説明

車両用楽音発生装置及び楽音発生方法

【課題】楽曲の音量などのパラメータ変化によらずに車両状態に応じて変化する楽曲を再生できる車両用楽音発生装置を提供する。
【解決手段】楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、楽曲データの所定の音楽要素パラメータに基づいて、複数の再生区間を決定する再生位置決定手段と、再生区間の所定の音楽要素パラメータを分析して、再生区間それぞれの音楽要素パラメータを楽曲データに関係付けて楽曲データ記憶手段に記憶する分析手段と、再生ルールデータ記憶手段を参照して、車両状態検知手段により検知された車両の運転状態に関係付けられた音楽要素パラメータを求め、該求めた音楽要素パラメータの条件を満たす楽曲データの再生区間を指定し、楽曲再生手段に該再生区間を再生させる制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用楽音発生装置及び楽音発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両が乗員に対して発生する音には、エンジンなどの車両の機構部が発生する機械音、車両がある一定以上のスピードを超えた場合の警報音、右左折を行う場合のウインカー音、衝突する恐れのある物が接近してきた場合の警報音等がある。また、乗員が車両内で音楽CDやラジオ放送を聞くためのオーディオ装置が一般的に利用されている。
【0003】
しかしながら、既存のオーディオ装置による音楽CD(Compact Disk)の再生等では、車両の状態や乗員の運転操作とは無関係に楽曲が流れるため、家庭で鑑賞する場合と何ら変わりなく、車両ならではの楽曲を楽しむものではなかった。
つまり、車両状態全般を音で表現する総合的なシステムはこれまでに無く、運転者は視覚と車両の機構部が発生する機械音と警報音とに基づいて車両を運転している。
【0004】
このような状況の中、自動車の運転状態に応じて音を制御する従来技術として、エンジン回転数によってオーディオ装置の音量等を制御する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−309891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術によっても、エンジン回転数に応じてオーディオ装置の音量等が変化するだけであるため車両状態に応じて全く異なる楽曲を発生させることは困難であり、乗員が車両状態に応じて楽しめる楽曲を提供することはできないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車両運転状態に応じて再生するべき楽曲データを選択することにより運転状態の変化に応じて再生する楽曲を変化させることができる車両用楽音発生装置及び楽音発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、前記楽曲データの所定の音楽要素パラメータに基づいて、前記楽曲データの複数の再生区間を決定する再生位置決定手段と、前記再生区間の所定の音楽要素パラメータを分析して、前記再生区間それぞれの音楽要素パラメータを前記楽曲データに関係付けて前記楽曲データ記憶手段に記憶する分析手段と、車両の運転状態と該運転状態に応じて再生するべき楽曲の音楽要素パラメータが関係付けられて記憶された再生ルールデータ記憶手段と、前記楽曲データ記憶手段に記憶された前記楽曲データに基づいて楽曲を再生する楽曲再生手段と、車両の運転状態を検知する車両状態検知手段と、前記再生ルールデータ記憶手段を参照して、前記車両状態検知手段により検知された前記車両の運転状態に関係付けられた前記音楽要素パラメータを求め、該求めた音楽要素パラメータの条件を満たす前記楽曲データの再生区間を指定し、前記楽曲再生手段に該再生区間を再生させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、前記車両の環境状態を検知する環境状態検知手段を更に備え、前記制御手段は、前記環境状態検知手段により検知した前記車両の環境状態に応じて前記楽曲再生手段に再生させる楽曲データを前記楽曲データ記憶手段から選択することを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記音楽要素パラメータは、ピッチ、音量、テンポ及び音色のいずれかあるいはそれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0010】
本発明は、楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、車両の運転状態と該運転状態に応じて再生するべき楽曲の音楽要素パラメータが関係付けられて記憶された再生ルールデータ記憶手段と、前記楽曲データ記憶手段に記憶された前記楽曲データに基づいて楽曲を再生する楽曲再生手段と、車両の運転状態を検知する車両状態検知手段とを備えた車両用楽音発生装置における楽音発生方法であって、前記楽曲データの所定の音楽要素パラメータに基づいて、前記楽曲データの複数の再生区間を決定する再生位置決定ステップと、前記再生区間の所定の音楽要素パラメータを分析して、前記再生区間それぞれの音楽要素パラメータを前記楽曲データに関係付けて前記楽曲データ記憶手段に記憶する分析ステップと、前記再生ルールデータ記憶手段を参照して、前記車両状態検知手段により検知された前記車両の運転状態に関係付けられた前記音楽要素パラメータを求め、該求めた音楽要素パラメータの条件を満たす前記楽曲データの再生区間を指定し、前記楽曲再生手段に該再生区間を再生させる制御ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、楽曲データの音楽要素パラメータを分析して、楽曲データを複数のフレーズ(再生区間)に分割するとともに、分割したフレーズの音楽要素パラメータを分析して、各フレーズデータの特徴を示す情報として記憶しておき、検知された車両の運転状態に応じて適切なフレーズを選択して再生するようにしたため、車両運転状態に応じて楽曲を変化させる自律再生を行うことができる。また、予め再生データを作成したり用意する必要がなく、既に所有している楽曲データを使用して、車両の運転状態に応じた楽音を自律的に再生することが可能になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態による車両用楽音発生装置を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、楽音発生装置の処理動作を統括して制御する制御部である。符号2は、使用者が楽音発生装置の設定操作や新たな楽曲データの入手操作等を行う操作部であり、必要に応じて、画面の表示内容を見ながら操作を行うために表示装置を備えている。符号3は、楽曲データに基づいて楽曲を再生する楽曲再生部であり、再生した楽曲を音としてスピーカ4から発音させる。楽曲再生部3及びスピーカ4は、車両に備えているカーオーディオ装置を利用するようにしてもよい。符号5は、楽曲データを取得するために、移動通信を用いて楽曲配信サーバ等に接続して情報通信を行う通信部である。符号6は、音楽CDに記録されている楽曲データを読み取るCD読取装置である。CD読取装置6は、車両に備えているカーオーディオ装置を利用するようにしてもよい。符号7は、通信部5及びCD読取装置6を制御部1に接続するためのインタフェース(以下、I/Fと称する)である。
【0013】
符号8は、楽曲再生部3において再生するべき楽曲データが記憶される楽曲データベースである。符号10は、車両の運転状態や周囲の環境状況に応じて、再生するべきフレーズを選択する再生ルール情報が予め記憶されている再生ルールベースである。ここでいうフレーズとは、1つの楽曲データを短い区間に分割することにより得られる旋律の自然な一区切りの楽音データである。符号11は、車両の運転状態(車速、エンジン回転数、アクセル開度、ブレーキ操作状態、シフト状態など)を検知する車両状態検知部であり、例えばセンサなどから成る。車両状態検知部11は、新たにセンサを設けるのではなく、車両を制御するために、車両に予め備えられている各センサの出力を入力するようにしてもよい。符号12は、車両の環境状態(車両位置、時間、天気など)を検知する環境状態検知部であり、例えば、GPS(Global Positioning System)、タイマ、センサなどから成る。
【0014】
ここで、以下の説明において用いる用語について定義する。「ピッチ」とは、音高のことであり、例えばピッチが高い・低いと表現する。「音量」とは、音の大きさ(強さ)のことであり、例えば、音量が大きい・小さいと表現する。「テンポ」とは、演奏速度のことであり、例えば、テンポが速い・遅いと表現する。「音色」とは、音の特徴を示すものであり、例えば、音のスペクトル分析の結果、所定の周波数帯域に音声信号がどの程度存在するかにより示されるものとする。
【0015】
これら「ピッチ」、「音量」、「テンポ」及び「音色」は、音楽要素パラメータと呼び、各パラメータは、レベル1〜3で表現する。レベル1は、パラメータの値が大きいこと意味し、レベル3はパラメータの値が小さいことを意味する。レベル2は、レベル1とレベル3の中間値を意味する。例えば、ピッチであれば、第1のしきい値を超える音高をレベル1、第2のしきい値より小さい音高をレベル3、第1のしきい値と第2のしきい値との間の音高をレベル2とする。
【0016】
次に、図3を参照して、図1に示す楽曲データベース8のテーブル構造を説明する。楽曲データベース8は、楽曲データを記憶する楽曲データテーブル81と、各楽曲データ毎に、複数のフレーズの特徴(ピッチ、音量、テンポ、音色)が定義されたフレーズ特徴テーブル82と、各楽曲データ毎に、複数のフレーズの開始・終了位置が定義されたフレーズ位置テーブル83とからなる。楽曲データテーブル81は、楽曲再生部3において再生することが可能なフォーマットの楽曲データに対して楽曲識別名が関係付けられるとともに、楽曲データ全体の特徴を4つの音楽要素パラメータで定義されている。例えば、「M01」という楽曲識別名が付与された楽曲データは、楽曲の先頭から終わりまでの平均ピッチがレベル1、平均音量がレベル3、平均テンポがレベル2、平均音色がレベル3であることを示している。すなわち、「M01」という楽曲は、全体的に低い音高で、標準的なテンポであるが、音量が大きいという特徴を有する楽曲であることを示している。また、音色レベルは、所定の周波数帯域に存在する音声信号の量によってレベル分けされるものであるが、これによって演奏されている楽器の種類が間接的に示されるものである。
【0017】
フレーズ特徴テーブル82は、「M01」という楽曲が、A〜Eの5つのフレーズに分割され、それぞれのフレーズの音楽要素パラメータが定義されている。例えば、フレーズAは、フレーズA内の平均ピッチがレベル2、平均音量がレベル3、平均テンポがレベル3、平均音色がレベル3であることを示している。このフレーズ特徴テーブル82は、図3に図示していないが、楽曲「M02」、「M03」についても同様に定義されるテーブルが関係付けられている。
【0018】
フレーズ位置テーブル83は、フレーズA〜Eのそれぞれについて、楽曲「M01」上の位置が、開始位置と終了位置で定義される。例えば、フレーズAは、楽曲の初めからマーク1まであり、フレーズEは、マーク4から楽曲の終わりまでであることを示している。楽曲データ上にマークを付与するマーキング動作については後述する。
【0019】
次に、図4及び図5を参照して、図1に示す再生ルールベース10のテーブル構造を説明する。再生ルールベース10は、楽曲選択ルールテーブル101とフレーズ選択ルールテーブル102とから構成する。初めに、図4を参照して、楽曲選択ルールテーブル101から説明する。楽曲選択ルールテーブル101は、場所を特定する情報毎(海周辺、山間部、市街地等)に、天気情報(はれ、くもり、あめ)と時刻情報(午前、午後)とで特定される環境状態に対して再生するべき楽曲の特徴を示す音楽要素パラメータが予め定義されている。例えば、車両位置が海周辺であり、時刻が午前であり、天気がはれの場合、ピッチがレベル2、音量がレベル2、テンポがレベル3、音色がレベル2である特徴を有する楽曲を選択して再生するべきであることが定義されている。
【0020】
図5に示すフレーズ選択ルールテーブル102は、車両の運転状態毎(アイドリング、発進、等速巡航、加速、減速、・・・、停止)に、再生するべきフレーズの特徴を示す音楽要素パラメータが予め定義されている。ここで、各運転状態とは、車両の速度やエンジン回転数、各種操作の有無等により所定のルールにより決められるものとする。例えば、運転状態がアイドリングある場合、ピッチがレベル1、音量がレベル2、テンポがレベル1、音色がレベル2である特徴を有するフレーズを選択して再生するべきであることが定義されている。
【0021】
次に、図1に示す車両用楽音発生装置の動作を説明する。初めに、新たな楽曲データを入手する動作を説明する。使用者は、操作部2を使用して、新たな楽曲データの取り込みを行う指示の操作を行う。そして、使用者は、CD読取装置6に音楽用CDを挿入して、楽曲データの取り込みを指示する操作を行う。CD読取装置6は、挿入されたCDに記録されている楽曲データを読み込み、I/F7を介して制御部1へ出力する。これを受けて、制御部1は、CD読取装置6から出力される楽曲データを分析して、楽曲全体の音楽要素パラメータ(ピッチ、音量、テンポ、音色)を求め、この楽曲データに対して一意となる楽曲識別名を付与して、楽曲データベース8の楽曲データテーブル81に楽曲データとともに書き込む。楽曲識別名を挿入されたCDから読み取ることができる場合は、この読み取った楽曲識別名を使用するようにしてもよい。
【0022】
また、楽曲データを通信を用いて楽曲配信サーバから入手する場合、使用者は、操作部2を使用して、新たな楽曲データを配信サーバから取り込む指示の操作を行う。これを受けて、通信部5は、所定の楽曲配信サーバに接続し、所望の楽曲データをダウンロードする。通信部5は、このダウンロードした楽曲データをI/F7を介して制御部1へ出力する。これを受けて、制御部1は、通信部5から出力される楽曲データを分析して、楽曲全体の音楽要素パラメータ(ピッチ、音量、テンポ、音色)を求め、この楽曲データに予め付与されている楽曲識別名を使用して、楽曲データベース8の楽曲データテーブル81に楽曲データとともに書き込む。これらの動作によって、楽曲データベース8には新たな楽曲データが記憶されたことになる。楽曲データテーブル81の楽曲データフィールドに記憶される楽曲データのヘッダ部分には、楽曲データフォーマット、楽曲ジャンルを識別可能な情報が含まれる。
【0023】
次に、図2を参照して、図1に示す車両用楽音発生装置において、楽曲データに対してマークを付与する動作と運転状態に応じたフレーズの再生を行う動作を説明する。まず、楽音発生装置の電源がONになると、制御部1は、楽曲データベース8を参照して、新たな楽曲データが入手されたか(マークが付与されていない楽曲データが存在するか)を判定し(ステップS1)、新たな楽曲データが入手されていれば、マーキング処理を行う(ステップS2)。新しい楽曲データが入手されていない場合は、ステップS4へ移行する。マーキング処理を行う場合、制御部1は、楽曲データテーブル81から楽曲データを読み出し、この楽曲データに含まれる楽曲ジャンル情報を抽出する。
【0024】
次に、制御部1は、新たに入手された楽曲データを楽曲データベース8から読み出し、内部に保持する。そして、制御部1は、読み出した楽曲データの4つの音楽要素パラメータに基づいて、マーキングを行う。図6は、楽曲データベース8から読み出した楽曲データの一例を示す図である。制御部1は、ピッチ、音量、テンポ及び音色の4つの音楽要素パラメータを分析して、予め決められたしきい値によって、マーク位置を求める。例えば、図6では、ピッチの変化率や音量の変化率等を予め決められたしきい値と比較することで、マーク1〜4の4つのマーク位置(5つのフレーズ)が求められる。また、マーキングを行う際に、4つの音楽要素のパラメータそれぞれに重み付けをしておき、この重み付けに基づいて、マーキング位置の決定を行うようにしてもよい。例えば、図6に示す各マーク1〜4について、マーク1は、音量に重みを付けてしきい値との比較を行ったり、マーク4はテンポに重みを付けてしきい値との比較を行なうことにより、予め楽曲ジャンル別に想定されているマーク位置の精度を向上させることができる。こうすることで、例えば、静かなフレーズ、盛り上がりのあるフレーズ、特定の楽器が入ったフレーズ等の特徴のあるフレーズに分割される。
【0025】
次に、制御部1は、求めたマークの位置をフレーズ位置テーブル83に記憶する。マーク情報は、例えば、先頭からの再生時間で特定される位置情報である。これにより、図3に示すフレーズ位置テーブル83内に各フレーズの境界を示すマーク位置が記憶されたことになる。続いて、制御部1は、複数のフレーズに分割した後、それぞれのフレーズについて、4つの音楽要素パラメータを分析し、得られた各レベル値をフレーズ特徴テーブル82に記憶する(ステップS3)。これにより、図3に示すフレーズ特徴テーブル82内に各フレーズの特徴を示す音楽要素パラメータが記憶されたことになる。図2に示すステップS2、S3の処理(マーキング処理)は、以下に説明する楽音再生処理と必ずしも同時に行う必要はなく、楽曲再生部3において楽曲の再生が行われていないタイミングで実行すればよい。
【0026】
一方、エンジンがオンになると、制御部1は、環境状態検知部12が検知した車両の環境状態(車両位置、時間、天気など)を読み込み、検知結果をチェックする(ステップS4)。そして、制御部1はステップS4におけるチェック動作が最初の環境状態のチェックであるか否かを判定する(ステップS5)。最初のチェックでなかった場合(ステップS5;No)、前回のチェックから環境状態に変化があり、楽曲データの変更が必要であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0027】
最初のチェックであった場合(ステップS5;Yes)、または前回のチェックから車両の環境状態に変化があり、楽曲データの変更が必要である場合(ステップS6;Yes)、制御部1は検知された車両の環境状態に応じて最適な楽曲データを楽曲データベース8から選択して楽曲再生部3へ設定し(ステップS7)、その後ステップS8の処理へ移行する。最適な楽曲データの選択は、まず図4に示す楽曲選択ルールテーブル101を参照して、検知した車両位置、天気、時刻の情報に合致する楽曲の特徴を示す4つの音楽要素パラメータを読み出す。そして、楽曲データテーブル81を参照して、楽曲選択ルールテーブル101から読み出した音楽要素パラメータと同一の音楽要素パラメータが記憶されている、または最も近い値の音楽要素パラメータが記憶されている楽曲を選択する。これにより、車両の環境状態に応じた最適な楽曲を選択することができる。
【0028】
一方、車両の環境状態をチェックした結果、楽曲データの変更の必要がなかった場合(ステップS6;No)、ステップS8の処理に移行する。
【0029】
次に、制御部1は、車両状態検知部11が検知した車両の運転状態(車速、エンジン回転数、アクセル開度、ブレーキ操作状態、シフト状態など)を読み込み、検知結果をチェックする(ステップS8)。そして、制御部1はステップS8における車両の運転状態のチェックが最初のチェックであるか判定する(ステップS9)。最初のチェックでなかった場合(ステップS9;No)、その車両の運転状態をチェックした結果、直前の車両の運転状態と、今回のチェック時の車両の運転状態に変化があり、再生するべきフレーズを変更する必要があるか否かを判定する(ステップS10)。
【0030】
最初のチェックであった場合(ステップS9;Yes)、または車両の運転状態をチェックした結果、前回のチェックから車両の運転状態に変化があった場合(ステップS10;Yes)、制御部1は、再生するべきフレーズを選択して決定する(ステップS11)。再生するべきフレーズの選択は、まず図5に示すフレーズ選択ルールテーブル102を参照して、検知した車両の運転状態に合致するフレーズの特徴を示す4つの音楽要素パラメータを読み出す。そして、フレーズ特徴テーブル82を参照して、フレーズ選択ルールテーブル102から読み出した音楽要素パラメータと同一の音楽要素パラメータが記憶されている、または最も近い値の音楽要素パラメータが記憶されているフレーズを選択する。これにより、車両の運転状態に応じた最適なフレーズを選択することができる。
【0031】
続いて、制御部1は、フレーズ位置テーブル83から、先に選択した再生するべきフレーズの開始位置と終了位置の情報を読み出す。そして、この開始位置と終了位置の情報に基づいて、楽曲データテーブル81から再生するべきフレーズのフレーズデータを読み出して、楽曲再生部3に対して出力する。これを受けて、楽曲再生部3は、制御部1から出力されたフレーズデータを再生し、スピーカ4が車両の運転状態に応じた楽曲(フレーズ)を発音する(ステップS12)。
【0032】
一方、前回のチェックから車両の運転状態に変化がなかった場合(ステップS10;No)、楽曲再生部3は直前に再生していたフレーズデータに基づく再生動作を継続し、フレーズデータの終了の位置に達した場合は制御部1から出力されたフレーズデータの再生を繰り返し行う。
【0033】
次に、制御部1は楽音発生装置の電源がオフか判定し(ステップS13)、オフでなかった場合(ステップS13;No)、ステップS1の処理へ移行する。オフであった場合(ステップS13;Yes)、制御部1は楽曲再生部3を制御してフレーズデータの再生を停止する。
【0034】
なお、上述した処理を制御部1に実行させるためのプログラムは、制御部1の有する図示しない記憶領域に格納されている。
【0035】
また、所定時間以上車両の運転状態に変化がなかった場合、再生するべきフレーズデータを所定の時間繰り返し再生させるが、さらに、繰り返し再生の時間が所定時間を超えた場合は、他のフレーズデータを改めて選択するようにして、同じフレーズデータが長時間繰り返し再生されることを防止するようにしてもよい。また、別の楽曲データを選択し直して、新たなフレーズデータを選択するようにしてもよい。また、エンジンON後のアイドリングまたは発進のような運転(ドライブ)の初期に相当する車両の運転状態の時には、楽曲の最初のフレーズ(例えばイントロ)を選択し、減速または停止ような運転(ドライブ)の終期に相当する車両の運転状態の時には楽曲の最後のフレーズ(エンディング)を選択するようにしてもよい。
【0036】
また、図5に示すフレーズ選択ルールテーブル102に記憶されている車両の運転状態に加え、前照灯の点灯、方向指示器の操作、ワイパーの操作等のイベントが発生した場合に再生するべきフレーズの特徴を示す音楽要素パラメータが記憶されていてもよい。
【0037】
楽曲データは音楽用CD等の市販されている楽曲データ、または、様々なフレーズを1つの楽曲データとしてまとめた本車両用楽音発生装置専用の楽曲データであってもよい。また、楽曲データのフォーマット形式は、例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格のシーケンスデータ、またはオーディオデータである。
【0038】
このように、楽曲データの音楽要素パラメータを分析して、各楽曲データの特徴を示す情報として記憶しておくとともに、楽曲データを複数のフレーズに分割し、分割したフレーズの音楽要素パラメータを分析して、各フレーズデータの特徴を示す情報として記憶しておき、車両の環境状態に応じて適切な楽曲データを選択し、車両の運転状態に応じて適切なフレーズを選択して再生するようにしたため、車両の運転状態や環境状態に応じて楽曲を変化させる自律再生を行うことができる。また、予め再生データを作成したり用意する必要がなく、既に所有している楽曲データを使用して、車両の運転状態及び環境状態に応じた楽音を自律的に再生することが可能となる。例えば、アクセルを踏み込んで加速を行う場合、楽曲データの中で盛り上がりのあるフレーズを再生し、一定速度で巡航している場合、穏やかなフレーズを再生することが可能となる。
【0039】
このため、乗員が飽きることなく、車両を走行させて楽曲を発生させることを楽しめる世界観を作ることができる。また、車両の運転状態が常に変化のある楽曲で表現されるため、車両がどの様な運転状態にあるか常時把握できる。また、車両用楽音発生装置の発生する楽曲が楽しめるものであるため、車両の運転がより充実したものになり、様々な付加情報が楽曲と共に乗員に伝達され、快適に運転できる。さらに、車両の運転状態が変化しない場合であっても自律的に楽曲が変化するので、乗員は飽きずに楽曲を鑑賞する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す楽曲データベース8のテーブル構造を示す説明図である。
【図4】図1に示す再生ルールベース10のテーブル構造を示す説明図である。
【図5】図1に示す再生ルールベース10のテーブル構造を示す説明図である。
【図6】楽曲データに対してマーキングした一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・制御部、2・・・操作部、3・・・楽曲再生部、4・・・スピーカ、5・・・通信部、6・・・CD読取装置、7・・・I/F(インタフェース)、8・・・楽曲データベース、10・・・再生ルールベース、11・・・車両状態検知部、12・・・環境状態検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、
前記楽曲データの所定の音楽要素パラメータに基づいて、前記楽曲データの複数の再生区間を決定する再生位置決定手段と、
前記再生区間の所定の音楽要素パラメータを分析して、前記再生区間それぞれの音楽要素パラメータを前記楽曲データに関係付けて前記楽曲データ記憶手段に記憶する分析手段と、
車両の運転状態と該運転状態に応じて再生するべき楽曲の音楽要素パラメータが関係付けられて記憶された再生ルールデータ記憶手段と、
前記楽曲データ記憶手段に記憶された前記楽曲データに基づいて楽曲を再生する楽曲再生手段と、
車両の運転状態を検知する車両状態検知手段と、
前記再生ルールデータ記憶手段を参照して、前記車両状態検知手段により検知された前記車両の運転状態に関係付けられた前記音楽要素パラメータを求め、該求めた音楽要素パラメータの条件を満たす前記楽曲データの再生区間を指定し、前記楽曲再生手段に該再生区間を再生させる制御手段と
を備えたことを特徴とする車両用楽音発生装置。
【請求項2】
前記車両の環境状態を検知する環境状態検知手段を更に備え、
前記制御手段は、前記環境状態検知手段により検知した前記車両の環境状態に応じて前記楽曲再生手段に再生させる楽曲データを前記楽曲データ記憶手段から選択することを特徴とする請求項1に記載の車両用楽音発生装置。
【請求項3】
前記音楽要素パラメータは、ピッチ、音量、テンポ及び音色のいずれかあるいはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用楽音発生装置。
【請求項4】
楽曲データを記憶する楽曲データ記憶手段と、車両の運転状態と該運転状態に応じて再生するべき楽曲の音楽要素パラメータが関係付けられて記憶された再生ルールデータ記憶手段と、前記楽曲データ記憶手段に記憶された前記楽曲データに基づいて楽曲を再生する楽曲再生手段と、車両の運転状態を検知する車両状態検知手段とを備えた車両用楽音発生装置における楽音発生方法であって、
前記楽曲データの所定の音楽要素パラメータに基づいて、前記楽曲データの複数の再生区間を決定する再生位置決定ステップと、
前記再生区間の所定の音楽要素パラメータを分析して、前記再生区間それぞれの音楽要素パラメータを前記楽曲データに関係付けて前記楽曲データ記憶手段に記憶する分析ステップと、
前記再生ルールデータ記憶手段を参照して、前記車両状態検知手段により検知された前記車両の運転状態に関係付けられた前記音楽要素パラメータを求め、該求めた音楽要素パラメータの条件を満たす前記楽曲データの再生区間を指定し、前記楽曲再生手段に該再生区間を再生させる制御ステップと
を有することを特徴とする楽音発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−201166(P2008−201166A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36673(P2007−36673)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】