P2007−243367)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】