説明

車両用残燃料表示装置

【課題】IGスイッチのONからOFFまでの経過時間が比較的短い走行を繰り返す場合があっても、残燃料の表示更新が可能な車両用残燃料表示装置を提供する。
【解決手段】所定時間毎に残燃料検出手段の検出結果Aと残燃料表示値Hを比較し、これらの大小関係が更新判定回数(所定回数)N連続して同じであるか否かを判定する判定手段と、判定手段により同じ大小関係の連続回数UC、DCが更新判定回数Nを満足すると判定される場合には、残燃料表示値の更新を指示する指示手段と、IGスイッチ4がOFFしたとき、残燃料表示値および連続回数を記憶し、IGスイッチがOFFからONになったときに読み出し可能な記憶手段とを備え、判定手段は、IGスイッチがONしたときに、記憶手段に記憶の残燃料表示値および連続回数を読み出し、検出結果と残燃料表示値の大小関係の連続回数が更新判定回数を満足するか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料タンク内の燃料残存量(以下、残燃料と呼ぶ)を表示する車両用残燃料表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用残燃料表示装置は、燃料タンク内の燃料の液面位置を検出することにより残燃料のサンプリンングを複数回行い、これらを平均した平均データ(以下、残燃料測定平均値)を、表示データ(以下、残燃料表示値)として燃料表示器に表示するものが知られている(特許文献1参照)。このサンプリングの数(時間)が燃料表示器への残燃料の表示応答速度を決定しており、給油終了時には表示応答速度を高めて残燃料を速やかに表示し、給油以外の走行時等では誤表示防止のために表示応答速度を低くするようにしている。
【0003】
特許文献1では、残燃料測定平均値Aと、残燃料表示値Hとを比較し、N回連続してAとHの大小関係が同じであれば、残燃料測定平均値Aに残燃料表示値Hを近づける技術が開示されている。
【0004】
また、この技術では、イグニッションスイッチをオン直後の残燃料測定平均値Aと、前回オフ時に記憶した残燃料表示値Hの記憶値とを比較し、AとHの差が所定値以上あり給油時であると認められる場合には残燃料測定平均値Aで表示し、所定値以下の場合には前回から表示変更することなく、記憶値で表示する。
【0005】
なお、イグニッションスイッチがオフされるとき、残燃料表示値Hは記憶値として記憶されるが、残燃料測定平均値Aと残燃料表示値Hとの大小関係に係わる状態を示す上記連続回数を記憶するという記載はない。
【特許文献1】特開平10−253423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、給油時と給油時以外の場合とで表示応答速度を変更することにより、給油終了時に残燃料を速やかに表示するとともに、走行時等では誤表示防止が図れる。しかしながら、イグニッションスイッチのオフで連続回数がクリアされ保存されていないため、イグニッションスイッチのオン後の経過時間が、連続回数において少なくともN回のサンプリング時間T未満となるいわゆるチョイ乗り走行を繰り返す場合(例えば図4参照)には、表示更新がされず、燃料タンク内の燃料がなくなる(ガス欠)のおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、イグニッションスイッチのオンからオフまでの経過時間が比較的短い走行を繰り返す場合があっても、燃料タンク内の残燃料の表示更新が可能な車両用残燃料表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を備える。
【0009】
即ち、請求項1乃至5に記載の発明では、燃料タンク内の残燃料を検出する残燃料検出手段と、残燃料表示値を表示する表示手段と、所定時間毎に残燃料検出手段の検出結果と残燃料表示値を比較し、これらの大小関係が所定回数連続して同じであるか否かを判定する判定手段と、判定手段により大小関係が所定回数連続して同じであると判定される場合には、残燃料表示値を検出結果に近づけるように、表示手段で表示する残燃料表示値の更新を指示する指示手段と、イグニッションスイッチの状態を検出し、イグニッションスイッチがオフしたとき、表示手段に表示させている残燃料表示値、および判定手段で大小関係が連続して同じとなっている回数を記憶し、イグニッションスイッチがオフからオンになったときに読み出し可能な記憶手段とを備え、判定手段は、イグニッションスイッチがオンしたときに、記憶手段に記憶の残燃料表示値、および回数を読み出し、検出結果と残燃料表示値の大小関係が所定回数連続して同じであるか否かを判定することを特徴とする。
【0010】
これによると、イグニッションスイッチがオフ時に、表示手段に表示させている残燃料表示値、および判定手段で大小関係が連続して同じとなっている回数を記憶し、イグニッションスイッチのオン時に読み出し可能な記憶手段とを備え、判定手段は、イグニッションスイッチがオンしたときに、オフ時に記憶の残燃料表示値および回数を読み出し、検出結果と残燃料表示値の大小関係が所定回数連続して同じであるか否かを判定するので、イグニッションスイッチのオン期間が、大小関係を所定回数連続してサンプリングする時間より短い時間である場合であっても、オフ時に記憶の回数を加えて、大小関係が所定回数連続して同じであるという表示更新のための条件を満足させられる。
【0011】
したがって、イグニッションスイッチのオンからオフまでの経過時間が比較的短い走行を繰り返す場合があっても、残燃料表示値を更新することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、残燃料検出手段は、残燃料の所定時間における平均値を検出結果として出力することを特徴とする。
【0013】
これにより、例えば燃料タンク内での燃料の液面位置の変動等による残燃料の変動が緩和されるので、残燃料表示値を安定して表示更新することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明では、燃料タンクに給油されたか否かを判断する給油判断手段を備え、給油判定手段により給油されなかったと判断される場合に、判定手段を実行することを特徴とする。
【0015】
これにより、イグニッションスイッチのオンからオフまでの経過時間が比較的短い走行を繰り返す場合があっても、ガス欠防止が確実に図れるように、残燃料表示値を更新することができる。
【0016】
また、請求項4乃至5に記載の発明では、燃料タンクが搭載された車両が坂道で停止中か否かを判断する停車状態判断手段と、車両が走行開始状態であるか否かを判断する走行開始判断手段とを備え、停車状態判定手段により坂道で停車状態であると判断されると、判定手段を中止し、走行開始判断手段により走行開始状態であると判断されると、判定手段を実行することを特徴とする。
【0017】
坂道で停車していた場合には、燃料タンク内での燃料の液面位置が水平状態で停車の場合に対して変動するため、表示変動する可能性がある。
【0018】
これに対して請求項4乃至5に記載の発明によると、坂道で停車状態であると判断される場合において、停止中は表示更新のための判定手段を中止し、走行開始状態であると判断された以降において、その判定手段を実施するので、残燃料表示値の表示変動を回避することができる。
【0019】
したがって、イグニッションスイッチのオンからオフまでの経過時間が比較的短い走行を繰り返す場合があっても、ガス欠防止のための残燃料表示値更新をするとともに、ガス欠等の誤表示防止のための表示変動回避をすることができる。
【0020】
特に、請求項5に記載の発明では、走行開始判断手段は、車速が所定以上であること、シフトポジションが走行を許可するポジションであること、および車両の内燃機関が作動状態であることの少なくともいずれかに基づいて走行開始状態を判断することを特徴とする。
【0021】
これによると、走行開始状態を、車速が所定以上であること、シフトポジションが走行を許可するポジションであること、および車両の内燃機関が作動状態であることの少なくともいずれかで検出するので、走行開始状態を精度よく判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の車両用残燃料表示装置を、具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態による車両用残燃料表示装置の構成の一例を示す模式図である。図2は、図1中の制御部が実行する残燃料表示値の表示更新する制御処理を示すフローチャートである。なお、図3は、本実施形態の効果を比較説明のための、従来技術を適用した残燃料表示値の表示更新処理の一例を示す模式図であって、従来技術による表示更新処理過程における燃料タンク内の残燃料の測定値と表示値のずれを示すタイムチャートである。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の車両用残燃料表示装置は、燃料残量センサ1と、燃料表示部2と、制御部3と、イグニッションスイッチ4と、車速センサ6などの状態検出部5とを含んで構成されている。
【0025】
燃料残量センサ1は、図示しない燃料タンク内の燃料残存量(以下、残存燃料)を検出する周知の液量検出装置である。具体的には、燃料タンク内に蓄えられた燃料の液面に浮かせたフロートを、液面位置の増減に応じて変位させ、そのフロートの変位に連動して抵抗回路の電圧信号を液面位置信号として出力する燃料残量計測装置である。
【0026】
燃料表示部2は、図示しないコンビネーションメータ部内の所定位置に配置された燃料表示手段である。燃料表示部2の表示方法は、燃料残量(残燃料)に対応して表示レベルが上昇、下降するものや、図4中に示すバーセグメント(以下、セグメント)をLEDの点灯および消灯により表示、非表示することで、複数のセグメントの点灯面積で残燃料を表すものなど、車両の運転者等の乗員に残燃料を知らせるものであればいずれであってもよい。
【0027】
なお、本実施形態で説明する燃料表示部3は、複数のセグメントの点灯面積で残燃料を表すものとする。セグメント単位は、所定量の残燃料に相当する。なお、図5の一例では、セングメント数を5個で示されているが、6、7、あるいは10個等であってもよい。
【0028】
状態検出部5は、例えば車速Vやエンジン回転数Neなどの車両の状態を検出する検出装置である。本実施形態では、状態検出部5は、車速センサ6と、シフトポジションセンサ7と、傾斜センサ8と、回転数センサ(図示せず)を備えている。車速センサ6は、トランスミッションの出力軸の回転数(回転速度)等を検出することにより車両の走行速度(以下、車速)Vを検出する周知のものである。また、シフトポジションセンサ7は、各シフトポジション(Pポジション、Rポジション、Nポジション、Dポジション(1〜n速))を検出する周知のものである。傾斜センサ8は、車両の傾斜(水平、非水平等)を検出する。回転数センサは、エンジンのクランクシャフト等の回転数(回転速度)を検出することによりエンジン回転数(回転速度)Neを検出する周知のものである。
【0029】
イグニッションスイッチ(IGスイッチとも呼ぶ)4は、キーやボタン操作(以下、本実施例ではキー操作)による周知の始動指示スイッチである。インスルメントパネル前面にあるキーシリンダ(図示せず)にキーを差し込んで、イグニッション位置(以下、ON位置)、スタータ位置(以下、エンジン始動位置)に操作する周知のものである。
【0030】
キーをON位置にすると、燃料表示部3等の表示装置や車両に搭載の搭載装置(以下、車両搭載装置)に、車両のバッテリから電力が供給され、表示装置の表示機能や、各車両搭載装置の各機能をスタンバイモード等にする。さらに、キーをON位置からエンジン始動位置にすると、エンジンに搭載のスタータにバッテリより大電流が供給され、大電流の供給を受けたスタータは、エンジンのクランクシャフトを回転駆動し、エンジンを始動させる。
【0031】
制御部3は、燃料残量センサ1、燃料表示部2、イグニッションスイッチ4、状態検出部5に対して各種の信号を送受信可能とされている。すなわち、制御部3は、燃料残量センサ1と、イグニッションスイッチ4と、状態検出部5の車速センサ6、シフトポジションセンサ7、および傾斜センサ8と電気的に接続され、これらの各種の検出手段より出力の信号が入力されている。
【0032】
制御部3は、内部に周知のCPU、ROM、RAM、I/Oなどの入出力装置等を備える周知の制御装置である。ROMおよびRAMは各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(以下、記憶部)3である。そして、ROMには、各種のプログラムが書き込まれており、このプログラムに従って、CPU等が所定の演算処理等の制御処理を実行する。
【0033】
制御部3は、給油がされたか否かを判断する給油判断手段と、給油がなされた場合に残燃料表示値の表示更新を早める燃料表示更新手段(以下、給油時表示更新手段)と、給油以外の場合に液面位置変動等による誤表示防止のために表示更新を遅らせる燃料表示更新手段(以下、安定表示更新手段)とを備えている。
【0034】
給油判断手段は、残燃料が所定の増量(以下、給油判定量)以上に増量したか否かを判断する。燃料残量センサ1により検出した残燃料の増量が給油判定量(例えば、5L)以上の場合には給油状態にあると判定し、残燃料の増量が給油判定量未満の場合には、給油状態にないと判定する。
【0035】
給油時表示更新手段は、給油判断手段により給油状態であると判断されると、燃料残量センサ1の検出結果を比較的短いサンプリング時間(数)で平均化し、その測定平均値に近づけるように残燃料表示値を更新する。これにより、給油判定量以上に給油された残燃料状態において、給油状態の残燃料表示値を速やかに表示するようにする。
【0036】
また、安定表示更新手段は、給油判断手段により所定の給油状態でないと判断される場合、あるいは状態検出部5による検出で車両が走行状態等である場合において、燃料残量センサ1の検出結果を比較的長いサンプリング時間(数)で平均化し、その測定平均値に近づけるように残燃料表示値を更新する。
【0037】
なお、実際には車両に給油が行なわれた場合であっても、給油量が給油判定量以下(例えば、4L)の場合には、安定表示更新手段によって残燃料表示値を給油後の残燃料にゆっくりと近づけていくことになる。
【0038】
制御部3は、現在の測定平均値Aと、残燃料表示値Hとを所定時間(例えば、25秒)毎(以下、所定サンプリング周期)tで比較してAとHの大小関係を判断し、AとHの大小関係が所定回(以下、更新判定回数)(例えば、12回)N連続して同じであるか否かを判定する判定手段(以下、累積成立判定手段)を備えている。累積成立判定手段は、AとHの大小関係において、A>Hと、A<Hとのいずれの状態であるか否かをまず判定する。A>Hが初回成立する場合には、次に、A>Hの判定が所定サンプリング周期tで連続成立して繰り返される毎に、累積カウンタ(以下、連続増判定用累積カウンタ)UCをインクリメントする。
【0039】
また、A<Hが初回成立する場合には、A<Hの判定が所定サンプリング周期tで連続成立して繰り返される毎に、累積カウンタ(以下、連続減判定用累積カウンタ)DCをインクリメントする。
【0040】
また、制御部3は、残燃料表示値Hの更新を指示する指示手段を備えており、この指示手段は、上記の連続増判定用累積カウンタUCおよび連続減判定用累積カウンタDCのいずれかが更新判定回数に達したと累積成立判定手段により判定されると、残燃料表示値Hを測定平均値Aに近づけるように燃料表示部2に更新を指示する。具体的には、制御部3は、残燃料の所定量に相当するセグメント単位分に対応したLEDを1つ点灯もしくは消灯するように、燃料表示部2を制御する。
【0041】
さらにまた、制御部3は、上記累積成立判定手段による大小関係(例えば、A<H)の連続判定途中において、イグニッションスイッチ4が、ON位置からOFF位置へ切換えられる場合には、OFF前にて連続大小関係成立の連続減判定用累積カウンタDCを記憶する。この連続減判定用累積カウンタDCは、制御部3の記憶部3aにOFF前累積カウンタDCPとして制御部3の記憶部3aに記憶される。また、OFF位置へ切換え時にA>Hの連続判中であった場合には、連続増判定用累積カウンタUCが、OFF前累積カウンタUCPとして記憶部3aに記憶される。
【0042】
また、制御部3は、イグニッションスイッチ4がOFF位置からON位置へ切換えられるときに、上記OFF前累積カウンタDCP、UCPを記憶部3aより読み出し、両OFF前累積カウンタDCP、UCPに記憶の記憶値を、連続減判定用累積カウンタDC、連続増判定用累積カウンタUCに加算する。
【0043】
なお、上記連続大小関係成立中の連続減判定用累積カウンタDCもしくは連続増判定用累積カウンタUCにおいて、これに対応の他方の累積カウンタUC、DCは連続大小関係が成立であり、クリア(初期化)されている。
【0044】
なお、ここで、燃料残量センサ1は、請求範囲に記載の残燃料検出手段に相当する。また、燃料表示部2は、請求範囲に記載の表示手段に相当する。ROMおよびRAMは、請求範囲に記載の記憶手段に相当する。状態検出部5および制御部3は、請求範囲に記載の停車状態判断手段乃至、走行開始手段に相当する。
【0045】
また、所定サンプリング周期は、請求範囲に記載の所定時間に相当する。累積カウンタUC、DCの状態値は、請求範囲に記載の大小関係が連続して同じとなっている回数に相当する。連続増累積カウンタUCは、燃料残量センサ2の検出結果(測定平均値)Aと、残燃料表示値Hとの大小関係において、A>Hの判定が所定サンプリング周期tで連続成立した連続回数に対応する。連続減累積カウンタDCは、A<Hの判定が所定サンプリング周期tで連続成立した連続回数に対応する。
【0046】
次に、上述の構成を有する車両用残燃料表示装置の作動、特に上記制御部3で実行する制御処理について図2に従って説明する。なお、本実施形態の制御処理において、上記給油時表示更新手段による残燃料表示値Hの更新処理は本発明ではないため、説明を省略する。すなわち、S101(Sはステップ)からS303の制御処理では、車両への給油が給油判定量以下の場合もしくは車両が給油なれないままの場合において、安定燃料表示手段による制御処理の一例を説明する。
【0047】
まず、S101(Sはステップ)からS105の制御処理は、イグニッションスイッチ4の状態がOFF(オフ)からON(オン)へ切換時に、イグニッションスイッチ4のOFF前において安定燃料表示手段の制御処理にて判定の連続大小関係成立中の累積カウンタDC、UCの状態値当を読み出す制御処理(以下、安定表示更新前処理)である。また、S201からS236の制御処理は、イグニッションスイッチ4のON後における上記安定燃料表示手段による具体的な実行内容を示す制御処理(以下、安定表示更新本処理)である。S301からS303の制御処理は、イグニッションスイッチ4がONからOFFへ切換わる前に、上記連続大小関係成立中の累積カウンタDC、UC等の状態値を記憶し保存する制御処理(以下、安定表示更新後処理)である。
【0048】
具体的には、図2に示すように、S101では、イグニッションスイッチ4の状態が、OFFからONへの切換状態か否かを判定する。具体的にはOFFカウントSTがST=0であるか否かを判定する。OFFカウントST=0である場合には、OFFからONへ切換わった状態であると判断し、S102へ進む。OFFカウントST=0でない場合には、ON状態が継続しているものと判断し、S201へ進む。
【0049】
S102では、OFF前に記憶の残燃料表示値Hを読み出し、S103では、OFF前に記憶の累積カウンタUC、DCの状態値を読み込むために、記憶部3に記憶の累積カウンタ記憶値UCP、DCPを読み出す。
【0050】
S104では、OFFからONへ切換状態での現在の累積カウンタUC、DCに、OFF前に記憶の累積カウンタUC、DCの状態値を反映し、累積カウンタUC、DCのセットアップする。具体的には、連続増判定用累積カウンタUCおよび連続減判定用累積カウンタDCを、それぞれUC=UCP、DC=DCPに設定する。
【0051】
S105では、OFFカウントSTをインクリメントし、ST=1とし、S201へ進む。
【0052】
S201では、燃料残量センサ1により残燃料を計測し、所定サンプル周期tで平均測定値Aを取り込み、S211へ進む。
【0053】
S211からS216の制御処理は、平均測定値Aと残燃料表示値Hの大小関係において、A>Hの判定が所定サンプリング周期tで連続成立する場合を想定した制御処理であり、S221からS226の制御処理は、A<Hの判定が所定サンプリング周期tで連続成立する場合を想定した制御処理である。
【0054】
具体的には、S211では、A>Hであるか否かを判定する。A>Hである場合には、S212へ進んで連続増用累積カウンタUCをインクリメントし(UC=UC+1)、S213へ進む。逆に、A>Hでない場合には、S221へ進む。
【0055】
S213では、連続増用累積カウンタUCが更新判定回数(所定回数)Nに達した(UC≧N)か否かを判定する。連続増用累積カウンタUCが更新判定回数Nに達した場合には、S214へ進む。連続増用累積カウンタUCが更新判定回数Nに達していない場合には、S216へ進む。
【0056】
S214では、残燃料表示値Hを更新するように指示し、燃料表示部2の表示更新をする。具体的には、現在の残燃料表示値Hに、所定量の残燃料に相当するセグメント単位1分を加算する。制御部3は、燃料表示部2のセグメントを一つ点灯し、車両の乗員に、残燃料が所定量増加したことを表示する。そして、連続増用累積カウンタUCをクリア(初期化)し(S215)、連続減用累積カウンタDCをクリア(初期化)した(S216)後に、S301へ進む。
【0057】
また、S221では、A<Hであるか否かを判定する。A<Hである場合には、S222へ進んで連続減用累積カウンタDCをインクリメントし(DC=DC+1)、S223へ進む。逆に、A<Hでない場合には、S236へ進んで両累積カウンタUC、DCをクリア(初期化)し、S301へ進む。
【0058】
S223では、連続減用累積カウンタDCが更新判定回数(所定回数)Nに達した(DC≧N)か否かを判定する。連続減用累積カウンタDCが更新判定回数Nに達した場合には、S224へ進む。連続減用累積カウンタDCが更新判定回数Nに達していない場合には、S226へ進む。
【0059】
S224では、残燃料表示値Hを更新するように指示し、燃料表示部2の表示更新をする。具体的には、現在の残燃料表示値Hに、所定量の残燃料に相当するセグメント単位1分を減算する。制御部3は、燃料表示部2のセグメントを一つ消灯し、車両の乗員に、残燃料が所定量減少したことを表示する。そして、連続減用累積カウンタDCをクリア(初期化)し(S225)、連続減用累積カウンタDCをクリア(初期化)した(S226)後に、S301へ進む。
【0060】
S301では、イグニッションスイッチ4の状態が、ONからOFFへの切換状態か否かを判定する。ONからOFFへ切換わった状態である場合には、S302へ進む。ON状態が継続している場合には、S101へ戻って当該制御処理を繰り返す。
【0061】
S302では、制御部3の記憶部3aに、OFF前の現在の残燃料表示値Hを記憶し、OFF前の現在の累積カウンタUC、DCは、その状態値を累積カウンタ記憶値UCP、DCPに記憶する。
【0062】
S303では、OFFカウントSTをクリア(初期化)し、ST=0とし、S201へ戻って待機する。
【0063】
以上説明した本実施形態では、安定化表示後処理S301〜S303でのS302の制御処理において、イグニッションスイッチ4の状態がONからOFFへ切換わるときに、OFF前の現在の残燃料表示値Hを記憶し、OFF前の現在の累積カウンタUC、DCは、その状態値を累積カウンタ記憶値UCP、DCPに記憶する。これにより、OFF前に、平均測定値Aと残燃料表示値Hの大小関係においてA>HもしくはA<Hの連続成立の判定中であった連続増用累積カウンタUC、連続減用累積カウンタDCの状態値(例えば、判定が連続成立した回数としての6回)を、イグニッションスイッチ4の状態がOFFからONへ切換わるまでの間、記憶し保存することができる。
【0064】
さらに、安定化表示前処理S101〜S106でのS103およびS104の制御処理において、イグニッションスイッチ4の状態がOFFからONへ切換わるときに、記憶部3aに記憶の累積カウンタ記憶値UCP、DCPを読み出し、累積カウンタ記憶値UCP、DCPをON後の現在の累積カウンタUC、DCに加算するので、ON後の現在の累積カウンタUC、DCに、OFF前に記憶の累積カウンタUC、DCの状態値を反映することができる。
【0065】
それ故に、安定化表示本処理S201〜S236において、上記大小関係の連続成立の表示更新の条件である更新判定回数Nを満足するに必要なサンプリング期間を、OFF前に記憶の累積カウンタUC、DCの状態値を加えた分だけ、短縮することができる。
【0066】
これにより、イグニッションスイッチ4のON(オン)期間が、大小関係を更新判定回数(所定回数)Nに相当するサンプリング期間より短い時間である場合であっても、OFF(オフ)時に記憶の累積カウンタUC、DCの状態値を、ON後の累積カウンタUC、DCに加えるので、表示更新の条件である更新判定回数Nを満足させられる。
【0067】
したがって、イグニッションスイッチ4のONからOFFまでの経過時間が比較的短い走行を繰り返す場合があっても、残燃料表示値Hを更新することができる。
【0068】
以上説明した本実施形態では、制御部3は、残燃料の燃料残量センサ1による検出結果として、所定サンプリング周期t毎に燃料残量センサ1により残燃料を計測した計測値を用いるのではなく、所定サンプリング周期t内での燃料残量センサ1の検出による測定平均値Aを用いている。これにより、燃料タンク内での燃料の液面位置の変動等による残燃料の変動が緩和されるので、残燃料表示値Hを安定して表示更新することができる。
【0069】
以上説明した本実施形態では、給油判定手段により給油されなかったと判断される場合に用いる安定表示更新手段による制御処理S101〜S303によって実行されている。これにより、イグニッションスイッチ4のONからOFFまでの経過時間が比較的短い走行を繰り返す場合があっても、ガス欠防止が確実に図れるように、残燃料表示値Hを更新することができる。
【0070】
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰返さない。
【0071】
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した安定化表示本処理S201〜S236において、図3に示すように、S201とS211の制御処理の間に、S202およびS203の制御処理を実行するように構成した。図3は、本実施形態に係わる残燃料表示値の表示更新する制御処理の一部を示すフローチャートである。
【0072】
一般に、坂道で停車していた場合には、燃料タンク内での燃料の液面位置が水平状態で停車の場合に対して変動するため、表示変動する可能性がある。本実施形態は、これを解決するものである。
【0073】
図3に示すように、イグニッションスイッチ4がON状態のとき、所定サンプル周期t毎に現在の平均測定値Aを求める(S201)。
【0074】
次に、S202では、車両が坂道で停車中か否かを判定する。具体的には車両の傾斜センサ8により車両が水平で停車しているか否かを判定する。水平状態で停車している場合には、S211へ進む。水平状態でなく傾斜した坂道で停車している場合には、S203へ進む。
【0075】
S203では、車両が走行開始状態であるか否かを判定する。具体的には、車速VがV=0以外の所定値以上であること、シフトポジションがPもしくはN以外の走行許可するポジション(DまたはR)であること、およびエンジンの作動状態であることを示すエンジン回転数NeがNe=0以外の所定回転数以上であることのいずれかの条件(以下、走行開始条件)を満足しているか否かを判定する。走行開始条件を満足している場合には、S211へ進む。
【0076】
走行開始条件を満足していない場合には、S211以下の安定化表示本処理を実行せずに、S301へ進む。そのため、走行開始条件を満足するまで待機状態となる。
【0077】
以上説明した本実施形態では、坂道で停車状態であると判断される場合において、停止中は表示更新のための安定表示更新本処理S211〜S236の実行を中止し、走行開始状態であると判断された以降において、その安定表示更新本処理S211〜S236を実施するので、残燃料表示値Hの表示変動を回避することができる。
【0078】
したがって、イグニッションスイッチ4のONからOFFまでの経過時間が比較的短い走行を繰り返す場合があっても、ガス欠防止のための残燃料表示値H更新をするとともに、ガス欠等の誤表示防止のための表示変動回避をすることができる。
【0079】
また、上記走行開始状態であると判断する走行開始条件として、車速VがV=0以外の所定値以上であること、シフトポジションがPもしくはN以外の走行許可するポジション(DまたはR)であること、およびエンジンの作動状態であることを示すエンジン回転数NeがNe=0以外の所定回転数以上であることのいずれかの条件を満足することとするので、走行開始状態を精度よく判断することができる。
【0080】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。
【0081】
(1)例えば表示更新の条件である、更新判定回数Nを満足した場合に、残燃料表示値に、セグメント単位1分を加算もしくは減算したが、これに限らず、セグメント単位2等を加算もしくは減算するものであってもよく、残燃料表示値を測定平均値に近づけるように表示更新するものであればいずれでもよい。
【0082】
(2)また、以上説明した本実施形態では、燃料残量センサ4を、燃料タンク内の燃料の液面に浮かせたフロートの変動に基づいて抵抗回路を介した液面(電圧)信号により残燃料を計測するもので説明したが、これに限らず、超音波センサ等を利用し、超音波を発射し液面からの反射波を受信して液面を検出するものであってもよい。
【0083】
(3)また、以上説明した本実施形態では、残燃料表示値Hと測定平均値Aを比較する所定サンプリング周期tを25秒とし、更新判定回数Nを12回とする組合せとし、少なくともt×Nの5分のサンプリング期間で表示更新するものとして説明した。これに限らず、所定サンプリング周期tを12秒等とする組合せや、更新判定回数Nを6回等とする組合せなど、いずれであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態による車両用残燃料表示装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】図1中の制御部が実行する残燃料表示値の表示更新する制御処理を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態に係わる残燃料表示値の表示更新する制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図4】従来技術を適用した残燃料表示値の表示更新処理の一例を示す模式図であって、表示更新処理過程における燃料タンク内の残燃料の測定値と表示値のずれを示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0085】
1 燃料残量センサ(残燃料検出手段)
2 燃料表示部(燃料表示器)
3 制御部(制御装置)
3a 記憶部
4 イグニッションスイッチ
5 状態検出部
6 車速センサ
7 シフトポジションセンサ
8 傾斜センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内の残燃料を検出する残燃料検出手段と、
残燃料表示値を表示する表示手段と、
所定時間毎に前記残燃料検出手段の検出結果と前記残燃料表示値を比較し、これらの大小関係が所定回数連続して同じであるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記大小関係が所定回数連続して同じであると判定される場合には、前記残燃料表示値を前記検出結果に近づけるように、前記表示手段で表示する前記残燃料表示値の更新を指示する指示手段と、
イグニッションスイッチの状態を検出し、前記イグニッションスイッチがオフしたとき、前記表示手段に表示させている前記残燃料表示値、および前記判定手段で前記大小関係が連続して同じとなっている回数を記憶し、前記イグニッションスイッチがオフからオンになったときに読み出し可能な記憶手段とを備え、
前記判定手段は、前記イグニッションスイッチがオンしたときに、前記記憶手段に記憶の前記残燃料表示値、および前記回数を読み出し、前記検出結果と前記残燃料表示値の大小関係が所定回数連続して同じであるか否かを判定することを特徴とする車両用残燃料表示装置。
【請求項2】
前記残燃料検出手段は、前記残燃料の前記所定時間における平均値を前記検出結果として出力することを特徴とする請求項1に記載の車両用残燃料表示装置。
【請求項3】
前記燃料タンクに給油されたか否かを判断する給油判断手段を備え、
前記給油判定手段により給油されなかったと判断される場合に、前記判定手段を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用残燃料表示装置。
【請求項4】
前記燃料タンクが搭載された車両が坂道で停止中か否かを判断する停車状態判断手段と、
前記車両が走行開始状態であるか否かを判断する走行開始判断手段とを備え、
前記停車状態判定手段により坂道で停車状態であると判断されると、前記判定手段を中止し、前記走行開始判断手段により走行開始状態であると判断されると、前記判定手段を実行することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用残燃料表示装置。
【請求項5】
前記走行開始判断手段は、車速が所定以上であること、シフトポジションが走行を許可するポジションであること、および前記車両の内燃機関が作動状態であることの少なくともいずれかに基づいて前記走行開始状態を判断することを特徴とする請求項4に記載の車両用残燃料表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−298298(P2007−298298A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124254(P2006−124254)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】