説明

車両用浄化装置

【課題】車室内の臭い成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を効果的に分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌する。装置の運転制御がスイッチを手動操作することなくできて安全運転に寄与できる。
【解決手段】車両7に搭載されて車室8内の浄化を行うための車両用浄化装置である。放電電極1と、放電電極1に高電圧を印加する高電圧印加手段15と、上記放電電極1に水を供給する水供給手段3と、放電電極1に高電圧を印加して放電電極1に供給された水を静電霧化することで生成された帯電微粒子水を車室8内に放出する放出口4を有する静電霧化装置6と、音声認識装置5とを備える。音声認識装置5で認識した制御信号に基づいて静電霧化装置6の運転制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から乗用車等の車両の車室内は密閉空間であるため、臭やアレルゲン物質が車室内にこもり、また、車室内の内装に付着したりするという問題がある。このため、ろ過方式の空気浄化装置が各種提供されているが、内装に付着した臭い成分やアレルゲン物質を除去することができない。
【0003】
そこで、水を霧化させてナノメータサイズの帯電微粒子水(ナノミスト)を発生させる静電霧化装置が注目されている。この静電霧化装置が発生するナノメータサイズの帯電微粒子水はスーパーオキサイドラジカルやヒドロキシラジカルといったラジカルが含まれていて、脱臭効果や、ウイルス、カビ菌の除菌、抑制効果、アレルゲン物質の不活性化等の効果があることから、近年注目されている。このため、車室内の壁面やシート等に付着した臭い成分の脱臭を行うことができると共に、人や衣服に付着して室内に持ち込まれた花粉等のアレルゲン物質も抑制することができる。
【0004】
このような静電霧化装置が発生する帯電微粒子水を車両が備える空調装置により出力する風に乗せて車室内に放出するようにしたものが特許文献1により知られている。
【0005】
上記特許文献1に記載された従来例にあっては、車室内に設けた操作パネルに備わっているオン、オフスイッチを手で操作することで、静電霧化装置の操作を行うようにしたり、あるいは車両に備わっている冷暖房用の空調装置のオン、オフに連動して空調装置のオン、オフ操作を行うことで静電霧化装置の運転のオン、オフを行うようになっている。
【0006】
したがって、上記従来例において、前者においては、オン、オフ操作を手動操作で行うものであるから操作が煩雑であり、特に、ハンドルを操作して運転している運転中に静電霧化装置のオン、オフを行うのは安全運転という観点上あまり好ましくないという問題がる。また、後者においては、空調装置のオン、オフと関係なく、静電霧化装置単独での運転ができないという問題があり、不必要な時に静電霧化装置が運転されたり、あるいは必要とされる時に静電霧化装置が運転されなかったりするという問題があり、また、この場合、静電霧化装置単独のオン、オフ操作を手動では行わないが、空調装置のオン、オフを手動で行わなければならないという問題がある。
【0007】
そこで、静電霧化装置の電源として車両電源であるバッテリーを使用し、イグニッションキースイッチを介して静電霧化装置をオン、オフすることが考えられる。この場合は、イグニッションキースイッチをオンにすることで、自動的に静電霧化装置をオンにし、イグニッションキースイッチをオフにすることで、自動的に静電霧化装置をオフにすることも考えられる。
【0008】
ところがこの場合は、イグニッションキースイッチがオンの場合は車室内の除菌や脱臭が必要でない時にも静電霧化装置の運転が継続し、車両電源であるバッテリーが消耗しやすいという問題がある。また、イグニッションキースイッチがオフの時は静電霧化装置を運転して車室内に蓄積した臭い成分やアレルゲン物質を除去することができないという問題があった。
【0009】
また、上記特許文献1に示された従来例にあっては、放出口からの放出方向を可変するようになっておらず、車室内の任意の箇所を向くように放出口の向きを変えて目的とする箇所に蓄積した臭い成分やアレルゲン物質の除去を集中して行うことができなかった。
【特許文献1】特開2006−151046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、車両の車室内に持ち込まれたり車室内に蓄積した臭い成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を効果的に分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌することができ、しかも、装置の運転制御がスイッチを手動操作することなくできて安全運転に寄与でき、また、空調装置やイグニッションキースイッチのオン、オフに関係なく、必要な時にのみ装置の運転ができ、更に、車室内の任意の箇所における臭い成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌を集中して行うことができる車両用浄化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る車両用浄化装置は、車両7に搭載されて車室8内の浄化を行うための車両用浄化装置であって、放電電極1と、放電電極1に水を供給する水供給手段3と、放電電極1に高電圧を印加する高電圧印加手段15と、放電電極1に高電圧を印加して放電電極1に供給された水を静電霧化することで生成された帯電微粒子水を車室8内に放出する放出口4を有する静電霧化装置6と、音声認識装置5とを備え、音声認識装置5で認識した制御信号に基づいて静電霧化装置6の運転制御を行うことを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、車室8内において静電霧化装置6の運転制御を行うに当って音声で指令を出すことで、該音声の指令を音声認識装置5で認識し、音声認識装置5で認識した制御信号に基づいて静電霧化装置6の運転制御を行うことができる。したがって、車両を運転している時、運転していないときにかかわらず、必要な時に音声による指令で、静電霧化装置6をオンにして放電電極1に高電圧を印加することで放電電極1に供給された水を静電霧化して生成したラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子水を車室8内に放出することができ、車室8内に持ち込まれ、蓄積した臭い成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を効果的に分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌することが可能となり、また、静電霧化装置6の運転を停止したい場合は、音声による指令で簡単に停止でき、この結果、車両7の運転中であっても、ハンドルから手を離すこと無く静電霧化装置6の運転制御ができ、また、従来のように、空調装置やイグニッションキースイッチのオン、オフに連動して静電霧化装置6の運転制御をするものではないので、空調装置のオン、オフやイグニッションキースイッチのオン、オフに関係なく独立して必要なときに静電霧化装置6の運転ができ、電源として車両電源であるバッテリー12を使用した場合は、該バッテリー12の不必要な損耗を抑制できる。
【0013】
また、車両7に搭載されて車室8内の浄化を行うための車両用浄化装置であって、放電電極1と、放電電極1に高電圧を印加する高電圧印加手段15と、放電電極1に高電圧を印加することで生成されたイオンとオゾンを車室8内に放出する放出口4を備えたイオン発生装置と、音声認識装置5とを備え、音声認識装置5で認識した制御信号に基づいてイオン発生装置9の運転制御を行うことが好ましい。
【0014】
車室8内においてイオン発生装置9の運転制御を行うに当って音声で指令を出すことで、該音声の指令を音声認識装置5で認識し、音声認識装置5で認識した制御信号に基づいてイオン発生装置9の運転制御を行うことができる。したがって、車両を運転している時、運転していないときにかかわらず、必要な時に音声による指令で、イオン発生装置9をオンにして放電電極1に高電圧を印加することでイオン及びオゾンを発生させて車室8内に放出することができ、車室8内に持ち込まれ、蓄積した臭い成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を効果的に分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌することが可能となり、また、イオン発生装置9の運転を停止したい場合は、音声による指令で簡単に停止でき、この結果、車両7の運転中であっても、ハンドルから手を離すこと無くイオン発生装置9の運転制御ができ、また、従来のように、空調装置やイグニッションキースイッチのオン、オフに連動してイオン発生装置9の運転制御をするものではないので、空調装置のオン、オフやイグニッションキースイッチのオン、オフに関係なく独立して必要なときにイオン発生装置9の運転ができ、車両電源であるバッテリー12の不必要な損耗を抑制できる。
【0015】
また、放出口4からの放出方向を可変する放出方向可変手段11を設け、上記音声認識装置5で認識した放出方向可変信号に基づいて放出方向を可変することが好ましい。
【0016】
このような構成とすることで、放出方向可変指令を音声で指令することで、該音声の指令を音声認識装置5で認識し、音声認識装置5で認識した放出方向可変信号に基づいて放出方向可変手段11を制御して、放出口4からの放出方向を可変することができる。したがって、空調装置のオン、オフやイグニッションキースイッチのオン、オフに関係なく独立して必要なときに放出口4からの放出方向を可変して、車室8内の目的とする箇所、特に目的とする座席部分における臭い成分やウイルス、菌、アレルゲン物質の脱臭、除去、不活性化を集中出して行うことができ、運転中であってもハンドルから手を離すことなく放出口4からの放出方向を可変できるので、安全運転ができる。
【0017】
また、高電圧印加手段15が車両電源であるバッテリー12であって、バッテリー容量が一定値以上の場合に装置の運転が可能となっていることが好ましい。
【0018】
このような構成とすることで、電源として車両電源であるバッテリー12を使用しているにもかかわらず、バッテリー上がり現象を防止しながら、臭い成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を効果的に分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌を効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、装置の制御のための音声による指令を音声認識装置が認識して装置の運転を制御するので、スイッチを手動操作することなく装置の運転制御ができ、車室内に持ち込まれたり車室内に蓄積した臭い成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を効果的に分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌することができ、また、運転中であってもハンドルから手を離すことなく装置の制御ができるので、安全運転に寄与できるものであり、また、空調装置やイグニッションキースイッチのオン、オフに関係なく、必要な時にのみ装置の運転ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0021】
図1には自動車のような車両7の概略図が示してあり、車両7には静電霧化装置6と音声認識装置5とが設けてある。添付図面に示す実施形態では静電霧化装置6の主体を構成する静電霧化装置本体6aと音声認識装置5が車室7内の天井50やインストルメントパネル51部分等に設けてある。
【0022】
静電霧化装置6は、放電電極1と、放電電極1と対向する対向電極2と、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加する高電圧印加手段15と、上記放電電極1に水を供給する水供給手段3と、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加して放電電極1に供給された水を静電霧化することで生成された帯電微粒子水を車室8内に放出する放出口4を有したものである。
【0023】
図2には本発明に用いる静電霧化装置6の主体を構成する静電霧化装置本体6aの概略構成図が示してある。図2に示す実施形態においてはペルチェユニット16のような冷却手段17により空気中の水分を冷却して結露水を生成することで放電電極1に水を供給するようになっている。したがって、本実施形態では冷却手段17が放電電極1に水を供給する水供給手段3を構成している。
【0024】
ペルチェユニット16は、熱伝導性の高いアルミナや窒化アルミニウムからなる絶縁板の片面側に回路を形成してある一対のペルチェ回路板18を、互いの回路が向き合うように対向させ、多数列設してあるBiTe系の熱電素子19を両ペルチェ回路板18間で挟持すると共に隣接する熱電素子19同士を両側の回路で電気的に接続させ、ペルチェ入力リード線20を介してなされる熱電素子19への通電により一方のペルチェ回路板18側から他方のペルチェ回路板18側に向けて熱が移動するように構成したものである。更に、上記一方の側のペルチェ回路板18の外側には冷却部21を接続してあり、また、上記他方の側のペルチェ回路板18の外側には放熱部22が接続してあり、実施形態では放熱部22として放熱フィンの例が示してある。ペルチェユニット16の冷却部21には放電電極1の後端部が接続してある。
【0025】
放電電極1は絶縁材料からなる筒体23で囲まれており、該筒体23の先端開口部にリング状をした対向電極2が配設され、放電電極1の軸心の延長線上にリング状の対向電極2のリングの中心が位置するように放電電極1と対向電極2とが対向している。
【0026】
放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加するための高電圧印加手段15としては車両7に搭載してある車両電源であるバッテリー12あるいは車両電源とは異なる電源であってもよい。高電圧印加手段15として車両電源であるバッテリー12を使用する場合は、イグニッションキースイッチや車両7に搭載された空調機器のスイッチを介することなくバッテリー12に接続してあり、したがって、イグニッションキースイッチのオン、オフや空調機器のスイッチのオン、オフに関係なく高電圧印加手段15を独立して後述のように音声認識装置5による音声認識の有無によりバッテリー12側からの電源供給のオン、オフを行うようになっている。
【0027】
この静電霧化装置6では、冷却手段17であるペルチェユニット16に通電することで、冷却部21が冷却され、冷却部21が冷却されることで放電電極1が冷却され、空気中の水分を結露して放電電極1に水(結露水)を供給するようになっている。このように放電電極1に水が供給された状態で上記放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加すると、放電電極1と対向電極2との間にかけられた高電圧により放電電極1の先端部に供給された水と対向電極2との間にクーロン力が働いて、水の液面が局所的に錐状に盛り上がり(テーラーコーン)が形成される。このようにテーラーコーンが形成されると、該テーラーコーンの先端に電荷が集中してこの部分における電界強度が大きくなって、これによりこの部分に生じるクーロン力が大きくなり、更にテーラーコーンを成長させる。このようにテーラーコーンが成長し該テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度となると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受け、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返してマイナスに帯電したナノメータサイズの帯電微粒子水を大量に生成させ、生成された帯電微粒子水は筒体23の先端開口部を経て該先端開口部と連通する放出口4から外部に放出されるようになっている。ここで筒体23の先端開口部が外部に放出するための放出口4であっても良く、また、筒体23の先端開口部と放出口4とを連通路(図示せず)で連通してもよい。
【0028】
なお、上記実施形態では冷却手段17により水供給手段を構成した例を示したが、水溜め部に水を溜め、この水溜め部の水を毛細管現象などを利用して放電電極1の先端部に供給することで水供給手段3を構成するようにしてもよい。
【0029】
車室7内の天井50部分あるいはインストルメントパネル51部分に放出方向可変手段11を構成する方向可変装置40が取付けてある(添付図面に示す実施形態では天井50部分に取付けてある)。方向可変装置40は天井50部分あるいはインストルメントパネル51部分に取付けられる基部41と、基部41に対して回動自在となった回動体42とで構成してある。
【0030】
回動体42は駆動手段により回動自在となっている。回動体42の回動は、例えば、上下方向(Y方向)の軸回りに回動自在となっている。もちろん上下方向(Y方向)の軸回りに回動自在となり且つ前後方向(X方向)の軸回りに回動自在となってもよく。あるいは、上下方向(Y方向)の軸回りに回動自在となり且つ左右方向(Z方向)の軸回りに回動自在となっていたり、あるいは、左右方向(X方向)の軸回りに回動自在となり且つ左右方向(Z方向)の軸回りに回動自在となっていたり、あるいは、上下方向(Y方向)の軸回りに回動自在となり且つ前後方向(X方向)の軸回りに回動自在となり且つ左右方向(Z方向)の軸回りに回動自在となっていたりしてもよい。
【0031】
なお、ここで、上記X方向、Y方向、Z方向とは、X方向がY方向及びZ方向の双方に対して直交し、また、Y方向がX方向及びZ方向の双方に対して直交し、Z方向がX方向及びY方向の双方に対して直交しているという関係となっているものとする。
【0032】
そして、例えば、各軸周りに回動させるには例えばステッピングモータ等の駆動手段により駆動するようになっており、駆動電源としては車両7に搭載してある車両電源であるバッテリー12を使用してもよく、また、車両電源とは異なる別の電源を使用してもよい。
【0033】
この方向可変装置40の回動体42には上記静電霧化装置本体6aが取付けてある。したがって、回動体42を回動することで、放出口4の向きを変え、放出口4からの放出方向を可変することができるようになっている。
【0034】
車室8内の天井50あるいはインストルメントパネル51部分に設けられた音声認識装置5には図4に示すように、音声入力部5a、音声登録部5b、音声認識部5cが設けてある。音声登録部5bにはあらかじめ複数の音声が登録してある。例えば、「オン」、「オフ」といった静電霧化装置6の運転制御のための単語や、「前右」、「前左」、「後右」、「後左」といった放出方向可変手段11を可変することによる放出口4からの放出方向可変指令のための単語が登録してある。なお、音声登録部5bには上記音声入力部5aから利用者の音声を入力して必要な「単語」を登録することができるようになっている。この場合、切換え手段(図示せず)を操作して音声認識装置5を制御モードから音声登録モードに切換えて音声の単語登録ができるようにするとよく、利用者による音声の単語登録が終わると、再び切換え手段を切り替えて制御モードに戻すものである。
【0035】
そして、音声認識装置5が制御モードとなっている状態で、車室8内で乗車している人が例えば「オン」という音声の指令を出すと、音声入力部5aでこの音声指令を検出し、検出した音声を音声認識部5cで分析すると共に音声登録部5bに登録されている単語とマッチングするか否かのマッチング処理を行って単語判定をし、入力された音声指令が登録してある「オン」という単語とマッチングしていると判定されて「オン」という音声の指令が認識されると、制御部44から静電霧化装置6を制御するための制御信号を出力して静電霧化装置6の運転を開始するように制御される。
【0036】
同様に、「オフ」という音声の指令を出して音声認識装置5により「オフ」という単語が認識されると、制御部44から制御信号を出力して静電霧化装置6の運転を停止するように制御される。
【0037】
また、例えば、「前右」という音声の指令を出して音声認識装置5により「前右」という単語が認識されると、制御部44から放出方向可変信号を出力して放出方向可変手段11を制御して回動体42を回動し、放出口4からの放出方向が前部の右側の座席となるようにする。同様に、「前左」又は「後右」又は「後左」という音声の指令を出して音声認識装置5により「前左」又は「後右」又は「後左」という単語が認識されると、制御部44から放出方向可変信号を出力して放出方向可変手段11を制御して回動体42を回動し、放出口4からの放出方向が前部の左側の座席又は後部の右側の座席又は後部の左側の座席となるようにする。
【0038】
このようにして車室8内に乗車している人の音声指令により静電霧化装置6の運転制御や放出口4からの帯電微粒子水の放出方向の変更ができるので、ハンドルを手に持って車両7を運転している時であっても、ハンドルから手を離すことなく、自由に静電霧化装置6の運転制御や放出口4からの帯電微粒子水の放出方向の変更ができて安全運転を図りながら、車室8内の目的とする箇所(例えば、前部の右側の座席、あるいは前部の左側の座席、あるいは後部の右側の座席、あるいは後部の左側の座席)に集中して帯電微粒子水を放出して、該当する箇所に蓄積した臭い成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を効果的に分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌することが可能となる。ナノメータサイズの帯電微粒子水はナノメータサイズの水の浸透性により座席のシートや乗っている人の衣服内部に浸透して内部に蓄積された臭い成分やアレルゲン物質を効果的に分解あるいは抑制することができる。
【0039】
また、本発明は、人の音声指令により静電霧化装置6の運転制御や放出口4からの帯電微粒子水の放出方向の変更するものであって、従来のように空調装置やイグニッションキースイッチのオン、オフに連動して静電霧化装置6の運転制御をするものではないので、空調装置のオン、オフやイグニッションキースイッチのオン、オフに関係なく独立して必要なときに静電霧化装置6の運転ができる。また、電源として車両電源であるバッテリー12を使用した場合、バッテリーの不必要な損耗を抑制することもできる。
【0040】
電源として車両電源であるバッテリー12を使用する場合、バッテリー容量検出手段を設け、バッテリー容量が一定値以上の場合に静電霧化装置6の運転及び放出方向可変手段11の駆動ができるように設定してあり、つまり、バッテリー容量が一定値以下の場合に静電霧化装置6の運転及び放出方向可変手段11の駆動ができないようになっており、これにより、車両7のバッテリー上がりを抑制することができるようになっている。
【0041】
なお、図1、図3に示す実施形態においては、車室7内の天井50の前後方向の略中間で且つ左右方向の略中間(つまり前部の座席と後部の座席との略中間で且つ左右方向の略中間)位置に放出方向可変手段11を構成する方向可変装置40を取付けて該方向可変装置40に静電霧化装置本体6aを取付け、インストルメントパネル51に音声認識装置5を配設した例を示しており、この場合は、運転席又は助手席に乗った人の音声指令の入力が確実にでき、また、放出口4からの放出方向を前部の左右、後部の左右の各座席に向けて変更するのが最も簡単に行えることになる。この実施形態では、静電霧化装置本体6aの帯電微粒子水を放出する放出口4から前部の左右の座席、後部の左右の座席までの距離がほぼ同じであるので、放出口4の向きを変えて放出口4から放出する帯電微粒子水の放出方向を変えるのみで、方向可変装置40により放出口4をどの座席の方向に向けても、選択された座席に対して帯電微粒子水をほぼ同じ条件で放出でき、この結果、一つの静電霧化装置により選択されたいずれの座席であっても、ほぼ同じ条件で臭い成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌を集中して行うことができる。つまり、座席によって分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌の効果の差がない。
【0042】
また、上記実施形態では前後方向に2列に座席がある車両の例で示したが、前後方向に3列又はそれ以上の列に座席がある場合であってもよく、この場合も、放出方向可変手段11の駆動を前述のように駆動して目的とする座席に向けて帯電微粒子水を放出するようにしてもよい。
【0043】
もちろん、車室7内の天井50の前部の中央又は後部の中央に方向可変装置40を介して静電霧化装置本体6aを取付けたり、あるいはインストルメントパネル51に方向可変装置40を介して静電霧化装置本体6aを取付けてもよい。
【0044】
なお、上記実施形態に示す静電霧化装置6においては、対向電極2を設けた例を示したが対向電極2を設けることなく、放電電極1に高電圧を印加することで放電電極1に供給された水を静電霧化するものであってもよい。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態を図5に基づいて説明する。
【0046】
上記実施形態では、車両7に静電霧化装置6と音声認識装置5とを備え、音声による指示を音声認識装置5で認識して静電霧化装置6の制御、放出方向可変手段11の駆動制御を行うようにした例を示したが、下記の図5の実施形態では、放電電極1と、放電電極1と対向する対向電極2と、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加する高電圧印加手段と、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加することで生成されたイオンとオゾンを車室8内に放出する放出口4を備えたイオン発生装置9と、音声認識装置5とを車両7に備えた例である。イオン発生装置9は車室7内の天井50やインストルメントパネル51に放出方向可変手段11を構成する方向可変装置40を介して取付け、また、音声認識装置5も車室7内の天井50やインストルメントパネル51に取付ける。
【0047】
イオン発生装置9としては、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加してマイナスイオン又はプラスイオンを発生させると共にオゾンを発生させる実施形態と、正負イオン及びオゾンを発生させる実施形態とがある。
【0048】
正負イオン及びオゾンを発生させる実施形態の場合、例えば一対の対向する放電電極1と対向電極2との間に板状の誘導体を挟んで形成された放電素子と、この放電素子に正負電圧からなるパルス電圧を印加するパルス電圧回路とでイオン発生装置9が構成してあり、放電素子に対して正負電圧からなるパルス電圧を印加することで、電極付近に正イオンと、負イオンとをそれぞれ発生させる。
【0049】
このとき、パルス形状を正弦波状として正電圧と負電圧のピーク電圧(絶対値)を同程度となるようにすることで、ほぼ同程度の正イオンと、負イオンとを得ることができ、更に、印加する電圧のピーク値を調整することでオゾンを同時に発生させることができる。
【0050】
ここで、正イオンとしてH(HO)mが発生し、負イオンとしてO(HO)nが発生する(m、nは自然数)。
【0051】
上記発生したオゾンと、正負イオンが反応して生成するH又はOHラジカルとの強い酸化力により臭い成分やアレルゲン物質が効果的に分解あるいは抑制され、また、ウイルスや菌を除菌することになる。
【0052】
本実施形態のイオン発生装置9、音声認識装置5の配置位置や、音声認識装置5で認識した音声指令によるイオン発生装置9制御や、放出方向可変手段11を構成する方向可変装置40の制御は前述の静電霧化装置6の実施形態と同様であり、図面及び説明が重複するので省略する。
【0053】
なお、上記実施形態に示すイオン発生装置9においては、対向電極2を設けた例を示したが対向電極2を設けることなく、放電電極1に高電圧を印加することでイオン、オゾンを発生させるようにしたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の車両用浄化装置を備えた車両の概略図である。
【図2】同上に用いる静電霧化装置の主体を構成する静電霧化装置本体の概略構成図である。
【図3】同上の放出口の放出方向を変更する例を示す説明図である。
【図4】同上の制御ブロック図である。
【図5】本発明の車両用浄化装置を備えた車両の他の実施例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 放電電極
2 対向電極
3 水供給手段
4 放出口
5 音声認識装置
6 静電霧化装置
7 車両
8 車室
9 イオン発生装置
11 放出方向可変手段
15 高電圧印加手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて車室内の浄化を行うための車両用浄化装置であって、放電電極と、放電電極に水を供給する水供給手段と、放電電極に高電圧を印加する高電圧印加手段と、放電電極に高電圧を印加して放電電極に供給された水を静電霧化することで生成された帯電微粒子水を車室内に放出する放出口を有する静電霧化装置と、音声認識装置とを備え、音声認識装置で認識した制御信号に基づいて静電霧化装置の運転制御を行うことを特徴とする車両用浄化装置。
【請求項2】
車両に搭載されて車室内の浄化を行うための車両用浄化装置であって、放電電極と、放電電極に高電圧を印加する高電圧印加手段と、放電電極に高電圧を印加することで生成されたイオンとオゾンを車室内に放出する放出口を備えたイオン発生装置と、音声認識装置とを備え、音声認識装置で認識した制御信号に基づいてイオン発生装置の運転制御を行うことを特徴とする車両用浄化装置。
【請求項3】
放出口からの放出方向を可変する放出方向可変手段を設け、上記音声認識装置で認識した放出方向可変信号に基づいて放出方向を可変することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用浄化装置。
【請求項4】
高電圧印加手段が車両電源であるバッテリーであって、バッテリー容量が一定値以上の場合に装置の運転が可能となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用浄化装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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