車両用歩行者保護装置
【課題】
この発明は、歩行者への衝撃を緩和して歩行者保護を図る車両用歩行者保護装置において、作動時間をできるだけ短縮して、さらにエアバッグ本体の収納スペースもコンパクトにできる車両用歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
(a)通常時においては、中央部31のバンパーフェイス33と面一に連結されている側端部32,32が、(b)作動時において、中央部31の前方で展開膨張したエアバッグ本体12の前端と略一致するように車両前方側に突出するように作動する。このように突出することで、エアバッグ本体12が展開膨張できない範囲を補充して、歩行者保護を図る。
この発明は、歩行者への衝撃を緩和して歩行者保護を図る車両用歩行者保護装置において、作動時間をできるだけ短縮して、さらにエアバッグ本体の収納スペースもコンパクトにできる車両用歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
(a)通常時においては、中央部31のバンパーフェイス33と面一に連結されている側端部32,32が、(b)作動時において、中央部31の前方で展開膨張したエアバッグ本体12の前端と略一致するように車両前方側に突出するように作動する。このように突出することで、エアバッグ本体12が展開膨張できない範囲を補充して、歩行者保護を図る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両が歩行者等に衝突した際の衝撃を緩和する車両用歩行者保護装置に関し、特に車両前端又は後端に設置して、車両前方又は後方の歩行者等を保護する車両用歩行者保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の衝突時に、車室内の乗員だけではなく車外の歩行者についても、衝突による衝撃を緩和することで保護を図ろうとする歩行者保護技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、車両前端のバンパーにエアバッグ装置を設け、衝突予知時に当該エアバッグ装置のエアバッグ本体を展開膨張させることで、歩行者保護を図る技術が提案されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、車両前端のバンパーのうち、バンパーフェイスのみを車両前方側に突出させる装置を設け、衝突予知時にバンパーフェイスを突出させることで、歩行者保護を図る技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−144154号公報
【特許文献2】特開2004−74971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のバンパーにエアバッグ装置を設けるものについては、車幅方向全幅に亘りエアバッグ本体を展開させる必要があるため、エアバッグ本体が大容量にならざるを得ず、完全に展開させるのに時間が掛かるうえ、収納スペースも大きなものになってしまうという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2のバンパーフェイスのみを車両前方に突出させるものについては、車幅方向に延びるバンパーフェイス全体を、車両前方に突出させる必要があるため、どうしても突出させるために、作動時間が掛かるといった問題がある。
【0008】
作動時間が掛かるといった問題は、歩行者保護技術自体が、車両の進行方向の前方で作動させるものであることから、極めて重要な対策課題となる。
【0009】
そこで、この発明は、歩行者への衝撃を緩和して歩行者保護を図る車両用歩行者保護装置において、作動時間をできるだけ短縮して、さらにエアバッグ本体の収納スペースもコンパクトにできる車両用歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車両用歩行者保護装置は、車両の衝突時、衝撃を緩和して歩行者の保護を行う車両用歩行者保護装置であって、車両の衝突又は衝突予知を検知する衝突検知手段と、車両の前端又は後端で車幅方向に延設したバンパーと、前記衝突検知手段で車両の衝突又は衝突予知を検出した際にエアバッグ本体を展開膨張させるエアバッグ装置とを備え、前記バンパーを、車両の衝突又は衝突予知時に展開膨張する前記エアバッグ本体によって覆われる中央部と、該中央部の車幅方向両側方にて衝撃吸収部材によって支持される側端部とで構成したものである。
【0011】
上記構成によれば、衝突検知手段で車両の衝突又は衝突予知を検知すると、車幅方向に延設したバンパーの中央部では、エアバッグ装置のエアバッグ本体が展開膨張して衝撃を吸収し、バンパーの側端部では、衝撃吸収部材が衝撃を吸収する。
【0012】
このため、歩行者への衝撃度合が大きい中央部では、エアバッグ本体を展開膨張して確実に歩行者保護を行い、歩行者への衝撃度合が小さい側端部では、衝撃吸収部材で歩行者保護を行うことになる。これにより、歩行者保護性能を確保しつつも、エアバッグ本体を容量の小さなもので構成することができる。
【0013】
なお、エアバッグ装置については、早期作動、収納スペースのコンパクト化を重視すると、アジ化ナトリウム等のガス発生剤を点火装置で発火して、高温ガスを発生する、一般的な高温ガスタイプのエアバッグ装置が望ましいが、本発明はこれに限定させるものではなく、低温ガスタイプのエアバッグ装置で実施してもよい。また、ブロアファンモータなどによりエアを給排気することで、エアバッグ本体を繰返し展開、収縮することが可能なブロアバキューム装置によるタイプのエアバッグ装置で実施してもよい。
【0014】
また、衝撃吸収部材は、衝突時の衝撃を吸収できれば、どのようなものであってもよく、例えば、金属製の筒部材を蛇腹形状に構成した衝撃吸収材や、コイルスプリングとダンバー部材で構成した緩衝装置、さらには弾性力を有するスポンジ状ウレタン部材や軟性樹脂等で形成した緩衝材等であってもよい。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記バンパーの側端部を、車両の衝突又は衝突予知時に、車両前後方向の外方側に突出させて、前記展開膨張したエアバッグ本体の車幅方向両側方に位置させる突出手段を設けたものである。
【0016】
上記構成によれば、車両の衝突又は衝突予知時に、突出手段によって、バンパーの側端部が、車両前後方向の外方側に突出して、展開膨張したエアバッグ本体の車幅方向両側方に位置することになる。
【0017】
このため、車両前後方向の外方側に突出するバンパーの側端部によって、エアバッグ本体が展開膨張できない領域を補充することができる。
よって、エアバッグ本体を容量の小さなもので構成しても、確実に歩行者保護性能を確保することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記側端部の車両前後方向の外方側への突出量を、車幅方向外方側より車幅方向内方側を大きく設定する突出設定手段を設けたものである。
【0019】
上記構成によれば、突出設定手段によって、車両の衝突又は衝突予知時における、側端部の車両前後方向の外方側への突出量を、車幅方向外方側より車幅方向内方側を大きく設定することになる。
【0020】
このため、側端部の前端面又は後端面が、車幅方向外方側に傾斜することになり、エアバッグ本体等に接触した歩行者を、その側端部で、確実に車両側方に逃がすことができる。
【0021】
よって、エアバッグ本体等に接触した歩行者を、円滑に車両側方に逃がすことができるため、より歩行者保護性能を高めることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、前記バンパーの側端部を、前記中央部に設けた上下方向に延びる枢支軸によって車両前後方向に揺動可能に構成したものである。
【0023】
上記構成によれば、中央部に設けた上下方向に延びる枢支軸によってバンパーの側端部が車両前後方向に揺動することになる。
【0024】
このため、歩行者が側端部に接触した場合には、必ず側端部の前端面又は後端面が中央部の枢支軸を中心として車幅方向外方側に傾斜することになり、歩行者を、確実に車両側方に逃がすことができる。
【0025】
よって、側端部に接触した歩行者を、円滑に車両側方に逃がすことができ、より歩行者保護性能を高めることができる
この発明の一実施態様においては、前記エアバッグ装置を、ナンバープレートの背面部に収納し、該ナンバープレートを転倒させてエアバッグ本体を展開膨張するものである。
【0026】
上記構成によれば、ナンバープレートの背面部にエアバッグ装置を収納して、車両の衝突又は衝突予知時には、ナンバープレートを転倒させてエアバッグ本体を展開膨張させることになる。
【0027】
このため、通常時、エアバッグ装置の収納部位は、ナンバープレートによって覆われて、外部に露出しない。
【0028】
よって、バンパーのデザイン性を悪化させることなくエアバッグ装置をバンパーに収納することができる。
【0029】
この発明の一実施態様においては、前記転倒するナンバープレートがバンパーから離脱するのを防止する離脱防止手段を設けたものである。
【0030】
上記構成によれば、車両の衝突又は衝突予知時に、ナンバープレートを転倒させても、離脱防止手段によって、ナンバープレートがバンパーから離脱するのを防止することができる。
【0031】
このため、エアバッグ本体の展開膨張に伴って、ナンバープレートがバンパーから離脱することはない。
【0032】
よって、エアバッグ本体の展開膨張時に、ナンバープレートが飛散するのが防止され、歩行者保護性能をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明によれば、歩行者への衝撃度合が大きい中央部では、エアバッグ本体を展開膨張して確実に歩行者保護を行い、歩行者への衝撃度合が小さい側端部では、衝撃吸収部材で歩行者保護を行うことになる。これにより、歩行者保護性能を確保しつつも、エアバッグ本体を容量の小さなもので構成することができる。
【0034】
したがって、歩行者への衝撃を緩和して歩行者保護を図る車両用歩行者保護装置において、作動時間を短縮して、さらにエアバッグ本体の収納スペースもコンパクトにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、第一実施形態の車両用歩行者保護装置(以下、保護装置。)を採用した車両の全体平面図、図2は保護装置のシステムブロック図、図3は保護装置を設けた前部バンパーの正面図、図4はこの前部バンパーの内部構造を示す図3のA−A線矢視断面図である。
【0036】
本実施形態の車両Vは、車室内に前席1と後席2を設けた一般的な車両である。車両Vの前端には、後述する前部バンパー3を設置し、その車幅方向中央には、衝突の予知を行う衝突予知センサ4を設けている。
【0037】
この衝突予知センサ4は、例えば、レーザーレーダや赤外線センサ等で構成し、前方の衝突対象物を検出した際に、衝突予知信号を後述する中央処理装置(CPU)5に送信する。
【0038】
また、車室内のインストルメントパネルの中央下部には、車両に生じる衝撃を等を検出して衝突を検出する衝突センサ6を設けている。この衝突センサ6は、例えば、Gセンサ等で構成し、衝突を検出した際に、衝突信号を中央処理装置5に送信する。
【0039】
なお、これら衝突予知センサ4又は衝突センサ6は、本発明において、車両のどこに設置してもよく、特に限定されるものではない。さらに、衝突対象物が歩行者であることを正確に確認するために、車室内の、例えば、ルームミラー部にカメラを設けることとしてもよい。
【0040】
本実施形態の保護装置のシステムブロックは、保護装置の制御を行う中央処理装置(CPU)5に対して、入力手段である衝突予知センサ4と衝突センサ6を連結し、出力手段であるバンパーエアバッグ装置10のインフレータ11と可動バンパー装置20の作動アクチュエータ21を連結している。
【0041】
保護装置は、このシステムブロックにおいて、詳細には説明しないが、以下のような制御を行う。
【0042】
まず、衝突予知センサ4で、車両前方の歩行者を検出し、衝突予知を検出すると、その衝突予知センサ4は、中央処理装置5に衝突予知信号を送信する。次に、衝突予知信号を受信した中央処理装置5は、所定の演算を行った上で作動信号を出力するか否かを判断する。そして、作動信号を出力すると判断した場合には、バンパーエアバッグ装置10のインフレータ11と可動バンパー装置20の作動アクチュエータ21に、それぞれ作動信号を出力する。
【0043】
なお、この作動信号の出力判断の際には、前述の衝突センサ6からの衝突信号を加えて演算を行ってもよく、さらには、この衝突センサ6からの衝突信号のみで演算を行ってもよい。
【0044】
保護装置の作動部を設置している前部バンパー3は、車両Vの前端の車幅方向全幅に亘って設けられており、図3、図4に示すように、車幅方向中央の中央部31と車幅方向両側の側端部32,32とで構成したバンパーフェイス33と、該バンパーフェイス33の後方で車幅方向に延びてバンパーフェイス33を車体に固定するバンパーレインフォースメント34と、該バンパーレインフォースメント34に設置してバンパーフェイス33の中央部31の後方に配置したバンパーエアバッグ装置10と、バンパーフェイス33の側端部32,32の後方に配置した可動バンパー装置20とを備える。
【0045】
前述のバンパーフェイス33は、ポリプロピレン等の軟質且つ軽量の衝撃吸収性が高い樹脂で成形しており、中央部31を薄板状に形成し、側端部32,32を厚板状に形成している。また、側端部32,32のさらに外方には、前部バンパー3の側面を構成する薄板状の側面部35,35を設けている。
【0046】
このように、側端部32,32のみを厚板状に形成しているのは、側端部32,32のみが、後述のように、車両の衝突又は衝突予知の際に車両前方側に突出して、歩行者等の衝突対象物と直接接触するため、厚板状とすることで衝撃吸収性能を高めているのである。
【0047】
また、バンパーフェイス33の中央部31と側端部32,32は、その間に位置する連結部材36,36で連結している。この連結部材36,36は、側端部32,32が車両前方側に突出する際に、連結を解くように構成され、通常時においては、中央部31と両側端部32,32を一体化している。
【0048】
なお、この実施形態では、別体の中央部31と側端部32,32を、連結部材36,36で連結することでバンパーフェイス33を一体として構成しているが、中央部と側端部を一体成形したバンパーフェイスを形成して、側端部の作動時に、初めて中央部と側端部が分離するバンパー構造としてもよい。このように構成した場合には、バンパーフェイス33の表面に分割線が露出しないため、前部バンパー3のデザイン性を向上できる。
【0049】
前述のバンパーレインフォースメント34は、具体的には図示しないが、後方解放の断面コ字状のメンバー部材で構成し、大きな衝撃が作用しても、容易に変形しない高い剛性を有している。このため、バンパーレインフォースメント34は、バンパーエアバッグ装置10や可動バンパー装置20から大きな作動衝撃が作用しても、確実にこれらの装置を支持しておくことができる。
【0050】
前述のバンパーエアバッグ装置10は、展開膨張するエアバッグ本体12と図2にのみ記載するインフレータ11とによって構成しており、このインフレータ11の内部には、アジ化ナトリウム等のガス発生剤(図示せず)を充填している。このガス発生剤を点火装置で発火させることで、エアバッグ本体12を展開膨張する高温ガスを発生するように構成している。なお、インフレータに代えて。前述のブロアバキューム装置であってもよい。
【0051】
このバンパーエアバッグ装置10は、バンパーフェイス33の中央部31の後方に配置している。具体的には、図3に示すように、ナンバープレート40の背面部に配置している。
【0052】
このように、ナンバープレート40の背面部に配置することにより、通常時には、ナンバープレート40によって、エアバッグ本体12の展開膨張のための開口部やバンパーエアバッグ装置10の収納部等を覆われることになり、これらの外部への露出を防ぐことができる。このため、前部バンパー3のデザイン性を悪化させることなく、バンパーエアバッグ装置10を前部バンパー3内に収納することができる。
【0053】
また、ナンバープレート40の背面のバンパーフェイス33は、一般的に、ナンバープレート40の装着を考慮して、平坦面が鉛直且つ車幅方向に延びている。このため、エアバッグ本体12が展開膨張した際には、エアバッグ本体12を車両前方側にまっすぐに安定して展開膨張させることができ、エアバッグ本体12の展開膨張の指向性も向上する。
【0054】
また、このバンパーエアバッグ装置10は、エアバッグ本体12の展開膨張の作動時間をできるだけ短縮するために、エアバッグ本体12を容量の小さなもので構成しており、完全に展開膨張した状態でも、図3に示すように、車幅方向においてバンパーフェイス33の中央部31を覆える程度に展開膨張するにとどまる(一点鎖線参照)。
【0055】
このため、バンパーエアバッグ装置10自体も小さくすることができ、ナンバープレート40よりも小さいサイズで、ナンバープレート40の背面部にコンパクトに収納及び設置することができる。
【0056】
もっとも、衝突又は衝突予知時に、バンパーフェイス33の中央部31のみをエアバッグ本体12で覆っても、歩行者保護の要請を十分に満足できない。そこで、本実施形態では、そのエアバッグ本体12が展開膨張できない範囲を補充するために、可動バンパー装置20,20でバンパーフェイス33の側端部32,32を車両前方側に突出するように構成している。
【0057】
この可動バンパー装置20,20は、車両のバンパーフェイス33の側端部32,32を車両の衝突又は衝突予知時に車両前方側に突出させることで、歩行者保護を図るものであり、図4に示すように、左右両端に二つ設けている。
【0058】
図5に、この可動バンパー装置20の作動概略図を示す。図5の(a)に示すように、この可動バンパー装置20は、内部にアジ化ナトリウム等のガス発生剤Gを充填するインフレ−タ22と、そのインフレータ22の車両前方側に設置した蛇腹形状の金属製の筒部材23と、その前端に設置した側端部32,32を押圧する押圧部材24とで構成している。なお、前述の作動アクチュエータ21は、ここでのインフレータ22に相当する。インフレータに代えて、前述のブロアバキューム装置であってもよい。
【0059】
作動アクチュエータ21たるインフレータ22内部のガス発生剤Gを点火装置で発火すると、高温ガスが発生し、この高温ガスを蛇腹形状の金属製の筒部材23に供給することで、(b)に示すように、蛇腹形状の金属製の筒部材23は、車両前方側に突出するように延びて、押圧部材24に押圧力を付与する。
【0060】
このように、可動バンパー装置20を作動させることで、バンパーフェイス33の側端部32,32を車両前方側に突出させることができ、エアバッグ本体12の容量を小さくしたことによって、エアバッグ本体12が展開膨張できない範囲を補充することができる。
【0061】
このバンパーエアバッグ装置10と可動バンパー装置20の作動状態を示した図が、図6である。(a)が通常時で、(b)が作動時である。
【0062】
通常時においては、中央部31のバンパーフェイス33と面一に連結されている側端部32,32が、作動時において、中央部31の前方で展開膨張したエアバッグ本体12の前端と略一致するように車両前方側に突出するように作動する。このように突出することで、エアバッグ本体12が展開膨張できない範囲を補充して、歩行者保護を図っている。
【0063】
すなわち、歩行者への衝撃度合が大きい中央部31では、エアバッグ本体12を展開膨張して確実に歩行者保護を行い、歩行者への衝撃度合が小さい側端部32,32では、可動バンパー装置20によって歩行者保護を行うことになるのである。
【0064】
このため、歩行者保護性能を確保しつつも、エアバッグ本体12の容量を小さいもので構成することができる。
【0065】
したがって、本実施形態では、車両用歩行者保護装置で問題となる作動時間の短縮化を図ることができ、さらにバンパーエアバッグ装置10の収納スペースもコンパクトにできるという効果を奏する。
【0066】
また、可動バンパー装置20の蛇腹形状の金属製の筒部材23は、歩行者が側端部32,32に接触すると、容易に座屈して衝撃吸収を行う構造となっているため、側端部32,32に歩行者が接触しても、エアバッグ本体12とほぼ同様の衝撃吸収性能を発揮することができる。
【0067】
なお、この可動バンパー装置20は、このような筒部材23を利用した衝撃吸収材だけではなく、車両前方側に突出して、衝撃吸収を行うものであれば、特に限定されるものではない。
【0068】
例えば、図7に示すような可動バンパー装置120であってもよい。この可動バンパー装置120は、(a)に示すように、車両前後方向に延びる軸上に、押圧部材121と筒状のダンパー装置122と圧縮したコイルスプリング123とを配置し、そのダンパー装置122の軸方向位置をロックするロック機構124を設けて構成している。作動時には、(b)に示すように、このロック機構124を解除することで、車両前方側に反発する弾性力でダンパー装置122とコイルスプリング123を車両前方側に突出させて、押圧部材121に押圧力を付与している。なお、前述の作動アクチュエータ21は、ここでのロック機構124に相当する。
【0069】
このように、コイルスプリング123等を利用して可動バンパー装置120を構成した場合でも、前述のものと同様に、歩行者が側端部32,32に接触すると衝撃吸収を行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、バンパーエアバッグ装置10をナンバープレート40の背面部に設置していることから、ナンバープレート40を如何に回避させるかが問題となる。
【0071】
図8は、ナンバープレート40の回避構造を示した図であり、図3のB−B線矢視断面図である。(a)は通常時、(b)は作動時を示したものである。
【0072】
この図において、33はバンパーフェイス、4は衝突予知センサ、34はバンパーレインフォースメント、10はバンパーエアバッグ装置、12は展開膨張時のエアバッグ本体、40はナンバープレート、37はバンパーフェイス33の破断開口38を連結する連結部材である。
【0073】
この実施形態では、ナンバープレート40の上端部に設けた締結ボルト41で、ナンバープレート40をバンパーフェイス33に強固に締結固定しているが、その下部に形成した折り曲げ部42で、ナンバープレート40を折り曲げるように構成している。
【0074】
すなわち、ナンバープレート40の上部に折り曲げのきっかけとなる折り曲げ部42を形成して、バンパーエアバッグ装置10が作動した際に、(b)に示すように、ナンバープレート40が上方側に折れ曲がるように構成しているのである。
【0075】
このように、ナンバープレート40を折り曲げることにより、バンパーエアバッグ装置10をナンバープレート40の背面部に設置していても、ナンバープレート40がエアバッグ本体12の展開膨張の邪魔になることはなく、バンパーエアバッグ装置10の作動に影響を与えることはない。
【0076】
また、本実施形態では、折れ曲げ部42を設けたことにより、バンパーエアバッグ装置10が作動した際に、ナンバープレート40が飛散するおそれも防止でき、歩行者保護性能を、さらに高めることができる。
【0077】
さらに、折れ曲げ部42でナンバープレート40を折り曲げているだけなので、作動後には、ナンバープレート40を通常の状態へ復元することも可能である。
【0078】
また、他のナンバープレート40の回避構造として、図9の構造も考えられる。(a)は通常時、(b)は作動時を示したものである。図8と同じの構成要素は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
この回避構造では、ナンバープレート40の上端部を固定する部材を、ラバーブッシュ、ラバーグロメット、樹脂クリップ、樹脂ファスナー、ブッシュリベット等の弾性係止部材43で構成し、バンパーエアバッグ装置10が作動した際に、この弾性係止部材43によるナンバープレート40とバンパーフェイス33との係合を解放するように構成している。
【0080】
但し、単に解放しただけでは、ナンバープレート40が飛散してしまうため、この実施形態では、上端部にバンパーフェイス33に固定したU字ボルト44を設置して、バンパーエアバッグ装置10の作動時には、ナンバープレート40をU字ボルト44を中心として上方側に回転させるように構成している。
【0081】
このように、ナンバープレート40を回転させるにより、この回避構造でも、ナンバープレート40がエアバッグ本体12の展開膨張の邪魔になることはなく、バンパーエアバッグ装置10の作動に影響を与えることはない。
【0082】
また、U字ボルト44を設けているため、ナンバープレート40が飛散するおそれも防止でき、歩行者保護性能を高めることができる。
【0083】
さらに、作動後には、ナンバープレート40を通常の状態へ復元することも可能である。
なお、エアバッグ本体12の展開膨張の回避という目的だけであれば、U字ボルト44をなくし、ナンバープレートを飛散させてもよい。
【0084】
次に、図10に示す第二実施形態について説明する。この実施形態は、バンパーフェイスの側端部32,32を突出させる可動バンパー装置220に、車幅方向内外に並設した二本の筒状部221,222を設け、内方側の筒状部221の突出量を外方側の筒状部222よりも大きくすることで、作動時に、側端部32,32の前端面32a,32aを車幅方向外方側に傾斜させるものである。なお、第一実施形態と同じ構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
前述のように、この実施形態の可動バンパー装置220は、筒状部221,222を二本有しており、作動時においては、(b)に示すように、内方側の筒状部221の方が外方側の筒状部222よりも車両前方側に突出するように設定している。これにより、可動バンパー装置220の作動時には、側端部32,32の前端面32a,32aが、車幅方向外方側向きに傾斜する。
【0086】
このため、側端部32,32に接触した歩行者等は、確実に車両側方に案内され、円滑に車両側方に逃がされることになる。
【0087】
よって、エアバッグ本体12に一旦接触した後に側端部32,32に接触する歩行者や、直接側端部32,32に接触した歩行者を、円滑に車両側方に逃がすことができ、より歩行者保護性能を高めることができる。
【0088】
なお、この場合、図10(b)に示すように、エアバッグ本体12の前端部の円弧ラインCと連続するように、側端部32,32の前端面32a,32aを傾斜させるのが好ましい。このように傾斜させることで、より円滑に歩行者を車両側方に案内できるからである。
【0089】
また、その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0090】
次に、図11に示す第三実施形態について説明する。この実施形態は、衝突又は衝突予知時に、バンパーフェイス133を中央の枢支軸135を中心として車両前後方向に揺動自在とし、側端部132,132における衝撃を緩和することで、エアバッグ本体12の容量が小さい場合であっても、歩行者保護性能を確保するものである。
【0091】
(a)は通常時、(b)は作動時、(c)は側端部132への衝撃入力時を示めす。なお、第一実施形態と同じ構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
この実施形態では、バンパーフェイス133を一体で成形し、このバンパーフェイス133を、バンパーレインフォースメント134の中央後部に設けた上下方向に延びる枢支軸135で、揺動自在に支持している。なお、136は支持リンクである。
【0093】
バンパーフェイス133が通常時に揺動すると、通常時には、車両の走行安定性が悪化したり、振動等が発生するため、(a)に示すように、バンパーレインフォースメント134に設けた支持ロック機構137,137で、バンパーフェイス133の側端部132,132を背面側(車両後方側)から固定支持している。
【0094】
作動時には、(b)に示すように、中央のバンパーエアバッグ装置10を作動させると共に支持ロック機構137,137の固定支持を解除する。これにより、中央ではエアバッグ本体12が展開膨張し、側端部132,132では、バンパーフェイス133が両端の衝撃吸収部材たるスポンジ状ウレタン部材138,138で弾性支持された状態となる。
【0095】
これにより、エアバッグ本体12が展開膨張できない範囲の側端部132,132の衝撃吸収は、車両前後方向に揺動自在となったバンパーフェイス133と、スポンジ状ウレタン部材138,138とで行うことになる。
【0096】
このため、側端部132へ衝撃が入力された際には、(c)に示すように、バンパーフェイス133が枢支軸135を中心として車両前後方向に揺動して、スポンジ状ウレタン部材138で衝撃を吸収することになる。
【0097】
なお、このとき、衝撃が入力された側の側端部132(図面で上側)では、スポンジ状ウレタン部材138が潰れ、反対側の側端部132(図面で下側)では、スポンジ状ウレタン部材138が延びるため、両側の二つのスポンジ状ウレタン部材138,138の弾性力を、有効に衝撃吸収に利用することができる。
【0098】
このように、この実施形態でも、歩行者への衝撃度合が大きい中央部131では、エアバッグ本体12を展開膨張して確実に歩行者保護を行い、歩行者への衝撃度合が小さい側端部132,132では、バンパーフェイス33及びスポンジ状ウレタン部材138,138によって歩行者保護を行うことになる。
【0099】
よって、歩行者保護性能を確保しつつも、エアバッグ本体12の容量を小さいもので構成することができる。
【0100】
したがって、本実施形態でも、車両用歩行者保護装置で問題となる作動時間の短縮化を図ることができ、さらにバンパーエアバッグ装置10の収納スペースもコンパクトにできるという効果を奏する。
【0101】
さらに、本実施形態では、衝撃が入力された側で、必ず枢支軸135を中心としてバンパーフェイス133が車幅方向外方側に傾斜するため、歩行者等を車両外方側に逃がすことができる。よって、歩行者保護性能をさらに高めることができる。
【0102】
加えて、本実施形態では、エアバッグ本体12の背面に位置するバンパーフェイス33の中央部31も、衝撃が入力された位置に応じて傾斜することになるため、エアバッグ本体12も、同じ方向に若干傾いた状態となり、バンパーエアバッグ装置10自体の衝撃吸収性能も衝撃吸収位置に応じて、効果的に働かせることができる。
【0103】
なお、バンパーフェイス33を両端部で支持する衝撃吸収部材は、このスポンジ状ウレタン部材138に限定させるものではなく、例えば、第一実施形態と同様に、金属製の蛇腹形状の筒部材23や、コイルスプリング123とダンパー装置122、軟性樹脂部材等で構成してもよい。
【0104】
また、枢支軸135についても、一つだけではなく、左右の側端部132,132ごとに一つずつ設けるように構成してもよい。
また、その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0105】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の衝突検知手段は、実施形態の衝突予知センサ4、衝突センサ6に対応し、
以下同様に、
バンパーは、前部バンパー3に対応し、
エアバッグ装置は、バンパーエアバッグ装置10に対応し、
衝撃吸収部材は、筒部材23,221,222、ダンパー装置122、コイルスプリング123、スポンジ状ウレタン部材138に対応し、
突出手段は、可動バンパー装置20,120,220に対応し、
突出設定手段は、可動バンパー装置220に対応し、
離脱防止手段は、折り曲げ部42、U字ボルト44に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車両用歩行者保護装置に適用する実施形態を含むものである。また、実施形態では、前部バンパーのみで説明したが、この発明は、後部バンパーに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】第一実施形態を採用した車両の全体平面図。
【図2】第一実施形態のシステムブロック図。
【図3】前部バンパーの正面図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】可動バンパー装置の作動概略図(a)通常時、(b)作動時。
【図6】第一実施形態の作動状態を示す断面図(a)通常時、(b)作動時。
【図7】他の可動バンパー装置の作動概略図(a)通常時、(b)作動時。
【図8】ナンバープレートの回避構造を示す、図3のB−B線矢視に対応する断面図(a)通常時、(b)作動時。
【図9】他のナンバープレートの回避構造を示す断面図(a)通常時、(b)作動時。
【図10】第二実施形態の作動状態を示す断面図(a)通常時、(b)作動時。
【図11】第二実施形態の作動状態を示す断面図(a)通常時、(b)作動時、(c)側端部への衝撃入力時。
【符号の説明】
【0107】
3…前部バンパー(バンパー)
4…衝突予知センサ(衝突検知手段)
6…衝突センサ(衝突検知手段)
10…バンパーエアバッグ装置(エアバッグ装置)
12…エアバッグ本体
23,221,222…筒部材(衝撃吸収部材)
31,131…中央部
32,132…側端部
33,133…バンパーフェイス
122…ダンパー装置(衝撃吸収部材)
123…コイルスプリング(衝撃吸収部材)
138…スポンジ状ウレタン部材(衝撃吸収部材)
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両が歩行者等に衝突した際の衝撃を緩和する車両用歩行者保護装置に関し、特に車両前端又は後端に設置して、車両前方又は後方の歩行者等を保護する車両用歩行者保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の衝突時に、車室内の乗員だけではなく車外の歩行者についても、衝突による衝撃を緩和することで保護を図ろうとする歩行者保護技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、車両前端のバンパーにエアバッグ装置を設け、衝突予知時に当該エアバッグ装置のエアバッグ本体を展開膨張させることで、歩行者保護を図る技術が提案されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、車両前端のバンパーのうち、バンパーフェイスのみを車両前方側に突出させる装置を設け、衝突予知時にバンパーフェイスを突出させることで、歩行者保護を図る技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−144154号公報
【特許文献2】特開2004−74971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のバンパーにエアバッグ装置を設けるものについては、車幅方向全幅に亘りエアバッグ本体を展開させる必要があるため、エアバッグ本体が大容量にならざるを得ず、完全に展開させるのに時間が掛かるうえ、収納スペースも大きなものになってしまうという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2のバンパーフェイスのみを車両前方に突出させるものについては、車幅方向に延びるバンパーフェイス全体を、車両前方に突出させる必要があるため、どうしても突出させるために、作動時間が掛かるといった問題がある。
【0008】
作動時間が掛かるといった問題は、歩行者保護技術自体が、車両の進行方向の前方で作動させるものであることから、極めて重要な対策課題となる。
【0009】
そこで、この発明は、歩行者への衝撃を緩和して歩行者保護を図る車両用歩行者保護装置において、作動時間をできるだけ短縮して、さらにエアバッグ本体の収納スペースもコンパクトにできる車両用歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車両用歩行者保護装置は、車両の衝突時、衝撃を緩和して歩行者の保護を行う車両用歩行者保護装置であって、車両の衝突又は衝突予知を検知する衝突検知手段と、車両の前端又は後端で車幅方向に延設したバンパーと、前記衝突検知手段で車両の衝突又は衝突予知を検出した際にエアバッグ本体を展開膨張させるエアバッグ装置とを備え、前記バンパーを、車両の衝突又は衝突予知時に展開膨張する前記エアバッグ本体によって覆われる中央部と、該中央部の車幅方向両側方にて衝撃吸収部材によって支持される側端部とで構成したものである。
【0011】
上記構成によれば、衝突検知手段で車両の衝突又は衝突予知を検知すると、車幅方向に延設したバンパーの中央部では、エアバッグ装置のエアバッグ本体が展開膨張して衝撃を吸収し、バンパーの側端部では、衝撃吸収部材が衝撃を吸収する。
【0012】
このため、歩行者への衝撃度合が大きい中央部では、エアバッグ本体を展開膨張して確実に歩行者保護を行い、歩行者への衝撃度合が小さい側端部では、衝撃吸収部材で歩行者保護を行うことになる。これにより、歩行者保護性能を確保しつつも、エアバッグ本体を容量の小さなもので構成することができる。
【0013】
なお、エアバッグ装置については、早期作動、収納スペースのコンパクト化を重視すると、アジ化ナトリウム等のガス発生剤を点火装置で発火して、高温ガスを発生する、一般的な高温ガスタイプのエアバッグ装置が望ましいが、本発明はこれに限定させるものではなく、低温ガスタイプのエアバッグ装置で実施してもよい。また、ブロアファンモータなどによりエアを給排気することで、エアバッグ本体を繰返し展開、収縮することが可能なブロアバキューム装置によるタイプのエアバッグ装置で実施してもよい。
【0014】
また、衝撃吸収部材は、衝突時の衝撃を吸収できれば、どのようなものであってもよく、例えば、金属製の筒部材を蛇腹形状に構成した衝撃吸収材や、コイルスプリングとダンバー部材で構成した緩衝装置、さらには弾性力を有するスポンジ状ウレタン部材や軟性樹脂等で形成した緩衝材等であってもよい。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記バンパーの側端部を、車両の衝突又は衝突予知時に、車両前後方向の外方側に突出させて、前記展開膨張したエアバッグ本体の車幅方向両側方に位置させる突出手段を設けたものである。
【0016】
上記構成によれば、車両の衝突又は衝突予知時に、突出手段によって、バンパーの側端部が、車両前後方向の外方側に突出して、展開膨張したエアバッグ本体の車幅方向両側方に位置することになる。
【0017】
このため、車両前後方向の外方側に突出するバンパーの側端部によって、エアバッグ本体が展開膨張できない領域を補充することができる。
よって、エアバッグ本体を容量の小さなもので構成しても、確実に歩行者保護性能を確保することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記側端部の車両前後方向の外方側への突出量を、車幅方向外方側より車幅方向内方側を大きく設定する突出設定手段を設けたものである。
【0019】
上記構成によれば、突出設定手段によって、車両の衝突又は衝突予知時における、側端部の車両前後方向の外方側への突出量を、車幅方向外方側より車幅方向内方側を大きく設定することになる。
【0020】
このため、側端部の前端面又は後端面が、車幅方向外方側に傾斜することになり、エアバッグ本体等に接触した歩行者を、その側端部で、確実に車両側方に逃がすことができる。
【0021】
よって、エアバッグ本体等に接触した歩行者を、円滑に車両側方に逃がすことができるため、より歩行者保護性能を高めることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、前記バンパーの側端部を、前記中央部に設けた上下方向に延びる枢支軸によって車両前後方向に揺動可能に構成したものである。
【0023】
上記構成によれば、中央部に設けた上下方向に延びる枢支軸によってバンパーの側端部が車両前後方向に揺動することになる。
【0024】
このため、歩行者が側端部に接触した場合には、必ず側端部の前端面又は後端面が中央部の枢支軸を中心として車幅方向外方側に傾斜することになり、歩行者を、確実に車両側方に逃がすことができる。
【0025】
よって、側端部に接触した歩行者を、円滑に車両側方に逃がすことができ、より歩行者保護性能を高めることができる
この発明の一実施態様においては、前記エアバッグ装置を、ナンバープレートの背面部に収納し、該ナンバープレートを転倒させてエアバッグ本体を展開膨張するものである。
【0026】
上記構成によれば、ナンバープレートの背面部にエアバッグ装置を収納して、車両の衝突又は衝突予知時には、ナンバープレートを転倒させてエアバッグ本体を展開膨張させることになる。
【0027】
このため、通常時、エアバッグ装置の収納部位は、ナンバープレートによって覆われて、外部に露出しない。
【0028】
よって、バンパーのデザイン性を悪化させることなくエアバッグ装置をバンパーに収納することができる。
【0029】
この発明の一実施態様においては、前記転倒するナンバープレートがバンパーから離脱するのを防止する離脱防止手段を設けたものである。
【0030】
上記構成によれば、車両の衝突又は衝突予知時に、ナンバープレートを転倒させても、離脱防止手段によって、ナンバープレートがバンパーから離脱するのを防止することができる。
【0031】
このため、エアバッグ本体の展開膨張に伴って、ナンバープレートがバンパーから離脱することはない。
【0032】
よって、エアバッグ本体の展開膨張時に、ナンバープレートが飛散するのが防止され、歩行者保護性能をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明によれば、歩行者への衝撃度合が大きい中央部では、エアバッグ本体を展開膨張して確実に歩行者保護を行い、歩行者への衝撃度合が小さい側端部では、衝撃吸収部材で歩行者保護を行うことになる。これにより、歩行者保護性能を確保しつつも、エアバッグ本体を容量の小さなもので構成することができる。
【0034】
したがって、歩行者への衝撃を緩和して歩行者保護を図る車両用歩行者保護装置において、作動時間を短縮して、さらにエアバッグ本体の収納スペースもコンパクトにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、第一実施形態の車両用歩行者保護装置(以下、保護装置。)を採用した車両の全体平面図、図2は保護装置のシステムブロック図、図3は保護装置を設けた前部バンパーの正面図、図4はこの前部バンパーの内部構造を示す図3のA−A線矢視断面図である。
【0036】
本実施形態の車両Vは、車室内に前席1と後席2を設けた一般的な車両である。車両Vの前端には、後述する前部バンパー3を設置し、その車幅方向中央には、衝突の予知を行う衝突予知センサ4を設けている。
【0037】
この衝突予知センサ4は、例えば、レーザーレーダや赤外線センサ等で構成し、前方の衝突対象物を検出した際に、衝突予知信号を後述する中央処理装置(CPU)5に送信する。
【0038】
また、車室内のインストルメントパネルの中央下部には、車両に生じる衝撃を等を検出して衝突を検出する衝突センサ6を設けている。この衝突センサ6は、例えば、Gセンサ等で構成し、衝突を検出した際に、衝突信号を中央処理装置5に送信する。
【0039】
なお、これら衝突予知センサ4又は衝突センサ6は、本発明において、車両のどこに設置してもよく、特に限定されるものではない。さらに、衝突対象物が歩行者であることを正確に確認するために、車室内の、例えば、ルームミラー部にカメラを設けることとしてもよい。
【0040】
本実施形態の保護装置のシステムブロックは、保護装置の制御を行う中央処理装置(CPU)5に対して、入力手段である衝突予知センサ4と衝突センサ6を連結し、出力手段であるバンパーエアバッグ装置10のインフレータ11と可動バンパー装置20の作動アクチュエータ21を連結している。
【0041】
保護装置は、このシステムブロックにおいて、詳細には説明しないが、以下のような制御を行う。
【0042】
まず、衝突予知センサ4で、車両前方の歩行者を検出し、衝突予知を検出すると、その衝突予知センサ4は、中央処理装置5に衝突予知信号を送信する。次に、衝突予知信号を受信した中央処理装置5は、所定の演算を行った上で作動信号を出力するか否かを判断する。そして、作動信号を出力すると判断した場合には、バンパーエアバッグ装置10のインフレータ11と可動バンパー装置20の作動アクチュエータ21に、それぞれ作動信号を出力する。
【0043】
なお、この作動信号の出力判断の際には、前述の衝突センサ6からの衝突信号を加えて演算を行ってもよく、さらには、この衝突センサ6からの衝突信号のみで演算を行ってもよい。
【0044】
保護装置の作動部を設置している前部バンパー3は、車両Vの前端の車幅方向全幅に亘って設けられており、図3、図4に示すように、車幅方向中央の中央部31と車幅方向両側の側端部32,32とで構成したバンパーフェイス33と、該バンパーフェイス33の後方で車幅方向に延びてバンパーフェイス33を車体に固定するバンパーレインフォースメント34と、該バンパーレインフォースメント34に設置してバンパーフェイス33の中央部31の後方に配置したバンパーエアバッグ装置10と、バンパーフェイス33の側端部32,32の後方に配置した可動バンパー装置20とを備える。
【0045】
前述のバンパーフェイス33は、ポリプロピレン等の軟質且つ軽量の衝撃吸収性が高い樹脂で成形しており、中央部31を薄板状に形成し、側端部32,32を厚板状に形成している。また、側端部32,32のさらに外方には、前部バンパー3の側面を構成する薄板状の側面部35,35を設けている。
【0046】
このように、側端部32,32のみを厚板状に形成しているのは、側端部32,32のみが、後述のように、車両の衝突又は衝突予知の際に車両前方側に突出して、歩行者等の衝突対象物と直接接触するため、厚板状とすることで衝撃吸収性能を高めているのである。
【0047】
また、バンパーフェイス33の中央部31と側端部32,32は、その間に位置する連結部材36,36で連結している。この連結部材36,36は、側端部32,32が車両前方側に突出する際に、連結を解くように構成され、通常時においては、中央部31と両側端部32,32を一体化している。
【0048】
なお、この実施形態では、別体の中央部31と側端部32,32を、連結部材36,36で連結することでバンパーフェイス33を一体として構成しているが、中央部と側端部を一体成形したバンパーフェイスを形成して、側端部の作動時に、初めて中央部と側端部が分離するバンパー構造としてもよい。このように構成した場合には、バンパーフェイス33の表面に分割線が露出しないため、前部バンパー3のデザイン性を向上できる。
【0049】
前述のバンパーレインフォースメント34は、具体的には図示しないが、後方解放の断面コ字状のメンバー部材で構成し、大きな衝撃が作用しても、容易に変形しない高い剛性を有している。このため、バンパーレインフォースメント34は、バンパーエアバッグ装置10や可動バンパー装置20から大きな作動衝撃が作用しても、確実にこれらの装置を支持しておくことができる。
【0050】
前述のバンパーエアバッグ装置10は、展開膨張するエアバッグ本体12と図2にのみ記載するインフレータ11とによって構成しており、このインフレータ11の内部には、アジ化ナトリウム等のガス発生剤(図示せず)を充填している。このガス発生剤を点火装置で発火させることで、エアバッグ本体12を展開膨張する高温ガスを発生するように構成している。なお、インフレータに代えて。前述のブロアバキューム装置であってもよい。
【0051】
このバンパーエアバッグ装置10は、バンパーフェイス33の中央部31の後方に配置している。具体的には、図3に示すように、ナンバープレート40の背面部に配置している。
【0052】
このように、ナンバープレート40の背面部に配置することにより、通常時には、ナンバープレート40によって、エアバッグ本体12の展開膨張のための開口部やバンパーエアバッグ装置10の収納部等を覆われることになり、これらの外部への露出を防ぐことができる。このため、前部バンパー3のデザイン性を悪化させることなく、バンパーエアバッグ装置10を前部バンパー3内に収納することができる。
【0053】
また、ナンバープレート40の背面のバンパーフェイス33は、一般的に、ナンバープレート40の装着を考慮して、平坦面が鉛直且つ車幅方向に延びている。このため、エアバッグ本体12が展開膨張した際には、エアバッグ本体12を車両前方側にまっすぐに安定して展開膨張させることができ、エアバッグ本体12の展開膨張の指向性も向上する。
【0054】
また、このバンパーエアバッグ装置10は、エアバッグ本体12の展開膨張の作動時間をできるだけ短縮するために、エアバッグ本体12を容量の小さなもので構成しており、完全に展開膨張した状態でも、図3に示すように、車幅方向においてバンパーフェイス33の中央部31を覆える程度に展開膨張するにとどまる(一点鎖線参照)。
【0055】
このため、バンパーエアバッグ装置10自体も小さくすることができ、ナンバープレート40よりも小さいサイズで、ナンバープレート40の背面部にコンパクトに収納及び設置することができる。
【0056】
もっとも、衝突又は衝突予知時に、バンパーフェイス33の中央部31のみをエアバッグ本体12で覆っても、歩行者保護の要請を十分に満足できない。そこで、本実施形態では、そのエアバッグ本体12が展開膨張できない範囲を補充するために、可動バンパー装置20,20でバンパーフェイス33の側端部32,32を車両前方側に突出するように構成している。
【0057】
この可動バンパー装置20,20は、車両のバンパーフェイス33の側端部32,32を車両の衝突又は衝突予知時に車両前方側に突出させることで、歩行者保護を図るものであり、図4に示すように、左右両端に二つ設けている。
【0058】
図5に、この可動バンパー装置20の作動概略図を示す。図5の(a)に示すように、この可動バンパー装置20は、内部にアジ化ナトリウム等のガス発生剤Gを充填するインフレ−タ22と、そのインフレータ22の車両前方側に設置した蛇腹形状の金属製の筒部材23と、その前端に設置した側端部32,32を押圧する押圧部材24とで構成している。なお、前述の作動アクチュエータ21は、ここでのインフレータ22に相当する。インフレータに代えて、前述のブロアバキューム装置であってもよい。
【0059】
作動アクチュエータ21たるインフレータ22内部のガス発生剤Gを点火装置で発火すると、高温ガスが発生し、この高温ガスを蛇腹形状の金属製の筒部材23に供給することで、(b)に示すように、蛇腹形状の金属製の筒部材23は、車両前方側に突出するように延びて、押圧部材24に押圧力を付与する。
【0060】
このように、可動バンパー装置20を作動させることで、バンパーフェイス33の側端部32,32を車両前方側に突出させることができ、エアバッグ本体12の容量を小さくしたことによって、エアバッグ本体12が展開膨張できない範囲を補充することができる。
【0061】
このバンパーエアバッグ装置10と可動バンパー装置20の作動状態を示した図が、図6である。(a)が通常時で、(b)が作動時である。
【0062】
通常時においては、中央部31のバンパーフェイス33と面一に連結されている側端部32,32が、作動時において、中央部31の前方で展開膨張したエアバッグ本体12の前端と略一致するように車両前方側に突出するように作動する。このように突出することで、エアバッグ本体12が展開膨張できない範囲を補充して、歩行者保護を図っている。
【0063】
すなわち、歩行者への衝撃度合が大きい中央部31では、エアバッグ本体12を展開膨張して確実に歩行者保護を行い、歩行者への衝撃度合が小さい側端部32,32では、可動バンパー装置20によって歩行者保護を行うことになるのである。
【0064】
このため、歩行者保護性能を確保しつつも、エアバッグ本体12の容量を小さいもので構成することができる。
【0065】
したがって、本実施形態では、車両用歩行者保護装置で問題となる作動時間の短縮化を図ることができ、さらにバンパーエアバッグ装置10の収納スペースもコンパクトにできるという効果を奏する。
【0066】
また、可動バンパー装置20の蛇腹形状の金属製の筒部材23は、歩行者が側端部32,32に接触すると、容易に座屈して衝撃吸収を行う構造となっているため、側端部32,32に歩行者が接触しても、エアバッグ本体12とほぼ同様の衝撃吸収性能を発揮することができる。
【0067】
なお、この可動バンパー装置20は、このような筒部材23を利用した衝撃吸収材だけではなく、車両前方側に突出して、衝撃吸収を行うものであれば、特に限定されるものではない。
【0068】
例えば、図7に示すような可動バンパー装置120であってもよい。この可動バンパー装置120は、(a)に示すように、車両前後方向に延びる軸上に、押圧部材121と筒状のダンパー装置122と圧縮したコイルスプリング123とを配置し、そのダンパー装置122の軸方向位置をロックするロック機構124を設けて構成している。作動時には、(b)に示すように、このロック機構124を解除することで、車両前方側に反発する弾性力でダンパー装置122とコイルスプリング123を車両前方側に突出させて、押圧部材121に押圧力を付与している。なお、前述の作動アクチュエータ21は、ここでのロック機構124に相当する。
【0069】
このように、コイルスプリング123等を利用して可動バンパー装置120を構成した場合でも、前述のものと同様に、歩行者が側端部32,32に接触すると衝撃吸収を行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、バンパーエアバッグ装置10をナンバープレート40の背面部に設置していることから、ナンバープレート40を如何に回避させるかが問題となる。
【0071】
図8は、ナンバープレート40の回避構造を示した図であり、図3のB−B線矢視断面図である。(a)は通常時、(b)は作動時を示したものである。
【0072】
この図において、33はバンパーフェイス、4は衝突予知センサ、34はバンパーレインフォースメント、10はバンパーエアバッグ装置、12は展開膨張時のエアバッグ本体、40はナンバープレート、37はバンパーフェイス33の破断開口38を連結する連結部材である。
【0073】
この実施形態では、ナンバープレート40の上端部に設けた締結ボルト41で、ナンバープレート40をバンパーフェイス33に強固に締結固定しているが、その下部に形成した折り曲げ部42で、ナンバープレート40を折り曲げるように構成している。
【0074】
すなわち、ナンバープレート40の上部に折り曲げのきっかけとなる折り曲げ部42を形成して、バンパーエアバッグ装置10が作動した際に、(b)に示すように、ナンバープレート40が上方側に折れ曲がるように構成しているのである。
【0075】
このように、ナンバープレート40を折り曲げることにより、バンパーエアバッグ装置10をナンバープレート40の背面部に設置していても、ナンバープレート40がエアバッグ本体12の展開膨張の邪魔になることはなく、バンパーエアバッグ装置10の作動に影響を与えることはない。
【0076】
また、本実施形態では、折れ曲げ部42を設けたことにより、バンパーエアバッグ装置10が作動した際に、ナンバープレート40が飛散するおそれも防止でき、歩行者保護性能を、さらに高めることができる。
【0077】
さらに、折れ曲げ部42でナンバープレート40を折り曲げているだけなので、作動後には、ナンバープレート40を通常の状態へ復元することも可能である。
【0078】
また、他のナンバープレート40の回避構造として、図9の構造も考えられる。(a)は通常時、(b)は作動時を示したものである。図8と同じの構成要素は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
この回避構造では、ナンバープレート40の上端部を固定する部材を、ラバーブッシュ、ラバーグロメット、樹脂クリップ、樹脂ファスナー、ブッシュリベット等の弾性係止部材43で構成し、バンパーエアバッグ装置10が作動した際に、この弾性係止部材43によるナンバープレート40とバンパーフェイス33との係合を解放するように構成している。
【0080】
但し、単に解放しただけでは、ナンバープレート40が飛散してしまうため、この実施形態では、上端部にバンパーフェイス33に固定したU字ボルト44を設置して、バンパーエアバッグ装置10の作動時には、ナンバープレート40をU字ボルト44を中心として上方側に回転させるように構成している。
【0081】
このように、ナンバープレート40を回転させるにより、この回避構造でも、ナンバープレート40がエアバッグ本体12の展開膨張の邪魔になることはなく、バンパーエアバッグ装置10の作動に影響を与えることはない。
【0082】
また、U字ボルト44を設けているため、ナンバープレート40が飛散するおそれも防止でき、歩行者保護性能を高めることができる。
【0083】
さらに、作動後には、ナンバープレート40を通常の状態へ復元することも可能である。
なお、エアバッグ本体12の展開膨張の回避という目的だけであれば、U字ボルト44をなくし、ナンバープレートを飛散させてもよい。
【0084】
次に、図10に示す第二実施形態について説明する。この実施形態は、バンパーフェイスの側端部32,32を突出させる可動バンパー装置220に、車幅方向内外に並設した二本の筒状部221,222を設け、内方側の筒状部221の突出量を外方側の筒状部222よりも大きくすることで、作動時に、側端部32,32の前端面32a,32aを車幅方向外方側に傾斜させるものである。なお、第一実施形態と同じ構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
前述のように、この実施形態の可動バンパー装置220は、筒状部221,222を二本有しており、作動時においては、(b)に示すように、内方側の筒状部221の方が外方側の筒状部222よりも車両前方側に突出するように設定している。これにより、可動バンパー装置220の作動時には、側端部32,32の前端面32a,32aが、車幅方向外方側向きに傾斜する。
【0086】
このため、側端部32,32に接触した歩行者等は、確実に車両側方に案内され、円滑に車両側方に逃がされることになる。
【0087】
よって、エアバッグ本体12に一旦接触した後に側端部32,32に接触する歩行者や、直接側端部32,32に接触した歩行者を、円滑に車両側方に逃がすことができ、より歩行者保護性能を高めることができる。
【0088】
なお、この場合、図10(b)に示すように、エアバッグ本体12の前端部の円弧ラインCと連続するように、側端部32,32の前端面32a,32aを傾斜させるのが好ましい。このように傾斜させることで、より円滑に歩行者を車両側方に案内できるからである。
【0089】
また、その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0090】
次に、図11に示す第三実施形態について説明する。この実施形態は、衝突又は衝突予知時に、バンパーフェイス133を中央の枢支軸135を中心として車両前後方向に揺動自在とし、側端部132,132における衝撃を緩和することで、エアバッグ本体12の容量が小さい場合であっても、歩行者保護性能を確保するものである。
【0091】
(a)は通常時、(b)は作動時、(c)は側端部132への衝撃入力時を示めす。なお、第一実施形態と同じ構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
この実施形態では、バンパーフェイス133を一体で成形し、このバンパーフェイス133を、バンパーレインフォースメント134の中央後部に設けた上下方向に延びる枢支軸135で、揺動自在に支持している。なお、136は支持リンクである。
【0093】
バンパーフェイス133が通常時に揺動すると、通常時には、車両の走行安定性が悪化したり、振動等が発生するため、(a)に示すように、バンパーレインフォースメント134に設けた支持ロック機構137,137で、バンパーフェイス133の側端部132,132を背面側(車両後方側)から固定支持している。
【0094】
作動時には、(b)に示すように、中央のバンパーエアバッグ装置10を作動させると共に支持ロック機構137,137の固定支持を解除する。これにより、中央ではエアバッグ本体12が展開膨張し、側端部132,132では、バンパーフェイス133が両端の衝撃吸収部材たるスポンジ状ウレタン部材138,138で弾性支持された状態となる。
【0095】
これにより、エアバッグ本体12が展開膨張できない範囲の側端部132,132の衝撃吸収は、車両前後方向に揺動自在となったバンパーフェイス133と、スポンジ状ウレタン部材138,138とで行うことになる。
【0096】
このため、側端部132へ衝撃が入力された際には、(c)に示すように、バンパーフェイス133が枢支軸135を中心として車両前後方向に揺動して、スポンジ状ウレタン部材138で衝撃を吸収することになる。
【0097】
なお、このとき、衝撃が入力された側の側端部132(図面で上側)では、スポンジ状ウレタン部材138が潰れ、反対側の側端部132(図面で下側)では、スポンジ状ウレタン部材138が延びるため、両側の二つのスポンジ状ウレタン部材138,138の弾性力を、有効に衝撃吸収に利用することができる。
【0098】
このように、この実施形態でも、歩行者への衝撃度合が大きい中央部131では、エアバッグ本体12を展開膨張して確実に歩行者保護を行い、歩行者への衝撃度合が小さい側端部132,132では、バンパーフェイス33及びスポンジ状ウレタン部材138,138によって歩行者保護を行うことになる。
【0099】
よって、歩行者保護性能を確保しつつも、エアバッグ本体12の容量を小さいもので構成することができる。
【0100】
したがって、本実施形態でも、車両用歩行者保護装置で問題となる作動時間の短縮化を図ることができ、さらにバンパーエアバッグ装置10の収納スペースもコンパクトにできるという効果を奏する。
【0101】
さらに、本実施形態では、衝撃が入力された側で、必ず枢支軸135を中心としてバンパーフェイス133が車幅方向外方側に傾斜するため、歩行者等を車両外方側に逃がすことができる。よって、歩行者保護性能をさらに高めることができる。
【0102】
加えて、本実施形態では、エアバッグ本体12の背面に位置するバンパーフェイス33の中央部31も、衝撃が入力された位置に応じて傾斜することになるため、エアバッグ本体12も、同じ方向に若干傾いた状態となり、バンパーエアバッグ装置10自体の衝撃吸収性能も衝撃吸収位置に応じて、効果的に働かせることができる。
【0103】
なお、バンパーフェイス33を両端部で支持する衝撃吸収部材は、このスポンジ状ウレタン部材138に限定させるものではなく、例えば、第一実施形態と同様に、金属製の蛇腹形状の筒部材23や、コイルスプリング123とダンパー装置122、軟性樹脂部材等で構成してもよい。
【0104】
また、枢支軸135についても、一つだけではなく、左右の側端部132,132ごとに一つずつ設けるように構成してもよい。
また、その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0105】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の衝突検知手段は、実施形態の衝突予知センサ4、衝突センサ6に対応し、
以下同様に、
バンパーは、前部バンパー3に対応し、
エアバッグ装置は、バンパーエアバッグ装置10に対応し、
衝撃吸収部材は、筒部材23,221,222、ダンパー装置122、コイルスプリング123、スポンジ状ウレタン部材138に対応し、
突出手段は、可動バンパー装置20,120,220に対応し、
突出設定手段は、可動バンパー装置220に対応し、
離脱防止手段は、折り曲げ部42、U字ボルト44に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車両用歩行者保護装置に適用する実施形態を含むものである。また、実施形態では、前部バンパーのみで説明したが、この発明は、後部バンパーに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】第一実施形態を採用した車両の全体平面図。
【図2】第一実施形態のシステムブロック図。
【図3】前部バンパーの正面図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】可動バンパー装置の作動概略図(a)通常時、(b)作動時。
【図6】第一実施形態の作動状態を示す断面図(a)通常時、(b)作動時。
【図7】他の可動バンパー装置の作動概略図(a)通常時、(b)作動時。
【図8】ナンバープレートの回避構造を示す、図3のB−B線矢視に対応する断面図(a)通常時、(b)作動時。
【図9】他のナンバープレートの回避構造を示す断面図(a)通常時、(b)作動時。
【図10】第二実施形態の作動状態を示す断面図(a)通常時、(b)作動時。
【図11】第二実施形態の作動状態を示す断面図(a)通常時、(b)作動時、(c)側端部への衝撃入力時。
【符号の説明】
【0107】
3…前部バンパー(バンパー)
4…衝突予知センサ(衝突検知手段)
6…衝突センサ(衝突検知手段)
10…バンパーエアバッグ装置(エアバッグ装置)
12…エアバッグ本体
23,221,222…筒部材(衝撃吸収部材)
31,131…中央部
32,132…側端部
33,133…バンパーフェイス
122…ダンパー装置(衝撃吸収部材)
123…コイルスプリング(衝撃吸収部材)
138…スポンジ状ウレタン部材(衝撃吸収部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突時、衝撃を緩和して歩行者の保護を行う車両用歩行者保護装置であって、
車両の衝突又は衝突予知を検知する衝突検知手段と、
車両の前端又は後端で車幅方向に延設したバンパーと、
前記衝突検知手段で車両の衝突又は衝突予知を検出した際にエアバッグ本体を展開膨張させるエアバッグ装置とを備え、
前記バンパーを、車両の衝突又は衝突予知時に展開膨張する前記エアバッグ本体によって覆われる中央部と、該中央部の車幅方向両側方にて衝撃吸収部材によって支持される側端部とで構成した
車両用歩行者保護装置。
【請求項2】
前記バンパーの側端部を、車両の衝突又は衝突予知時に、車両前後方向の外方側に突出させて、前記展開膨張したエアバッグ本体の車幅方向両側方に位置させる突出手段を設けた
請求項1記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項3】
前記側端部の車両前後方向の外方側への突出量を、車幅方向外方側より車幅方向内方側を大きく設定する突出設定手段を設けた
請求項2記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項4】
前記バンパーの側端部を、前記中央部に設けた上下方向に延びる枢支軸によって車両前後方向に揺動可能に構成した
請求項1記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項5】
前記エアバッグ装置を、ナンバープレートの背面部に収納し、該ナンバープレートを転倒させてエアバッグ本体を展開膨張する
請求項1〜4記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項6】
前記転倒するナンバープレートがバンパーから離脱するのを防止する離脱防止手段を設けた
請求項5記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項1】
車両の衝突時、衝撃を緩和して歩行者の保護を行う車両用歩行者保護装置であって、
車両の衝突又は衝突予知を検知する衝突検知手段と、
車両の前端又は後端で車幅方向に延設したバンパーと、
前記衝突検知手段で車両の衝突又は衝突予知を検出した際にエアバッグ本体を展開膨張させるエアバッグ装置とを備え、
前記バンパーを、車両の衝突又は衝突予知時に展開膨張する前記エアバッグ本体によって覆われる中央部と、該中央部の車幅方向両側方にて衝撃吸収部材によって支持される側端部とで構成した
車両用歩行者保護装置。
【請求項2】
前記バンパーの側端部を、車両の衝突又は衝突予知時に、車両前後方向の外方側に突出させて、前記展開膨張したエアバッグ本体の車幅方向両側方に位置させる突出手段を設けた
請求項1記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項3】
前記側端部の車両前後方向の外方側への突出量を、車幅方向外方側より車幅方向内方側を大きく設定する突出設定手段を設けた
請求項2記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項4】
前記バンパーの側端部を、前記中央部に設けた上下方向に延びる枢支軸によって車両前後方向に揺動可能に構成した
請求項1記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項5】
前記エアバッグ装置を、ナンバープレートの背面部に収納し、該ナンバープレートを転倒させてエアバッグ本体を展開膨張する
請求項1〜4記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項6】
前記転倒するナンバープレートがバンパーから離脱するのを防止する離脱防止手段を設けた
請求項5記載の車両用歩行者保護装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−160074(P2006−160074A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354229(P2004−354229)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
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