説明

車両用灯具のエイミング装置

【課題】 ランプユニットのエイミング装置における部品の共用化を進める一方で各ランプユニットの規格の相違に対応して必要かつ十分な強度の支持構造を構築する。
【解決手段】 ランプユニットに連結されたサポートブラケット43と、軸転操作されてサポートブラケット43をランプ前後方向に移動させるエイミングスクリュ44を備え、サポートブラケット43は第1摺動部431と第2摺動部432を備え、ランプハウジング1は第1摺動部341のみを内挿した状態でサポートブラケット43を摺動可能に保持する第1のブラケット保持体51と、第1摺動部431と第2摺動部432を共に内挿した状態でサポートブラケットを摺動可能に保持する第2のブラケット保持体(52)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の前照灯(ヘッドランプ)等の車両用灯具に関し、特に灯具の照射方向を調整するためのエイミング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドランプでは照射光の照射方向を上下方向及び左右方向に調整する必要があり、そのためにエイミング装置が設けられている。例えば、特許文献1の車両用灯具ではランプハウジング内に内装したランプユニットをランプハウジングの外側から上下方向及び左右方向に傾動調整可能に支持したエイミング装置を備えている。このようなエイミング装置としては、ランプユニットを1箇所においてランプハウジングに対して上下、左右のいずれの方向にも傾動可能に支持して支点部を構成するとともに、この支点部に対して水平方向に並ぶ位置と垂直方向に並ぶ位置にそれぞれ第1及び第2の2つのエイミング部を設け、これら2つのエイミング部の1つ又は2つを選択して操作することでランプユニットを上下方向及び左右方向に傾動調整する構成がとられている。また、これらのエイミング部の構成として、ランプハウジング外から内部に向けてランプ前後方向にエイミングスクリュを挿通させ、このエイミングスクリュに螺合するサポートブラケットをランプユニットに連結した構成がとられている。ランプハウジング外からエイミングスクリュを軸転操作することで、これに螺合しているサポートブラケットをエイミングスクリュの長さ方向に移動させ、サポートブラケットに連結しているランプユニットの当該連結部位をランプの前後方向に移動させ、ランプユニットを支点部を支点として傾動させることが可能である。
【0003】
特許文献2には、このようなエイミング部を構成するエイミングスクリュとサポートブラケットが提案されている。ここではエイミングスクリュを軸転したときに、エイミングスクリュに螺合しているサポートブラケットがランプの前後方向に移動できるようにサポートブラケットをランプハウジングに対して摺動可能に支持するとともに、このサポートブラケットの一部にボール軸を一体的に設けておき、このボール軸をランプユニットの一部に嵌合してランプユニットに対する連結を行う構成であり、特にサポートブラケットに対してエイミングスクリュを螺合させる際の組み付けの容易性を図った構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−123698号公報
【特許文献2】独国特許公開102005037074
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のエイミング部の構成、特にサポートブラケットについては、サポートブラケットをランプハウジングに対してランプ前後方向に移動可能に支持させるために、サポートブラケットの両側に支持片を一体に形成し、この支持片に設けたスリットをランプハウジングの内壁にランプ前後方向に向けて一体に延長形成した支持レールに係合させる構成がとられている。そのため、連結しているランプユニットの重量がサポートブラケットに掛かり、さらにはサポートブラケットの支持片を介して支持レールに掛かることになり、これら支持片と支持レールの強度上の信頼性を考慮したときには、支持片や支持レールを厚肉の強固なものとして形成する必要がある。特に、ランプユニットを大型の投影レンズを備えた重量の嵩むプロジェクタ型ランプユニットで構成した場合には、支持片や支持レールをランプユニットの重量に耐えうるだけの強固なものに構成する必要がある。その一方で、軽量なリフレクタ型ランプユニットの場合には支持片や支持レールは相対的に小型、軽量なものに構成できる。したがって、プロジェクタ型ランプユニットとリフレクタ型ランプユニットを混在させたヘッドランプにおいて、各ランプユニットのそれぞれに対応したサポートブラケットを設計・製造したのでは部品点数が増大するとともに、その製造・管理が面倒なものとなる。また、重量の大きなプロジェクタ型ランプユニットにも耐え得るサポートブラケットを設計・製造して両ランプユニットに対して適用したのでは、リフレクタ型ランプユニットに対しては過剰な設計となり、ヘッドランプの小型化、軽量化を図る上での障害になる。
【0006】
本発明の目的はランプユニットの重量等の規格が異なる場合においても同一構成のサポートブラケットを適用することを可能とし、サポートブラケットを含む構成部品の共用化を図って設計・製造及び管理の簡略化を図り、その一方で各ランプユニットの規格の相違に対応して必要かつ十分な強度の支持構造を構築することを可能にした車両用灯具のエイミング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ランプハウジングと、ランプハウジング内に内装されたランプユニットとを備える車両用灯具において、ランプユニットに連結されたサポートブラケットと、サポートブラケットに螺合され、軸転操作されたときにサポートブラケットをランプ前後方向に移動させるエイミングスクリュとを備えるエイミング装置であって、サポートブラケットは第1摺動部と第2摺動部を備え、ランプハウジングには第1摺動部のみを内挿した状態でサポートブラケットを摺動可能に保持する第1のブラケット保持体と、第1摺動部と第2摺動部を共に内挿した状態でサポートブラケットを摺動可能に保持する第2のブラケット保持体の両者又は一方を選択して配設したことを特徴とする。
【0008】
例えば、第1のブラケット保持体は第1摺動部を内挿する樋状に形成され、第2のブラケット保持体は第1摺動部と第2摺動部を内挿する筒状に形成される。
【0009】
本発明において、ランプハウジング内に重量が異なる複数のランプユニットが内装される場合には、低重量側のランプユニットのブラケット保持体は第1のブラケット保持体で構成され、高重量側のランプユニットのブラケット保持体は第2のブラケット保持体で構成される。例えば、低重量側のランプユニットはリフレクタ型ランプユニットであり、高重量側のランプユニットはプロジェクタ型ランプユニットである。
【0010】
本発明におけるサポートブラケットは、第1摺動部と第2摺動部、及びエイミングスクリュに螺合される螺合部が一体に形成され、ランプユニットに連結されて球継手を構成するボール軸が装着される。第1摺動部は第1のブラケット保持体又は第2のブラケット保持体の内側面に弾接する弾接片を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、いずれも同一構成のサポートブラケットを保持することが可能な第1のブラケット保持体と第2のブラケット保持体のいずれかを選択することで、第2のブラケット保持体では高い強度でのサポートブラケットの保持が可能になり、第1のブラケット保持体では省スペースでのサポートブラケットの保持が可能になる。そのため、ランプユニットの構造、形状、重量等の違いにより第1のブラケット保持体と第2のブラケット保持体を適切に選択することで、サポートブラケットの部品点数を増加することなく、要求される強度でかつ可及的に小型化を図ったエイミング装置が構成できる。
【0012】
ここでは、第2のブラケット保持体は第1摺動部と第2摺動部を共に内挿する筒状に形成しているので、第1摺動部と第2摺動部の2つの部位においてサポートブラケットをブラケット保持体に保持することができ、高い強度でサポートブラケットを保持することができ、高重量のランプユニットの場合でもサポートブラケットの安定した摺動が可能になり、信頼性の高いエイミング装置が構成できる。第1のブラケット保持体は第1摺動部のみを内挿する樋状に形成しているので、第2摺動部を保持するための部分が不要であり、ランプハウジングの内壁に第2ブラケット保持体を形成するためのスペースが削減でき、ランプハウジングないしランプ全体の小型化を図る上で有利になる。
【0013】
また、本発明のサポートブラケットは、第1摺動部と第2摺動部を一体に形成しており、第1のブラケット保持体と第2のブラケット保持体のいずれに対しても保持させることが可能であるので、ランプユニットの種類に応じてブラケット保持体の構成を相違させる場合でも同一構成のサポートブラケット及びその他の構成部品を用いることができる。そのため、少なくとも異なる構成のサポートブラケットを用意する必要がなく、サポートブラケットの設計、製造、部品管理を簡略化することが可能になる。特に、第1摺動部は第1のブラケット保持体又は第2のブラケット保持体の内側面に弾接する弾接片を備えているので、いずれのブラケット保持体に対して摺動した場合でも弾接片の弾接力によって安定な状態で保持されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のエイミング装置を備えたヘッドランプの一部を破断した概略正面図。
【図2】図1のヘッドランプのランプボディを前方から見た概略斜視図。
【図3】低重量ランプユニットに適用したエイミング部の部分分解斜視図。
【図4】サポートブラケットを反対側から見た斜視図。
【図5】低重量ランプユニットに適用したエイミング部の縦断面図と正面図。
【図6】高重量ランプユニットに適用したエイミング部の部分分解斜視図。
【図7】高重量ランプユニットに適用したエイミング部の縦断面図と正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車の左側のヘッドランプHLに適用した実施形態の概略構成を示す一部を破断した正面図である。前面を開口した容器状をしたランプボディ11と、このランプボディ11の前面開口に取着した透明な前面カバー12とでランプハウジング1が構成され、このランプハウジング1内にすれ違い用配光のロービームランプユニットLLUと走行用配光のハイビームランプユニットHLUがそれぞれ内装されている。ここでは、ロービームランプユニットLLUは比較的に高重量であるプロジェクタ型ランプユニットで構成され、ハイビームランプユニットHLUは相対的に低重量であるリフレクタ型ランプユニットで構成されている。プロジェクタ型ランプユニットとリフレクタ型ランプユニットはそれぞれ知られているランプユニットであるのでここでは詳細な説明は省略するが、プロジェクタ型ランプユニットは回転楕円型のリフレクタに投影レンズを一体化し、内部に光源を内蔵した構成である。また、リフレクタ型ランプユニットは回転放物面型のリフレクタに光源を装着した構成である。そして、これらの両ランプユニットLLU,HLUには、それぞれのランプ光軸方向、すなわち照射光の照射方向を上下方向、左右方向にそれぞれ傾動調整するためのロービームランプユニット用エイミング装置(以下、L用エイミング装置)L−AIMとハイビームランプユニット用エイミング装置(以下、H用エイミング装置)H−AIMが設けられており、前記ランプハウジング1の背面外側から手操作によって調整することができるように構成されている。
【0016】
すなわち、前記ハイビームランプユニットHLUを構成しているリフレクタ型ランプユニットは図1の正面図と図5(a)の一部断面図に示すように、焦点位置に光源30としての白熱バルブや放電バルブを配置した回転放物面型の放物面リフレクタ31の背面にエイミング支持片32が一体に突出形成され、このエイミング支持片32にH用エイミング装置H−AIMが配設されている。また、前記ロービームランプユニットLLUを構成するプロジェクタ型ランプユニットは図1の正面図と図7(a)の一部断面図に示すように、内部に放電バルブ等の光源20を配設した回転楕円型リフレクタ21の前部開口に円筒状のホルダ22にて凸レンズからなる投影レンズ23を取着しており、このホルダ22の外周面には外側に向けてエイミングフランジ24が一体に形成され、このエイミングフランジ24に前記L用エイミング装置L−AIMが配設されている。
【0017】
H用エイミング装置H−AIMは、図1のようにヘッドランプHLの正面方向から見てハイビームランプユニットHLUの右上側位置に支点部FULが配設され、また下側位置に水平方向に並んで第1エイミング部AIM1と第2エイミング部AIM2が配設されている。右側の第2エイミング部AIM2は前記支点部FULの垂直方向の直下に位置されている。第1エイミング部AIM1によりハイビームランプユニットHLUの水平方向の傾動角度を調整し、第1エイミング部AIM1と第2エイミング部AIM2により垂直方向の傾動角度を調整することでハイビームランプユニットHLUの照射方向を上下左右に調整することが可能である。
【0018】
L用エイミング装置L−AIMは、ヘッドランプHLの正面方向から見てロービームランプユニットLLUの左上側位置に支点部FULが配設され、下側位置に水平方向に並んで第1エイミング部AIM1と第2エイミング部AIM2が配設されている。ここでは第1と第2のエイミング部の配列はH用エイミング装置H−AIMとは反対である。第1エイミング部AIM1によりロービームランプユニットLLUの水平方向の傾動角度を調整し、第1エイミング部AIM1と第2エイミング部AIM2により垂直方向の傾動角度を調整することでハイビームランプユニットHLUの照射方向を上下左右に調整することは同じである。後述する説明から明らかになるように、これらH用エイミング装置H−AIMとL用エイミング装置L−AIMをそれぞれ構成する第1エイミング部AIM1と第2エイミング部AIM2の基本的な構成は同じであるので、同一符号を付している。
【0019】
前記H用エイミング装置H−AIMの支点部FULは、図1に外形を破線で示すようにハイビームランプユニットHLUの前記エイミングフランジ32の右上側箇所に一体的に固定支持されたボール軸受け25と、図2に示されるように前記ランプボディ11の背面壁11にネジ固定されて当該ボール軸受け25に嵌合するボール軸26とで構成されている。このボール軸受け25とボール軸26は後述する第1及び第2のエイミング部AIM1,AIM2で用いるボール軸受け41とボール軸42と同じ構成のものを用いて部品の共用化を図っており、これらボール軸受け25とボール軸26とで球継手を構成し、ここを支点にしてハイビームランプユニットHLUを上下方向及び左右方向に傾動可能に支持している。前記L用エイミング装置L−AIMの支点部FULについても同様である。
【0020】
一方、前記H用エイミング装置H−AIMの前記第1エイミング部AIM1と第2エイミング部AIM2は前記のようにハイビームランプHLUに対する配設位置が異なる他は同じ構成である。第1エイミング部AIM1について説明すると、図3に要部の部分分解斜視図を示すように、前記ハイビームランプユニットHLUのエイミングフランジ32の右上側箇所に固定支持されるボール軸受け41と、このボール軸受け41に嵌合するボール軸42を備えるサポートブラケット43と、前記ランプボディ11の背面壁111に軸転可能に支持されて当該サポートブラケット43に螺合するエイミングスクリュ44を備えている。
【0021】
エイミングスクリュ44はランプボディ11の背面壁111を貫通する挿通穴を通してヘッドランプHLの前後方向に向けてランプボディ11の外側から内部に挿通されており、背面壁111からの脱落防止が施された上で、その長さ方向の外端近傍位置において当該背面壁111に軸転可能に支持されている。エイミングスクリュ44の外端部441は専用治具あるいは他の手工具等によって手操作で軸転できるように角型ボス形状に形成されている。また、ランプボディ11内に延在されるエイミングスクリュ44の内端側の所定長さ部分には螺旋条(ねじ条)44aが形成されており、前記サポートブラケット43に螺合されている。
【0022】
前記ボール軸42は金属材で形成されており、球状をした頭部421と、この頭部421から延長されたネジ部422とで構成されており、ネジ部422がサポートブラケット43の前面に螺合支持される。また、前記ボール軸受け41は樹脂成形により形成されており、内部に前記ボール軸42の頭部421が嵌合される円筒部411と、この円筒部411を前記エイミングフランジ32にネジで固定するための二股状をした支持片412とで構成されている。円筒部411には、一端部には十字型をした固定挟持片413が、他端部には図5(a)に示す花弁状をした可撓挟持片414がそれぞれ一体に形成され、ボール軸42の頭部421を可撓挟持片414を弾性変形させながら固定挟持片413に達するまで圧入することで、当該頭部421を固定挟持片413と可撓挟持片414との間に挟持させ、ハイビームランプユニットHLUを当該頭部421を支点にして上下方向及び左右方向に対して傾倒可能に支持する球継手が構成されることになる。
【0023】
前記サポートブラケット43は、図4に反対方向から見た斜視図にも示すように、樹脂成形により形成されており、前記エイミングスクリュ44に螺合する円筒状をした螺合部433と、エイミングスクリュ44の長さ方向に交差する方向、ここでは上下方向に並んで形成された下側の第1摺動部431と上側の第2摺動部432を有している。前記螺合部433はサポートブラケット43の上側領域に配設されており、前記エイミングスクリュ44が挿通され、かつその螺旋条44aが貫通状態に螺合される。また、前記ボール軸42はこの螺合部433の下側領域においてサポートブラケット43の前面にネジ部422がネジ結合されており、頭部421がサポートブラケット43の前方に突出配置されている。
【0024】
下側の前記第1摺動部431はサポートブラケット43の下端部に設けられており、両外側に向けて突出され、かつ各先端が上方に向けて突出された一対の袖片431aと、第1摺動部431の下端面に下方に突出した2本のレール状をした当接片431bと、袖片431aの先端から内側に向けて下方に湾曲形成された2つの弾接片431cとで構成されている。また、上側の第2摺動部432は前記螺合部433の両側面から両外側に向けて突出され、かつ各先端が上方に向けて突出された三角枠状をした一対の袖片432aで構成されている。前記第1摺動部431と第2摺動部432の各袖片431a,432aはそれぞれの両外側への突出寸法は等しくされている。また、サポートブラケット43を側面方向から見たときに、第2摺動部432は第1摺動部431よりもエイミングスクリュ44の先端方向に向けて変位(オフセット)した構成とされている。
【0025】
そして、図5(a)に示すように、前記ボール軸受け41は前記ハイビームランプユニットHLUのエイミングフランジ32の一部にネジ固定され、このボール軸受け41にはボール軸42の頭部21が嵌合される。これによりサポートブラケット43はエイミングフランジ32に対して傾倒可能に連結されることになる。そして、サポートブラケット43は図2にも示しているように、ランプボディ11の背面壁111の前記エイミングスクリュ44の直下位置においてランプボディ11と一体に形成した第1のブラケット保持体、ここではH用ブラケット保持体51に内挿されて支持されるとともに、この内挿支持された状態で前記エイミングスクリュ44が螺合部433に螺合される。
【0026】
前記H用ブラケット保持体51は、サポートブラケット43の第1摺動部431が内挿される構成とされている。このH用ブラケット保持体51はランプボディ11の背面壁111の内面からランプ前方に突出して前端部が開口された所要長さの片支持構造の樋状体として構成されている。すなわち、H用ブラケット保持体51の開口形状はサポートブラケット43の第1摺動部431の形状に対応して上下が短く左右に細長く、また両端縁が内側に向けて曲げられた矩形をした樋状体として形成されている。前記サポートブラケット43は第1摺動部431のみが当該開口部からH用ブラケット保持体51に内挿されており、図5(a),(b)に示すように、内挿された状態では第1摺動部431の各袖片431aの両端部がH用ブラケット保持体51の各内側面に接して左右方向の保持が行われる。また、サポートブラケット43の下端面に設けた当接片431bがH用ブラケット保持体51の内底面に当接するとともに、同じ下端面に設けた2つの弾接片431cが同じく内底面に弾接し、この弾接力を利用して第1摺動部431を上下方向に圧入した状態とすることで上下方向の安定な保持が行われる。
【0027】
H用エイミング装置H−AIMの第2エイミング部AIM2の構造は、ハイビームランプユニットHLUに対する配設位置が前記した第1エイミング部AIM1と異なる位置に配設されていることを除けば、サポートブラケット43及びH用ブラケット保持体51の構成は全く同じである。
【0028】
L用エイミング装置L−AIMについても、H用エイミング装置H−AIMの支点部FUL、第1エイミング部AIM1、第2エイミング部AIM2の構成はほぼ同じである。すなわち、図6はL用エイミング装置L−AIMの第1エイミング部AIM1の分解斜視図であるが、支点部FULを構成するボール軸受け41とボール軸42は同じ構成であり、また、第1と第2の各エイミング部AIM1,AIM2をそれぞれ構成するエイミングスクリュ44とサポートブラケット43も同じ構成である。したがって、主要な構成の同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0029】
その一方でサポートブラケット43を挿入支持する第2のブラケット保持体、ここではL用ブラケット保持体52は、図2にも示したようにランプボディ11の背面壁111からランプ前方に向けて一体に突出形成された前端部が開口された所要長さの筒状体として構成されている。このL用ブラケット保持体52の開口形状はサポートブラケット43の外形輪郭に対応するように、下部領域は矩形で上部は円弧形をした筒状体として形成されており、この円弧状の部分の内側に前記エイミングスクリュ44が配設されている。前記サポートブラケット43は当該開口部からL用ブラケット保持体52内に内挿されており、この内挿された状態では図7(a),(b)に示すように、第1摺動部431と第2摺動部432の各袖片431a,432aの両端部がL用ブラケット保持体52の各内側面に接して左右方向の保持が行われ、サポートブラケット43の下端面に設けた当接片431bがL用ブラケット保持体52の内底面に当接するとともに、同じ下端面に設けた2つの弾接片431cが同じく内底面に弾接し、この弾接力によって第1摺動部431と第2摺動部432をL用ブラケット保持体52内に圧入状態として上下方向に安定した保持が行われる。
【0030】
L用エイミング装置L−AIMの第2エイミング部AIM2の構造も、ロービームランプユニットLLUに対する配設位置が前記した第1エイミング部AIM1と異なる位置に配設されていることを除けば、サポートブラケット43及びL用ブラケット保持体52の構成は全く同じである。
【0031】
以上の構成のH用エイミング装置H−AIM及びL用エイミング装置L−AIMによるエイミング調整について説明する。まず、L用エイミング装置L−AIMについてみると、ランプハウジング1の外部での操作によってエイミングスクリュ44が軸転されると、サポートブラケット43は螺合部433での螺合によってエイミングスクリュ44の長さ方向に移動され、ボール軸42を介してこれに嵌合しているボール軸受け41をランプ前後方向に移動させ、ロービームランプユニットLLUを支点部FULを支点にして傾動させる。すなわち、第1エイミング部AIM1での調整によりロービームランプユニットLLUを支点部FULを支点にして上下方向に傾動させ、第1と第2のエイミング部AIM1,AIM2の調整によりロービームランプユニットLLUを支点部FULを支点にして左右方向に傾動させる。これによりロービームランプユニットLLUの照射方向を調整することが可能になる。
【0032】
このとき、サポートブラケット43は第1摺動部431と第2摺動部432がそれぞれL用ブラケット保持体52の内面に摺接し、L用ブラケット保持体52内で内装支持された状態が保たれながら筒軸方向に摺動されることになる。そのため、サポートブラケット43の下側と上側の2箇所でそれぞれ左右方向の支持が行われるためサポートブラケット43に加えられる回転方向の荷重に対してもサポートブラケット43を安定してL用ブラケット保持体52内で保持する。また、サポートブラケット43の下端面に設けた弾接片431cがL用ブラケット保持体52の内底面に弾接して上下方向に圧入された状態とされることで、この弾接力によってロービームランプユニットLLUの重量がかかる上下方向の保持を安定な状態に保つことができる。これにより、サポートブラケット43は上下方向と左右方向のそれぞれにおいて強固に保持されることになり、ロービームランプユニットLLUが比較的に重量のあるプロジェクタ型ランプユニットで構成され、この重量がサポートブラケット43に加わる場合でもサポートブラケット43を安定した状態で保持することができ、エイミング動作時にサポートブラケット43をエイミングスクリュ44に沿って円滑に移動させることが可能になる。
【0033】
一方、H用エイミング装置H−AIMについてみると、エイミングスクリュ44が軸転されることによりサポートブラケット43がランプ前後方向に移動されることはL用エイミング装置L−AIMと同じであり、ボール軸42を介してこれに嵌合しているボール軸受け41をランプ前後方向に移動させ、ハイビームランプユニットHLUを支点部FULを支点にして傾動させることも同じである。このとき、サポートブラケット43は第1摺動部431のみがH用ブラケット保持体51の内面に摺接した状態で内装支持されながらH用ブラケット保持体51内の筒軸方向に摺動される。このとき、サポートブラケット43の下端面に設けた弾接片431cがH用ブラケット保持体51の内底面に弾接することでのみ上下方向の支持が行われるが、ハイビームランプユニットHLUはロービームランプユニットLLUに比較して軽量なリフレクタ型ランプユニットで構成されているので、H用ブラケット保持体51を樋状に形成してもハイビームランプユニットHLUからサポートブラケット43に加えられる重量は軽量であるので、第1摺動部431での内挿状態のみでサポートブラケット43を安定した状態で保持し、エイミング動作時に円滑な移動が可能になる。そのため、H用ブラケット保持体51をL用エイミング装置L−AIMのL用ブラケット保持体52のようにサポートブラケット43の全体を内挿して保持する筒状に形成する場合よりもH用ブラケット保持体51を小型でかつ省スペースに構成できる。
【0034】
この実施形態の説明から判るように、重量の異なるランプユニットにそれぞれ対応する複数のエイミング装置を構成する場合でも、ブラケット保持体の構成を筒型または樋型のいずれかを選択するだけでよく、その他の構成部品であるエイミングスクリュやサポートブラケットは同一部品で構成できる。したがって、部品の共通化が可能になり、部品点数を削減して部品設計・製造及び管理の簡略化が可能になる。その一方でランプユニットの重量に対応してブラケット保持体の形状を筒型または樋型のいずれかを適切に選択することによりサポートブラケットを安定して保持し、円滑なエイミング動作が確保できる。特に、高重量のランプユニットの場合でも安定な保持が可能であり、軽量のランプユニットの場合にはランプハウジング内におけるブラケット保持体の配設スペースを削減し、ヘッドランプの小型化を図ることが可能になる。さらに、サポートブラケットに設けた弾接片により自動車の車体に生じる振動を吸収してサポートブラケット、ないしランプユニットに伝達することを防止することでランプにおける耐震性を高めることも可能になる。
【0035】
実施形態では、L用エイミング装置におけるL用ブラケット保持体を筒状に形成し、H用エイミング装置におけるH用ブラケット保持体を樋状に形成しているが、ランプユニットの重量の違い並びにランプハウジング内の余裕スペースの程度に対応して、これらブラケット保持体を筒状あるいは樋状の任意の構成を採用することが可能である。また、サポートブラケットの形状や、これに対応するブラケット保持体の形状は適宜の設計変更が可能であることは言うまでもない。特に、これらを配設する左右、上下方向の姿勢は必ずしも垂直方向あるいは水平方向に向ける必要はなく、ランプハウジング内におけるランプユニットの配設状態に対応して場合によっては傾斜した姿勢で配設することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は照射方向を調整するエイミング装置を備えた車両用灯具であれば、個々の具体的な構成の相違にかかわらず採用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ランプハウジング
11 ランプボディ
41 ボール軸受け
42 ボール軸
43 サポートブラケット
44 エイミングスクリュ
51 H用ブラケット保持体(第1のブラケット保持体)
52 L用ブラケット保持体(第2のブラケット保持体)
431 第1摺動部
432 第2摺動部
HL ヘッドランプ(車両用灯具)
HLU ハイビームランプユニット
LLU ロービームランプユニット
H−AIM ハイビームランプユニット用エイミング装置
L−AIM ロービームランプユニット用エイミング装置
AIM1 第1エイミング部
AIM2 第2エイミング部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングと、前記ランプハウジング内に内装されたランプユニットとを備える車両用灯具において、前記ランプユニットに連結されるサポートブラケットと、前記サポートブラケットに螺合され、軸転操作されたときに前記サポートブラケットをランプ前後方向に移動させるエイミングスクリュとを備えるエイミング装置であって、前記サポートブラケットは第1摺動部と第2摺動部を備え、前記ランプハウジングには第1摺動部のみを内挿した状態で前記サポートブラケットを摺動可能に保持する第1のブラケット保持体と、第1摺動部と第2摺動部を共に内挿した状態で前記サポートブラケットを摺動可能に保持する第2のブラケット保持体の両者又は一方を選択して配設したことを特徴とする車両用灯具のエイミング装置。
【請求項2】
前記第1のブラケット保持体は前記第1摺動部を内挿する樋状に形成され、前記第2のブラケット保持体は前記第1摺動部と第2摺動部を内挿する筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具のエイミング装置。
【請求項3】
前記ランプハウジング内には重量が異なる複数のランプユニットが内装され、低重量側のランプユニットのブラケット保持体は第1のブラケット保持体で構成され、高重量側のランプユニットのブラケット保持体は第2のブラケット保持体で構成されることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具のエイミング装置。
【請求項4】
前記低重量側のランプユニットはリフレクタ型ランプユニットであり、高重量側のランプユニットはプロジェクタ型ランプユニットであることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具のエイミング装置。
【請求項5】
前記サポートブラケットは前記第1摺動部と第2摺動部、及び前記エイミングスクリュに螺合される螺合部が一体に形成され、前記ランプユニットに連結されて球継手を構成するボール軸を支持することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用灯具のエイミング装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−230570(P2011−230570A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100667(P2010−100667)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】